俺はふとある漫画のことを思い出した。その漫画は「しかるべく!!」が口癖の復讐代行業の女が主人公の作品だ。その作品にはこんなセリフがある。『配偶者が浮気した時かなりの確率で「妻が浮気した時夫は妻を責め」「夫が浮気した時妻は浮気相手を責める」』これを読んだとき、俺はかなり眉唾で唯一、話相手になってくれる俺には過ぎた妹にこれは事実なのかを確認した。すると、博識な妹はこの事実が正しいことを実験データなどを示し証明してくれたのだった。そうしたことがあって、その時の俺は「漫画を描くにも相当な裏付けをつける必要があるのだな」と感じたものだ。ちなみになぜこんなことを思い出したのかというと・・・
「小南くん!あなたも止めなさい!!」
「原さん!!止めないで!!この泥棒猫にきついお仕置きをしないと!!」
「それはこっちのセリフです!!コナミさんの厚意を好意と思って、よくも!!」
性的関係をもった女性達が互いのことを罵り合い、これから性的関係を持とうとしている女性がその状態を止めようとする。一言で言うと「修羅場」という言葉が似つかわしい。この光景から少しでも目を背けたかったからである。
俺たちはデュエルに勝利した後、ツァンと約束したように(強要されたように)俺と彰子はO☆HA☆NA☆SHIをすることになったのである。その際にもしものことがあってはと思い、麗華にも同席を頼んだのだ。麗華はすごく嫌そうだったが、一旦俺に好意をもったからかはたまたそういう仕様なのか、結局は同席することに同意したのであった。同意した際に「二人はあなたを非難するだろうが、それを私は一切止める気はない」と釘を刺されたのは言うまでもない。こうしてO☆HA☆NA☆SHI会の参加メンバー5人は決まったのだった。
話し合う場所は諸事情などもあり、俺の部屋になった。部屋に入ると「お茶を入れようか」という声をあげる間もなく、ツァンが彰子にビンタをした。そして憎しみのこもった目を向けていった。
「よくも遊をたぶらかしたわね!!友達だと思っていたのに!!」
そうしてツァンは俺に一切、怒ることなく彰子への非難を始めたわけだ。俺たちはそれに呆然とし、麗華が「あ、あの・・・悪いのは小南くんじゃないんですか?」と聞くと「遊をたぶらかしたこの小娘が一番悪い!!」と返事した。そして彰子への非難を続けた。それを見て俺たちはツァンをなだめに入り、彰子は非難を黙って受け続けた。それが20分ぐらい続いた。しかし、ツァンが「どうせ一時の快楽のためだけに遊をたぶらかしたくせに!!」というと「そんなことはありません!!」といい、彰子も反論を開始したわけだ。その結果、いまや取っ組み合いのけんかが始まろうという状態になった。それが現状というわけだ。さて麗華からのお願いも本格的に止めに入るか。俺はそう思い、行動した。まずツァンの唇を奪った。ツァンはこれに動揺した。というよりも全員が動揺した。そしてすばやく今度は彰子の唇を奪った。今度は舌も入れてだ。そうして争いがいったん収まったのをみて、切り出した。
「少し落ち着こうか。お茶を飲みながらゆっくりと話し合おう。」
それに3人は賛成した。まあ、麗華は顔を羞恥心で赤らめながら「そもそもあなたのせいでしょうに・・・」と小言を言うのも忘れなかったが。
「ふーん。なるほど・・・」
「そう・・・だったんですか・・・」
「へえぇー・・・なるほどぉー・・・」
O☆HA☆NA☆SHI会は第2ラウンドという名のお茶会となった。俺は言葉通りに全員に飲み物を渡した後、俺のキスによって空気が変わりどうすればよいのかと悩んでいる3人を尻目になぜ俺が2人と関係を持ったのかについて説明したのである。するとおかしなもので最初はいがみ合っていた2人が納得の表情に変わっていったのだ。
「そんなことがあったんですかー。だったらしょうがないですねー。」
「ええ、ボクこそごめんね。事情もきかずに一方的にビンタしたりして・・・。」
俺にとって幸いだったのはこの2人には互いに相容れる理由があったということだ。1つ目の理由は互いに辛い背景が存在するということ。親というしがらみが存在し、肉体的にも精神的にも自由を奪われていたツァン。自分に自信がないがために姿を消してしまおうとも考えた彰子。この2人は大抵の人が経験しそうもない辛さを味わっている。それは逆に言えばそうした辛さを理解しているがゆえに辛さを味わっている者に対して一般人よりも一層同情してしまう可能性が高いということ。現に2人は互いの立場に同情しあい、問題点である俺の二股を無視している。こうした同情できる背景が存在していたことに加えて・・・
「そもそもよく考えたら疑って追求するなんておかしかったわよね。ボクたち友達だものねー。」
「そうですよねー。友達ですからねー。」
これが第2の理由。2人は友達であるということ。もちろん、友達だからといってなんでも許されるわけではない。「親しき仲にも礼儀あり」ということわざもあるように友人だからこそ、守らなければならない一線というものがあるだろう。しかし、この2人はその事実を知っていない。なぜならこの2人は友達経験が少ないからだ。俺も友人経験が少ない、というより皆無に近いからわかる。友人が少ない人間ほどその友人から嫌われることを恐れ、許容できる裏切りの範囲が広くなるものだ。
まあ、この2人が相容れるのはもう1つ理由がある。
「それにしてもボクたちみたいな美少女を抱くなんてホント、ゲームの主人公みたいね。」
「そうですねー。本当にその通りです。」
そう。それが最後の理由、この世界がエロゲーの世界だということだ。
この世界は遊戯王シリーズをベースに作り出された世界、そしてその際に設定は俺が設定した。その設定はいろいろとあり、俺もすべてを覚えているわけではないが、少なくともゲームオーバー条件はデュエルでの敗北とし、複数のキャラを攻略してハーレムを形成することが可能な設定にしたことは覚えている。こうした設定から言えることはゲームオーバー条件はデュエルでの敗北である以上、このような痴情のもつれの場合でも俺がデュエルをする流れにならない限りはゲームオーバーにならないということ、そしてハーレム形成可能ならば攻略キャラは自分以外のキャラが俺と愛し合っても許容できるようになっているということだ。さらに言うと俺にはこの世界では一定の基準以上の暴力行為などの危害が加えられることはない。さっきまでの争いはリアリティをもたらすための演出なのだろう。よくできているものだ。ツァンが「O☆HA☆NA☆SHIしよう」と言ってきたときの笑顔といい、彰子の怒った理由と言い、麗華の小言と言い、極めて真に迫っていた。まあ、結局2人の和解でリアリティが崩されている気がするが。俺はそう思いながら、冷たいウーロン茶を飲んだ。ちなみにツァンが飲んでいるのは熱い日本茶、ウサミンはカフェオレ、麗華は紅茶を飲んでいる。
「・・・それで、小南くんはこれからどうするつもりなのです?」
麗華が不機嫌そうな口調で語りかけてくる。まあ、自分が好きな男が自分の価値観と相容れないことをしていたんだ。不機嫌にもなるだろう。
「どうするとは・・・?」
「きまっているじゃありませんか!どちらと付き合うのかです!!二股をかけていたことにはこの際、目をつむりましょう!しかし、あなたはどちらと付き合い、幸せにするのかを選ぶべきです!!今とはいいませんが、近いうちに!」
「ああ、そのことですか・・・。実はもう決めています。」
俺はいつもの口調でそう言った。俺のセリフに3人はこわばった。それもそのはずである。ツァンと彰子の2人は和解したとはいえ、いや和解したからこそ、惚れた男に見捨てられたり、惚れた男が友達を見捨てることは避けたいのだろう。麗華は俺に対して好意を抱いているのだから、そもそも自分以外の女性と付き合うことになるのを喜ぶはずがない。そのように緊迫した空気の中、麗華はこの問題において自分が当事者ではないからか、生徒会長として生徒のためを思ってか、それとも俺への感情を断ち切るためか告げてきた。
「・・・それでどちらと付き合うつもりなのです?」
俺はその質問に対し、可能な限りの笑顔を作り、確固たる決意を持って返答した。
「両方と付き合います!」
『はぁ?!』
かくしてツァンと彰子をハーレムの一員とするO☆HA☆NA☆SHI会の第3ラウンドの幕が開かった。
「両方とつきあうとは正気ですか!?」
「正気ですが、なにか?」
「~~~!!あなたのことを少しでも素晴らしい人間だとおもった私が間違っていました~~!!」
「『英雄色を好む』という言葉がありますよ。」
「それとこれとは話が別です!!大体、男が二股をかけるなど・・・」
「?二股を掛けるつもりはありませんよ?」
「何をいっているのです!!!」
「だって俺は・・・」
「そうよね。だってあなたは・・・」
突然の声にその場にいる全員がドアの方を見た。ドアの方を見るとドアが開いていてO☆HA☆NA☆SHI会の5人目の登場人物がそこにいた。俺は連絡した通りに来たな、そう思った。
「あなたは私とも付き合っているから現状三股だし。さらに数をふやすつもりですもんね。」
雪乃はそう言った。
それからは雪乃が詳しい説明をした。俺はウーロン茶をすすりながら聞いていた。話が終わるとしばらくの沈黙があった。
「・・・要するに小南くんは女性を何人も同時に愛そうとしているのですよね・・・」
「ええ、そうですよ。」
麗華はその返事を聞くと目に涙をためた。それをみて雪乃はハンカチを差し出した。麗華は涙をぬぐった。それをみて雪乃は面白そうに言った。
「生徒会長さん。あなたなぜ泣いているの?」
「そ、それを私に言わせる気、ですか・・・」
「ええ、だってこんな素晴らしいことはないじゃない。ねえ、ツァンさん、宇佐美さん。」
ツァンと彰子はだんまりを決め込んでいた。どうやらあまりのことに理解が追い付いていないのだろう。それをみて雪乃はさらに続けた。
「よく考えてみて遊のような優れた男が1人の女で満足できるわけがないでしょ?だったら何人も付き合うのが当たり前じゃない。違うの?」
それに対して全員が沈黙で答えた。それをみると雪乃は嘲笑してこういった。
「なんだ・・・。あなたたち本当は遊のことが好きじゃないのね。」
『なっ!』
全員、そのセリフに色めきだった。
「だってそうでしょう?本当にその男のことが好きで惚れているのであればどんなことでも喜んで受け入れるはずよ。それが『惚れこむ』ってものでしょう。」
そう妖艶に微笑んでいった。
「たとえ、その行為が社会的に許されなかったとしても、その人が自ら望むならば自分もまた堕ちていく。それこそがその人を愛するということじゃあないの?」
俺のハーレム計画の初めての賛同者はそういった。すると不思議なことに沈黙が包んだ。
「・・・言いたいことはそれだけですか?」
麗華は気力を振り絞っているとはた目にもわかる表情で質問した。
「そうだけど?」
「だったら帰らせてもらいます。さあ、2人とも帰りましょう。」
しかし、その言葉に2人は反応しなかった。ツァンは目を泳がせながら、彰子は瞬きすることなく真剣にこちらを見つめながら。
「コナミさん、私をハーレム計画の一員にしてください。」
「な!?何を言っているかわかっているのですか!?」
「もちろん!わかっています!だからこそ、私はコナミさんを支えたいんです!」
そう言って真剣で純粋なまなざしを麗華に向けた。その表情を見て麗華は怖気付いた。
「ふふ。ところでツァンさんはどうするの?」
「え・・・ボクは・・・」
ツァンは逡巡の表情をしていた。そんなツァンをこちら側に引き込むべく、一押しを咥えることにした。
「ツァン。」
今まで無言だった俺が話しだしたことでツァンはビクッとした。俺はそんな彼女をあやすようにささやいた。
「俺が君を助けたとしても君は俺のために尽くす必要はないよ。ツァンを助けたのは君が俺の友達だからだ。友達が友達を助けたことで見返りを求めるなんておかしいだろ?だからツァン、君は自分の意思でどうするかを選ぶんだ。」
強引に服を脱がそうとした北風のような言葉ではなく、自分から進んで服を脱がせるよう取り計らった太陽を思わせる言葉をツァンに与えた。ツァンはこれまで自分で物事を決める経験をあまりしたことが無かった。だったら自分で自分の運命を決めるようにささやかれるのは極めてうれしい経験のはずだ。現に効果はあった。ツァンは俺の言葉を理解すると泳がせていた目が次第に焦点を合わせていった。そして焦点が合うと目を閉じ、ポツリとつぶやいた。
「わかった・・・」
「え・・・」
「あんたのハーレムの一員になるっていってるの!」
「本当に?」
「本当よ!」
「本当の本当に?」
「本当の本当よ!!」
「本当の本当の本・・・」
「だから何度も言わすなー!恥ずかしいんだから!!」
俺はツァンをさらにからかうべく、ツァンめがけて駆け寄った。
かくしてO☆HA☆NA☆SHI会はここに終わった。参加者は現状3人をハーレム要員にした俺、今現在俺に物理的にからかわれているツァン、ツァンが物理的にからかわれていることを止めて自分たちをからかってほしいと思っている雪乃と彰子。
そして
俺たちが行っていることを理性的に嫌いながら俺たちの輪に入れてほしいと眼で語っている生徒会長、原麗華であった。