「くそったれ!」
薄暗い牢屋の中、裁判を明日に控えた俺は、毛布にくるまりながら毒づいた。
俺は、先日のデストロイヤー迎撃戦で暴走したコロナタイトをランダムテレポートで転送するよう指示、それが運悪く領主の屋敷に転送されそこで爆発したことで、国家転覆罪とか野暮ったい名前の罪状で容疑をかけられ、牢屋に入れられていた。
本当に野暮ったい。ガミラスとかガトランティスとかカタカナが並んだ後に出てくる暗黒星団帝国くらい野暮ったい。
……そんなどうでもいいことを考えるくらい、俺は追い詰められていた。
「なんであそこで、反応したんだ……」
忌々しきは、嘘に反応して鳴る魔道具のベル。
魔王軍の幹部と交流があるのかと聞かれて当然ないと答えたが、ウィズのことを失念していて鳴ってしまったのだ。本人が嘘をついたつもりがなくても反応するとは、地球の嘘発見器とはレベルが違う。
だが、それでも嘘を言わなければ反応しないのだ。
都合の悪い質問は黙秘権を行使すればよかった。答えが嘘とならないような質問をしてくるよう誘導すればよかった。それに、ベルが反応しないような上手い答え方があったのではないか? そんな後悔が次々と浮かぶ。
後悔、明日をも知れぬ身に対する焦り、薄暗い牢の闇によって引き起こされる不安、薄い毛布では頼りない冬の寒さ、助けになるものがないという孤独感――。様々な要因が胸を締め付け、呼吸がうまくできず、頭を鈍らせていく。
「はぁっ……! くそっ……寝る……か」
寝れば、明日には状況が変わってるかもしれない。それに頭がすっきりしてるはずだから、何か逆転の手がひらめくかもしれない。そんな引きこもり時代の思考法に心の安寧を求め、俺は目を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……ズマ、……カズマ! 起きて!」
「……っ」
ようやく寝に入ろうかとしていたタイミングでゆさゆさと揺り動かされ、俺はイラついた。
起こされる身としては最悪のタイミングだ。苛立ちの意が相手にできるだけ伝わるよう声色に含ませて、俺は返事をする。
「なんだァオラアッ……!」
「てへへ、来ちゃった」
俺の威嚇が一切効いていないのか、ニコニコと笑顔を向けるアクアがそこにいた。
「ア、アクア!? なんでここに!?」
「あー、そのねー……」
「ひょっとして脱獄の準備が整ったのか!?」
そうだ。アクアは牢の中まで辿り着いている。来たルートを辿りなおせば脱獄できるはず! こんな冤罪の裁判なんて知ったことか! 俺はアクアと逃げる!
そう考えていた俺に、アクアは頭を掻きながら言う。
「ううん。私も捕まっちゃったの」
「……は?」
「署の人に、踏み台を差し入れにお願いしますって出したんだけどね、なかなか受け取ってもらえなくて……。文句言ってたら、ここで一晩頭を冷やせって……」
「ここから出る手段は?」
「ないわよ? というか、私が渡した糸ノコどうしたのよ」
「んだよもぉおおおおお!」
俺は頭を抱えて絶叫した。
「ちょ……ちょっと何よ! さっきはウンウン唸って寝苦しそうだったから起こしてあげたのに!」
「知るか! もう一度寝るから今度は話しかけてくるなよ! 隅でジッとしてろ!」
「わあああああーっ!! ごめんなさい、カズマさん! 謝るから毛布貸して! 端っこでいいから貸して! 寒いの!」
アクアが涙目でそう言ってきた。
確かに今夜は一段と寒い。以前二人で泊まっていた馬小屋と違いティンダーで火を起こすこともできない。
「……しょうがねえなぁ!」
俺は自分に巻きつけていた毛布を開き、アクアを招き入れた。
「わああーっ、ありがとう! ありがとうね、カズマさん!」
「ったく……」
隣に飛びこんできたアクアは、涙目から一瞬で笑顔に戻り。
「ねぇ、カズマさん。こうしていると馬小屋で寝泊まりしていたのを思い出すわね」
「……ああ」
同じことを考えていた、とは気恥ずかしくて言えなかった。
アクアはやや小声で続ける。
「ねぇ、カズマ……」
「なんだよ」
「ごめんなさいね。私達を代表して捕まったりして」
確かに俺だけ捕まってる状況はおかしい。魔王軍幹部討伐など、何かを成した報酬がパーティ単位で支払われるというのなら、罰だってパーティー単位で受けてもいいではないか。なぜ俺だけ捕まってこんな理不尽な目にあっているのか。
……そう思ってはいたが。
「いいよ別に。お前まで捕まった姿を見たらどうでもよくなってきた」
そう答えた。だが、アクアはなおも続ける。
「ねぇ、カズマ。……ごめんなさいね。こんな世界に送って苦労させて」
「いいよ別に。楽しいこともないわけじゃなかったし」
「ねぇ、カズマ。……ごめんなさいね。チートの代わりに私を選んだのに、何の役にも立たなくて」
「いいよ別に。死んだときには蘇生してもらってるし。……そうか。死刑が執行された後にお前に生き返らせてもらえばいいじゃないか。エリス様はいい顔しないだろうけど」
「ねぇ、カズマさん」
「なんだ」
「…………パンパン……して……いいわよ……?」
「いいよ別……今なんつった?」
「……」
アクアは答えない。俺は目を開いて、アクアの顔を見ようとするが、俯いていて確認できない。
パンパン? 今パンパンと言ったか?
頬をひっぱ叩いていいということか? 頬じゃなくて尻か? それとも――。
相変わらず表情は見えないが、青髪の隙間からのぞいている耳が赤くなっているのが見えて、俺は再び口を開く。
「なぁ、それってセック――」
「言わないで! ……恥ずかしい……から……」
必死に声を捻りだすアクアの耳がますます真っ赤になっていく。
こいつの恥ずかしい基準はどこにあるのだろう。キスだったら恥ずかしいけどチュッチュなら口にできるよ、とかそういうことなのだろうか。
子ども。
アクアにはこういうところがある。世界を俯瞰する立場だったからなのか知識だけはいっちょまえにあるが、それに比べて言葉遣いに限らず幼稚性がそこかしこに見える。
良くも悪くも純粋な精神性なのだ。今まで様々な騒動を引き起こしたはしたが、その理由は、親切心だったり、楽しみたい、楽したいという感情だったり……。ステータスの知力と運の悪さからか、その結果がどうなるかまでには考えが至らなかったり悪い結果に転んだりして、俺が尻ぬぐいさせられるケースが多かったが。……いや、そんなケースしかなかったが。それでもアクアの本質は、ひとえに純粋な存在なのだ。
俺がそんな思考を巡らせていると、アクアは無言の空間に我慢できなくなったのか、先ほど遮った俺の言葉を肯定するかのように、カラダをすり寄せて来た。
「……ぅ……ふぅ……」
アクアは息の音を俺に聞かれては恥ずかしいと思ったのか、喉に空気を通すだけの呼吸になっていたが、そんなわずかな音すらも耳に入るくらいにお互いの顔が近寄ってくる。
綺麗だ。
眼前には透き通る青髪。手櫛をかざせば水を掴んだかのようにサラサラと、指の間からこぼれおちて行く。その流れる一本一本が目視でき、現実にはありえない髪色ということも相まって、目の前の光景にひどい非現実感を感じた。
非現実感。そうだ。目の前の相手は超常の存在、女神なのだ。そんな風に思わざるをえないほど、艶やかな髪、見え隠れする綺麗な肌、布地を押し上げる豊かな双丘、さっきからこすり合わせている太もも……すべてが幻想的で、美しかった。
こんな存在を、自らの欲で汚してもいいものなのか。いや、男女の交わいは生物として子孫を残すための自然な行為だから、汚すという表現は不正確なのかもしれない。俺は、俺達は、これから生命として最も生命らしい行為をするだけなのだ。
そう自分を納得させた俺だったが、それでも触れたら壊れてしまうものを扱うように、おそるおそると手を伸ばし、その先にあった尻に触れた。
「……ぁんっ……」
指先が軽く触れただけで甘い声を漏らしたアクアに、俺はもう我慢できなかった。
「ふうっ!!」
「んっ! んっ……!」
俺は欲望のままにアクアの尻を乱暴に鷲掴みにした。先ほどの触れたら壊してしまうかもなどという考えはすでに頭から吹き飛んでいる。
力の限り広げた手に対してアクアの尻はぴったりと収まった。特に、脚の付け根に近づくにつれ柔らかさを増す尻肉は、俺の指一本一本を沈み込むようにして受け入れる。アクアの尻は、まるで俺に掴まれるためにこう形成されたのではないかと思うくらい、甘美な感触だった。
「あっ!? ああ!」
ちぎけてしまうのではないかと思うくらいの力で掴んだことで、アクアが驚愕と抗議を混じえた声を上げる。
しかしもう止まらない。
俺はもう片方の手をアクアの体の下から回り込ませて、両手で尻を掴むと、そのまま抱き寄せて股間部を押し付けた。
「はひっ……!?」
「ふぅっ! ふぅっ」
押し付けたペニスは尋常じゃないくらい勃起していた。
熱い感触に驚いたのかアクアが一瞬距離を取ろうとしたが、尻を掴んでいるので身を捩じらせただけで逃げられない。俺は両手に更に力を入れて、更に抱き寄せる。
「あ、あっ……」
全身が密着した。
ひしゃげた柔らかい胸、くびれた腰、じんわりと濡れている股間、すらっと細い脚と、全身でアクアの体温を感じる。
「……カ、カズマさん……ちゅっちゅ、して……」
「ああっ……!」
その言葉に応えて、俺は目の前のアクアの口を貪った。
「んっ……! んっ!……ふうっ……!」
乱暴なキスだ。
唇の感触を楽しむのもわずかに、強引に舌を割り込ませ、アクアの舌を蹂躙する。
「はっ……! んぅ……。んっ」
キスがはじめてなのかアクアは呼吸の仕方がわからないようで、苦しそうな声を時折交え、拙いながらも自らも舌を絡み合わせてくる。
舌というものは、上面はざらついており、下面はすべすべしているものだ。そのため舌同士の絡み合いをする場合、自分の舌が相手より下にあったほうが、滑らかな感触を楽しめるので気持ちがいい。
そのことを知っていた俺はしばらく一方的に自分だけアクアの舌の気持ちいい方を楽しんでいたが、ふとした瞬間に入れ替わってしまって、俺の舌の気持ちいい方を知ったアクアは目を輝かせて舐めまくってきた。しかし俺ももっと楽しみたい、いやいや私に譲りなさいよ、とお互いに舌のポジション争いを繰り返し、長い長い時間をかけて口内を貪り合った。
「んっ、ふぁっ、はっ……」
「はぁっ……はぁ……」
息を荒げながらのキスの間も、俺はアクアの尻を掴み、アクアのカラダにペニスを押し付けていた。脱ぐのを忘れていた下着はカウパー腺液でベトベトに汚れているのがわかったが、それでもアクアのカラダと衣服同士が擦れ合う感触が、直接素肌同士を接触させペニスを扱くのとはまた違う快感を生み出しており、俺はお構いなしにアクアの全身を楽しむ作業に没頭した。
やがて余裕がでてきたアクアも、俺の動きに合わせて自らカラダを捩らせ始め、お互いに快感を得ようと全身すべてを擦り合う。
「ふっ! ふっ、ふゅっ……はっ……」
「はっ、はぁっ……! はっ」
お互いの息は荒く、口の端からは唾液が漏れ、全身は汗だくでそれすらも潤滑剤として活用し、性器から快楽の証が漏れ出ていることを視線を交えて伝えあい、楽しんでいた。
もはやそこには会話は無く、お互いを思いやる気持ちもなく、最初言い訳にしていた生命の営みとしてのセックスというわけでもなく、ただただ相手のカラダを使って全身至る所で快楽を得ようとするばかりの、理性ある獣同士の絡み合いだった。
しかし長い間続いたこの行為にも、絶頂という臨界点が近づいてくる。
お互いに限界が近いのを悟ってか、自然と唇を離し、しかしなお全身を擦り合わせながら顔を見合わせた。そしてアクアが先に口を開く。
「ね、カズマさん……私、イきたい。イってみたい。だから、ぐちょぐちょして……?」
「ああ! イかせてやるっ」
アクアの懇願する声に、俺はぐっしょり濡れているアクアの縞パンを乱暴に下ろし、右手指を膣に突っ込んだ。
「あ、あああああっ!!!???」
アクアははじめての感覚に悲鳴を上げ、全身を振り回して逃れようとするが、俺は左手をアクアの背中にまわして抑えつけながら、右手で性器をかき回す。
「ほら、ほらぁ!」
「やだぁ、やだぁ!!! もっと、優しくしてよっ!!」
そう言いながらも、俺が指を動かす度にビクビクと身を震わせ感じているアクアを前に、俺は下卑た笑いが抑えられず、性器を弄る手も止まらない。
「あっ! んっ……! あひっ! ……そ、それなら私だって……!」
そう言ってアクアは、俺のイチモツを取り出し、掴んでくる。
「うおっ!?」
「ふふっ、カズマさん、一緒にイこっ……?」
「おお、おおっ! わかった!」
息も絶え絶えにお互いの性器を掴み、扱き合った。これまで全身同士をこすり合うことで得ていた快感を性器に集中させたラストスパートは、一瞬で終わりへと向かう。
「んっ、くあっ、あああああああああああっ!!!???」
先にイったのはアクアだった。これまでにないくらい大きく一度ビクンと震えたかと思うと、絶叫とともに潮を噴いた。
「あ、あ……ああああ……」
アクアは自らが噴出する液体に半ば放心しながら、それでも女神の意地なのか、無意識のうちになのか、俺の性器を最後にギュッと掴む。アクアの絶頂する声に興奮しきっていた俺には、それがトドメだった。
「おっ、うおおおおおおっ!!!!」
俺も、射精した。勢いよく放出される精液が、アクアの潮で濡れていた牢屋の床に、新たに白を描いていく。
「……はぁっ、はぁ……や、やった……」
「はっ、はっ……」
二人とも、全身がぐちょぐちょだった。もう元が何の液体だったのかもわからない。
お互いに汚れた床を眺めながら乱れた息を整えていたが、先に動いたのはアクアだった。
アクアは俺の脚の間に跪くと、一仕事終えてだらけていたペニスを持ち上げ、舌を伸ばした。
「はむ……ん、んんー」
「う、おおおお……」
アクアはペニスの先端にキスをして吸いついたあと、ゆっくり、ゆっくりと頭を下ろして咥えこんできた。じんわりとした温かさがペニスを覆い、快感に反応してたちまち固さが戻ってくる。
「んー……」
完全に勃起したペニスを確認したアクアは、やはりゆっくり、ゆっくりと、頭を上げていく。自らの唇に触れる感触を楽しむようにしながら。
「いいぞっ、そのまま吸え、吸いつけ!」
「んっ……ちゅ、ちゅるううう」
先端だけ咥える姿勢まで戻ったところで、俺が出した指示に従って、アクアは唇を窄め、尿道の中に残っていた精液を吸い上げる。
そのむず痒い感触に、俺は歓喜の声を上げた。
「うっひょおお……!」
「んー、んー……ぷあっ……!」
吸いついた勢いのまま音を立ててペニスから離れたアクアは、髪を振り上げて上体を起こす。
唇からは精液が漏れ、カラダは火照ったまま汗に濡れ、俺が乱暴に脱がした縞パンはいつのまにか引き千切れていて、愛液にまみれた女性器がその姿を晒していた。美しさの中に扇情を交えたその姿に、俺は目を見張った。
そしてアクアが、甘い声で、しかしどこか不安そうな表情で、囁いてくる。
「ねぇ、カズマさん……」
「なんだ」
「…………ぱんぱん……して……?」
「しょうがねえなああああああ!!」
「ああっ!?」
俺はアクアを押し倒し、四つん這いにさせて尻を掴んでこちらに引き寄せると、ペニスを突っ込んだ。後背位の状態である。
「あ、いいいっ!?」
アクアが悲鳴に近い嬌声を上げた。
膣の中はとんでもない圧力で、ペニスを締め付けてきた。生娘であるのと同時に、ロクに自慰を経験したこともなかったのだろう。
そう、このキツキツの膣も、柔らかく手を沈ませてくる尻も、シミ一つない目の前に広がる背中も、すべては、今日のために整えられてきたのだ。アクアが今まで生きてきた長い人生は、すべては俺を受け入れるための準備期間だったのだ。アクシズ教の信者が崇めるこの美貌も、肢体も、表情も、仕草も、すべては今日俺を受け入れるために培われてきたのだ。
そんな思考に至った俺は、果てしない優越感とともに、腰を振った。
「あっ!? ああっ! んああっ!!」
腰を叩きつける度に、掴み切れていない尻肉が波を打ち、アクアが甘い声を漏らす。
奥まで沈みこませたペニスを引き抜く度に、また甘い声を漏らして愛液を垂らす。
「あっ……ああっ!? かひっ! んあっ!? ひあっ……!
アクアは初めての体験で、自分のカラダのどこが感じてしまうのか、どういうことをされると弱いのかなど、まるでわかっていない。俺が好き放題に腰を振る中、アクアはいつ来るかもわからない女性としての悦びに、未知に対する恐怖を感じながらも、それを待ちわびていて、実際に感じた瞬間には恥じらいを捨てて遠慮なく嬌声を上げた。
しかし、これで意外と順応性が高いアクアは、次第に自らのカラダの把握を始め、そして要望を出してくるようになる。
「カ、カズマさぁん……。抱きしめてっ……さっきみたいに。ポカポカさせて……」
「おう」
背中から抱きついて手を回し、ぎゅっと、抱きしめる。
「んっ……! くひゅっ……、あ、安心しちゃう……」
段々とアクアの表情から恐れが消え、女としての悦びだけを受け取る体勢になりつつあった。
俺は密着しながらも、アクアが望む悦びを与えてやろうと腰を振り続ける。
「おっぱい揉んでっ……いっぱい」
「ああ」
「ちゅっちゅ、して……!」
「おう」
「ああん、違うの。背中じゃなくて、口に、口に……!」
「おう」
後背位では挿入したままキスは難しいので、自然とカラダを反転させ、正常位へと移行していく。
「カズマさん……」
「ふぅっ……な、なんだ……」
「その……、射精して……? 私の膣内で、いっぱい、びゅっ、びゅって、射精して……?」
「っ……」
その囁きを聞いた俺は、ぞくぞくする背徳感とともに、アクアを犯す速度を上げた。
「あっ!? ああっ、あああああっ! カズマさん! 大好き! 大好きだから膣内に出してっ! びゅびゅびゅって……!」
「おおう、射精してやる! だから孕め、ぜってー孕め! 俺の生きた証を、この世界に遺してくれ、アクアッ!」
「うんっ! 孕むわ! 孕むの! 射精してっ!」
「んんおおおおおおおっ!!!」
「ああああああっ!!!」
あらん限りの声を腹から出して、俺は射精した。
「くっ、おっ、おっ……」
性的には未熟なアクアだったが、それを補って余りあるほどの精神的な充実感が、俺にとてつもない射精感を与えてくる。数度脈動してはその度に放出される精液が、アクアの膣を瞬く間に埋め尽くし、入りきれなかった精液がゴポリと膣口からこぼれ出してきた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ん」
「はっ、はっ、はっ」
俺は肩で息をし、倒れ込んだ。
アクアの柔らかい胸に受け入れられ、包まれたことで、性的興奮を覚えるが、出しきって疲れ切ったペニスはさすがに勃ち上がりはしなかった。
アクアは優しい声色で俺に語りかける。
「カズマ……また、しようね。子どもは絶対生むけど、でもカズマさんにも生きててほしいわ」
「ああ、そうだな……」
俺の子が、父親がいない女神の子、なんてシリアスストーリーの主人公のようになるなんてゾッとしない話だ。今回の事件を乗り切って、絶対に、おもしろおかしく暮らしてやるからな! 俺と、アクアと、お前の三人で……!
そんな風に、まだ見ぬ我が子に誓ったところで、俺は意識を失った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……ん?」
俺は牢屋の中で、一人毛布に包まっていた。
そこにはアクアの姿はない。愛液や精液で濡れたはずの床にも痕跡は見当たらなかった。だが遠くでアクアが署の人間と騒いでいる声が、静かな夜の中でやけに響いて聞こえてくる。
「連れて行かれたのか……?」
あれだけ声を上げていたのだ。すっ飛んできて当たり前か。
いや、それにしては床に痕跡もないのはおかしい。
ひょっとしたらさっきの光景は、アクアが俺を勇気づけようと、その秘めたる神パワーを使って精神体なりなんなりを飛ばしてきたのかもしれない。神託と呼ぶんだったか、はたまた夢のお告げに近いものか。
……夢?
「ああ、【夢】か……」
辺りを見回したが、彼女の姿はなかった。
だがアクアが叫ぶ声の中に「悪魔の臭いがするのよおお!」と混じったことで、なかば確信に変わる。
……なぜ【夢】に出てきたのがアクアだったのかと疑問に思うところもあったが、きっと彼女の立場からしてみればアクアは恐怖の殺人鬼だが、同時に、身を呈して悪魔からパーティメンバーを守ろうとする頼もしいアークプリースト、というイメージもあったのだろう。それで俺を励ますならとアクアを出したのだ。そうだ。そうに違いない。
「なんという勘違いを」
そう呟いたが、心が落ち着いていたのも事実だった。
寝る前にはあれほど焦燥感と絶望感に溢れていた胸は軽くなっていて、頭も回る。
「ありがとな……」
俺は夜の闇に向かってそう言葉を投げてから、明日の裁判の対策を練り始めることにした。
「んー、魔道具ベルは明日も出てくるだろうし、相手に質問させないままこちらが一方的に喋るのがやっぱり有効だよな……。でもそれだけじゃ終わらないだろうから、相手の発言をある程度こちらで誘導して――」
まだ朝は遠い。時間はたっぷりある。できるだけ、対策を考えよう。
まだ見ぬ、そして作ってもいないが、俺の子を父無し子にしないために。
日の下を、堂々と歩けるように。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は夜闇の中を飛びながら、後ろ髪をひかれるような気がして何度か振り返りました。
シフトリーダーからカズマさんの現状を聞かされて、なんとかしたいと考えたものの、本日は運悪く全日勤務の日。そのため、お客さんとお客さんとの間にある僅かな移動時間を使い、カズマさんの様子を見に行くことにしたのです。
状況は、最悪でした。
寝苦しそうに唸りながら毛布にくるまっていたカズマさんは、後悔と絶望に苛まれていて、心が今にも壊れてしまいそうだったのです。
しかし時間が無かった私は、【夢】を誘導する力を送るだけ送って、その場を後にしました。
内容をノゾキミする暇もありませんでしたが、カズマさんの【夢】には『カズマさんにとって今の状況で一番安心できる人』が勝手に登場し、心を癒してくれているはずです。
……とは言っても、気がかりなのは変わりませんでした。私は未熟の身。
もし【夢】の誘導に失敗していたらどうしよう?
カズマさんがより傷つくことになったらどうしよう?
ずっと傍にいてちゃんとチェックした方がよかったんじゃないか?
そんな思いから何度も警察署の――カズマさんがいる牢屋のあたりに視線を走らせていたのです。
翌日、勤務がお休みだった私は、裁判所に向かいました。
採光するために屋根につけられた窓から内部の様子をこっそりと伺うと、カズマさんの姿を確認することができました。
昨晩の様子からずいぶん回復しており、私の処置は、成功していたようです。
「やった……やりました!」
弁護人となるパーティーメンバーに訝しげな目を向けながらも、しかしどこか信頼した様子を見せるカズマさん。一体誰が、彼の【夢】に登場したのでしょうか? 以前に出したあの金髪クルセイダーの人かな?
裁判は、カズマさん有利の状況で進んでいきました。
他のお客さんから聞いた話でも、もともと冤罪のようなものだと聞いています。このままいけば大丈夫でしょう。
しかし、状況は一変します。
「…………いえ、そうですね。確かに死刑が妥当だと思われます……ね?」
――えっ。
何が起こったのかわかりません。告発人である領主が、検察官をジッと見つめただけで、突然発言が翻ったのです。
「悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいるわね!」
青髪の殺人鬼アークプリーストがそう言い放ちました。何が根拠なのかわかりませんがすごい自信です。
「私にはわかるわ。何を隠そうこの私は、この世界に一千万の信者を有する水の女神アクアなのだから!」
――ええええええええええええええええ!!!????
私は今まで生きてきた中で一番驚きました。た、確かにあの強力な結界といい神聖なオーラといい……私よく生きてたなぁ……。伝えなくちゃ、お店のみんなにも伝えなくちゃ、と思っていたところで。
――チリーン。
青髪殺人鬼プリーストの言葉に反応して、魔道具ベルが鳴り響きました。
「なんでよー! ちょっと嘘じゃないわよー!」
「なーんだ……」
慌てて損をしたと思いました。あの青髪殺人鬼は力が強いだけで、ただの頭のおかしい人なのでしょう。
「……んー?」
カズマさんやその周囲の人が青鬼の発言に呆れ果てる中、しかし上空から全体を見ていた私は、領主が青鬼の言葉にたじろいでいるのが目に入り。
「……あ」
そこから伸びている悪魔の残滓を見つけ。
その伸びた線を目で追って。
残滓が壁を伝って天井を回って、自分が覗いている天窓に辿りついているところまで見て。
「ヒュー、ヒュー……」
――隣に座っている、大悪魔の姿に気付いたのです。
「――っ!!!???」
先ほど青鬼が嘘の宣言をした時以上の驚愕が私を襲いました。
声を出さなかったのが奇跡……いえ、私は大悪魔の存在にあてられ、身体を動かすことができなくなっていたのです。
不随意筋すらも、動かせない。
全身の力が抜けてその場に座り込み、呼吸ができなくなり、視界は暗くなって、股からは生温かい液体が流れ出していきます。
蛇に睨まれたカエルとは、こういう状況を指すのでしょうか。
「ヒュー、ヒュー……」
しかし大悪魔にとって私などどうでもよかったようで、裁判の様子を眺め、金髪クルセイダーが場を収めたのを確認した後、飛び立っていきました。
「……っ、かはっ! はぁっ! はぁっ!」
解放された私は、精一杯呼吸しました。
「……青鬼の言葉は、間違ってなかったんですね――」
考えてみれば「女神」云々の発言にはベルが反応したのに、「悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいる」という発言にはベルが反応していなかったのです。本人に嘘を言っているつもりがなくても嘘に反応するはずのベルが。
そのことに誰も言及しないのも、あの検察官の発言が急にねじ曲がったのも、おそらくはあの大悪魔の干渉によるものなのでしょう。
「ど、どうすれば……」
サキュバスは下級の悪魔、あの大悪魔に真っ向から対立することなどできません。
私は途方にくれました。
翌日。
幸い、カズマさんには課題つきではありますが猶予が与えられることとなりました。
課題の内容は、一つは、魔王軍の手の者ではないと証明すること。二つ目は領主の屋敷の弁償。
しかし一つ目はおかしいのです。
カズマさんは、デストロイヤーデストロイヤーとなる前に魔王軍の幹部をすでに討伐しているのです。これ以上何を証明しろと言うのでしょうか。
更に他の魔王軍幹部を討伐する? いえ、それでもまたあの大悪魔に干渉されて裁判関係者の発言が翻るようなら同じことに――。
そんなことを考えながら喫茶店の開店準備をしていた私に、ボーイッシュ先輩が声をかけてきます。
「新人ちゃん、新人ちゃん!」
「は、はいっ」
「そんな掃除なんていいから、早くこっち! こっち来て並ぶ!」
「は、はい……?」
発言の意図もわからないまま、とりあえずボーイッシュ先輩の指示に従って並びます。そこには、今日はオフのはずのサキュバスも含め、この店に関わる全てのサキュバスが一同に並んでいました。
私は小声でボーイッシュ先輩に尋ねます。
「ど、どうしたんですか、この状況……?」
「ふっふふ……新人ちゃんは昨日はオフみたいだったから知らなかっただろうけどね、なんとこの店にこれからバニル様が来ることになったんだよ」
「え、ええええ!?」
私は驚きました。地獄での私の住処の領主。ここ数年は、魔王城になんちゃって幹部として居座っているというあのバニル様がこの店に来る!?
「わ、私、小さい時にチラッと見ただけで……」
「私も! だから今日は目に焼き付けちゃおうよ!」
「静かに! 入られるわ」
サキュバスリーダーがそう言ったので、私達は口を閉じて背筋を伸ばしました。
「……」
扉をくぐって入ってきたのは、仮面と、それに追随する土の身体を纏った大悪魔。
小さい時に見たのとほとんど変わりない姿に、私は感激します。
バニル様は辺りを見回すと。
「……出迎えご苦労。だが我輩は魔道具店のポンコツ店主に用があってこの街に来たのだ。ここには連れてこられただけで用はない。すぐにでも本来の仕事に戻るがいい」
「は、はいっ」
不機嫌な様子のバニル様に、サキュバスリーダーが慌てて返事をします。どうやらサキュバスリーダーが頼み込んで連れて来ただけのようでした。
バニル様が踵を返し、店を後にしようとしたところで。
「ま、待って下さい。バニル様!」
「し、新人ちゃん!?」
私が声を上げたので、ボーイッシュ先輩は驚きました。
周りのサキュバスも何事かとオロオロしています。
「……なんだ。我輩は不機嫌なのだ。何か用があるなら言ってみるがいい。つまらないことだったら、残機を減らす」
あのときの大悪魔と同等の、しかし配下に対する優しさなのか手加減も交えた威圧感を放つバニル様に、私は内心ホッとして、言葉を紡ぎました。
「はい。実は先日、この地にバニル様以外の大悪魔がいるのを見かけました。バニル様ほどのお力があれば身の危険がどうということはないと思いますが、ご報告だけでもと思いまして」
「ふむ……?」
バニル様はそう呟いて、私の目をジッと見つめました。
バニル様は見通す悪魔の異名を持っています。おそらくは私の記憶を見ているのでしょう。
そして何かを見通したのか。
「フハハッ、フハハハハハ! フハハハハハハ!」
高笑いを上げ始めました。
「バ、バニル様」
「なんという事だ! こんなところで召喚されていたとは……! サキュバスリーダー、このロリサキュバスは借りて行くぞ!」
「え、えええっ!?」
サキュバスリーダーの返事を聞く間もなく、私はバニル様に脇で抱えられ、外へと連れ去られました。
「真理を捻じ曲げる悪魔、マクスウェル……様、ですか」
「そうだ。裁判が捻じ曲がったのも貴様の見立て通り、マクスウェルの力だろう」
路地裏の一角で、私はバニル様から、大悪魔の正体を教えてもらいました。
バニル様は頭を掻きながら続けます。
「しかし人間と契約しているとなると厄介な……。我輩達悪魔にとって契約とは何よりも重く、勝手に放棄することはできない」
「はい……」
契約は小さなものから大きなものまでありますが、その共通項は一度結んだ契約は悪魔の側から無断で放棄することはできないこと。
お店で使っている【アンケート用紙】も契約の一種です。あれさえなければ、一昨日の私は、ずっとカズマさんの傍にいたのかもしれません。
バニル様はあれこれ思案しているようで。
「うーむ、契約を破棄させるにしてもただ破棄させるだけではつまらんな。なるべく悪感情を頂いてから――。そうなると追い込む状況と駒が必要だな。そうなると――」
「……バニル様……?」
「よし。小僧のことが気になって仕事も手につかなかったロリサキュバスの娘よ。貴様が憎からず思っている小僧を、我輩が助けてやろう!」
「え、ええっ!? い、いいんですか? ……って私は仕事はちゃんとしてました! ……たぶん」
わたわたする私を無視して、バニル様は続けます。
「なに。その小僧は、ちょっと事情持ちでな。我輩は自身の未来は見通せないので確かではないが、その小僧はきっと、我輩の夢を叶える手助けになるはずなのだ。だから裁判で死刑などもってのほか、生きてもらわないと困る」
「バニル様が夢を叶える手助けになるほどの人材……!?」
そう言われると急にカズマさんがすごい人のように思えてきました。魔王軍の幹部討伐、デストロイヤーデストロイヤー、バニル様の夢に関わる……。あれっ、よく考えなくても結構すごい人なんじゃ……?
バニル様は続けます。
「作戦はこうだ。マクスウェルの干渉は我輩が弱めよう。領主とやらが対価を十分に払ってるとは思えないから、おそらく不完全な契約だろう。可能のはずだ」
「は、はい」
「その上で、最近色気づいてきたロリサキュバスよ。お前は裁判に関わる人間すべてから【夢】を通してマクスウェルの残滓を払ってくるのだ。特に、裁判が一変する切っ掛けとなった検察官を重点的にだな。そうすれば連中は正しい判断を取り戻し、裁判の場でまた突然発言を翻すようなことは無くなるはずだ」
「はい。……って私、色気づいてません!」
抗議するも、バニル様は無視して続ける。
「最後に検察官の目の前で、小僧のパーティーに我輩を討伐させよう。必死に知恵と勇気を振り絞らせた上で、我輩を討伐させるのだ。そうすることで検察官の心象も一気に変わるだろうし、屋敷を弁償する件も我輩にかけられた賞金を使って解決できる」
「……いいんですか? 残機を、消費して」
「構わん。魔王城の結界維持の仕事も飽きてきたし、小僧の存在もあってそろそろ夢の実現に向けて本腰を入れたいところだ。ここらで生まれ変わっておくことにする」
そう言い放つバニル様。
貴重な残機の消費どころをあっさりと見極められるのはやはり大悪魔ならではの話でしょう。
「わかりました。精一杯努力させていただきます!」
「うむ」
話し合いは終わり、私は早速飛び立ちました。
「さて、死に場所にふさわしい手頃なダンジョンが近くにないものか……」
次の日には、かつてキールのダンジョンと呼ばれていたダンジョンから仮面をつけた人形がわいて出てくるようになっていたそうです。
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「彼氏の一人もいないのか? 男っ気の一つぐらいあるのかね?」
「ありません」
取調室。軽薄なニヤケ顔を浮かべる目の前の男に、自分は無表情で言い放つ。
「この性格のせいで、すっかり行き遅れている自覚はあります。これで満足ですか?」
「……だったら俺がもらってやろうか?」
「!?」
予想外の反撃を受け、自分は動揺した。動揺してしまった。
「ただし、5人目の妻としてな」
「!?」
いつの間にか彼の傍らには、青髪の美女、ダクネス卿、黒髪の魔女っ子が並んでいた。あと一人は誰だろう。ずいぶん小さいが、影になっていて顔が見えない。ともかく他の3名は裁判の場にいた彼のパーティーメンバーだ。彼女らは、彼のハーレム要員だったのだろうか。
絶句する自分を余所に、彼は続ける。
「いいだろう? その無駄にでかいおっぱいだけは気にいってるんだ」
「なっ……」
「嫁にも行けない女と世間から指さされるのが嫌なら、俺の妻になって、毎晩こいつらと一緒に俺に跨って喘げ」
「ふ、ふざけるなぁあああ!」
自分は取り調べ室の机をひっくり返した。
クズ男はそれでも動じる様子を見せなかったが、自分は構わず言葉を並べる。
「自分はこの歳まで行き遅れたことに何の後悔もしていない! これは、自分が正義と思ったことに準じた結果だからだ! 自分を曲げてまで男に媚びへつらうなんてまっぴらごめんだ! たとえ今後男が現れなくても、自分は自分を捨てたりはしない!」
「そうか。じゃ、本当に自分の正義を貫けよ?」
「なっ!?」
急に真面目な顔になって呟いたクズ男は、幽霊のように薄くなって、背景と溶けていった。
「……? いったいなにが」
辺りを見ましても、そこにはクズ男も、クズ男の妻もいた痕跡が見つけられない。
混乱している自分をあざ笑うかのように、投げ捨てた机が、椅子が、牢屋の壁が、世界のすべてが白い世界に溶けていく。
「っあ――?」
足元の床が溶けて消え失せたので、手をばたつかせ目の前の何もない空間を掴もうとしたものの、そのまま堕ちてしまい――自分は意識を失った。
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「……夢……だったのですか」
検察官がそう呟いたのを聞き届けた後で、私は警察署から飛び立ちました。
彼女の中からマクスウェルの残滓はすでに消え失せています。
マクスウェルの真理を捻じ曲げる力は、言ってしまえば心に働きかけるサキュバスの力の上位版です。そしてバニル様の干渉で弱まったその力は、自らを律する強い心があれば撥ね退けられるものなのです。
それで今回は、あえて彼女を怒らせる【夢】を提供することで、心を活性化させることにしました。
目論見通り彼女は怒り、自らを律する強い心を取り戻したことで、あとは彼女自らの精神力でマクスウェルの残滓を追い出したのです。
「さ、あとは裁判長だけですね」
私は夜の闇を、駆け抜けました。
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全てが終わった。
魔王軍の幹部バニルを討伐したことで俺の疑いは晴れ、検察官セナの助言もあり無罪放免。バニルにかかっていた賞金で、領主の屋敷の弁償も、借金も、すべて完済。それどころかお釣りをもらって一気に小金持ちとなった。
「……はぁ……」
しかし、何もかもうまいこと終わったように思える結果に対して、俺は思わずため息をついた。
馬小屋の屋根に開いた穴から覗く月を眺めながら、今回のことを振り返ってみる。
今回の騒動、こうして終わってみると拘束された日数自体は長くなかったが、それでもずいぶんと精神的に追い詰められた。かつては家に引きこもって、食べたい時に喰らい、寝たいときに寝るという、実に自堕落な生活を送っていた俺にとっては、冤罪で捕まり、牢屋に入れられ、人治裁判で死刑を宣告されるなど、なかなかショッキングな出来事が連続したからだ。
しかしそれでも心が折れなかったのは――。
「あれ、カズマさん? な、なんで起きてるんですか! ルール違反ですよ!」
「おう。待ってたぞ」
――このロリサキュバスのおかげだろう。
俺は昼間に【アンケート用紙】を書き込み、ロリサキュバスを待っていた。俺がすっかり寝ているものと思ってたのか呑気に入ってきては今更慌てているロリサキュバスと、対面する。
「あのですね、お客さん。こっちも仕事なんですから――」
「今回の件、助けてくれたのはお前だろ? ありがとな」
「あ……」
ロリサキュバスは一瞬困ったような、しかし気付いてくれて嬉しいみたいな、そんなはにかんだ笑顔を見せ。
「や、やですよー。気付いちゃいました? で、でもお店にお礼とかしないでくださいね? いろいろと無茶なこともやったので――」
そう言ってロリサキュバスは、イタズラっぽく片目を瞑り、かなり嬉しそうな声色で囁いた。
「この事は、内緒ですよ?」
ああ、なんだかこういう光景を見たことがあったような。
そう、この世界に来て最初に死んだときに出会った――。
「め、女神だ……」
「なんでですか! 嫌がらせですか! 私何か恨まれるようなことしましたか! 今回、頑張ったのに、頑張ったのに……、うああああーっ!!!」
泣き出してしまったロリサキュバスを、俺は、必死になって宥めた!