分割しようとも思いましたが、女性視点を1話にまとめてしまいたかったので。
<ぱっつんロング紅魔族の【夢】>
「やめて! 店を壊さないでー!!」
破壊の限りを尽くす魔王軍幹部シルビアの横合いから、私は悲鳴に近い叫びを上げた。
里に封印されていた『魔術師殺し』と同化することで魔法を防ぐ特性を身に付けたシルビアは、紅魔族の魔法攻撃をものともせず、これまで散々痛めつけられてきた鬱憤を晴らさんとばかりに暴れまわっていた。
ただ、里の人的被害は皆無に近い。みんながみんなテレポートを使えるため、状況が不利と見たらすぐに脱出できるからだ。
代わりに建造物の被害は甚大だった。シルビアは『魔術師殺し』の巨体を振るわせ、進路上にある家や商店をなぎ倒しながら進む。その軌道は無秩序で、いつ自分の住家が被害に遭うかもわからない状況に、里のみんなはワクワクしていた。壊されたら壊されたでネタにできると思っているのだ。
「やめて……! お願い、やめて! 店を……誰か、店を守って!」
そんな中、私は場違いにも必死になって叫んでいた。ちょうどシルビアの目の前に、私の家族が経営している居酒屋があったからだ。
他の人と違ってネタで叫んでいるわけではない。私は店を壊されると本当に困るのだ。
この里には優秀な大工がいるから、家屋が壊されたところですぐに元通りに直せるというのはわかっている。めぐみんの実家と違ってお金の心配があるわけでもない。
だが、私の家は居酒屋なのだ。
ひとたび壊れてしまえば、家庭用とは異なる特殊な調理器具の数々や大量の食器など、必要なものを買い揃えるのに時間がかかってしまう。お客さんが酒を飲んで騒いで、日々の疲れを癒し、そんな様子を見て私も笑顔になれる、あの空間が戻ってくるのにどれだけの時間が必要か。
しかし私の悲痛な思いなど一顧だにしないシルビアは、進み続ける。私が真剣に叫んでいるのに周囲の何人かが気付いたものの、魔法が通じない相手にはどうしようもなく、たたらを踏んだだけだった。
――もうダメかと思われた、そのとき。
「魔王軍の幹部、シルビア! 俺の名前を覚えとけ! あの世に行ったら、他の幹部達によろしくな!」
一人の男性が放ったカッコイイ台詞。それと同時に放出された光の一撃が、シルビアの胸に大穴を開けた。
「嘘……これで終わり……?」
シルビアはその身に起こったことが信じられないといった表情のまま、その巨体を重い音と共に大地に沈ませ、活動を停止した。
「あ、ああっ……!? 嘘……そんな、すごい……」
驚き。聞いたことのない声。里の外の人。興味。どうやって。魔法ではない力。感謝。いや、それよりも――。
いろんな感情がない交ぜになって押し寄せてくる。考えの焦点が定まらない。
「あっ、あぁあっ……」
口をあわあわと動かすことしかできない私の目の前で、シルビアが崩れ落ちたときに舞い上がった土煙が次第に晴れてくる。視線をあちこちに動かして、倒壊した隣の家がまず目に入って、その瓦礫の上に倒れ伏したシルビアの姿を再確認して、同時に、ウチの居酒屋は無事だったことに気付いて――。
里の人間ではどうしようもなかった状況を、里の外から来た人がどうにかしてくれたということをようやくはっきりと認識して、私の頬をスッと一筋の涙が流れ落ちた。
「あ、ああっ……ありがとうございます……ありがとうございます……!」
里のみんなが歓喜に沸く中、私は忍び泣きながら、胸の内に巻き起こる感情の渦の中から感謝の気持ちをどうにか表現しようと、呟き続けた。
「「「カンパーイ!」」」
勝利を祝う宴は、大盛り上がりだった。
里のあちこちで酒が飲み交わされていて、ウチの居酒屋にも多くのお客さんが押し寄せてきていた。
お客さんが多ければ、自然と酒を求められるサイクルも早くなる。次々と空になっていくジョッキや皿、それらを回収し、また新しい酒を持っていく。これまで体験したことのない忙しさだったが、私はその中に充実感を感じていた。
「いやー、こちらはニートの息子がカッコつけて怪我しちゃってね。大変だったよ」
「こっちもだ。腕のいいプリーストがたまたま里に来ていたから助かったが」
「おっ、酒だ酒! ねりまきちゃんこっちこっち!」
「はーい! ただいま!」
「よーし、みんな新しいグラスは持ったな? カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
酒を運んで行った先の席でお客さんは、お互いにどんな状況だった、どんな被害に遭ったなどを話題にし、受けた傷を勲章のように見せ合い、笑い合って、また乾杯して酒を呷る。激戦の疲れを、この店で癒そうとしているのだ。
「よかった……本当によかった……」
自然と、私も笑顔になる。
この光景は、店が壊れていたら見ることが叶わなかったものだ。……いや、仮にウチの店が壊れていたとしても他の場所で見ることはできたかもしれないが、そうなったら私はきっと素直に喜べなかっただろう。どうして他の店は無事なのにウチはそうじゃなかったんだ、などという思いは拭いきれなかったと思う。
私は改めて、店と、みんなの無事、そしてそれを素直に喜べる状況に心から感謝した。
「――それにしても、あの里の外から来た人はすごかったな。カズマさんと言うんだったか」
シルビアにトドメを刺した外の人――カズマさんの名前が話題に上がったので、思わず食器を回収する速度を緩め、聞き耳を立ててしまう。
本当に、カズマさんには感謝してもしきれない。どうにか直接お礼を言える機会があればいいのだけれど……。
「職業は冒険者だったか。それでアークウィザードである我々を差し置いて大活躍するんだから、ロマンを感じるな」
「ああ。外の人だと言うのに盛り上げ方もわかってるし、めぐみんがパーティーメンバーに選んで連れてきただけのことはあるね」
「やっぱりカズマさんは、めぐみんの、コレなのかな」
靴屋のおじさんがそう言って小指だけを立てて見せた。要は、めぐみんとカズマさんが恋仲ではないのかと噂しているのだ。めぐみんがカズマさんに向ける信頼しきった表情から、そう考えてしまうのも無理がないことだけれど。
――そう思っていたところ。
「みんなー! 今日のヒーローの登場だ!」
「えっ!?」
「どうも! サトウカズマです!」
「「「おおっ!」」」
なんとカズマさんがウチの店にやってきた!
……すでにあちこちで飲み歩いてきた後なのか、顔は真っ赤。この店に連れてきたのであろう服屋のおじさんに促され、やや覚束ない足取りで店の奥の席へと進んでいく。
「わあ、いいところね! 畳に掘りごたつ……日本の居酒屋まんまの造りじゃない!」
「……ニホン? まぁ見慣れない造りだが、確かにいいところだな」
カズマさんのパーティーメンバーも一緒のようで、連れ立って店の中へと入ってきた。青髪と、金髪の人――どちらもすごくキレイな人だ。
「どうも、ねりまき。久しぶりです」
「う、うん。久しぶり」
最後に入ってきためぐみんが私に声をかけてくる。しかし私は、さっき靴屋のおじさんが小指を立てていた仕草を思い出して、ちょっと返事に詰まってしまった。
「……?」
めぐみんはそんな私を不思議そうな表情で見てくるが、しかしそれ以上言葉を交わすこともなくパーティーメンバーの後に続いて歩いてく。そしてカズマさんの隣の席をちゃっかり確保して、腰を下ろしていた。
「ささ、どうぞどうぞ。ここは私の奢りで」
服屋のおじさんが瓶を傾け、カズマさんのジョッキに酒を注いでいく。
「おおっと、すみませんね」
「いえいえ。何しろカズマさんは、里を救った英雄ですからね」
「いやー、それほどでもー、あるのかなー! よーし、乾杯!!」
「「「カンパーイ!!」」」
カズマさんは気を良くした様子で音頭を取り、酒を一気に呷った。周囲のお客さんも釣られるように次々と手持ちのグラスを空けていく。
「ねりまきちゃーん、同じのもうひとつ!」
「はい! 喜んで!」
私は慌てて、厨房との往復を繰り返した。
「――カズマったら調子に乗っちゃって。カズマは兵器を持ち出しただけで、魔力を充填したのは私とめぐみん、引き金を引いたのもこめっこちゃんだったじゃない」
私がちょうどカズマさんの卓に戻ってきたときに、青髪美人さんがそんなことを口にしていたが、それに対してめぐみんが。
「確かにそうですが、兵器を見つけてきたのはカズマ、兵器の使い方を調べてきたのもカズマです。やはりカズマがいなくては、この里は危ないところだったでしょう」
そんなことを言ってすぐにフォローを入れている。……お酒も飲んでいないのに、頬を赤く染めながら。
めぐみんと学校の同期として過ごした私としては、彼女にこんないじらしい一面があるのが意外でしょうがなかった。……まぁ、特別親しくしていたというわけでもないので、めぐみんがそういう面も持ち合わせていたことを私が知らなかっただけかもしれないが。
「いやはや、まさかウチが代々物干し竿として使っていたものが『世界を滅ぼしかねない兵器』だったとは……壊れてしまったのが勿体なかったですね」
服屋のおじさんがそう言って頭を掻くと、カズマさんも残念そうに。
「あの兵器、修理もできないんですよね? 残念だ……山をも穿つあの威力と射程が連発できるなら、魔王城の結界をどうにか解除したあと反撃されない距離から一方的に砲撃しまくるんだけどなぁ……。どうせ魔王の居場所なんて城のてっぺん辺りだろうからその辺を穴だらけにして――」
「……ないわー」
「えっ!?」
服屋のおじさんが白けた顔で言い放ち、カズマさんは驚いて喋りを止めた。
ドン! と、持っていた酒瓶をやや乱暴に置いて、服屋のおじさんは続ける。
「里の外の人、それはないですよ。わかってる人だと思ったのに。魔王戦は、魔王と直接対峙してなんぼでしょ。あの兵器を使うにしても、魔王の眼前に立って名乗りを上げて、兵器の効果をちゃんと説明して、それを警戒する魔王との駆け引きを楽しんでからタイミングを見計らって使うのが王道というものです」
「そうだそうだー」
「兄ちゃん、ちょっとロマンってものがわかってないな」
「え、あれ? ロマンなんかより命の方が大事だろ? 安全安心に魔王を退治することの、何がダメなんだよ。……ちょ、そんな目で見るなよ、俺がおかしいのか!?」
一気に変わった空気にカズマさんがしどろもどろになって辺りを見回す中。
「なになにー? カズマったらしょうがないわね。せっかくの宴をこんな盛り下げちゃって! 仕方ないから私がこの微妙な空気をどうにかしてあげるわ。……さぁみなさんご注目! 秘技、畳返し!」
「「「おおっ!?」」」
「カズマカズマ! すごいぞ! アクアが突然消えたと思ったら、ひっくり返った畳の下からポンと出てきた! 下に隠れるスペースなんてないのに、一体どうやったんだろう!?」
「誰かが手伝ってタイミング良くテレポートを……? いえ、そんな魔力は感じませんでしたし、本当にどうやったんでしょう? カズマならわかりませんか?」
「なにそれすごい。おいアクア、ちゃんと見てなかったからもう一回――」
「やらないわよ。同じ芸を繰り返すなんて、それこそ芸の無いことだわ」
青髪美人はそう言って首を横に振るものの、周囲のお客さんが口々に懇願し始める。
「そこをなんとか!」
「もう一回! もう一回だけお願いします!」
「アクア! 私からもお願いします! 今度冷蔵庫のプリン分けてあげますから!」
「頼まれてもそこは譲れないわね……。あ、おひねりはやめてください。私は芸人ではありませんので……」
誰かが帽子をひっくり返してみんながそこに小銭を投げ入れていたが、青髪さんは何か譲れないものがあるらしく、頑なに固辞していた。
それにしても、本当にさっきの畳返しはすごかった。本当に――。
「あの、カズマさん――」
みんなの視線、それこそめぐみんの関心すらも青髪美人に集中していて、カズマさんがすっかり蚊帳の外に置かれてしまったのをチャンスと捉えた私は、勇気を振り絞って声をかけてみた。
「……ん? ああ、ねりまきちゃんだっけ」
「!? は、はいっ……!」
まさか名前を知られているとは思わず、上擦った声で返事をしてしまう。さっきのめぐみんとの会話を聞かれていたのだろうか。
「俺に何か用?」
「あ、あのですね……」
不意打ちで名前を呼ばれた衝撃で、事前に用意した言葉をド忘れしてしまった。
私は何を言おうとしたんだっけ。カズマさんに声をかけて、めぐみんとどんな関係なのか聞いて、あわよくば――って違う違う!
「あのですね……」
「――しょうがないわねー。高いお酒おごってもらっちゃったし、気分がいいからもう一芸披露してあげるわ。必殺の指芸、魔王軍幹部シルビアメタリックバージョン! どうよー!」
「「「うおおおおーっ!!」」」
周囲が盛り上がる声がうるさくて、次の言葉が出てこない。
「あの……」
「?」
それでもカズマさんは、私がしゃべるのをずっと待ってくれている。
どうにかここから離れて、静かな場所で、二人っきりになれないだろうか。
――そう思った私は、視線をあちこちに泳がせて。
「あのですね……」
もう一度勇気を振り絞って、言葉を紡いだ。
「お連れさんが畳をひっくり返したとき、一緒に机もひっくり返って、コップや皿がいくつか割れちゃってるんですが」
「……は?」
「ちょっと洒落にならない数なので、弁償していただきたいんですよ。盛り下がる話なので、ここではなんですから奥にお願いします」
私はそう言って、カズマさんを宴会の場から引っ張り出した。
「!? !? ちょ、ちょっと、それやったのはアクアだって! くそー! おいアクア! ……アクア? 聞こえてねーのか! いい気分で飲んでんじゃねーぞ! おーい!」
屈強な冒険者だと思ってたのに私ごときのステータスで案外すんなりと連れ出せたことに違和感を感じながらも、テンパっていた私は勢いに任せて、カズマさんと手をつないだままずいずいと歩みを進めた。
「本当にすみません!」
居酒屋の厨房から更に進んだところにある家族の居住スペースで、宴会の熱気から離れたことで落ち着きを取り戻した私は、カズマさんに平謝りしていた。
本当はあんなことを言うつもりなんてなかったのに、カズマさんをどうにか連れ出したいという想いと、視線を泳がせたときに割れた皿が視界に入り、アレをどう片付けたものかと思ったことから、つい口走ってしまった。
しかしカズマさんは呆れこそしたが、私に対して怒ることもなく。
「いや、悪いのは確かだし、弁償はするって。ここは俺が立て替えておいて、後は自分でアクアから回収するから」
「いえいえ! ぶっちゃけ、居酒屋ではコップや皿が割れるのなんて日常茶飯事ですから!」
割れるたびにいちいち弁償だのどうのと揉めていたら時間がいくらあっても足りないから、ある程度割れることを見越して価格設定をしている、と父から聞いたことがある。実際にお客さんが割ったあと請求している場面を見たことがないので、間違いないだろう。
「それに、カズマさんがいなければ、皿の数枚くらいでは済まないくらいの被害が出ていたでしょうし、だからさっきのはカズマさんを連れ出すための口実であって――」
「ん、口実? ……それじゃ俺を連れ出した本当の理由って?」
余計なことまで口走ってしまった、と思ったのは一瞬。
「――お礼を言いたかったんです。店を守っていただいて、ありがとうございました」
謝罪の言葉を並べるために口を動かしていたからだろうか。今度は、すんなりと言えた。
そして口の勢いに任せて、体も動く。
「……カズマさんっ!」
「あ、ああどういたしましてっ!?」
私はカズマさんの胸にダイブした。
「っ……!?」
ふんわりと鼻腔に広がる、カズマさんの匂い。
衣服に顔を埋めたまま目線だけ上げてみれば、カズマさんはびっくりしたような表情で、私を見下ろしている。
私は有無を言わせないまま、身長差を補うためにカズマさんの首に手をまわし、飛びつくようにして唇を重ねた。
「んっ……!」
「お、おおっ!?」
はじめての、キス。
……お酒の味がして、ちょっとがっかり。
でも、そのせいなのか、そのおかげなのか。ファーストキスはもっと舞い上がるものだと思っていたのに、実際は頬が少し熱くなるだけで私はかなり冷静なままだった。冷静に、興奮していた。
「ふおっ!?」
「あっ……」
しかし触れ合っていたのは一瞬だけ。カズマさんは驚いて離れてしまった。
お酒の味だったとはいえ、そして僅かな時間だったとはいえ、唇を埋め尽くしていた感触が無くなったことに名残惜しさを覚える。
「はぁっ、はっ……ねりまきちゃん、どうして……?」
「私、カズマさんに一目惚れしちゃったんです」
口が止まらない。言葉が淀みなくスラスラと出てくる。
「自分で自分がわからないんです。同年代の男の子に会って舞い上がっているのかもしれません。シルビアを倒したその姿がものすごくかっこよく思えたからかもしれません。店を守ってもらった恩返しをしたいと思ってるのかもしれません」
本来私はこんなに口達者な人間ではない。でも、普段だったら恥ずかしくて言えないような台詞もばんばん飛び出してくる。ファーストキスを経験したことで、舞い上がっているのだろうか。
「――どれが本当の理由かは自分でもはっきりとはわかりません。でも、私は今、カズマさんに抱かれたくてたまらないんです」
そして私は、口が回れば、勢いのまま、体も動く女だった。
私はスカートの端を摘まんで捲りあげた。目で確認しなくてもわかる、ぐしょぐしょだ。ふとももに滴る愛液の感触がうっとうしい。
でも同時に、私の下腹部を凝視するカズマさんの熱い視線が、すごく心地いい。
身体が動くのが、止まらない。止められない。止めたくない。
「カズマさん……!」
「うおっ……?」
そして私は、今度はゆっくりと、カズマさんの胸にカラダを預け、囁いた。
「カズマさん、一度だけでいいんです。抱いてください……」
「い、いいのか……うっ!?」
私は返事も聞かないうちに、カズマさんの息子を手のひらで覆うようにしてズボンの上からゆっくりと擦った。
キスで興奮していたのはお互い様なのか、すでにある程度の固さはあった息子さんが、私が撫でるたび、更に大きく、どんどん固くなっていき、その都度カズマさんの息も荒くなっていく。
「うおっ、ふっ、ふうっ……」
「いいんですよ、カズマさん……。この固くなったモノで、私をいっぱい苛めて、びゅるるって、出してくださいっ……!」
そう言って、カズマさんの息子を撫でながら見上げると。
「ふ、ふうっ!」
「あっ……!」
辛抱たまらんとばかりに、今度はカズマさんが私の唇を奪ってきた。
「ふっ、ちゅ、ちゅっ」
「んっ、ちゅるっ、ちゅっ……れろっ……」
今度は私からの一方的なキスではない。お互いに愛し合うことを確かめ合った上でのキスだ。
だから、舌を絡めてみた。
エッチなキスとはそういうものだという知識はあったからだ。
「れろっ、れるっ、ちゅ……ちゅぱ……れるっ」
でも、舌を絡めればいいという知識はあっても、どういう風に絡めればいいかという知識はない。これであっているのだろうか。……きっとあっているのだろう。だって、すごく気持ちいいし、すごく幸せな気分だから。
そう思って、カズマさんの口の中の感触を楽しんでいたものの。
「ん……れ……」
「んりゅっ!? んっ……はっん!」
しばらくは私の舌の動きを受け入れるだけだったカズマさんが、突然自らの舌を動かして反撃してきて、私は大げさに反応してしまった。
「れろっ、れ……」
「れるっ、んみゅっ、はっ……っはぁ!」
必死になって口内をやたらめったら舐め回していた私と違って、カズマさんの動きは最小限。しかしその動きだけで私の舌はあっけなく絡め取られ、より敏感な、より気持ちよくなるような場所へと誘導されていく。
……ああ、これこそが本当のエッチなキスなんだ……。
テクニックの差がありすぎることに悔しさを感じながらも、年上の男性にリードしてもらっていることに、私は安心感を覚えていた。
「ちゅっ、れろっ、ちゅっ、ちゅ……」
「んっ、ちゅっ、はっ、はぁっ……!」
しかしそれは、次第に一方的な蹂躙へと変わっていく。
カズマさんは的確に、私の口の中の気持ちいいところを刺激してくる。私の動きが介入してはかえって邪魔になるのではないかと思ってしまい、自然と動きを止めてしまったのだが、そこからはもうされるがままになってしまった。
「はぁっ、ちゅっ……れるっ、はっ」
私の口の中で、カズマさんの舌が踊る。的確なステップに刺激を受けて、その度に私の股ぐらから新しい愛液が滴り落ちているのを感じる。
……上手いキスって、こんなに気持ちよくなるものなんだ。
自分の舌でこの刺激を再現しようと思っても、きっと同じようにはできない。これは、他人にされているからこそ――カズマさんにされているからこそ得られる快感なのだろう。
「っ……はっ、はぁっ……!」
息が続かなくなって、思わず離れてしまう。名残惜しさを表現するかのように唾液が糸を引き、二人の間に生じた隙間にひんやりとした空気が流れ込んだ。
「はぁ……はぁ……あつ……い」
カラダの外の冷たい温度を認識することで、同時に、私は自分のカラダがいつの間にかものすごい熱を持っていることに気付く。息も荒く、汗もだらだらと流れていて、切り揃えた前髪から鼻を伝って雫が流れ落ちていく。
乱れた自分自身の姿が、ひどく恥ずかしい。
「ねりまきちゃん……きれいだよ」
「……!」
だからカズマさんのさりげない一言が、胸をドクンと、更にときめかせる。
「カズマさん……愛しています」
「俺もだよ」
即答。
きっとこんな台詞を何人にも言っているのだろうな、という考えが頭を過ぎる。
あの綺麗なパーティーメンバー達にも、そしてめぐみんにも、同じ台詞を言っているのだろう。だが一晩だけでもと関係を望んだのはこちらだ。多くは望まない。そう、今晩だけでも、私に夢中になってくれればそれでいい。
私はそう思いながら、体重を後ろにかけ、カズマさんを抱きしめたまま引き倒した。
トスンと音をたてて背中に畳が触れると同時に、上方――カズマさんの顔から汗が落ちてきて、私の頬にあたる。気付けば彼もいつのまにか汗びっしょりで……興奮しているのは自分だけではなかったという安心感が身を包み、私は穏やかな気持ちで口を開いた。
「カズマさん、お願いします……挿れてください」
「よし……!」
カズマさんは頷くと、私のショーツを一気に脱がし、自らも息子を取り出した。
「ふあ……!? おっき……」
カズマさんの股ぐらで聳え立つ、一本の肉棒。
実物はグロいらしいとあるえに聞いたこともあったが、女の子の大事な部分とそんな変わらないような気がする。
それもそうだろうなぁ、と思う。なにしろ二つの器官は、繋がるためにできているのだから。
「ふぅーっ、すぅー……」
これからの運動の激しさを予感させるようにカズマさんは大きな深呼吸を挟んで、ゆっくりと近づいてくる。
繋がるためにできている二つの器官が、その本来の機能を果たそうと接近していく。
そして、ちゅくり、と水音をたてて接触した。
「っあっ!?」
それだけで私のカラダは跳ね上がった。
思考が真っ白になり、電撃のような刺激がカラダを駆け巡る。
「おっ、ねりまきちゃんは敏感だねぇ」
「あっ、ちがっ! ちが、い、あっ! あっ!」
思わず反論するも、本当にただ反論しただけだ。
余裕の表情を崩さないカズマさんが、私の大事な部分の入口をなぞるように息子を動かしただけで、私は壊れたおもちゃのような短絡的な反応を繰り返した。
自慰行為をしたことはある。だから私の大事な部分に何かモノが触れるというのは初めての経験ではない。それでも他人に触られるというだけでこうも違うのか。
「はあっ! やだ、あっ!!」
そう、自慰行為ならば自分で刺激を加減できるし、イきそうになったら怖くなってやめるということもできた。しかしカズマさんは、おそらくは私を悦ばせようと思っているのだろうが、私の気持ちいいところを無遠慮に攻め立ててくる。
「あ、あっ、カズマさん、ちょ、イきます、イきますって!」
「そうか、よしよし」
「あ、あああぁああぁぁぁっ!?」
ちょっと止めてください、という懇願のつもりだったのに、カズマさんは私の言葉を聞いて更に動きを加速させ、私を絶頂に導いた。
「あがっ! はあっ、あぐっ、んぐう、ううううぅっ!」
下腹部から突き抜けてきた快感が、全身を一瞬で駆け上がって、そのまま口から飛び出していくような感覚。自慰行為で得る快感とはワケが違う。これまで感じたことのない大きな快感に、私はカラダを捩らせ、嬌声を吐き出し続けた。
「おっ、入っちゃった」
「!?」
しかし絶頂の感慨や余韻を感じる暇もないまま、カズマさんが、しまった、というような困った顔と、まぁいいか、とでも言いたげな二つの思惑が入り混じった表情を見せる。
そしてぬるりと、私に、私の中に、侵入して“いた”異物の感触に気付く。
「ぷあっ!? あ、ああぁあっ!」
自覚とともに痛みが後から襲ってきて、私は思わず声を上げた。
――しかし。
「……あ、あれ?」
「そんなに痛くないだろ?」
「は、はい……。……?」
カズマさんが言うとおり、想像していたほどの痛みではなかった。無駄に大声で痛みを表現しようとしたのが恥ずかしい、と思う余裕もあるくらい。
自分でも引くくらいぐしょぐしょに濡れていたからだろうか、カズマさんの手管でイかされた直後だからだろうか。とにかく、カズマさんの息子はすでに根元まで入り込んでいるというのに、感じる痛みは少なかった。
……私が想像していた処女喪失のイベントといえば、もっと痛みが走って、でも気を遣わせないために涙目で堪えながらカズマさんの侵入を少しずつ受け入れて、最後に「全部入ったぁ……」とか力無く呟いて「よくがんばったな」とかカズマさんに頭を撫でられつつ労われて――そんな風に愛を確かめながら進める一大イベントだと思っていたのに、実際はこんなにあっさり……。痛みが少なかったのはありがたいといえばありがたいが、拍子抜けしたのも事実だった。
おそるおそる結合部に目を向ければ、それこそ血も流れてなくて――。
「血が……? はっ!? わわわわ私、処女ですよ? いえ、処女でしたよ!?」
私は慌てて捲し立てた。
処女喪失には血が伴うもの“ではない”ということは知っている。しかし、カズマさんも同じ知識を持っているとは限らない。……せっかくカズマさんに純潔を捧げることができたと思ったのに、相手はそう思ってくれなかったとしたら、何の意味もない。
そう思って弁解していたのだが、カズマさんは笑顔を浮かべ、私の頭を撫でながら言ってくる。
「大丈夫だって。初体験で血が出ない人がいることくらい知ってるから」
「う、うう……」
……本当にそう思ってくれているんですか? 私に気を遣って、わかっているようなフリをしているんじゃないんですか?
そんな懸念が浮かんでいる私を余所に。
「よーし、動かすからな」
「えっ、ちょっ……! あ、あぐっ!?」
カズマさんが、私の言葉を待つことなくカラダを前後に動かし始めた。
「あひ、ああぁぁ! んはっ! あっ! や、やば……っ!」
カズマさんの息子が、私の膣内で出し入れされる。
膣壁がゴリゴリ擦られる。押し寄せてくる新たな快楽が、残っていた僅かな痛みすらも塗りつぶして、私のカラダを、私の意思とは無関係に暴れさせた。
「やばっ! あぐっ、あっ! き、気持ち、いいっ……!」
「ははは。ねりまきちゃんは初めてなのにやっぱり敏感だなぁ。えっちな子だ」
……よかった。さっきのは私を慰めるために嘘を言ったんじゃなくて、ちゃんと私が初体験だと認識してくれてるんだ。でも――。
「――え、えっちな子じゃありません。私、私っ……んっ!」
「ほら、ここはどうだ?」
「ひあっ!? な、なんですか、これぇ……んっあ!」
膣内の、お腹に近い方を擦られて、私はみっともなく声を上げた。自分の指でかき回す程度では決して触れられない場所をゴリゴリと削られ、未知の快感が襲いかかってくる。
「カズマさ……ぁっ……! ちょ、んぐっ! ん! あぁああ!」
言葉を発しようとしても、カズマさんの僅かな動作だけで止められてしまう。
言い訳のように発しようとした言葉が、快感に押しつぶされる。
「あぐっ! あっ……! んっ!」
カズマさんの動きの本質は、挿入前に私の膣口を愛撫していたときと変わらない。私が気持ちよくなるようにと、無遠慮に動いているだけだ。
「あっ! あんっ! んっ! んぎゅっ!」
しかしそのせいで私は息をつく暇も与えられることはなく、カズマさんが腰を振る度に襲いかかってくる快感に悶え続ける。他人の手で強制的に与えられる暴力的ともいえる快楽に、カラダは勝手に乱れ、思考はフリーズしていく。何もかもが自分の内から離れていくように思えた。
私の全てが、カズマさんに塗りつぶされる。カズマさんのためのものに、なっていく。
「あはぁああぁぁぁ! んっ、カズマさんっ、気持ちい、いですっ……ぁふあっ!」
「ははは、そうだろう! そうだろう!」
もはや口は、カズマさんを悦ばせるための言葉を発する機能しか有していない。
カラダの他の部位だってそうだ。カズマさんを気持ち良くさせるための機能しかないに違いない。
胸は、カズマさんが吸いついて楽しむためにあるし。
手は、カズマさんの息子を扱くためにあるし。
脚は、カズマさんの息子が抜けないように腰に絡ませるためにあるし。
私の全ては、カズマさんのためのもの。
だから、せめてその務めは果たさなくてはならない。
「カ、カズマさ、んっ……私、私っ、んぐっ、中出しして欲しいですっ! カズマさんが……あっ、んっ……! カズマさんが最高に、気持ち良くなったって証が……あっ、欲しい、ですっ!」
「おおっと、女の子から求められてはしょうがねえな」
「はいっ、はいっ! んっ! 遠慮せず……私を、使って、くださいっ!」
「よーしよしよしよし!」
私の言葉に気を良くしたカズマさんが速度を更に上げ、襲いかかってくる快楽も更に激しくなった。
「んあぁあぁっ!? きひゅっ! くっ、かっ……あ、ああっ!」
カズマさんの息子が、私の膣内を好き放題に蹂躙してくる。
身体の内側が擦られ、削られる。
削られた箇所が、新たにカズマさんの色へと塗りつぶされる。
そんな抽出と挿入の動作が繰り返される度に愛液がぐちゅりぐちゅりといやらしい音をたて、カズマさんの汗が珠となってポタポタと垂れてきては私のカラダのあちこちに落ちて弾けた。カラダの内も外も、カズマさんによって汚されていく。
――そして。
「ふ、ふおおおおっ! ああっ、出る、出る!!」
カズマさんのそんな声とともに、カラダの内側から感じる圧力が一瞬膨らんだと思った瞬間。
「ふううううっ!!」
「はぁっ……! あっ!? あああっ! わかります! 出てるのが、わかりますっ……!」
私の膣内に、温かいものが、吐き出された。
「うおっ……うっ、うおおおっ……!」
「あ、あぁあっ……!」
私の膣内でカズマさんの息子は、一度だけでなく何度か震え、精液の放出を繰り返した。その度に私は満たされていく思いを感じていた。
物理的に膣内が埋め尽くされているというだけでなく、私の貧相なカラダでもカズマさんを気持ち良くさせることができたという達成感と、カズマさんを愛おしいと思う感情が、私の心をも満たしていく。
胸の内が、じんわりとあたたかい。
「はぁ、はぁ……出た……ふぅー……」
「はぁっ、ぁ……んっ……はぁー……」
繋がり合ったまま、示し合わせたように同じタイミングで長い息を吐いた。
激しい運動を終えて、意識と視界がチカチカと明滅する。
「ん……はっ……は……」
なんとか浅い呼吸を繰り返すことで、昂ったカラダと心を静めていく。
そして、私は。
「……カズマさん……」
「何だ?」
「……。えへへ。呼んでみただけです」
「……そうか。うおっ?」
私はカズマさんを畳に転がし、その身体に顔を埋めた。
そして鼻を鳴らし、カズマさんの汗の匂いをいっぱいに吸い込む。
「……すぅーっ……はぁー……」
「……っ」
カズマさんは黙って私の行為を受け入れ、頭を撫でてくれた。
「ん……っ。カズマさん……」
「……何だ?」
「また呼んだだけです。えへへー」
私は、これで十分幸せだ。
だってカズマさんは冒険者だから、明日にはまた冒険に行ってしまう。ずっとこの里に留まってはくれないのだ。だからこれ以上愛してるなどと口にして引き留めるような真似をしてはいけない。
私はカズマさんのものだから、カズマさんが困るようなことはしてはいけないのだ。
……これは、一夜限りの夢のようなものだから。
「ん……カズマ……さ……ん……」
そんなことを考えながら、私は髪を撫でられる心地よさに目を細め、次第に眠りへと落ちていった。
――それから半年後。
私が身籠ったという風の噂を聞きつけたカズマさんは、責任を取ると言って冒険者生活をやめ、里に戻ってきてくれた。
そして職業冒険者の特長を生かして≪料理≫スキルを会得したカズマさんは、身重な私に代わって居酒屋を手伝い、その過程で私の両親にも認められ、店を継ぐことになる。
私もカズマさんの両親にご挨拶をして、遅ればせながら結婚した。
私はこれから居酒屋の女将としてカズマさんの傍に立ち、共に歩んでいくのだ。
「カズマさん、私、幸せです……」
「俺もだよ、ねりまき」
そこで告白したカップルは魔神の呪いで永遠に別れることができないと言われている魔神の丘で、私達は霊峰の陰へと沈んでいく夕日を眺めながら身を寄せ合い、これからの人生に思いを馳せるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ツインテ紅魔族の【夢】>
「ほらどうよ! あんたの男、寝取ってやったわ!」
「あ、ああっ……! ふにふら……カズマ……」
めぐみんがドアを開けた体勢のまま立ち竦み、悲しげな声を上げる。
揺れるめぐみんの瞳に映るのは、騎乗位で繋がっているあたしとカズマさんの姿だった。
「め、めぐみん……」
さっきまであたしがカラダを上下に動かすのをただ受け入れ快楽にふけっていたというのに。カズマさんは今更のようにめぐみんの姿に気付き、何か声をかけようとするが。
「ダメよカズマさん。あたしを、感じてっ……んんっ!」
そう言ってあたしが膣圧を高めれば。
「ううっ!?」
カズマさんは短い呻き声とともに震え、新たな精液をあたしの膣内へ注ぎ込んだ。
――あたしはカズマさんの泊まっている宿に侵入し、夜這いをかけていた。
すやすや眠っていたところを、裸になってベッドに侵入。
目覚めたカズマさんに、あたしはド直球に言った。
「抱いて!」
あとは獣のようになったカズマさんをあたしが組み伏せて上位に立ち、事前に連絡を入れておいためぐみんが来るのを待って、この状況を作り上げたのだ。
めぐみんが部屋に入ってくるまでに、もうこれが何回目か数えるのも億劫になるほどの射精回数を重ねていた。
大量に注ぎ込まれた精液が膣口から漏れだし、あたしの破瓜の血と混じってカズマさんのお腹に広がっている。眼下に広がる白と赤の対比がちょっとキレイ、などとあたしは微妙に他人事のような感想を抱いていた。
「あ、あ……」
しばらく呆然としていためぐみんが、その場にぺたんと座りこむ。
そしてぽろぽろと涙をこぼしはじめた。
「な、何よ。泣いたって目の前の現実は変わらないわよ」
そう言い放つが、しかしめぐみんはあたしの言葉を聞いているのかいないのか、流れ出る涙を拭うこともなく、うわごとを口にする。
「……カズマ……カズマ……私、キスだってまだだったのに……」
「……どうせそんなことだろうと思ってたわよ」
学生時代には魔法にばかり夢中で男に何の興味も見せなかっためぐみんが、いくら惚れた男ができたとはいえ一足飛びに大人の階段を駆け上ったとは考えにくかった。
先日あたしやどどんこが、シルビアを倒したカズマさんをかっこいいと思って声をかけたときは、取られてたまるかとばかりに事を大げさに表現してみせたんだろうと当たりをつけていたが、どうやらその通りだったらしい。
「何よ『私の男』なんて自慢してくれちゃって……! でも、確かに男よね。あたしの魅力にメロメロみたいよ!」
「そうですか……ふにふらは綺麗な子ですものね……」
「なっ……」
目に光がないめぐみんから、もはやどうでもいい、とでも言うように世辞が飛んできて、あたしは逆にうろたえてしまった。
おかしい。めぐみんならばここで掴みかかってきて、あたしに腹パンをかましてカズマさんの上から叩き落したあげく、首を絞めてくるくらいすると思って身構えていたのに――。
「なによ、怒りなさいよ! あたし、あんたの好きな人、取っちゃったんだよ!?」
「いいんです、どうでも……。あ、二人はお幸せに」
「怒りなさいよぉ!」
「ふにふら……?」
おかしい。なんであたしが泣いているのだろう。
寝取りなんてことをやらかしておいて、理不尽な逆ギレをしているのは自分でもわかっている。絶望するめぐみんを前に、勝ち誇りたかったはずだ。自分が優位に立ちたかったはずだ。そう思っていたはずなのに、涙が止まらなかった。
「うぅ、うえっ……なんで、どうして……?」
「そうですか……それが、ふにふらの本当の気持ちなんですね……」
「えっ……?」
いつの間にか立ち上がっていためぐみんが、あたしを抱きしめ、優しく語りかけてきた。
「……本当は私と仲良くしたかったのではありませんか? でも、プライドの高さから素直になれず、強い態度で接してしまう……時には私を傷つけるようなことも……本当は、心の中でそれを悔やみながら」
それは、ツンデレというヤツじゃないだろうか。……いや――。
「そうかも……しれない」
――実際に、あたしはツンデレなのだろう。そう素直に思えるくらい、めぐみんの言葉はすとんとあたしの胸に入ってきて、腑に落ちた。
……本当はめぐみんと仲良くしたかった。なのに、学生時代にも飛びぬけた才能や成績を誇っていためぐみんが羨ましくて、それでもなんとか優位の立場を得ようと色々いじわるした。素直に友人としての関係を築けない代わりに、例え歪であったとしても、何らかのつながりを維持していたかったのだと思う。
そして今日、歪な関係を求め続けるあたしの心の焦りが、めぐみんの男を寝取るという最悪な形で現れたのだろう。
「本当は、仲良くしたかったはずなのに……それが本当のあたしの気持ち……」
「ええ、きっと、そうなんですよ」
めぐみんはそう言って、慈愛に満ちた表情であたしを見つめてきた。
そんな女神のような姿を改めて見て、あたしの胸を締めつけるような罪悪感が襲ってくる。
「ああっ……でも、でも……あたし、あんたの男、寝取っちゃった……!」
遅すぎる後悔。
本当の気持ちを今更自覚しても、もうカズマさんとは姦淫を済ませた後。眼下の結合部には、破瓜の血と、精液が広がっている。あたしが友人の男を奪ったという事実は消すことはできない。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
謝って許されることではないと思いながらも、あたしは俯いて謝罪の言葉を口にし続けた。
だけどめぐみんはあたしの肩にぽんと手を置いて、優しい声色のまま。
「大丈夫です。英雄色を好むと言うじゃないですか。カズマは私一人で引き留めることができるほど小さな男ではありません。いつかきっと、いろんな女に手を出していたでしょう。……それがたまたま今日だっただけのことです」
「でも、でも……! だからといってあたしが悪いことをしたって事実は変わらないから……!」
「だから提案です。これからは、二人でカズマを囲いませんか?」
「!?」
驚いて顔を上げたあたしに、めぐみんはイタズラっぽい笑みを浮かべて言ってくる。
「私も、ふにふらと仲良くしたいのですよ。だから二人でカズマを共有しようではありませんか。これ以上他の女に目が移らないように」
「うん……うん! あたし、嬉しい!」
「……カズマも構いませんよね? いたいけな少女二人が、カズマに尽くすと言っているのです」
「ああ。もちろんだ」
「んっ……!?」
今まであたし達の話を黙って聞いていてくれたカズマさんが、言葉と、おちんちんの反応で返してくる。不意打ちの刺激で、あたしは声を漏らしてしまった。
「はぁ……本当はカズマにも、ちゃんと反省して欲しいのですがね……」
めぐみんが呆れたようにため息をつき、そして、いざ自分もとカズマさんの上に跨ろうとするが。
「あ、ちょっと待って!」
「……?」
あたしはめぐみんを押し留めた。
そして息を飲み、カズマさんの姿を見据える。
「カズマさん……聞いてほしいことがあるんです」
あたしはこれから最低なことを告げる。でもこれは今後も関係を続けていくために、今までの歪な関係を捨て去るために、必要な通過儀礼なのだ。もしこれでめぐみんやカズマさんに嫌われるようなら、それはそれでしょうがないこと――。
「カズマさん、ごめんなさい。あたし、あなたのこと純粋に好きって気持ちから抱かれたワケじゃなかったみたいです」
カッコイイ男の人だと思ったのは事実。だが、それで即抱かれたいと思うほど強い気持ちでもなかった。
自分の気持ちを客観的に理解した今ならわかる。さっきまでのあたしにとってカズマさんに抱かれるということは、めぐみんとの関係性を維持するための代償行為だったのだろう。里から離れてもあたしのことを覚えていてくれるような、そんな強烈な印象を残すための。……今では最低の行為だったという自覚はあるし、そして今度もまた、あたしはめぐみんとの関係のためにカズマさんを利用しようとしている。
これはカズマさんに対して不義理なことだ。だから、今後も関係を続けていくならちゃんと伝えておかなければならないと思ったのだ。それで嫌われても、本当にしょうがないと思いつつ。
そんな風に考えているくせに、実際に嫌われて拒絶される未来を想像すると身体が震えた。目をつむって、なんとか次の言葉を口にする。
「……あたしは、めぐみんとの友情の方が大事なんです。それでもいいというのなら、めぐみんと一緒に、抱いてください」
「喜んで」
あっさりと返ってきた答えに、固く閉じていた瞳を開ければカズマさんの笑顔が飛び込んできて。あたしの中から、苔をそぎ落とすように罪悪感や葛藤がポロポロとこぼれ落ちていく。心が楽になって、救われた気持ちになっていった。
ああ、めぐみんの言うとおり、カズマさんは本当に大きな男だ。
一瞬で、惚れなおしてしまった。
「れるっ、んじゅるっ……はっ、んちゅっ……」
あたしは、汚れたカズマさんのおちんちんを綺麗にすることを命じられ、舌を這わせていた。丁寧に舐め上げ、精液や愛液、破瓜の血……いろいろな液体が混じったものを口に含み、飲み下す。味は決していいものじゃないし、気持ち悪くないわけではないが、これは禊ぎのようなものだから。
「ちゅ、んっ、ちゅっ……」
そんなあたしをよそに、めぐみんはカズマさんの唇に喰いつき、感触を愉しみまくっていた。それはもう一心不乱に。
「……ちゅぱ、ちゅっ……!」
「んっ!? ぐっ……ちゅ、ちゅるっ」
あたしの上方で、カズマさんとめぐみんの口が跳ねるような水音をたてるたび、おちんちんがまるで連動しているかのように、ビクン、ビクンと反応して、喉につっかえる。思わずむせてしまったが、あたしはおちんちんを咥えたまま上下運動を繰り返した。
上の口と下の口――めぐみんが愛情いっぱいのキスを繰り返してるのに比べて、あたしのしていることはただの性欲処理に等しい。あたしは負い目があるし、これはめぐみんの初体験なのだからめぐみんが気持ち良くなることが優先なのはわかってるつもりだが、どうしても差を感じてしまう。
しかし内心不満を感じていたのはあたしだけではないようで。
「……カズマは下の口の方が気持ちよさそうですね。さっきからふにふらの頭が動くたびに、カラダ全体がピクピク反応してますし」
意外にも、めぐみんにしてみれば下の口を舐めるあたしの方が羨ましく映っていたらしい。隣の薔薇は赤いというヤツだろうか。
じっとこちらを見つめてくるめぐみんに、あたしは頬張っていたおちんちんを離し、口を開いた。
「いっしょに舐める?」
「……そうですね」
めぐみんはずりずりとベッドの上を移動してきて、あたしと並んだ。
「さぁ、ふにふら。教えてください。どういう風に舐めたら、カズマをあんなだらしない顔にできるのか」
めぐみんがそう言って指差した先では、カズマさんが天井を仰いでぜーぜーと肩で息をしていた。疲れきっているようだが、これはめぐみんとずっとキスしていたからじゃないのと思うけど……。
「わ、わからないわよ。あたしだって、舐めたのは初めてだし……」
「む……そうでしたか。まぁ、とりあえずやるだけやってみましょうか」
めぐみんが、おちんちんに顔を寄せて、舌先をおそるおそる近づけ。
「……ちる」
「うひょっ!?」
先がちょっと触れただけで、カズマさんがおかしな声を出して腰を浮かせた。
……あたしのときより敏感な反応に見えて、ちょっとジェラシー。
「ま、負けないからね」
「望むところです」
あたしも舌を伸ばし、カズマさんのおちんちんを二人で舐め始めた。
「ちゅ、ちゅる……んちゅっ」
「ちゅぱっ、ん……は……ちゅっ、ちゅるるるるるっ!」
めぐみんがおちんちんの亀頭部分を舌でチロチロ舐めれば、あたしも食いついて、中に入ってる液体を吸い上げようと唇をすぼめる。
「はむ……んふっ、んふっふ……」
「べろ……ん……ンはっ……!」
あたしがおちんちんの竿部分をハーモニカのように咥え唇を滑らせれば、めぐみんも負けじとばかりに唾液をいっぱいに含ませた舌をべっとりと這わせた。
まるで唾液を塗った面積で勝負でもしているかのように、目線を交わして張り合いながら、二人でおちんちんを舐め合う。
「あ……」
そしてお互いに竿部分を舐め合っていた最中に、あたしとめぐみんの舌同士が微かに触れて。
「ふふ、キスしちゃいましたね」
「……えへへ。そうね。……ちゅっ!」」
二人でにへらと笑って、おちんちんを挟んでキスを交わした。
「ちゅっ……ちゅるっ!」
「ちゅっ、ちゅっ」
タイミングを合わせて、カズマさんのおちんちんに両側から短いキスを繰り返す。根元から交わし始めたその遊びは、段々と上へと登っていきてっぺんへ――亀頭へと辿り着く。
「んちゅる、れちゅ、ちゅっ!」
「ちゅ……んれろ、ちゅ……っぱ!」
亀頭を挟んでのキスは、どちらかが合図したわけでもないが、自然と舌を絡めてのものとなった。二人で先っぽに吸いついて、舐めまわし、亀頭を通じて唾液を交換し合う。
「ちゅる……は、ふ、ちゅ……ン……」
「ぅ、お、おおっ!」
そんな行為を続けていたところ、突如発されたカズマさんの呻き声と共におちんちんがぶるりと震え、そして――。
「ううっ、出る、出るからな! 受け止めろよ!」
「は、はいっ……? はわ、ひゃああっ!?」
「あうぅっ!?」
カズマさんのおちんちんがもう一度ビクンと震えたと思った瞬間、精液がびゅるるっ、と飛び出してきた。あたしはびっくりして思わず顔を背けてしまうが。
「……はむっ! ん、んんっ!?」
めぐみんはカズマさんの言葉に従っておちんちんを口いっぱいに頬張り、精液を受け止め始めた。
「んぶううっ!? ん、んん……ぐ!」
「め、めぐみん……!」
しかしカズマさんの射精はとんでもない量を吐きだす。それは実体験でわかっている。
めぐみんの小さな口では追いつかないのか、すぐに苦しそうな表情を浮かべ。
「ん……!」
「う、うんっ……!」
めぐみんが上目遣いで助けを求めてきたので、あたしは頷き、カズマさんのおちんちんに喰いついた。咥える役目を交代して、今度はあたしがカズマさんの精液を受け止める。
「んばっ!? ん、んん、ンんんっ……!?」
咥えた瞬間から口の中で爆発的に広がる、カズマさんの味。気道を通して匂いも鼻に届いてきて、脳の奥につんと響いてくる。
「ん、んんっ、んく……くっ……ん……」
あたしは目尻に涙を溜めながら、送り続けられてくる精液を必死に飲みこみ続けた。
その甲斐あってか、精液の量は次第に収まっていき……なんとか一滴もこぼさずに乗りきることができた。
「ぷはっ、はぁっ……はぁっ……カズマさん、出しすぎ……」
「そうですよ。……でもやりましたね。ふにふら」
「うん、あたしたちの勝利よ」
あたしとめぐみんで勝負していたつもりが、いつからかあたし達とカズマさんとの勝負にすり替わっていた。二人で笑顔を交わして、勝利を称え合う。
「ほう、二人は、本当に勝ったと思っているのか」
「「!?」」
しかしカズマさんからそんな挑戦的な言葉が飛んできて、あたし達は振り返った。
めぐみんが上半身だけでファイティングポーズを取って、カズマさんに敵意を示しながら言う。
「……どうしてそんなことを? カズマはみっともなく精液を垂れ流しただけではないですか」
「何言ってるんだ。セックスをしていれば、精液は出るものだろう。むしろ精液を伴わないセックスなんてありえない。……射精したからと負けなんて言われたらたまらないな。それに俺は精液を出すタイミングも教えたし、そのときの行動だって指示した――お前らはそれに従っただけだ」
「うっ……」
言われてみれば、その通りだが。
「だったら、どうやったらあたし達の勝ちだって認めるっていうの?」
「今度は俺も動く。お前らも好きに動けばいい。それで条件はイーブンだ。先にイった方が負け……どうだ?」
「「のった!!」」
ラウンド2、開始――!
終了!!
「あがっ、あっ、あぁあっ、もうやめ、やめてくださいっ、カズマさんっ!」
「カ、カズマっ……! んっ、ぎっ、あ、あ、あぁぁあっ!」
あたし達はベッドにうつ伏せに抑えつけられたまま、めぐみんは腰を打ちつけられ、あたしは手でおまんこを掻きまわされ、情けない声を垂れ流していた。勝負がどうなったとか考えるまでもなく、さっきから休みなく一方的にイかされっぱなしだ。
「んぎっ、あっ、あああぁあぁ!」
――すでに弱点を見つけられていたらしいあたしは、挿入されて5秒で陥落。
――処女であったはずのめぐみんも、カズマさんの巧みな動きによって堕ちてしまうまでに時間はかからなかった。
後は、おちんちんを挿入される役と、手で弄られる役を、あたし達がイく度に順繰りに回され、カズマさんに好き放題にされていた。愛液、小水、涙、涎……穴という穴から液体が垂れ流しになり、あたし達はみっともない姿を晒している。
カズマさんが笑いながら、あたし達に告げる。
「ははは、いいかよく聞け! 二人とも、これからは仲良く俺に奉仕するんだぞ! 特にふにふら、お前も俺の屋敷に来い。めぐみんと一緒に暮らして、俺がヤりたくなったら二人で股を開くんだ!」
「……は、はいっ! んぐっ!? わ、わかりまし、た……カズマさんっ!」
「ダ、ダメですふにふら、気をしっかり……あ、あぁああっ! あひぃ! わかりました! わかりましたから、もう止めてくださいっ……!」
「はははは! よーし、二人ともご褒美をくれてやる! そーれ!」
そう言ってカズマさんはおちんちんをめぐみんのおまんこから引き抜くと、あたし達に精液を振りかけた。
「は、はぁああっ……!」
「んっ、あっ、熱い!」
自らのカラダに飛び散らされてくる精液。それを見て、ようやく終わってくれたという疲労感と、女性としての悦びを感じる時間が終わってしまったという残念な気持ちが、同時にあたしの心を掻き回す。
「ああっ……はぁっ……! はっ、はぁ……、はぁー……」
「はぁ……。はー……」
あたしとめぐみんは、ベッドに横たわったまま、荒い息を繰り返した。
横目に見ためぐみんは、全身が汗に濡れ、黒髪にも精液が撒き散らされ、涙と涎で顔もぐちゃぐちゃだったが……あたしには不思議と綺麗に思えて、ドキドキが止まらなかった。
そしてこれからは、めぐみんのこの姿を、あたしはいつでも見ることができるのだろう。
「めぐみん、これからはずっと一緒だね……」
「……そうですね。これからは、仲良くしましょう」
「うんっ……!」
今度は敗北を喫してしまったが、それでもあたし達はお互いを称えながら、笑い合った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ショートポニ紅魔族の【夢】>
私はカズマさんを夜這いしに宿屋へと訪れていた。
カズマさんが泊まっているという部屋の前に辿り着いたときには、ドアの前に佇むふにふらの姿がすでにあって、先を越された! とも思ったが。
「勇気出せ、勇気出せあたし……大丈夫、あたしはめぐみんより可愛い。あたしはめぐみんより美人……」
ふにふらはブツブツ呟きながらドアノブに手をかけ、しかしウンウン唸ってすぐに手離しその場に頭を抱えてうずくまって、しばらく経ったらまたブツブツ呟きながらドアノブを握り……といったことを繰り返していて、一向に部屋の中に入る気配がなかった。
だから私は、ふにふらに先んじて部屋に入ることにした。
「お先」
「あっ、どどんこ!? ちょ……」
慌てるふにふらを尻目に、私はあっさりとドアノブを回し部屋に侵入した。
そして後ろ手でドアを閉めた瞬間、ふにふらとは別の声が聞こえてくる。
「おや、ふにふら。呼び出されたと思えばこんなところで何をしているのですか?」
「げっ、めぐみん! な、なんでもないわよ!」
「『げっ』? ……ここはカズマが泊まっている部屋ですね。転送屋の手配が終わったというのに、せっかく遠出してきたのだからもう一晩くらいは現地の宿に泊まってみたいなどと駄々をこねたので、しょうがなく送り出したのですが……ふにふら、もう一度聞きます。ここで一体何を?」
「な、なんでもありません……」
「ちょっと詳しく聞こうじゃないか。おい、表出ろ」
「や、やだ。何目光らせてるのよ……ちょ、痛い! 手ぇ痛いって! あんた高レベル冒険者なんだから手引くにしてももっと優しく――」
「……」
それきり会話は聞こえなくなった。おそらく二人とも外に出て行ったのだろう。
「危ないところだったわね……さて」
振りかえった私の眼前には、眠っているカズマさんの姿。
「……うーん」
夜這いしようと訪れたものの、しかしいざこうして目の前にしてみると、どうしたらいいものかわからなかった。気持ちよさそうに寝ていて、起こすのも憚られる。無理矢理起こしたとしても、怒ってしまいセックスどころではなくなるのでは……?
そう思ってあと一歩が踏み出せず、部屋の中をウロウロしていたが――。
「誰だ!」
「ひっ……!?」
カズマさんが突然飛び起き、流れるような動作で剣を抜いて向けてきたので、私は悲鳴を上げてしまった。
そうだった、この人は屈強の冒険者……。寝ているときだって絶えず周囲を警戒していたに違いない。うかつだった。
「ん……? どどんこ、だったか? めぐみんの友達の」
「は、はいっ……そうです」
「すまない。剣を向けてしまって」
私の姿を確認したカズマさんがあっさりと剣を収めてくれたので、まずは一安心。
それに、ちょっと会っただけの私のことを覚えてくれていたみたいで、嬉しい。
「それで、どんな用だ? こんな夜中に」
「はい……。私は、カズマさんにお願いがあって来ました」
「ほう、それはどんな?」
「私を、カズマさんの性奴隷にしてください!」
「……それはまた、どうして?」
カズマさんはこめかみを押さえながら聞いてきた。微妙に私の頭を心配しているかのような視線を向けてきて、居たたまれない気持ちになってくる。
自分でも頭のおかしいことを言っている自覚はあるが、これは私が生まれ変わるために、必要な一歩だから。
ここで獣のように襲いかかってくる人でなくてよかったと思いつつ、私は口を開く。
「私、自分の人生を変えたいんです――」
その言葉を皮切りに、事前に用意していた台本を読み上げるように一気に捲くし立てた。
「だって、私、影薄いんですよ! 決して友達がいないとか、引きこもりとか、そんなこともないのに……どうせみんな私のこと『ツインテールがいる二人組のツインテールじゃない方』とかそんなイメージしか持ってないんでしょ!? ていうかふにふら、あいつ属性盛りすぎなんですよ! ツインテ、ツンデレ、ブラコン……ひとつくらい分けてよ! ていうかツインテールがなによ! 偉そうにしないでよね! 私なんてポニーテールですよ! 二つに分かれた力が一つになってる方が強そうだと思いません? テール2倍ですよ!」
「お、おう……」
カズマさんは微妙に引いていたが、私は構わず続ける。
「こんな影の薄い人生が嫌になったんですよ。それで生まれ変わりたいと思ったんです。作家目指してる友人に『処女捨てれば人生変わる……らしいよ?』と聞いたことがあって。でも、初めては下手な人より上手い人にやってもらった方が不安がないじゃないですか。その点、カズマさんなら女の子の調教に慣れてると思って」
「は? ちょ、調教?」
カズマさんが心外そうな声を出した。
「違うんですか? めぐみんとか、てっきりカズマさんに調教されたのかと思ってたんですけど。そうでなければあの優秀だっためぐみんが、爆裂魔法なんてネタ魔法に執着する人間になるとは思えませんし」
「う、うーん……?」
カズマさんは正しいとも違うとも言いづらそうな微妙な表情を見せた。
学校一……いや、紅魔族一の天才と信じて送り出されためぐみんが、帰ってきたら里一番のネタ魔法使いになっていたと、ふにふらと大笑いしたものだが。しかしそれには理由があるはずだと思った。
そこで当のめぐみんから飛び出した「私の男」発言もあり、これはもうめぐみんは旅先で出会った男カズマさんに騙されて、言い成りになって、爆裂魔法を覚えさせられてしまったのだろうと私は推測した。
爆裂魔法は超火力。それが活かせる場面は、おそらくいっぱいあるのだろう。しかし撃ったあとは魔力が空になり個人としては弱体化してしまう点から、習得は本能的に忌避されるのが普通だ。弱体化を恐れるのは、ネタ好きと称される紅魔族の間でも普遍な、この世界に生きる人間全ての常識と言ってもいい。……仮に私が覚えることのできる資質を持ち合わせていたとしても、自分が弱くなることに――自分で自分の身を守れなくなることに、おそらく耐えられない。習得は諦めるはずだ。
しかし、パーティー単位で物事を見て、フォローする他のメンバーの存在があると考えるなら、爆裂魔法は『便利な一発』となりうる。カズマさんはパーティー全体の構成を考えて、めぐみんを一発屋に仕立て上げたのだろう。どんな甘言を施したのかは知らないが、本能的な忌避感すらも越えさせて。
そして惚れた男からの命令とはいえ、めぐみんにとって多くのスキルポイントを犠牲にして爆裂魔法を覚えるというのは大きなターニングポイントだったはずだ。一発撃てば無防備、あとは他のメンバーに自分の生死をも委ねるしかない……それまで上級魔法を連発できたであろうことを考えれば、人生観がまるごと変わってしまうような劇的な変化だったはずだ。
だが、めぐみんは今、とても幸せそうだ。
というか、カズマさんのパーティーは全員幸せそうだ。みんながみんな、カズマさんに与えられたのであろう役割に特化し、のびのびと冒険しているように見える。青髪の超美人さんが魔力を惜しむこともなく回復魔法を連発していたのが記憶に新しい。攻撃を一切合財捨てて防御に純特化したクルセイダーなんて、見たことも聞いたこともなかった。
私もその一角に加えてもらいたい。カズマさんに騙されて、言い成りになりたい。人生変えて、のびのびと暮らしたい。だから――。
「ああっ……! 私も躾けてください、ご主人様!」
私はそう言って、カズマさんに飛び付いた。
カズマさんは微妙に困った顔をしながらも。
「……しょうがねえな。女の子に恥をかかせるわけにもいかないし」
「はい! はい! お願いします」
カズマさんに受け入れられてもらった歓喜の気持ちで、私の胸の内がいっぱいになる。嬉しさから、ちょっとおっぱいを押しつけてサービスしてみたり。
えへへ、これ、ふにふらよりちょっと大きいんですよ?
「それじゃ早速、アピールしてくれている胸でサービスしてもらおうかな」
「は、はいっ!」
……確かに自分から押し付けていたとはいえ、相手に正面から指摘されるとちょっと恥ずかしいなぁ……などと我ながらめんどくさいことを考えつつ、私は上着を脱いで、ブラを外し、おっぱいをカズマさんの視線に晒した。急に裸になったからか、微妙に肌寒い。
「んっ……!? カズマさん……!」
ところがその肌寒さも、すぐに気にならなくなる。
カズマさんがおっぱいに顔を埋め、そのまま全身を密着させてきたからだ。
「ふぁっ……あったかい……」
肌と肌が接触して初めてわかる、人の体温の暖かさ。
思わずカズマさんの頭をぎゅっと抱きしれば、じんわり、ぽかぽかと、更に暖かくなる。
もっともっと、カズマさんの体温を感じたくなる。
「カズマさん……キ、キスしたくなりませんか!?」
「……ほら、ん……」
カズマさんはちょっと困った顔をしながら、私に唇を差し出してくる。
私はたまらず飛びついた。
「ん……ちゅっ」
頭を寄せ、唇を合わせてみれば。
予想通り、口の中は――カズマさんのカラダの中は、もっと暖かかった。
「くちゅ、ちゅ……んれ……」
「ん…………」
私は体温を求めて、カズマさんの口の中に舌を限界まで伸ばした。
カズマさんの歯に触れて、歯茎に触れて、舌に触れる。
「はっ、くちゅ……ちゅ、れる……」
でもさすがに、それ以上舌は伸ばせない。
……もっと、もっと体温が欲しい。
そう思った私は、カズマさんのシャツの下へと手を伸ばした。そのまま服を脱がして、素肌同士の接触面を増やそうとしたのだが。
「んっ、ふっ!?」
しかしカズマさんも同じことを考えていたのか、ほぼ同じタイミングで、カズマさんの手が私のお腹に触れた。合わせたままの唇から、私がびっくりした声だけが漏れる。
「ひゅっ!? ん、んんっ」
「ふふ……」
私のお腹に触れたカズマさんの手が、ゆっくりと、焦らすように下りてきて、ショーツの縁に触れる。目を白黒させる私を、カズマさんは目を細めて楽しそうに笑った。……私がこんなに慌ててるというのに、カズマさんはかなり余裕ある態度を見せていて、ちょっと不公平だと思う。
だから私も、カズマさんのシャツを脱がそうとしていた手を下ろして、ズボンの中に手を差し入れた。
「おっ? ふふ……」
私の動きに驚きを見せたのはほんのちょっとだけ、カズマさんはまだまだ余裕の態度を崩さず、ほらもっとやれよ、とばかりに瞳の動きで挑発してくる。
「んー……んっ!」
引っ込みがつかなくなった私は、そのままカズマさんの肉棒を握りしめた。
「んっふあ!? あ、熱い……!?」
思わず唇を離してそう口にしてしまうほど、カズマさんの勃起した肉棒は、カラダの他の部位と比べ物にならないほど熱かった。
「あ、ああ……こ、こんな…………んひぃあ!?」
あれほど体温を求めていたというのに指先に触れる予想外の熱さに呆然としていた私は、素っ頓狂な声を出してしまう。カズマさんの手がいつの間にか私のショーツの中に侵入し、女性器に触れていたからだ。ぐちゅりと、漏れ出ていた愛液が音を立てる。
「ほら、どどんこのココも、すごく熱くなっている」
「えっ……!?」
言われてはじめて気付く、自らの下腹部から感じる、じんわりとした暖かさ。
そうだ、カズマさんの口の中は――カラダの中は暖かかった。人の体内は暖かいものなのだ。そして露出している内臓と言われる膣なら、今も私の手を温めているカズマさんの肉棒と同じく、多くの熱を出しているに違いなかった。
……熱。もっと、熱が欲しい。
「カズマさん……」
「何だ?」
「私、もっと、あったかくなりたい……です。だから……」
膣と、肉棒。
他人の体温を求める私の本能的な思考もいよいよ極まったのか、今の私の頭の中には、多くの熱を発するこの二つの部位同士を接触させればどんなにあったかいんだろう、みたいな考えしかなかった。
処女のくせにがっつきすぎだと思うところもあるが、私達がやっていることはセックスだ。いずれ肉棒と膣は合体するはずで、それが遅いか早いかの違いでしかない。
私はその場で四つん這いになり。
「お願いします……カズマさんの熱い肉棒を、私の膣内に、挿れてください……」
カズマさんが挿れやすいようにと、お尻をちょっと上げた体勢で誘った。
「よし……だけど、その格好でいいのか?」
「え? は、はい……恥ずかしいので」
「……そうか」
カズマさんの顔を見るのも恥ずかしいし、これからみっともなく喘ぐであろうことを想像すると、自分の顔を見られるのはもっと恥ずかしかった。
だから私はなるべく顔を見られないようにとベッドのシーツに顔を埋めながら、もう一度口を開いた。
「お願いします……。このまま、挿れてください……!」
「よし、わかった!」
カズマさんはそう言って私のショーツに再び手をかけてズリ下ろし――。
「――……!」
そして今更気付く。この体勢だと、私の膣口がカズマさんから丸見えになるのだと。比喩抜きで内臓まで丸見え……恥ずかしいことこの上ない。
いや、例え正常位や他の体位でも見られることに代わりはないが、私が四つん這いになったこの体位だと、私はカズマさんを見れないのに、カズマさんは一方的に私の全身を眺められる状態になるのだ。
先ほどキスしていたときのように視線で反撃したり、文句を言ったり、逆に促したりといったこともできないまま、私だけがされるがままになってしまう。
……でも、それでもいいか、とも思う。
カズマさんの優しさからか、ここまでのプレイはいつの間にかラブラブエッチ風味になっていたが、もともと私はカズマさんの性奴隷を志望していたはずだった。もっと言い成りになって、躾けられたかったはずだ。
初心に立ち返ろう。考えてみれば、この一切反撃を許されず一方的にいじめられるような体位も、非常に性奴隷らしい体位と言えなくもないし。この体位のままカズマさんの欲望を受け入れよう。
そう思って私は再度口を開き。
「カズマさん、お願いします。私に遠慮なんてせ――っふぐぁああぁ!!??」
最後まで言うことはできず、私の全身を衝撃が貫いた。
カズマさんの肉棒が遠慮なく突っ込まれていたのだ。
「あぁあが、は……は……」
言葉を発する途中だった口がぱくぱくと開いて、顔を埋めていたシーツに唾液が垂れる。
かすかに視界に映る後方では、愛液とは別の液体が私の股ぐらから落ちていき、シーツに赤い染みを作っていた。
痛い。
そして想像以上に、熱い。
ケガを負った箇所は熱を持つというが、おそらく裂傷しているのであろう私の処女膜から発せられるじりじりとした熱さと、内臓同士を接触させたことでじんわりと感じる体温が、相乗効果でとんでもない熱を私にもたらしていた。
「ひ、ふぅ……んぐっ!? ああっ」
そして悶絶している私の意思とは無関係に膣がひくひく動いて、カズマさんの肉棒を締め付けているのを感じる。この動きが、痛みに反応してのものなのか、性的な快楽に反応してのものなのか自分では判断できなかったが。
「おおっ……! どどんこは名器だな。膣内が蠢いて、気持ちいいぞ……!」
少なくともカズマさんが喜ぶものではあったらしい。
私は安心感を覚え。
「んぐっ……う、嬉しいです……カズマさん、私に遠慮せず、思うままに、動いてくださいっ……!」
さっきは言えなかった言葉を、最後まで口にすることができた。
「よし、いくぞ! ふうっ、ふんっ!」
「うぐっ!? ぐっ、んぅっ!」
カズマさんの腰が前後に動きだした。お尻に肉が打ちつけられるたび、パンッ、パンッと乾いた音が鳴り、私は断続的に声を漏らした。
「んんっ! あっ! はっ、ぐっ!」
カズマさんが肉棒を出し入れすることで、私の股ぐらから再び血液が流れ出す。肉棒が突っ込まれる動作を受ければ、血は弾けて飛び散りシーツにまた新しい染みを作り、抜き出される動作を受ければ、血は流れ落ちてふとももに赤いラインを作った。
先に愛液に濡れて空気で冷やされていたふとももに、新しくちりちりとした熱源が走るような感覚を覚える。
「はっ、はっ……! んぎゅふっ! カ、カズマさん、もっと……!」
そう、血液も、体内にあるものの一つだ。当然熱を持っている。
血の熱さが、体温の暖かさと混じっていく。
暖かさが、私に多幸感をもたらす。
血をにじませる痛みさえも、幸せの一部に感じてくる。
「カズマさん、もっと……! もっとぉ! あ、ああっ!」
もっと血が流れてほしい。
頭の中の冷静なところでは狂気のような考えだとも思っていたが、痛みと同時にやってくる快楽に神経がどこか麻痺しているのか、私の口からはカズマさんの肉棒を愉しみにする発言しか出てこなかった。
「あぐっ、もっと……! もっと、カズマさんの、おちんぽ、ほしいんですっ!」
「よし、よし! よし!」
カズマさんが興奮した様子で息を吐きながら応じて、腰を叩きつけてくる。
血が弾ける度に、私のカラダがどんどんカズマさんの虜になっていく。
「ぐっ、あぐっ! あっ! もっと、もっと乱暴にしてください! もっと、じゅぷじゅぷ、突っ込んでください!」
「よーし、これならどうだ!」
「あいっつ!?」
私はカズマさんにポニーテールを引っ張られ、無理矢理上体を起こされた。後頭部に、新たな痛みと、熱が走る。
「ああっ、コレいいですっ! んっ! 奥に当たる……ぅ!」
カラダが弓なりに反らされたことによって、カズマさんの肉棒をより深くまで受け入れるようになった。今まで届かなかった場所に、肉棒の先端がコツコツと当たって、その刺激が脳髄までビリビリ来てしまう。
もう、限界だった。
「あはっ、気持ちいい、ですっ! はっ! ひっ、んんぅっ! イきます、イきますねっ! あ、ああああああッ!?」
押し寄せる快感をまともに受け続けた私は、簡単に絶頂に達した。
性奴隷のくせに主人の許可を得ることなく勝手にイってしまうとはどういうことだ、などと思いつつも、留めることができなかった。
「うおおっ、締まるっ……! よし、そのまま我慢してろよ!」
しかしカズマさんは叱りつけることもなく、私の腰をがっつり掴み覆いかぶさるようにしながら、ラストスパートを私に叩き込んできた。
「んああッ!? あっふ、あ、あ、あああああッ!!!」
イってる最中の私に、更に大きな快楽が襲ってくる。もうイきっぱなしだ。
新たに背中に感じるカズマさんの体温が心地いい。全身が、カズマさんに温められる。
「ひぃああああああっ!!」
「うっひょおおおっ、出る、出る出る出るっ! 処女の膣内に、中出しする!」
「は、き、来てください、ん、ん、んん、んんんんーっ!!!!」
「うううううううっー!!!!」
最後に獣のような声を発した私の膣内で、肉棒が爆発した。
「んんぐうぅーああああっ!? 熱い! 熱いいいーっ!」
私の内臓に直接もたらされる、更に熱い温度。
熱、熱、熱。
思考が完全に吹っ飛び、真っ白になっていく。
「ううう……は、あ、はぅ……」
「う、うはー……出たぁー……っておい、大丈夫か――?」
「っ……ぁ……」
カズマさんの心配そうな声を聞きながら、私は意識を失った。
「……あれ?」
「お、気付いたか」
「は、はい……」
私はカズマさんの腕の中で目覚めた。
全身が密着するように抱きしめられていて、ぽかぽかする。
……と同時に、セックスの最中には危険な思想に染まっていた自分自身を思い出して、ヒヤリとした。自分の血を見てキレる戦闘狂でもあるまいし、あのような血が流れることを求める感覚は自分でもどうかと思う。
カズマさんはそんな私の内心を知ってか知らずか、申し訳なさそうに声をかけてきた。
「悪かったな。どどんこは初めてなのに無茶しちゃって」
「いえいえ、これは私が望んだことですから! 言ったじゃないですか、私は性奴隷になりたいって! 乱暴なプレイ、ドンと来いってカンジですよ!」
元から乱暴にされることに興味はあったが、所詮は未通女の妄想。実際にやってみて、あそこまで盛り上がるとは思わなかった。次回はぜひ、自分を保ったままプレイに興じたい。
「ほう、今回だと、特にどんな時がよかった?」
「ええとですね、物理的に後ろ髪引かれたときですかね。私は髪の量が多いから、引っ張られても適当に痛気持ちいいってレベルで、興奮しました。お腹の奥にもコツンコツン当たるカンジで……」
「あ、痛気持ちいいレベルがいいのか? 乱暴、とはいってもあんまりハードなのはキツイか?」
「そ、そうですね……血が出るレベルでなければいいんですけど、ああいえちょっとくらいなら血を見ても――」
そのまま私達は次のプレイについて話し合い。
そして次第に、どちらからともなく眠りに落ちていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<爆乳ロリ紅魔族の【夢】>
魔王軍の幹部、シルビアは生きていた。
『世界を滅ぼしかねない兵器』から解き放たれた波動によって胸部を貫かれ、同時に崩れ落ちてきた瓦礫に押し潰されたというのに、どういうわけか生きていて、アクセルへの帰路についたカズマさんを追っていたのだ。
そのことに気付いた私、アルエは、急ぎ後を追った。
カズマさんが持ち帰った『世界を滅ぼしかねない兵器』には、作動のための条件がもう一つあることを伝えるために。
「くっ……これを撃つためにはめぐみんの魔力だけじゃ足りないのか!?」
「そ、そんな……」
『世界を滅ぼしかねない兵器』を構えたカズマさんと、魔力を充填させためぐみんが、それでも作動しない兵器を前に絶望の影を落としていた。
復讐に燃えるシルビアはすでにカズマさんの眼前に迫っていて、最期の時へと導こうとその巨体を振り上げる。
どうにか追いついた私は、自らの命の灯が薄れゆくのを感じながら、喉を震わせた。
「カズマさん! 受け取ってください……! これが、その兵器を動かすための最後のパーツです!」
私は紙束を空中に放り投げた。ところどころ破損し、ものによっては泥に汚れ、家屋の火が燃え移ったことで焼け焦げているものさえある紙の束。
「アルエ姫!? こ、これは……俺が破り捨てた小説の原稿!?」
「そうです。これは私が一週間徹夜して、睡眠時間と、命を削って書いた渾身の原稿……! 言うなれば私の命そのもの! そして、これこそが――!」
カズマさんによって先日ゴミのように破り捨てられた小説の紙束が、私の激情に呼応するかのように次々と光の粒子となって、カズマさんを中心に渦を巻くようにして漂う。そして。
「光が、兵器に吸い込まれていく!?」
カズマさんの驚愕の声が響き、私は薄く笑った。
『世界を滅ぼしかねない兵器』の作動には、魔力だけではなく、紅魔族の生命エネルギーが必要だったのだ。その必要量はめぐみんが三日三晩抱いていれば自然に貯まる程度のものではあったが、シルビアの襲撃に対応するには間に合わない。そのため私は、私の命そのものともいえる原稿を、生命エネルギーの代わりとして差し出したのだ。
光となった原稿がすべて兵器に吸い込まれた。それと同時に、発射準備完了と、内部構造の圧力限界を告げるアラート音が鳴り響く。
私は先ほど呑みこんだ言葉を、力の限り叫んだ。
「――これこそが、勝利の鍵! あなたが破り捨てた、私のっ、私の原稿はっ、決して、決して、決っしてっ! 無駄ではなかったんだよ!」
「わかった! アルエ姫、貴女の愛、無駄にはしない! くらえ、シルビアーッ!」
カズマさんの咆哮とともに引き金が引かれ、闇に包まれていた空間に一筋の閃光が走った。
光の奔流が直撃したシルビアは、みるみる身体が崩れていく。
「ウ、ウオオオオオオオ! そんなバカなぁああああ!」
「うおおおおおーッ!!」
カズマさんの魂の叫びに応えるように、兵器から放出される光が一層強い輝きを放ち、シルビアの巨体を完全に飲み込んだ。
「ウガアアアアアアーッ……!」
そして、光の放出が収まる。
そこにはシルビアがいた痕跡は欠片も残っていなかった。里を蹂躙したあの怪物は、この世から完全に消え去ったのだ。
「フッ……汚い断末魔だったな」
「やったんだね……いや……やったのですね……ああ……」
里を蹂躙した脅威が消え去ったのを見届け、安心した私は、その場に崩れ落ちた。
「アルエ姫! どうしたんだ!?」
カズマさんが兵器とめぐみんをその場に放置して、悲嘆に顔を歪ませながら私の方へと駆け寄ってくる。
私は薄れゆく意識の中で、勇者を称えるために声を捻り出した。
「カズマさん、やり遂げたのですね」
「ああ、アルエ姫のおかげだ。しかし、貴女が傷ついてしまった……」
「いえ、これは生命エネルギーを急激に兵器へ吸わせてしまった反動なんだよ……なのです。カズマさん、お願いがあります。貴方の生命エネルギーを、どうか分けていただけないでしょうか……?」
「俺の生命エネルギーを? 一体どうやって……?」
どうしていいかわからずオロオロするカズマさんに、私はくすりと笑い。
「カズマさん、男から女に生命エネルギーを――生命を与える行為なんて、一つしかないじゃないですか」
「そ、それはまさか……」
私の言葉に、カズマさんが真っ赤になってうろたえる。なんとなくかわいい。
「カズマさん、私に愛をください……」
「アルエ姫!」
カズマさんは我慢ならないとばかりに、横たわる私に覆いかぶさるようにして抱きついてきた。
「あ、ああっ……これが、男の人の、カズマさんのっ……!」
外見からはわかりにくいけど、こうして抱きしめられるとわかる、意外と筋肉質でゴツゴツしたカラダ。この初めて味わう感触は、男と女の違いから生じるものなのか、それとも相手がカズマさんだからなのか。
カズマさんの固いカラダが、私に沈み込んでいく。
「アルエ姫……!」
カズマさんの感極まったような声に、私も面を上げる。
彼の顔が、瞳が、目の前にあった。
紅魔族と同じ、黒い髪と。
紅魔族とは違う、黒い瞳。
高級品を思わせる黒に染まった面立ちが、目と鼻の先にあった。
「カ、カズマしゃんっ、い、いつまでも姫と呼ばれるのは寂しいよ。どうか、あるえと呼んでくれないかい……?」
「ああ、わかった」
大事なところなのに舞い上がって噛んでしまった私を、カズマさんは朗らかな笑みを浮かべながら応えてくれて、抱きしめる腕の力を一瞬緩めて、私の顔を真正面に捉えて。
その黒い瞳のレンズに、私の姿をしっかりと映して。
「あるえ」
短く、私の名を呼んで。
瞳に映る私の姿を、次第に大きくしていって。
唇を、触れ合わせてきた。
「んっ……! ふゆっ!」
慣れない私を気遣うような、本当に触れ合わせるだけのキス。
「……! ……!」
カズマさんは私の反応を確かめるかのように、何度か唇の先につんと当てたり、離したりを繰り返して。その度に私はカラダをピクリ、ピクリと肩を震わせてしまって。
何度か繰り返すうちに唇の接触面がゆっくりと、少しずつ増えていき、やがて完全に唇同士が合わさった。
「……っふ……!」
お互いの口がふさがれたことにより、沈黙が流れる。わずかな身動ぎから生じる衣擦れの音がやけに大きく聞こえる、それくらい静かな空間。
しかしそんな静寂とは裏腹に、私の脳天を貫く衝撃は極大だった。
キスなんて、ただの粘膜と粘膜の接触……と口にするのは簡単だ。だがそんな即物的な言葉の羅列だけではごまかせないほど、私の心は強く揺さぶられていた。
「んちゅ、ちゅっ……ちゅ」
触れ合わさっている唇の角度をずらしてみれば、唾液が跳ねる音が耳をくすぐる。その度に、顔が熱くなるのを感じる。
だってファーストキスなのだから。
だって、初恋の人との、キスなのだから。
――私自身、なぜカズマさんにここまで恋焦がれるようになったのか、はっきりとは説明できない。
最初は、初対面で私の原稿を破り捨てた無礼な男、というイメージしかなかった。
だから【夢】のシナリオだって書き始めた当初は、カズマさんが私の原稿を台無しにしたことをひたすら後悔し、私に伏して謝るような展開を考えていた。……今でもその名残はあるが。
だが、腹いせのように原稿を書き殴っていくうちに、私はカズマさんの人となりをほとんど知らないことに気付いた。鬱憤を晴らすためとはいえ、自分が書く原稿だ。人物像のリアリティが欲しくなった私は、カズマさんについて取材をすることにした。その時は、顔を見たら殴りかかってしまう自信があったので本人には突撃できなかったが。
情報はすぐに集まった。何しろカズマさんは珍しいことに里の外から来た人で、紅魔族の天敵と進化したシルビアを討伐した英雄として、里中の噂になっていたからだ。私自身はシルビアの撃破シーンを目撃できなかったことが悔やまれるが、なんでも、めぐみんやこめっこといった仲間の力をその身に結集して放った一撃がトドメとなったらしい。里の裏手にある霊峰に穿たれた穴が、その凄まじい威力を物語っていた。
紅魔族はこんな話が大好物だ。その場にいなかった人間にも噂は広がる。そして人から人へと話が伝えられる度に、実際に見たり話したりしたことによって得られた人物像だけではなく「カズマさんはこれまでこんな活躍をしていたに違いない!」と、好き勝手に妄想したものがどんどん後付けされていき、語られる度にすごい人物となっていったようだった。
しかし、そんな経緯から出来上がっていった捏造と言ってもいい英雄像すらも、誰かがわざわざ冒険者ギルドまで行って取り寄せた彼の活動実績を目の当たりにして、軽々と超越していくことになる。カズマさんはこれまで、魔王軍の幹部を複数討伐し、機動要塞デストロイヤーをデストロイし、汚染された湖を短時間で浄化し、国家権力の横暴を覆し――その活躍は、紅魔族の想像力すらもはるかに上回るものだったのだ。里の皆は熱狂し、噂は更に加速した。
出会いこそ最悪の形だった私も、取材を進めるうちに、里の皆が語る彼の英雄像にすっかり感化されてしまっていたのだろう。あの出会いは何かの間違いだったのではないか、とか、きっとその時はたまたまイライラしていただけなんだろう、などと思うようになり、悪いイメージは消え失せかけていた。
そして私は、ふにふらと、どどんこに出会う。彼女らが言うには、あの色気が欠片もなかっためぐみんが「私の男」と宣言してしまうようになるくらい、カズマさんにぞっこんだったらしい。もっともカズマさんの方はそれを聞いて慌てていたらしいので、まだめぐみんの一方的な想いであって、私達を牽制するためにそんなことを言ったのだろう、とのことだったが。……そう語るふにふらと、どどんこも、彼に夢中のようだった。
更に、めぐみんのみならず、カズマさんのパーティー構成は男1女3というハーレム状態で、みんな彼に夢中らしい。
更に更に、なんとあの恥ずかしがり屋のゆんゆんが子作り宣言をした相手も、カズマさんだという。
……彼の周囲にいる女性は、彼のどんなところに惹きつけられているのだろうか。
そう考えた時点で私の観点は、「カズマさんはどういう人なのか?」というところから、「カズマさんはどういうところが魅力の男性なのか?」というところを探すように変化していた。
そこからはもう、一直線だったような気がする。何しろ、いいところしか探そうとしていないのだから。
まず、名前が素敵。
職業冒険者の特性を十二分に生かしたオリジナリティ溢れるスキル構成。
器用貧乏になりそうなところを頭の回転と立ち回りでカバーするロマン性。
国家権力に媚びないどころか屈服させる男。
数々の強敵を葬ったことにより得た賞金で大金持ち、そして屋敷持ちという安定性。
紅魔族の感性に嫌な顔ひとつせずに乗ってくれるという、懐の大きさ。
――もう私は、噂の中の彼にメロメロだった。
そこまでいってようやく私が本人に話を聞いてみようと思った時には、カズマさんの姿はもう里には無かった。だから、彼が実際に噂通りの人物なのか定かではない。現実は違うのかもしれない。
それでも今、目の前にいる彼は――【夢】のカズマさんは、私が噂を聞く内に自分の中で作り上げた理想の男性像であることに変わりはない。空想上の存在ではあるが、私が恋焦がれた人物であることは間違いないのだ。
現実と違っても、問題はない。だってこれは【夢】なのだから――。
「ふぅっ!」
「っ……あ!」
カズマさんの唸り声が聞こえたのと同時に抱きしめられる力が増したことで、私の意識は【夢】の世界に引き戻された。
「……んんっ…………!」
触れ合ったままの唇を中心に、顔が、熱い。
でも鼻息の荒い女だと思われたくないから、呼吸なんてできない。のぼせ上がるような熱を、息に乗せて放てない。
そして汗もなぜか流れてくれない。急激に上昇した体温にカラダがびっくりして、正常な機能が失われているのだろうか。
排出できない熱が頭をぼーっとさせていく。
キスのことしか考えられなくなる。
「ふっあ……! んっ!」
一瞬だけ口を離し、その隙に大きく酸素を取り込むと、私は無我夢中になってカズマさんの唇を貪った。
「ちゅ……ちゅるっ! ちゅぱっ、んちゅ、ちゅちゅっ」
自分が攻め手に回ったことで、小さな余裕が、思考する隙間が出来てくる。
ゴツゴツしているカラダとは違って、カズマさんの唇の肉質は柔らかい。でも乾燥などには無頓着なのか、表面はところどころひび割れているのを自らの唇を通して感じて、そんなところに男の子を感じて、ドキドキする。
ああ、私は、男の子とキスしてる。
「ちゅ、ちゅっ、はっ、はぁっ……!」
そんな風に自分の状態を客観的に意識した瞬間、心臓がドクドクと、燃え上がるように熱く拍動した。同時に、今まで頭ばかりを蝕んでいた熱はカラダからも発せられるようになり。
全身が、同じ温度になっていく。
等しく、熱い状態へと。
頭とカラダが同じ状態になったことで、今まで触れ合う唇にだけ占められていた意識が、自分のカラダがどんなことになっているのかにまで、及ぶようになっていく。
「ふぁっ……!?」
……思わず間抜けな声を出してしまった私の大事な部分は、すでに水気で溢れていた。
月明かりに照らされて無駄にキラキラと輝く、私の愛液。その光のラインが、ふとももを通り越してすでに地面にまで達しているくらい、濡れに濡れている。期待しているのか? と問われれば、期待しているんだよ、と答える他ないくらいに。
そして実際に、カズマさんの逸物が挿入されることを、今か今かと期待している自分自身の心を、今更自覚する。
自覚と感覚が、心とカラダが、これまで食い違っていたものが、一つになっていく。
私の全てが、カズマさんを受け入れたがっていた。
「カ、カズマさんっ――。……っ!」
「……ああ」
自ら誘うなんてはしたないことでは――? そんな意識が一瞬芽生えてしまい、名前を呼んだだけで二の句が継げなくなった私を、カズマさんは全てを察し、短く相槌を打っただけで優しくリードしてくれた。
「あっ……」
安心させるためなのか頬をそっと撫でてくれて、いつの間にか敷いていた布の上にゆっくりと私を下ろし。
「『スティール』」
カズマさんは、私の所有物を剥ぎ取るスキルを行使した。
温かな魔力の光が、私を包み込む。私は自身の魔力を高めて抵抗なんて真似はせずに、むしろ積極的に抵抗を落として、カズマさんの魔力を受け入れた。
衣服が、下着が、次々に引き剥がされていく。……こういうとき、どういう順番で服を脱ぐのが正しい作法かわからなかったので、カズマさんが盗賊スキルを習得していたことに感謝したい。
そして私は、生まれたままの姿となって、カズマさんの視線に晒された。
「……綺麗だ」
「そ、そんな……」
カズマさんの真剣な眼差しが恥ずかしくて、私は自らのカラダを隠すように抱きしめた。
おっぱいは同年代の中で一番大きいし、不摂生なりに運動はしていて腰だってくびれてるし、自分なりに恥ずかしいところなんてないカラダだと思ってるけど、それでもこうして意中の男性の視線に晒されると、どこか至らないところがあるのではないかと不安になってしまう。
何しろ彼の周りには、私なんて及びもつかないほどの綺麗どころが多いのだから。
私を褒める言葉も、お世辞ではないのかと疑ってしまうけど――。
「綺麗だよ、あるえ。世界で一番、綺麗だ」
「あ、ああ……カズマさん……嬉しいよ……」
目の前のカズマさんは、私の僅かな動作や態度から多くを察し、的確に私が望む言葉をかけてくれる。そのことが、たまらなく嬉しかった。
「あるえ。俺と、一つになろう」
「ああっ……わかったよ……っ!」
もう、私達を隔てるものは何もない。衣服という物理的な隔たりも、彼の周囲にいる女性の存在という精神的な隔たりも、すべてを乗り越えた。あとは彼が言うとおり、一つになるだけ。
だから私は、先ほど伝えられなかった言葉を、今度はしっかりと告げた。
「カズマさん、挿れて……挿れてっ……くださいっ!」
「よし……! わかった」
緊張から飛び出た慣れない敬語だったが、カズマさんは明確に意思を返してきて。
そして間も無く、太くて逞しい肉棒が私の膣口に宛がわれ。
「……ふうっ!!」
焦らす時間も惜しいとばかりに、一気に突っ込まれた。
「ぁっ……! はぁっ……!」
カズマさんの逸物という異物を受け入れた下腹部から、全身をくすぐる快感がぶわっと広がる。同時に訪れる、脳をふわふわさせるような幸福感に私はため息を漏らすかのような静かな嬌声を上げた。
不思議と痛みはなかった。幸せすぎて、痛みを感じる暇もないのかもしれない。
「ぁ……ぁ……」
「だ、大丈夫か?」
しかしカズマさんはここに来てはじめて私の状態を見誤り、心配そうに声をかけてきた。私が静かな反応を繰り返すのを見て、必死に痛みをこらえていると勘違いしたのだろうか。……処女喪失というイベントに直面して、余裕がないのは案外カズマさんの方なのかもしれない。
私は表情筋を意識することもなく自然に笑顔を作ると、カズマさんに言う。
「大丈夫だよ……あんまりにも気持ち良すぎて、声が出なかっただけ……」
「そうか……」
カズマさんはそう短く呟いたかと思うと、口の端を吊り上げて。
「――だったら、いいよな」
「カ、カズマさん……? ん、んんっ!?」
突然纏う雰囲気が変化したカズマさんが、ゆっくりと肉棒を引き抜いていく。
膣の中にあるお肉が肉棒によってズルズルと引き摺り出されていような感覚を覚えて、私はびくびくと悶えた。
――そしてカズマさんが、急に獰猛な表情に変わったかと思うと。
「ふううーっ!」
掛声とともに、しかし先ほど以上の勢いで肉棒を突き入れてきた。
「うあぁっ!? ひうっ、はっ……!」
強い衝撃が、私の下腹部を突き抜けた。
膣だけに留まらず、そのままカラダ全体に浸透するような強いショック。柔らかいお肉であるおっぱいがその度合いを表現しようとぶるんぶるん揺れて、手足の先がビリビリと電気を帯びたかのように痺れた。
「はっ……か……」
内臓をもまるごと揺さぶられたような息苦しさと、くすぐったい快感が、寄せては返す波のように交互に私を責め立ててきて、私はそれらを受け止めるので精一杯だった。
いや、波のように交互に、という表現は正確ではない。二つの感覚はまるっきり別の物で、それぞれが独立した波であるからだ。そして波の動きというものは、二つの波が重なると打ち消し合ったり、逆に合わさって、より大きな波へと変化することもあるもので。
「……うっ!? あぁっ! ああっ!? な、なにこれ……?」
寄せては返す二つの波が、不規則な感覚の変化を私にもたらす。時には大きく、時には小さく、時には微妙に、時には時間差で。
そして、合わさった波が一番大きなものととなって私の精神に襲いかかってきたとき。
「んぐっ!? ひ、あ、あああああっ!!?」
私は、絶頂に達した。カズマさんの侵入を再び受け入れてから数瞬遅れてのことだった。
「んっ、あっ! イってる、あぐっ! イってる……っ」
絶頂に達している中でも、波は容赦なく揺り返してくる。その度に膣がびくびく動いて、膣内に入っているものを締め付けた。
「うっ……ふう……、おお、超締まる……」
「カ、カズマさぁん……!」
一人穏やかな顔で私の膣内を堪能しているカズマさんに、責めるような目を向けたものの。
「ダメだ、もう我慢できない……あるえのカラダがあまりにも魅力的なのがいけないんだからな」
「い、いや、え……その、それは嬉しいけどおおおおっ!?」
カズマさんは私の言葉をスルーして、勝手に腰を動かし始めた。
「うっ、く……」
「は、はひっ……! んっ……は、あ、ああ、ああああ……」
……相手の状態を見誤ってたのは、私も同じだったようだ。
カズマさんはその紳士的な態度の裏で、ずっと我慢してきたのだ。私を犯したくて犯したくて仕方ないのに、理性で押し隠してきていたのだ。そして今、剥き出しの性欲を、私に叩きつけている。
――嬉しかった。
そこまでカズマさんを虜にしてしまった、自分のカラダが嬉しかった。
カズマさんの目線を釣り上げる、自分のおっぱいが嬉しかった。
カズマさんの一挙一動にいちいち反応して悦びを伝えてしまう、自分の女性器が嬉しかった。
……カズマさんが私に剥き出しの愛を見せてくれたのが、嬉しかった。
「あ、あっ……はんっ……んっ……!」
しかしそんな内心の高まりとは裏腹に、私の口から出てくる嬌声は静かなものだった。
自分でもエッチの時にはもっと大きな喘ぎ声を出して乱れるものと思っていたのだが、実際には突き動かされた衝撃で息を漏らした程度のものしか出てきていない。
「はぁっ……! んっ、んんっ……!」
何しろ、余裕がなかった。
カズマさんの激しい動きを受け止めるのと、悦ばせるので、私の脳の容量はいっぱいいっぱいだったのだ。
息を吐くくらいなら、体温を高めて。
舌を回すくらいなら、膣を締め付ける力に変えて。
喉を震わせるくらいなら、おっぱいを揺らして。
全身を使って、カズマさんを愉しませ、受け入れようとしていた。我先にとイってしまった負い目もあり、カズマさんが性欲をぶつけてくれるなら、それに応えなければと思ったのだ。
「ダメだぞ、あるえ。そんな独り善がりじゃ……!」
「えっ……? んんっ!? あ、ああああ……む、むね……いたっ!」
カズマさんが、それまでただ揺れるだけだった私のおっぱいを両手で掴んで、乳首を指で弾いてきた。その行動で、これまでカズマさんのためだけに使っていた私の脳のリソースに隙間が生まれ、下腹部からの欲求が復活する。イきたい、という本能的な欲求が。
「そ、そうなんだね……エッチは二人でするものだから……」
「そうだ。二人で……」
二人で、頷き合う。
自分が気持ちいいだけでもダメならば、相手にだけ気持ち良くなってもらおうとするのもダメ。
二人でするのが、セックスなのだから。
「カズマさん、私イきたい、イきたいよ……だからもっと、激しく突いて……おっぱいも、もっと強く、痛いくらいに……!」
「よし、ヤってやる……あるえ、唇」
「ああっ……! はいっ……!」
お互いに要望を伝え合う。言葉は少なかったが、目線や、息遣い、その他カラダの至るところから得られる情報により、全て伝わった。そんな気がする。
私はカズマさんと、唇を合わせた。
「ちゅ、ちゅるっ」
「ちゅ……ん、んんっ……!」
舌を絡めたディープなキス。
その最中にもカズマさんの手は伸び、私の要望通りにおっぱいを鷲掴みにし、痛いくらいに握力を加えてきて、腰の動きも加速してきた。
「はっ、ぐっ、んんっ!」
キスで塞がれてる口の中から、私の悦びの声だけが響く。
肉棒が、出たり、入ったり。特に引き抜かれる際に、私は膣内のお肉が肉棒によってズルズルと引き摺り出されていくような感触をまた感じていて、その度に私は背筋がぞくぞくして身悶えしていた。
これ、気持ち良すぎて、好き。
「ちゅ、ちゅるーっ」
「ん、んぅっ!?」
更にキスの最中だった舌を唇で挟まれ、ぎゅうぎゅうと優しく引っ張られた。その動作に釣られるようにお腹の中もきゅーっと締まって、カズマさんの肉棒の感触が、更に強く感じるようになる。
「んん、んんっ! はっ……はふゅっ……!」
私の内にある全てが、上の口と下の口から同時に引っ張り出されているようで。
カズマさんがぶつけてくる剥き出しの愛と、剥き出しにされた私の全てがぶつかり合うようなイメージが頭を支配して、どんどん昂っていく。
「ふっ、んっ、ん!」
「んっ! んっ! んんっ」
絶頂が、近づいていた。自然と息が荒くなる。
もうお互いを隔てる壁など何もないはずなのに、それでもまだ足りないとばかりに抱きしめる力を痛いくらいに増しながら、私達は交わり続け。
「ん! ……ふっ、ふーっ!」
「んんっ! ……ぷはっ! ……カズマさん、イきそう? イっていいよ?」
「くあっ……ああ、あるえもイくんだろ……?」
「ああ、イく、イくよ。んっ……ごめんね、さっき私だけイったのに、またイっちゃう!」
「いいぞ、それは、普通のことだ。自然なことなんだ。……ふうっ!」
最後に大きなストロークで一突きされて、私は絶頂に達した。
「んひっ!? んああぁぁぁ!!??」
「うおあっ! くっ、やっぱ締まるっうううー、うっ!!!」
間髪いれず、カズマさんも精液を私の膣内に吐き出してきた。
「ああっ!!?? す、すごっ、熱っ、カズマさん、腰、止めない、で、もっと、いっぱいっ」
「ふうぅううーっ!!!」
「んんんんーっ! すご、い、すごいよぉおおお……」
私の懇願に応えて、カズマさんは中出ししてる最中にも腰を動かし続けてくれた。
中に広がる生温かい液体の感触が、カズマさんとの更なる繋がりを感じさせてくれる。
「はっ、はぁっ、出た……」
「はあっ……すごかったよカズマさん……」
私達は繋がり合ったまま、息を荒げる。
初恋の人と最高の結ばれ方をしたという事実に、私は幸福感でいっぱいだった。
「はぁっ……はぁっ……」
「ん……ぁ…………ぁ……」
頭とカラダをフル活用して、疲れ切っていたからだろうか。
私は息を落ち着かせる間もないまま、眠気を感じ、そのまま意識を薄れさせていった。
――現実の私も、こんな風にカズマさんと結ばれることができるのかな……?
頭の片隅で、そんなことを考えながら。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なーんで、カズマさんばっかりだったんでしょうかねぇ……」
アクセルの街に戻った私は、事務室に行く道すがら、呟きました。
紅魔の里の臨時店は一日で終了となりました。
少女達からは継続するよう涙ながらに縋られたものの、精気を得ることができなくては私は死に至ると伝えたら、案外すんなりと引き下がってくれました。それでも口惜しそうにチラチラと上目遣いでこちらを見てくるので、心が痛みましたが。
そんな少女達が【夢】に見たのは、なんとほぼ全てがカズマさん。
そこには独自設定が入ったり、誰だコイツレベルの修正が入っていたりと、いろいろと差異はあったものの、少女達の妄想の下地になったのはカズマさんのこれまでの活躍劇だったようです。
曰く、魔王軍幹部を複数倒した英雄。
曰く、屈強の冒険者。
「うーん……」
私自身カズマさんの活躍は知っているものの、どうも他人の口からそのような評価を聞かされると、自分のことでもないのに背中がかゆくなります。
実績だっていくつかは……というかほとんどがパーティーメンバーの手によるものですし。カズマさん本人はとても弱く、やっていたことといえば指揮だったり、小細工だったり。いつもパーティーメンバーに手を焼かされていることを考えれば、パーティーのリーダーとして名声を一手に集めるくらいはいいのかもと思わないでもないのですが。
私にとってカズマさんは、偶然幸運な状況が続き、それに甘えて毎日自堕落に過ごしている人、というイメージが強いのです。お客さんとして接する分にはいいとしても、結婚相手には絶対に選びたくないところです。
「ま、彼女らはカズマさんを知って日も浅いですしね」
カズマさんの実態を知らないあの少女達が、シルビアを倒したという一瞬の活躍や、活動実績の事実誤認などで、カズマさんを英雄視してしまうのも仕方ないことなのかも、と納得した私はやれやれと息を吐き、歩みを進めました。
「で、どうだったかしら? 紅魔の里は」
事務室にて。シフトリーダーからそう問われたので、私は口を開きます。
「紅魔の里は、噂と違ってかなり穏やかなところでした。こちらに害意が無いことを示せばかなり友好的でしたし。ただ、支店を作っても精気の確保は難しいです。若い男の子は引きこもりがちで、むしろ女の子の方が肉食系なくらいで。……それでも条件付きで開店するメリットはあるかと思います」
間違っても紅魔の里が店を開くのに適した土地だと報告することはできません。それは店に嘘をつくことになります。ですが、あの少女達の悲しそうな顔も忘れられません。
そう思って報告に一文を足したのですが、シフトリーダーはなぜか呆気にとられた顔で。
「……旅の思い出話でも聞こうと思っていたのだけれど……ええ、そうね。私が調査を頼んだことだしね。……条件付きというのはどういうことかしら?」
やっぱり本気で調査を頼んでいたわけじゃなかったんだなぁ、と微妙に悔しく思いつつ、私は答えます。
「里の人間はみんなお金持ちなので、利用料金をかなり高めに設定して……その店だけは金銭を稼ぐための店と割り切って開業してはどうかと。これから支店の開店ラッシュを続け、グループを拡大していくのであれば、お金は必要でしょうし」
ほぼ全員が上級魔法を使うことができ、里の周りに生息する強力なモンスターを狩って貴重な素材を潤沢に用意できるためか、あの里の人はみんなお金持ちです。それこそニートでも一日で遊べるお金をポンと用意できるくらい。
私はそれを踏まえ、精気を得るという本来の目的とは別の立ち位置で紅魔の里を利用するなら、支店のオープンにこぎつけられるのではないかと思ったのです。
しかしシフトリーダーは困った顔で。
「うーん、難しいわね」
「……そうですか?」
「まず、精気を確保できないならその店に行きたがる子は少ないだろうって点があるのよね」
「……ぁ」
考えてみたらすぐにわかる問題点を指摘され、私は呆然としました。
店を開くメリットを考えることだけに夢中で、問題点にまで意識が及んでいなかったのでしょうか。
シフトリーダーは続けます。
「支店の開店ラッシュのために資金を確保することに関しても、確かに支店を広げているうちはいいかもしれないけれど、店の数がある程度増えたら用済みになってしまうわ。私達は人間と共存する道を選んでいる……生存するために最低限の精気を確保できさえすればいいのだから、支店の数を必要以上に増やすことは考えていないの。やろうと思えば地上に一大企業グループを作ることもできるでしょうけど、それだと人間の商人と敵対することになってしまう」
「あ……ああ……」
ぐうの音も出ません。私の稚拙な案は、完膚無きまでに叩き潰されました。
ショックで俯く私でしたが、シフトリーダーはパンと手を叩くと。
「――と、ここまでは私の勝手な考え。一応貴女の報告はそのまま伝えておくわ。あとはサキュバスリーダーや上が判断することよ」
「……えっ?」
私が顔を上げると、シフトリーダーが半ばおどけるようにしながら続けます。
「言っておくけど、私がさっき言ったのと同じ理由で認められない可能性が高いと思うわよ。そのときにガッカリしないよう先に問題点を挙げておいただけだからね」
「は、はい……」
盛り上がりなおしたところで、釘を刺されました。
本当に、ぐうの音も出ません。
「……それにしても貴女、ずいぶんと紅魔の里に支店を作る方向に熱弁してくれたわね。……現地で恋人でも作ってきたの? ほら、なんというんだったかしら……現地妻?」
「違いますよ!?」
「浮気?」
「だから違いますって! ああ、なんですかその目は! 浮気も何も、私とカズマさんは何も……」
「カズマさんのことなんて言ってないのだけれど」
「……!」
それから珍しく声を上げて笑い始めたシフトリーダーに、私は開店までからかわれ続けたのでした。