「ふぁああーー」
俺は普段より早く目を覚ました。その理由は床で寝ていたからだ。オシリスレッドの部屋は設備が貧弱である。いまどきパソコンはおろか、エアコンすらない。そのため自前で調達できなければ、暑いときにはクーラーもつけず、寒いときにはヒーターもつけずひたすらに耐えなくてはならない。俺は「終わらない財布」を持っているために自前でエアコンを調達でき、また学園に品物が届くように何度か品物を注文した経験があるが、エアコンは最近まで購入することを忘れていた。そのため、次の定期便がくる2週間後まではエアコンなしで過ごさなくてはならない。エアコンの入っていない部屋の床で寝ることはなかなか難しく、寝つけなかった。それが普段よりも目を覚ますのが早かった理由である。
・・・これからハーレムを拡大することを考えるとあいびきの場所についても考える必要があるな。そんなことを俺の寝床を奪った3人をみながら思っていた。
顔色が悪くなった麗華を見送った後、俺たちがしたことは自分たちの関係を確認しあうことである。もっと直接的に言えば愛し合うことである。俺は3人を抱いた。正常位で、バックで、騎乗位で、座位で、2人きりで、3人で、4人で、考えられるありとあらゆる行為を昨晩、時間の許す限り行った。
「ふふ、私はあなたに魅せられてるの♡だからもっと私を魅了してぇ♡もっと激しく後ろから支配してぇ♡突いてぇ♡」
「え、えっちだなんて思わないでください♡だってこんな姿を見せるのはコナミさんだけなんですからぁ♡」
「遊♡こ、こんなの今日だけ・・・なんだからぁ♡き、じょう、いで自分から、するのはぁ♡」
『ああああ♡』
3人は俺に抱かれていくうちに、支配されていることを理解していくうちに、突かれていくうちにより一層俺のことを愛するようになっていくことが感じられた。言葉づかい1つにせよ、最初は親しい友人どおしの口調だったのが、最後には敬愛する目上の者に対する口調へと変化していったことやセックスが終わった後、誰が俺と一緒に床に就くのかで軽い口げんかが生じたことからもうかがうことができた。そのように彼女らが心境の変化を起こしていくのを感じる一方、俺の中でも心境の変化を感じることができた。
彼女たちを抱いていくうちに俺はいとおしさを感じていった。この美しく、可憐で、純粋な少女たちが現実世界では何のとりえもなかった自分のものである。そう考えるとこの世界がゲームの世界であることすら忘れて、現実の人間であるかのようかわいがりたく思えてくるのだった。そして彼女たちを失いたくないと思えてくるのだった。しかし、その一方で心の奥底から魔の声が聞こえてくるのも事実だった。『所詮、この世界はゲームなのだ。ならばかまうことはない。もっと多くの女を自分のものにしろ!』。その声もまた、俺の感じるいとおしさを凌駕するほどの魅力を備えていた。俺はその欲望に従い、罪悪感を多少抱えながら新たなターゲットを探すために行動を開始したのだった。
「セイコさん、この段ボールはここでいいんですよね?」
「はい、その通りですよ。男の子がいると作業が早くなって助かります。」
ハーレムメンバーに俺との関係が分からないようにする行動について指示を出した後、俺はとりあえず購買の手伝いをすることにした。早朝からの手伝いは随分と疲れるが楽しみもあった。それはセイコさんと話ができることである。
「それにしても制裁タッグデュエルに遊君が勝ってくれて本当にありがとうですよ。これからも遊君が一緒に働いてくれるので仕事が楽になりますしね。あ、もちろん仕事のことを差し置いても退学にならなくてうれしいとおもっていますよ。」
「わかってますよ。」そういってセイコさんの言葉を軽く流し、改めてセイコさんの姿を見る。セイコさんは「お姉さん」という言葉が程よく似合う人だ。容姿は肩にかかる黒髪と絶えない笑顔を持った大学生。性格は接する人を明るくする快活なもの。人慣れしておらず、人嫌いの気がある俺でも現実世界にいたら自分から接したいと思える人だ。しかし、そんな人に対して俺が考えていることは「いかにして彼女を自分のものにするか」、「抱いたときの感触はどうなるか」といったことだけだ。
「セイコさん、残りは俺がやっておきますのでセイコさんは掃除をお願いします。」
「わかりました。それじゃあお願いしますね。」
俺は攻略のため地道に手伝いを行い続けることにした。こうしたデュエルを基本的にしないキャラの攻略はただひたすら好感度を上げるための地道な努力を続ける以外にないと知っているからだ。そして好感度が一定レベルに達した後に起こるであろうイベントをクリアして彼女を攻略する。そのときを考えるとニヤついてしまい、元の表情に戻すのにアップラーメンができるだけの時間がかかった。
購買での仕事を手伝った後は授業に出席した。授業では「速攻魔法を10枚あげよ」という単純なデュエル問題を解いた。もちろん、俺はただ単に授業を聞いていたわけではない。ハーレムメンバーの様子やハーレムの存在が第三者にばれていないか、そして新たな攻略キャラは誰かなどを確かめていたのである。そうして確認して分かったことは3つである。1つ目、ハーレムの存在は攻略対象の麗華とエロゲーでいうところの主人公の親友ポジションの代用であると思われる大徳寺先生が今のところ知るだけだろう。2つ目、ハーレムメンバーたちは俺との関係を悟られないようにきちんとした行動をしている。例えば、俺に目線を合わせないように試みていることが感じ取れる。そして3つ目、これが一番重要である。
攻略対象である麗華が授業に出ていない。
俺は麗華が授業に出ていないことから早急な対処が必要になる、そう思った。
麗華の攻略は毎日、麗華に勉強を教えてもらい今度の月1試験で満点を取ることが条件となった。このままでは「毎日、麗華に勉強を教えてもらい」を満たすことができない。そのため、この昼休みでは勉強を今後も教えてもらうようにすることを約束させるために活動をしていた。ツァン達にも動いてもらい、麗華を探した。どこを探すのかについて指示を出した後、俺は保健室に向かうことにした。
「あら、小南くん。どうしたの?」
ノックをして返事を待ってから入ると保険医でもある鮎川先生がいた。先生はヘッドホンをつけ、パソコンを使っていたようだ。しかし、おかしなことに俺がやってくるとパソコンをシャットダウンした。先生の顔は心なしか紅かった。俺は先生がなにをしていたのかを理解しながらも、ここにいる目的を考え、先生と会話を始めた。
「鮎川先生。少し寝不足みたいでしてベットで寝さしていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、かまわないわよ。だけど1人寝ている人がいるからその人を起こさないように気を付けてね。それと私はこれから用事があるので職員室にいくから静かに過ごしてね。」
「わかりました。」
「それじゃあ。奥の方のベットを使ってね。」
そう言われると俺は素直に奥のベットに入った。すると先生は外へ出ていった。それから1分後、俺は行動を開始した。ベットから抜け出して使用済みとなっているベットへともぐりこんだのだ。麗華は昨日の様子を見る限り、相当具合が悪いようだった。ならば保健室で寝ているかもしれないと思い来たわけだが、予測は当たっていた。ベットでは麗華が眉間にしわを寄せながら寝ていた。
それから俺はただひたすら麗華を観察した。寝ている麗華の姿はとても魅力的だった。眼鏡をはずしていても、寝ていても麗華は知性を感じさせた。その姿は物語に出てくる女性を思わせた。しかし、彼女はそのような姿を見せながら寝言で俺に対する行為を吐露していた。その姿から発せられる声を聞くと、俺はどす黒い感情を抱え込まざるを得なかった。『今コイツを犯せば、楽に攻略できるぞ』。そんな感情に対して今まで培ったゲーム脳は理性的な反論をしていた。『これまでのゲーム展開から考えてそんなことはありえない』と。脳内で生じた不毛な争いに終止符を打ったのは、麗華の眼ざめだった。
麗華はまず、眼鏡をとり、それをかけた。そして目を何度か瞬かせた。そしてしばらくして俺に気付いた。
「おはようございます。会長。」
彼女は俺に返事をしなかった。俺がここにいる理由を理解できず、ただ口をパクパクさせるだけだった。それをみて俺は思った。
「金魚みたいですね。」
俺の言葉を聞き、ようやく彼女は理解が追い付いたようで、普段とは似合わぬほど声を荒げた。
「どうして!あなたが!ここにいるのですか!!」
「あなたのことが心配だからです。全生徒の模範となるべく無遅刻無欠席を心がけているあなたが授業に出ていないことが。」
俺の返事を聞き、彼女は弱々しく言葉を返した。
「・・・授業に欠席したくもなりますよ。」
「どうしてです?」
「あなたのことを立派だと!思っていたのに!立派じゃなかったからですよ!」
涙目でそう言われた。
「・・・俺が立派かどうかはさておき、何人もの女性を同時に愛するから立派ではないという考えには大いに疑問を感じますね。好きなものは好きと素直に言える。それは立派なことだと思いますよ。」
「・・・・・・口先はあいかわらず、うまいですね。」
「そんなことありませんよ。俺は嘘をつくのが下手くそですよ。だから基本的に本当のことしか言っていません。例えば、立派に寮長を務めたいとか、友達だから助けたとか、・・・原会長とデートしたいとかね。」
「!!・・・・」
「俺は会長のことが好きです。もちろん、一生徒としてではなく、また友人としてではなく、一人の男として好きです。だから、原麗華という人間と付き合いたいと思っています。」
「・・・・・・」
「もちろん、今すぐに返事をしてほしいとは言いません。仮に気に入らないのであれば、この場でビンタをするなり、ひっかくなりしていただいても結構です。だから・・・」
一呼吸おいて真剣に発言する。
「お返事をお願いします。Mr.麗華。」
俺の言葉を聞くと麗華はそっぽを向いた。そして少し時間を置くとあきれた表情でこちらに向きなおった。
「小南君。女性への敬称はこの場合、Ms.かMissですよ。Mr.は男性の場合の敬称です。」
「あ・・・」
「全く・・・」
そういうと麗華はベットから立ち上がり、保健室を去ろうとした。そして俺に振り返ることなくこういった。
「・・・返事はしばらく考えさせてください。だけど小南くん、覚悟してくださいね。あなたに教える勉強はこれまで以上に厳しくしますから。」
そして麗華は保健室を去った。
俺は目的を果たした後、行きがけの駄賃とばかりにある仕掛けを保健室に設置した。その後、鮎川先生が帰ってくると保健室を後にした。