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俺はデュエルを始める前にパートナーであるウサミンの様子を見た。ウサミンは緊張しまくっていた。手ががくがく震えていた。練習なのだからそんなに緊張する必要はないと思うので声をかけようとして止めた。緊張を余計にさせる気がしたからだ。そのため何も言わず、対戦相手である二人を見た。
ツァンはどこか上の空だった。そして何かこの場にないものを恐れているように見えた。隼人はやる気十分だった。しかしそれが逆に空回りにならないか心配だった。要するに俺以外の3人は全員に不安が感じられた。そうした中デュエルを始めた。
「「デュエル。」」
「デュ、デュエル。」
「・・・デュエル。」
4人それぞれ自分の感情にあった声を出した。
「先行はそっちに譲るよ。」
「じゃあ、ツァンが先にプレイすればいいんだな。」
「・・・・・・」
「ツァン?」
「・・・え、えーと何。」
「君が先にプレイするんだな。」
「わ、わかったわ。私のターン。」
いつもとは違う表情と口調でツァンはプレイする。
「私は『真六武衆‐カゲキ』を召喚。効果で『真六武衆‐キザン』を特殊召喚。・・・」
うん?制裁タッグデュエルのルールでは1ターン目は全てのプレイヤーが攻撃できない。ならば『真六武衆‐カゲキ』は次のターンに『六武衆の影武者』や『六武の門』を引いたときに備えて温存しておくべき気がするのだが。それに手札がツァンにしては悪すぎる。『真六武衆‐シエン』が1ターン目で出せないなんて。そう考えているとツァンの表情がしかめっ面に変わった。あの表情を見るにどうやらプレイミスのようだ。多分、『真六武衆‐シエン』を出せる手札だったのにプレイミスをしてしまったのだろう。ツァンは表情を少し戻すとターンを進めた。
「・・・ターンエンドよ。」
ツァン・ディレ 手札3枚
場:『真六武衆‐カゲキ』、『真六武衆‐キザン』
「じゃあ、今度はこっちの番だ。宇佐美さん、先にやっていいよ。」
「は、はい。私のターンドロー。」
「宇佐美さん、このルールでは1ターン目は誰もドローできないよ。」
「あ、あああ。すいません!すいません!」
ウサミンはとてもあわてていた。このあわてっぷりは入学試験のときとそっくりだ。あのときも間違えてドローをしようとして、試験官に指摘されたっけ。あのときは指摘されてからは緊張を取り除いて見事なプレイをしたけれども今回ははたして?
「わ、私は手札から『レスキューラビット』を召喚。そして効果発動。デッキから『セイバーザウルス』2体を特殊召喚します。そしてこの2体でオーバーレイ。太古の生命よ、悠久の時を得てその姿を昇華せよ!エクシーズ召喚!ランク4『エヴォルカイザー・ラギア』。」
いきなり、エースモンスター召喚か。いつも感じることだがヒロインキャラはどうやらドロー運が相当いいらしい。これが補正というやつだろうか?それはそれとして『エヴォルカイザー・ラギア』を出したということは後はカードを伏せてターンエンドかな?
「さらに手札から『D・D・R』を発動。手札1枚をコストに『レスキューラビット』を帰還させます。」
・・・は?
「そして『レスキューラビット』の効果を再び発動し・・・」
ピーピーピー。ディスクからエラー音が鳴った。
「・・・宇佐美さん。『レスキューラビット』の効果は1ターンに1度という制限がかかっているからもう発動できないよ。」
「・・・あ、ああ。」
ウサミンは失敗に気付いて情けない声を漏らした。デュエルディスクの機能で『D・D・R』のコストとして墓地に送ったカードを確認すると『神の宣告』だった。このターンは『神の宣告』を伏せ、『D・D・R』は次のターンにとっておくのが正しいプレイングだ。そうした正しいプレイングは普段のウサミンなら普通にやっていた。普段ならするはずのないミスをするなんて、相当緊張しまくってるんだな。そしてウサミンは情けない声のまま宣言した。
「・・・ターン・・・エンド・・・です。」
宇佐美彰子 手札2枚
場:『エヴォルカイザー・ラギア』、『レスキューラビット』(『D・D・R』装備)、『D・D・R』
「俺のターン。」
ウサミンのターンエンド宣言を受けて、隼人のターンとなった。
「手札から魔法カード『ブラックホール』を発動。互いの場のモンスターをすべて破壊するんだな。」
「エ、『エヴォルカイザー・ラギア』の効果を発動。ORUを2つ使い、『ブラックホール』を無効にして破壊します。」
うーん、ここで『ブラックホール』か。確かに悪くはないけれどもパートナーであるツァンの手札も考えて撃ったのだろうか。ツァンの手札が『ブラックホール』を撃たれてリカバリーできない手札である可能性を考えなかったのだろうか。そんなことを思っているとどうしても擁護しようのないプレイングがなされた。
「『デス・コアラ』を攻撃表示で召喚。」
「え?」
思わず驚きの声が出た。十代や麗華をはじめとするこの場にいる全員が驚きの表情になった。
「デ、『デス・コアラ』を攻撃表示で召喚だ?」
「アニキ、『デス・コアラ』ってリバースモンスターだよね?」
「その通りです。『デス・コアラ』はリバースすると相手の手札1枚につき400ポイントダメージを相手に与えます。」
「それを攻撃表示で出すなんて・・・あきれてものも言えないわ。」
「だ、だけどエクシーズやシンクロをするために召喚したのかもしれないわ?」
しかし明日香の好意的な意見は間違いであることが明らかだった。なぜなら、十代達の言葉を聞くと隼人は大いに動揺していたからだ。どうやらきちんと自分のカードを把握していなかったらしい。
「ターンエンドなんだな。」
隼人 手札3枚
場:『デス・コアラ』
「俺のターン。」
さてここまでの様子を見ていて大体、俺がどうすればいいのかがわかった。要するにツァン、ウサミン、隼人をを制裁タッグデュエルの日までにデュエルがまともにできる状態にすればいいんだ。なぜ、目前のデュエルに集中できない理由を調べて、デュエルに集中できるよう問題を取り除く。そうしたことを行なえば、ツァンとウサミンの二人は攻略できる。そのことを理解した俺はとりあえず、本人にデュエルに集中できない理由について聞こうと思った。その手始めとしてこのデュエルを速攻で終わらせることにした。
「手札から『シルバー・ガジェット』を召喚。効果で『レッド・ガジェット』を特殊召喚。『レッド・ガジェット』の効果でデッキから『イエロー・ガジェット』を手札に加える。手札から『二重召喚』発動。このターン通常召喚を2度行える。よって『マシンナーズ・ギアフレーム』召喚。『マシンナーズ・ギアフレーム』の効果でデッキから『マシンナーズ・フォートレス』を手札に加える。手札の『マシンナーズ・フォートレス』と『イエロー・ガジェット』を捨てることで『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚。」
『マシンナーズ・フォートレス』
効果モンスター
☆7 地属性 機械族
攻撃力2500 守備力 1600
このカードは手札の機械族モンスターをレベルの合計が8以上になるように捨てて、手札または墓地から特殊召喚する事ができる。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手の効果モンスターの効果の対象になった時、相手の手札を確認して1枚捨てる。
「そして『シルバー・ガジェット』と『レッド・ガジェット』でオーバーレイ。『No.39 希望皇ホープ』。さらにホープでオーバーレイ。『SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング』。」
『SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング』
エクシーズ・効果モンスター
★5 光属性 戦士族
攻撃力2500 守備力 2000
光属性レベル5モンスター×3
このカードは自分フィールドのランク4の「希望皇ホープ」モンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。このカードはX召喚の素材にできない。
(1):このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までカードの効果を発動できない。
(2):このカードが「希望皇ホープ」モンスターをX素材としている場合、このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、このカードのX素材を2つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ5000になる。
「ここで、ライトニング。」
「だけど、1ターン目は攻撃できないんだな。次のターンで。」
「甘いな。」
次のターンはない。
「手札から速攻魔法発動『時の女神の悪戯』。次の自分のターンのバトルフェイズにスキップする。」
「嘘!」
「そんな!」
『時の女神の悪戯』(速攻魔法・アニメオリジナルカード)
①:1ターンスキップし、自分のターンのバトルフェイズにする。
「『SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング』で『デス・コアラ』を攻撃。ダメージ計算時にホープ・ザ・ライトニングの効果発動。ORUを2つ取り除いて攻撃力を5000にする。」
ツァン・隼人 LP8000→4100
「がら空きになった隼人に『マシンナーズ・ギアフレーム』、『マシンナーズ・フォートレス』の順にダイレクトアタック。」
ツァン・隼人 LP4100→2300→-200
決着はついた。俺は勝利を確認するとゆっくりと3人を見て話しかけた。
「それじゃあ、反省会をしようか。」
隼人の問題は知識不足であるので原会長にデュエルの手ほどきをしてもらうことにした。隼人が原会長に手ほどきを受けている間、俺は残る二人と話し合うことにした。
「さて、まずは宇佐美さんから話そうか?」
「は、はい。」
「プレイミスしたけど緊張してたからプレイミスしたの?」
「は、はい。そうです。」
「どうして、緊張するの?」
「え?」
「入学試験のときも同じことがあったけど上手くできたじゃん。なのに今、どうして緊張してるの?」
「・・・怖いんです。」
「怖い?」
「ええ、もし私が失敗してしまったら私だけでなく、小南さんと原生徒会長も一緒に退学になってしまうんですよね。それが怖いんです。私が失敗して足を引っ張って二人に迷惑をかけてしまうことが。」
「そんなことないよ。宇佐美さんならできるよ。」
「気休めはよしてください!さっきのデュエルだって小南さん一人の力で勝ったじゃないですか。私が何の役に立つっていうんですか・・・」
なるほど、ウサミンの攻略ポイントはこれか。自分に対する自信の無さ。客観的に見てウサミンのスペックは相当なものだ。容姿、デュエルの実力、性格の良さ。どれを見ても一流と言っていい。しかし、ウサミンはその実力に対して自信を持っていない。ウサミンに自信を持たせてあげる。それがウサミンの攻略法か。俺は一歩前進した。そしてもう一歩前進するため、もう一人この場にいる人物に質問をした。
「ツァンはデュエルに集中できていなかった気がするけどどうして?」
「・・・関係ないでしょ、アンタには。」
きつい言葉を返された。普段の俺だったらここで引き下がっていただろう。だが、思い切って突っ込むことにした。
「関係なくはないよ。ツァンとは“友達”じゃないか。だったら友達が困っているときに相談に乗って問題の解決を手伝おうとするのは当たり前だよ。」
“友達”という言葉にツァンは大きな反応を見せた。これが攻略のキーワードなのだろうか。
「・・・アンタには関係ない。」
ツァンはそう言った。その顔には涙が宿っていた。
「本当に関係ないでしょ、放っといてよ。」
そういうとツァンはこの場から走って去ろうとした。十代がツァンを追おうとしたが手で制した。あのようすだと、そっとしておいた方がいい。俺はこれまでの行動からツァン攻略の方法を推理した。ツァンはおそらくなんらかの問題を抱えている。そしてその問題は一人で解決することは不可能なもの。誰かに助けてほしいとツァンは心の底で思っている。つまりツァンの抱えている問題をツァンから聞き出し、そして解決する。これがツァン攻略の条件。
俺は二人の攻略条件を理解した。そしてこれからどうやって二人の攻略条件を満たしていくか考えをめぐらせ始めた。