カズマは王女との面会を控え、【夢】の中で仮想ミツルギを相手に訓練を重ねていた。
それはそれとしてロリサキュバスのためにエッチな【夢】も見ることにしたのだが、カズマにしては珍しく今日の相手役として選んだのは行きずりの女性だった。彼女は修道服姿でエリス教会の炊き出しの列に並んでいたのだが――。
「あなたセシリーさんですね!」
慎ましい身体つきのエリス教徒は、炊き出しの列に並んでいた金髪のお姉さんに対して声を張り上げた。なかなかの剣幕であり周囲の人も何事かと目を向けるが、声を当てられたお姉さんは自分が当事者だとわかっているのかいないのか、ぼんやりとした表情で顔を上げ。
「そうだけど……何? あなた、お姉さんのファンなの?」
「違います! あ、いえ……以前この街で悪魔騒ぎがあった際、冒険者の治療を代わりにやっていただいたのには感謝しています。私達ではもっと時間がかかったでしょうし、貴女はあの後ふらっと消えてしまってお礼は言えず仕舞いでしたから……その、改めて、あの時はありがとうございました」
「ああー……そんなこともあった、かしら?」
「はい。でもまさか、またこの街にやって来ていたとは……」
金髪お姉さんの名前はセシリー。どうやら慎ましい身体つきのエリス教徒と比較してかなり力のあるプリーストで、辻ヒールのような真似をしていたようだ。
この世界でプリーストとして能力が高いということは、ステータスが高いのももちろんだが同時にあつい信仰心を持ち合わせているということであり。俺がパッと見で予想した『敬虔な信者』という線も間違いないようだ。
――髪は金髪ロングのストレート。
胸は大きくて。
おそらくエリス様に仕えている敬虔な信者で。
人々に感謝されるような治療行為を行いながら黙って去っていく、優しく謙虚な女性。
ぶっちゃけ超タイプだ。
慎ましい身体つきのエリス教徒は咳払いをひとつ挟み。
「貴女には本当に感謝しています。ですが、あの時の事と今回の事とは話が別です。……そんな格好で並ばれては困ります」
「どうして? ここは恵まれない人のための炊き出しなんでしょう? それなら貧しくて飢えている私にも、分けてくれたっていいじゃない!」
「い、いえ。確かに炊き出しの趣旨はあっていますが、私が言っているのはそういうことではなく――」
なにやら事態が紛糾しそうだと思った俺は、お互いの助け船になればと、そこで声をかけてみることにした。
「お姉さん。よかったら俺が奢りましょうか?」
「!?」
背後から突然声をかけられセシリーは驚いてしばらく固まっていたが、俺の言葉の意味を遅れて理解するとコクコクと頷いた。
まずは一軒目、とばかりに、俺はいつものギルド併設酒場へとセシリーを連れてきた。
今日の客足はまばら。
この頃は酒場を利用する冒険者の数が減りつつあるらしい。あのデストロイヤー戦で得た賞金も一生遊んで暮らせる額というわけでもないし、金策を考えていた俺はともかく、他の連中はそろそろ資金が底をつく頃なのかもしれない。
まぁ、そういう宵越しの金は持たないとでも言うような生き様を俺がどうこう言うつもりにはなれない。連中は好きでそういう生活を――明日をも知れぬ冒険者をやっているのだから。
「あ、そういえばそのボロっきれ、たぶん人の目をごまかすために被ってるんでしょうけど、逆に目立ってますよ。お姉さん金髪で綺麗だから」
「!? そ、そうだったの?」
対面の席に腰掛けた彼女は真っ赤になって、被っていたボロっきれをフードごと取っ払った。その仕草に煽られるようにしてさらさらの金髪がふわっと舞う。
「おお……」
見え隠れする面差しから綺麗な女性だろうと予想していたが、なかなかどうして想像どおりのものが出てきたと思った。
グラスを傾けていた先客の冒険者たちも彼女の姿を見て息を漏らしたのが聞こえたが、同時に俺の顔を視界に捉えたであろう瞬間、興味がすっと引くのを感じた。例え美人でも、俺の連れならイロモノだと予想しているのだろうか。
文句のひとつも言いたくなったが、今は人の目を集めない状況の方がありがたい。
物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回しているセシリーに向けて、俺はグラスを差しだした。
「さ、お姉さん、ぐいっと一杯」
「これは……お酒? お酒!」
おっと。エリス教の戒律は知らないが、酒はダメだったのだろうか。……いや、エリス教徒であり聖職クルセイダーでもあるダクネスは普通に飲んでいるし問題はないはず。
とはいえ彼女が個人的に清貧であろうと酒を断っている可能性はあったかもしれない。
まぁ、ここは言いくるめよう。
「お姉さんの信じる神は、他人の親切心より清貧であることを優先しろって教えてるのですか?」
「!? そんなことはないわよ! よーし……! んぐっ!」
「お、いい飲みっぷり!」
「ぷはーっ! なにこれ、超おいしいんだけど!」
二軒目にハシゴして。
「お姉さん、結構酒強いですね」
「そうかしら? 他人と比較する機会がないからあんまり自分じゃわからないんだけど……あ、すみませーん! クリムゾンビアーもう一杯!」
「ええ、かなり強い方かと。さぁ、ここも全部俺の奢りですから、今日はじゃんじゃん飲みましょう」
「ええ、わかったわ! ……ぷぁはーっ!」
いい飲みっぷりだ。ここまで気持ち良く飲んでもらえると、奢る方としても嬉しくなる。
慎ましいエリス教徒と言い合ってた時から聖職者らしくもない言葉遣いだと思っていたが、一緒に酒を飲むならこういう女性の方が気楽でいい。
三軒目。
「あら、あらら? なんだか世界が回ってきたのだけれど……?」
「ささ、もう一杯どうぞ」
「あれ? え、ええ、そうね。人の厚意を無駄にしちゃいけないものね。……んく、んく……ぷあーっ! くぅー! 長旅で疲れ切った身体に、キンッキンに冷えたクリムゾンビアー! 五臓六腑に染みわたるわねー!」
「そうでしょうそうでしょう。空きっ腹に酒を流し込んでるわけですしね……すみませーん、同じのもう一つお願いしまーす!」
「ぷぁー!」
セシリーは運ばれてきた酒を次々と身体の中に注ぎ込む。
酒を飲んだ経験の少ない人間が、慣れない高揚感などから酒の量を調整できないのはよくあることだ。
――足元をふらつかせるセシリーを、俺は宿屋に連れ込んで。
「ううえ……まだ、まだまだ飲めるわ……あれ? ここは酒場じゃないわよね……?」
「俺、ちょっと追加の酒買ってきますね。部屋でゆっくり飲みましょう」
「う、うん……? ありが……と?」
確保した部屋にセシリーを置き、俺は屋敷へと向かった。
屋敷と宿屋はそんなに離れていない。
俺は30分と経たずに必要なものを揃え宿屋に戻り、部屋のドアを開け放つと。
「っ……!」
部屋の中でベッドに座っていたセシリーは、ビクッと震えた。
言葉が飛び出てしまうのを辛うじて飲みこんだといった様子の彼女は、おそるおそるとこちらに目を向けてくる。そこには一緒に酒を飲み交わしていたときのような気安い感覚はすでになく、疑惑の感情や警戒心が、視線を通じて伝わってきた。
俺が屋敷に行っている間に冷静になり、男に酔わされて宿に連れ込まれたという自身の状況に気付いたのだろうか。
べろんべろんに酔っていた状態から短時間でここまで立て直すとは、やはり彼女は酒に強い。とはいえ完全に醒めたというわけでもないようで、身体の動きはやや緩慢だった。
俺は、セシリーから向けられてくる視線をあえて無視したまま、部屋の備品である机をベッドの脇に寄せると、その上に魔道カメラを置いて作動させた。
「ね、ねぇ……どうして魔道カメラを? しかもそれって活動写真も撮れる、すごくお高いものよね?」
「お姉さんとの馴れ初め……いや、出会いを残しておきたくて」
「は、はぁ……」
怪訝な様子でカメラのレンズを見つめるセシリーをよそに、俺は回り込むようにしてベッドに近付くと、彼女の隣にゆっくりと腰かけた。
「!?」
拳一つ分くらいを空けた、微妙な距離。しかしセシリーはカメラに注目していたとはいえ、ベッドマットが沈み込むまで俺が接近していたことに気付かなかった。
やはり酒は抜けきっていない。視野は狭くなっていて、肌感覚は鈍く、思考もまとまっていないのだろう。そのひとつひとつが遅緩な反応という形になって表れている。
驚いたままのセシリーを尻目に、俺は淡々と口を開いた。
「それじゃお姉さんの名前、もう一度教えてくれるかな? あ、目線はカメラで」
「……は、はい? ええと、私、セシリーと申します」
水分を取り戻したことで艶やかになった唇から、丁寧な口調で名前が告げられた。
「そっかー、セシリーちゃんかー。セシリーちゃんはかわいいねー。歳はいくつ?」
「あ、あの……食事を奢っていただいたり、宿を手配していただいたことには本当に感謝しているわ。ですが私は神に仕える身……その、お姉さんは、こういうのはいけないと思うの」
「んー、大丈夫大丈夫」
俺は彼女の肩に手を添えると、ぐいっと抱き寄せた。
「!? 大丈夫って何が……あ、あの、どうして肩に手を……」
「セシリーちゃんと、もっとお近づきになりたかったからかな」
「それって物理的に近づくって意味じゃないわよね!? あの本当にやめ痛っ!?」
慌てて離れようとするセシリーを、肩に添えた手に力を入れて無理矢理留めた。
そして、やはり何事もなかったかのように質問を続ける。
「今まで何人くらい経験あるのかな?」
「怒りますよ! ですから私は神に仕え――ひっ!?」
俺はセシリーの肩に回していた手の位置を下げ、その豊満な乳房をぎゅむっと掴んだ。人の頭ほどの大きさがあるおっぱいだ。片手だけでは掴み切れないボリュームが指の間からこぼれてしまう。
「あ、ああ……っ?」
「こんなにおっぱい大きいのに経験ないのかぁ……その仕えている神様に申し訳ないと思わないの?」
「ど、どういうこと!?」
おっと。こちらから神様の話題を出した途端、俺の腕の中で震えるだけだったセシリーが怒気を伴う態度に急変した。信じる神を俺に馬鹿にされたと思ったのだろうか。
心外だと思いつつ、俺は口を開く。
「この世界、人口が減って大変らしいんだよ」
「……え?」
「ほら、この世界はモンスターとか魔王軍とかいて、生きていくには厳しい世界だろ? それで死んだ魂は同じ世界での生まれ変わりを拒否するらしくて、人口減少が止まらないって聞いたぞ」
「……誰から、聞いたというの?」
「だから神様から。俺は会ったことがあるんだよ」
「!?」
……もっとも、人口減少のくだりを聞いたのはこの世界を管理しているエリス様からではなく、アクアから聞いた話だったが……決して嘘は言っていないし、俺自身もこの世界で過ごしてきて数ヶ月、生きるのに厳しい世界なのは確かだと実感していた。
セシリーは、警戒とは別ベクトルの真剣な顔つきになって。
「ではあなたは、一度死を……?」
「ああ。リザレクションを使える仲間がいてな。死を経験したのち、神様に導かれて、こうして今も生きている」
「あ、ああ……」
セシリーは感嘆の声を交えながら、神に会合したことがあるという俺をまじまじと見つめてきた。その瞳に、警戒心はすでにない。
……彼女がプリーストということもあるだろうが、それをひっくるめてもこの世界の人間は神への信仰心が高すぎると思う。
信仰する神を馬鹿にされれば普段温厚な人でも牙を剥いてくるし、同じ神を信仰すると分かればこうしてあっという間に警戒心を解いてくる。いや、別に俺はエリス教の信者というわけではないが。
おそらくこの信仰心の高さは、信仰の対象であるところの神が、その気になって自殺でもすれば確実に会うことのできる……会えるアイドルならぬ『会える神様』であるところが大きいのだろう。神の存在が『会える』レベルにははっきりしていて、そして信仰すれば宗教ごとに異なる恩恵が確実に返ってきて、悪いことをすれば天罰も下る……らしい。農家が水の恩恵を求めてアクシズ教徒になっているなんて話を聞いたこともあるし。
ここまでくれば神の存在を疑うなんて土台無理な話。俺のような無宗教の人間なんて、頭がおかしいと思われることだろう。
しかしそんな自身の思想信条はおくびにも出さず、俺は話を続ける。
「だから人口が減り続けるこの世界で、子作りは世界を維持する行為に等しい。神様の意向に背く行為じゃない。むしろ祝福だってしてくれるさ」
「そ、そうだったのね……」
セシリーが落ち着きを取り戻したところで、俺はもう一度彼女の乳房に添えた手に力を入れた。
「んっ……!」
「いいよな?」
「……は、はい。貴方には食事も奢っていただきましたし、神がそう仰られるのなら――あっ……!」
俺はセシリーをベッドに引き倒した。
仰向けに倒れても丸みを失わないおっぱいに、自分の手を被せるようにして添える。
「うおおお、柔らか……!」
「あ、あぁっ……!」
この世界の女性は、俺が元いた世界と比べると巨乳の比率が大きい。
しかしひとくちに『巨乳』と言っても、持ち合わせているものは当然人によって異なる。
柔らかさが違う。
揺れ方が違う。
手触りが違う。
体温が違う。
芳しさが違う。
セシリーは定住者ではなく旅をしてきたという経緯があり乳房周りの筋肉がそれなりに発達しているからだろうか、連れ回したときも、引き倒したときも、あまり揺れることはなかった。しかしこうして手の内にすればわかる、服やブラ越しでも感じる柔らかさ、じんわりと高い体温。
「あ、はっ、はう……っ!?」
更に顔を埋めてみれば、仄かな汗臭さが鼻腔に広がる。
俺はその香りを力いっぱい吸い込んだ。
「んんぅううー、すげぇ、温かい……」
吸い込んだ空気からもセシリーのじんわりと高い体温が伝わってきて、俺のカラダの中を巡っていく。
セシリーのおっぱいは一言でまとめるならば、その柔らかさと体温から、見た目の大きさ相応の包容力を感じさせるおっぱいだった。
「ふふ……なんだ、かわいいじゃない」
セシリーの目には、俺が乳房に食いつく赤子のように映っているのだろうか。
俺の頭に手をやると、まるであやすように撫で始めた。
「よーしよし……」
「ん……」
セシリーに撫でられる心地よさに目を細める。
性欲とはベクトルの違う気持ち良さに包まれ、乳房をできるだけ顔に押し付けようと込めていた手の力も緩んでくる……本当に宥められた赤ん坊の気分になってきた。
しかし俺の上半身がセシリーの包容力に負けそうになっている一方、そこから遠い下半身はまるで別の生き物のようにさっきから性欲の証が鎌首をもたげていて、俺は身を捩ってセシリーの太ももにそれを押し付けた。
「ひぅ、熱っ……!?」
セシリーは押し付けられた温度にびっくりしたのか、俺の頭に被せていた手を離してしまう。その隙に俺はカラダを起こすと、勃起したちんぽを見せつけるように露出させた。
「も、もしかしてそれが――」
「そう。これが男性器ですよ。お姉さん」
「はわわわ……」
セシリーは俺のいきり立ったちんぽをその目に捉えて、さっきまであったはずの余裕が一気に吹っ飛んだようだった。
顔を鼻先まで真っ赤にし、自らのカラダを守るように胸を掻き抱く。
俺がにじり寄ればその分だけ下がろうとするが、ここは狭いベッドの上、すぐに端に追い詰めた。
「へへ……なんだ、かわいいじゃないか」
俺は優位な立場を取り戻したことに口の端を吊り上げると、セシリーの修道服の裾を掴み一気にめくり上げた。
「あ、あぁっ!?」
衣服を引き剥がされまいと腕で抑えて抵抗を試みたセシリーだったが、酒の抜けきっていないカラダではそれも虚しい行為だった。するするとセシリーの裸体が露になっていく。
とはいえそのまま全裸にするわけではない。俺はセシリーの胸元まで修道服を捲り上げたところで手を止めると、その下にある胸の谷間にイチモツを滑り込ませるように突っ込んだ。
「んんっ!? こ、これは……?」
「パイズリって言うんだよ」
修道服の胸部に描かれていた大きな十字架は捲りあげられたことで歪み。
その歪んだ十字架の下で、俺のちんぽがセシリーの乳房に包まれていた。
高い体温がイチモツを通してじんわりと伝わってきて、心地いい。
「ぱ、ぱいずり……?」
「こうやって俺のチンポをセシリーのでかいおっぱいで挟んでだな――」
腰を浮かし、乳房に叩きつける。
「んっくぅ!?」
「――挟んだまま、腰を前後に動かしたりしてチンポを扱くんだ。おっぱいでチンポを擦る、だからパイズリ」
「え、そ、そんな……胸はそんな行為をするためのものじゃ――」
「そりゃ本来の目的とは違うだろうさ。でも、俺が気持ちいいんだ。だからヤる」
「え、ええ……?」
セシリーが困惑の表情を浮かべた。
……かつてどこかの宗教下では、セックスはあくまで子作りのための「手段」でありそれで劣情を催すのは浅ましいことだとして、セックスをする際には女性を麻袋に突っ込みできるだけ裸を見ないようにした状態のまま姦淫を行ったケースもあったと聞くが、今俺がやろうとしている行為はまさにその真逆。
素肌こそ完全に晒されてはいないが、子どもに栄養を与えるために成長した乳房を男性たる俺が快楽を得るための道具として使い、例えこのまま射精しても、精子は衣服の中に留まり子作りのために使われることはない。無駄撃ちだ。ただただ、俺だけが性的快楽を得るためだけの非生産的な行為。
別に積極的に神様に反逆したいわけではないが、やってはいけないと言われると人はやりたくなる。背徳感は興奮を促すからだ。
そう、俺の眼下にいるのは、神に仕えている女性。そんな女性を性的快楽を得るための道具として使うなんて……これは神に対する一種の寝取りプレイではないかと考えると、ちょっと興奮してきた。
……なるほど、寝取りプレイか。
なんとなく、漠然と嫌なイメージがあって避けていたが、食わず嫌いなだけだったのかもしれない。
「ダ、ダメよ、こんなこと! やめて!」
セシリーは今更のように嫌がって暴れるが、俺が完全に体重をかけて乗っかっているので排除することはできない。
俺はセシリーを手で抑えつけたまま、もう一度腰を引き。
「やーだね。大体、セシリーこんないやらしいおっぱいなのがいけないんだ、よっ!」
「んぐっ!?」
再度乳房に叩きつけた。
さっきは俺の頭を包み込んでいたほどのボリュームがあるおっぱいだ。俺の乱暴な動きにも形を変えながらしっかり対応して、俺のイチモツに柔らかい感触と、セシリーの高い体温を伝えてくる。
「ああー……本当にいやらしいおっぱいだ。俺がパイズリで使うためだけに世の中に生まれてきたような……」
「だ、だめよ……本来胸は、赤ちゃんにミルクをあげるために――」
「慎ましいおっぱいだって母乳は出るもんだ。セシリーのおっぱいがここまで大きいのは、それを使って男を悦ばせなさいっていう神様のメッセージなんだよ」
「そ、そんなこと……な、い……わ…………」
セシリーの声が尻すぼみになっていく。
実際に神に会ったことがあるという俺の言葉を否定できるだけの根拠がないのだろう。
……そもそも俺が神に会ったという話が、本当かどうかもわからないのに。
素直な女性だ。
そして、そんな女性を情欲で汚すことができる喜び。
「ふぅ!」
「んっ!」
腰を前後に動かし、パイズリを続行。
「ふぅっ! ふっ! うっ」
「んっ、んぐっ! はくっ……!」
セシリーは好き勝手に使われる自らのカラダを見下ろしながら苦悶の声を漏らすが、もう抵抗はしてこない。されるがままだ。
「ふぅっ!」
「あぅっ……!」
柔らかな二つの乳房で形成される肉の谷間。
そこに完全に埋もれる形となった俺のチンポが出たり入ったり、亀頭を覗かせたり隠れたり。
潤滑油となるのは互いの汗と、俺のイツモツから漏れ出るカウパー腺液だけであり、少々物足りないところもあるが、セシリーの肌のきめ細やかさがダイレクトに感じられて、これはこれで気持ちいい。
「んうっ……! ふっ、 はぁっ……!」
亀頭が見えたり隠れたりする様子を眺めるセシリーの吐息が荒くなっていく。
イチモツを通して感じるセシリーの体温が、徐々に上がっていく。
セシリーも、いけないことをしているという背徳感から興奮してきたのだろうか。
まぁ、理由はどうでもいい。
大事なのは、セシリーの上がってきた体温や吐息の感触がちんぽを刺激して、俺をより興奮させることであって。
「はぁーっ……! 出る出る出る!」
「えっ……? ま、まさか出るって精え――」
「う、ううっッ!!!!」
俺はセシリーの言葉を最後まで聞くことなく、欲望が上限に達した証を解き放った。
「ひっ、あ、熱っ! やっ……」
「ううっ! うっ……! おおお、出る、出てる、まだ出る……っ!」
視線を下ろせば、肉棒の先端から放たれ続けている白濁した粘液が、修道服の裏地を貫通して滲み、白い斑点の様にじわじわと浮かび上がってきていた。
「はぁー……ふぅー……」
それはまるで修道服に描かれた白い十字架を、新たな白が汚していくような光景で。
俺をひどく興奮させた。
「あ、すごい……いっぱい……これが、精液……ああ、困ったわね……」
「ん?」
「私、この修道服が一張羅なの。替えを持っていないのよ」
セシリーはそう言って胸元をつまんで見せた。放たれた精液が胸の谷間と衣服の隙間を埋め尽くしていて、べっとりと糸を引く。
「あー……と、それは悪かった。後で替えを買ってくるから」
「ええ、お願いするわね。……まったく、本当にべとべとにしてくれちゃって……。唯一無事なのは、このフードぐらいのものじゃない」
そう言ってセシリーは、早い段階で脱ぎ捨てていたフードを手に取った。
手に取った、のだが。
「あ、あれ……セシリー、さん? そのフードに描かれているマークは……?」
「え? ああ、これは私が信仰している宗教のシンボルマークよ?」
「……ぁ」
血の気がサーッと引いた。射精の余韻に浸っていた意識が“ガラッと切り替わる”。
彼女のフードに描かれたそれは、エリス教が掲げる紋章ではない。
あのマークは――。
俺が勝手にエリス教徒だと思い込んでいたこの女性は、本当は――。
「? どうしたのかしら?」
思い返せば、ヒントはいくつもあった。
日も沈みつつある時間で暗かったり薄汚れていたりでわかりにくかったとはいえ『黒』というよりは『青』に近い色で染め上げられた修道服。
エリス教徒から感謝もされていたが、同時に警戒もされていて。
自分の欲望に忠実そうな、自由奔放な性格で。
これらは「変わったエリス教徒」というだけでは説明しきれない。
「……ああ」
本当は気付いていたのに、気付かないフリをしていたのかもしれない。
炊き出しの列に並んでいたときからボロッ切れを被っていたことで見えづらかったフードのマークも、本当は隙間から見えていたのかも……しれない。
「あ……あ……」
記憶は曖昧だ。はっきり視認した覚えはない。
だが、サキュバスが魅せる【夢】は本人が曖昧だと思っている記憶からでも正確にイメージを再現する。それこそ記憶しようと思った覚えのない風の匂いまで再現していたように。
彼女のフードについているシンボルマークも、俺が覚えていないような気がするだけで、本当は視界の隅に垣間見る機会はあったのだろう。
「……そういえば言ってなかったかしら?」
そうだ……これは【夢】!
サキュバスの魔力を使ったスキル! 心を強く持って魔力を高めれば抵抗できる!
目よ覚めろ! 彼女が決定的な一言を言ってしまう前に!
「私はセシリー。世界的な大宗教、アクシ――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほわああああああ!」
「うっひゃああああ!?」
カズマさんの枕元にて、放出された精気を味わいながら微睡んでいたところ。
突然カズマさんが叫び声とともに跳ね起き、驚いた私も素っ頓狂な声を上げてしまいました。
「な……なんですか!? 私何かミスしました? ダメでしたか!?」
「あ……ああ、うん……その……何でもないんです。俺が自分の都合で起きただけです。ハイ」
カズマさんはそう言って肩を落としました。
「は、はぁ……そうですか……。その、どうします? 夜が明けるまでにはまだありますが【夢】を再開しますか? さっきので私の精気補充的には十分だったんですけど」
「ううん……いや、今日はもういいや……すまん、ちょっと一人にしてくれ……」
「……わかりました。その……お大事に?」
「ああ……」
私はカズマさんに何と声をかけていいかわからず、宿屋を後にしました。
カズマさんが【夢】を中断するなんて……こんなのは初めてのケースです。ノゾキミをしていなかったのが悔やまれます。訓練に付き合って疲れていたのもありますし、相手役が行きずりの女性なので今後使うこともないだろうと思って放置していたのですが……少し後ろ髪が引かれる思いでした。
とは言っても何もできることが思いつかなかった私はそのまま事務所に戻り。
何らかの資料を整理していたシフトリーダーに声をかけました。
「シフトリーダー、ただいま戻りました。お疲れ様です」
「あら? 早かったわね。珍しい」
「カズマさんが途中で飛び起きちゃって。私のせいではないとは言ってましたけど……何が原因か教えてくれなかったのでちょっとモヤモヤしています」
「あらあら。まぁそんなこともあるわよ。頼まれてもいないのに踏み込んでも嫌がられるだけだから、そのままにしておきなさいな」
「はぁ……」
シフトリーダーのさっぱりした態度は憧れではありますが、まだその境地に至ってない私はすぐに切り替えることができません。
モヤモヤが残って、イヤな気分。
例え自分に直接関係のない事柄だとしても、周りで起きた疑問点はなるべく解消したいですし、問題があるならそれを解決しておきたいとも思うのです。
「あ……問題といえば……。シフトリーダー、ちょっと質問が」
「? 何かしら」
私は、紅魔の里に行ったときに捕縛されたときのことをシフトリーダーに伝えました。
「――魔力が、漏れていると?」
「そうなんですよ。それで悪魔だと看破されたことがありまして、一時は身の危険も感じたこともあったので、なんとかしたいなぁと」
「そう言われてもね……悪魔族が魔力を完全に隠蔽するなんて、無理な話よ?」
「……そうなんですか?」
シフトリーダーは頷いて。
「ある程度ごまかすことはできるのだけれどね。私達は存在自体が魔力の塊のようなものだから、紅魔族のように魔力に敏感な人間だとバニル様でもごまかすのは難しいと聞くわ。それにスキルや魔法を使えば当然ながら魔力は身体の外に向かって発散されるものだし……特に【夢】のスキルなんて魔力で男性を包み込む必要があるから、なおのこと魔力を完全に隠蔽するなんて無理な話でしょうね」
「そ、そうなんですか……」
「貴女も普通のサキュバス程度には魔力を隠蔽できているから安心なさい。紅魔族クラスでもなければ普段の貴女が悪魔だと気付くなんてありえないから」
「……もし、その紅魔族クラスの人間に見つかったら、どう動けばいいでしょう?」
「残機は諦めなさい」
「ぴっ……!?」
バッサリとした物言いに、思わず変な声が出てしまいました。
「普段の私達から悪魔族の魔力を感知できる――そのような凄腕の人間に、私達が抵抗しようとしても無意味よ。残機を消費するのは心苦しいけど、もともと私達は戦う力もないのに人間の街にやってきた。リスクを承知で、地上にいるのだから」
「そうでした……」
アクセルの街にいると、居心地の良さから時折忘れてしまいそうになります。
私達はサキュバス。人間と敵対する、モンスターでしかないのだと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
王都に襲撃してくる魔王軍の指揮官を討ち取ったり、開拓の邪魔となる強力な原生生物を討伐したり。
そういった偉業を成し遂げた冒険者と会食すること……それは、王女である私の“義務”であった。
この国には、魔王を倒した勇者に褒美として王女を妻とする権利を与える決まりがある。そうやって優秀な血を取り入れることで王族は代々強化を図ってきた歴史があり、私、第一王女アイリスも、それらの血を受け継ぎ多くのスキルや神器を扱う才能を持って生まれてきた。
そして、偉業を成し遂げた冒険者ならば将来的に勇者になる可能性も高い。だから今のうちにそういった冒険者と顔合わせだけでもして繋がりを作っておこう……そんな意図があって会食の場は設けられていた。
とはいえ、偉業を成し遂げた冒険者が皆人格者とは限らない。むしろ荒くれ者と呼ぶに相応しい人物の方が多いのだ。そのような人たちから将来の伴侶候補として値踏みするような視線を向けられたことは幼少時から数知れなかった。
褒美に王女を、というのは冒険者のモチベーションを上げるために広く公開されている情報でもあるし、値踏みをしているのはお互い様ではあるが、カラダを舐め回されるような視線に幼かった私が嫌悪感を抱き、会食の場から逃げ出したくなるのに時間はかからなかった。始まった当初は城外の様子を伺えるチャンスだとあれだけ楽しみにしていたのに、早々にその機会を嫌と思うようになってしまったのだ。
それでも、この身は勇者の血を受け入れてきたかつての王女たちの歴史があってこそのもの、私の我儘でそれを断ち切るようなことがあってはならない……そんな義務感から出席だけは続けていたが、回を重ねるごとに精神は摩耗していった。
教育係の一人であるクレアがそんな私の様子にいち早く気付き、私の言葉を代弁する役を買って出て防波堤となってくれたこともあって、なんとか会食の場は続けられた。向けられる視線は相変わらずでも、直接言葉を交わさないだけでずいぶんと楽になったのだ。
だが一度嫌になってしまったからだろうか、会食に関連するもの全てが浅ましく思えてくるようにもなった。
彼らの口から語られる冒険譚――やれこんな強大な敵を倒した、やれ自分は高レベルでステータスも高くこんなスキルだって使える……そんな言葉を、私は笑顔を貼り付かせながらも冷めた思いで聞くようになっていた。
――それで貴方は、私より強いのですか?
そんな言葉を口にしようとして、すんでのところで留まったことは一度や二度ではない。彼らが語る高いレベルも、高いステータスも、私に遠く及ばないものだったからだ。
ただし私の力は、王族の血を受け継ぐ者として生まれ持ったスキル、経験値の詰まった高級食材を使った日々の食事、高度な教育のおかげであり、一から頑張ってきた冒険者の彼らと単純に比較してはいけないことだろう。実戦経験だって彼らに一日の長があるはずだし、日々クエストをこなして近隣住民の直接の助けとなっているのも彼らだ。城に引きこもっている私ではない。
しかし、不躾に向けられる欲望の視線から、そんな思いを抱いてしまうのは止められなかった。
そして、功績を上げた冒険者に対してそんな感情を向けてしまうようになった自分自身こそが……それこそ一番浅ましいものに思えてしょうがなかった。
会食には出たくない。しかし、王女の義務として出なければならない。顔を合わせれば彼らの身振り手振りを交えた冒険譚がつまらない話ばかりでしょうがない。つまらないと思ってしまう自分が嫌い。しかし会食の予定は、来週も、その次の週にも、ずっと先にまで予定されている。……クレアのおかげでスピードこそ緩やかになったものの、ストレスは溜まる一方だった。
そんな状況から日に日にやつれていく私を見て、代弁者としての立ち位置を確立し始めていたクレアは、段々と冒険者に対して言葉を荒らげるようになる。少しでも失礼な発言や態度があれば即座に断じ、剣を抜いて威嚇し、会食の場をぶち壊しにし始めたのだ。私はそんなこと言ってないのに、と思うような言葉も“代弁”して冒険者を怒らせにかかったこともある。
……やりすぎだと思ったが、同時にありがたいとも思った私は、彼女の行動を黙認した。
次第に偉業を成し遂げた冒険者との会食の場は、無礼者に対しては早々にクレアが切り上げるという流れが慣習化していく。しかしそのおかげもあってか、逆に人格者と認められるような人物と面会する際には私も余裕を取り戻し冒険譚に素直に耳を傾けられるようになったため、それなりの時間を取れるようになってきていた。
そして今日の会食は、クレアも、そして私も認める、人格者との会食だった。
「お久しぶりです。ミツルギ様」
目の前の相手と会食をするのは二度目のこと。人となりを知っているのでクレアが代弁する必要はない。私が自らの言葉で名前を呼ぶと、目の前の彼はニコリと微笑んだ。
「はい、アイリス様。またお会いすることができて嬉しいです」
――ミツルギ様。
その切れ味から魔剣と噂されている武器で戦う美男子のソードマスター。強さはもちろんのこと、攻略が難しかったり条件が悪かったりで長年塩漬けとなっているようなクエストをも次々と攻略するためギルドからの評判もよく、通りかかった開拓村や街で問題となっているようなことを僅かな報酬で解決に導くなど市井の間でも噂になっているとのこと。
そのくせ欲が無く、一部の貴族が金銭や女で彼を囲おうとしたときにはあっけなく断られ失敗しているが……逆に金を与えずとも人々が困ってると訴えれば飛んで行くという、金に汚い人間とは別ベクトルで「与し易い」と貴族の間で囁かれるような人物でもあった。
イケメンで、実力も高く、お人好し。
次代の勇者は彼のような人がなるのだろう。いや、彼になってほしい、といった言葉が社交の場で交わされるのを私も直接耳にしている。……もっともその評価は「与し易い」ことに由来するものが大半だろうが。
こうして目の前にしてみても、確かに整った顔立ちであり、その瞳から私を品定めするような下卑た感情は一切感じ取れず、王族である私に一定の敬意を払いつつも自然な笑顔を浮かべていた。以前お会いしたときにはこれに気負いと緊張感がプラスされていたが、男子三日会わざればなんとやら、ずいぶんと佇まいに余裕が感じられるようになっていた。
こういった場に対する慣れが出てきた……のとはまた違う。何か精神的な成長を促す出来事があったのだろうか……と、話の種になりそうな事項を頭の中でリストアップ。
クレアがギルドから上がってきた資料を手元で捲りながら口を開く。
「以前お会いしたのは、エンシェントドラゴンを討伐されたときだったか。あれから短期間でよくぞまた新たな功績を」
「はい。機会にも恵まれたのでしょうね。訪れた街に、たまたま他の冒険者の目につかなかったのであろうクエストが残っていて、こうして功績をあげることができました」
「そうでもない。ギルドからの報告では、ミツルギ殿が手掛けたクエストは普通の冒険者の手には負えない難易度の高さで長年放置されていたものだったと聞いている。ミツルギ殿がいなければクエストは放置されたまま……近隣の住民はずっと困難に喘いだままだっただろう」
「いえ。僕がいなくとも、あの街を拠点としていた冒険者の誰かが必ずやり遂げていたことでしょう。僕は訪れたタイミングが良かっただけです。むしろぽっと出の僕が、彼らの功績を奪う形になってしまったようで、申し訳ないくらいです」
「そ、そうか」
クレアの困った声に、これさえなければなぁ、と私も思わざるを得ない。
謙遜も度が過ぎれば嫌味となる。おそらくミツルギ様本人には何の悪気もないのだろうが、当の街を拠点としていた冒険者たちからしてみれば、彼の態度はステータスの高さを下地にした傲慢や不遜に映るものだろう。
というか私もちょっとイラっときた。……与えられた才能だけで生きているくせに、身ひとつで努力を重ねてきた冒険者を見下してしまっている、自分自身の姿を見ているようで。
「……ミツルギ様は向かうところ敵なしといったところですね」
私が自らに対する皮肉も込めてそう言うと、ミツルギ様は照れくさそうな顔をして頬をかきながら。
「いえ。お恥ずかしい話ですが、僕は負けたことがあるんですよ。それも、冒険者相手に」
「……ほう? まぁ、世界は広い。貴方よりも強い冒険者というのもいるのだろうな。できればその名を伺いたいところだが」
「誤解を生みそうなので先に言っておきますが、僕が負けた相手は広いくくりとしての冒険者ではなく、職業が冒険者の男です。名前を、サトウカズマといいます」
「それはそれは。冒険者が……ですか」
ソードマスターに勝てる、冒険者。
ミツルギ様が健在なことから命のやり取りをするような勝負ではなかったようだが、どのような経緯があったのか気になってしまう。仮にミツルギ様と真っ向から立ち合って勝てるような手合ならば他に功績を上げていないはずもない、会食の相手として話が上がってきてもいいはずだけど……と思いながらクレアに視線を向けると。
「カズマ……何かその名前に聞き覚えが……ああ、来週の会食で会う予定の人物がちょうどそんな名前だったかと。魔王軍幹部を複数討伐したとして最近話題に」
「ええ、まさに彼のことですよ」
「そうだったか。……ん? 魔王軍幹部の討伐? こ、これを成し遂げたのが冒険者だと? ああ、いや――」
クレアが信じられないとばかりに呟きながら資料をめくったが、次に発しようとした言葉を制するような形でミツルギ様が口を開く。
「おそらくクレア様は彼のパーティー構成を見て、『上級職のパーティーメンバーが上手くやったのだろう』とか『リーダーなんてお飾りだろう』などと考えていると思いますが、違いますよ。僕が彼に負けたときは一対一でした。彼は単独でも、強い」
「……にわかには信じがたいことだ」
「失礼ですが、どのようにして敗北を?」
「そうですね……いえ、僕が語るのはやめておきましょう。これは彼が勝利した話です。次の会食の予定が彼だというのであれば、僕が彼の話の種を奪うような真似をしてはならないでしょう。この件については、ぜひ彼の口から聞いてください」
「……ずいぶんと、負けたときのことを嬉しそうに語りますね?」
そう。上級職が冒険者に負けたなどと、おそらく多くの人が恥と捉えることだろうに。そしてミツルギ様本人も「恥ずかしい話」と口では言っていたが、実際のところ彼は先程からなぜか嬉々とした表情で自らの敗北について語っている。私はそれが気になった。
「そう見えましたか? ……いえ、そうなんでしょうね。冒険者カズマとの戦い、そして敗北は、僕にとってターニングポイントでした。彼に負けることで僕は意識改革ができたように思えるんです。その出来事は僕にとって幸運で、本当は恥じ入るようなことではないと考えていますから」
「意識改革……ですか。それはどのような?」
「はい。僕は彼に敗北して以来――常に人間を相手にした場合の戦い方を考えるようになりました」
「ミツルギ殿、それはっ……!?」
クレアが驚いた声を上げた。私もおずおずと尋ねる。
「人と、戦うことを、考えているのですか? その力を人間相手に?」
冒険者と一般人の間には大きな力の差がある。そしてミツルギ様は冒険者の中でも有数の実力者であり、悪意を以ってその牙を振るうならば大きな脅威となりうる。そんな彼が、人と戦うことを意識しているのだと言う。
言の葉の中に僅かに警戒心を含めた私に、ミツルギ様はきょとんとした表情で。
「……? ああ、どうか誤解しないでください。この世界では山賊なんてのも珍しいですからね、人同士で本気で敵対することなんて滅多にないでしょうし、仮に本当に襲撃されるような事態になったとしても、この力を一般人相手に振るうのはできるだけ避けたいと考えてますよ。もちろん僕の方からそんなことをする気もありません」
……気になるワードが一つ。
私が目を細めたことにミツルギ様は気付かず、続ける。
「ただ、僕がやっているのは……モンスターを相手にしているときでも、これで目の前の相手が人間だったらどう動くかみたいなことを想像しながら戦うようになっただけで」
「戦いの最中にそんなことを? そんな余裕があるのですか?」
「いえ、これが案外うまくいくんですよ。目の前の相手がモンスターではなく人間だったら――つまり本能的な攻撃ばかりでなく、より巧妙な手口を使ってくるような手合ならどう対処すればいいかを常に意識しながら戦うと、実際の相手は必ず自分の想定より下の行動しかしてこないわけですから、逆に思考に余裕ができるんです。……パーティーメンバーに話してもあまり理解してもらえなかったので、僕だけの話なのかもしれませんが」
「いえ、参考になります。常に最悪を想定しながら戦うということですね」
「あ、その言い方はわかりやすいですね。今度パーティーメンバーに話すときに使わさせていただきます」
ミツルギ様はコップを手に取って、水を口に含んで一息つき。
「とにかく今現在直面している状況に対して、もっと悪い状況に陥る要因はないか、相手は何か裏を考えていないか……そんなことを考えながら戦うように心掛けています」
「なんとなくわかりました。ミツルギ様が負けた相手とは、手管を駆使し工夫して戦うような人物だったのですね」
「おっと、喋りすぎました。……それにしても、人同士で戦うことをずいぶんと忌避されているようですね。城に勤めている騎士でも訓練などで互いに打ち合う機会があると思うのですが」
クレアが苦笑しながら。
「それはもちろんあるが……。だが、本格的な人同士の闘争はありえないし、あってはならないのだ。過去には国同士が争った歴史もあったが、今は魔王軍への対処に様々な国が一丸となって動いている。人同士で争っている暇はないと、皆が思っているからだろうな」
「魔王軍の対処のために、ですか……そうですね、この王都に滞在して数日、僕もすでに何度か魔王軍の襲撃に参戦していますが、僕は一つ思っていることがあります」
「なんでしょうか?」
「この国の王族や騎士は、真っすぐとした戦い方を求められている。戦術の授業でも搦め手などは用いず、正々堂々と立ち合うことを旨とした教育方針だと聞いています。実際に戦場に同行しても、貴方達は常に正面から打ち合っているようでしたし」
「それはもちろんだ。国を治める者、そしてそれに付き従う者として、何事にも誠意を持って正々堂々と立ち向かう。そういう教育が下にまで徹底されている」
「はい。それは非常にいいことだと思います。……ですが僕が違和感を感じているのは、魔王軍もなぜかそれに“付き合って”くれていることです。王都に襲撃してくる軍勢も、正面から戦力をぶつけてくるだけ」
「……? 何が言いたい」
「不自然なんです。本当なら彼らはこちらの戦い方に付き合う必要はない、いくらでも卑怯な手を使えるはず。……だから彼らも本格的に劣勢に立たされれば、もっと色々な手口を使ってくるかもしれません。例えば散発的な襲撃ではなく温存している魔王軍幹部を先頭に立たせた大規模侵攻だったり、または浸透工作によって補給線を後ろから断ってきたり、城に潜入して破壊工作を行うなど」
「現在は散発的な襲撃と撤退を繰り返している魔王軍が、一丸となって攻めてきたり、搦め手を使ってくる可能性か。ありえない話ではないが……」
「ええ。その対処のために、冒険者を交えて正攻法に縛られない戦い方の訓練などもしてみてはどうかと思うのですが。いざ事が起きてからでは遅すぎるかと思います」
「むう……」
クレアが渋い顔をした。
彼女は冒険者を割と見下している傾向があるから、城に入れること、ましてや訓練に参加させてはどうかというミツルギ様の提案には抵抗があるのだろう。
だがミツルギ様はクレアのそんな様子に気づかず、持論を展開するためか喋り続ける。
「正直に申し上げますと城の警備だって不自然です。勤めているのは正攻法を用いる騎士や魔法使いばかり――素人目に見ても、この構成は搦め手に異常に弱い。潜伏スキルなどを駆使する盗賊職が一人いれば、この城は荒らされ放題ですよ。市井の盗賊職冒険者を一人でも雇い入れるなど、対策を講じてはどうかと思うのですが」
「魔法による警備システムは構築されているが」
「どれだけ優秀なシステムでも、人の目、人の視点があるのは重要かと。何しろ相手も、人に近い生き物なのですから」
ミツルギ様の言葉に、クレアの顔がどんどん渋くなっていく。
しょうがないなぁ、と思いながら私は口を挟むことにした。なるべくお互いの思惑の中間点に着地することを意識しつつ。
「ミツルギ様。なるほど確かに我が国は、人……に近い生き物からの悪意に無防備すぎるかもしれません。しかし現時点では、クレアの言う警備システムなどの活躍もあってのことでしょう、被害が出たことはありませんし、我が国も予算は無限ではない……存在する“かもしれない”驚異に対して、そう費用をかけることはできないのです」
「あ……そうですよね……冒険者を雇い入れるのだって当然賃金が……」
「はい。ですが、貴重なご意見でした。経費はかけられずとも、私達がそういう目線を持つことは大事でしょう。ね、クレア」
「え、ええ。……ミツルギ殿、熱くなってしまったようだ。すまなかった」
「僕の方こそわかったような口をきいてしまい、申し訳ありません」
「あ、あのぅ……」
ヒートアップしそうになっていた場が一旦収まったところで、私の教育係の一人でもあるレインがおずおずと手を挙げ、会話に参加してきた。
「アイリス様の教育係として、また、一人の魔法使いとして、城に勤めている人間に対して先程のお話のような――常に正面から打ち合うような教育方針になっている理由はいくつか挙げることはできます。例えば、城に勤めている人間の代表格はもちろん王族ですが、王族には国の象徴として誠実な方であってほしいということ。また、王族が持つ膨大な魔力を制御するためにはとてつもない集中力が必要ですから……真っすぐな振る舞いが求められるのは、詰まるところ余計なことを考えないように――絡め手を使うことなどに意識を削ぐことなく、魔力の運用だけに集中できるようにして大規模な魔法を行使する意図があってのことかと」
そのことは私も教えられている。
強力な魔法に必要なのは、集中力。
極論を言うならば、より強力な魔法を放つためにはそれ以外の一切合切を捨て去り、ただ一つの魔法のことだけ考えるような人物になることが好ましい。……が、それだと敵が耐性を持っていた場合などに対処ができないということで、私自身は多彩な魔法を習得してはいるが。
「おっと、そんな理由があったんですね」
「はい。とはいえこれらの理由は、今の状況を肯定しようとするならこんな理由も挙げられるかなぁと思って捻り出したものに過ぎません。……自分も話を聞いていて、効率的な魔力運用が求められる王族や魔法使いはともかく、すべての騎士に対してまで真っすぐな戦術だけを強いるような教育方針は確かに不自然だと思いました。ましてや設備や警備に関してまでそんな考えが及んでいるとなると……これは調べた方がいいかもしれませんね」
「ああ……そうか。すでに魔王軍から工作を受けている可能性もありうるんだな」
「はい。戦闘単位すべてに真っすぐな戦い方を――言ってしまえば不器用な戦術を広め、そして今現在魔王軍が我々の真っすぐとした戦い方に“付き合って”くれているのも、その不器用さに疑問を抱かせないためという可能性はありえます」
「ああ……。ありがとうミツルギ殿、大いに参考にさせていただく」
「いえ、アイリス様には興奮した僕を諌めていただいて。クレア様には取り留めのない話を聞いてくださって。レイン様にはそれをまとめてもらい。僕にとっても自分の中の考えを見つめ直す、いい機会でした。ありがとうございます。……それに僕の意見を参考にしてもらえると言うのなら、ちょうどいいタイミングだったのかもしれませんね。冒険者カズマの話は僕なんかよりもきっと参考になると思います。何しろ真っすぐな戦い方しか知らなかった僕が、負けた相手なのですから」
ここまで聞いたところで私は、きっと冒険者カズマは卑怯な手を使ってくるような手合なんだろうな、と推測した。彼の話を聞くことで正攻法に凝り固まっているこの国を改善するような何かをもたらしてくれると、ミツルギ様はそう言ってるのだろう。
そして同時に、決して卑怯なだけではないのだろうとも思った。
ソードマスターミツルギが認めるような何かが、冒険者カズマにはあるはずだ。
それは何なのか、知りたい。
なるほど、俄然興味がわいてきた。
「ええ、私もカズマ様とお会いするのが楽しみになってきました。ミツルギ様、貴重なお時間をありがとうございます」
「はい。またお会いする機会が作れるよう、これからも精進いたします」
来週が楽しみだ。
冒険者カズマ。
願わくば、私の数少ない話し相手の一人になってくれるような人物でありますように――。