※この作品はR-18です。

比企谷八幡がイチャラブするのはまちがっている。R   作:暁英琉

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「こま、ち……?」

 

「…………」

 

 かすれ気味の俺の呼びかけに、小町は答えない。相変わらず背を向けて、さっき以上にぎゅっと強く炬燵布団を顔に押し当てている。分厚い布団を口や鼻に密着させて苦しくはないのだろうかと思うが、その分一回一回の呼吸を深呼吸のように行っているようだ。深く、深く。

 そして、小町が何も答えないから。

 ――ドクン、ドクン、と。

  静かになったリビングで、心臓の音だけがいやに大きく聴覚を刺激してくる。この鼓動は俺のものか。それとも密着している小町から伝わってくるものか。

 あるいは――その両方か。

 ……ないない。

 頭の中で小さく首を振って、ふと湧いてきた考えを否定する。俺たちはなにより兄妹なのだ。他人にすれば通報されても仕方がないようなボディランゲージだって日常茶飯事だし、そもそもこれはなかなか起きない妹へのお仕置きのようなもの。頭を両手で強めに撫でることとさしたる違いはない。

 

「小町、まだ起きる気は……ないんだな?」

 

「――――」

 

 俺の問いかけに、やはり小町は口を開かない。その代わり、かすかに、震えるように小さく首を縦に動かしてきた。起きるつもりはない、ということだろうか。

 まったく、まったく……。

 

「そうか……起きる気がないなら、お兄ちゃんももっと頑張って起こさないと、な」

 

 小町の腹に乗せていた右手をそっと離す。戒めが半分解かれたが、小町は抜け出そうとする気配すら見せない。その様子にぐっと下唇を浅く噛んで、飛び出してきそうな“何か”を押さえつけ、自由になった右手をすっと下へと伸ばした。

 俺と小町はだいたい頭一つ分くらいの身長差がある。当然その腕の長さも、身長比と同じくらいの比率で俺の方が長い。小町と同じ頭の位置まで身体を炬燵に沈み込ませた俺が腕を足の方へ、それも小町の足に限界まで伸ばせば、ふくらはぎの上部分くらいには手が届くのだ。

 

「……っ」

 

 ピト、と試しに五本の指の腹を触れさせてみる。一晩炬燵の中にいたせいかかすかに汗ばんでいるその肌は、まるで磁石に砂鉄がくっつくように吸い付いてきて、その瞬間小町の肩がピクンと小さく震えた。顔を完全に炬燵布団で覆っているから俺の行動が全く読めないのだろうから、こんなちょっとしたことにも驚いてしまうのも無理はない。顔上げてさっさと抜け出せばいいのに。

 とりあえず反応があることを確認したので、今度はその指を料理の時の“猫の手”を作るように折り曲げてみる。ゆっくり、指の腹でふくらはぎの柔肌を掻くようにさすられた小町は、驚いたのか「くはっ」とたまっていた息を吐きだした。

 

「それ、くすぐったいよお兄ちゃん」

 

「そりゃそうだ。そうなるようにやってんだから」

 

 未だに布団から顔を離さないのでくぐもった声での抗議が聞こえてくるが、そもそもこちらは最初から小町の嫌がることをして炬燵から追い出すことが目的なのだ。むしろ抗議する暇があったらさっさと出てもらいたい。そう思いながら元の形に戻るように指を広げ、また猫の手型に曲げる。この時意識してふくらはぎに触れるか触れないか、ぎりぎりの距離を保ち続けた。

 

「ん……ふー……ふー……」

 

 指の開閉運動を始めた俺の動きに、最初はまた空気が抜けるような声を漏らしかけた小町だったが、その声を紛らわそうとするように長く息を吐いて刺激に耐えている。

 おそらく「くすぐったい」というのは正確な意味ではないのだろう。くすぐっているようで撫でているような中途半端な刺激。的確に形容すべき言葉が見つからないから、小町は「くすぐったい」という言葉を選択したに過ぎない。まずはそんな淡い刺激から始めて、少しずつ段階を踏むことで――

 ……いや待て、なんで段階を踏む必要があるんだ? くすぐったさで炬燵から追い出そうとするのなら、くすぐりに弱いわき腹や足裏を攻めれば一発ではないか。

 いや、待つのは今している思考の方か。いきなりそんなことをしては最愛の妹がかわいそうだ。だから、段階を踏むのは兄なりの優しさ。さっきあえてゆっくりと距離を詰めたのと同じ、我儘な妹への猶予のため。……うん、きっとそうだ。

 ふっと浮かんできた疑問を打ち消し、止まっていた指の動きを再開する。不意を突かれた小町はまた小さく息を漏らして、それを隠すために長い息を一定のリズムで繰り返していた。完全に耐え忍ぶ体勢に入った小町から、抜け出すという選択肢は感じられない。むぅ、やはりこの程度の刺激ではギブアップは狙えないか。

 

「くふっ……は……」

 

 仕方がないので次のステップに移行することにした。五指の腹で相変わらず触れるか触れないかの微妙な距離感

を維持しながら、つつーっと白魚のような足――今は見えないのだが、普段よく目にしているから白魚みたいだということは理解している――を這い回る。ふくらはぎをなぞり上げて膝の裏をくすぐり、逆S字を描いて膝とふくらはぎの外側側面のスベスベを堪能するように移動させた。……あくまで堪能する“ように”であって実際に堪能していたわけではない。妹の足を堪能するとかどこの変態兄貴だよ。

 

「んんっ…………はふっ……」

 

 小町の反応がさっきの猫の手運動――字面だけ見るとかわいい――よりも明らかに大きくなった。手をむすんでひらいてするだけのさっきと違い、不規則に別のポイントで襲ってくるこそばゆさにとっさの対応ができないのだろう。

 というか、ほんとこいつの肌やわらけえな。中華まんの皮みたいなモチモチ感だ。……ん? 今の表現は褒めているのかな? 個人的には褒めているはずなのだが。中華まんって表現が悪いのか。なんかぽてっと太ってるイメージに繋がりそうだもんな。けど、このモチモチでほのかにしっとりしている感触は中華まんという表現が適切な気が……むむむ、難しい。

 まあ、小町の足の感触をどう表現するかはこの際置いておいて、このステップの最終段階に移行しよう。逆S字の軌道で俺の右手が辿り着いたのは右の膝小僧だ。やわらかい部分を経由した先にあった少し硬いそこを手探りで確認すると、指をククッと折り曲げてナックルボールの握りの形を形成する。ちょうど小町の膝が野球ボールみたいなイメージ。まあ、正確には爪の腹を膝に触れ合わせているだけなのだが。

 

「むぅ……なに、するの……?」

 

 指の第一関節で小さく円を描くように膝をさすると、小町がさっきよりも幾分明瞭な声で尋ねてくる。相変わらず布団を離そうとしないが、首をカクンと前に落としているところを見るに、おそらく炬燵の中での俺の手の動きは見えているのだろう。

 その声は少し震えているようにも感じた。

 ――ドクン。

 また一段大きくなった心臓の音が、どちらのものか分からない。ただ兄妹のスキンシップを取っているだけなのに、何かイケないことをしているような錯覚。水気を求める唇をちろっと出した舌先で舐め上げ――折り曲げていた指をゆっくりとフェザータッチを意識しながら開いていった。爪の腹から爪先、指の腹と硬さの違う部位が妹の膝に次々と当たっていく。

 ガキの頃に膝の上で指をすぼめたり開いたりして遊んだことはないだろうか。なんかぞわぞわするやつ。まさにあれだ。自分でやってもそこそこくすぐったいのだから、他人がやれば当然それ以上にくすぐったくなるはず。

 指を開ききって、小町の小さな膝を覆うように手で包み込んだら、今度はさっきの動きを逆再生するように開いた指をすぼめていく。ゆっくり、ゆっくり。

 わき腹ほどではないだろうか、このくすぐったさもそこそこのもののはずだ。さて、強情な妹はどうなっているかと意識を上に上げて――

 

「んん~~~~ッ、――ッ!」

 

 ……おい。

 おいおい。

 その反応は、俺の予想を明らかに超えていた。再び顔を思いっきり炬燵布団に押し付けた小町は、ブルブルと肩を震わせ、密着している背中を戦慄かせている。身体を丸めようとしているが、俺の左腕が邪魔してその身体はほとんど動かず、唇をキュッと引き結んでいるのか、何度も横に振っている頭からはギリギリ「ん」と聞こえる程度の音のなりそこないしか聞こえなかった。

 ゴキュッと、喉がやけにでかい嚥下の音を鳴らす。何故にそんな音が鳴ったのか、俺自身分からない。

 

「……なあ、小町」

 

 けれど、その音を作り出した喉は意味を理解しているのか、自分でもびっくりするほど熱を孕んだ声を漏らした。喉だけじゃない。身体の方は完全に理解しているようで、右手の動きを一時停止して自分の顔をただでさえ近い小町の耳にさらに近づける。

 

「まだ……起きない、よな」

 

「っ――。……う、ん」

 

 さっきまでとは少し違う自分自身の言葉のニュアンスに、こちらの意識がクラリとふらついてしまう。しかし、一瞬靄のかかった意識の中で、小町が途切れ途切れに紡いだ肯定の声だけははっきりととらえることができた。

 

「そっか。起きないなら、仕方ない……よな」

 

「ひっ、~~っ、はぅっ」

 

 止まっていた右手の動きを再開させる。単調な動きだけでなく、指の腹を小刻みに震わせてくすぐったり、ライフリングの溝を通る弾丸のように手首を捻りながら指を広げてみたり、少し複雑な動きも交えてみると、その度に小町が身体を震わせて反応してきて――それがかわいくてもっと、もっとと膝上の鍵盤に指を躍らせていく。

 もはや目的はすり替わっていた。小町を起こすことなんて二の次で、もっとかわいい反応が見たいという思いが先に来ていた。ただただ、その思いの赴くままに妹を刺激していく。

 だから、そうなることは当然だったのかもしれない。

 

「おっと……」

 

 炬燵の中で跳ねさせていた手が目測を誤って、膝から外れてしまった。着地したのは、おそらく内もも。薄いがしっかりとした肉付きの二つのそれが俺の手を挟み込んだ途端小町がガバッと顔をあげたので、危うく顔面で受け止めそうになった。

 

「ひぁっ……!」

 

 すぐ耳元で聞こえてきた常より一オクターブは高い声に思わず苦笑してしまう。いくらなんでも反応が大きすぎるだろう。こいつってこんなにくすぐったがり屋だったか?

 そう茶化してやろうかと、“お仕置き”を始めて以来久しぶりに見る妹の顔を横から覗き込んで。

 

「っ…………」

 

 その表情に、妹“と思われる”彼女の表情に、心臓を握り潰されたかのような錯覚を覚えた。




小町のお話2話目でした。まだ全然健全ですね(´・ω・`)

一つ一つの行為を濃密に書いてみたいなぁと最近思う次第で、右足触るだけというのに挑戦してみました。膝をさわさわーってやるやつどれくらいの人に伝わるんだろ。ぞわぞわして気持ち悪いような気持ちいいような変な感じなんですよね。
そういえば、あれってなんか呼称あるのかなと思って調べていたら、呼称は見つかりませんでしたが、どうやら膝ってやつは性感帯になりうるらしいですね。動脈が近いから神経も密集しているんだとか。これはいいことを知りました。

それでは今日はこの辺で。
ではでは。
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