また俺は懐かしい思い出を再現した夢を見ていた。しかし、今度は思い出したい夢だった。
『お兄ちゃんはどうして遊って名前なの?』
考えたこともない質問だった。そのため、俺は少し悩んでこう答えた。
『そうだなぁ。多分○○○だからだと思うよ。』
『ふーん、そう「ゆ」ん「う」。』
妹の返事になんらかの雑音が混ざり始めた。しっかりしてくれよ。俺の夢。これからいい所なのに!
『・・・う・・・』
だから、うるさいって!
『遊!遊!』
静かにしてくれ・・・。そう何人もいっぺんに喋るんじゃない。そう思い、耳をふさごうとすると両手をつかまれた。
『遊!!』
そして、耳元で今までで一番大きな声で叫ばれた。その一言で俺は覚醒した。
デュエルは俺の敗北に終わったが、ゲームオーバーにはならなかった。その理由はゲームの設定でゲームオーバーの条件を『メインストーリーにおけるデュエルでの敗北(ただし、例外あり)』にしていたからだ。おそらく、あの老婆とのデュエルは確実に俺が負けることが決まっていたデュエルなのだろう。しかし、俺は昨日の寝不足のために倒れてしまったというわけだ。
「遊・・・よかった・・・本当によかった・・・」
みんなは泣いていた。学生も先生も、男も女も、人間も精霊もここにいる全員が泣いていた。その様子をみると俺はこの世界に来てよかったという思いに浸ることができた。しかし、その思いに浸ることはできなかった。
風が強く吹きすさびはじめ、海が荒れ出した。七星門から妖しい緑色の光が天に向かって伸びると、地面から柱が隆起し始めた。
「行ってみよう。」
誰かが言ったその一言で俺たちは柱のもとへと向かった。柱に到着すると眼に入ったのは、柱に七星門の鍵が吸い込まれていく場面だった。鍵が吸い込まれると地中から3枚のカードが現れた。おそらく三幻魔のカードだろう。
「そのカードを貴様らにやるわけにはいかんな。」
空から機械音交じりの声が聞こえてきた。空をみると何かが飛行機から落とされた。落とされたものは人間の入ったロボットだった。その人間は映画などでよくみかけるような生命維持装置カプセルの中に入っていた。鮫島校長がカプセルに入った人物の名を口に出した。
「影丸理事長・・・。」
俺を除く全員が驚きの表情になった。影丸は俺たちを無視して語り始めた。
「ときは満ちた・・・これより三幻魔復活の儀式をおこなう。」
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影丸の話は要約するとこういうものだった。
・このデュエルアカデミアには世界の覇権と永遠の命を得ることができる三幻魔のカードの存在を知った。
・影丸は三幻魔のカードを手にするためにこのデュエルアカデミアの理事長になった。
・しかし、三幻魔のカードを手にするためにはこのデュエルアカデミアをデュエリストの闘志で満たす必要がある。
・そのため、三幻魔の封印を解くにはセブンスターズに戦って勝たねばならないという話をでっちあげた。
少々、原作と内容が違っているような気がするが、おおむねこんなところだ。影丸の話を聞くとみんなは怒りだした。当然だろう。「フラスコ計画は人工的に天才を創るためではなく、実際は失敗するためにやってます」みたいなことを当事者に知られたら怒り出すに決まっている。
「さあ、幻魔復活の時間だ!小南遊よ。ディスクを構えろ!さもなくば、この島は海に沈む。」
「・・・いいだろう。」
俺はここにいる全員に振り返ったあと、そう答えた。全員の目は俺を信頼している目だった。影丸に向き直ろうとして、大徳寺先生が呼び止めた。
「小南くん。このカードを使ってくださいニャー。」
「このカードは?」
「先生の錬金術の成果ですニャー。」
俺はカードを一応確認した。
・・・「こんなカード俺は36枚持っているよ」と言ってカードを破かず、カードを1枚デッキから抜くと、そのままそのカードをデッキに差し込んだ。
「大徳寺先生。ありがたく使わせてもらいます。」
「別れは済ませたか・・・。では、始めよう。」
こうしてデュエルは始まった。
『デュエル!』
「私の先攻だ。私はトラップカードを3枚伏せる。」
「どういうつもり?」
「わざわざ伏せカードの種類を宣言するなんて正気か?」
「悪いが、これは幻魔の召喚条件なのだよ。3枚のトラップカードを生贄に『神炎皇ウリア』を特殊召喚!」
火柱が現れ、そこから炎の幻魔が現れた。みんなの息をのむ音が聞こえた。
『神炎皇ウリア』(原作効果)
効果モンスター ☆10 炎属性 炎族
攻撃力0 守備力 0
自分フィールド上の罠カード3枚を墓地に送った場合に特殊召喚する事ができる。1ターンに1度だけ、相手フィールド上にセットされている罠カード1枚を破壊する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠の効果を受けず、魔法・効果モンスターの効果は発動ターンのみ有効となる。このカードの攻撃力・守備力は自分の墓地の罠カード1枚につき1000ポイントアップする。このカードが墓地に存在する時、手札の罠カードを墓地に送ることで、墓地のこのカードを特殊召喚することができる。
このターン、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このカードは攻撃をすることができない。
「続けて『命削りの宝札』(原作効果)を発動。デッキから手札が5枚になるようにドロー。手札の魔法カードを3枚伏せる。」
「手札の魔法カードを・・・」
「まさか、また・・・」
「そのとおりだ!3枚の魔法カードを生贄に『降雷皇ハモン』を特殊召喚!」
『降雷皇ハモン』(原作効果)
効果モンスター ☆10 光属性 雷族
攻撃力4000 守備力 4000
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の魔法カード3枚を墓地に送ることで特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠の効果を受け付けず、魔法・効果モンスターの効果は発動ターンのみ有効となる。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。守備表示のこのカードが破壊されたターン、コントローラーの受けるダメージは0になる。この効果は発動ターンのみ有効とする。
みんなの恐怖が目に浮かぶようだった。しかし、影丸はさらに展開するようだった。
「手札からフィールド魔法『失楽園』発動。その効果によりデッキからカードを2枚ドローする。『幻銃士』召喚!その効果によって銃士トークン2体を特殊召喚!そして『二重召喚』!!この効果によりこのターン私は通常召喚を2回行える!3体の悪魔族モンスターを生贄に『幻魔皇ラビエル』を特殊召喚!」
『幻魔皇ラビエル』(原作効果)
効果モンスター ☆10 闇属性 悪魔族
攻撃力4000 守備力 4000
このカードを生け贄召喚する場合、三体の生け贄を捧げなければならない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠の効果を受け付けず、魔法・効果モンスターの効果は発動ターンのみ有効となる。相手がモンスターを召喚・特殊召喚した時、自分フィールド上に「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を同じ数だけ特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言を行う事ができない。1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター2体を生け贄に捧げる事で、このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの攻撃力分アップする。
「これでターンエンドだ!さあ、絶望に震えるがいい!」
その一言と同時に変化が訪れた。
周りの風がより強く吹きすさびはじめた。波も高くなった。空も雨雲が覆い始めた。だが、そんな変化は重要ではなかった。
『うぐ・・・』
『うう・・・』
『ク・・・リ・・・』
『アニキ、おいら・・・力が・・・』
精霊たちの力が奪われ始めたのである。そして、それに反比例するように影丸の体調は良くなっていった。いや、この表現は正確ではなかった。より正確にいえば、影丸の体が若返り始めたのである。老人から高齢者、高齢者から中年、そして青年へと体つきが変わり始めた。そして、どうみても「青年」としか表現しようのない姿になるとカプセルを破壊し、外に出た。
「ふははははは!これが三幻魔の力だ!幻魔は精霊の力を吸い取り、力を手にする!このデュエルに勝利した後、三幻魔は精霊を吸い取り、俺は世界の覇権と永遠の命を得ることが約束されるのだ!!」
影丸の言葉で全員が驚きの表情と言葉を発した。俺はというと、「力を持ったものは結局、永遠の命をほしがるのだな」と思っていた。そう思うことに飽きると、俺は軽蔑の表情をつくり、鼻で笑った。
「甘いな・・・。」
「なに?」
「その程度の力でいい気になるなんて・・・。お前馬鹿だろ・・・。」
「なんだと!」
「それを今、証明してやる!俺のターンドロー。」
引いたカードは大徳寺先生に渡されたカードだった。
「手札から魔法カード『賢者の石-サバティエル』を発動!効果により、LPを半分支払い、デッキから『愚かな埋葬』を手札に加える!そして『愚かな埋葬』を発動し、墓地にモンスターカードを1枚送る。そして、『賢者の石-サバティエル』を手札に戻す。」
小南遊 LP4000→2000
『賢者の石-サバティエル』(通常魔法・アニメ遊戯王GXオリジナルカード)
「ハネクリボー」が破壊された時、デッキのこのカードを手札に加える。ライフポイントを半分支払い、自分のデッキ、墓地にあるカードとこのカードを交換する。交換したカードを使用した後、このカードを手札に戻す。この効果で3度交換した後、次の効果をこのカードは得る。このターン、対象となったモンスター1体は相手フィールド上にいるモンスターの数だけ、モンスターの攻撃力を倍化させる。
「再び、『賢者の石-サバティエル』の効果を発動!デッキから『黄泉天輪』を手札に加える。そして『黄泉天輪』を発動!この効果により、場のモンスターをすべて破壊する!」
「なに!」
「そして互いのデッキのモンスターをすべて取り除き、墓地のモンスターを1ターンにつき1体特殊召喚する。」
「?それじゃあ、遊はモンスターを出せないんじゃ?」
「いや、遊の墓地には・・・」
「ああ。『愚かな埋葬』で送ったモンスターがいる。」
「ふん、どんなモンスターを出そうと三幻魔には・・・」
「それが、いるんだな。俺が特殊召喚するのは『光の創造神 ホルアクティ』!」
墓地から『光の創造者 ホルアクティ』が『黄泉天輪』のエフェクトにより現れた。それは本来の神々しさと合わさって「見事」の一言に尽きた。
「ば、馬鹿な・・・ホルアクティだと・・・ホルアクティには・・・」
「ああ、『黄泉天輪』の効果での特殊召喚には召喚条件は無視してかまわないんだ・・・」
「なんだと?」
『黄泉天輪』(永続魔法・アニメ遊戯王オリジナルカード)
フィールド上のモンスターを全て破壊する。お互いのプレイヤーはデッキのモンスターカードを全てゲームから取り除き、墓地のモンスターを1ターンにつき1体特殊召喚する。このカードがフィールド上にある限り召喚・特殊召喚に必要な召喚条件を無視しても構わない。このカードの効果で召喚・特殊召喚されたモンスターは破壊された時、墓地に行かずにゲームから取り除かれる。
「『光の創造神 ホルアクティ』の効果!このカードがフィールドに特殊召喚されたとき、コントローラーはデュエルに勝利する!すべてを光で満たせ!『ジェセル』!」
『光の創造神 ホルアクティ』
効果モンスター 星12 神属性 創造神族
攻撃力? 守備力 ?
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の、元々のカード名が「オシリスの天空竜」「オベリスクの巨神兵」「ラーの翼神竜」となるモンスターをそれぞれ1体ずつリリースした場合のみ特殊召喚できる。このカードの特殊召喚は無効化されない。このカードを特殊召喚したプレイヤーはデュエルに勝利する。
俺の一言により、世界はただ光に包み込まれた。それはただ「美しい」と表現するほか、なかった。
光が消えると、そこには元の老人の姿に戻った影丸がいた。
こうして世界は救われた。