宮田ゆまという新たな攻略キャラと知り合いになってから数日たったある日、俺はクロノス教頭に呼ばれた。
「話ってなんですか?クロノス先生?」
正直、呼ばれる理由が思い当たらない。俺の学力は優秀な成績の授業と拙劣な成績の授業とに分かれている。そのため、先生には優秀なところがあるがやはりドロップアウトボーイだ、と陰口をたたかれてもいる。しかし、クロノス先生の受け持ちはデュエルに関する授業だから俺は優秀かつ誠実に授業に参加している。だから呼び出される理由はないはずなのだが。
「シニョール遊、アナタにーは今晩校内の見回りをお願いしたいのデスーノ。」
「見回り?」
「そのとーりデスーノ。普段、校内を見回ってくれている警備員の牛尾さーんが急病にかかってしまったのデスーノ。ですから校内を見回ってくれる人が必要デスーノ。」
「ですが、それなら普通は先生方や他の警備員の方がすべきことなのでは?」
「それでは都合が悪いのデスーノ。」
「は?」
「いやいや、こっちの話デスーノ。とにかくアナタには校内を見回ってほしいのデスーノ。」
・・・いかにも怪しい話だが、ゲーム的にこれはイベントだろう。だったら受ける以外にないな。
「わかりました。お引き受けいたします。」
「オーウ。サンキューゴルゴンゾーラーチーズ。」
というわけで校内の見回りである。他の警備員さんとの兼ね合いもあるので俺の受け持ちはごくわずかだが見回る箇所が問題である。俺の受け持ちは廃校舎の見回りである。廃校舎はかつて特待生寮だったが、生徒たちが行方不明になる事件が頻発し、今や立ち入り禁止となっている。原作では天上院明日香の兄である天上院吹雪も行方不明者の1人だった。そのことが原因となり、天上院明日香が人質に取られる形で十代とタイタンがデュエルするというのが原作であった出来事である。しかし、この世界では天上院吹雪は「フブキング」という二つ名を持って現在アメリカ・アカデミアに留学している。そのため、これから廃校舎で起こるであろうことは原作をもとにしたオリジナル展開になる可能性が高い。そのことを考えつつ、廃校舎を見回ると早速、人に出くわした。
「何やってんの?」
そこには十代、翔、前田隼人の不真面目仲良し三人組と原麗華という真面目な生徒会長がいた。話しかける前の様子を見るに、会長が3人を説教しているようだったが。
「あ、遊。」
「・・・小南さん。」
十代は能天気に、麗華は不機嫌そうに話しかけてきた。とりあえず、なにがあったのかを聞くことにした。
・・・話を聞いたが、要するに十代達は肝試しをしに、麗華は外出時間であるにも関わらず、外に出た生徒を追ってここに来たらしい。
「・・・それにしても、小南君はひどいです。」
珍しく恨み節を言われた。
「私との勝負に負けて以来、答えられるかはともかくとしてすべての授業を一応真面目に受けたり、校則違反の生徒に注意したり、与えられた仕事はきちんとこなすなどして生徒たちの模範になるよう頑張ってきたじゃないですか。それなのに校則を破って肝試しをするなんて。」
どうやら、俺も十代達と一緒に肝試しに参加するつもりだったと思われているようだ。俺は会長の誤解を解くことにした。
「誤解ですよ。俺がここに来たのは警備のためですよ。」
「警備?」
「ええ、クロノス先生に頼まれたんです。警備員に急病になった人が出たので代わりに警備してほしいと。」
その話を聞くと、麗華は表情を緩めた。
「そうだったのですか。すみません、そうとは知らずに失礼なことを。」
「いえ、いいですよ。ところで疑問なのですが。」
俺は麗華がここにいる説明を聞いてからずっと疑問に思っていることを質問した。
「よくわかりましたね、十代達が肝試しをするために時間外に外出しているって。」
女子寮とオシリスレッドの寮は距離がそれなりにある。普通だったらレッドの生徒が外出したことに気が付かないはずなのだが。そんな俺の疑問には麗華ではなく、十代が答えた。
「ああ、そのことならたぶんツァンと彰子のことだと思うぜ。俺があの2人も誘ったんだ。」
「その通りです。私は彼女たちが時間外に外出しているのを見てここに来ました。」
十代達ではなく、ツァン達が外出しているのを見てここに来たのか。それなら納得がいく。疑問は解消された。しかし、また別の疑問が浮かんだ。
「それでその2人はどこにいるんだ。」
「さあ、外に出たはいいけど結局怖くなって寮に帰っちまったんじゃないか?」
「それはあり得ません。女子寮からここまでは一本道です。もし女子寮に戻ろうとするならば、私とすれ違ったはずです。」
・・・じゃあ二人はどこに?そんなことを考えていると悲鳴があがった。廃校舎からであった。そしてその声は行方の知れない二人のものだった。
「あの声は?」
「行ってみよう!!」
俺は翔の疑問に答え、廃校舎へ向かった。俺の後には4人が続いた。
「ツァンさん、宇佐美さん!!」
悲鳴があがったところに向かうとそこにはとらえられ、棺に入れられたツァンとウサミン。そしてその二人の前にマスクをかぶった男がいた。男は独特の声色で俺たちに話しかけてきた。
「お前たちが小南遊と遊城十代かぁ。わぁが名はタイタン。闇のデュエリストだ。私はお前たち二人を闇へと引きずり込むためにやってきた。さあ、俺とデュエルしろ。」
その言葉を聞き、俺はディスクを構え、対峙した。それに対して十代達から待ったがかかった。
「待てよ、遊!アイツは俺を狙ってるんだ!俺にやらせてくれ!」
「だめだ、十代。今の俺は警備員だ。不審者をとらえるのが今の俺の仕事だ。」
「だったら、私にやらせてください。私は生徒会長です。あなたを含めた全生徒を守るのが私の仕事です!!」
「だめですよ。会長。」
「どうしてですか?」
俺は一呼吸おいて、できる限りかっこよく見えるよう努力していった。
「会長のようなか弱い女性を危険な目に合わせるわけにはいきません。」
「・・・!!」
・・・相当利いてるな。うぶそうだからな、会長。こんなことあまり言われたことないんだろう。それはそれとして今は二人を救い出すことに集中しますかね。ここで負けて攻略失敗になったら笑えるどころの話じゃないからな。そのことを考慮したうえで俺は「すべてのカードケース」からデッキを取出し、ディスクにセットした。
「別れは済ませたか?これからお前は闇に飲まれるのだからな。」
「なんで俺が別れをする必要があるんだ?これからお前を叩き潰すってのによ?」
互いに舌戦を繰り広げる。そして・・・。
「「デュエル!!」」
「私の先行だ。魔法カード『愚かな埋葬』を発動。デッキから『トリック・デーモン』を墓地に送る。そして『トリック・デーモン』が効果によって墓地に送られたことにより、俺はデッキから『デーモンの将星』を手札に加える。そして『デーモンの騎兵』を召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ。(この伏せカードは『激流葬』奴がモンスターを大量展開してきたとしてもこのカードで一掃でき、しかも『デーモンの騎兵』の効果で『トリック・デーモン』を蘇生できる。次のターンに『デーモンの将星』を特殊召喚し、一気に攻める。)」
・・・大体考えていることは分かるが、俺の手札にはこのターンで勝負をつけることができる手札になっている。残念だったなタイタン。
「俺のターンドロー。手札から『打ち出の小槌』発動。このカードと手札2枚をデッキに戻し、3枚ドローする。そして『魔術師の書庫』を発動。デッキから『苦渋の選択』を手札に加える。」
『打ち出の小槌』(アニメ遊戯王GX原作効果)
通常魔法
発動しているこのカードと手札を任意の枚数選択し、デッキに戻しシャッフルする。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。
『魔術師の書庫』(漫画版遊戯王GX4巻オリジナルカード)
魔法カード
デッキから魔法カード1枚を手札に加える。デッキをシャッフルする。
ちなみに漫画版の魔法カードはスペールスピード2、つまり速攻魔法扱いだ。連続して現実世界では規制待ったなしのカードを連発する。そして現実世界が生み出した壊れカードによるコンボをお見舞いしてやる。
「手札から『苦渋の選択』を発動。選択する5枚は『クリッター』3枚、『黒き森のウィッチ』2枚だ。さあ選べ。」
どっちを選んでも無駄だがな。
「私は『黒き森のウィッチ』を選択する。」
「いいだろう。『黒き森のウィッチ』1枚を手札に加える。そして墓地に送られた『クリッター』3体と『黒き森のウィッチ』の効果発動。『クリッター』の効果により、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加え、『黒き森のウィッチ』の効果により守備力1500以下のモンスターを手札に加える。この効果により、デッキから『封印されし右腕』、『封印されし左腕』、『封印されし右足』、『封印されし左足』を手札に加える。」
「【エクゾディア】だと?」
『クリッター』(Vol.6収録時効果)
効果モンスター ☆3 闇属性 悪魔族
攻撃力1000 守備力 600
このカードが墓地におかれた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、デッキを切り直す。
『黒き森のウィッチ』(Vol.6収録時効果)
効果モンスター ☆4 闇属性 魔法使い族
攻撃力1100 守備力1200
このカードが墓地におかれた時、自分のデッキから守備力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、デッキを切り直す。
黎明期のテキストはカードプールが整っていないこともあって今から見るとおかしなことしか書いていない。墓地に送られただけで好きなカードサーチとか今から見てもふざけてるな。この戦術は黎明期に普通にあった戦術だけどな。俺はこの戦術を初めて食らった時、どれだけ衝撃を受けたことか。・・・もう考えることも面倒になってきたし、終わらせるか。
「俺はこのままエンドフェイズに入る。エンドフェイズ時の枚数調整により、今10枚ある手札から4枚捨てる。捨てた中に入っていた『黒き森のウィッチ』の効果発動。デッキから『封印されしエクゾディア』を手札に加える。今、封印されし5枚のカードが全て揃った。エクゾディア召喚で俺の勝ちだ。」
怒りの業火エクゾードフレイムがタイタンを包み込んだ。
気絶したタイタンを縛り付けた後、二人のもとに向かう。二人は眠っているだけだった。そしてしばらくすると目を覚ました。何があったのかが解っていない二人に麗華が起こったことを説明した。その結果、二人の俺を見る目が今まで以上に好意と尊敬を帯びるようになった。実にいい傾向である。
それからは、俺は二人に対する説教に燃えている麗華に、二人はつかれているんだから優しく接してあげるように頼んだ後、女性陣3人と別れた。そして十代達3人と一緒にタイタンを不審者として警備員室につきだしに行った。タイタンを突き出しに行くときにはもうあたりは日の光が差し始めていた。これまでに述べてきたことが廃校舎で起こったことである。