デュエルアカデミア。それは海馬瀬人率いる海馬コーポレーションが設立したデュエリスト養成学校。デュエルアカデミアに入ることはエリートデュエリストの第一歩を踏み出すことと同じといっていい。そのためデュエリストの卵たる受験生はこの受験日のために切磋琢磨して己を磨き、合格という夢に向かって挑戦する。それがこの世界において常識である。したがって受験生は皆鬼気迫って問題を解いていく、はずである。しかし、何事にも例外が存在するものでこの俺、小南遊は初っ端から寝ていた。
「起きなさい!」
起こしてくれる声がしたので、眼をさまして起こしてくれた人の方を向く。そこには起こしてくれるように頼んだ女性が怒りながら立っていた。その女性は少し吊り目で、髪の色がピンクのショートの髪をしていた。
「全く、いきなり見ず知らずのボクに「今から寝るので、この時間の試験が終わったら起こしてくれ」と言って本当に寝ちゃうなんてありえないわよ!今日はデュエルアカデミアに入れるかどうかの運命の日だってのに!」
女性はこの世界の住民の一般的な考えを代表して怒りを述べた。対して俺はこう答えた。
「そうだよ。俺はデュエルアカデミアに入りたい。だから次の試験で満点を取るために今の試験では頭を休めることにしたんだ。」
実際俺は不思議に思う。なぜ他の人たちも俺と同じ考えに至らないのか。英語の試験で「これはペンです。」を英訳したり、数学の試験で「51×49は?」などを答えるよりもデュエルに直接関係することの勉強になぜ専念しないのか。俺にはそれが解らない。好きこそものの上手なれという言葉もあるだろうに。
しかし、俺の考えを理解できないのは彼女も同じだったようで、彼女は一瞬驚きの表情を見せた後、すぐにもとの怒り顔に戻っていった。
「そんなことできるわけないでしょ!デュエルアカデミアの筆記試験合格には40点の主要五科目試験と60点のデュエル問題、合わせて100点のうち60点以上取らないといけないの!そして今までの試験でデュエル問題が60点満点だった人は一人もいないの!最近のデュエル問題の平均点は大体30点なの!だから主要5科目で最低30点は取らないといけないの!馬鹿じゃないの!!」
俺はその言葉を聞いて、驚きつつも笑って言った。
「君はやさしいね。」
「なっ」
どうしてそう考えるのか理解できないといった表情を女性は浮かべた。
「だってそうだろ。君の考えでは主要5科目の試験を捨てることはデュエルアカデミアに入ろうとしないのと同じことだ。だったらそんなことをするような奴は無視しちまえばいい。それなのに君は主要5科目の試験が終わった後、デュエル問題は受けられるように俺を起こしてくれた。そして俺の将来を心配してくれている。そんなことは誰にでもできることではないよ。だから俺は君がやさしいといったのさ。」
その言葉を聞くと、彼女は頬を赤く染め、そっぽを向いた。実にいいツンデレ、いやツァン・ディレだ。もう少し彼女をからかいたかったが、いいところで休み時間が切れた。試験教官がやってきてテストを配り始めた。さてと大言壮語した以上は有言実行せねば。俺はデュエルアカデミア合格に向け、問題に集中するのであった。
カリカリカリ。鉛筆やシャーペンの筆記音、消しゴムを動かす音、試験教官の足音。受験生が醸し出す鬼気迫った空気。そんな試験特有の環境の中で俺は問題を解いていた。
(試験を真剣に解くのは小学生以来だな。)
俺はそんなことを思いつつ、問題1から解きだした。
「問題1 次の文章の誤りを指摘せよ。ダーク・アームド・ドラゴンを特殊召喚したところ、相手が奈落の落とし穴を発動した。それに対して自分は優先権を行使し、ダーク・アームド・ドラゴンの効果を発動しました。」
「マスタールール3においては召喚時の優先権で起動効果を発動することはできない。」
「問題2 クリッターのテキストの変遷を書きなさい。」
「テキストの変更は2回あり、最初のテキストは「このカードが墓地におかれた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、デッキを切り直す。」。1回目のエラッタにより「このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。」となり、2回目のエラッタにより「クリッター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの発動ができない。」となった。」
「問7 次のうち適切なシンクロ召喚を選べ。選んだ理由も書き記すこと。
①ジェノミックス・ファイター+獣神ヴァルカン→アルティマヤ・ツィオルキン
②クイック・シンクロン+ダンディライオン→スターダスト・ドラゴン
③ガード・オブ・フレムベル+エルフの剣士+A・O・Jカタストル→氷結界の龍トリシューラ
④アタック・ゲイナー+ハングリーバーガー→不退の荒武者
⑤BF-弔風のデス+BF-上弦のピナーカ→BF-アーマード・ウィング」
「答えは④。シンクロ素材の戦士族チューナー+チューナー以外の戦士族モンスター1体以上を満たしている。①アルティマヤ・ツィオルキンはシンクロ召喚できない。②クイック・シンクロンは「シンクロン」チューナーを素材とするSモンスターのS召喚にしか使用できない。③素材の合計レベルが10であるのに対してシンクロ先がレベル9であるのでシンクロ召喚できない。⑤チューナー同士ではシンクロできない。」
「問13 この世界に存在する「青眼の白龍」の枚数を書け。」
「45624985枚(4562万4985枚)」
「問27 現在のリミットレギュレーションを書け。また、制限されている理由も書け。」
「禁止カード ダーク・キメラ、剣竜、闇晦ましの城
制限カード カードを狩る死神、闇魔界の覇王
準制限カード バロックス、SNo.39 希望皇ホープONE
いずれもステータスが中途半端で計算が面倒なため規制されることとなった。」
「問38 次のエクシーズモンスターの素材を答えよ。
①RR-ライズ・ファルコン、②ガチガチガンテツ、③No.ナンバーズ66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル」
「①鳥獣族レベル4モンスター×3、②レベル2モンスター×2、③闇属性レベル4モンスター×2」
「問43 ペンデュラムカードはペンデュラムゾーンにおかれている間、何カードとして扱われるか」
「魔法カード」
「問51 デュエルに勝利する方法をすべて答えよ。」
「相手のライフポイントを0にする、相手のデッキが0枚で、カードをドローしなければならない時に、ドローができない場合、•各種カードの効果による勝利、ジャッジキル」
「問60 あなたはこの問題を含めて何問正解したか」
(「この問題を含めて60問」っと)
というわけで俺は無事、筆記試験に通り実技試験へと向かうことになった。その途中、どこかで見たことのある、道に迷っている女の子を見つけたので話しかけることにした。
「どうかしましたか?」
「ひゃ!!」
女性は話しかけられたことに驚いたのか。おどおどとしていた。しかし、俺はかまわず話しかけることにした。
「もしかしてデュエルアカデミアの受験生の方で道に迷われたのですか。もしそうなら一緒に行きませんか、僕もデュエルアカデミアの受験生なのです。」
「え、ええと」
青い髪をしたショートヘアの女の子は何を言えばよいのかで迷っていたが、意を決して話しかけた。
「お願いします。」
目的地に向かう途中で話をしていくうちに女の子はおどおどしていた態度がなくなっていき、笑みを浮かべるまでになった。そうして束の間の会話を楽しむと試験場へとついた。
試験場では受験番号ごとに控室が異なっている。そのため、名残惜しいが宇佐美彰子ことウサミンと別れ、控室に向かうことにした。控室に入るとそこにはピンク色のボクッ娘がいた。ボクッ娘は俺を見ると驚き、すぐにムスッとした表情になった。
「どうして、あんたがここにいんのよ。」
「どうしてって試験に受かったからさ。」
そうじゃなきゃここに来れるわけがない。
「ありえないわよ。あんた主要5科目全部捨ててたじゃない。なのにいるってのはおかしいわよ。」
「デュエルの試験で60点満点取ったからね。」
「嘘おっしゃい。私でも40点だったのに。」
「嘘だといわれても事実だしなあ。」
どうやって俺の無実を証明したものか。しばし考えると結論が出た。
「だったら俺の決闘を見てくれよ。そうすればわかるぜ、俺の実力が。」
決闘者ならば、デュエルで語る。これ以外の鉄則はないだろう。ボクッ娘はムスッとした顔を少し緩めた。
「そうね。デュエリストの実力を測るのは結局、デュエル以外にないものね。」
どうやら納得してもらえたようだ。だったら・・・。
「なら、名前を教えてくれないか。俺の名前は小南遊だ。」
「私の名前はツァン・ディレ。よろしくね、小南。」
「ああ、よろしく。」
これが、実技試験開始までの出来事である。
デュエル問題は60問作っていつか公開したいと思います。