深夜、旧校舎の一室で俺はあるものを持っていた。「電動マッサージ器」、通称「電マ」である。俺はそれを彼女の秘部に押しあてた。すると、いつものように喘ぎ声をあげた。
「ああ~♡もっと、もっとして~♡」
勤務時間中の凛々しいとはうって変わって牝の顔をさらしていた。この様を盗み見たもので、彼女が「デュエルアカデミアの倫理を守る」という使命のためにはたらくデュエルアカデミア倫理委員会の隊長であると真実を知ることができるものはいないだろう。いたとしても二桁もいないだろう。そう思いつつ、俺はさらに快楽を与えることにした。
「ああ♡いっちゃう~♡いっちゃう~♡」
そういって彼女は体をくねらせた。女性が絶頂を迎えるときの動きだった。しかし、俺は彼女に絶頂を迎えさせなかった。「電動マッサージ器」を秘所から外したのである。
「え・・・?」
彼女は驚きの表情をつくった。彼女は旧校舎に入ったところを俺につかまり、調教を受け続け、開発を受けた。そうした調教・開発の経験から初めてのことに戸惑っているのだ。しかし、俺は彼女にこういってドアへと向かった。
「あとは自分で慰めろ・・・。」
「・・・わかりました」と彼女は返事をした。それは困惑と落胆、欲情が程よく入り混じっていた。俺は部屋の外へ出た。出る際に、彼女が欲望のまま自慰をする声が聞こえた。俺は少し立ち止まると、そのまま歩き続けた。
宮田ゆま、正確には宮田ゆまの体をのっとたダークネスによって俺が傷つけられたことが知られた後、すぐにクロノス先生と響先生を保健室に送り届けた。そして、保健室で俺たちは誰が言うともなく自然解散した。湖に現れたカミューラの城から保健室で解散するまで、誰も口をきかなかった。
俺はその後、普段のように女性を呼んで夜伽させることもなく、寝ようとした。しかし、寝つけなかった。気分も晴れなかった。なので、よくいえばセックスフレンドにしていたアカデミア倫理委員会の隊長を呼びつけ、からかうことで気分を晴らそうとした。しかし、いつもなら気分が晴れることをしても気分は晴れない。しょうがないので今日は寝ずに過ごすことにした。水を片手に本を読み続けた。こうして翌朝になった。
朝食をとるため、いつものようにレッド寮の食堂に入った。すると、十代達がいた。いつもの騒がしさがなく、静かだった。十代達と一緒に食事をすることにした。「なぜ、いつもと違って静かなのか」尋ねると「デュエルが楽しいものじゃないとわかったから」と返された。どうやら十代はデュエルの楽しさに疑問を持ち始めたようだった。それからはなにもいうことはなく、ただ黙ってお世辞にも豪華とはいえない食事を済ませ、教室へと向かった。
教室について授業をしばらく受けた。いや「受けた」というよりも「いた」という方が正しいだろう。なぜなら俺は授業を受けることにではなく、宮田さんを捜すことに集中していたのだから。そのために普段なら答えられる問題を間違えた。そのため、先生から体調を心配された。しかし、それほどまでに集中して捜した結果、彼女は今、教室にいないということがわかった。そのため、彼女の様子を知るためにみんなに話しかけることにした。
「・・・つまり、あれからずっと部屋にこもりきりってこと?」
「ええ、つまりはそういうことです。」
麗華がいつものように的確かつ端的に状況をまとめて教えてくれた。それを補足するように彰子が感情をこめて言葉をつなげる。
「・・・あれから食事をとっていないし、このままじゃあ・・・」
「・・・ボクたちがいけないんだよね。・・・遊を助けられなかったのは私たちも同じなのに、宮田さんを一方的に責めたから。」
沈痛な表情をツァンは作った。明日香と雪乃もそれは同じだった。つられて他の2人も作ろうとした。俺はそれを言葉や手ぶりなどを使って押しとどめた。そうしながら俺は思った。彼女たちはきわめて優しい人間だと。なぜなら俺が同じような立場に立たされたときに彼女たちと同じような行動をとった人間は俺の周りにはいなかったのだから。とりあえず、その会話は出て来たいと思うまで宮田さんを見守ることや食べ物と飲み物をどうやって渡すかなどを決めたりして終わった。
彼女たちと別れた後、購買に向かった。しかし、いつものようには働けなかった。トメさんとセイコさんから心配され、早引きするように言われたほどだ。俺はその好意を受けて早引きした。
ベットに横たわり、「どうして俺はこんな風に気落ちしているのか」について俺は考えていた。ゲームの登場人物がどうなろうとプレイヤーである俺には関係ないはずなのに・・・。いくら考えても答えは出なかった。また他のキャラを攻略しようという意欲もわいてこなかった。このままではいけないと思いつつもこの日は何もせずに過ごした。
翌日、俺たちはアカデミアにある大浴場に来ていた。聞くところによると大浴場は本格的な娯楽施設に匹敵しうるものらしい。「らしい」というのは大浴場はオベリスクブルーと教員の専用施設であり、俺は今までに行ったことが無かったからだ。今回、行くことができたのは大徳寺先生と鮫島校長の計らいによるものである。俺たちは男湯と女湯に分かれて風呂に入った。俺は風呂が好きなのでゆっくりと浸かっていたが、十代達は泳いでいた。その様子を目を細めてみていると、人の気配がした。振り向いてみると彼女がいた。あわててタオルを巻き、彼女めがけて駆け出した。風呂場で走ったので、こけそうになったがかまわなかった。そして、彼女と対面した。
「・・・・・・どうしてここにいるんですか?」
一呼吸おいて名を呼んだ。
「お婆さん?」
お婆さん、俺に「つくれる」エロゲーを売った老婆はにやりと笑った。
俺の質問には答えずにお婆さんは服を脱いだ。そしてかけ湯をして、風呂に入った。そのため、俺も風呂に入った。十代達はどこかに行ってしまったので今この場に居るのは俺たちだけだった。お婆さんは風呂を堪能しているようだった。目を閉じ、無言を貫いた。そのため、俺も口をきかなかった。静寂が続いた。
「・・・・・・ところで」
老婆が口を開いた。
「どうでしょうか。『「つくれる」エロゲー』の出来は?」
「・・・え、ええ。最高です!!」
俺はとっさに表情を取り繕ってありのまま、事実を述べた。
「女性キャラもストーリー展開も今のところ実にすばらしいですし、これからの展開も楽しみです。」
「・・・・・・」
「今から思うと買ってよかったと思っています。」
「・・・・・・でしたら」
老婆は目をこちらに向いてさほど大声ではないが、よく通る声で質問をしてきた。
「どうしてそれほどまでに悩ましげな表情をされているのですか?眉間にしわが寄っていますよ。」
・・・っ!!表情を取り繕ったはずなのに、どうしてこの老婆は俺の心がわかったのだろうか?
俺は思わず、手を顔に当てた。そして老婆の魂胆がわかった。思わず俺はにらめつけた。老婆は俺のにらみをどこ吹く風と受け流し、笑いながら言葉を続けた。
「手を顔に当てたということは私のいったことは正しかったということですね。」
「っ!!ええ、そうですよ!!」
「よろしければ、どうして悩まれているのかお聞かせ願えますか?」
激情にかられつつも、俺は本当に眉間にしわを寄せてどうしたものか考えた。そして真実をあるがままに答えることにした。ため息を一つついて、話し出した。
「じつは・・・」
「・・・というわけなんです。」
「・・・なるほど。要するにあなたは登場人物に感情移入しすぎてしまうので自分がおかしくなってしまったのではないかと思っておられるわけですね・・・。」
「ええ、まさしくその通りです。」
老婆はしばらくの間、空を見上げた。そしてぽつりとつぶやいた。
「・・・今のままでよいではありませぬか?」
「うん?」
「今のままでよいと申し上げたのです。」
「どうしてですか?」
「『「つくれる」エロゲー』とはあなた様が望むエロゲーとなり、あなた様にひとときの幸せを提供するものです。そのエロゲーをプレイした結果として、あなた様が悩まれているということはそれはあなた様のためになるから悩ませているのでしょう。」
「・・・・・・そういうものですか。」
「いずれにせよ、あなた様はお考えになられることです。」
「何にですか?」
「あなた様がなぜ悩んでいるのかについてです。思索を止めずに考え続けるのがよろしいでしょう。」
・・・その言葉を聞いて、心が楽になった気がした。老婆は優しげな表情で、もの柔らかにこういった。
「その表情をみるにもう悩みはふっきれたか、少なくともましになったようですね・・・。」
「ええ。」
そして老婆に向かって宣言した。
「俺はこのエロゲー世界でハーレムをつくります!!絶対にです!!」
「どうぞ、頑張ってください。」
老婆は温かい目をこちらに向けた。自分の言ったことを思い直し、俺は赤面した。すると、何かが泳いでくる音が聞こえた。目を凝らすと十代達のようだった。
「・・・それではそろそろ失礼します。」
いつの間にか老婆は体をふき、服を着ていた。去ろうとしたので俺は呼び止めた。
「最後に1ついいですか?」
「なんでございましょう?」
「どうしてあなたはここにいるのですか?」
「ここが『「つくれる」エロゲー』の世界であり、あなたの望んだ世界だからですよ・・・」
なんとも形容しがたい表情と声色でそう老婆は答え、姿を消した。どうやって姿を消したのかはわからなかった。しばらく、ぼーとしていると、十代たちがやってきて湯をかけた。目を向けると「遊もやろうぜ!!」と泳ぎに誘われた。俺は笑って肯定した。
それからは泳いだり、アニソンなどを歌ったり、異世界で『正義の味方 カイバーマン』とデュエルしたりして楽しんだ。ちなみに俺は精霊のサラにちなんで【墓守】を使用したら、サラは喜んでくれた。・・・もしかしてサラってチョロイン?
こうして十分に楽しんで風呂から上がるともう夕焼け頃であった。しかし、俺も十代達も心は晴れ晴れとしていた。十代が「俺のデッキ見てくれよ!!遊!!」といったことを考えれば、十代を攻略できたようだった。そう思いながら、女性陣と合流することにした。女性陣をみると、女性陣も俺たちほどではないが、心はましになったようだった。顔がこころなしかましになっている気がした。こうして俺たちは大浴場を後に寮へと帰途についた。帰り道を歩いている最中、俺は「どうやって今の女性を攻略するか」を考えていた。こうして老婆に再会し、元気をもらった俺はこのゲームをクリアしてハーレムをつくるという夢であり願望であり目標を再開するのだった。
・・・・・・・・・なお、帰り道で十代に「風呂場で俺たちと離れてたときに何をしていたんだ?」と尋ねられた際に、深く考えることなく「昔なじみの女性と話し合っていた。そして元気をもらった」と正直に答えて、女性たちの怒りをかい、罵倒されたり暴力をふるわれたりしたのだが、それはどうでもいいことである。本当に・・・どうでも・・・。
・・・とにもかくにもこうして大浴場での一日は終わりをつげ、セブンスターズとの新たな戦いが幕をあけるのだった。