明日香side
「あ、ああ~!」
イッてしまった・・・。また、イッてしまった。
手についた愛液をみてそう思った。愛液は粘つき、糸を引いていた。私は嘆息して、水を飲むために立ち上がった。水は激しく運動したばかりの体には心地よかった。一息ついたところで私はつぶやく。
「どうすればいいんだろう・・・」
私はデュエリストだ。間違いなく、デュエルを愛している。それなのに最近は1人の友達の顔だけが浮かび、寝ても覚めてもその人のことだけを考えている。そう、1人の「男」のことだけを。
「本当にどうすればいいんだろう・・・」
私は性器から垂れた愛液を見ながらそう思った。
「代表決定戦?」
翌日。私はクロノス先生に話しかけられた。
「そうデスーノ。セニョリータ明日香はノース校とーノ校内対抗デュエルの候補に選ばれましたーノ。」
「はあ・・・」
「それで明日に候補者同士でデュエルをすることになるのーデ、セニョリータ明日香ニーハぜひとも頑張って欲しいのデース。」
「・・・・・・」
・・・デュエルをする。いつもなら胸をときめかせるこの行為に気が今一つのらないのはどうしてだろう。私の顔色が気になったのか、クロノス先生が不審な顔をしたので、あわてて私は取り繕った。
「そ、それで対戦相手は誰なのですか?」
「ふふーん。3人いマスーノ。勝負は4人での総当たり戦デスーノ。1人目はセニョリータ明日香。2人目はシニョール三沢。3人目はドロップアウトボーイこと、結城十代。そして4人目は○○○。」
4人目の人物の名を聞くと、しばらくの間、私は固まっていた。
クロノス先生と別れ、女子寮に向かうと途中でももえとジュンコに出会った。彼女たちは私が代表候補に選ばれたということを知っており、話題は代表決定戦のことが中心となった。
「選ばれておめでとうございます。」
「明日香様、代表決定戦がんばってください。」
「私たち応援しますから。」
そんなどうでもいい会話が続いた後、こんなことをいわれた。
「ところで代表候補には小南も選ばれたようですね。」
「そういえば、彼の告白はどうしたのです。」
私はその場をごまかした。
「・・・・ふう。」
私は気付くと港に来ていた。空は夕暮れどきで夕日が美しかった。しかし、その夕日を見ても私の心は晴れず、こうして時折ため息と沈黙を交互に続けた。
(本当にどうしちゃったんだろう・・・。)
デュエルのことを第一に考えられないならデュエリスト失格。そのことを理解しているのに私の心はデュエルを第一に考えることはできない。彼のことが頭に浮かぶ。
「あれ?」
そんなときだった。彼の声が聞こえたのは。
「明日香どうしたの?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
私たちは互いを見ることなく、夕日を見つめていた。私は彼と接することに対する気恥しさから、彼はここに夕日を見るために来たから。夕日を見つめていた。意識している相手と言葉を交わして接するというのは難しいけれど、言葉を交わさずに過ごすというのは場合によってはそれ以上に難しい。なぜなら、沈黙はときとして言葉以上に効果をもつから。
「明日香。」
そうした中、彼が話しかけてきた。
「明日、代表決定戦があるけれどお互いに悔いのないデュエルをしよう。」
「・・・・・・」
私は答えられなかった。このままでは悔いのあるデュエルしかできないと思ったからだ。私の態度を疑問に思ったのか、彼はようやく顔をこちらに向けて質問した。
「どうしたの?いつになく、様子がおかしいけれど。」
・・・・・・どう答えるか悩んだ末に、私はこの質問に対してある程度、情報を隠して真実を伝えることにした。
「私は今悩んでるの?」
「悩んでいる?」
「そう。悩んでいるの?」
そうして私は自分の現状について話した。今、他のことに気を取られていて、デュエルのことに集中できていない。そう話した。私は話しながら、怒られることを覚悟した。彼はデュエルにとても真剣な人だから。デュエルに真剣に向き合わない人に容赦しないだろうから。ところが、予想に反して彼はよくわからない質問をぶつけてきた。
「その気を取られることってさ。好きなことなの?」
「え・・・」
その質問は私には予想外だった。好きか嫌いか。そんなことを考えたことはなかった。しかし、考えずとももう答えは出ていた。
「ええ、好きよ。」
そうじゃなかったらこんなに思い悩んだりしない。
「そっか。だったらいいんじゃない?」
「え?」
「デュエルもそのこともどっちも好きってことで・・・」
「そ、それは・・・」
そんなこと考えもしなかった。好きなものは1つだけにしないと不誠実だと思っていたから。そのことを彼に尋ねた。
「なにそれ?」
彼は呆れた顔を見せた。そして微笑を浮かべながら、もののわからない子供に諭すような口調で言われた。
「1つのことを愛し続けなくてはいけないって。明日香って感性が随分と古いんだな。」
・・・こうなった原因の貴方がいいますか・・・。
「いいか。1つだけを愛するんじゃなくて、好きならそれらすべてを愛するべきだ。なぜなら・・・」
そういうと真剣な表情でこう切り出した。
「自分に嘘をついていいことはないから。」
・・・・・・彼の言葉ははじめよくわからなかった。だけど、理解していくうちに靄が貼れていくような気がした。そして表情も明るくなっていった。その様子を見て彼は言った。
「・・・悩みは晴れたみたいだね。」
「ええ、十分に。」
そして彼から顔をそむけ、言った。
「明日の代表決定戦。お互いに全力を尽くしましょう。」
「・・・ああ。」
おそらく、私は顔を赤らめているのだろう。だけど、その理由が・・・。
「明日香、顔赤くないか?」
「!き、気のせいよ!」
太陽の光を反射したためか、それとも好きな人と過ごして興奮したためか、わからなかった。
代表決定戦当日。私はいつになく、充実した気分だった。食事を済ませて、デッキを確認した。デッキ確認の最中に昨日、ジャーナリストが校内に侵入したが、すでに退去させたと鮎川先生がいったが、今となっては私にとってどうでもよいことだ。デッキ確認で、このデッキならよいデュエルができるだろうと確信した。そしてデュエル場に向かった。
代表決定戦は総当たり戦であり、順番は第1試合が十代と三沢くん、第2試合遊と十代、第3試合私と三沢君と続いていき、私と遊の対戦は最終戦だった。だが、私はすでに最終戦のことだけを考えていた。それは遊も同じだと思う。
最終戦。これまで私と遊は全勝で、この1戦代表が決まることになった。
「楽しもうぜ。」
「ええ。」
私は心の底から楽しく思い、デュエルをした。
デュエルの結果は私の敗北。だけど、悔いはなかった。むしろ、心地よかった。全力を尽くして今までで最高のデュエルができたし、なにより彼に褒められたから。
「【甲虫装機】をそのデッキで上手くしのいだな。やっぱり明日香はすごいよ。」
その笑顔を見て、私は彼の告白への返事を今日返すことに決めて、感謝の言葉を返したのだった。
「ありがとう。」
小南遊side
ふう、やっと落ちたな。俺は明日香の表情を見て攻略を確信し、内心で大きくガッツポーズをした。思えば、大変な道のりだった。特に最後のイベントは。俺はそう思って振り返る。
なにしろ、明日香を攻略する一方でジャーナリストを撃退しないといけなかったからな。原作でもアカデミアの秘密を探るために代表決定戦の最中にジャーナリストが潜入していた。そのジャーナリストの存在を知ることができなければ、俺はおそらくゲームオーバーになっていた。ゲームオーバー条件の『メインストーリーにおけるデュエルでの敗北(ただし、例外あり)』の例外によってだ。
そう考えると俺はついていた。昨日、明日香の痴態を見たついでに、監視カメラを確認したら侵入者を偶然発見することができた。それに実力もあった。その侵入者の対処に俺の奴隷としたアカデミア倫理委員会隊長や鮎川先生をあてることにしたからだ。そしてそれは成功した。後で2人には褒美をあげないとな。
そんなことを思っていると、明日香が近寄ってきてささやくように語った。「昨日と同じ場所で同じ時間に会いたい」と。俺は承諾し、いったん別れて時間を待った。彼女を抱くときを考えながら。