※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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供物の価値X

---シュウ---

 

「どういうこと?」

 

青ざめて震える真由美。

 

「そういうことだよ」

 

彼女に無情な言葉をかける。

 

「そういうことって?」

 

床に落ちた指輪を拾う真由美。そして、その指輪を見続けている。

 

「ソイツは覆製体だ。本物では無い。おかしいと思わなかったのか?あんな事件の翌日に婚姻するってさぁ」

 

指輪を見つめている真由美。

 

「はめられたんだよ。お前の達也への想いを利用されたんだ」

 

「誰に?」

 

僕へと振り返り、怒りを乗せた視線をぶつける真由美。

 

「将輝と婚姻した深雪も覆製体だ」

 

僕を睨み続ける真由美。

 

「信用するか、しないかは自由だ。勝手にしろ。たぶん、僕はお前以上に怒りを抱いている」

 

真由美を残して部屋を去る僕達。

 

--------

 

新居に行くには2通りの行き方がある。1つは、住所表記を目印に直に行く方法。これだと学校まで1時間くらいかかってしまう。なので、もう1つ、学校近くにある神社から転移する方法がある。神社の奥に、僕の世界のサーゼクス兄さんが作ってくれた、どこでもドアを設置してある。これを利用すると、裁きの回廊という廊下を経て、新居の敷地内に設置してあるどこでもドアに抜けられるのだ。裁きの回廊は、僕達に危害を加えようとしているか、悪意を抱いている者を排除する機能を持たせた廊下である。

 

新居で、現状の報告会を開くことになった。参加者は、住民である僕、達也、深雪、エリカに加えて克人、服部と、あと2名である。

 

残りの2名は直に訪問することになっていた。訪問者2名は日が落ちた頃、やってきた。二人の姿を見て固まるエリカ。二人の男性は、エリカを目にすると駆け寄り、抱きついた。

 

「「エリカ!」」

 

「兄様、アニキ…」

 

エリカの二人の兄達は、エリカを懐かしむように、抱き締めている。

 

「アニキ…胸を揉むな!ケツを撫で回すなよ!これってセクハラだろ?」

 

エリカの顔と耳は真っ赤で、恥ずかしそうな素振りである。

 

「いや、有るべきものが有るかの確認だよ」

 

言いたいことはわかるが、役得感満載なアニキ。二人の関係性が見えるような光景である。感動な再会が一段落付き、全員がリビングの席についた。

 

「じゃ、現状の報告をする。まず、関与しているのは1,7,9だ」

 

「9?まさか…」

 

克人が声を上げた。

 

「あぁ、九島の爺が関与しているとは思いたくないが、黙認しているだけでも同罪だ。で、9から提供された技術は、アンドロイドに憑依物を付与した兵器の技術だ。これを利用して、覆製体をサイボーグ化し、ソーサリアンブースターを付与しているようだ」

 

固唾を飲み込む一同。

 

「1は、特に提供している物は無い。あるのは将輝達の覆製体の使用の許可のようだ。で、問題は7だ。ここが黒幕との窓口になっているんだと思う」

 

「七草も関与しているのか?」

 

克人が訊いてきた。

 

「真由美は利用されているだけだ。これは後で説明する」

 

「本物の一条将輝達の潜伏先は、わかったのか?」

 

エリカのアニキから質問された。

 

「特定できたよ。七草家所有の別荘の1つにいる。問題はそこで何をしているかだ」

 

物議を醸し出す映像をモニタで再生した。所謂アダルトビデオである。一人の女性の身体だけモザイク処理している。2組の男女の営みが延々と流れる。時間経過と共に、深雪の表情は青ざめていく。僕は彼女を抱き締め、安堵なオーラで包み、負担を軽減していく。

 

映し出されているのは、全裸の深雪の覆製体と将輝、真由美とカーディナル・ジョージであった。深雪の覆製体だけモザイク処理をしている。

 

「おい、これって…」

 

服部が驚いた声を上げる。

 

「録画した時間帯に真由美本体は学校にいたから、あれは覆製体だ」

 

「学校にいた時間?じゃ、昼間から、こんなことを?」

 

達也でさえ、驚いているようだ。

 

「そうだ。たぶん、将輝、ジョージ、深雪の覆製体には媚薬が漏られているのだろう。目的は、理性の崩壊と道徳観の喪失だと思う。本体にそれらがなければ、覆製体は破壊に特化しやすいからな」

 

「七草が利用されているって、これか?」

 

克人が訊いてきた。

 

「そうだ。真由美本人の知らないところで、覆製体を作られているんだ。で、加重魔法の心臓狙撃だけど、あれは真由美の脳をソーサリアンブースター化して、ジョージに埋め込んだのだろう。真由美の能力は狙撃だからな」

 

「なぁ、覆製体って簡単に作れるのか?」

 

エリカのアニキに訊かれた。

 

「聖杯を使えば作れる。呪文と魔力が必要だけど。聖杯は3つで1組であり、多ければ多いほど威力は大きくなる。1つでも複製くらいなら簡単だ。それで、この世界の聖杯の在処だけど、バチカンに1つ、聖物コレクターが1つ持っていて、1つは所在不明だったけど、真由美本人の知らない間に覆製体が作られたことから、七草弘一が1つ持っていると思う。バチカンが所蔵している分は、既に確認した上で能力を使えなくしてある。残り1つ、聖物コレクター分か不明分だけど、これは黒幕が持っていると思う。弘一が持っているのは真由美の複製の為だから」

 

静まり返るリビング。展開が予想しない方向に行きすぎたかな?

 

「で、まず、先程の映像の女性の顔を入れ替えて、三高の生徒及び、一条家のお膝元でバラ蒔く」

 

「誰に置き換えるつもりだ?」

 

克人が訊いてきた。

 

「深雪を真由美に、真由美を茜にする」

 

「茜って、誰だ?」

 

「将輝の妹だ。リサーチではジョージがお気に入りのようだし♪」

 

「その後の展開は?」

 

エリカのアニキに訊かれた。

 

「警察がその映像を手に入れ、将輝達の隠れている場所を特定して、お縄だ。なので、隠れている場所は教えられない。映像を頼りに探してくれ。流通開始と共に、映像は警察と魔法師協会へ提出する」

 

七草家は警察に食い込んでいるので、入手経路を明かせない証拠は、もみ消される可能性があった。

 

「わかった」

 

アニキは、理由を納得したのか、頷いた。

 

「問題は、黒幕が不明ってことと、覆製体の保管場所が不明ってことだ。ソーサリアンブースターの工場と、関連データは盗み出してあるので、新規の分は作られないと思う」

 

「現状ではここまでだ。克人達は報告事項あるか?」

 

「あぁ、有るぞ。亘、お前を生徒会長として立候補させてある」

 

克人の口から飛んでもないことを言われた。生徒会長?何だ?

 

「どうして?」

 

「七草が中条を後継指名したんだが、七草が怪しいと思ってな。お前を部活連推薦候補で出して置いた」

 

「二科生だけど…」

 

「問題無い。俺達はお前になら命を預けられる」

 

ニヤリとした克人。

 

「預けられても困る。僕は護れなかったんだ」

 

「大丈夫…」

 

深雪が僕の耳元で囁いた。

 

「護れただろ?私は今、ここにいる」

 

エリカが力強い声を発した。

 

「でも…」

 

「今週の金曜に投票だ」

 

投票…うん?

 

「投票は教室でか?」

 

「いや、体育館に全校生徒を集めて投票させて、投票終了後に、全生徒の目の前で開票する」

 

それだ!

 

「それを狙っているんだ。あいつらは…1つの場所に集まっていれば、素材の確保は手に入れやすい。上手くいけば、克人や服部なんかの素材も手に入るからな」

 

「襲撃か?」

 

「体育館以外は、将輝とジョージの能力で破壊し、体育館内部を深雪の能力で凍結、真由美の狙撃能力で首を砕いて切断だろう」

 

「さっき、ソーサリアンブースターの工場を破壊って言わなかったか?」

 

克人が声を上げた。

 

「言っていない。盗み出しただけだ。代わりにダミー工場を置いてきた。黒幕を捕まえる為にね」

 

「そうなると、金曜に襲撃の可能性は大だな」

 

「克人達は身構えずに、普段通りの生活をしてくれ。罠は僕が張る」

 

「ダメっ!」

 

深雪が力強く抱きついて来た。

 

「一人で背負わないでください…置いていかないでください」

 

こんな僕の為に涙しれくれている。だけど…

 

「まぁ、なるようになるよ」

 

みんなに笑顔を振りまく僕。

 

------

 

お客さん達が帰った後、一人で作戦を練っている。深雪達の処遇は決めてある。それを実行すると、僕はまた禁固刑を受けると思う。今度は何百億年かな。あの真っ暗な空間で、思い出したくない記憶が、何度何度も流れて行く。精神いたぶり系の罰だ。

 

チームの人員配置を考える。なるべく、罰を喰らう人数を減らすように、配置していく。あぁいう罰は上に立つ者だけが喰らえばいいと思うし。

 

真夜に対して、日曜に師族長会議を魔法師協会横浜支部で開催してもらうよう、手配した。その場で最終処理をして、この世界の案件を終えようと思う。それまでに黒幕が不明な場合は、禁固刑明けに、再度出向だな…

 

-------

 

翌日、教室に入ると、レオとか幹比古とが寄って来た。

 

「生徒会長に立候補だってな、亘」

 

って…もう広まっているし。今度の日曜には離脱する予定なのだが…

 

「克人が推薦なんかするから…」

 

「部活連の会頭の推薦か…二科生なのにって反発が少ない訳だな」

 

レオが頷いている。はぁ?何で?

 

「五分五分ですよ、亘さん」

 

って、美月。

 

「生徒会長の後継指名が有利で無いのか?」

 

「九校戦での活躍があるから」

 

って、幹比古。そうなのか…そうなると、改変項目が増えるなぁ…

 

 

昼休み、食堂へ行くと、後ろ指差され捲りである。「あの二科生だ」って、感じだ。克人のやつめ…

 

放課後、立候補者の挨拶があるらしいが、学校の事は克人におまかせして、帰宅部の活動。明日には流通経路に乗せたいビデオの編集作業が優先だ。

 

 

水曜日、学校を休み、ビデオ拡散開始した。魔法師協会とエリカのアニキへ摘発情報として横流しもしておく。アニキは七草家の別荘の位置を総て割り出しており、風景やビデオの情報部分に書き込まれているGPSデータから場所を特定してようだ。アニキと相談をして、金曜の夜に踏み込んでもらうようにした。捕獲の為の援軍も少し出さないと、きついかな?

 

 

木曜日、学校の食堂を満喫。デザート系の全制覇を目論み、次々に食べまくる。

 

「タンパク質とか野菜は摂らないで良いのですか?」

 

深雪が心配そうに声をかけてくれたけど、今は糖分が優先だ…

 

 

運命の金曜日が訪れた。僕は護り切れるだろうか。深雪、達也、エリカ、雫、ほのかに、体育館内でパニックにならないように、支援してもらうことにした。パニックになって、体育館を出ると、たぶん護れないから。

 

午後から全校生徒は体育館に集合だそうだ。

 

「亘…死ぬなよ」

 

克人から声が掛かった。

 

「日曜まで生きる。だから、心配するな!」

 

克人は体育館の中に入っていく。僕は体育館の屋根の上で待機する。

 

 

体育館の中から、選挙開始のアナウンスが聞こえる。投票前に候補者達の選挙演説があるらしい。僕の代理に克人がアナウンスされ、響めいている。まぁ、僕自身は選挙運動をまるでしていないし。落選確実だと思う。そして、フィンから連絡が入った。

 

『敵を確認。体育館を中心に、半径1キロにジョージの覆製体を確認。校門前に不審なトラックが横付け、達也、深雪、将輝の覆製体を確認…数は…それぞれ50です』

 

50ずつ…真由美を入れて5種体だと250も有るのかぁ…どうする…最適で確実な方法を考える。そして…むじゃ君を召喚した。

 

「深雪とエリカを想う気持ちを供物として差し出す。だから、この世にある覆製体をすべて、消し去ってくれるか?」

 

「そんな物貰えないよ~」

 

むじゃ君が困った顔をした。

 

「足り無いか?じゃ、雫、ほのかに寄せる想いを供物として差し出す。だから、聖杯の能力の無効化も頼む」

 

僕が彼に今差し出せる物を提示した。戦う上で必要では無い物だ。生きる上で必要かもしれないけど、この際、護り切ることが優先だから。

 

「ダメだって…せっかく芽生えた愛する気持ちを…」

 

「頼むよ!時間が無い!しょうがない…奥の手だ!」

 

『願望達成』を発動した。むじゃ君の意志にかかわらず、彼の能力を行使する能力だ。既に無数の魔法陣が空一面を埋め尽くしていた。発動までに消滅出来無ければ、危険だ。

 

僕を中心に光り輝くドームが発生していき、魔法陣を飲み込んでいく。覆製体達も飲み込んでいく。暫くすると、この星全体を光り輝くドームが飲み込んだ。

 

光り輝くドームが失せると、覆製体の気配は消えた。僕は、次の現場へと転移した。

 

 

 

---克人---

 

体育館に衝撃が走った。外の様子がおかしいことに皆が気づいた。前もって配置した部活連の守備隊の者達が、出入り口をガードして、誰も外へ出さないようしていた。

 

「おい!落ち着け!一高生としてのプライドを胸に、平常心で行動しろ!」

 

俺はマイクを手にして、叫んだ。

 

「これが、亘からのメッセージだ。亘は一人でここを護ってくれている。俺達、亘を支持する者達は全員、亘に命を預けている。九校戦時のアイツの活躍を思い出せ!以上だ」

 

俺はマイクを置き、壇上にある椅子に座った。その時、無線機から亘の声がした。

 

『出ても大丈夫だ。殲滅した。僕は次の現場へ向かう。後は克人に任せる』

 

亘からのメッセージは俺のだけでは無く、守備隊全員の無線機から聞こえ、体育館中に聞こえたと思う。

 

 

 

---シュウ---

 

失った物の大きさはわからないけど、エリカのアニキと合流した。

 

「どうだった?」

 

「この世にある覆製体は総て殲滅した。だから、中には将輝とジョージだけだ」

 

僕の言葉を受けて、警察が踏み込んだ。室内には、深雪と真由美が突然消滅したことで呆然と立ち尽くす将輝とジョージがいた。僕は二人の額に能力無効の札を貼り付けた。貼り付くと同時に蒼い炎で燃えていった札。効果があった証拠だ。効果がない場合は赤い炎で燃えてしまうから。

 

「これで、二人は一般人と同じです」

 

「神代家のお札か?」

 

アニキの問いに頷く僕。こうして、将輝とジョージは保護された。

 

------

 

その日の夜、白音とレイヴェルに怒られた。

 

「何で…そんな大切な物を供物に出しちゃうんですか?」

 

白音がマジで怒っている。

 

「信じられません。深雪さんと一緒にいるって、約束したんじゃ無いですか?エリカさんはどうするんですか?」

 

レイヴェルも恐い顔だ。

 

「他に差し出せる物が無かったから…」

 

「「信じられない…」」

 

「あぁ、日曜にケリを付けて、禁固刑受けてくれるわ」

 

「「何か、やらかすんですね!」」

 

二人の怒りの炎に燃料を与えた様だ…更に怒りのオーラが増大する二人…タジタジな僕。

 

 

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