「ふー。」
「疲れたね。遊君。」
「そうですね。セイコさん。」
俺は今、いつものごとく購買で働いている。今日はアカデミアに届いた商品の整理だ。このアカデミアはデュエルに専念するようにという配慮のもと人が住む場所から遠く離れた孤島にある。そのために、購買ではカードだけではなく、歯ブラシなどの日用品など学生たちが必要なものを売っており、その量や種類は相当なものとなる。それらを今、整理し終えたのである。
「ご苦労だったね。二人とも。さあ、あたしのおごりだ。」
「あ、トメさん。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
渡された缶コーヒーのふたを開けて、ひとくち、ふたくちとのどを浸す。それは、疲れ切った体に癒しと活力を与えるものだった。のどの渇きがましになると、もう放課後で予定がないこともあって自然と、3人で世間話をした。そうした最中にトメさんが、
「そういや、あんたたち二人はなかなかお似合いのカップルじゃないか。」
と言いだした。
俺は「そうですかね。」と空っとぼけつつ、標的の顔をちらっと見た。否定しながらもまんざらでもない、様子だった。それに満足感を覚えながら、この楽しいひとときを過ごすのだった。
「ふう。」
俺は3人と別れ、新学期になって新しく手にした「根城」に帰ってきた。そして麦茶を冷蔵庫から取り出し、コップに入れて飲んだ。そして一息ついて、今日の出来事について思いをはせた。
「やっぱり、明日香は俺を避けているな。」
これまでに5人の女性を攻略して分かったことがある。このゲームでは女性キャラを攻略するには好感度を上げたり、攻略条件・フラグなどを建てたうえでメインストーリー上のイベントをクリアして女性を攻略するという形が基本。もちろん、例外は存在するがそれは基本的にメインストーリーにあまり絡まないキャラクターを攻略したい人のための救済措置として存在しているもの。その観点で考えると、遊戯王GXのメインキャラクターの1人だった明日香は
「どう考えても基本。つまり、メインストーリー上のイベントをクリアしないと攻略できないキャラだよなあ・・・」
そして今攻略しているもう1人のキャラについても考えた。
「宮田ゆまは今から考えると馬鹿な設定をしちゃったせいで攻略するのに時間がかかるようになったし。今攻略できるのはいないなあ。せっかく俺の「城」を作ったのに・・・。」
そして少し、眉間にしわを寄せた。そしてつぶやく。
「まあいいか。ゲームオーバーにならない限り、どんどん攻略可能キャラは出てくるだろうし、こうして攻略キャラを見つけることもできるしね。」
そしてモニターを動かした。すると女子高生たちの寝顔が映った。
「明日香はっと。・・・もう寝たのか。まあ、あれだけ自慰をしたら疲れるだろうからな。それにしても我ながら、いい案を思いついたものだ。」
そう思い、この「秘密基地」を手にした経緯について今一度思い出した。
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冬休みに入ると、俺は一旦家に戻った。戻ったのは予定より1日遅れた。サイコショッカーの精霊とやらとデュエルをせねばならなかったからだ。
予定通りに帰りの船に乗ろうとした俺の前であわてて寮に戻っていく人が見えた。その形相がすさまじかったので、思わず、声をかけてしまった。話を聞くところによるとオベリスクブルーのその男子生徒はサイコショッカーの精霊を呼び出してしまったらしい。・・・なんで俺が、女性を助けるわけでもない人助けをせねばならないのかと思ったね。デュエルに関しては詳しくは話さない。ただ一つ言えることは『人造人間-サイコ・ショッカー』はトラップカードに制限を賭けられるすばらしいカードであることは確かではある。しかし、今日のようにモンスター効果、魔法カードの効果がインフレした環境においてはトラップカードに制限がかけられることは致命的な痛手にはならない。なので俺は正々堂々9期テーマを使ってそのことを「教育」してやったとだけ話しておこう。話がそれた。話を戻そう。家に帰ってからだ。
「ただいま」。
そう言って俺は「ただいま」といっても誰も返事をしない自宅へと帰った。・・・家に帰っても誰からも返事がないということは現実世界でもよくあったのになぜか悲しさが胸にこみ上げてきた。これは、俺にようやく郷愁の念が出始めたということだろうか、それともアカデミアでのさわがしい日々から離れたことに悲しさを感じたせいだろうか。それとも・・・。・・・「彼女たち」と離れたせいだろうか。
・・・よくよく考えるとどうでもいいことを思いながらベットへもぐりこんだ。・・・さびしくてもこれが今の俺の家。だから、さっさと眠ろう。そう思い、この世界に来てから初めて何も考えずに寝たのだった。
翌日、起きるともう夕方だった。なので俺は起きて服を着ると、朝昼夕兼用の食事をファミレスでとった。「ブランチよりも効率的だ」。そんなことを思いつつ、店で一番高い料理を注文した。「終わらない財布」があるとこんなところが便利だ、レシートをいらないといちいち答えないといけないけれど。料理が付くとそンなことを思いながら食べた。食事がすむといつものようにレシートをもらわずに店を出た。そして、考え始めた。「これから攻略をすすめていくには何が必要か?」。
その答えはしばらくすると出た。というよりも答えを確認していたといってもいい。答えは「女性を抱ける場所」だ。
俺は今までレッド寮の俺の部屋で行為に及んでいた。しかし、これでは防音などいろいろな点で不都合があるということが判明していた。時間などを選んで行為に及んでいるとはいえ、限界がある。そのことを考えると学園に必要である。「女性を抱ける場所」つまり、俺の「城」が。そして、「城」を手に入れる方法を俺は考えた。するといいアイディアが浮かんだ。そのため、すぐに実行に移すことにした。
2日後。正確には1日と15時間38分46秒後。俺はお目当ての人物と会っていた。
「それで、キサマは何者だ。何が望みだ?」
そういうと俺からの贈り物を取り出した。そう【ブルーアイズ】のカードを。
「そう、がっつかないでください。まだ人がくるんでしょ。」
「ふん。あと1分32秒ほどでな。」
それを聞くと俺は腕時計を見た。すると1分32秒きっかり後に彼が入ってきた。
「ハーイ。海馬ボーイ。そして・・・遊ボーイ、でいいのデショウカ?」
「結構です。」
そう言って、海馬瀬人とペガサス・J・クロフォード、デュエルアカデミアのオーナーとこの世界におけるデュエルモンスターズの生みの親との会話が始まったのだった。
「ふん。にわかに信じられんな。」
「そのとーりデース。アンビリーバボー。しんじられまセーン。」
「けれど、おふたりに渡したカードは本物であることは確認できたはずです。」
俺はこのふたりに手紙を出したのである。文面は「至急お話したいことがあります。この手紙は同じ文面で海馬瀬人(ペガサス・J・クロフォード)さんにも送っているのであしからず。なお、おふたりが興味を抱きそうなものをお付けしました。それでは後日お会いしましょう」。そして海馬には【ブルーアイズ】のカード、ペガサスには【トゥーン】のカードを送ったのである。そう、この世界では二人だけがそれぞれ持っているだけのカードを。
「確かに本物であることが確認できた。わが海馬コーポレーションが総力を結集した結果、【ブルーアイズ】のカードは俺が独占している。例えば、『青眼の白龍』はこの世に45624985枚(4562万4985枚)発行され、俺のデッキに入っている3枚を除き、すべて俺が厳重に保管している。にもかかわらず、ここに45624986枚(4562万4986枚)目となるカードが確認できた。ならば信じざるを得まい。」
「ええ、そうですネ。それにしても海馬ボーイ。ユーはひどいデース。私の愛のこもったカードを独占して人に渡さないようにするなんて。」
「自分だけのカードを作ったお前に言われたくはないわ!!」
「ひどいデース。製作者が自分の好きなカードを作れるのは特典みたいなものじゃないですカ。ねえ、遊ボーイ。」
「・・・ええ、まあ。」
「ほう?キサマのデュエル結果やペガサスの言葉に対する反応を見る限り、どうやら転生者とやらは自分に有利なカードを使って相手をいたぶるのが好きらしいな?」
「は、は・・・そうかもしれないですね。」
そう、俺はこの話で俺が「転生者」であると話したのである。もちろん、この2人ならたとえばれても悪くはなるまいと計算したうえでのことである。
「それで、キサマどうしてほしいのだ?俺たちを呼び出したのはカードの使用と引き換えに何かがほしいからだろう?目的はなんだ?金か?」
「いいえ、違います。」
「まあ、そうだろうな。貴様は学生の割にはどこから調達しているのか、理解しがたいほど高価なカードを使っているからな。」
そういえば、設定でカードの値段をパック1個500円、シングルは現実世界の1000倍の値段にしていたことを思い出した。そう考えたら俺の使っているデッキは学生にしては少し高価すぎたかな。まあ、それはどうでもいい。俺の目的を言おう。
「俺の目的は俺の通っているデュエルアカデミア本校にある廃校舎の使用許可と俺の学園内における犯罪行為の黙認です?」
『・・・はあ(What)?』
「・・・要するにキサマは恋愛のための『愛の巣』が欲しいと・・・」
「まあ、端的に言えばそうですね。」
答えると、社長が怖い形相でにらんできた。怖い、怖い。
「HA、HA。遊ボーイイズプレイボーイですネ。」
反対にペガサスさんは面白そうに接してくれている。わかんねえな。この人の感性。
「・・・・・・・・・」
社長は考え込んでいる。どうやら損得を勘定しているのだろう。もしも、この提案を受け入れたらアカデミアは俺の狩場になる可能性が高い(現実にはもうなっているが)。一方、この提案を受け入れなければ、【ブルーアイズ】が様々な場所にばらまかれ、そして多くの人の手に渡る。どちらが、得かを考えているのだろう。
「・・・よし!決めたぞ。遊。貴様の提案のんでやろう。」
「ありがとうございます。」
「考えてみれば、たとえ貴様が女子生徒なり女教師なりに手を出そうとも、それを女たちが望んでいる限りは自由恋愛といえるからな。まあ、強引に関係を迫ったとしても俺に損害が出なければどうでもよいことだ・・・。」
「は、はは。そうですね・・・。」
なにこの人・・・。言ってることが相当ひどいぞ。まあ、社長はどん底から這い上がったから弱いやつや弱いままで満足しているやつとか自分が気にくわない奴は徹底して嫌うのかもしれん。その点ではハーレムを築こうという野心を抱いている俺は評価されていると考えてよいのか?そうした考察をするとペガサスさんが話しかけてきた。
「話は終わりましたね、海馬ボーイアンド遊ボーイ。そして遊ボーイ。あなたに言っておきたいことがあります。」
「なんですか?」
するといつものようにへんてこな英語交じりの言葉で、真剣な目をして語りかけてきた。
「ユーは闇にとらわれている。」
「・・・なんのことですか。」
「いえ、そう思ったから言ったまでです。アナタは転生者として現実では手に入れることのできない力を得た。その力にあなたは溺れているのではないか。そう思ったのデース。」
「・・・・・・」
「確かに力に溺れる快感は私も経験したのですが、素晴らしい。ですが、知っておいて欲しいのデース。」
右目を隠していた髪をとり、右目の痕、千年眼(ミレニアム・アイ)のあった場所を見せてシリアスにこう言った。
「力に溺れすぎると後で高い代償を払うことになるということを。」
「・・・・・・肝に銘じておきます。」
こうして俺の「城」を手に入れる交渉は終わった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「その後はせっかくだからと社長とデュエルしたっけ・・・」
あのときのデュエルを思い出し、俺は苦々しい思いにとらわれた。
俺が社長の『青眼の白龍』3体を含むモンスターを『超融合』して、『F・G・D』を出して勝ち誇った俺は某ゲスショタを彷彿とさせる口調で煽った。
「これで、君の愛するしもべはボクのものになっちゃった。これでわかっただろう。勝つのは転生者である僕たちだこれからもずっとね。せめて最後は君の愛するドラゴン族でとどめを刺してあげるよ。攻撃力5000の『F・G・D』のダイレクトアタックで残りライフ4000の君は・・・」
すると、社長はあるシスコン反逆者のように静かに断固たる決意でこういった。
「笑止。俺は常に最悪の事態を想定していた。愛する『青眼の白龍』が敵に奪われることも考えながら・・・。だが俺は決してブルーアイズを見捨てない。ブルーアイズは必ず奪い返す!!速攻魔法『融合解除』!!」
『F・G・D』
融合・効果モンスター ☆12 闇属性 ドラゴン族
攻撃力5000 守備力5000
ドラゴン族モンスター×5
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
(1):このカードは闇・地・水・炎・風属性モンスターとの戦闘では破壊されない。
融合解除(速攻魔法)
(1):フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。その融合モンスターを持ち主のエクストラデッキに戻す。その後、エクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を自分フィールドに特殊召喚できる。
とまあ、こんな感じでフルボッコにされたのである。まあ、男らしく負けを認めて再戦は求めなかったというのが今となっては救いか。
「それにしても今から思うと冬休みはいろいろとあったな・・・。」
現実世界のいつもの冬休みのように何事もなく、過ごすと思っていたのだが、攻略キャラがタッグフォースのように家に起こしに来たり、買い物に付き合ったり、クリスマスパーティーをしたりと現実では少なくとも俺に記憶のある限り経験したことのないさわがしい休暇だった。そのことを思い出して顔をほころばせていたことに気付き、顔を元に戻してさらに思索を続ける。
「力にとらわれているか・・・。そうかもな。」
今まで俺が行ってきたことやこれからしようとしていることを思いながら、そうつぶやく。俺は初めてここに来たころに比べて、女性をたぶらかすことなどに抵抗を感じなくなっていることに気づいた。いや、それだけではなくそうしたことをするのに快感を覚えるのにも気づいた。これが、闇にとらわれているということだろうか。そう思い、この場所を後にした。後には電気の付いたままのモニターが映っていた。そこはこの旧校舎を映したものであり、アカデミア倫理委員会の隊長が映っていた。どうやら、この場所で何が行われるのかが気になってやってきたらしい。
「・・・どうすればこの闇から抜けられるのだろうか・・・。」
彼女を今や従順になった鮎川先生のようにする算段を建てながら、考えていることとは真っ向から矛盾したことを俺はつぶやくのだった。