○月×日。
今日は学校がお休みなので、私は一人で出かける事にした。
ソーニャちゃんも誘ってみたけれど、やはりいつもの調子で「行かない」と即答されてしまった。
殺し屋にだって息抜きくらいは必要だと思うんだけど……。
まぁ、そういうことを言っても仕方がないのはわかっている。
ソーニャちゃんはソーニャちゃんなりに休日の過ごし方ってやつがあるんだろうし。
休み明けに、お土産話いっぱいしてあげよっと。
そんなことを考えながら、私は鼻歌なんか歌いながら電車に揺られている。
向かうのは、二つ隣の街にあるショッピングモール。
最近出来たらしく、連日人でごった返しているらしい。
人混みは苦手だけど……やっぱり、一度は行ってみたいと思うのが人間だ。
お小遣いはそれなりにある。一体何を買おうかな……。
目的の駅に到着すると、電車内の人たちが一斉に動き出した。
皆、出口に殺到して押し合いへし合いの大騒ぎ。
私はどうすることも出来ず、ただ人の濁流に押し流されるしかなかった。
転ばないようにするのが精一杯で、足元に意識を集中しているといつの間にかホームの上に居た。
とりあえず、無事に降りることは出来たらしい。
人の波に揉まれながら、改札を出て道を歩き……。
そしてやっと、目的の場所がちらちらと見え始めた。
「うぅ……こんなに混むなんて思わなかった……」
こんな民族大移動みたいな人混みは、生まれて初めて体験するかもしれない。
この時点で結構体力を消耗してしまった。
買い物は後にして、まずはどこかで休もうかな……。
「うわー……」
広大なショッピングモールだ、どこかしら休む場所があるだろう……という淡い希望は見事に打ち砕かれた。
フードコートはもちろんのこと、そこら辺のベンチ、レストラン街、果てはトイレの前の椅子でさえ。
その全てに、誰かが疲れた顔してへたり込んでいる。
そして私は、その様子を見てただ呆然と突っ立っていたのだった。
いくら休みだからって……ここまで混むものなの?
休めそうな場所を探して、私はモール内をさまよい歩く。
もう、何が目的なのかわからなくなってきた……。
買い物をしようにも、どこへ行っても芋を洗うような大混雑でそんな気も滅入ってしまう。
やっぱり、今日来たのは失敗だったかな……。
はぁ……もういいや、一回りして何も無ければおとなしく帰ろう……。
数十分後、私はなんとかあの人混みを抜けだした。
とりあえずお店を一通り見たけど、結局特にめぼしい物も見つからず、私は来た道を引き返していた。
未だに、ショッピングモールへ向かっている人の列は絶えない。
これから地獄を見ることを知らないのか、それとも既に覚悟しているのか……。
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
しばらくして、駅に着いた。
来た時と同じように、切符を買って電車のホームへ。
向かい側のホームを見ると、かなりの大混雑だ。
逆に、私が今立っているホームは閑散としていた。
それは電車の中に関しても一緒だった。
椅子はすべて埋まっているが、行きの大混雑に比べればかなり空いていると言えるだろう。
私は扉の前に陣取って、外を眺めることにした。
「ふぅ……」
私は人知れず、ため息をついた。
あぁ、疲れた……。
こんな事になるなら、家でおとなしくしてたほうが良かったなぁ。
ソーニャちゃんが行かないって言ったのも、今ならなんとなく理解できる。
そう言えばお昼も食べないで戻って来ちゃった。
家に戻ろうか、それともどこかで食べていこうか……。
外の景色を見ながら、色々なことを考える。
ソーニャちゃんは今頃なにをしているのかな、とか。
あぎりさんも買い物に出かけたりするのかな、とか。
実はソーニャちゃん、休日はだらしなかったりして……。
くだらない妄想にふけっていると、窓の外の様子がだんだん見慣れている物に変化していった。
そろそろ着くかな……と思っていたその時。
お尻のあたりに、少しだけ違和感。
「……ん?」
なんだろう?
荷物が当たったのかな……。
そう思って、振り返ろうとした瞬間。
私の首に腕がかけられた。
「騒ぐな」
「え……」
「騒いだら、殺すぞ」
突然の事に、私の頭が追いつかない。
こ、殺すって……。
「それに、絶対に振り向くな。振り向いてもお前を殺す。いいな」
「あ……は、はい……」
もちろん抵抗できるはずもなく、私は素直に言う事を聞くほか無い。
声から察するに、若い男の……。
いや、もしかして男の子?
何故か聞き覚えがあるような……。
でも、私に男の子の知り合いなんてほとんどいない。
強いて言えば親戚に数人くらい居るけど、普段は会うことなんかほぼ無いし……。
あれこれ、的はずれなことばかりが頭に浮かんでしまう。
しかし、そんな思索は次の瞬間に全部吹き飛んだ。
「ひゃっ……」
彼の手が、私のお尻を乱暴に揉みしだき始める。
これってもしかして……。
いや、もしかしなくても痴漢?
殺すとか物騒な事言っといて、やることコレなの!?
その間にも、彼の手は私の体を撫で回していく。
片方の手はお尻を揉み続け、もう片方は私の胸へ。
彼は器用に、片手で服のボタンを外していく。
「や、やめて……」
「おとなしくしろ」
ボタンが外され、ブラジャーが現れる。
彼は、それを乱暴にめくり上げた。
こんなところで、そんな……。
お尻を揉んでいた手が、胸の方へと照準を定めたようだ。
両手が、私の胸に直に触れる。
「ひぅっ……んぅ……」
思わず声が漏れてしまう。
バレたらどうしようとか、状況がわからないとか。
ぐちゃぐちゃの頭を置き去りにして、体は正直に反応する。
まるで彼から操られてしまっているみたいに。
胸全体を、彼の手が包んでいった。
胸を揉みながら、手のひらで乳首が転がされる。
皮膚と乳首が擦れるたびに、私の体から力が抜けていった。
「はっ……!あっ、やぁっ……!」
必死に声をおさえようとしても、体の底からいやらしい声が出てしまう。
助けを求めようにも、私は脅されているし……。
横目で周りを見ても、誰も気づいていない。
でも、同時に気づかれても困る。
どうしたらいいんだろう……。
「あ、んっ!」
彼の指先が、私の乳首を摘み上げた。
その瞬間、体を電流が駆け抜ける。
色々策を弄しても、これのせいで全て吹き飛んでしまう。
ただ、快感に耐えるだけで私は精一杯。
「……乳首、立ってるぞ」
「た、立ってないもんっ……」
「そうか?」
「やぁっ!乳首、だめぇっ……!」
ぐりぐりと、強めに乳首をこねくり回される。
息が上がって、顔が熱い。
もうダメ、立っていられない。
私は近くにあった手すりに捕まって、辛うじて現在の姿勢を保つ。
「はぁ……はぁ……」
「さて、下はどうなってるかな」
「そ、そこはぁっ……」
片方の腕が、下半身に伸びていく。
私はその様子を、ただ見ることしか出来ない。
指の先端が足に触れた途端、そこの筋肉がびくん、と波打った。
体全体の神経が、鋭敏になってしまっているのが私にもよくわかった。
太ももの内側を、彼はいやらしい手つきで撫で回していく。
そのうち、皮膚と皮膚の接触面がぬるぬるしてきた。
汗では、ない。
「……感じてるんだな?」
「違うっ……」
「でも、もうぐしょぐしょじゃないか」
布の上から、彼が私の割れ目をなぞる。
あまりの刺激の強さに大声が出そうになったけど、彼の指が私の口に突っ込まれたことでそれは阻止された。
「騒ぐなって言ったろ」
「で、でもこんなのぉ……」
「やっぱり気持ちいいんだな」
指の動きが、だんだん加速していく。
さらに、割れ目の上にある突起を掠めていく。
「ほら、こんなになってる」
「いやぁっ……」
「直接弄ってやる」
とうとう、パンツの中に手が滑り込んできた。
生暖かい感触。
何度も何度も、割れ目を指が往復して。
ついでとばかりに突起を引っ掻いていく。
そして溢れ出そうな声は無理やり栓をされて、私の中で鈍く反響する。
体が、破裂しそう。
「ふぅ、んっ!んんーっ!」
、
「ほら、ここが良いんだろ?」
「やだぁっ……!」
彼は突起を摘んで、乳首と同じように乱暴に弄り倒す。
でも、刺激は胸の比ではない。
感情と体のボルテージが、一気に絶頂へと駆け上っていく。
そして、全身の筋肉が一気に硬直する。
「ふうっ、んうううううううううっ!!」
「……イッたか」
「ふぅーっ……ふぅぅーっ……」
体の緊張が解けて、今度は脱力感が一気にやってくる。
私、電車の中で……。
どうしたらいいのか、もうわかんないよ……。
もう、彼の思い通りになるしか無いのか……と諦めかけたその時。
唐突に、電車のドアが開いた。
駅の表示を見ると、目的の駅。
今だ!
体が咄嗟に動いた。
拘束を解いて、私は車外に飛び出す。
途中躓いて、ホームに座り込んでしまったけど、私は逃げ出すことに成功した。
直後に扉が閉まって、電車は何事もなかったかのように走り去っていく。
犯人の姿は結局わからないまま。
「お嬢ちゃん?どうした?」
そのまま呆然としていると、初老の駅員が不思議そうな顔をして私に話しかけてきた。
「あ、その……ちょっと、気分が」
「大丈夫かい?少し休んでくか?」
「いえ、大丈夫ですから……そ、それじゃあっ!」
「あっ、ちょっと!」
気が付くと、私はその場から逃げるように走りだしていた。
一刻もはやく、あの場所から離れたかったのかもしれない。
家に帰っても、私はまだ悶々としていた。
あんな事になって、まだ一日も立っていないのに。
私は普通に帰ってきて、普通の生活に戻っている。
もしかして、さっきのは夢だった?
でも体の疼きが、さっきの出来事は紛れもない現実だ、という事実を私に突きつけてくる。
「うぅー……」
あぁ、もう……。
今日はいろんな事が起きすぎだ。
私は布団の中に潜り込んで、右へ左へと体をうねらせた。
このまま眠ってしまえば、今日の事もすっかり忘れられるかな……。
天井を見つめながら、そんな淡い希望を抱いて。
その日はもう、眠ってしまうことにした。
「ソーニャちゃん、また何か技教えて!」
「またか。前に言っただろ、護身術とかそんなもんじゃないって」
「わかってるよー。格闘技とかじゃなくて殺人術とかでしょう?」
「そうだが……」
「ちかんなんて滅びればいい」
「……すまん」
「え?」
おわり。