比企谷八幡がイチャラブするのはまちがっている。R 作:暁英琉
純白である。俺の目の前に映っているのは純白の布に包まれた妹のヒップである。どっかの探偵アニメの劇場版タイトルっぽくするのなら『純白の下着(アンダーウェア)』。……やばい、バーローのファンに怒られそう。同じ小学館の人間だから許して!
まあ冗談は置いておいて。
はっきり言って普段から俺のシャツをワンピースのように着用している小町の下着姿なんて、兄からすれば見飽きている。なんか他人に言ったら普通に罵倒を受けそうなのだが、実際問題見飽きている――と思っていた。
「お兄ちゃん、ちょっと見すぎだよ……」
「ぁ……いや、これは……」
まさか、こんなに興奮するなんて思ってもみなかった。
何度も言うが、ただの布きれのはずである。おしゃれをする年頃だと言っても小町もまだ中学生。下着も今身に着けている白かイメージカラーの黄色くらいで、お世辞にも色気を感じるようなデザインでもない。だというのに、その布きれを見ただけで血流が加速するのはなぜなのだろうか。鼻を突いてくる女の甘い香りのせいか、俺の意識が変わったのか。
「えへへぇ、えっちだぁ」
「……うっせ」
いずれにしても、現在進行形で妹に欲情していることだけは事実だった。
鼻血が出る寸前のようなフワフワした感覚に頭の中を支配されてしまった俺に、小町はククッと喉を鳴らして笑いかける。欲望の脳内フィルターのせいか実際にそうなのかは分からないが、そんな表情すらいやらしく見えてしまった。
もうあれだ。末期かも分からんね。
「お兄ちゃんってさ……ひょっとして足フェチ……ってやつなの?」
「そんなこと……」
ない、とは言い切れなかった。あれだけ秘部を攻めるまでは延々と足ばかり触っていたのは事実だし、実際行為の最中はやけに楽しかった。万乳引力だの乳トン先生だのと夏頃は言っていたが、自分が気づいていなかっただけでその気はずっとあったのかもしれない。
まあ、結局のところはどうなのか自分自身よく分からないわけで。
「まあ、なんだ……」
興奮に揺らぐ焦点を合わせて、背を向けている小町の身体に目をやる。極端に白いわけではない健康的な肌。程よい肉の付いた、それでも十分細い女の子らしい腕。じわりと欲情の汗が浮き出た首筋。さっきまで延々と眺めて、触っていた尻や足は言わずもがな。
結局のところ、今の俺には妹の全てが魅力的に見えるわけで。
「強いて言えば、小町フェチなんじゃねえの?」
なんとなく思ったことを口にしてみると、当の小町は「ふぇ!?」なんてどっかのあざとい生徒会長を連想させる声を上げる。
中腰の中途半端な姿勢で振り向いた顔は性の色とは別の赤さを帯びていて――
「……お兄ちゃん、なんで時々そんな恥ずかしいこと平気で口にできるかな」
「なにが?」
赤い顔にじとっとした目つきというなんともかわいらしい表情で謎の文句を言ってくる妹に眉間に眉を寄せて首をかしげると、唇をもごもごさせた後、大きなため息を吐き出した。
「……なんでこんな女たらしに今まで女の子が寄ってこなかったんだろ」
「俺がぼっちだからじゃね?」
というか、女たらしってなんだよ。俺がいつそんなことをしただろうか。
「ま、いいや。とりあえず小町の中でお兄ちゃんは足フェチ認定されたから」
「なにそれ横暴?」
勝手に人の性癖を決めるのよくないと思います。しかし、俺の不平不満は一切無視されてしまう。正確には小町の質の違う笑みによって、“兄妹”から“男女”に引き戻されてしまったわけだが。
「足フェチなお兄ちゃんは、足で気持ちよくしてあげないとね」
そう言って小町はゆっくりと腰を下ろす。プリンとした臀部の着地点はさっきまでの膝より幾分上、テントを張り続ける股間よりもさらに上の、俺のへそのあたりだ。小町の体勢を自然なものにするために、俺は再び身体を倒すことになる。
さっきの名残で熱く湿っているショーツがカッターシャツをジワリと濡らしてきて、気持ちいいような気持ち悪いような、言葉に形容しがたい感情がわずかに顔を覗かせた。
「改めてみると、ズボンすごい張ってるね」
「改めて言わなくていいんだが……」
自分の股間の状況を実況されても困る。なんというか、急に恥ずかしさが再燃してきて、仰向けになったまま顔を両手で顔を覆ってしまった。
物理的に視界を奪った世界で、聞こえてくるのは自分と小町の息遣いと、身体を伝って内側から鼓膜を震わせる自分の心臓の音。それにジジ、とチャックを下ろす……チャック?
「こ、小町ちゃん? 一体何をやっているのかしら?」
両手を引き剥がして身体を捻り、小町の身体に隠れた自分の下半身を見てみると、すでに半分以上ズボンの前につけられたチャックが下ろされ、特に趣味でもない柄物のトランクスがわずかにはみ出ていた。
「だって、さすがにズボン脱がないとやりづらいじゃん?」
やりづらいって、なにを?
困惑する俺をしり目に、小町はズボンのチャックを下ろしきり、カチャカチャとベルトを外そうとしている。今更だけど、俺制服姿でこんなことしてるんだよな。なんとなしに時計に視線を向けてみると、すでに一時間目が始まっている時間だ。今日の一時間目は確か平塚先生の現国。次会ったときはまた鉄拳制裁だろうか。
少なくとも、それが実行されるのは明日以降に違いない。
「人のベルト外すのって、結構難しいね……よしっ、外れた!」
ベルトの金具が擦れる音が止まり、腰をわずかに締め付けていた感覚が緩まる。腰を浮かせるように言われたので、もう観念して妹の命令に従うと、ズボンがずるっとずり下された。
「さーて、これでお兄ちゃんも小町と同じで下はパンツだ……け……」
ここで小町に誤算があったとすれば、トランクス越しに男の局部は見えないと高を括っていたことで。
俺に誤算があったとすれば、トランクスの前開き部分から肉棒が飛び出してしまうほど自分自身が興奮していたことに気づかなかったことだろう。
「…………」
露出した局部が冬の屋内の空気に触れて身震いしてしまう。それでも全く萎える気配がない当たり、俺の性欲ってすごいのではないだろうか。
ところで、さっきから小町が固まってしまっているのだが、大丈夫だろうか。
「あの……小町、さん?」
「…………」
試しに声をかけてみるが、まるで反応がない。陰になっているので直接は見えないが、ただ茫然と俺の男根を見つめているようだ。え、なにそれ。超恥ずかしいんですけど。
「お、おーい」
「っ!?」
今度は背中をポフポフと叩きながら声をかけてみると、ビクッと身体を跳ねさせながら反応してきた。
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ! ちょっと油断してただけだから。うん、段階踏もうとしたら一段階飛び越しちゃっただけだから!」
「そ、そっか」
……なんだろ。明らかに大丈夫ではなさそうなのだが、そこを指摘してしまうと今以上に小町がメダパニ状態になってしまいそうだ。ここはあまり言及しないのが吉だろう。
しばらく俺の上で荒い呼吸を整えていた小町だったが、ある程度落ち着くともう一度視線を俺の股間に寄せてきた。
「これ、が、お兄ちゃんの……。すごい、ほんとに先っぽ剥けてるんだ」
おそらく雑誌やガールズトークなんかの知識と比べているのだろう。ロデオマシーンでバランスを取ろうとするように上半身を動かして、いろんな角度から観察している。亀頭から雁首、前屈みになって裏筋までまじまじと確認されるのは、なかなかの羞恥プレイだ。
そして、ある程度怒張の観察を終えた小町は――
「ぐぅっ……!?」
今度は触診に移行してきた。
指先でつつっと竿の側面をなぞられる。それだけでまるで頭に直接快感をぶつけられたような感覚に陥った。
「あ、今おちんちんビクッてしたよ? これって、気持ちいい、んだよね?」
「っ……、っ……!」
気持ちいい。素直にそう返そうにも、口を開けば快楽に負けた音のない喘ぎが溢れてきて、まともに返事もできない。
さっきまでの尻コキだって、十分な快感だった。他人に触れられる刺激には十分に備えたと思っていた。
まさか、直接触れられることがこんなに強い刺激だなんて、思ってもみなかった。
「んふ。気持ちいいんだね?」
肯定も否定もしない俺の態度を肯定と捉えたのか、小町は再び指を這わせてくる。肉棒の付け根をくすぐるように撫でて、裏筋に沿って竿を指が駆け上がる。片手の指は雁首の輪郭を確かめるように滑り、もう片方の手は固くなった肉棒で唯一柔らかい亀頭をぷにぷにとプッシュしてきた。
射精までは至らない。けれど、だけど……。
「うぁっ、こま、ち……それ、くっ……きもち、いい……」
俺を快感に溺れさせるには十分なものだった。視界に何度もチカチカとした火花が散り、腰は意思に反して跳ねるのを止めることができない。そもそも、もはや意思というもの自体が曖昧な状態だった。
「よおし、そろそろ……」
手の動きを止めて、俺の上で小町がもぞもぞと動き出す。どうやら小町の攻めはここが終着点ではないようだ。
そういえば、小町はさっき『足で気持ちよくしてあげないとね』とか言っていた。あれは一体……。
「お兄ちゃん、もっと、もーっと、気持ちよくしてあげるよ……」
残り少ない思考力を使っている間に聞こえてきた小町の声は、いつものように明るくて、だけど興奮で熱い呼気を混じらせていて――
俺の思考は、期待によって残りの全てを塗りつぶされてしまった。
小町もなんだかんだ六話目になりました。
最初は3話くらいの短いお話で終わる予定だったんですが、足でだいぶ書いてました。たぶん私は足フェチではありません。
それでは今日はこの辺で。
ではでは。