プロローグ 「つくれるエロゲー」
「あ・・ふん・・」
放課後の教室に似つかわしくないなまめかしい声が流れる。
「ふふ、もう濡れてるじゃないか。」
「いや、やめて」
「そのわりに体は正直だぞ」そういってパンツをめくり、秘所に指を入れた。
「ああ・・・」女は官能的に体をくねらせた。
秘所や乳房を大いに楽しみ、結合のときを迎えた。
「いれるぞ。」
「う、うん。」
男根を取り出すと、ゆっくりと挿入していく。そして膜を破ろうとしたところで、愉しげに男はいった。
「とうとうお前を女にしてやる時が来た。教え子を女にするこれこそ教師冥利に尽きる。」
女はそれに対して諦観と悲劇、歓喜がないまぜになった表情で呼吸をするだけだった。
「喜んでいるようだな。さあ、卒業式だ!!」
勢いよく分身を操り、処女は女へと姿を変えた。
それからはただ欲望に忠実な牡と牝に変わろうとする女子がいるだけだった。
~~
「こんな遅くまで、何をしているの!?」
怒声によって俺はエロゲー(鬼畜教師の女子高生調教日誌)の世界から現実に引き戻された。恐怖を感じながら振り向くとそこには母親が立っていた。
「別に」
そっけなく俺は答えた。母親は当然ながら怒り出した。
「別にって何よ!こんなゲームばかりしているからあんたは就職できないのよ!」
ああ、また始まった。時計を見ると11時を回ったころだった。説教が終わるのはおそらく1時ごろになるだろう。母親の説教を聞き流しながらなぜこんな立場にいるのかについて振り返りはじめた。
俺の名前は小南遊。24歳フリーターだ。2年前まで俺は大学生だった。2年前の今頃は就職活動にいそしんでいた。昔から俺はゲームにあこがれていた。いや結婚をしていたといってもいい。小学、中学、高校、大学とゲーム三昧。24時間ゲームをしていたといってもいい。もちろん将来の夢はゲーム会社で働くことだ。両親からは反対にあったが、俺は自分の意思でゲーム会社に働くことに決めた。しかし就職活動は困難を極めた。子供のころからゲームばかりしていたのだ。当然まともな学歴を持っているはずがない。そしてここ日本は学歴社会であり、それはゲーム業界でも例外ではない。私立三流大学出身の俺をほしがる会社などそう見つかるはずもないのだ。面接では罵倒されたり、履歴書を目の前で破かれることもあった。時には朝の6時から面接会場に向かったり、一日に十以上の面接をこなすこともあった。その甲斐あってようやく誰も名前を知らないようなおもちゃ会社に内定が決まった。しかし・・・。
「大体、あんたは何でもかんでも不況のせいにして!」
実際にそうだろ。俺が就職する前に行われたアメリカ大統領選で大統領になったやつが超愛国主義者だった。そいつが「アメリカの不況は日本製が原因だ。特にゲームがそうだ。ジャポニメーション?そんなもの認めん!アニメにせよなんにせよ、アメリカ製だ!」とか言いだして日本の輸出品には100%、特に日本の娯楽商品に300%もの関税をつけて、日本のゲーム業界をはじめとする業界が大不況。そのために内定の決まった会社がつぶれたんだろうが。
「妹はそんなことなかったわよ!大体あんたはいつも!」
またこれだ。内心で舌打ちしつつ、話を聞く。妹は確かに優秀だよ。俺を反面教師にしたのか、勉強もスポーツも子供のころから頑張って東大に合格、大手一流企業にも就職を決めている。愚鈍な兄と優秀な妹。比較されるにはもってこいというわけだ。そうこうしていくうちにどうやら時間が過ぎたようで話は佳境に入っていった。
「とにかく!」母親は顔を赤らめせて言った。
「就職が決まるまではゲームはやめなさい!もしゲームをしているところを見つけたらゲームを全部捨てるわよ!いいわね!」
言うだけ言うと母親は出て行ってしまった。
「やれやれ」
時刻を見るともう1時を回っていた。もう寝るかと思いつつ、振り返りをまとめる。
大学卒業後も現在に至るまで就職活動を継続しているが、不況はなかなか収まらず就職できないままでいる。もちろん業種のこだわりは捨てているが、新卒でないためなかなか就職できない。時間を持て余すようになり、その時間を埋めるためにハローワークに行くなど就職活動と睡眠をとるとき以外はゲームをしたり、you○ubeやニ○ニ○動画を観たり、エロゲーをしたりして過ごす日々。なかなか就職できないことに家族はいらだち俺に対する風当たりが強くなる日々。
「これからどうすればいいんだろう」
ハローワークで仕事を探し、思うような仕事が見つからずその帰り道、俺は不思議な老婆に出会った。その老婆の容貌は顔がしわくちゃで露天商をしていた。そして老婆は「つくれるエロゲー」を売っていた。
俺はゲームが好きなこととゲーム会社に就職しようとしていたことからゲームに対する知識(それはエロゲーも例外ではない)はかなりのものだと思っていた。その俺が知らないゲームが存在するとは。俺は興味を持ち、老婆に尋ねた。
「このゲームどこが作ったのですか?」
老婆は答えた。「私が自分で作ったものです。」
自主制作か。ならば俺が知らないわけだ。ひとつ疑問が解消されたが、また新たな疑問が生まれた。だから次にこう尋ねた。
「「つくれる」ってどういう意味ですか?」
「「つくれる」という意味で御座います。」
「だからその「つくれる」って?」
「それはお買い上げになった人だけが解るのでございます。」
その話を聞いて興味を持った。
「おいくらですか?」
「1000円で御座います。」
エロゲーとしては安いが、自分にとって決して安いといえる金額ではなかった。就職が決まるまではと親からはいやいやだろうが、お小遣いが出されていた。月1000円。次の小遣いの日まで一週間以上残っていた。ゲームを買えば、あと一週間はほしいものを我慢せねばならない。「つくれるエロゲー」を見てみた。それはプラスティクのケースに入った無地のCD-ROMだった。そのCDを見ていくうちに何とも言えない感情が起こってきた。このゲームを買わなかったら後悔する、そんな感情である。おれは少し悩んだ末にこの感情に従うことにした。
「じゃあ、買います。」
「お買い上げありがとうございます。」
買った瞬間CD-ROMが光った気がした。
家に帰ると家族が誰もいなかったので俺は早速、「つくれるエロゲー」を読み込んで起動してみることにした。するとはじめに現れたのは次のような表示だった。
「このゲームはあなただけの18禁ゲーム通称エロゲーをつくれる作品です。お手数ではございますが以下の質問に答えていただきます。」
「エロゲーのもとになる世界観を設定してください。小説やドラマなどのタイトルを入力していただければ結構です。」
なんだこのゲーム、俺は驚いた。自分だけのエロゲーだとそんなものが作れると思うのか?どれだけ高度な技術を要すると思っているんだ。俺は騙されたと思ったが、まあ1000円投資したんだし、もう少し茶番に付き合おう。しかし、いきなり困る質問がきた。世界観をどうするかだ。さてどうするかと思うと趣味の入った箱が目に入った。遊戯王OCGの入った箱である。遊戯王そのためこの項目には「遊戯王」と打ち込むことにした。
すると次に出てきたのは「遊戯王のどのシリーズを中心に話を展開しますか?」と出てきた。少し悩んで俺は「遊戯王GX」と打ち込んだ。
次の質問は主人公の名前だった。ここで俺は驚いてしまった。自分の名前が正確に書かれていたからだ。もしかするとこのゲーム本物かも半信半疑になりながら「小南遊」と書き込み次の質問に移った。
その後、遊戯王のルール・カードプールや主人公のステータス、攻略キャラの質問などが続いた。質問の一例をあげると「他シリーズのキャラを登場させますか」、「手持ちのカードはどうしますか」、「主人公のステータスはどうしますか」、「主人公の開始年齢は何歳にしますか」などだ。
こうした質問が何時間も幾度となく続き、集中し続けて作業をしていたころ、ようやく最後の質問に差し掛かった。その質問は「このゲームを実体験として経験することができますが、経験しますか?」だった。これをみて理解するのに少しの時間を要した。ゲームを実体験として経験するなんてできるわけがないだろ。しかし、俺はこれまでの質問からこのゲームにいくばくかの恐怖を感じ、念のためにこの質問に「No」と答えようとした時、
「遊!何やってるの!!」
俺の名を呼ぶ母親の声が聞こえた。おそらく俺がパソコンに向かっていたのでまたゲームをしていると思ったのだろう。面倒なことになった。この場を取り繕うと母親に向かって、体を動かした瞬間。
「カチッ」
その拍子にマウスを動かし、マウスをクリックしてしまった。驚いて思わずパソコンを見返した。
そのクリックは「Yes」を指していた。
それを確認すると俺の視界が急回転し始めた。世界が回っている。平衡感覚が失われたようだ。思わず、吐きそうになる。その様子をみて母親が血相をかえて駆け寄ってきて、手を伸ばす。しかし、手は空を切り俺は家から、いやこの世界から消えてしまった。