※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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私のダーリンが人類悪なわけがない(第2部 1章)

 決着の時は来た。ヤガ・モスクワにて人類悪とクリプターは対峙する。

 

 片や異聞帯を滅ぼす為。片や世界を救えると証明する為。

 

 カドック・ゼムルプスは自身が最も信頼する異聞帯のサーヴァント、アナスタシアを傍らに魔王へと挑む。彼らの周りには大勢の殺戮猟兵が群れを成している。だが、今後の展開を考えれば、オプリチニキの軍勢は戦力として数える事は出来ないだろう。

 

 

 

 その魔王もまるで鏡合わせのように同じサーヴァントを控えさせていた。

 

「そうかい。同じサーヴァントなら、マスターで差が出てくるって魂胆か?悪趣味な事だ、さすがは人類悪と呼ばれるだけの事はあるなデアー」

 

 カドックは忌々しそうにそう呟き、眼前の敵を睨み付ける。折れてなるものかと拳を握りしめて。いやそうやってシリアスを装わないと色んな意味で心が折れてしまうから。

 

 青ジャージ姿のもう一人のアナスタシア、黒ジャージ姿の人類悪。この二人が自分達そっちのけで「異聞帯ロシア旅行記念~~♪」とスマホで写真を撮っている現実を直視してしまいそうになるから。

 

 隣にいるこっち(異聞帯)側のアナスタシアはさっきから白目を剥いている。

 気持ちはわかるが、マスターがいるのに敵から目を逸らす真似はあまりしないで欲しいとカドックは胃を抑える。

 

「ここが異聞帯のロシア……。私のいたロシアとは随分と様変わりしたのね……。民達も皆モフモフになっていましたし、これがジャパリパークなのね……すごーい、さーむーい」

 

「た、た、た……楽しんでいるようね、もう一人の私……。敵陣の真っただ中だというのにその余裕は隣にいるマスターのせいなのかしら?」

 

 ようやく現実を直視した異聞帯のアナスタシアがIQが下がりそうな台詞を垂れ流しにしている汎人類史のアナスタシアを挑発する。

 

「そういう貴女はあまり余裕が無いように見えるわ。駄目よ、心に常に余裕を持たないと。あらゆる事を楽しんで、インスタに上げる。それこそが皇女ライフの正しいあり方」

 

 いや、それのどこに皇女要素がある?というツッコミをカドックはグッと飲み込んだ。隣のパートナーが頑張って、シリアス方向に何とか持っていこうとしているのだ。その努力を無下にはしない。

 

「戦いに来たとは思えないのその格好も楽しみとやらの表れか?あぁ、まったく随分と舐められたもんだ。いや、その態度も正しいか。お前等にとって僕達は敗残兵もいい所だからな」

 

「諦めんなよぉ!」

 

 がんばれがんばれできるできる絶対できるがんばれもっとやれるって!! やれる気持ちの問題だがんばれがんばれそこだ!そこだ! 諦めんな絶対にがんばれ積極的にポジティブにがんばれがんばれ!! とこっちを何故か鼓舞している人類悪は見えていない。見えていないったら見えていない。

 

「油断しないでマスター。隣にいるデアーとやらはどうだか知らないけど、こと私に関しては服装は関係無いわ。冷気を司る力も、そしてアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァの本領でもある契約した精霊も」

 

 そうだ。彼女と契約した謎満ちたロマノフ帝国の精霊『ヴィイ』。もし目の前の青ジャージが本当にこちらと同じアナスタシアだとしたら、当然宝具も――。

 

「その私と同じ顔で見せる気に食わない表情も服装も、何もかも凍てつかせてあげるわ。現れなさい!『ヴィイ』!!」

 

 全貌が把握出来ない兎のような黒いシルエット。彼女の何倍もあるであろうナニかがアナスタシアの背後に現れる。全てを見抜き、凍てつかせる瞳が剣呑と輝き、ビーストデアーと汎人類のアナスタシアを視界に収める。

 

「ポケモンバトルね、いいわ。どっちのヴィイが強いか勝負よ」

 

 隣の人類悪が持ったスマートフォンからシロガネ山にいる最強トレーナーのBGMが流れる。

 アナスタシアもダーリンのアシストにノリノリになりながら、両手をクロスし、腰を曲げ、スタイリッシュな体勢を取る。コイツら少しはシリアスに出来ないのか、カドック君と異聞帯のアナスタシアの努力をもうちょっと見習って欲しい。

 

「……すぅ――はぁ――――……いや…………悪いが人類悪、お前は一旦ここで退場してもらう」

 

「むぅ?」

 

 カドックの言葉と同時に雪原を駆け、人類悪デアーに迫る獣の姿……いや一騎のサーヴァントの姿が。

 肩に獰猛な猪の頭に黒き毛皮。この異聞帯のロシアに召喚されたサーヴァント。カリュドーンを身に宿した純潔の狩人。

 叛逆軍を率いるサーヴァントであり、ここまで共に戦ってきた筈の戦友でもあるアタランテ・オルタが人類悪デアーに対峙していた。

 獣のように四肢で大地を踏みしめ、人類悪へと肉薄したアタランテ・オルタは彼にどうしても問わなければならない事があった。

 

 

 

 

 ――汝らに協力しろ?あり得ぬ。汝らが皇帝側に与している以上、ここにいるヤガ達を虐げている以上、我らが手を結ぶ事は無い。

 

 ――与していない。いやもうそう言ってられる状況じゃない。この世界を滅ぼすと言ってる奴が間もなくモスクワにやって来る。そもそも僕の目的はこの世界を救う事だ。その為にはアレを打倒しなければならない。でないと、あんたも守るべき者一切を失う事になる。

 

 ――妄言の類にしか思えん。彼等は我らを救ってくれた。虐げられる者達に手を差し伸べてくれた。……そんな事が。

 

 ――あんたも薄々気付いている筈さ。あいつらがやろうとしている事の結末が何をもたらすのか。

 

 ――………………。

 

 ――証拠を見せよう。オプリチニキももう叛逆軍に手を出させる事はしない。もはやそんな余裕すらないからな。まだ信じられないと言うのなら、本人に聞けばいいさ。

 

 

 

 

 

 

「答えてくれ、デアーとやら……汝は本当にこの()()()()()()()()()のか!?」

 

 叛逆軍と、そして多くのヤガ達とここまで歩を進めてきた戦友とも言える存在に彼女は声を大にして問う。頼む、どうか否定してくれと、あの魔術師の虚言だと言ってくれるのを期待して。

 

「ふむ……まぁ、俺はこの異聞帯を()()()()からは消し去りに来たね」

 

「っ!!…………本当なのか……」

 

「あぁ、嘘はついてない」

 

「汝らを信じて、汝らに希望を見出して、ついてきた者達も大勢いるのだぞ……」

 

「きっかけは確かに俺達だ。だが、その一歩を踏み出したのは彼等自身の選択だ。それすらも全部自分達のおかげだと傲慢極まりない事を思うつもりはないけど」

 

 人類悪デアーは確かに嘘を付かず。誠実に答えた。

 返答を耳にしたアタランテ・オルタはその喉元を食い千切らんと襲いかかる。迷いはある……だが、オプリチニキ達を屠殺してきたこの男の戦闘力は既に目にしてある。危険だ――。もし、もしも本当に皇帝同様、ヤガ達を食い物とするのなら――。

 

「汝らに恩はある。多くのヤガを救ってもらった恩が……。だが汝らの目的がこの世界の滅亡というのなら――……」

 

「どうする?」

 

「汝も我らの敵だ!!」

 

 

 

 人類悪vs黒獣の狩人。ある意味同じ獣同士とも言える戦いが勃発すると思いきや……彼女の鋭い爪がデアーの肌に迫ろうとしたその瞬間。第三者が、肉に飢えた白き怪物が、参入した。

 

「ハラ、ヘッター……クワセロ、クワセロッ……!クワセロォォォッ!!クッテヤルゥゥゥゥゥウウ!!」

 

「なっ!」

 

 カドックのもう一つの切り札。見上げる程の巨躯。迷宮にて迷い込んで来た者達を容赦なく喰らい尽くしてきたギリシャ神話における『牛頭人身』の怪物ミノタウロスが乱入した。

 

万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)!!」

 

 マスターの命通り、ミノタウロスは宝具を発動させる。任意でその場にいる者達を迷い込ませる複雑怪奇なクレタ島の迷宮。対象はアタランテ・オルタとデアー。突如として現れた石の迷宮に二人は飲み込まれていく。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 迷宮の効果か頭を揺さぶられるような感覚。切り替えるように頭を抑えながら前を見据える。閉塞された空間に閉じ込められた先には先程、その命を奪おうとした男の姿があった。若干の距離があった為かこの迷宮の主は今は視界に映る距離にはいなさそうだった。

 

「チッ、完全に信用したつもりは毛頭無かったが……あの魔術師め、全くやってくれる。だがいい……これで邪魔も入らず、巻き添えも気にする必要が無い。私と汝の二人きりだ」

 

「そうだね。確かに()()()()()――」

 

(なんだ?)

 

 そこでアタランテ・オルタは奇妙な感覚に包まれた。

 自分はカリュドーンの毛皮により変身した獣。喰らう側である肉食獣と言える。

 けれども、微笑みながらこちらを振り向くこの男の姿を見ていると――。

 

(吾はなんで、震えて――)

 

 まるで――あの男が今にもこちらに齧り付こうとしている獅子のように見えて。

 まるで――この迷宮が檻のように見えて。

 まるで――自分が目の前の獣に差し出されたの餌のように思えて。

 

 

(え、あ――、近、なんだ、白い手が――)

 

 

『白式官能 ()の掌』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――えぇ、えぇ!人類最後のマスターもとい、人類悪デアー君は女たらしで、女好きよ?ですからぁ、例え自らの命を取りに来た相手でも基本的に見目麗しいレディの質問には嘘は付きません。紳士ですし?あぁ、注意を引くという点でも美女を用意するのは良いかもしれませんね――?あ、もしかして、見逃してもらう代わりに皇女様を差し出すとか?やだぁ――!カドック君ってば大悪党!!……な――んって冗談ですからそんな怖い顔しないで下さ――い。コヤン、怖くて寝返ってしまいそうになっちゃいそう……。フフフ、冗談、冗談ですよ。私ですか?あぁ、手出しはしません。遠目で貴方達の戦いの顛末を見たら、次の異聞帯にシュバババババと転勤させて頂きますからご安心を。

 

 

「半信半疑だったが、あの悪女の言う事は間違っていなかったか……」

 

 カドックは何が面白いのか口元を歪めて、そう言っていた女狐の顔を思い返す。

 

「平穏は失われた」

「あの方が夢から醒める時」

「我らも旅立とう」

「皇帝に栄光あれ、皇帝に栄光あれ」

 

 黒衣の死神、殺戮猟兵達が次々へと塵に帰る。首都モスクワまであの劇物たる人類悪の接近を許したのだ。楽園に浸る時間は終わる。もう皇帝は夢を見てられない。正しく今のロシアの現実を認識する。巨物が、怪物が、山が、目覚めようと大陸が震える。

 

「コヤンスカヤの情報でカルデアにはあのアタランテとは別側面のサーヴァントがいると。女に甘いという情報に偽りが無いのなら。あの迷宮に縛り付ける良い枷になるし、雷帝が目覚めるまでの時間稼ぎにもなる」

 

 まず第一段階と。カドックは呟く。アタランテ・オルタとミノタウロスであの人類悪を少しの時間でもいい、迷宮内で縛り付けると。

 

「あいつの空間移動能力は見ている。イヴァン雷帝の姿を目の当たりにして別の場所へ顕現されても厄介だ。なら、外の様子が一切わからない状況で迷宮ごと踏みつぶす。不意打ちの如く、事故のように、何が起きたのかわからないまま、最大の一撃を受けてもらう」

 

 カドックはクリプターの会議において乱入した人類悪の姿を見た瞬間に、もしこの異聞帯において自身に勝機があるとしたら皇帝を起こし、アレとぶつけるしかないと心に決めていた。

 

 英雄でも、サーヴァントでもない。一つの災害のようになったイヴァン雷帝なら、あの人類悪に一矢報いるカードになると。

 

 これが第二段階。ベストは皇帝と人類悪デアーが共倒れしてくれる事。ベターなのは人類悪が倒れ、尚且つ皇帝がこちらのカードだけで倒し切れる程、消耗してくれる事。最悪なのは――…………。

 

(……いや、今はそれを考えるのはよそう)

 

「君がいたのは想定外だったが、この状況なら案外歓迎すべき事かもしれない。同じサーヴァントなら、マスターで差が出る。だが、マスターと離れ離れになったこの現状なら、アナスタシアという英霊を知りつくしている僕達に分がある」

 

 突如として現れた迷宮の方にスマホを向けながら『ロシアの雪原にいきなり石の迷宮とか神秘過ぎてマジやばたにえん( ゚Д゚)、ダーリン攫われちゃった。ドーシヨ(棒読み)』とインスタを投稿している汎人類のアナスタシアの表情は伺い知れない。ガンスルーされているカドック君の眉間に皺が寄る。

 

「僕達としては皇帝と人類悪さえ、仕留めてしまえば後はどうでもいい。正直な所、残ったカルデアを脅威だとは思っていない。だからもし、君が彼との契約を切って、こちらに与するというのなら歓迎す」

 

「え?何ですか?もしかして、私と同じ顔を並べて夜のロックンロールぐっへっへっとか考えているんですか?ドン引きです。通報しました」

 

「考えるかぁっ!!待て、アナスタシア、君もそんな瞳で見るな」

 

 言いがかりもいい所だったが、このロシアの気温よりも冷たい極寒の眼差し×2に射抜かれたカドックは無性にいたたまれなくなった。汎人類の方は言わずもがな、異聞帯のアナスタシアも他のサーヴァントはともかく自分と同じ顔をしたサーヴァントをいきなり勧誘するマスターを見てイラッとしたのも致し方ないのかもしれない。

 

「ねぇ、異聞帯の私のマスター。誰から聞いたか策なのかは知らないけど、貴方はあの露出強くっころ獣娘を餌にダーリンを迷宮に閉じ込めたわけよね?」

 

 異聞帯のアナスタシアはマスターと分断されたこの状況でも何一つ慌てる事なく、言葉を続ける。出来の悪い生徒を諭す先生のように。

 

 

 

「駄目じゃない。ビースト(ダーリン)にあんな()()()()()()ご馳走を差し出したら……時間稼ぎにもならないわよ」

 

 

 

「なにを――」

 

 

 

 

 ――あぁぁっァァァッ!!!

 

「っ!?今の声は――」

 

 

 

 

 ――ヒぃぃっ!!あぁぁぁっ!!ンあぁあぁっ!!ま、まって、まぁぁって……!アンぅぅあぁっ!!わかった、わかった私の負けだからぁぁっ……!もう、ゆるひてぇぇぇぇ……んぎぃぃっぁっ……!!あっ、あぁぁっ!!とまって、とまぁぁって……!!尻尾掴みながら、ズンズンってぇぇぇ……ダメぇぇぇ……ンふぁああァァッッ!!むり、無理ぃぃぃ、手が多い、多過ぎるひゃらああぁぁっ……アァァ、アアアァ……んほぉっぁぁあっ!!ぇぇあ……こんなの、こんにゃのぉぉ、死ぬより、きちゅいいいいぁぁあぁああっ……!!!!淫紋……?そんなもの生えてぇぇ……え、何これ、何で私の体にぃぃぃぃっぃぃぁアアアアアアっ、あぁぁっ、あぁああああぁっ!!止まって、止まってぇぇぇえっ、そこ撫でないでぇぇえ……!!ひんんんぅうっぁあああ!!お願い、お願い、ほへふぁい……もうどこ触られてるのかも、わかんなくなって……あっ、あっ、あっ、あっ、アッ、アッ、アッ、アッ、とんじゃう、とんじゃう、とんじゃぅぅぅぅぅぅんぎぃぃぃぃぃぁあああああっ……!!

 

 

 

 

 ミノタウロスが造り上げた迷宮から外部まで響き渡る絶叫と嬌声が混ざり合った快楽の鎮魂歌。

 青ざめたカドックとアナスタシアが耳にしたそれは勇ましくも皇帝に叛逆していた軍の頭でもあった英霊の声であり、間違いなく、絶望に沈む啼き声さえも悦楽に塗りつぶされる凄まじき喘ぎだった。

 

 迷宮の中にいるアタランテ・オルタが何をされているのかは理解出来ないが、異常な事があの迷宮で行われている事は理解出来た。

 

「……ねぇ、マスター、一体、何が起きて……」

 

 ここでカドックは自分が致命的に打つ手を間違えた事を悟る。

 

「貴方達の敗因は三つよ。一つ、ドスケベペットサーヴァントをチョイスした事。二つ、ダーリンを過小評価し過ぎた事」

 

 先程、宝具を発動させた異聞帯のアナスタシアの時よりも大きい圧が彼女を中心に吹き荒れる。

 理解せざるを得ない。服装と言動と挙動はふざけているが、彼女も王族に連なるサーヴァント。それに相応しき、威厳と力は持っている。その証拠が。象徴たる物が今、背後に現れる。

 

 

 

「そして、最後、三つ。私を舐めた事よ。現れなさいヴィイ!!」

 

 

 

 異聞帯の彼女が繰り出した死の瞳を持つヴィイと同じ背丈の精霊が現れた。それは――。

 

 

 

「オイラはビィ!!」

 

 

 

 筋骨隆々な八頭身の体とデフォルメ化された頭を持つ赤い竜の精霊だった。

 

 

 

「ヴィイ……ビィ……?え、え、いや違います。それはヴィイじゃないです」

 

 異聞帯のアナスタシアも思わず敬語になってしまうぐらいの異形だった。というよりも目の前のもう一人の自分がどうしてアレをヴィイと呼んでいるのかすらわからなかった。そもそもあれは精霊とかそんな神秘的なものじゃなくて呼んではいけないダークファンタジー的なナニかではないのだろうか。ナニアレ?ナニアレ?いやホントになんだろうねアレ。

 

「トカゲじゃねぇ!!」

 

 聞いてない。

  

「なんだ……あの、化け物は……ヴィイと言ったのか……冗談だろ……?」 

 

「死ぬ直前、私が英霊となって力を貸してくれたヴィイ。ダーリンと出会った事でやっとその全貌を掴む事が出来た……。わかる?もう一人の私、貴女の使役するヴィイと私のヴィイとではレベルが違うの」

 

「違う、違うわ。そんな肉ダルマをヴィイと認めない……!来ないで、来ないで、こっちに来るなぁぁ……!!ヴィイ!!凍てつかせてェェ!!」

 

 のそのそと歩を進ませる異形なるビィイに叫びながら、自身のヴィイの魔眼を解放させる異聞帯のアナスタシア。およそ、生命が生存出来ない絶対冷凍の吹雪がビィイに襲いかかり、その体を氷像へと変えていく。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…………見掛け倒しだったわね……」

 

 息を荒げ、安心したように呟く彼女に絶望が訪れる。

 

「あくびが出るぜ」

 

 ――バキバキィッッ。

 

 不気味な八頭身マッスル氷像にヒビが入り、氷はあっけなく崩れ、ピンピンとしているビィイが現れる。これほどまでに味方で頼もしくかつ、敵にとっては恐怖でしかない存在がいただろうか。

 

「死にたいやつは順に並びな!!」

 

「きゃああっ!!」

 

 拳の風圧、それだけで異聞帯のアナスタシアはヴィイごと、吹き飛ばされる。

 

「さぁ、あの迷宮にいる獣っ娘は何秒保つかしら?そして、貴方達は何秒耐えれるかしら?」

 

 マスターとしての役割を持つカドックが傍観に徹するワケもなく。ダメージを受けたアナスタシアに治癒魔術を施し、自分をヴィイだと思い込んでいる八頭身の怪物を打破すべく、出し惜しみなく令呪を解放する。雷帝を倒す時の為とか、この後の勢力争いの為とか温存している場合ではない。

 

「第一の令呪を以て命ずる。敵を凍えさせろ!第二の令呪を以て命ずる。宝具を解放せよ!最後の令呪を以て命ずる。皇帝になれ!」

 

 

 三画の令呪によるブーストを受け、先程とは段違いの冷気が渦巻かせて、異聞帯のアナスタシアは自身が出し得る最強、最高の宝具を放つ。

 

「ヴィイ、全てを見なさい。全てを射抜きなさい。我が霧氷に、その大いなる力を手向けなさい。『疾走・精霊眼球(ヴィイ・ヴィイ・ヴィイ)』!!!」

 

 魔眼の全力解放。あらゆる秘密、弱点を見抜くヴィイの魔眼。後ろのアナスタシアごと、凍てつかせようとする極大の魔力と吹雪が混じり合った攻撃がビィイに襲いかかる。

 

 だが、彼(?)は逃げる事も恐れる事もせず、その強靭な手を伸ばし、受け止めた。

 

「オイラァ!!」

 

 周りのヤガ達は近づく事すら許されない衝撃。だが、気合いの雄叫びを上げ、パーの形で異聞帯のアナスタシアの宝具を受け続ける精霊は微動だにしない。

 

 令呪三画のサポートを受けたアナスタシアの全力の宝具が与えたダメージは如何ほどか。

 

「うそ……だろ……?」

 

「あぁん?この程度で全力かよ。だらしねぇな」

 

 無傷なり。未だ無傷なり。その体に一切のダメージ無し。

 今度はこっちの番だなと、全身に力を蓄え、筋肉をさらに増長させるビィイ。

 

「オイラが怖えのはデアーの兄貴とナイチンゲールの姉貴だけだ!!」

 

 脚力だけで空高く舞い上がり、雄叫びを上げる。

 

「オイラはドラゴン!!」

 

 背中の羽根も一切使っていないし、筋力だけで空中に浮かんでいるのでどう考えてもドラゴンには見えない。そもそも筋力で空って飛べるんだね。すごいね、マッスル。

 

「おらおらぁ!!平伏すがいいぜ!!ちっぽけな者共よぉ!!」

 

 ロシアの寒空をバックに彼は再び、手を広げ構える。膨大な魔力のような力のプレッシャーがカドックと異聞帯のアナスタシアに襲いかかる。理解不能な規格外の存在。見た目は気色悪い事この上がないが実力は本物。

 

「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃあああ!!」

 

「きゃあああああ!?」

 

「アナスタシアッ!」

 

 宙から放たれる連続のエネルギー弾が無慈悲にアナスタシアとヴィイに襲いかかった。巻き上がる雪塵と轟音。彼女に駆け寄ろうとしたカドックもその余波で吹き飛ばされてしまった。

 

「グミ打ちは敗北フラグ?真の皇女なら、そんなフラグは折ってこそ。その身で味わうといいわ異聞帯の私。常に余裕を持ってインスタを投稿。服装ではないのよ。たとえ、ジャージだろうとも振る舞いで気品さが溢れてしまう私の美技に酔いなさい」

 

 これこそ、彼女がマスターと炬燵でぬくぬくイチャラブセックスし、肉体を持った末に辿り着いた宝具。外形がはっきりしなかったかの精霊を彼女だけの現実で捉えた(バグってしまった)ヴィイの姿。神霊とタメを張れる許されざる宝具。

 

 連続気弾による爆風をバックに彼女はキメ顔で自撮りをする。写真と共にインスタにはこう投稿されていた。

 

 

覇空疾走 精霊創竜(オイラ・ハ・ビィイ)

 

 

「ふぃ――。こんなんでいいのか?アナスタシアの嬢ちゃん」

 

「えぇ、十分よ。これが報酬の黄金の果実よ」

 

「いやっほう!!」

 

「もう、倉庫にあるのを勝手に食べては駄目よ。ダーリンのあんな無の表情、私、初めて見たんだから」

 

「う、うぅ……思い出させないでくれよ。マジでトラウマになってんだからよ……。もう過ちは犯さねぇ。ドラゴンは間違えない。ドラゴンは間違えない……」

 

 

 本気は出していなかったのか、それとも致命的な所は外してくれていたのか、倒れ伏せていたアナスタシアは大破エフェクトのようにドレスが破れているぐらいで……気を失ってはいるが、消滅する程のダメージは負ってはいなかった。吹き飛ばされていたカドックが足を引き摺りながら、何とか異聞帯のアナスタシアの元へと駆け寄っていた。

 

「彼等には消滅とか、そんな結末を許すつもりはありません。この異聞帯の結末を見届ける義務があります。このロシアの地を任されたマスターとサーヴァントとして」

 

 

 ――オォォォォォ……オォォォォォオオオオオオオオオ!!アナスタシアァァァァッ!!

 

 デアーの妻であるアナスタシアの前に山が動き出していた。

 その雄叫びだけで雪崩を起こしそうな、眠れる巨躯が遂に目を覚ます。

 古き生物マンモスと一体化した、だがその大きさは常識を覆す。神霊にも匹敵する異聞帯の王。

 

 自身の世界を侵略する人類悪に対して、イヴァン雷帝が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 




覇空疾走 精霊創竜(オイラ・ハ・ビィイ)

ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:アナスタシア(インスタ系皇女)

オイラァ!!
炬燵でぬくり、モンハンをしながらイチャ付き、インスタを投稿していた雪の皇女が捉えた自分だけのヴィイの姿。マスターの白濁液と彼女のゲームによるドラゴンへの憧れで別次元のナニかを受信してしまったのかもしれない。グラブルの世界に帰れ。
戦闘時は八頭身のマッスルだが、普段はマスコットらしく二頭身に収まっている。外見はギャグにしか思えないが戦闘力においては絶大の一言。主に肉弾戦と気弾を用いた戦闘を得意とする。おめぇ、ドラゴンボールかよ。
通常クラスのサーヴァントなら複数でも簡単に屠れる。言動とか戦い方がどう見ても悪役にしか見えない。
というかこんなのにずっと見つめられていたら、そらロシアの兵達も頭狂いますわ。
倉庫の黄金の果実を勝手に食べた事から、一度マスターにボコられている。その後、傷だらけの所を婦長にビィィィィィくぅぅぅんんんぅ(雑菌消毒)されているので二人がトラウマになりかけている。
後、一応ドラゴンらしいので竜特攻は効く。












ノッブ「おっ、おぬし、そう言えばロックが好きなようじゃな。うっし景気づけにわしらのくぎゅぅロックンロールを聞かせてやろうかの!」

ビィくん「おっしゃぁ! ディスってんじゃねぇぞ♪」

ノッブ「オイラは魔王♪」

ビィくん「トカゲじゃねぇ!(合いの手)」

カドック「てめぇらぁ!! ロック馬鹿にしてんのかぁぁ!! 今すぐ止めろぉぉ!!」

サリエリ「これも新たな音楽の形か……。アイドルといい、実に興味深いな」

エリちゃん「私達も負けてられないわネロ! こっちも最高のロックナンバーを見せてやろうじゃない!!」

ネロ「うむ! 我が美声をこの異聞帯全てに生きる者達に届けてやるとも!! ボエェ~~~~♪」

アナスタシア「気絶しているあっちの私が消滅しそうだから、ほどほどにね」










頑張って、イヴァン雷帝!!この異聞帯を守る為に!!人類悪に立ち向かって!(無茶ぶり)



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