幽香さんの家にほぼ毎日行くようになったある日のこと。
「行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
お母さんにいつもの所に行くことを伝えて、
幽香さんの所に向かった。
「今日も暑いけど頑張ってあの森を抜けますか」
絵の方はほぼ毎日行っているので、ほとんど出来上がっていた。
「幽香さんに会うのが目的になっているな~」
最初に比べてだいぶ早く着くようになった、
とはいえ遠い事に変わりはない。
……
……
「ケン ケン パッ ケン ケン パッっと あれ?」
森の中を軽快に抜けて来たけど雲行きが怪しくなってきた。
「まずい降るかも!」
早く抜けなきゃ! と思ったが。
ポッ ポッ ポッ
「ひゃーまずい」
いま、いるところは少し人里寄りだけど……そこで選択肢
1.人里に戻る
2.走って幽香さんに会いに行く
当然『2』だ
「急げ急げ」
走って駆け抜けたが。
ポツポツ降っていた雨がザァー!! に変わった。
「うわぁ まずい まずい ん?」
丁度草と木が傘になっていて濡れない場所があった。
あそこで雨宿りしよう。
「とりあえず助かったー」
止むまでまで待つかー。
……
どれぐらい待っただろうか? 全然止まない。
膝を抱えてうずくまっていたら。
「ぴっー 冷たい!」
葉っぱを伝って首筋に雨が垂れてきた。
ぐ~っとお腹が鳴った。
「お腹減ったよ~」
幽香さんのお昼をたくさん食べたいから、
最初の日以降はおにぎりは置いてきたのが、今日は失敗だった。
雨も止まないし…… どうなっちゃうんだろう……
ぐすん。
「ふえ~ん幽香さんに会いたいよ~」
「呼んだかしら?」
ばっと顔を上げた。
「ん!?」
そこには傘を差した素敵なお姉さんが手を振っていた。
「雨が降ってきたから迎えに来たの 入れ違いにならなくてよかった……」
「幽香さ~ん」
思わず抱きついてしまった。
「あらあら」
「あっ! ごめんなさい!」
「ふふ いいわよ 心細かったんでしょ?」
「うん……」
「ほら もう少しだから 一緒に歩いていきましょ?」
「うん!」
濡れないように密着して一緒に向かった。
……
……
少し歩いて幽香さんの家に着いた。
「お風呂はそっちにあるから入っちゃいなさい」
「いいんですか?」
「ええ いいわよ 私はお昼の用意して待ってるから」
「やったー」
僕は脱衣所で濡れた服を脱ぎ浴室に向かった。
「わー」
お花の匂いがする素敵な浴室だ。
体を適当に流して、紫色が着いたお湯に浸かった。
「いい香り……」
ふぅー 頭が覚めてきた……。
あっ! 雨が降った時点で絵は描けないんだから、
あそこの選択肢で人里に戻ればよかった……。
まっいっか、幽香さんに会えたし、それに止むかもしれないし。
「上がるか」
脱衣所で着替えようとしたら。
あれ? 僕の服が無い…… あ?
「なんだこの服? 幽香さんが用意してくれたのかな?」
幽香さんとお揃いの赤いチェックの服があった。
「……どうやって着るんだ??」
ここに腕を通して?? こんな感じか??
この赤いチェックの服は上から着るのかな??
四苦八苦しながら着た。
ズボンをはいてこれでいいかな?
「お待たせしました」
「あら よく似合ってるじゃない」
「えへへ」
「楓ちゃんの服は洗濯しておいたから 乾くまでそれ着ててね」
「わかりました ありがとうございます」
「お昼もできたわよ」
「わーい 今日はなんだろうな」
席に座ると、炒飯と中華スープが並べてあった。
「今日も美味しそう」
「どうぞ 召し上がれ♪」
「いただきます!」
僕はガッツクように食べた。
「美味しい!」
「今日もいっぱい食べてね♪」
当然おかわりし、満腹食べた。
……
外を見てみるとまだ雨は降っていた。
「今日は無理かな~」
日付はまだあるから、そんなに慌てなくてもいいんだけど
なんとなく、絵のことが気になった。
「今日は無理そうね」
「止まなそうですね」
「絵を描いてるのは宿題?」
「そうです夏休みの宿題です」
「担任は慧音かしら?」
「そうです 知り合いなんですか?」
「少しだけね」
知り合いなのが意外だった。
「ねえ? そっちにいないでこっちに来て」
「へ? わかりました」
僕は席から立ち、ソファーに寄りかかっている、幽香さんの横に座った。
「わっ」
座った瞬間肩を抱き寄せられ密着した。
「幽香さん?」
「あなた本当に可愛いわね? 女の子みたい」
「あっありがとうございます」
「誰かに言われたりしない?」
「うーん 慧音先生にたまに言われます」
「ふーん」
なんとも言えない返事が返ってきた。
「折角髪も綺麗なんだから大事にしなきゃだめよ」
手で頭を撫でられた。
「後ろ向きなさい」
「はい……あっ」
幽香さんはいつの間にか櫛を持っており、髪を梳いてくれた。
気持ちいい……。
「♪」
うまいな~ 幽香さん。
「♪♪」
ふぁ~。
「♪♪♪」
やばい眠くなってきtzzzz
「うん♪ サラサラになった♪ あれ? あらら♪ お休み♪」
……
……
……
「ん?」
「あっ起きた」
見上げると幽香さんの顔があった。
なんだろう……とてつもなく寝心地がいい枕が……
って! 違う!! これ幽香さんの膝枕だ!!!
「くぁwせdrf」
僕はバッと起きた。
「ごっごめんなさい」
「別にいいわよ♪ それより外を見て御覧なさい」
「ん? あっ! 晴れてる!」
「ふふ よかったわね」
「うん! 行ってきます」
「行ってらっしゃい 雨で滑りやすから気をつけてね」
「はい」
倉庫から画材を引っ張りだして、いつもの場所に持っていった。
「あと少しで完成だから頑張るぞ」
……
……
途中幽香さんの作ったケーキを美味しく頂いた。
……
……
「ここを塗って…… 良し! こんなもんかな!」
”向日葵が満開に咲いた絵が完成した”
自分で言うのも変だけどよく出来てると思う。
夏休み一番の課題が終了した。
「どう? 出来た?」
いつの間にか幽香さんがいた。
「うん!」
「見せて」
「う~うん」
ちょっと恥ずかしい。
「どれどれ…… これ私?」
「うん そうです! ……変ですか? わっ」
抱き寄せられて、頭を撫でられた。
「ん~ん全然 よく出来てるじゃない あなた絵うまいのね」
「あっありがとうございます あれ?」
頭に何かついてる。
「その花はプレゼントよ ふふ よく似合ってるわよ」
「……」
照れてうつむいてしまった。
「あの~」
「ん?」
「絵は描き終わったんですが これからも遊びに来ていいですか?」
勇気を出して聞いてみた。
「もちろん 歓迎するわよ」
「わーい やったー!」
「ふふ 暗くなってきたし 送って行ってあげるわね」
「はい!」
絵を梱包し片づけ、僕が着てきた服を受け取り。
「忘れ物はない?」
「大丈夫です」
今日、僕の荷物多いけど幽香さん持てるのかな?
僕はいつものように軽々お姫様だっこされた。
一方荷物は……。
「わっすごい」
僕の荷物は不思議なことに宙に浮いていた。
どうなってるんだろう?
「行くわよ」
「うん」
……
毎度のことながらすぐに着いた。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
あっ服。
「この服はどうすればいいでしょうか?」
「その服もあげるわよ」
「いいんですか?」
「持ってても着れないもの」
なんて優しいお姉さんなんだ。
「大事に着ます」
「その方が服も喜ぶわ♪ じゃあね~」
「さようなら~」
幽香さんはふわ~っと飛んで行ってしまった。
僕も自宅に戻った。