制裁タッグデュエルはアカデミア生徒全員が収容可能なデュエル場で行われる。制裁タッグデュエル自体は少なくとも数年に1回は行われるので開催されること自体は珍しいことではない。しかし、このデュエルにはクロノス先生に勝利した結城十代、カイザーの弟の丸藤翔、父親との決別で多くの生徒を巻き込んだツァン・ディレ、厳しいが正しく誰にでも全校生徒誰とでも分け隔てなく接する理想の生徒会長原麗華、そして遺憾ながらいろんな意味で話題になっている俺こと小南遊などが退学になるかもしれないという大きな話題があった。そのため、生徒たちは観戦する、しないの自由があったにも関わらず、全校生徒が出席するという異例の事態になった。そうした状況になるとはさすがに予想外だったのか、クロノス先生は多少の冷や汗を流しながら制裁タッグデュエルの説明を開始した。
「それでーワ。これから制裁タッグデュエルをはじめマスーノ。タッグデュエルを行うシニョーレとシニョリーナたちは勝てーば反省文のレポートを提出すればよし。負ければ退学デスーノ。そして3組のうち1組でも勝利できなかったスクーデリアがあった場合にはシニョリーナ麗華は退学デスーノ。このルールでデュエルを行いますが、よろしいデスーカ?」
俺たち7人は覇気を出しながら「はい。かまいません。」と返答した。
「よい返事デスーノ。それでーはデュエル相手の入場デスーノ。」
「そういえば、私も対戦相手が誰なのか聞いていませんでしたね。一体誰なんです?」
「シニョーレ校長。ソレーワ、私にもわからないノ。対戦相手を私が決めようとしたーら、アカデミア倫理委員会が待ったをかけてアカデミア倫理委員会が対戦相手を決めることになったーノ。」
「ええ、その通りです。」
アカデミア倫理委員会の女隊長は初対面で「美人だ」と思わせたその表情を一切変えることなく、淡々と言葉を続けた。
「この6人の実力にふさわしい対戦相手を選ぶのに苦労しました。ですが、この6人の相手にふさわしい6人のデュエリストを見つけることができました。」
「ほう。それは素晴らしい。」
「ソレデーワ。デュエリストの入場デスーノ。」
そうしてスモークが炊かれ、デュエリストたちが入場してきた。まあ、2人は迷宮兄弟であることが確定として後の4人は一体誰だ?そんなことを思いつつ、対戦相手を見てみるとあっけにとられた。いや俺だけでなく、十代、翔、ツァン、彰子、隼人、麗華、校長、クロノス、そして会場にいる生徒全員があっけにとられた。なぜなら対戦相手として出てきたのは迷宮兄弟、ダイナソー竜崎、インセクター羽蛾、そして神代凌牙と城之内克也だったからである。この面々に全員が唖然とした。そして校長が確認を求めて質問をした。
「・・・アカデミア倫理委員会さん、確認をとりますが彼らは?」
「はい。伝説のデュエリスト武藤遊戯と戦ったことのあるデュエリスト迷宮兄弟さん。プロデュエリストとして優勝経験のあるデュエリストインセクター羽蛾さん、同じくプロデュエリストとして優勝経験のあるデュエリストダイナソー竜崎さん、今年プロとなり新人王に輝いたデュエリスト神代凌牙さん、最後に伝説のデュエリスト武藤遊戯の親友にしてプロデュエリストとして活躍しておられる城之内克也さんです。」
要するにスキンヘッド兄弟を除いて普通の学生には到底かなうはずのない相手ということである。アカデミア倫理委員会の女隊長の説明が終わると場内がざわめき始めた。周囲から聞こえてくるのは生徒たちの「無理だろ・・・」、「勝てるわけない」、「終わったな」などといった声。当然教師も動揺していた。それも当然のことである。アカデミア倫理委員会に対戦相手を一任したとはいえ、さすがに退学がかかっているのだから生徒たちにも勝てるチャンスがあるような相手を選ぶだろうと思っていた。それが蓋を開けてみればかわいい生徒たちが達成できそうもない無理難題を押し付けられることになったのだから当然だろう。鮫島校長、大徳寺先生、根が悪人ではなくむしろいい人であるクロノス教頭などの大多数の教師は顔を青ざめさせ頭を抱えた。一方、2人の教師。つまり攻略キャラである鮎川先生と加藤先生は必死の形相で食ってかかった。
「さすがに無理があります!対戦相手を変更するべきだと思います!」
「私も加藤先生と同じ考えです!ものごとには限度というものがあります!」
しかし、女隊長は容赦なかった。
「ですが、すでにデュエリストの選定を私たちアカデミア倫理委員会に一任していただいた以上、それに従っていただくしかありません。それに生徒側には常に先行をとる権利を与えられる以上、あながち無茶でもないかと。」
この返答に対して2人は「ですが・・・」と反論を試みる。それを見て俺は「時間の無駄」だと判断し、2人を止めに言った。
「鮎川先生。加藤先生。おやめになってください。」
『小南くん・・・』
「アカデミア倫理委員会の方の言うとおりです。アカデミア倫理委員会が対戦相手を選ぶと決めた以上、僕たちがそれに従うのは当然です。それに反論の余地はない。」
「ですが・・・」
「だけど・・・」
それでも俺たち生徒を守ろうという意思を2人は示した。それに対して俺は言ってやった。
「安心してください。俺たちは全員勝ちます。退学になったりはしません。」
「ヒョーヒョッヒョ。俺たちに勝とうなんてよくもそんな口がきけるもんだねー。」
「・・・デュエリストは・・・少なくとも俺たちはデュエルには勝とうとして挑んでるよ。常にね。」
そういってみんなを見渡す。するとそこには勝利をめざして戦いに挑もうとする6人のデュエリストがいた。
「アニキが身をもって気づかせてくれたんだ。たとえモンスターを破壊できなくてもダメージは通る。フォーチュンテンペスト。」
制裁タッグデュエル初戦の戦いである。十代・翔ペア対迷宮兄弟は原作通り十代と翔の勝利で終わった。そのため場内は大歓声が沸き起こった。丸藤亮がクールさを保ちながら喜んでいるのが見えた。俺たちも2人を祝福した。ちなみに対戦あいては公平を期すためにクジで決められた。俺と彰子は2番目で相手は神代・城之内ペアである。
「それでーは小南・宇佐美ペアはデュエルフィールドに上がるのーネ。」
その言葉を受けて俺と彰子は壇上に上がった。彰子はいつになく瞳に強い意志を宿していた。
「お前たちこのデュエルに退学がかかってるんだってな。だけど、悪いけど手は抜かないぜ。それがデュエリストとしての礼儀だからな。」
「城之内さん、もちろんです。互いに全力を尽くしましょう。」
「ふん。その優等生的模範解答。イラっとくるぜ!」
こんな感じでデュエル前の口上を済ませ、彰子を見た。
「ウサミン。頑張ろう。」
「はい!」
いい返事だ。そしてクロノス先生が宣言した。
「それではデュエル開始ィ!」
『デュエル!!』
俺は機先を制することにした。
「それじゃあ、俺のターンから。このタッグデュエルでは1ターン目は全員がドローできないのでこのままメインフェイズに入ります。ふーむ。とりあえず魔法カード『かえんじごく』(ゲームボーイ遊戯王デュエルモンスターズ版)を発動。相手に5000ポイントのダメージを与える。」
『なに!?』
火炎の業火に2人は包まれた。そして絶叫が起こった。やっぱり強いな。『かえんじごく』。LP4000制だろうと8000制だろうと問答無用で投入すべきカードだわ。
城之内・神代ペア LP8000→3000
「そして『大くしゃみのカバザウルス』を通常召喚し、カードを1枚伏せてターンエンド。」
「ふん、いきなり壊れバーンカードを使いやがって、イラっとくるぜ!俺のターン。俺は手札から『ビッグ・ジョーズ』を召喚。魚族モンスターである『ビッグ・ジョーズ』が召喚に成功したことにより、『シャーク・サッカー』を特殊召喚。レベル3の『ビッグ・ジョーズ』と『シャーク・サッカー』をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ、『潜航母艦エアロ・シャーク』!」
『ビッグ・ジョーズ』
効果モンスター ☆3 水属性 魚族
攻撃力1800 守備力 300
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時にゲームから除外される。
『シャーク・サッカー』
効果モンスター ☆3 水属性 魚族
攻撃力200 守備力 1000
自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが召喚・特殊召喚された時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。このカードはシンクロ素材とする事はできない。
「そして『潜航母艦エアロ・シャーク』の効果発動。オーバーレイユニットを1つ使い、自分の手札の枚数×400ポイントのダメージを相手に与える。俺の手札は3枚。よって1200ポイントのダメージを与える。」
「それじゃあ、『エフェクト・ヴェーラー』で無効にします。」
「なんだと!?」
『潜航母艦エアロ・シャーク』(遊戯王ZEXAL原作効果)
エクシーズ・効果モンスター ★3 水属性 魚族
攻撃力1900 守備力 1000
レベル3モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する事ができる。自分の手札の枚数×400ポイントのダメージを相手に与える。
「クッ!ターンエンドだ。」
「気にするなよ!凌牙!次の俺のターンで挽回してやるぜ!」
しかし、彰子は非情な宣告をする。
「私のターンです。すいません、城之内さんあなたに次のターンはありません。」
「なに!?」
「私は手札から『魔術師の書庫』を発動。この効果で『予想GUY』を手札に加えてそのまま発動。デッキから『セイバーザウルス』を特殊召喚。そして『二頭を持つキング・レックス』を通常召喚。『二頭を持つキング・レックス』でオーバーレイ。太古の牙よ、現世によみがえり敵を狩れ!エクシーズ召喚!ランク4『エヴォルカイザー・ドルカ』。そして魔法カード『魔法再生』(原作効果)を発動して墓地の『かえんじごく』を手札に加えます。」
『予想GUY』(通常魔法)
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。
『魔法再生』(通常魔法 原作効果)
墓地の中から魔法カードを1枚手札に加える
このデュエルでは墓地は共通だ。だから俺の使用したカードも問題なく墓地から手札に加えることができる。容赦ないな。万が一、いや億が一『ハネワタ』を握っていることに備えるとかな。
「そして『かえんじごく』を発動。相手プレイヤーに5000ダメージを与えます。」
「うおおおおお!!!!!」
「イワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーク!!!」
城之内・神代ペア LP3000→0
場内は大歓声に包まれた。十代と翔のときよりも大きな歓声が俺たちを包み込んだ。それもそうだろう。伝説のデュエリストである城之内克也にタッグデュエルであるとはいえ、勝利したのだから。見ると彰子が駆け寄ってきた。俺はそれに応えるべく、近づいて彰子をしっかりと抱きしめた。
「ヒョーヒョーヒョー。君みたいなカワイコちゃんが僕に勝てるとでも・・・」
「うるさい!はやく構えなさい!!」
ものすっごく気がたってらっしゃる。どうしてこうなった。俺はそんなツァンの姿を見つつ、彰子に右腕をつかまれながら、麗華からの冷たい視線を受けていた。このようになった理由は単純である。俺と彰子が親しげに、それも恋人のように衆人環視の中で抱き合ったからである。大多数の人間はこれを親しい友人どおしの少々過剰なスキンシップと受け取ったが、そうではないものもいた。例えば、ツァンと麗華である。ツァンは早速、俺を詰問した。「どうして衆人環視のなかだきあったのか?」。それに対して俺は適当なことを言ってごまかそうと思ったが、その前に彰子が発言してしまった。「私が小南さんのことが好きだからです。その・・・男性として」。それを聞くとツァンは100%純粋で混じり気の一切ない笑顔で「へええ、それはよかったね。後でO☆HA☆NA☆SHIしよう。」といい、原麗華は普段俺に見せる好意はどこへやら、悪いことをした生徒を厳しくしかる口調で「ツァンさんというものがありながら、小南くんあなたは・・・」などと言ってきた。そして彰子は今までの消極的な性格はどこへやら俺の隣にいて右腕をつかむという行為に出たのである。このためにさらに2人の怒りはヒートアップした。そんな窮地を救ってくれたのはクロノス先生のデュエルの準備をするようにという言葉だった。どうにか、ツァンはこの場を離れてくれたのである。ただし、麗華から無言の圧力を加えられるという代償と十代、翔、隼人がこの場に居づらいという犠牲を払うことになったのだが。
「ふん、威勢がいいのも今のうちだ。女王様を泣く泣く、手放して作り上げたこの【甲虫装機】とついでに竜崎の【レスキューラギア】に勝てるわけがないからな。」
「『ついで』って言うな。それと情報アドを与えるなや!」
ツァンはそんな漫才をつまらなさそうに見ながら冷然と言った。
「ふん、ボクは忙しいの。だからワンキルしてあげる。」
場内はこのワンキル宣言にどよめいた。
「ヒョーヒョーヒョーヒョー。やれるものならやってみろ。彼氏を寝とられて悔しがるしかできていない君がもしもそんなことができたら僕たちはプロを辞めてやるよ!」
「羽蛾ァ!だから、勝手に決めんなや!」
「・・・・・・じゃあ、始めましょ。」
羽蛾のセリフを聞いたツァンの表情を見て俺は天を仰ぎ、思った。この世には天国と地獄が本当にあるのだろうか。そして処刑宣告を告げる声がなった。
『デュエル!!』
「ボクのターン。まずは・・・」
プレイングを見ていって俺はため息をついた。結果が分かったからだ。
「『マスドライバー』の効果発動。400ポイントのダメージを与える。」
「ヒョーヒョーヒョーヒョーヒョー。たかが400のダメージぐらい問題ないぜ!」
「何をいっているの?」
「ヒョ?」
「まだボクのメインフェイズは終わってない。」
そういってツァンは俺がしたように無限ループコンボを実行した。それは「ドロー!モンスターカード!!」を彷彿とさせた。結局、デュエルは隼人がツァンを止めるまでに実に50回以上効果を使い、羽蛾、そのついでに竜崎をボロボロにした。かくして俺たちは全員勝利して退学になることは免れたのであった。