雪乃にハーレム建設を認めさせてから5日ほど経過した今日、麗華を待っている間にそれまでに起こったことを振り返ってみることにする。この間に起こったことで重要なことは3つある。まず1つ目は隼人との関係である。隼人の親父さんがやってきて隼人を連れ戻そうとした。しかし、隼人は拒否しデュエルで決着をつけることとなった。デュエルは隼人の勝利で終わった。理由としては隼人が「サモサモキャットベルンベルン」を唱えたからである。なぜ唱えることができたかというと俺がデュエルアカデミアに残りたいと考えている隼人に協力したことによってデッキ編集ができるようになったためである。このゲームでは男性でもキャラによっては攻略でき、BL的展開になることなく友情を育むことができるシステムとなっている。俺は今後のことを考えて隼人を友人として攻略したわけである。隼人はデュエルに勝利すると「遊のおかげでデュエルに勝てたんだな」と言ってきた。その様子を俺は内心嘲りながら社交辞令で「おめでとう。俺もうれしいよ。」と言っておいた。
2つめの問題としては俺がツァンと付き合っているといううわさが流れたことである。うわさがといっても、本格的なものではなく、話のネタに困った者が話を持たせるために使う程度のものではあるのだが。うわさが流れた理由としてはやはり、昼休みの食堂での出来事だろう。ツァンがあれだけ付き合っている臭を出しておいて青春を満喫しようとしている学生のネタにならないことはありえない。幸いにも食堂の隅での出来事だったために出来事を知っている人数が少ないことや俺、ツァン、雪乃などがうわさを真っ向から否定するなどをしたことでさほど広まらなかったのだ。そのおかげで俺はツァンという美少女を彼女にした男としてクラスで浮くという問題を抱えずに済んだ。しかし、この事件で俺は別に問題をきたすようになった。というのは・・・
「小南君もう来ていたのですね。すいません、生徒会の仕事で遅れてしまいました。それでは始めましょう。」
今、話しかけてきた原麗華などといった攻略キャラの攻略が難しくなったことである。
「違いますよ、もう。この問題はまずこの方程式を使って・・・」
「ああ、わかりました。つまり、答えはこうですね!」
「正解です。」
にっこりと麗華がほほ笑んだ。それを見て俺もにっこりとほほ笑み返す。さて俺たちが何をやっているのかというとご覧の通り勉強である。なぜ勉強嫌いの俺が勉強をしているかというとそれは当然麗華を攻略するためである。俺たちは今後、制裁タッグデュエルを受けることになっており、その結果によって麗華の運命も決まるわけである。つまり俺と麗華は運命共同体である。そのため俺が麗華を攻略する条件はただ単に制裁タッグデュエルに勝利する、ただそれだけのことなのだろう。いや、「それだけのことだった」というべきか。俺は彼女に視線を向ける。
「・・・それにしても意外ですねー。まさか小南君とツァン・ディレさんがね。」
ポツリと独り言をつぶやいた彼女に咳ばらいをした。すると「すいません」と申し訳なさそうに返事を返した。「いいですよ」と俺はそれに返事を返す。・・・これが最大の問題である。ツァンと付き合っている疑惑があってから今までに判明している攻略キャラの様子を調べたところ、当時あの場にいた人物である原麗華、宇佐美彰子、宮田ゆまはどうやら俺がツァンと付き合っていると考えているらしい。そのため、この攻略キャラを攻略することへの難易度が増した。その理由は単純でこの3人にとって俺と付き合うことがフリーの立場の男と付き合うことから親しい女性の彼氏を寝とることへと変わったからである。そのため俺がこの3人と攻略するには単なる攻略ルートより困難なルートを選択する必要が生じることになったのである。その分岐条件はメールで届くことになっており、今朝届いた。そして原麗華の追加攻略条件は今日から毎日原麗華に勉強を教わり、今度の月1試験で満点を取ることである。
「・・・それにしても、すごいですね。最初は小学生の掛け算すらできなかったのに今は2次関数までできるようになってますよ。」
「先生の教え方がいいですからね。」
「そんなことないですよ!あなたの頭がいいだけです!」
麗華は少し照れつつも冷静にそういった。まあ、そういった面はあるだろうな。俺は頭はさほど悪くなくむしろいい方であり、なおかつ勉強は嫌いだが、ゲームで負けるのはもっと嫌いな男だから。お前を攻略するためには大体のことはやってやるよ。
「ところで、どうしてわざわざ勉強をしたいと思ったんですか?」
そう麗華は尋ねてくる。俺の学業への取り組みを知っている人間からしたら当然の質問だろう。
「あ、もしかしてツァンさんにふさわしい彼氏になるためですか?」
おい、そんなわけないだろ。そう思ったが否定すればどうなるか大体予想がついたのでこう返した。
「ええ、それもあります。ですが、それだけではありません。レッド寮の寮長としてふさわしい人間になりたいと思ったからでもあります。」
「そうですか。それは素晴らしいことですね。」
生徒会長らしい慈愛のこもったまなざしをこちらに向けてきた。それをみて笑いながら俺は続けた。
「それに、原会長に認められることで、会長を恋に落としてみたいですし・・・」
「うん。小南君、笑えない冗談はやめなさい。」
目を笑わずニコーと笑顔を向けてきた。純粋に怖い・・・。
「全く、あなたという人は・・・」
このままだと「恋人をないがしろにするとはどういうことか」だの、「男女間の正しい関係とは」だの、男性経験一切なしに偏見にまみれた正論で批判をされそうだったので黙らせるために続けてこういってやった。
「すいません。冗談です。ですけど原会長に認められたいってのは本当ですよ。会長みたいな才色兼備な女性は見たことないですもん。」
「そうですか・・・」
そういって彼女はそっぽを向いた。あきれたのと照れを隠すためにだ。それからは何事もなく、勉強が進み時間が過ぎていった。
さて相当時間は飛んでしまったが、重要なことの3つ目である。それは今行っているデュエルに関係がある。俺はドローしたカードを見てため息をつき、カードをプレイした。
「光属性である『幽鬼うさぎ』と闇属性である『終末の騎士』を墓地から除外して『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を特集召喚。」
「そんな・・・。」
「バトルフェイズ。『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』で攻撃。」
開闢の2回攻撃が決まって俺の勝利となった。しかし、俺の気は晴れなかった。なぜなら・・・
「う、うう。」
ウサミンの攻略の目処が全く立っていなかったからである。
場所を購買に移して休憩をとることにする。飲み物を買ったのだが、トメさんに「遊ちゃんも隅に置けないね」と言われてしまった。
「はい。カフェオレだよ。」
「すいません。私なんかのために・・・」
「いいよ。俺たちタッグデュエルのパートナーじゃん。」
「パートナー。本当にいいのでしょうか。本当に私なぞがパートナーで。」
かなり自信を喪失していらっしゃる。まあ、攻略には固定イベントをこなす必要があるわけだからしょうがないといえばしょうがないんだよな。・・・その固定イベントもウサミンがツァンと俺が付き合っていると思ったおかげで相当難易度があがったわけだが。・・・こうしてみるとツァンを抱いて満足して寝ちゃってた俺を怒鳴りつけたくなってくるな。まあ、難易度がそれなりにあった方が面白いわけだが。
「あの・・・」
「?どうしたの?」
ウサミンが何か話しそうになっていたので話を聞こうとした。しかし・・・
「なんでもありません。」
「そう・・・何か話したそうにしていたけど。」
俺はさらに続けた。
「もし、何か話したいことがあるのなら遠慮せずにいっていいよ。俺で良ければ相談に乗るよ。」
「・・・とにかく失礼します。」
そういってウサミンは去っていった。さて、俺はカフェオレを飲みながら今後の展開について、つまり今夜起こるウサミンの攻略イベントについての攻略法を練り始めるのであった。