課外授業があった日から数日後。授業が終わると大徳寺先生に校長先生にくるように言われた。呼ばれたのは俺と十代、万条目、三沢、そして宮田ゆまだった。校長室に行くと、ドアの前でクロノス先生と響みどり先生に出会った。そしてそのまま、校長室へと入った。そこにはすでに校長がいた。
「みなさん、よく来てくださいましたね。いきなりで悪いのですが、本題に入ります。」
そしていつものおちゃらけた表情はどこへやら実に真剣な表情で事実を告げた。
「皆さんには守ってもらいたいのです。『三幻魔』のカードを・・・。」
校長先生の話によると、この学園には闇の力ともいうべき恐ろしい力を持つ様々なカードが封印された地に建てられており、今回はそのうちの1つ、『三幻魔』のカードの封印が解かれようとしているので、それを防いでほしいということだ。
「これが『三幻魔』の封印を解く鍵です。全部で7つあります。あなたたちにはこの鍵を守っていただきたいのです。」
「・・・それはわかりましたけれど、どうやってですか?」
宮田さんは課外授業のときの元気のなさはどこへやら彼女らしい態度で質問をした。・・・そういえば、宮田さんのことを調べるのを情事にかまけて忘れてたな、今日は必ずしよう。それはともかくとして、宮田さんの当然の疑問に対して鮫島校長はこれまた当然のように返した。
「もちろん。デュエルによってです。『三幻魔』の鍵はデュエルによって守るのが決まり。そのため学園内でデュエルに秀でたあなたたちを選抜したのです。」
・・・デュエルに秀でたねえ・・・。それだったら俺のハーレムメンバーに任せれば、ワンキル、無限ループ、理不尽なパワーカードの応酬で一方的かつ最速でけりがつくと思うんだが・・・。そんな思いを知らずに、校長は続ける。
「・・・今回のデュエルはただのデュエルではありません。今回行われるデュエルではどんな危害があなたたちに及ぶかわかりません。ですので、戦う勇気のある方だけ鍵をとってください。」
そうして鍵を俺たちに差し出した。・・・これってある意味ずるいよな。みんながいる前で世界のために戦うことを求められたら、戦わなかったら後々どんな社会的制裁などを喰らうかわからないじゃないか・・・。実質、参加を強制させられてるのと同じじゃないか・・・。心の中で校長に毒づくのを尻目に、みんなは鍵をとっていった。
「小南君。あなたはどうしますか。」
みんなの視線を感じた。それに少し気圧されつつも発言した。
「少し、質問してもよいですか。」
「どうぞ。私にこたえられることなら。」
「鍵が『三幻魔』の復活に必要なら壊すなり、海に捨てるなりすれば解決することじゃないですか?」
「いえ、言い伝えによると壊したり、紛失したりした場合には『三幻魔』のカードが解き放たれるとあります。それに海馬コーポレーションが実験をしたところ、トンカチ、のこぎりはおろかコンクリートを粉々にする爆弾を用いても破壊できず、また投棄してもひとりでに元あった場所へと帰還するという結果が得られました。つまり、少なくとも今のところは言い伝え通りデュエルで勝利するほか、ありません。」
「・・・もう1つ質問なのですが、どういった基準でこのデュエリストが選ばれたのですか?」
「海馬コーポレーションのスーパーコンピューターが導き出した結果、この7人が鍵を守るのにふさわしいとのことです。」
「なるほど。ではもう1つ。」
「・・・なんでしょう?」
「報酬は出るんですか?」
すると校長は今までの真剣な表情を少々崩して、普段の微笑みをつくりこういった。
「・・・それは考えてませんでしたね。でしたら、こうしましょう。生徒の皆さんは今学期の月一試験をすべて免除。先生たちは今学期中の給料を倍。これでどうです。」
周りから歓声が上がった。俺は鍵に手を差し伸べ、微笑んでいった。
「わかりました。参加させていただきます。」
そして、首に鍵をかけた。首をかけてから、質問しておかないと不自然なことがあることに気付いた。
「・・・最後に、もう一つだけ。」
好きな刑事ドラマの主人公のセリフで質問した。
「戦う相手は誰ですか?」
校長は質問されて、「はっ」とした表情となった。
「そういえば言っていませんでしたね・・・。あなたたちが戦う相手は」
いったん止めて答えた。
「『セブンスターズ』です。」
『ふん。そんなことでわざわざ質問してきたのか?』
「・・・『そんなこと』ではないだろ。世界の命運がかかってるんだぞ。」
『ふうん。オカルトもここまで来ると面白くなってくるな。』
校長室から出ると俺は旧校舎に戻り、海馬に連絡をとっていた。
「・・・要するにいろいろとやばそうなカードが封印されているところにアカデミアを建てた理由はデュエリストの能力を向上させる機会を増やし、かつ警備を増やすためか?」
『その通りだ!何度も言わせるな!!』
「・・・ふむ。よくできてる。」
『何がだ?』
「いや、こっちの話だ。」
『ふん、ならばもう切るぞ。俺も忙しいのでな。』
「ああ、わかった。ありがとう。」
『ツーツー。』
「・・・・・・」
「ありがとう」の「あり」あたりで切りやがった。海馬の対応に少しいらだちつつも、気分を変えてまたつぶやく。
「しかし、本当によくできてるよな。」
このゲーム、「つくれるエロゲー」で作られたこの世界は俺が楽しめるように俺の好みに合わせて作られている。これまでにそのことを何度も感じた。例えば、「なぜ鍵を破壊しないのか」という質問に対する答えなどがそうだ。おかげで今まで随分と楽しみ、愉しませてもらっている。そのことを再認識したうえで俺はこのゲームをクリアするために考えた。
「・・・このイベントではどんな俺好みの展開になるのだろうか。」
この世界が「つくれるエロゲー」で作られた世界である以上、クリアした際の結末は俺にとって望ましいものになるはずだ。そこから逆算すれば・・・おのずと攻略への道筋がわかる・・・。
そうして考えると1つの仮説が生まれた。この仮説が正しいか、その確認のために電話と監視カメラの確認を行った。
自分の仮説に確信を持てた俺は彼女を呼び出した。待ち合わせの場所に来て10分後、彼女は現れた。仮説を確かめるべく、彼女が来るまでに考えた対応を実行に移した。
「待ち合わせに来てくれてありがとう。宮田さん・・・。いや『セブンスターズ』と呼んだ方がよいのかな。」
「・・・なにを言っているんですか?」
そうしてあきれた口調で彼女はこういった。
「私のことは『ダークネス』と呼びたまえ。」
やはりそうか。俺は仮定が当たっていたことを確信し、ため息をついた。
「・・・それにしても驚いたな。どうしてわかったのだ?」
「そりゃあ、わかるさ。『友達』の様子があそこまで変だとな。」
・・・実際には監視カメラでここ数日のゆまの様子を確かめたり、セブンスターズの対戦相手を思い出してそれがいったい誰に対応するのかを確認したり、タッグフォースで好きだったネタを思い出したりした結果だがな。
『ダークネス』は俺の言葉を聞くと、しばらく肩を震わせた。そして嘲り笑った。それは『宮田ゆま』という魅力的な女性の姿で行われていることから、ひどく不釣合いであり、不快であり、そして不気味だった。
「なにがおかしい?」
「いや、なに。お前がこの娘を『友達』といったことが少しおかしかったのだよ。」
「どうしてだ?」
「なに簡単なことだ。なぜ彼女が私に乗っ取られてしまったのかを知ればおのずとわかるだろう。」
「・・・・・・。」
「さて、それでは彼女が私のもとにくるまでのことからはじめようか・・・。」
『ダークネス』の話を要約するとこういうことだ。
宮田ゆまは以前、俺に話した通り「ヒーロー」になることを目指していた。悪をくじき、弱きを助けるヒーローに。そのため、彼女は努力をしていた。荷物運びをしたり、人助けをしたり、誰かのためにデュエルをしたりするなど、頑張っていた。しかし・・・。
「彼女は気付き始めたんだ。いや、目をそらしたかったのかもしないな。『ヒーロー』には誰でもなれるものじゃない。」
勉強を教えようとしても教えられない、荷物運びをしても感謝されない、誰かのためにデュエルをしても敗北する・・・。一度、二度なら受け入れられたことも何度も重なると受け入れられないようになった。そして、ある日。彼女は自分を見失い、外に出た。そして、気付くと人の立ち寄らないところにいた。そして・・・。
「そこには私がいた。というわけだ。そして私は人の心の闇に付け込み、虚無の世界に引きずりこむことができるのでね。悪いが、彼女の意識を乗っ取らせてもらった。」
「・・・いつからだ?」
「そうだな。私が乗っ取り始めたのが、あの課外授業のあった日の2日前。完全にのっとたのが今朝早くといったところか。」
・・・しくじった。なぜ、今日まで異変を放置しておいた。俺はハーレムを目指してたんだろ?だったら情事にかまけずにいち早く調べておくべきだっただろうがっ!!・・・いや、待て。どうして俺はこんなに腹立たしく思っているんだ?結局はゲームだろう?それなのに?
様々な感情が入り乱れる中、俺は質問をした。
「宮田さんは戻ってくるのか?」
「ふん。『友達』の危機を知らなかったくせに今になって救おうとするのか?」
「答えろ!!」
自分でも驚くほどの声が出た。
「おお、怖い。怖い。しかし、答えてあげよう。私にデュエルで勝つことだ。そうすれば彼女は戻ってくる。」
「・・・本当だな?」
「本当だとも。君の『友達』と七星門の鍵をかけてデュエルだ。」
「・・・いいだろう。デュエルだ。」
すると、メールが届いた。確認するとデュエルに対する制限が書かれたものだった。確認して、再びダークネスに目を向けた。すると、場所がいつの間にかアカデミア火山になっていた。
「ここで、君とデュエルだ。中々、いい風景だろう。」
「ああ、そうだな。ダークネス。でははじめるか。」
こうして、鍵をかけた最初のデュエルは始まった。