※この作品はR-18です。

新人サキュバスと成り上がりの男   作:あるい椋

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冬の過ごし方と【夢】のゆんゆん

「うるさい! カズマ、うるさいわよー!」

 

 屋敷にて。俺が暖炉の前でハンマーを振るっていると、アクアが怒鳴りかかってきた。

 

 季節はいまだ冬。弱いモンスターは冬眠し、強力なモンスターしか活動しないため、冒険には向かない季節だ。特にここ――アクセルの街の冒険者は、デストロイヤー戦の報酬でそれなりの金を得たこともあって無理に冒険するようなことはせず、朝から酒を飲み日が沈んだら寝る、そんな毎日を過ごしている。

 そんな中、俺は≪鍛冶≫スキルを習得し、バニルと共同で売り出す商品、その試作品を作る日々を送っていた。今日はライターのフリント部分を作ろうと金属を加工していて、それがアクアにはうるさかったらしい。

「おいおい。試作品の金属部分の加工をやるから音が響くかも、って昨日言っておいただろ?」

「ここまでうるさくなるなんて思ってなかったの! 大体その試作品って、あの悪魔と売り出すものでしょ? ああ、やだやだ! そんなの止めちゃいなさいよ! お金はたくさんあるんだし!」

「お前な、それだって一生食っていける額ってわけじゃないんだから。懐に余裕がある今のうちに、次の金策を考えておくべきだろ」

「それはそうだけど……だからってあの悪魔に頼るのが嫌なの! 出て行って! 悪魔に魂を売ると言うのなら、今すぐこの屋敷から出て行って!」

 アクアはそう言って玄関を指差すが、こうなると俺も黙ってはいない。

「ああ!? この寒い中ふざけんなよ! いいぜ、不動産登記は俺の名前でやってるんだ。もし俺を屋敷から追い出すというのなら、警察に頼んでお前を前科一犯に――」

「――カズマ、その辺にしておいてやれ」

「カズマ、カズマ、確かにうるさいです。私も目が醒めちゃいましたよ」

 俺の言葉を遮るように、ダクネスとめぐみんが声をかけてきた。

 アクアは味方ができたと思ったのかニヤケ面をこちらに向けてきて、イラッとするが。

「……しょうがねえな。確かに俺も、ここまで音が響くとは思ってなかった所もあるし、今日からは別の場所で作業するよ」

 パーティーメンバーに多数決を挑まれてはしょうがない。

 俺は、試作品を手に立ち上がった。

「あ、せっかくの機会だし、俺、しばらく宿で外泊するからな。その間屋敷には戻らないからよろしく」

「ええ!? ……ちょ、ちょっとカズマ。出て行ってって私が言ったの本気にしちゃったの? ぷ、ぷーくすくす……。よ、夜には帰ってきてもいいわよ? せっかくお金もあるんだし、晩酌くらい一緒にしましょうよ? ね? カ、カズマさーん!」

 アクアが何か言っていたが無視して、俺は屋敷を後にした。

 

 しかし、寒さを凌げて、音が迷惑にならずに作業できる場所となると、かなり限られる。

「おーす、おっちゃん。いるー?」

 俺は、≪鍛冶≫スキルを教えてもらった鍛冶屋を訪ねていた。

 ここなら隅っこで金属を叩いたところで文句は言われまい。

「らっしゃい……なんだお前か。いるに決まってるだろ。今は、生涯で何回あるかわからない繁忙期だからな」

 そんなことを言う店主の足元には、作りかけの装備が並べられていた。懐が潤った冒険者たちが装備の新調を依頼したり、現在の装備を整備しようと持ちこんだものだろう。

「儲かってるみたいだな」

「ああ。冒険者が金を落とすからな、街全体が好景気だよ。……で、何の用だ?」

「作業場の隅っこを数日使わせてもらえないかと思って。作るのは小物だから、邪魔にはならないようにするし、場所代も払う」

 俺はそう言って金貨を数枚、机の上に並べた。

「うーん? まぁ、金を払ってくれるっていうのなら、構わないぞ」

「おう、サンキューおっちゃん」

 こうして、金を積めばスキルも教えてくれる鍛冶屋店主の協力のもと、作業場所を確保できた。

 

 それからしばらくは試作品作りに精を出していたが、店主の足元にある数々の装備が羨ましくなった俺は、ぜひ自分もと、武器と全身鎧の発注をした。

 武器のイメージは日本刀だ。しかしこの異世界には刀など存在せず、自分もあやふやな知識しかなかったので、記憶の端々にある『焼き入れ』などの断片的なキーワードや完成品のイメージを伝え、あとは主人の腕に任せることにした。

 おそらく刀を完全に再現することはできないだろうが、鍛冶屋の仕事だ、武器として機能しないものは出してこないだろう。「刀っぽい形状をしたそれなりの武器」というだけで十分だ。

 そもそも刀はビジュアルイメージで選んだだけで、実際に出番となるような――モンスター相手に接近戦をするような状況になるのはゴメンだ。できるだけ遠距離から、安全に闘った方がいいに決まっている。チート能力に魔剣を選んだミツルギは頭がおかしいんじゃないだろうか。

 

 作業場で金属を叩いたり曲げたり、ときには炉の火を借りたりして試作品をいくつか作り、夜には宿に戻って寝る。そんな日々がちょっとだけ続いた。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「おー、寒っ!」

 試作品製作にある程度目処がたった俺は、寒さをこらえて早朝の街に繰り出した。

 遠距離から安全に闘うのが一番という方針のもと、更に≪狙撃≫スキルを習得した俺だったが、まだ目当てとなるものがあったからだ。命を守るための力は、いくらあっても困らない。

 俺は冒険者ギルドに出向いて。

「おい、ゆんゆん。今暇か?」

「!?」

 紅い瞳を輝かせながら仲間募集掲示板をにらみつけていたゆんゆんに声をかけた。

 アクセルの冒険者の多くがクエストなどせずに朝から酒を飲んで豪遊し、もちろん仲間募集掲示板など見向きもしないでいるというのに、不憫なこの子はそれに気付いているのかいないのか。毎日早朝から仲間募集掲示板の前に陣取ってはまだ見ぬ仲間を待ち続けていると、キースが噂していたのを聞いたのだ。

「カ、カズマさんじゃないですか!」

 敏感に反応したゆんゆんは、俺の姿を確認するとますます瞳の輝きを増していく。

 声をかけられたのがそんなに嬉しかったのだろうか。思わず涙が出そうになる。

 ゆんゆんは瞳の輝きに自分では気付けないのか、私なんとも思ってませんよというような体を装って、笑顔になるのを我慢するように口元をヒクヒクさせながら、質問してくる。

「なんでしょう。ナ、ナンパでしょうか?」

「違うわい。……パーティーの勧誘だ。ゆんゆんがまだどこのパーティーに入ってないのなら、ウチのパーティーはどうかと思ってな」

「!?」

 紅い輝きが最高潮だ。デストロイヤーのトドメに爆裂魔法をぶっ放したときのめぐみんを思い出すくらいの輝き。……これは好感触なのだろうか?

 俺はそんなことを思っていたが、しかしゆんゆんは。

「……ごめんなさい。お断りします」

 目の輝きはそのままに、頭を下げてそう言った。

 なかば予想していた答えだっただけに、俺は動揺することなく聞き返す。

「ひょっとしてめぐみんに気を遣ってるのか? あいつなら――」

「はい。私がカズマさんのパーティーに入ると言ったら、めぐみんは最初は大反対するでしょうけど、それでもなんだかんだで最終的には受け入れてくれるとは思うんです。でも、それってなんだか違うと思って。……あのパーティーの和を私が乱すことはできません。カズマさんに誘われたのは嬉しいんです。嬉しんですが……私は私で、私だけのパーティーメンバーを探してみます」

「……そうか。わかった」

 めぐみんを口八丁で丸め込む手はいくつか頭に浮かんでいたが、しかし本人に断られてはどうしようもない。ゆんゆんの断りの返事を、俺は素直に受け取ることにした。

 誘われたこと自体は本当に嬉しかったのだろう。なおも目を輝かせ、口元をゆるませながら、ゆんゆんは再度頭を下げた。

「本当にすみません!」

「いいよ。ゆんゆんにもゆんゆんの理想のパーティーってのがあるんだろうしな。でも今の季節、誰も仲間を募集してないぞ? ずっとここで待っててもしょうがないだろ」

「は、はい……。それはわかってるんですけど、もし私が席を外してる間に掲示板を見に来る人がいたらと思うと、ここから離れられなくて……」

「大丈夫だって! 今からメンバーを追加募集するくらい危険なクエストに挑むパーティーなら、準備期間が一日や二日増えたところで文句は言わないから。もしゆんゆん目当てのパーティーが来たなら、言伝をもらえるようギルド職員に頼んでおけばいい」

 なぁ? と、傍で給仕をしていたギルド職員に同意を求めると、そうですよーと返ってきた。彼女たちもゆんゆんのことが気になっていたのだろう。

「だからずっと冒険者ギルドに籠っている意味はない。他の冒険者たちみたいに、装備を新調したり、情報収集とかのために街に出ようぜ」

「は、はい……そうですね。確かにそのとおりです」

「よし、それじゃ行こう。すぐ行こう。すみませーん、この子のお勘定お願いしまーす!」

「え? え!? カズマさん!?」

 こうして俺は、ゆんゆんをデートに連れ出した。

 半分は親切心から。……もう半分は、観察のために。

 

 街中を歩きながら、会話を続ける。

「装備は新調しなくていいのか? 知り合いの鍛冶屋が近くにあるけど」

「は……はい。私は後衛職ですので鎧などはかえって邪魔になりますし、杖もまだ新調するほどでは……。強いて言えば緊急用のマナタイトなどは数を揃えたいと思っていますが、この前行った魔道具店では、私のレベルに見合わない高級品しか置いてなかったんですよね……。それでもしょうがないから一個買ったんですが、めぐみんに勝負の代価として取られちゃいましたし」

「そ、そうか」

 すまん。そのマナタイトはとっくに売り払って借金返済のために消えてしまったんだ……。

「だけどゆんゆんは上級魔法が使えるんだろう? それに見合わないマナタイトなんてあるのか?」

「ありますよ。上級魔法以上に魔力を消費するテレポートや、炸裂魔法、爆発魔法など――あのマナタイトはこのクラスの魔法を連発する人向けですね。爆裂魔法でしたら更に高価なモノでないと肩代わりするのはムリでしょうけど。……あれ? そうなるとめぐみんはあのマナタイトどうしちゃったんだろう。カズマさん知ってます?」

「し、知らない」

 俺は冷や汗をかいた。

 首をかしげるゆんゆんだったが、俺はごまかすために会話を続ける。

「じゃ、もう一度その魔道具店に行ってみるか。街全体の景気が良くなってるらしいし、もしかしたら上級魔法向けのマナタイトも入荷してるかもしれない」

「そうですね。だけど、駆け出しの冒険者向けのこの街で、そう都合よく上級魔法用のマナタイトが用意されてるでしょうか…? ましてや好景気なら売れ筋を入荷しようとするでしょうし……」

 そんな会話を続けながら、俺達は裏路地に足を向けた。

 

「はい、ちょうど入荷しましたよ! うふふ、バニルさーん! やっぱり売れたじゃないですかー!」

 案の定、駆け出しの街に似合わない高級品を仕入れていたのは、ウィズの店だった。

 実に嬉しそうに身を躍らせ、ゆったりとしたローブの上からでもわかるほどのたわわな胸を震わせたウィズが店の奥に向かって声を投げると、そこにいたらしいバニルが反論してくる。

「やかましいわ! そんなものは特殊な例に過ぎん! 次からはこのガラクタの山を仕入れる前に、我輩に相談するのだぞ!」

「うふふ。バニルさんの負け惜しみなんてはじめて聞きました……! あ、すみません、カズマさん、ゆんゆんさん、一人で盛り上がっちゃったりして」

「それはいいけど」

「こ、こんにちは。ウィズさん」

 ウィズとゆんゆんが挨拶を交わす。やはり知り合いだったのか。

「二人ともいいところに来て下さいました。ちょうど、上級魔法用のマナタイトを大量に仕入れたところだったんですよ。あ、それとは別にオススメの商品があるんですよ? 夜中に大きな音で鳴く蝉を寝床に寄せ付けないアイテムです。持続時間もすごく長くて、今から3ヶ月も使えるんですよ!」

「今は冬なんだけど」

 冷静に突っ込む俺に対して、ゆんゆんは慌てて。

「マ、マナタイトをください! 予算はたくさんありますから! それとポーションもいくつか――」

「はい。承りました。ではこちらに――」

 商品棚を前にあれこれ話し始めた二人をよそに、俺は奥の倉庫へ向かう。

「ホントに働いてるんだな……」

 かつて魔王軍幹部だった大悪魔バニルは、商品が入った箱を倉庫の奥に奥にと乱暴に放り投げていた。

「……よく来たな。ネタ種族を連れ回しては揺れ動く胸部を観察し、そしてその視線がバレている小僧よ」

「め、めったなこと言うなよ! え、バレてんの? マジで?」

 慌てる俺の言葉を無視して、バニルは愚痴り始めた。

「あのポンコツ店主、我輩がせっかく稼いだ金を一切内部留保に回すことなく、すべて仕入れに転換してくれたのだ。小僧との取引の際にはもっと大金が動くはずだから、手を出されないためにも金庫を購入しておかなければ……」

 ……店主から金を守るために購入される金庫とはいったい。

 バニルは大きくため息をついた。

「というわけで上級魔法用マナタイトの買い取りは真剣に助かる。ついでにガラクタも買い取ってくれると助かるが」

「断る。……あ、でもこれは一つもらおうかな」

 そう言って俺は、倉庫の片隅で光るものを手に取った。

「何? 貧弱なステータスの小僧にはこんなもの……ああ、そういうことか」

「お、おい。余計なこと言いふらすなよ」

「なに。買ってくれるのなら文句は言わん。……金は我輩に渡せ。これは小僧との商売を始めるにあたっての最低限の原資として確保しておく。あのポンコツ店主に渡すと何に使われるかわかったものではない」

「……わかった」

 俺はバニルに金を渡し、手に入れた商品を懐に入れると、店に戻った。 

 ウィズが無邪気に話しかけてくる。

「あ、カズマさん。お帰りなさい。奥でバニルさんと何を話してたんですか?」

「べ、別に。ゆんゆん、買い物は終わったのか?」

「はい。ポーションも買い揃えましたし、いい買い物ができました」

 ゆんゆんはそう言って笑みを浮かべながら、商品が入った袋を掲げた。

「手荷物が出来たなら、今日はこれ以上歩き回らないでおくか。でもゆんゆん、明日からも冒険者ギルドに籠らずに、たまには外に出ろよ」

「は、はい……。では、ウィズさん。またお邪魔しますね」

「はい。いつでもいらしてください」

 満面の笑顔のウィズと別れ、店を後にする。

 ゆんゆんが頭を下げてきた。

「それじゃカズマさん、私、宿に戻りますね。今日は本当にありがとうございました」

「ああ。……あ、ちょっと待って。これ、俺からゆんゆんにプレゼント」

 俺は先ほどバニルから購入した高品質のマナタイトを、ゆんゆんの手に握らせた。かつてめぐみんがゆんゆんから奪ったものと同じ品質のものだ。

「え、ええ!? こんな高いものもらえませんよ!」

「元々めぐみんがテキトーな勝負で奪ったものだろ。アレがどこに行ったのかは知らないけど、パーティーのリーダーとして返させてほしい」

「で、でも……私のレベルじゃ」

「でも、いつかはそれに見合う魔法も身につけるんだろ? テレポート、炸裂魔法……何にするのかは知らないけれど、いずれきっと役に立つ日が来る。ならそのマナタイトは俺からの先行投資だと思ってほしい。俺が困った時、それを使って助けてくれよ」

「……」

 ゆんゆんは、やや困ったような顔をしていたが、幾分か逡巡して、やがて胸元にギュッと高品質マナタイトを抱きしめると。

「わかりました。このマナタイト、使えるようになる日まで、大事にしますね!」

 今日見せた表情のうち最高の笑顔で、そう言った。

「それじゃ今日は本当にありがとうございました!」

「いいのか? 荷物くらい持つし、送っていくけど」

「大丈夫ですよ。私レベルも結構高くて、ステータスも高いんですから! ふふっ、それとも送り狼になるつもりですか?」

「そ、そんなことしねぇよ!」

 はじめて冗談を口にしたゆんゆんは、俺の狼狽にクスクスと笑い。

「それではまた!」

 笑顔のまま手を振って、駆けて行った。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 俺は帰宅するゆんゆんを尾行した。

 

「ふふふ……ふふふーん」

 鼻歌を鳴らし、上機嫌で道を歩くゆんゆん。

 片手でウィズの店の商品が入った袋を提げ、もう片方の手で俺がプレゼントしたマナタイトを胸に抱きしめながら、ニヤニヤしていた。

「あ、ゆんゆんさん! この間ははありが――」

「――!」

 道中、ゆんゆんの姿を確認した新人冒険者が声かけようとしたが、ゆんゆんはそれを聞く間もなく逃げ出してしまう。新人冒険者は呆然とその姿を見送っていた。

「……ああ、また逃げられた。モンスターに囲まれたときに助けてもらった礼を言いたかったのになぁ」

「しょうがないよ。ゆんゆんさんって人嫌いで有名だし」

 傍らに座っていた女性冒険者がそう言った。

「仲間を募集してるって噂には聞いてたけど……俺達のパーティーじゃダメかな?」

「ダメでしょ。新人の私達じゃ、きっとゆんゆんさんの足を引っ張っちゃう。もっと力をつけたらまたお願いしてみよ?」

「ああ……そうだな……」

 新人冒険者はやや名残惜しそうに、ゆんゆんが走り去っていった方角を見つめていた。

 

 ゆんゆんは宿屋に部屋をとっているようで、それから特に寄り道をすることもなく辿り着いた。

 宿の受付には初老のおっさんが立っていたが、ゆんゆんは気恥ずかしさからか、挨拶もしないまま二階へ上がっていく。おっさんも、ゆんゆんのそんな態度に慣れているのか、特に気にすることもなくゆんゆんから目線を逸らした。じっと見てると恥ずかしがるからというおっさんなりの配慮なのかもしれない。

 しかしゆんゆんは、そんな気を遣わせているという自己嫌悪からか、やや足早になって階段を上がって行った。潜伏スキルを発動した俺は、目を逸らしていたおっさんから見咎められることもないまま、後に続く。

 そして、ゆんゆんが部屋に入って今にもドアを閉じようとしているところで、ギリギリ間に合った俺は、ドアと枠との間に脚を差し込んだ。

「!?」

 閉めようとしたドアに突如紛れ込んだ異物、俺の脚に気付いたゆんゆんだったが、混乱しているのか、ドアノブを握っていた手の力を緩めてしまう。その一瞬の隙を見逃さなかった俺はドアを開け放つと、部屋の中へ身を滑らせた。

「!?!?」

 なおも混乱して驚愕の意しか喉から出てこないゆんゆんに対して、俺は肩を押し突き飛ばして歩みを無理矢理進ませる。ゆんゆんは押されたはずみで持っていた袋を手放してしまい、中に入っていたマナタイトやポーションの入った瓶が、床に落ちて砕け散った。

「ああっ……!?」

 砕け散る瞬間が視界に入ってしまったのか、ゆんゆんは悲嘆に顔を歪ませるが、俺は無視してそのまま部屋の奥のベッドにゆんゆんを押し倒した。

 ベッドに蓄えられていた空気がはじけ飛ぶのと同時に、ゆんゆんから石鹸の香りがふわっと舞って、緊迫した状況とはちぐはぐに、空間を鮮やかに彩った。

「カ、カズマさんっ……?」

 ようやく意味のある言葉が口から出たゆんゆんだったが、俺は止まらない。

 ゆんゆんの両腕を頭上で交差させ、左手一本で拘束した。そして右手で、ゆんゆんの胸部を隠している布地を、一気に剥ぎ取る。

「!!!!?????」

 地球なら昨年までランドセルを背負っていたかもしれない、そんな実年齢には不自然なほど豊かなおっぱいが、衣服を剥ぎ取った衝撃でふるふると震えていた。

「あっ……! あ、い、い……や……いや! いや!」

 白く輝き、先端にピンク色を添えた自らの乳房が晒されたことでようやく現状を認識したのか、ゆんゆんは強い拒絶の言葉を口にした。

 そして。

「『ライト・オブ・セイ――』んぐっ……!?」

 魔法を発動しようと手を光らせはじめたところで、俺はゆんゆんの唇を無理矢理塞いだ。

「んーっ!? んんー! んんっ!」

 声を塞ぐために、唇を重ね合わせただけのキス。

 ゆんゆんは拘束から逃れようとジタバタ暴れたが、混乱と恐怖に支配されている人間の力は、ひどく弱い。低ステータスの俺でも抑えつけられるほど。

「んん! んんっ……ん……。……ぐすっ……っ……ぐず……」

 ゆんゆんの目に、涙があふれてきた。口を押さえつけられているので、息が通る鼻だけを鳴らして、すすり泣く。

 だがその泣き声が俺に躊躇をもたらすということはない。俺は次の行動に移った。

「ふきゅっ!?」

 ゆんゆんの二の腕をデコピンの要領で弾くと、ゆんゆんは喉の奥で驚愕の声をこもらせる。

 俺はその様子を確認してから、今度は右手全体を使ってゆんゆんの乳房の周りを優しく撫でる。状況とは不釣り合いなくらいに、優しく、優しく。

「? ? ……っ」

 そんな俺の手付きを不思議に思ってか、ややおとなしくなったゆんゆんだったが、俺の手が肌のある一点を通り過ぎたときにピクリと反応した。

「……っ……ぁ……?」

 俺はゆんゆんのカラダが反応した点を、指で何度もなぞる。

 ゆんゆんは自らのカラダに何が起こってるのかわからないのか、時折甘い声を漏らすだけで、抵抗の力は次第に弱まってきていた。

「……ぁっ……! ふぁっ……」

 人間の性感帯は何も性器ばかりではない。カラダのいたるところに、それはあるのだ。ただしその場所には個人差があり、しかも開発されていないことが多いので、こうして手全体で肌をさすり、わずかな反応から見つけるしかない。

 ゆんゆんは、鎖骨のすぐ傍に性感帯を持っていた。そして俺は、そこを開発するつもりで、何度も指でなぞったり、時折強く押したり、ということを繰り返した。

 なぜこういうことをしているのかと言うと、乳首や性器を触る行為は快感を与えやすいが、それでも性行為に直結するイメージから他人に触られることに忌避感を覚えられ、激しく抵抗される可能性が強い。

 だが、鎖骨をなぞるという行為が、性行為のイメージにつながるわけがない。増してや性に関する知識も経験も少ない13歳の子どもなら尚更のこと。

 襲われているはずなのにセックスっぽいことをしてこない、何をされているのかわからない、でも自分のカラダにはどういうわけか未知の快感が訪れている……。そういう混乱の心理状況を継続させるのが狙いだった。

 だが、開発はまだ途上でも、そこは紛れもなく性感帯なのだ。

 俺は突如、鎖骨をなぞるのをやめて。

「っんんんーっ……!? んっ! んんんー!」

 手を、ゆんゆんの秘所に突っ込んだ。

 突然の事態に、とうとうきたか、と言わんばかりにゆんゆんが悲鳴を上げるが。

「……っ! ぁ……? ぇ……? ……」

 俺が手を掲げ、指の間に滴る愛液を見せつけると、ゆんゆんは黙り込んでしまった。

 ゆんゆんの秘所は、漏らしてしまったのではないかと思うくらい濡れていた。俺は性器には直接触れておらず、下着の内側についていた液体を掬っただけだったが、それでも指をふやかすほどの量が取れるくらいには。

「? ぇ……? ぇ?」

 ゆんゆんにはそれが自分由来の液体だとは思えないのだろう。目を見開いて、呆然としている。

 俺はゆんゆんの表情を確認してから、見せつけるようにゆっくりと、手をゆんゆんの乳房に向かって下ろしていった。ゆんゆんは抵抗することも忘れて、俺の指の動きをぼんやりと目で追うだけだ。

 そして俺は、やはりゆっくりと、じっくりと、ゆんゆんの乳輪のまわりを指でなぞっていく。乳首には決して触れない。乳首に触れられたから感じてしまったのだと言い訳をさせないためだ。

 乳輪のまわりに、愛液でラインを描いていく。その様子をただ眺めていたゆんゆんは、ラインを描く液体の正体をようやく自覚したのか次第に顔が赤くなっていき、指が乳輪を一周回って完全な円を描き出した頃には、耳まで真っ赤になっていた。

 そこで俺は、ゆんゆんの口を解放したあとで、はじめて乳首を押す。

「あ、んあああああっ!!!!????」

 ゆんゆんは解放された口で、息をするのも忘れて大声を上げた。その中には悲鳴はもう混じっておらず、ただ、女の悦びを表現する嬌声でしかなかった。

 敏感になったところにトドメを押されたところで、イってしまったのだろう。そのまま二度三度痙攣して、ベッドをギシギシと鳴らした。

「ああ、ああ……? カズマさん、なんですか……これ……? え……?」

「エッチなことだよ」

 混乱するゆんゆんに、俺は努めてゆったりとした口調で答えた。

「そんな……え……? 乳首? く、首? 私? ……ひ、ひどい……」

 何が、とは聞かなかった。ゆんゆんは混乱の極致にいる。自分でも何を言っているのかわからずに、ただ頭をよぎった言葉を並べてるだけなのだ。

 そして俺は、優しく、優しく語りかける。

「ゆんゆん」

「は、はい……? んっ!」

 再度、口付けをした。

「んっ、ふっ、ふぅ……」

 今度は息を塞ぐ目的ではなく、性的な快楽を得るためのディープキス。俺は舌を侵入させて口内を舐めまわすが、頭が回らないゆんゆんはそれに噛みついてくるようなことはなく、されるがままだ。

 俺はサービスのつもりで、自分の舌の滑らかな下面を舐められるように、ゆんゆんの舌を誘導する。

「んー、んっ……。はっ……? ふっ……ふっ……!」

 最初はされるがままのゆんゆんだったが、キスが気持ちいいことに気付いたのか、やがて自らも舌を動かしはじめ、息が荒くなっていく。

「ふっ、ふぁっ、あっ……」

 ゆんゆんはキスに夢中になっていた。息継ぎのために離れることはあるが、その度にすぐに快感を得る体勢に戻ろうと、自分から頭を振って俺の唇に食いついてくる。

 やがてキスだけではもどかしくなったのか、身を捩らせ太もも同士を擦り合わせては、水音をたてるようになる。

「ほら」

 俺はそう短く言って、俺の唇を貪るのに没頭するゆんゆんの手を解放した。

「っ! ふっ、ふっ!」

 その途端ゆんゆんの手は自らの性器に伸び、もう片方は乳首に触れ、俺が見ているのもお構いなしに、自慰を始める。自らのカラダを労わることを無視した、かなり乱暴な動きだった。自慰行為の経験なんてないけど、持っている性知識を総動員してとりあえずそれっぽく触ってみた、という具合だった。

 ――しかし。

「はっ、はっ! っ……?」

「……イけないか?」

 ゆんゆんの声に疑問の感情が見え隠れしてきたのに対し俺が尋ねると、ゆんゆんはしばらく黙りこんだあと、首を縦に振った。そして俯いた状態のまま、声をかけてくる。

「カ、カズマさん」

「なんだ」

 ちゃんと言わないとわからないぞ、と言外に含ませる。

「イ……イかせてください! お願いします!」

「ダメだ」

「えっ……!?」

 即答した俺に対し、ゆんゆんは顔を上げ、捨てられた子犬のような、そんな縋るような目をした。俺は努めて優しい口調を維持したまま、尋ねる。

「俺がゆんゆんをイかせたら、ゆんゆんは何をしてくれるんだ?」

「……わわ私、なんでもしますから……」

「なんでもするんだな」

「はい……!」

 きっと、あまり深く考えて言った台詞ではないのだろう。ただただ、また大きな快感を得たい、という性的欲求に頭が支配されての発言のはずだ。

 後で冷静になった彼女は後悔するのかもしれない。

 だが俺がそれを気にする必要はない。

「よし、いいだろう」

「ああっ……!」

 俺の言葉にゆんゆんはぱぁっと可愛い笑顔を見せる。店の前で別れたときに見せたものよりも、実に輝かしい笑顔だった。

 そんな様に内心ほくそ笑みながら、俺は、さっきから目の前で揺れていたゆんゆんのおっぱいに触れる。

「あひゃっ!? あ、あああ! 気持ちいいです……!」

 まだ軽く触れただけなのに、ゆんゆんは敏感に快楽を受け取っていた。普段他人に触らせないところが触られているという状況に酔って、舞い上がっているのだろう。

 俺は手を大きく広げて、包み込むようにしてゆんゆんのおっぱいを掴む。まるで内部に温水を入れた水風船を触ったかのようなぽよぽよとした感触が、手の平に伝わった。

 ロリっ子と性行為をするときに一際甘美なのは、肌の感触だ。いくらケアしようとも加齢によりどうしても劣化していくのが肌だが、ロリっ子は無自覚に天然の瑞々しい肌を持っている。そしてその甘美な肌の感触は、ただ抱き合うだけでも気持ちいいが、こと性行為に関しては全身を擦りつけたり、手で性器を扱いてもらったり、キスしたり……。その行為ひとつひとつが、瑞々しい肌の感触を持っているというだけでアップグレードされる。これがロリっ子の利点だ。

 そしてゆんゆんのようなロリ巨乳は、その瑞々しい肌の感触を、おっぱいでも味わうことができるのだ。

 俺は、ゆんゆんの胸の谷間に顔を差し入れると、両手で左右の乳房を中心に向かって寄せ上げ、顔面全体でゆんゆんのおっぱいの感触を楽しむ。

 感触だけでなく、ゆんゆんから漂ってくる香しい匂いと、舌に触れる汗の味が、性的興奮を誘う。

「ふ、ふぁあああ……あ」

 ゆんゆんの甘い声が響く中、柔らかい胸の感触を楽しみながらも、俺は親指を動かしてゆんゆんの乳首を刺激する。

「あっ、あっ……! カズマさん、も、もっと……もっと……」

 ゆんゆんはそう言って、快感に震えその身を捩らせながらも、両手で俺の頭を抱えると、なお強く、強く、おっぱいを、全身を押しつけてきた。かなり強い力だが、おっぱいが緩衝材になることで、後頭部に軽く痛みを感じる程度だった。

 それよりもゆんゆんがおっぱいを使って俺に性的アピールをしてきたという事実の方が大事だ。

「大丈夫か? 痛くないか?」

「はい……。だから、もっと、もっと強くしてください……!」

 ゆんゆんは更に強く抱きしめてくる。おっぱいは圧力に押されて、次第に変形の余地を失っていく。

 俺は、わかったと心の中で呟いて、胸の谷間に顔を埋めたまま、両腕を回り込ませると、左腕で背中をかき抱き、右腕で尻側から性器に触れた。

「あひっ!? あっ、あっ!?」

 性器の表面を軽く撫でただけで、ゆんゆんは歓喜の声を上げる。

「あんっ……! あっ! ひあっ! んんっ!」

 手を往復させ、指の腹に性器を掠らせる動作を繰り返す。ゆんゆんは面白いように鳴き、俺を抱きしめる力を増してくる。ゆんゆんのカラダを俺がコントロールしているという実感が、興奮を加速させた。

「よし、ゆんゆん。イけっ、イけっ!」

「んぐっ!? あ、ああ、ああああっ!!」

 俺はトドメに、頭を上げてゆんゆんの鎖骨に吸いつき、性器の割れ目に指を一本、シュッと這わせた。

「ひあっ、ああああああああっ!!!??」

 そんな軽い刺激だけで、ゆんゆんは大きく跳ねた。

「まだまだぁ!」

「かひっ!?」

 イってしまったゆんゆんに対し、俺はなお性器への刺激をやめない。

 今度は指一本を膣へと侵入させる。

「あっ!? ああっ! いっ……!」

 一瞬痛みらしきものを口にしたゆんゆんだったが、口元から涎を垂らし、目は虚ろに、時折ビクリとカラダを振動させながら、快楽の波に溺れていく。

「あぐっ……! あっ、ああああっ!?」

「ほらぁ!」

「んぎっ!? んあああっ!!!??」

 そして都合三度目の絶頂が、ゆんゆんを襲う。

 腰を浮かしてはベッドに叩きつけるという動作を繰り返してバタバタと暴れるが、俺はお構いなしに膣に入れる指の数を更に増やす。

「ほら、ほらぁ! 二本目だぞ!」

「ああああっ、い、痛いですっ? んぐっ!? ああああっ!?」

 さすがに二本目になってゆんゆんは痛みをはっきりと訴えたが、俺はここでもう一度鎖骨に強く吸いつき、親指でクリトリスを弾いた。

「いいいいっ!? んああああっ!!!」

 敏感になっていたゆんゆんは、間髪入れず、四度目の絶頂を果した。

 まるで万力に挟んでいるかのような膣の締め付けが、侵入した指を襲う。

「うおっ……すげぇキツ」

「かっ、あひっ! はっ、んひいいいいっ!?」

 ゆんゆんは、喘ぎ声が喉を埋め尽くす中、なんとか呼吸を紛れ込ませて息をつなぐ。

 腰を一際高く浮き上がらせ、そのままプルプルと震えながらできそこないのブリッジのような体勢を維持していたが、やがて支える力をふっと失ってベッドに崩れ落ちた。シーツにカラダが叩きつけられ、バタンと大きな音が鳴る。

「ああああっ……! んくっ……! んっ……」

「よっ……と!」

 俺は、指を愛液で滑らせて、ゆんゆんの膣から引き抜いた。ちゅぽんと小気味いい音が鳴り、同時にゆんゆんのカラダがもう一度小さく跳ねる。

 愛液に濡れた指は、膣圧によって赤くなっていた。

「んんっ……! ん……はぅー……ふー……」

 ゆんゆんはゆっくりと長い息を吐きながら、カラダの震えを落ち着かせていく。

 だがその熱が完全に冷めやらぬまま、俺に声をかけてくる。

「……ふぅ……カ、カズマさん……その、カズマさんはまだイってませんよね……?」

「……ああ」

 股間には、痛いほどに勃起したペニスがそのまま放置されていた。

 それを見たゆんゆんはやや緩慢な動作で脚を広げると、俺を誘った。

「……カズマさん……私のカラダ、使ってください……私、カズマさんと結ばれたい……」

「……! わかった! ヤってやる!」

「ああっ!?」

 俺はゆんゆんの腰を掴んで、持ちあげると、一気にチンポを突き入れた。

「んっあ!? あひ、あああっ!!」

 ゆんゆんは苦悶に満ちた声を上げるものの。

 指を締め付けていたあの圧力はどこへやら、溢れ出る愛液のおかげか、抵抗なくするっと奥まで突き進むことができた。しかし、完全に根元まで入り込んだところで再び膣圧が押し寄せてくる。

「うおっ……! すげっ……キツ……」

「あっ、はっ、はっ! カズマさん、私のことは気にせず、動いてください……!」

「よしっ、痛かったら言えよ!」

「はいっ……」

 痛くないはずはないのだ。

 だが涙が零れるのをこらえ、懸命に柔らかい表情を作ろうとするゆんゆんの意思をくみ取って、俺は再び腰を動かし始めた。

「かひっ! いっ、あっ! んあっ……!」

 ゆんゆんの声と表情に、苦痛と快楽が同時に混じる。

 俺は努めて快楽の方を増やしてやろうと、クリトリスや乳房を手で弄びつつ、鎖骨に口付けた。

 その甲斐あってか。

「つあっ、はっ、はっ! ああんっ!」

 段々と、快楽を感じる声の割合が大きくなっていく。

 しかし比例して、ペニスを締め上げる膣の圧力はどんどん増していった。俺から精液を絞り取ろうとしているのかのごとく。

「っお……!」

「カ、カズマさん、逃がしませんよ……!」

「!?」

 背筋が寒くなる呟きとともに、ゆんゆんは脚を俺のカラダに絡ませてくる。

「膣内に、膣内にくださいっ! カズマさんと結ばれた証を、私に、くださいっ!」

「う、うおおおっ……!」

 ゆんゆんは自らも腰を動かし始め、腕を寄せて胸の谷間を作って見せつけ、膣圧を更に増し、淫靡さを交えて微笑んでくる。

 脳の冷静な部分ではヤバさを感じていた俺だったが、押し寄せてくる射精感が、思考よりも本能を選んだ。

 そして限界が訪れる。

「ううっ、射精る! 射精るっ!」

「はいっ! どうぞ! 私の膣内に、好きなだけっ……!」

「うおおおおっ!」

 絡みつくゆんゆんの脚に背後から押されて、俺は欲望の証をゆんゆんの膣内に解き放った。

「くっお……! うあ! おおっ!」

 思考は真っ白になったが、精液を一滴残らず吐き出したいという本能的な欲求から、俺は射精中も腰を振り続ける。

「おっ、おおっ、ぐっ……」

「んあっ!? カズマさん、すごいっ! いっぱい出てます! わかります! ああっ、まだっ……!」

「おおおおおっ……! まだ射精るまだ射精るっ……!!」

 ゆんゆんの甘い声に後押しされて、俺は限界まで腰を振り、やがて最後の一滴まで出し尽くしたところで、脱力した。

「ふー……! はー、はぁー……」

「はぁっ、はぁ、はっ……」

 そのままベッドに倒れ込み、肩を並べて荒い息を吐く。

 射精中に呼吸も忘れて腰を振っていたので、長時間プールに潜った後にようやく水面から顔を出したかのような状態だった。

 眼前のゆんゆんも汗に濡れてぐったりと疲れていて、長い時間をかけて息を落ち着かせていった。

「ふー……ふひー……はぁ……はぁ……」

 そのまましばらく並んで天井を眺めていたが、呼吸が整ったゆんゆんが、俺に抱きつき、アピールするようにおっぱいをわざわざ押しつけ、囁いてくる。

「……あーあ、最初は夜景が綺麗だっていう王都ホテルの最上階で、とか理想あったんですよ?」

「……そりゃすまなかったな」

「いいんです。カズマさんにもらわれなければ、私、ずっとぼっちだったでしょうし、変な人に引っ掛かってたかもしれませんし」

 そう言ってゆんゆんはクスリと笑ったが、俺はそんな未来がありありと想像できてあんまり笑えなかった。

「でも将来、いい男が寄ってきたかもしれないぞ。……俺で良かったのか?」

 部屋に押し入り、押し倒しておきながら今更何を言っているのだ、とは自分でも思う。だが俺との関係に達観のようなものを滲ませるゆんゆんに、思わず口が出てしまった。

「カズマさん……。私、高レベルでステータスも高いんです。最初はそりゃびっくりしてましたけど、その気になれば腕一本での拘束なんていつでも振りほどけたんですよ?」

 ……そりゃそうか。何もかも自分の想定通りに進んでいたとか、ゆんゆんを完全にコントロールできていたとか、虫のいい話。単に彼女の好意で受け入れてもらっていたに過ぎない。

 ゆんゆんは続ける。

「でも、予想以上に気持ち良くされてしまって……昼間楽しくおしゃべりして連れ出してもらったことも思い出して……そうしたら、カズマさんがしたいならいいかな、って思ったんです。思っちゃったんです」

 そう言って苦笑いする。

「そっか。なら責任取らないとな」

「はい。ここで出すだけ出して逃げるような男じゃないって、私、カズマさんのこと信じてますから」

「ああ。なるべく期待にはこたえるよ」

「むー。『なるべく』なんですか?」

 ゆんゆんはそう言って頬を膨らませてみせたが。

「……ふふふっ」

「はははっ」

 やがてお互いに顔を見合わせ、笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……【アンケート用紙】に書いた内容と、違ったな」

 

 俺は宿の一室で目覚めた。

 【アンケート用紙】には本来、泣き叫ぶゆんゆんを無理矢理組み伏せて最後までレイプするストーリーを記入していたのだが、いつの間にか軌道変更して、最後にはすっかり和姦ムードになってしまっていた。

 エロい【夢】だったのは間違いないし、こちらの展開の方が後味は悪くないとはいえ、【夢】の中くらい欲望を満たすためだけに暴れる自分を実現したかったのだが。

 ……いや、もしかしたら俺がレイプに対してどこか心理的抵抗感を持っていたのを感じ取って、勝手に軌道修正してくれたのかもしれない。

「……うーむ」

 真相を確かめようと、ぼーっとする頭を動かして辺りを見回したが、部屋には俺一人、周囲には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 私が喫茶店の開店準備をしていると、夜勤を終えてこれから寮に戻るのであろうボーイッシュ先輩が、声をかけてきました。

「新人ちゃんおはよ。……例のお客さん、すごいよかったよ」

「そ、そうですか」

 ボーイッシュ先輩は昨晩、カズマさんの担当だったのです。

 私が返事に一瞬躊躇したのを見てか、ボーイッシュ先輩は笑いながら言ってきます。

「むくれないむくれない」

「そんな、私むくれてなんかいません!」

「でも今日も別のサキュバスが担当なんでしょ? いいの?」

「いいもなにも――。シフトが合わないのはしょうがありませんし」

 カズマさんはこの頃、得た賞金で、頻繁にお店に通うようになっていました。

 ……いえ、頻繁というか、ほぼ毎晩に近いペースでいつも違う女性を【夢】に要求しているそうです。サキュバスの私が言うのもなんですが、すごい性欲です。

 しかし、こうなると私のシフトと合わない日も出てくるようになってきて、当然他のサキュバスにも彼の担当が回っていくわけですが。

 かとか言って、私のシフトに合わせてお店に来てください、などとは口が裂けても言えません。

「でも、例のお客さん、他のサキュバスの間でも話題になってるよ」

「それも知っています……」

 バニル様の討伐を果たしたカズマさんはサキュバスの間でも有名となっています。

 バニル様の残機が減っているのは本人が仮面をイメチェンしたことから間違いないことで、しかしその下手人は、職業は最弱職の冒険者、ステータスもそんなに高くないと、とても我らが領主を討つことのできる屈強の冒険者とは思えない……。しかし、そんなギャップがなにかいいらしいのです。

 そしてバニル様の討伐の件や、いつものごとくビッシリと書き込まれたリアリティのあるセックスの情報もあり、お店のサキュバスの間で彼が話の種となるのは無理のないことでした。

 無理のないことです。ですが。

 偶然見つけた花畑を大事に大事に自分だけの秘密として抱えていたのに、それが他の人にも見つかって。そればかりか観光名所として大々的に公開され更に多くの人が訪れるようになってしまった。……そんな具合の、むず痒い、どことなく悔しい感覚を覚えてしまいます。

 そう思って黙り込んでいたところ、シフトリーダーに呼ばれました。

「新人ちゃん、ちょっと事務所まで来てくれるかしら?」

「は、はいっ?」

 シフトリーダーに手招きされて、私は事務所へと足を運びました。

 近頃は何も問題を起こしていないはずですが……何かあったのでしょうか?

「入ります」

「ええ、いらっしゃい。はい、コレ。見ておきなさいね」

 シフトリーダーは何かニヤニヤしながら、一枚の【アンケート用紙】を私に手渡してきました。

 これはカズマさんの字――。

 でも、いつもと違って記入が少なく、ほとんど白紙でした。

 いったい、何なのでしょうか?

 

 

「新人ちゃん。カズマさんのご指名よ。明日彼と、デートしていらっしゃい」

 

 

「え、ええええっ!?」

 

 

 私の驚愕の声が、事務所で木霊しました。

 




※【夢】の中なので描写がいくらか大げさになっています。そういう設定で見ているからです
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