※この作品はR-18です。

新人サキュバスと成り上がりの男   作:あるい椋

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旅の途中とめぐみんの【夢】

 この世界の魔法は、込める魔力の量によってその威力が変化する。

 コップ一杯の水を作りだす魔法が、辺り一面を水浸しにもできるように。

 スカートをめくる程度の風を起こす魔法が、飛んでくる矢をも噴き散らせるように。

「『クリエイト・ウォーター』! 『ウインド・ブレス』!」

 俺は魔力を少なめに調整して極々少量の水を作り出し、霧吹きのように布に噴きつけた。

「『ティンダー』!」

 そして取っ手をつけた鉄板を火で炙り、十分に熱くなったことを確認してから布地に押しつけると。

 

「うわああああ!? ワンピースの皺が一瞬で消えました! 信じられません!」

「売れます! これは売れますよ! あの開発中のライターとかいう道具とセットで鉄板を売りましょう! 鉄板! 大量に仕入れないと!」

 

 ロリサキュバスが皺の無くなったワンピースを掲げ、いろんな角度から眺めたりくるくる回ったりして、ウィズがそれを物欲しそうな目で追い、二人してはしゃぐ。

  ある程度騒いでから、ロリサキュバスがこちらに振り返り。

「ありがとうございます! 人間社会用の服はこれしか持っていなかったので……助かりました!」

 満面の笑顔で、礼を言ってきた。俺も満足気に笑みを返す。

「おう。お安い御用だ」

 

 夜も完全に更け、日付が変わる間際の時間帯。ここはウィズ魔道具店。

 俺達は明日から紅魔の里への旅に出る。

 里が魔王軍の襲撃にあっているとの情報が届き、心配なので里帰りするというゆんゆん。同じく里とゆんゆんと幼い妹が心配なので追って里帰りするめぐみん、そしてめぐみんに付き添う形のいつものパーティーメンバーといった構図なのだが。

 俺は、先に馬車で出発したゆんゆんに追いつくため旅程を短縮しようと、途中地点であるアルカンレティアへとウィズのテレポートで転送してもらうことを考えていた。それで、何かと入り用な女性陣とは違ってすでに旅の準備を終えてしまった俺が、事前にウィズと話をつけておこうとこの店に赴いたのだが。

 それはついでの理由であり、本当のところはロリサキュバスがワンピースを皺にしてしまったと呟いていたので、有り合わせの材料で作った疑似アイロンを試してみようと思ったからだ。何しろ鉄板に取っ手を繋ぎ合わせただけ。こんなもん≪鍛冶≫スキル持ちの俺ならすぐに作れるし、どうせだから商品化の話をバニルとつけようと店の一角を借りて実演することにしたのだ。

 俺の試作した疑似アイロンは、女性陣二人にはなかなかに好評だった。

 だがこの場にいるもう一人、バニルだけは例外で反応が鈍く、やれやれといった感じで口を開く。

「鉄板の仕入れはやめておくがいい。ライターはともかく、これは商品として売り出すには時期尚早だ」

「そうなのか? 自分でもこれは売れるんじゃないかと思ったんだが」

 簡素な作りではあるが、この世界の商品開発は基本アイディア勝負だ。こんな雑なサンプル品でも、とにかく概念などを特許に登録しておけば似た商品――もっとまともな作りのものを売り出す人が現れたとき、金をせびれる可能性があるのだが。

「売れないとは言っていない。時期尚早だと言っただろう。……これを売り出すにはいくつか問題点があって、まず、これは冒険者には売れん」

「あー……、そうですね。物珍しさからつい舞い上がっちゃいましたけど、冒険者時代に欲しいかと言われたら、微妙だったかもしれません」

「そ、そうなんですか?」

 ロリサキュバスが尋ねると、ウィズは頷いて自らのローブを摘まんで見せた。

「今でこそ私はこのお店という拠点を持っていますが、冒険者は基本根無し草です。皺を伸ばすなんて用途だけで重い鉄板を持ち運ぶなんて、考えただけでげんなりしますし……。そもそも冒険者の服選びは可愛らしさよりも実用性重視で、皺ができやすい薄手の生地よりも丈夫な厚手の生地を使った服を好みます。そして戦闘や野営……普段の生活の荒っぽさから大抵の人が自然と大雑把になっていくので、皺ができようができまいが気にしない人が多いでしょうしね……」

 言われてみれば、俺も不潔なのは我慢ならないから洗濯こそするが、わざわざアイロンがけまでして皺を無くそうとは思わない。せいぜい干す直前に、手でパンパン叩いて軽く伸ばす程度だ。

 引きこもり時代からの怠け癖を引き摺っているのもあるが、ウィズが言うように、どうせ冒険に出ればガンガン汚れるだろうから真剣に着飾ってもしょうがない、と思ってるところもある。

「そこの慌てんぼ店主の言う通りだ。そして冒険者には売れないとなると一般人や貴族に売りつけたいところだが、すでにこれと似たような道具が出回っていたはずだ。木炭を熱源とした効率の悪いものだった覚えがあるが、機構や概念が似たようなものであれば特許を侵害してしまう恐れがある。よって調査の必要があるから、今すぐにこれを商品化して売るわけにはいかないということだ」

 バニルの説明に、そういうことか、と嘆息する。

 この世界の商品開発はアイディア勝負……しかし、そのアイディアで先行されているようならどうしようもない。

 そういえば、貴族令嬢であるダクネスのネグリジェはカラダのラインが透けて見えるほどの薄い生地だったな。……みんなでまとめて洗う洗濯物の中に見た覚えはないので、自前か実家で手入れしていると思うのだが、おそらくそこでアイロンのような道具も使われているのだろう。今度聞いてみることにするか。

 俺がそんな思考を巡らせている中、ウィズが困惑した表情でバニルに尋ねる。

「……こんな道具が一般にも出回ってるんですか? 私、今日初めて見ましたけど」

「ご近所付き合いもロクにしていないからだ。我輩が今着用している服も、お隣さんの女店主が皺を伸ばして渡してくれたものなのだぞ」

「ええっ!? そうなんですか!? というか、バニルさんはどうして私より上手にご近所付き合いしてるんですか……」

 ウィズが目に見えて気落ちするが、バニルは取り合わず俺に声をかけてくる。

「だが収穫がなかったわけではない。そこのぼっち店主の【夢】を見てきた小僧よ。皺を伸ばす前に、細かい水滴を広い範囲に吹き掛けていただろう。あれを再現するアイテムは作れないのか?」

「……え? カズマさん、私の夢を見たんですか? なんだか恥ずかしいですね……。どんな夢だったんですか?」

 バニルの言葉に反応したウィズが顔を上げて呑気に聞いてくるが、俺は慌てて。

「き、霧吹きのことか。ああ、それなら作れると思う」

「それなら既存の商品でアイディアが被るものはないから問題ないはずだ。今はライターの量産計画でこちらも手いっぱいだが、旅から帰ってきたらまた試作品を作って持ってくるがいい」

「あ、あの、どんな夢を……」

「わかったよ。考えとく」

 やるとは言っていない。

 すでにバニルに売りつけたライターの権利などで、一生働かなくても済む財産が手に入ることが確定している以上、頭脳労働すらも勤しむのは面倒くさい。今日作った疑似アイロンは、ロリサキュバスに対するお詫びも兼ねて興が乗ったから作っただけだ。

「そうか。せいぜい考えておくがいい」

 バニルが妙にしつこく念を押してくるが、はいはいと適当にかわす。

 相手にしてもらえなかったウィズが若干泣きそうになりながら。

「ど、どんな夢を……はぁ、もういいです……。それにしてもカズマさん、この街のサキュバスと親しくなってたんですね。お二人で旅行ですか。いいですね、楽しんできてください」

「……いや? 二人で行くわけじゃなくて、ウチのパーティーメンバーも一緒だけど」

「え?」

「え?」

「え?」

 俺とロリサキュバスとウィズの間で、疑問符が飛び交った。

 ……。

「ま、待ってください。今回の旅、もともとカズマさんの一人旅というわけじゃなかったんですか? 観光旅行じゃないんですか?」

 ロリサキュバスがそんなことを言ってくるが。

「いや、紅魔の里に行くって言っただろ。行くのを決めたのだってウチのめぐみんに頼まれたからだし、あの辺りは強力なモンスターが犇いてるらしいから俺一人じゃ辿りつけるとも思えない。パーティーを引き連れての冒険の旅になる。それに、目的地の里も魔王軍の襲撃に遭ってるらしいから、どっちにしても楽しい旅行、楽しい旅路というわけにはいかないぞ。……精気の確保に困ってるって言うから、それなら着いてくればいいじゃないかと思ったことを口にしただけだったんだが」

「そ、そうなんですね……ああ……私、カズマさんはお金持ちだから、今更冒険の旅なんてしないと勝手に思っていて……」

 それに関しては俺も同感だ。

 本来なら屋敷に引きこもっていたい。旅に出るにしても、安全が確保された場所での観光に留めておきたい。そんな俺の考えは、ロリサキュバスが俺に抱くイメージと大差ない。

 今回はめぐみんのツンデレな態度に気を良くして、つい危険な紅魔の里行きを決めてしまったが、次回からは二度と厄介事に首を突っ込まないようにしよう。誰になんと言われようが乗せられることなく、純然たる決意を以て、温い人生を送りたいものだ。

 それはともかく。

「誤解させていたならすまん。悪いが、今回に限っては冒険の旅になる。観光旅行はまたの機会にな」

「は、はい……」

 俺が重ねて言うと、ロリサキュバスは肩を落として頷いた。

「あ、あの、気を落とさないでください。安全安心の観光旅行というわけではなくても、パーティーに同行して、大勢での冒険の旅もきっと楽しいはずですよ!」

「そ、そうですね……!」

 ウィズが元冒険者の立場からか励まそうと声をかけると、ロリサキュバスの表情が僅かに明るくなった。大人数での和気藹々とした旅行を想像しているのだろうか。

 しかし、バニルが口を挟んでくる。

「ちなみに小僧のパーティーメンバーには悪魔を目の敵にするチンピラアークプリーストもいて今回も当然くっついてくるから、正体を隠して旅路に同行することも無理――」

「う、うああああーっ!」

「バニルさん!」

 

 それから泣き出してしまったロリサキュバスを宥め、ウィズがバニルをポカポカ叩いてるのを放置して、俺達は店を後にした。

 時刻は深夜。

 すでに人々は寝静まる時間で街灯も火を消していたが、俺は千里眼スキルで夜目が利くし、今日に限っては月から降り注ぐ光が一般人でも通行に困らない程度には明るく夜道を照らしていた。

 馬小屋を拠点にしていた時期には天井に空いていた穴から毎日眺めていた月だったが、屋敷で暮らし始めてからここ数ヶ月、まったくと言っていいほど気に留めていなかった自分に気付く。この世界の月の満ち欠けの法則は地球のものとほぼ同じ――おそらくあと数日で、満月になるはずだ。

 夜道を歩きながら、まだちょっと鼻をすすっているロリサキュバスと言葉を交わす。

「……では旅先で、夜に合流して精気を頂くということでいいんですね?」

「ああ、悪いな。旅行らしい旅行にならなくて。いつか埋め合わせはする」

「いいんです。思い返してみれば、【夢】の地球では何回か旅行していますし」

 ロリサキュバスが言う通り、地球を舞台にした【夢】の中で、初回の電気街に限らず俺達は何度も遠出をしていた。記憶と知識にある限りの地球上の都市を巡りに巡って、俺の記憶の補完と、ロリサキュバスの勉強に役立てている。セックスをすることもなく観光だけに充てる回もあるくらいだ。

 ロリサキュバスが不安そうに聞いてくる。

「でも私、戦う力はないんですよ。そんな危険なところに行って大丈夫でしょうか……?」

「ギルドからもらったモンスター情報に目を通したけど、道中で空を駆ける類のモンスターはグリフォンくらい……しかも生息数は極端に少ないみたいなんだ。だから周囲を警戒しつつ、空から追ってくればいいと思う。俺も敵感知スキルで空を警戒しながら進んで、反応があれば合図を送るし、里に着いても本当に危険な状況ならすぐに引き上げるつもりだから」

「なるほど、わかりました。……それでは私は、しばらくお店を開けることを上司に伝えてきますので」

「おう。また明日な」

 分岐路で手を振って別れ、ロリサキュバスの姿が夜闇に紛れるまで見送ってから、俺も屋敷への帰路につこうとしたが。

「あー……ウィズにテレポートの話つけるの忘れてたな」

 そう思って足が止まる。

 ……別に明日でいいか。

 明日やれることは、明日やろう。今日やらないと困るという話でもないし。

 そんな、引きこもり時代の思考に戻りつつある自分に苦笑しつつ、俺は踵を返すことなくそのまま屋敷へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 私がカズマさんの旅についていく旨を、シフトリーダーに伝えたところ。

 

「へぇ、いいわね。いってらっしゃい」

「あ、あれ? いいんですか? そんなあっさり」

 先日の勉強会で、カズマさんの話で盛り上がる先輩方を放って逃げ出したこともありましたし、当のカズマさんと旅行に行くなどと知られたらまた騒ぎになりかねません。ですので、てっきりお店の規律がどうとか小言を並べられるくらいは覚悟していたのですが。

 ですがシフトリーダーは本当になんでもなさそうな顔で言います。

「元々カズマさんの予約が入っていたわけだし、禁断の24時間コースで買い上げられた時間をお客様とどう過ごそうと自由よ。デートしてもいいし、お客様の冒険の支障にならないようならセックスしてもいいし、それこそ旅行に同行したって何の問題もないわ。……また他の子は騒ぐかもしれないけど、そんなのは男っ気のない連中のやっかみと思って放っておきなさいな。お店の制度としては何の問題もないのだから」

 シフトリーダーのそういうさっぱりした態度はありがたくはあるのですが。

「うーん……そんな色気のある話ではないんですよね……。そもそも旅に同行という形でもなく、カズマさんはパーティーメンバーと――青鬼と行動するので、私はこっそり後ろから着いていって、夜になったら精気を吸うために合流することになっています」

「あら、そうなの?」

 シフトリーダーが不思議そうに言ってきますが、これに関しては私もまだ微妙に不本意です。確かにカズマさんにこの話を持ちかけられたときは「ついてくるか?」と言われただけで、「一緒に旅行するか?」とは言われていなかったのですが、それは屁理屈というものでしょう。

 ですが青鬼がいる以上ヘタな接触が命取りになりかねないのも確かですし、カズマさんがいないアクセルに残っても精気の確保に苦労するのも確かで。私は渋々、夜にだけ合流する案を受け入れたのでした。

「……だったら貴女、日中はヒマになるのよね?」

 シフトリーダーが、何か考えているのか顎に手を当てながら言ってきました。

「はい、まぁ……ヒマといえばヒマです。どうせならそれなりに観光したいと思ってますが、土地勘のない場所でどれだけ遊べるかもわかりませんし」

「それなら一つ頼まれてくれないかしら。……今ね、このお店の支店を他の街にも広げていく計画があるのだけれど、紅魔の里にもお店を開ける下地があるかどうか見てきてほしいのよ」

「え、ええっ!? そんな計画が?」

「ええ。他の街でも安定的に精気を確保できるようにしたいって要望は結構出ていて、それで支店を出そうって計画になってね。特に王都ではもう話が結構進んでいて、私のパトロンが騎士団でも感知されないような部屋を用意してくれて、そこで開店準備が始まってるわ。今は、万が一踏み込まれた際の逃走経路を準備している段階ってところ」

「ほへー……いつの間に」

 この話が実現するようなら、他の街でも安全に精気を得ることができるようになるでしょう。それに、昨日までの私のように急な事情で精気不足に陥った子がいた場合でも、シフトを支店間で遣り繰りして補填することもできるでしょうし、この街に引きこもりがちなサキュバスもシフト調整という名目で遠出する切っ掛けを得ることができます。

 好き放題食い散らかしているという他の領地出身のサキュバスには面倒な話かもしれませんが、一時の満足と、中長期的な安全安定を求めるなら、後者の方が望ましいはずです。

 そんな、支店を開くことでの展望が頭の中で一気に浮かんでいたところで、シフトリーダーは続けます。

「ただ、紅魔の里は遠隔地ということもあって調査も後回しになってるの。だから貴女が旅行に行くのなら、ついでに確認してきてほしいと思ってね。逃走経路を用意しろとまでは言わないから、里の年齢層や男女比などを調べて、そこで開店するメリットがありそうかどうかくらいまで調べてきてくれればいいわ。……これは業務命令じゃなくて、あくまでお願い。まず旅先を楽しむことを第一に考えてくれていいし、かの有名な紅魔の里、もし命の危険を感じるようなら調査なんて放り捨てて逃げ出して構わないから」

「……はい。わかりました」

 素直に返事をしながらも、私はシフトリーダーの話に微妙な悔しさを覚えました。

 シフトリーダーは、初めてカズマさんを紹介してくださった時といい、『はじめてだから失敗してもいい』という保険をかけた上で新しいことを提案してきます。……いえ、それが、未熟な私に対する気遣いというのもわかってはいるのですが、私としては最初からそんな心構えで臨みたくありません。はじめてのお客さんでもできるだけ満足させてあげたいですし、この件に関しても、もっとお店に貢献したい、もっとお店に恩返しもしたいのです。

「わかりました。調査、がんばります」

「ええ。よろしくね」

 のんびりした表情のシフトリーダーを前に、私は密かに決意を胸に、拳を握りました。

 

 翌日。

 カズマさんが出立したのを確認してから、私も爆乳リッチーにテレポートで転送してもらい、青鬼から感知されない範囲を維持しつつ上空からカズマさんのパーティーの後を追いました。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「……すかー…………」

「…………こんのガキー!!」

 

 里へ続く街道で、パーティーメンバーで身を寄せ合っての野営中。

 周囲警戒の番と睡眠を交代で取ることになって、今は私とカズマが起きて見張りをする番だったのですが。

 私はカズマを置いて一人、眠りこけてしまいました。

 ……いえ、まだ完全に眠りに落ちたわけではありません。カズマの怒った声が耳に入ってくるのがその証拠。今は、睡眠を求める本能と、起きてカズマと見張りを続けなければと考えている理性が脳の中でせめぎ合っている状態でした。

「……すー……すー……」

 自分の口から漏れる寝息を、まるで別の人物が発したものを第三者として聞いているかのような、理性と本能を境目に自分が分離してしまったかのような不思議な感覚です。

 しかし、起きなければ、起きなければ、と頭の中では思っていても、身体は思うように動きません。身体の支配権はもうほとんど、眠りを求める本能の方に偏っているのでしょう。

「はぁー……」

 カズマが大きなため息を発したのが聞こえます。

 ああ、怒らないでください。いえ、悪いのは私ですし、カズマが怒るのは当たり前なのですが、せめて優しく起こして下さい……。

 そう思って、これからされるであろう折檻に心の中だけで構えていたのですが。

「ったく……しょうがねえなぁ」

 そんな、打って変わったように優しくなったカズマの声が耳をくすぐりました。

 ……あれ? いいんですか? 今ちゃんと起こしてくれればすぐに起きられると思いますよ? 肩をぽんぽん叩かれただけでも、すぐに理性が身体の支配を取り戻して目覚める自信があるのですが。……でもカズマが許してくれるのなら、このまま眠っちゃってもいいのかもしれませんね……。

 そんな風に、眠気が理性すらも浸食しはじめたとき。

「しょうがねえなぁ」

 カズマがいつもの口癖を繰り返したのと同時に、背後から温かいものに包まれました。

「っ……!?」

 背中に感じるじんわりとした温かさ。これは、人の、体温。

 カズマが、私に、背後から、覆い、かぶさって。

 カズマの熱い吐息が、耳に当たるのを感じて。

「…………!」

 状況を把握すると同時に一気に目が覚め、血が温度を上げて全身を駆け巡ります。

 私はカズマに背中から抱きつかれていました。腕をお腹に回されて、ぎゅっと抱きしめられ、髪に顔を突っ込まれて、首筋をわずかに掠める鼻息をこそばゆく感じて。

 

 嬉しい。

 

 この場には、アクアやダクネスのようなもっといやらしいカラダの持ち主がいるというのに、カズマは私を真っ先にセクハラのターゲットにしたのです。

 見張り番なのに眠りこけてしまった私に対するペナルティ、という建前があるからやりやすいというのもあるのでしょう。しかしそんなことを差し引いても、まず私のカラダを目当てにしてくれたことに、私のカラダにそうする価値があると感じてくれたことに、私の心は無上の悦びを感じていたのです。

 ……頭の中の冷静な部分では、何を沸いたことを考えているのだと自分自身に呆れかえっているところもあります。いくらペナルティとはいえ、女性としてここは怒るべきでしょうと、理性の部分では思っています。

 ですが、私のカラダは、カラダを支配している本能は、先ほどはあれほど感じていた眠気すらもあっという間にどこかに吹っ飛んでいて、すっかりカズマを受け入れる体勢になっていました。

「ああ、やべえ。なんて綺麗な髪なんだ……」

 カズマがそんな呟きとともに、私の髪をそっと撫でます。

 私よりもずっとずっと大きな掌で、何度も、ゆっくりと。

 そんな仕草だけで、貞操の危機を感じていたはずの理性が、冷静だった自分が、溶けていくのを感じます。くすぐったく、気持ちいい。

 好きな男性に触られているというだけで心はここまで無防備になれるというのですから、現金なものです。

 恋は盲目と言います。物語の中でその言葉に触れたときには、いくら恋焦がれているとはいっても盲目になるなんて……冷静な自分を見失ってしまうなんてありえないことだなどと偉そうなことを考えていたこともありますが、こうして好きな人に触れてもらうことだけでこんなに気持ち良くなれるというのなら、恋に盲目になるのもしょうがないことだと、今では思えます。

「すっ……ふっ、はっ……」

 熱くなった体温が吐息の頻度と温度を上昇させますが、私はなんとかカズマに気付かれないようにと、必死に、呼吸が音をたてるのを抑えました。口を大きく開いて、その奥の喉に空気だけを通すようにしながら。

 カズマは私が眠っていると思っているから、セクハラを続けているのです。この瞬間がずっと続いてほしい。ずっと抱きしめて、髪を撫でてほしい。気持ち良くくすぐったいこの空間を保っていたい。

 そう思ったことから、私は呼吸と身動ぎを必死に抑えていたのです。

「はっ……はっ」

「ふうっ、ふうっ……!」

 しかしそんな私の願いも虚しく、次第に呼吸が荒くなってきたカズマは、私の髪を撫でる手を下へと下ろしてきました。

「ふうっ!」

「っ……はっ……!」

 胸と、大事な部分。

 カズマの手が、衣服の上からそれらを擦って、思わず声が漏れそうになりました。

「ん……、ほうほう」

「はっ……んっ……んぅ……!」

 とうとうセクハラが次の段階に移ったということなのでしょう。

 甘く蕩けるような空間が、淫靡なものへと変わっていきます。

 脳裏に再び危機感が芽生えかけますが、次のカズマの言葉が一瞬でそれを吹き飛ばしました。

 

「胸、大きくなったな……」

「!?」

 

 嬉しい嬉しい嬉しい!

 

 里を出て以来、自分が成長していないことを確かめるのが怖くて測定魔法を受けたこともありませんでしたが、カズマがこう言ってくれる! 普段から、爆裂魔法を撃ったあとの無防備な私をおぶりながら胸の感触を楽しんでいる、カズマが!

「ああ、本当に大きくなってる……。やべぇ、興奮してきた……」

「はっ……はぁっ、はっ……!?」

 私のおしりに、熱い感触が押しつけられ、思わず震えました。

 これは、カズマの、カズマの。

「ふうっ、ふっ! ふっ!」

「はぁっ、んっ、はっ……! はぁっ……!」

 カズマがアレを押しつけたまま身体を上下に動かし、私のカラダに擦りつけてきます。そんな動作を繰り返す度に、どんどん熱く……どんどん大きくなっていきます。

 信じられない大きさです。

 いつぞやの夢の中で見せつけられたものより、大きいのではないのかと思えるくらいに。こんなのを入れられたら、私のカラダは耐えきれるのでしょうか。……おそらく、壊れてしまうでしょう。

 ……いえ、いっそ壊してもらうのも、いいのかもしれませんね。

 人の身体は一度壊れると、今度は壊れないようにと一回り丈夫に、一回り大きく成長すると聞いたことがあります。私の胸が大きくなったのも、きっとカズマのアレを初めて突っ込んでもらったとき、息が苦しくて胸が張り裂けそうになった覚えがありますから、あのとき私の胸は一度壊れ、それで大きくなったのでしょう。

 ……あれ? カズマのアレを受け入れたのは夢でしたっけ。いえ、やたらとリアルな夢でしたから、現実の私にも影響したのでしょう。

 だったら今度は、おまんこをぶっ壊してもらいましょう。あのときより大きくなったカズマのアレを遠慮なく突っ込んでもらって、目茶苦茶に壊してもらって、カズマのアレを受け入れられるよう作りなおしてもらうのです。私のカラダを、カズマのアレに特化した、カズマ専用にしてもらうのです。

 そうなると、中途半端な大きさのモノを突っ込まれても二度手間ですね……。完全に大きくなったところで、私のおまんこに突っ込んでもらわなければなりません。

「ああ、めぐみんのカラダ、気持ちいい……ふっ、ふうっ……おっ?」

「んっ、はっ、はぁっ……!」

 私は起きていることを悟られないように最低限の動きで、カズマの動きに合わせるようにカラダを捩りました。もっと大きくなってくださいと願いを込めながら。

「ああ、やべぇな。めぐみんは寝ていても、俺を興奮させてくれるんだな……」

「はぁっ、んっ、ふぅっ」

 その通りですよ、と口にしたいのを堪えて、カズマのアレと私のカラダを擦り合わせる動きに集中しました。

「ふっ! ふっ、ふうっ!」

「はっ……はっ……はっ……!」

 カズマのアレはどんどん大きくなっていきます。

 その度に、カズマが私の胸を掴む力は強くなり、ぱんつの上からおまんこをいじる手の動きも乱暴になっていきます。

「ふっ、ふおっ、ふっ!」

「んくっ……! はっ、んっ……!」

 乱暴にカラダを弄る動きに痛みを感じながらも、私は、カズマが興奮してくれているからこそ一心不乱に私のカラダを弄り続けているのだと、嬉しさを覚えていました。

 ああ、もっと乱暴にしてもらって構いませんよ。なにしろ私は、あなた好みの『優秀な紅魔族』に生まれ変わる予定なのですから。どうせなら心もカラダも徹底的に、あなた好みに作り変えてください。全部、壊してください。

 そんな私の心の願いが通じたのか、カズマの動きは更に乱暴になっていき。

「おっ、おおっ! ふっ!」

「あっ! はっ……んっ! んくっ!」

 私の興奮も高まって、声が色を纏って昂ってきました。

 ああ、いけない。つい興奮してしまいましたが、私が起きているのを悟られてはこの行為は終わってしまうでしょう。あくまで寝てるフリを続けなければ。もっと息を殺して、もっと声を抑えなければ――!

「めぐみん、これは独り言なんだがな――」

「はっ、はっ……?」

「――眠っていても、カラダに刺激が加えられれば、声が出るのは自然なことなんだぞ」

「あ、あ……あああああああああっ!!!??」

 カズマの甘い囁きに、私の心は壊れ。

 喉からは大きな喘ぎ声が、堰を切ったように勝手に流れ出しました。

 とっくにバレていただとか、それでもカズマは私にセクハラしていただとか、ぱんつをズラされて膣に指を突っ込まれただとか、首筋を噛まれただとか、いろんな思考と現状認識がぐちゃぐちゃに頭の中を掻き回して、掻き回して。

「めぐみん、イけっ、寝ててもイくのは普通だぞ! 普通のことなんだぞ!」

「あぐっ、ああっ、んあああああああっ!!!!!???」

 私は、絶頂に達しました。

「んああああっ! あっ! かはっ、はっ、あああ……」

 カラダの喘ぎと律動と共に、股ぐらから温かい液体が漏れ出します。カズマによってずらされたぱんつをもびしょびしょに濡らし、辺りにアンモニア臭が広がりました。

 恥ずかしい。

 快楽に支配された思考の中でも、わずかに残った理性が気恥ずかしさをもたらしてきますが。

「おー、漏らしちゃったか。それだけ俺の動きで気持ち良くなってくれたんだな。嬉しいぞ」

 そんなカズマの声を聞いただけで、あっという間に救われた気分になりました。

「はぁ、はぁー……はぁ……」

 荒げていた息が、時間の経過とともに落ち着きを取り戻してきて、上がりきっていた体温も下がり、夜風のひんやりとした涼しさがカラダを冷やしているのを自覚できるようになってきて。

「……?」

 カズマの体温を感じない――あれほど密着していたカズマが私から離れていることに気付き、その姿を確認しようと、ずっと閉じていた瞼を開けようとして。

「!」

 俯いていた私の目の前に、いつの間にか回り込んできていたカズマの脚がちらと見えて、慌てて固く目を閉じました。

 いけません。思わずカズマの顔を見てしまうところでした。

 今、カズマの顔を見たら、きっと気恥ずかしさに耐えられません。それに――。

「お、めぐみんはまた眠っているのかな?」

 そうです。まだ私は眠っていますよ。

 だから続きをしてください。カズマのアレを、私の膣内に突っ込んでください。

「んー……?」

 カズマは訝しがる声を出しながら、私の周りをうろつきはじめました。

 固く目を閉じた私の脳に入ってくる情報は、カズマの足音と、カズマが着ている服が起こすわずかな衣擦れの音だけ。

「……」

 カズマは無言のまま、私の周りをぐるっと一周回ります。音を聞くことだけに集中すれば人の位置も案外わかるものなのだなぁなどと、私は微妙にズレたことを考えていました。

「……」

「……」

 しかし逆に、カズマから発せられる音が途絶えてしまえば、とたんにその居場所はわからなくなります。足を止めたのか。それとも意図して音を出さないようにして移動は続けているのか。

 今、貴方はどこにいるのでしょう。

 目を開いてどうにか確認したいという誘惑に駆られますが、またカズマに起きていることを悟られるような事態になってはいけないという思いから、私は固く、固く目を閉じて続けていました。

 最初とは打って変わって、今度は眠りの状態を維持することこそが、固く目を閉じ続けることこそが、理性の役目。反面、本能の方は、今すぐにでもカズマのアレを受け入れようと膣をひくひく動かしているのがわかりますが、幸いにも今の段階では理性の方が身体の支配権を得ていました。

 視界を覆う瞼は、私の理性を守る最後の仮面。今瞼を上げてカズマの顔を見てしまえば、私はきっと、カズマが好き、カズマとエッチしたいという本能に支配され、カズマのアレに食いついてしまうでしょう。そんなはしたない女だとは思われたくありません。あくまでカズマの方から、突っ込んでもらいたいのです。

 ……結局のところ最終的にはカズマに乱暴にしてもらうのを望んでいることを、理性と呼べるかどうかは怪しいところですが。

「……ふっ」

「――!」

 突如、背後から耳に吹き掛けられる、温かい吐息。

「ぁ……! はああっ……!」

 ぞわぞわとした感覚が一気にカラダを駆け抜け、思わず力んだことで愛液が膣口から漏れたのを感じました。擦り合わせた太ももが、水音を立てます。

 そして今度は横から、肩をとんとんと叩かれました。

「あっ! はぁっ……!」

 それだけで私のカラダはびくんと跳ねました。肩を叩かれただけでこんなに反応してしまうなんて、どうかしています。絶頂に達したばかりで敏感になっているのでしょうか。

 そして、私が震えるカラダをなんとか抑えつけようとしている間に、カズマの気配はまた途絶え。

「……」

「っは……あっ……。……っ?」

 いつの間にか再び私の前に回り込んでいたカズマが、カチャカチャとベルトを緩める音が耳に入りました。ああ、散々焦らされましたが、とうとうカズマのアレが、私のカラダを貫くのでしょうか。

 そう思っていましたが。

「……っぁ……?」

 膣に突っ込まれると思っていたカズマのアレは、私の唇に押しつけられました。

 むせかえるような強いカズマの体臭と、固くて熱い、肉棒の感触を感じます。

「んむ……」

「ふう……ふうっ……」

 ああ、私はこれから口の中すらも、カズマのアレに合うように、カズマのアレが気持ち良くなるように、壊されて、作り変えられちゃうんですね……。望むところです。

 そう思った私は、カズマの逞しい肉棒を口の中に受け入れようと、唇を開こうとして。

「ふうううっ!」

「がひゅっ!?」

 カズマは、僅かに空いた隙間にねじ込むように、一気に肉棒を侵入させてきました。

 抵抗の間もなく、肉棒の先端は喉奥に達し、私の鼻先がカズマのお腹に当たります。根元まで咥えこんでしまったのでしょう。

「んがふっ!? が! ぶひゅっ!」

 苦悶の声が、鼻から漏れます。

 カズマの太い太い肉棒は私の喉奥を無理矢理こじ開けており、そればかりか口の中をいっぱいに埋め尽くし、唇を限界まで広げさせ、今にも顎が外れてしまいそうでした。

「ああ、やっべえ、口の中まで最高かよ! 犯してやる! 犯してやるからな!」

「は、はひ……ぶひゅっ」

 カズマは遠慮することなく、腰を動かし始めました。

 喉奥から引き抜かれた肉棒が私の舌をなぞり、唇で咥えこむ形まで戻されたところで、また勢いよく突っ込まれます。

「うおおお!」

「んっ! ふぐっ!」

 再び喉奥を無理矢理こじ開ける、肉棒の感触。

 それに加えて今度は肉棒の先端から何らかの液体が飛び散り、直接食道に流れ込んだのを感じます。先走り液というヤツでしょうか。

 ……カズマが私のカラダで気持ち良くなった、証。

「ふうう! 最高だぞ、めぐみん!」

「んふ……! ふぎゅっ! ふぐっ!?」

 カズマが好き勝手に腰を動かすのを、私は瞼を閉じたまま、一生懸命受け入れました。

 こんな状況になって眠っている女性なんているわけがないでしょうし、もう寝たフリなどどうでもいいのですが、ただ、先ほども考えたとおりこの瞼は私の理性を保つ最後の仮面でした。

 私は一心不乱に快楽を得ようとするカズマに、口の中を乱暴に犯す肉棒に愛おしさすら覚えてきており、むしろ自ら受け入れようと頭を動かすことすら始めています。積極的に、自分を壊そうとしています。――これで死んでも構わないと思うくらい、無茶苦茶に。

「んぶっ! んぐっ! んちゅる! んちゅるるるるるる!」

「おおっ! おおおおっ!」

 ですが最後に残った一欠片の理性が、私が死んだらカズマは悲しむ、だから、死なない程度に自分を壊そうと、自らの頭を振る速度に加減を与えていました。

 時折唇を窄めて肉棒の先端吸いついたり、舌を絡めて舐め上げたりして、その間に鼻だけで呼吸を交えることでなんとか息をつなぎます。

「おおおおっ! いいぞ、めぐみん!」

「んふっ……ちゅ、ちゅるっ、ちゅぱっ!」

 カズマは私の拙い行為に、喜んでくれます。

 嬉しい。

 おっぱいがなくても、貧相なカラダでも、悦んでもらえる。

 そしてこのカラダをぶっ壊して、カズマ専用になれば、もっと悦んでもらえるはず。

「んぢゅるるるっ んぱっ! ちゅく、ぶっ、んびゅっ!」

 呼吸が落ち着いたので、再び肉棒を奥まで咥えこみます。

 苦しさを感じながらも喉奥を使って、肉棒を扱きました。

「んぶゅっ! んぐっ! んふっ!」

「ふ、ふううう!!!」

 カズマの雄叫びとともに、肉棒が、更に膨らみます。

 まだ最大サイズじゃなかったことに驚きながらも、これは射精の直前の証なのだと本能的に感じることができました。

 私はラストスパートにと、頭を振る速度を上げました。

「んぎゅっ! んぶふっ! んんんんんっ!!!!」

「ふううう!! 出る!? 出る!! 出すからな! うおおおおおおおお!!!」

「んぶうううううううう!!???」

 最後にカズマが一際勢いよく肉棒を突っ込み、喉の、奥に、奥にと差し込まれたところで、爆ぜました。

「うおおおおお!」

「んぶうううううう!!?? ばはっ!? がっ、がひゅっあ! ばひっ!?」

 爆ぜた先から喉の奥に直接流し込まれる、どろりとした液体。

 精液が、食道を通じて、胃の中へと、落ちて行きます。

 そして、カラダの中に送り込まれる水分に押し出されるように、私の股ぐらから再び液体が流れ出し、アンモニア臭がまた辺りに漂いました。ですが、そんなことはもう気にしていられません。

「ふっ、ふううっ、ふほっ……」

「んぐっ……ん、んん、はむちゅる」

「おおっ!?」

 私は肉棒を深く咥えこんだまま、舌を動かしたり唇を窄めたりして刺激して、精液を更に絞り出しました。どうせなら、限界量まで出し切って欲しかったから。

「ううおおおお、おっ、おっ!」

「んふ……んみゅ……ちゅ……」

 私の舌の動きにカズマは何度かビクンと反応し、その度に精液が更に流し込まれました。

「は……んふ……」

「は、はああ……よかったぞ、めぐみん……」

 カズマはそう言ってゆっくりと、肉棒を引き抜いていきます。喉奥からぬぽっと抜き出た瞬間、息苦しさが解消されると同時に、どこか名残惜しさを感じてしまいますが、引き抜かれていく過程で先端に僅かに残っていた精液が舌に触れたことではじめてその味を認識し――。

「……うえぇ……」

 これまで口にしたことのない変な味に、苦悶しました。

 ですがこうなると、私の味覚もぶっ壊さなくてはなりません。カズマの精液を、おいしいと感じられるようにならなければ。

 そう思って口の中で精液を転がしてみたものの、放出された精液は喉に直接流し込まれたものが大半で、口の中に残っているのは僅かな量……あっという間に唾液と混じって薄まってしまい、味もすぐに無くなってしまいました。

「ん……ごくっ……ふはぁあ……」

「ふうっ……ふっ……めぐみん……んっ」

「んっ……!」

 唾液と混じった精液を嚥下して息を吐いていたところ、カズマに唇を塞がれました。

「ちゅっ……ちゅっ……」

 ついばむ様なキスを、繰り返します。

 その間にカズマの大きな掌で、髪や、頬をゆっくりと撫でられ。

 ああ、私はカズマに愛されている。そんな実感を得ることができました。

 そして幾度かキスを繰り返し、唇が離れたところで、カズマが優しく声をかけてきます。

「……めぐみん、目を見せてくれ。夕焼けよりも綺麗な、君の紅色の瞳を」

「ダ、ダメです……」

 今カズマの顔を見たら、理性を守る仮面は剥がれ、私は本能だけの獣になっていまいます。だからお願い、見ないでください。

 そんな思考をまた繰り返して抵抗しようと瞼に力を入れたものの。

「めぐみん、愛してる。君がどんなに乱れても、俺は君の瞳に釘付けだよ……」

「あ、ああ……」

 甘い言葉と、私の頬をゆっくりと撫でていたカズマの掌が上がってきた動きに釣られ、私は瞼を――。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「おう、めぐみん。起きたか」

「……え……?」

 

 俺は、ようやく目覚めためぐみんに声をかけた。

 その頬は赤く、直接触れていないのにじんわりと熱を感じるほど、体温が上がっているようだった。

「大丈夫か? 汗びっしょりだぞ」

「え、えぇ……?」

 瞳を爛々と輝かせながらも、混乱しているのか辺りをキョロキョロと見回している。

 ……まったく、どんな【夢】を見ていたのやら。

「ほら、タオルやるから汗ふけよ」

「え、ぇ、え――」

 そう言ってタオルを手渡そうとしたところで。

 

「――『エクスプロージョン』」

 

 めぐみんの力無い呟きとともに放たれた莫大な魔力が俺の頬を掠め、そのまま背後に着弾し、辺りに破壊を撒き散らした!

 

「バカなの!? ねぇ、めぐみん、貴女ってバカなの!?」

 アクアが涙目で声を上げるが、俺はぐったりしているめぐみんを背負いつつ怒鳴り返した。

「いいから荷物まとめて逃げるぞ! 敵感知にビンビン反応きてる! 爆音に反応したモンスターが近寄って来てるんだよ!」

「だって! だって!」

 そう言って愚痴りながらも自らの荷物をまとめ始めたアクアに対し、めぐみんが俺の背後から本当に申し訳なさそうに口を開く。

「いえ、その、本能に身を任せたら、いつの間にか撃ってたというか――」

「ああ!? なんだそりゃ!? お前は本能に任せたら爆裂魔法撃つのかよ?」

「ま、まぁ結果的には着弾先にいたゴーレムを倒せたんだから、無駄撃ちではなかったじゃないか」

 確かに俺の敵感知にも反応しないゴーレムがたまたまにいたのには驚いたが。

 ダクネスの言葉に気を良くしたのかめぐみんが意気揚々と言う。

「そうです。あれはとても強大ですが、紅魔族が力を使うところを見せれば去っていく変わった習性を持つ魔道ゴーレムです。この辺りにはもっとたくさんいるはずですが、爆裂魔法を感知したのか後続はやって来ません。狙いどおりです」

「他のモンスターが寄ってきているって言ってるだろうが! ……ん? 紅魔族が力を使うところを見せれば去ると言ったな? だったら実際に魔法を放つ必要はないんじゃないのか? 魔法を使う前の魔力の奔流でも見せておけば去っていくとかじゃないだろうな?」

「……」

「こ、こいつ……!」

 この場に放り捨ててやろうかと一瞬考えるが、めぐみんは顔を真っ赤にして。

「だ、だって、私、カズマにとんでもない事されて―――」

「知らん知らん知らん! 俺は知らんぞー!」

「ほ、ほう。一体どんなことをされたんだ? ぜひ詳しく」

「いいから逃げるぞ! アクア、支援魔法!」

 俺はアクアに合図を送るが、しかしアクアは何かに勘付いたのかぼそっと。

「めぐみん。あなた、臭いわ……!」

「!!? ……ああ、ああああああーっ!! 『エクスプロージョン』! 『エクスプロージョン』! 『エクスプロージョン』ーッ!」

 めぐみんが突如取り乱し、暴れ出した。

 俺はめぐみんを落としてしまわないよう抱え直しながら声をかける。

「バ、バカやめろ! 撃てないと分かってても耳元で詠唱されると心臓に悪いんだよ! …………おいこら、魔力を絞り出そうとするな。命を燃やして足りない魔力を捻り出そうとするような雰囲気を出すな! そういうのはもっと締まる場面でやれよ!」

「うわああああーっ!? カズマさーん、なんか来てる! いっぱい来てるんですけどー!」

「ああくそ! お前が余計なこと言うから出発が遅れただろうが!」

「だって! だって!」

「な、なぁ、カズマにされたとんでもない事について詳しく……」

「いいから行くぞー!!」

 

 俺達は必死になって、その場を逃げ出した!

 

 

 

「大きくなってない……」

 

 ひととおり喚いて落ち着いてきたのか静かになっためぐみんは、俺に背負われたまま自分の身体をあちこちペタペタ触って、なぜか絶望していた。




女性視点での自発的目隠しプレイでした。

疑似アイロンは、ロボットポンコッツという昔の漫画を読んでいて主人公機が「ファイアとアクアのソフトを合わせて……スチームナックル!」とかやってたのでそこからの発想です。
掌から相手の内部に高温の蒸気を送り込むというなかなかえげつない技でしたが……あれ、カズマさんなら再現できるんじゃないですかね……。
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