『8/31』
「どんなに悲しくても朝は来るのね……」
私はこれ以上無いくらい、どんよりした朝を迎えた。
外にいる妖精は一匹もおらず、花の元気も無くなっていた。
「この私が子供一人にここまで左右されるとは思ってもいなかったわ」
今日もきっと来ない、子供の飽きというものは突然なのだろう。
「でも……さよならぐらいは言いたかったわ」
私なりに夏の最終日を楽しもうと考えた瞬間。
「ん? 森の中を駆け抜ける感じが? まっまさか?」
いやいや……そんなはずは……ない。
「聞きなれた足音」
そんなまさかが……あるかも!
「わっわっわっどうしよう」
私は慌てて自分の身だしなみを確認した。
「髪はちょっとボサボサだけど問題なし……のはず」
涙の痕はついて無いわよね?
うん! ばっちり!
「もうすぐ来る」
平常心……平常心……でいられるかな?
気持ちが抑えられないかも。
会った瞬間に襲っちゃったりして。
「あはは」
とか考えているうちに。
「幽香さ~ん」
コンコンと玄関を叩く音がした。
「ふぅ~」
私は深呼吸して玄関を開けた。
「こんにちは!」
楓は慌てて来たみたいで息を切らしていた。
「こんにちは楓」
私の心臓が楓に聞こえないか心配なくらいの
爆音が鳴っていた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
久々の楓を思わず抱きしめてしまおうと思ったが……耐えた。
平常心よ平常心!
「うんとね 実はこの数日間アルバイトをしてたんだ」
「あっそうなのね」
なるほど、だから数日間来れなかったのね……。
なによ! 言ってくれればいくらでもあげるのに。
「幽香さんでもそういう格好するんですね」
「え?……ああっ!?」
上はシャツ下は短パンというそっけない格好をしていた。
この子の前ではおしゃれなお姉さんを維持したかった……。
「きょっ今日は出かける予定が無かったからね……まっ立ち話もなんだし お茶でも飲みながら」
「うん」
楓をテーブルに座らせて、ハーブティーを用意した。
暑かったせいか、楓は一気に飲み干してしまっていた。
「まだ飲む?」
「……うん」
楓は何かを言いたそうにしていた……何だろう?
と思いつつ、私は飲み物を用意するために席を立った。
「あっあの幽香さん」
「うん?」
さっきから何かを言いたそうにしていた楓が
とうとう切り出した。
席を立った私に近づいて来た。
「えーとね」
「どうしたの?」
モジモジしている楓がとても可愛かった。
思わず襲い掛りそうになったが我慢した。
「幽香さん左手を出してください」
「?」
何かしら?
楓がポケットから手を出すと手になにかを持っていた。
「これを」
「!?」
私の左手の薬指に、指輪をつけてくれた。
「楓!?」
「これを買うためにアルバイトをしてました……安物だと思いますけどって幽香さん!?」
嬉しいやら、驚きやら、色んな気持ちが重なって
思わず腰が抜けてしまい。
さっき拭いたはずなのに涙が出てしまった。
「値段なんてどうでもいいのよ ありがとう楓」
避けられていると思った自分が恥ずかしい。
こんなに思われているのに……。
信じられなった自分が情けない……。
「夏休み中に色々お世話になったのでお礼にと思って」
「バカね! そんなの……そんなの……気にしなくてもいいのに!」
「幽香さん……」
楓は私の涙を口で啄ばんでくれた。
思わず抱きしめた。
どんなに抱きしめても足りない……もっと……もっと楓が欲しい。
「「んっ」」
楓の口を塞いだ、舌で口内を犯す。
「「んっんん」」
「「うんっんん」」
「「んっん」」
口を離すと楓の顔が赤く溶けていた。
「幽香さん……」
「ベッドに行きましょうか?」
「うん!」