ツァンside
後、10分以内。後、10分以内でボクの未来が決まるデュエルが始まろうとしていた。どうしてこんなことに・・・。校長室からデュエル場に移動して、父の連れてきた護衛に囲まれながら、ボクはそんなことを考えていた。小南遊。アイツはボクを助けるためにボクと付き合っていると嘘をつき父と勝負をすることになった。そのことでボクが思ったことはどうしてそんなにボクのために動いてくれるのかということだ。確かにアイツとはこの学園でよく話をするし、制裁タッグデュエルをお互いに受けることになっている。だけどそれだけでボクを助けようとするなんて、どうして?視線をデュエル場に向ける。そこには父が悠然と立っていた。自分が負けることなど全く考えていないのだろう。その態度は余裕綽々だった。
「・・・少し遅いのではないですかな?校長先生?」
「・・・そんなことはないと思いますよ。ツァンさん。」
「しかし、いくらデッキを調整させてほしいといっても少し時間をとりすぎではありませんか?」
「デッキの調整で15分はむしろ短い方ですよ。」
「そうですかな。」
ボクの心を乱している小南は今、この場にいない。アイツの提案によってこのデュエルは【六武衆】のミラーマッチで行うことになった。そのため【六武衆】デッキを作るために15分の時間がほしいといったのだ。
「鮫島校長、もし15分以内に彼が戻ってこなかった場合、私の不戦勝ということでよろしいでしょうな?」
「・・・そうなるでしょうね。」
「その必要はないですよ。今、帰りましたから。」
アイツはデッキを手にしてデュエル場に帰ってきた。
「ふん、随分と遅かったじゃないか。」
「まだ10分も経っていないと思うのですが。」
「目上の人をどんな理由があれ待たせていることが遅いといわれてもおかしくないのだ。」
「なるほど、そうなんですか。」
小南は二つ、三つとうなずく。そして、あっさりと言う。
「じゃあ、そんなどうでもいいことは放っておいてデュエルを始めましょうか。」
「なっ!」
父は怒りに震えている。当然だろう。父がここまで馬鹿にされたことは久しくなかったのだから。
「え、えーと。それではデュエルをはじめます。かまいませんか、二人とも。」
「大丈夫です。」
「・・・いつでもどうぞ。」
鮫島校長の質問に二人は肯定の言葉を返す。そして校長が宣言する。
「それではデュエル開始ィー!」
「「デュエル」」
こうしてボクの運命をかけたデュエルが始まった。
「先行は私でいいな?」
「いいですよ。年功序列ということで。」
!まずい、父が先行をとるなんて。
「ふふ。それでは私のターンだ。・・・くっくく君はミスを犯した。私に先行を与えるというミスをだ。」
!あの発言。父にはもうあの戦術を使う手札が揃っているということ。
「手札から永続魔法を3枚発動!『六武の門』、そして『六武衆の結束』2枚だ。そして『真六武衆‐カゲキ』召喚。そして効果発動だ。」
終わった。ボクは目を閉じた。そして耳もふさいだ。これから起こることを見たくないから。これから父がどう動くのかが手に取るようにわかる。何度も身をもってわからされたことだから。
これからの父の行動は『真六武衆‐カゲキ』の効果で『六武衆の影武者』を特殊召喚。『六武の門』の効果を発動し、『六武衆の師範』と『真六武衆‐キザン』をサーチ、そして『六武衆の師範』を特殊召喚。『六武の門』の効果を発動し、2枚目の『真六武衆‐キザン』をサーチ。『真六武衆‐カゲキ』と『六武衆の影武者』で『真六武衆‐シエン』をシンクロ召喚。『六武の門』の効果を発動して3枚目の『真六武衆‐キザン』をサーチ。手札の2枚の『真六武衆‐キザン』を特殊召喚。『六武の門』の効果で『六武の門』から4個カウンターを取り除いて2枚目の『六武衆の師範』をサーチ。カウンターを残した『六武衆の結束』2枚の効果を発動し、デッキから2枚ずつ計4枚ドローして『ワン・フォー・ワン』と『死者蘇生』、『緊急テレポート』そして『ソウル・チャージ』(アニメ効果)を手札に加える。『真六武衆‐キザン』を墓地に送り、『ワン・フォー・ワン』を発動して『紫炎の寄子』をデッキから特殊召喚。『真六武衆‐キザン』と『紫炎の寄子』でシンクロ召喚『ナチュル・ビースト』。『死者蘇生』を発動し、『紫炎の寄子』を特殊召喚。『六武衆の師範』と『紫炎の寄子』でシンクロ召喚『ナチュル・パルキオン』。『緊急テレポート』を発動してデッキから『サイコ・コマンダー』を特殊召喚。『真六武衆‐キザン』と『サイコ・コマンダー』でシンクロ『ナチュル・ランドオルス』。そして最後に2枚目の『六武衆の師範』を特殊召喚。
・・・結局、場には『真六武衆‐シエン』、『ナチュル・ビースト』、『ナチュル・パルキオン』、『ナチュル・ランドオルス』、『六武衆の師範』、そしてカウンターが2個乗った『六武の門』。手札には『ソウル・チャージ』(アニメ効果)。つまりモンスター効果が1回防がれ、魔法、トラップが使えず、リカバリーも容易。そんな布陣を築かれてしまうのだ。
(そんな状況、いくらアイツでも、逆転なんて・・・。)
だからボクは目を閉じた。耳もふさいだ。これから起こる展開を目撃したくないから。アイツが負ける姿を目撃したくないから。友人の負ける姿を目撃したくないから。それなのに・・・。
「ツァン、俺のデュエルを見ろ!」
アイツはこの上なくよく通る声でボクを呼んでいた。それは耳をふさいでいたボクによく聞こえるものだった。ボクは思わず、アイツを見た。すると遊は笑っていた。
小南遊side
さあて、どうするかね。俺はツァンに呼びかけた後、展開されるソリティアを眺めながら今後の展開について考えた。
「ふふ。どうするのかね。この強固な布陣を!」
場には1ターンに1度魔法、トラップの発動を無効にして破壊する『真六武衆‐シエン』、デッキの上からカードを2枚墓地へ送る事で、魔法カードの発動を無効にし破壊する『ナチュル・ビースト』、自分の墓地のカード2枚を除外することでトラップカードの発動を無効にし破壊する『ナチュル・パルキオン』、手札の魔法カード1枚を墓地へ送る事で、効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する『ナチュル・ランドオルス』、そして相手のカード効果によって破壊されたとき墓地の「六武衆」と名の付くモンスター1体をサルベージする『六武衆の師範』。手札は1枚だが、あのにやついている表情を見た限りでは魔法カードであり、相当いいカードなのだろう。たぶん『ソウル・チャージ』のような。そこまで考えをめぐらせると視線をツァンの方に移す。
「・・・・・・」
ツァンは黙って俺を見つめていた。その表情は諦め、悲しみ、怒り、様々な表情が混ざっている。おそらく俺が『エフェクト・ヴェーラー』などの手札誘発を握っているからツァンに呼びかけたと思ったのに、手札誘発を握ってなかった。そのことに対して失望したのだろう。
『エフェクト・ヴェーラー』
チューナー・効果モンスター
星1/光属性/魔法使い族
攻撃力0 守備力 0
(1):相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
だからツァンは負の感情にとらわれている。さっきまでのような「無」の感情ではなく、一縷の希望を持った負の感情を。俺はそれを見て少し笑った。ツァンが感情を取り戻し始めたのはいいことだ。後は感情を「正」の方に帰させるだけだ。しかし、そのためのキーカードが手札にはない。引くしかないか。このドローで。
「いつまで長考しているのか。早くターンを進めたまえ!」
「わかってますよ。俺のターン。・・・ツァン。」
再びの俺の呼びかけにツァンはビクリと驚いた。それにかまわず、俺は続けた。
「俺を信じろ!」
ツァンはその言葉を聞き、かみしめた。信じてよいのか、逡巡している。表情を何度も変えた後、ツァンはいつもの仏頂面に多少の笑顔を混ぜた表情で返事を返した。
「うん、信じる。」
俺はその言葉で微笑み、宣言しながらカードを引いた。目当てのカードを。そして、俺はにやついているツァンの父親に言ってやった。
「ツァンのお父さん。」
「何かね?」
「どうやら俺にとってのお父さんにもなっていただけそうです。」
「なんだと!」
俺の発言にツァンが顔を赤らめて「ちょっと!」と叫んでいたがそんなどうでもいいことは無視して、プレイを続けた。
「まず、手札1枚をコストに速攻魔法発動。『超融合』!」
「馬鹿め!そんなもの『真六武衆‐シエン』の効果で・・・」
「このカードの発動に対していかなるカードもチェーンすることはできない。」
「なんだと!だが、いかなる融合モンスターが出て来ようともこの布陣の前では・・・」
「このカードは自分・相手の場に存在するカードを使って融合召喚を行うことができる。俺が融合素材にするのはあなたの場の『真六武衆‐シエン』と『ナチュル・ビースト』。」
「なんだと?!」
『超融合』(速攻魔法)
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。自分・相手フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
「融合召喚『旧神ノーデン』。特殊召喚成功時効果発動。コストで墓地に捨てた『真六武衆‐キザン』を特殊召喚。」
「レベル4が2体・・・エクシーズ召喚か!」
「レベル4の『旧神ノーデン』と『真六武衆‐キザン』でオーバレイ。ランク4『鳥銃士カステル』。オーバーレイユニットを2つ取り除く方の効果を使い、『ナチュル・ランドオルス』をデッキにバウンスする。」
『鳥銃士カステル』
エクシーズ・効果モンスター ★4 風属性 鳥獣族
攻撃力2000 守備力 1500
レベル4モンスター×2
「鳥銃士カステル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2):このカードのX素材を2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。
「『ナチュル・ランドオルス』の効果発動。手札の魔法カードを捨て『鳥銃士カステル』の効果の発動を無効にし、破壊する。」
「だがこれで手札はゼロになった。思う存分モンスター効果が使えるというわけだ。だがその前に魔法カードのパレードと行きますか。『六武の門』を発動。そして『紫炎の狼煙』を発動し、『真六武衆-ミズホ』をサーチ、そして『真六武衆-ミズホ』を召喚。『真六武衆-ミズホ』がいることで『真六武衆‐シナイ』を特殊召喚。ここで『六武の門』の効果を発動。カウンターを4つ取り除いてデッキから2枚目の『真六武衆‐シナイ』をサーチし、そのまま特殊召喚。『六武の門』カウンターが2個乗る。」
「貴様、【六武衆】の回し方が解っていないようだな。『六武の門』でサーチするのは『六武衆の師範』か『真六武衆‐キザン』にするべきだった。そうすれば『真六武衆-ミズホ』と『真六武衆‐シナイ』の効果、そして『六武の門』を組み合わせて私をワンキルできたものを。」
ツァンの父は侮蔑的な表情を浮かべる。それに俺はこう返した。
「だってつまらないでしょ。それじゃあ。」
「・・・なに?」
「ツァンをここに残すことを認めてもらうには、あなたよりも【六武衆】に習熟していることを示す必要がある、俺はそう思いました。なので俺の考える【六武衆】究極の戦術をお見せします。」
そして俺はさっきドローしたカードを発動した。
「永続魔法発動『マスドライバー』。」
『マスドライバー』(永続魔法)
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる度に、相手ライフに400ポイントダメージを与える。
「・・・ふん、モンスター1体をリリースするごとに400ポイントのダメージを与えるだけのカードが何だというのだ。」
「わからないんですか?このカードの価値に。」
俺はカードの価値が解っていない馬鹿を鼻で笑って行動に移った。
「『真六武衆-ミズホ』をリリースして『マスドライバー』の効果発動。400ポイントのダメージを与える。」
ツァン父:LP4000→3600
「続けて『真六武衆-シナイ』をリリースして効果発動。400ポイントのダメージを与える。」
ツァン父:LP3600→3200
「ふん、だが貴様の場の残りは『真六武衆-シナイ』1体のみ。例えそいつをリリースしたとしても私のライフは・・・。」
「おっと、それはこいつの効果を忘れてるぜ。『真六武衆-シナイ』の効果発動。墓地の『真六武衆-ミズホ』をサルベージする。」
『真六武衆-シナイ』
効果モンスター ☆3 水属性 戦士族
攻撃力1500 守備力 1500
自分フィールド上に「真六武衆-ミズホ」が表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。フィールド上に存在するこのカードがリリースされた場合、自分の墓地に存在する「真六武衆-シナイ」以外の「六武衆」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。
「そして『真六武衆-シナイ』が存在することにより『真六武衆-ミズホ』を特殊召喚。『六武の門』の効果発動。カウンターを4つ取り除いて墓地から『真六武衆-シナイ』をサルベージする。『真六武衆-ミズホ』が存在することにより『真六武衆-シナイ』を特殊召喚。これによって『六武の門』にカウンターが2個乗る。」
これによって『マスドライバー』を使う前の状態に戻った。そう元の状態に。これを見て父親の表情は見る見るうちに変わっていった。ツァンのつぶやく声が聞こえた。
「無限ループ。」
そう、これは無限ループだ。このまま『マスドライバー』で『真六武衆-ミズホ』、『真六武衆-シナイ』の順番でリリースし続ければ、ライフがいくらあろうとゼロにできる。そのことをこの場にいる全員が理解したのを確認して俺は言った。
「俺の勝ちだ。」