※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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ちょいとしくったので投稿し直し。

















「雷帝が完全に目覚めたか……」

気絶している自身のサーヴァントの傍で山と一体化した魔獣を見上げる。さっきまでロックを冒涜しているとしか思えない怪音波を聞かされていたせいかまるで恐怖心が湧いてこない。

「それとも、もっと怖い存在を知っているからか――」

まだあの人類悪は迷宮の中。雷帝が足を或いは鼻を振り下ろしてくれれば、きっと――。

「駄目だ――」

カドックの脳裏にはずっと目を逸らし続けていた光景が浮かび上がる。クリプター達の会議に使われていたキリシュタリアの根城を崩壊させる白手観音像……すなわちビーストデアーの姿が。
あれを思い出せば思い出す程、あの獣の存在を目の当たりにすればする程……。

「アイツがマンモス程度に負ける姿がまるで想像出来ない……」











ダーリン・イン・ザ・セックス(第2部 第1章)

「はぇ、あ、あ、ぁぁっ……ぁぁっ、あぁっ、んふぁぁっ……あひ、ひぃぅ……はぁ、はぁ……あひぃ……んぅ……」

 

「空しいな。戦争というのは」

 

 場所は変わって再びミノタウロスの宝具の中。

 

 全裸でイイ汗かいたぜと言わんばかりの爽やかな顔でトチ狂った事を言っているデアーの足元には様々な液まみれになって生まれたままの体を火照らせながら、喘ぎと吐息を延々と口から漏らすアタランテ・オルタの姿があった。端的に言えば、「見せられないよ!!」状態。

 

 もう彼女はこの異聞帯においては使い物にはならない事は間違いない。きっと誰の目も届かないこの迷宮では凄まじい戦いがあったのだろう。彼女がどんな目に遭ったのかは当の本人達以外は知る由も無い。まぁ、アヘ顔淫紋オチしている様子を見れば容易に察する事が出来るだろうが。

 

 

「ミ、ツケタァ……ミツケタァッ……!!エサ、エサァァッ!!」

 

「おっと。さすがにあれだけ声響かせてたら、そら気付くか」

 

 色んな意味で余韻に浸っていたデアーに迷宮の主が襲いかかる。

 迷宮の奥から、双斧を振り回し、ミノタウロスが彼に迫っていた。血走った眼で彼をただの餌としか見ていなかった。間違いなく、腹に入れたら壊す部類の劇物だと思うが。彼が人類悪とアタランテの獣セックスを目にしてなくて本当に安心した。

 

 

 そんな中でも人類悪デアーは焦る事なく、指をパッチンと鳴らした。

 

 

 この迷宮は外部と隔絶された複雑怪奇の檻。辛うじて、音声だけの連絡が可能なぐらい。だが、ことこの人類悪に関してはあまり関係は無い。

 

 英霊の彼が持つ、第四宝具『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』の上位互換。

 

 彼と交わり、肉体を持った妻達を呼び出す宝具。だが、『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』のように人数制限も無く、銀の杯を使ってドアノブのように捻る必要も無い。というかぶっちゃけ指パッチンする必要も無い(只の演出)。

 

 タイムラグも制限も無く、彼の召喚に応える妻達をいつでも際限なく呼び出せる人類悪デアーの第四宝具。

 

 

「『通い妻オーバーラン』」

 

 

「メリーの時間だ」

「ロジカルの時間です!」

「性夜の時間」

 

 瞬時に呼び出したのはサンタ・オルタ、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、アルテラ・ザ・サンタのトリプルサンタ。

 

 彼女達は相対するミノタウロスにスキル『聖(星)の贈り物』を発動する。

 

「ウ、ウゥッ……?」

 

 空から降ってくるターキー、ナゲット、ポテト、ケーキを始めとしたクリスマス風味な豪勢な食べ物、食べ物、食べ物の雨。怪物としての面を強調されているミノタウロスなら生きた者に齧り付く筈だが、ミノタウロスは突如として現れた山盛りの食べ物に何故か目を離す事が出来なかった。

 

「ウ、マイ……ウマイ、ウマイ、ウマイ!!……ナンダ、ナンナンダコレ!!」

 

 気づけば、手に取り、口元に運んでいた。

 手づかみで夢中に食事を続けるミノタウロスの動きが完全に止まった。ひたすら何かに飢えていた彼はその渇きを癒すように食べ物を喉に通し続ける。

 

「生きた者なんかより、こっちの方がよっぽど美味だろう。ミノス王の怪牛よ」

 

「アステリオスさんではないアステリオスさん!!貴方のお腹と心の渇きを私が今、ここで癒してあげます!!」

 

 もう人類悪デアーとトリプルサンタ達の事は眼中に無いミノタウロスを前にして、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは新たな宝具を解放する。

 

 槍を地面に突き立て、魔力を解放する。

 

「悪い子にはお説教を、良い子には贈り物を、そして救われぬ子には思い出を!!」

 

 今までその小さな体にマスターから性者の贈り物を受け続け、受肉したロリサンタが得た宝具。

 

 

 その瞬間、ミノタウロスには突如として様々な記憶が脳裏に浮かんだ。

 

 

 ――おぉ……おおぉお――!!これは、これは……!!

 ――やった――!トナカイさんだ――!おっきなおっきなトナカイさんだ――!!

 

 雪降る聖夜に自分の姿をした誰かの周りを走り回る少女達。

 

 

 

 ――いいの?マスター、かたぐるまなんて……ぼく、おもくない?

 ――思ってた程じゃないよ。ほら、いつもする側でしょアステリオスは。なら偶にはされる側になってみてもいいかなって!

 ――だからってアステリオスが私に肩車をしてる時じゃなくてもいいでしょ!!あぁぁ、高い高い、揺らさないでってばぁ!!

 

 自分に一切恐怖心を持ってない男と女神の微笑ましい戯れ。

 

 

 ない。知らない。自分にはそんな思い出は一切無い。笑える程に平和で。泣けてしまうぐらいに暖かったその光景を見せられたミノタウロスにはもう全身から力が抜けていた。

 

「お腹の飢えは食べ物で癒えます。なら心の飢えは何で癒えますか」

 

 これぞ心を論破するジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの新宝具。『安穏に浸れ、最高の思い出に( ル・メイユール・スーヴニール)

 

 対象が深層意識で最も求めている思い出を脳裏に投射する浄化宝具。たとえ、目を瞑ろうとも心の飢えを癒すその思い出は浮かび上がる。

 カルデアのアステリオスではないミノタウロスにはこんな経験は無い。だが、それでも最も心に効果的な記憶を映し出すその宝具は自分ではないミノタウロス(アステリオス)が得た最も幸福な一時を選んだ。

 

「ハハハ、ナンダソレ、ナンダソレ……オレハイチドデモソンナメデ……」

 

 嫉妬する気も怒りも湧いてこない。ただ、自分にもあんな時間を得る事が出来る可能性があったのかと知る事が出来たミノタウロスは微笑みながら、涙を流していた。

 

「イッパイ、イッパイダ……ハラ、イッパイダ……モウ、クエナイヤ……」

 

 お腹も心も満腹になったミノタウロスはそう呟いて満足気に消えていった。

 

 

「とても良いシーンなのだがな。全裸のトナカイと足元にいる獣っ娘アヘ顔サーヴァントのせいで台無しになっている件について申し開きはあるかマスター」

 

「おっとイケネ」

 

 オルタのツッコミを受け、主を失った事で崩れ始める迷宮の中でマスターはいそいそとジャージを穿いていた。ビクンビクンしているアタランテ・オルタは未だ目覚める気配が無いので彼が担ぐ。触れただけで達してアソコから潮を吹いている彼女の姿が哀愁を誘う。

 

「チョロい……やはりオルタ勢は皆、チョロい……」

 

「何故こちらを見ながら言うのか、体に聞いてやろうかこの聖剣で」

 

「むむ?黒いアタランテさんとトナカイさんはここで何を……。成程、肉体言語で平和的に和解したんですね!!さすがトナカイさんです!!ラブ&ピースですね!!」

 

「まぁ、間違ってないかな。肉体言語だし、ラブ&(アヘ顔ダブル)ピースだし……」

 

 ジャンヌ・リリィのキラキラとした瞳にもいけしゃあしゃあと答えるこの人類悪っぷり。少しは綺麗に子供にも見せられる形でミノタウロスを退けた二代目サンタの手腕を見習って欲しい。

 ただ、このマスターに染まってしまったジャンヌ・リリィが真実を知っても「黒いアタランテさんの心の隙に希棒を打ち込んであげたんですね!!ロンパです!!」と諸手をあげて喜びそうだが。

 やっぱジャンヌ3姉妹でまともなのは邪ンヌしかいませんね。オルタは常識枠!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくち」

 

「性格の割には可愛いくしゃみをするのう、おぬし」

 

「うっさいわね」

 

「随分と大きい獣です。首を落とすのには骨が折れそうですね……」

 

 アナスタシアとの戦いを見守っていたカルデアのメンバーは雷帝の前に集結していた。ヤガ達は雷帝のあまりの強大さの前に膝を屈していた。彼等はもうこれ以上、戦えないだろう。ヤガの本能として染みついてしまっている。絶対強者には逆らえない強食の本能が。

 それでも、ここまでオプリチニキ達に対し、戦い、ヤガモスクワまでやって来た彼等を責める者はいなかった。彼等はもう十分に自分達の為に戦ったのだから。

 

 縋るようなヤガ達の視線に邪ンヌは口元を歪ませて吐き捨てるように答えた。

 

「あんた達……なぁ?あんた達はあんな怪物を前にして、何も怖くないのか?」

 

「べっつにぃ?……ティアマトの方が大きかったわねぐらいしか思いませんけど」

 

「あの駄女神が生み出したクガランナの方がインパクトはあったの!」

 

「あんなマンモスよりも先輩の象さんの方が魅力的ですから」

 

「とんだドスケベマシュマロVRビーストじゃのぉ」

 

「デミサーヴァントッ……ではありませんでしたね、もう私は」

 

 震える声で問い掛けるヤガ達には彼女達の返答は焦りの色すらも無かった。まるでこの状況が日常茶飯事のようではないか。ぶっちゃけると目の前のマンモスより隣で金色のリンゴをムシャムシャしている八頭身の赤いマッチョの方が気になるのではと一言申したい所だが。

 

 

「カルデア……ビースト、人類悪……!!許さぬぞ……!余の国は滅ぼさせぬ、滅ぼさせぬぞ!!……我が妻と同じ名を持つサーヴァントよ……!!そこを退けぇぇっ!!邪魔をすれば、汝ら諸共、消し飛ばしてくれるわぁっ!!」

 

「あらあら今までグースカしていた寝坊助さんが偉そうな事を言っているわね。いいわ、二度あることは三度ある。ここはおっきーにもうひと頑張りしてもらおうかしら」

 

 巨大な鼻先に魔力を集中させ、雷撃を放とうとしている雷帝。オプリチニキ達の報告から聞いた自身の国を滅ぼそうとしている人類悪を消し飛ばそうと皇帝の怒りを振り下ろそうとする。

 

 そんな状況でも余裕たっぷりに微笑んでいるアナスタシアはスキル『シュヴィブジックA』を発動させる。不可能を可能にする悪戯。今度は一体何をこのロシアに射出するというのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていうかさー。マーちゃんだけでも戦力過多もいい所なのに、それに加えてエリエリに、アナちんに、武蔵ちゃんに他にも沢山でしょう?どう考えても私要らないよね?だから、姫がここでお休みしても何も悪くない!!むしろコストパフォーマンス的にはサボるのは間違ってないもんねー」

 

 炬燵ドリフトで口から虹色の何かをリバースし、乙女として大切なナニかを失ってしまった刑部姫はアナスタシアがもう一人の自分と戦っている隙を突いて、マイホームたるチェイテピラミッド姫路城に戻っていた。

 

「大丈夫だよね?もうさすがに大丈夫だよね?三度目の正直って言葉もあるし?」

 

 入念に自身の炬燵が細工されていないかチェックする刑部姫。彼女にとってはもう炬燵ドッキリレーシングゲームは勘弁して欲しい所だった。

 彼女の不安も杞憂だろう。何故ならもう、()()が射出される事はないのだから――。

 

「だいじょうぶ、そうかなぁ――?あぁ――あ、もうつっかれたぁぁ……!やっぱり労働は悪だよ――。スパロボでもやろっかな――…………ぁぁ?」

 

 

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

 

「何ッ!なになになになになになになに!!!何事!!地震!?ちょっと待ってこの城、耐震設計にはちょっと不安があるんだけど!!特に上の部分が!!」

 

 突如として、部屋ではなく城全体を襲う尋常じゃない揺れ。地震かと思ったが、それはおかしい。どうしてシミュレーションルームの中で設計されていない自然現象が起きる?

 

 嫌な予感がして、そっと窓から外の様子を見た姫の視界には――。

 

「うっそ――――ん…………」

 

 流れるように変わる濁った空、見下ろせば、そこはロシアの大地。アナスタシアのスキルによって今度は炬燵ではなく、チェイテピラミッド姫路城()()()()がロシアの世界に射出されていた。着地点は丁度巨大マンモスの目の前。

 

「ぎやあああああああああ!!城が飛ぶわけないでしょぉぉぉぉぉ!!!しぬしぬしぬぅぅぅぅっ!!マーちゃあああああああんん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消え失せろ……。異邦の者共よ。粛正の時は来た……!!」

 

「駄目だ……あんなの逃げ切れるワケがねぇ……!!死ぬ……皆、死んじまうんだ!!」

 

 イヴァン雷帝から放たれる神の如き暴虐の前に、ヤガ達の絶望の声が聞こえる。村一つなど軽く消し飛ばす彼の攻撃を防ぐ物は何も――。

 

 ――ドオオオオオオオオォォォォンンッッ!!

 

「何事っ!?」

 

 あった。そう。雪崩のような衝撃と共に空から巨大な城が降ってきたのだ。雷帝の一撃を全て防ぎ切る。強固な引き籠りの城が。

 叛逆軍に組しているビリーの驚きの声と共に登場したその城は雷撃を直撃しても全くの無傷だった。さすがは防御性に関してはかつてのマシュの宝具ともタメを張れる違法建築物。

 

「何と奇怪な……。余の一撃をものともせぬとは……!」

 

 ドッキリ突撃お姫のお城ガード。中で絶賛パニくっている城の主以外は誰一人犠牲を出す事なくイヴァン雷帝の攻撃から皆を守り切った。チェイテピラミッド姫路城……多分、カドックとかゴルドルフ司令官辺りが耳にすれば、二度聞きする事は間違いない。現に二人の顎は驚きのあまり外れそうになっている。

 

「ただいまーっと。うわ何このカオス」

 

 空から降って来た城にここにいるほとんどの者がポカーンとしている中、しれっと迷宮からアタランテ・オルタを担いだマスターがトリプルサンタと共に戻って来てた。

 

「姐さん、無事だったのか!!」

 

「無事ではない……無事ではないがな。サンタの情けだ。服は着させてやった」

 

 地面に降ろされ、幸せそうな顔(?)で気絶しているアタランテ・オルタに叛逆軍の者達が駆け寄る。鎧はブレイクされていたので、サンタ・オルタがトナカイの着ぐるみを着させてあげてたようだ。

 

「ってか何あれ、うわデカ」

 

「その感想で終わる辺り、カルデアの連中がいい具合にイカれているのはよくわかった」

 

 イヴァン雷帝に対するリアクションがあっさり過ぎるデアーにベオウルフが呆れたようにため息を吐く。まぁ、かくいう自分達も空からあんな狂った城が降ってきたインパクトのせいで、雷帝の印象が若干薄れかけている感も否めないが。

 

 

「なるほど、つまりは最終決戦か」

 

「えぇ。理解が早くて助かるわダーリン」

 

 巨大マンモス。立ち塞がっているのはチェイテピラミッド姫路城。頭がどうにかなりそうなこの状況で彼には最終決戦へのビジョンが見えていた。

 

 ヤガ達もカドックもゴルドルフ司令官もまるでワケがわからなかった。こんな頭のおかしい状況で何故コイツはこんなイイ顔が出来るのだろうと。

 

 間違いなくロクでも無い考えを思い浮かべているマスターの腕を取り、アナスタシアは共にその城の中へ入ろうとする。ちなみにビィ君はマスターの姿を確認した瞬間にお空に帰りました。

 

「先輩……?一体何を……?」

 

「決まっているさ、マシュ。古今東西、巨大怪獣に立ち向かうのといったらね」

 

 城の門が閉まる瞬間、マシュの唇に軽い口づけをして彼は微笑む。

 

「時間稼ぎは任せたよ」

 

「はい!!任せてください!!!例え、対界宝具が何百発来ようとも!!いくらでも耐えてみせまっしゅっ!!」

 

「チョロいわねぇ……マシュったら、子犬にちょっとキスされたぐらいであの喜び様」

 

「アンタも似たようなもんでしょ。いつか刺されるわよアイツ」

 

 マシュが顔を真っ赤にして盾をブンブン振り回す様子を生温かい瞳で見守るエリちゃんと邪ンヌに対して、サンタ・オルタは「お前達もチョロさでは大して変わらんぞ」というツッコミはグッと飲み込んだ。初代サンタは空気の読める娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとアナちん!!どういうつもり!?炬燵の次は城ごとドッキリスライダー!?しかもいきなり巨大マンモスに雷を自宅にぶち込まれた恐怖がわかる!?」

 

 城に入り、早速姫がいる自室へと乗り込んだマスターとアナスタシア。

 

「城主の部屋ならコックピット代わりに十分ね。ごめんねおっきー、後で文句は好きなだけ聞くわ。けど、今は私のお願いを聞いて欲しいの」

 

 刑部姫の怒りを華麗にスルーして、姫の自室を入念に物色するアナスタシアは納得したかのようにウンウンと頷き、姫の方へと体を向ける。

 

 それは今まではっちゃけてきた彼女らしからぬシリアスな表情。思わず刑部姫も姿勢を整えた。普段はジャージ姿でだらけにだらけて、マスターとのハメ撮りインスタライフという爛れた生活を送っている女だったが、腐っても王族。きっとこれがロシア皇女の威厳というやつなのだろう。

 

「お願いって……?」

 

 

「今ここでダーリンとセックスするわよ」

 

 

「……………………………………ふぁい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オルテナウス疑似性交開始……。『自家発電(VR)』による疑似魔力供給完了。あぁ、あぁ、あぁっ!!先輩、先輩、先輩ッッ!!真名、結合展開。これはあらゆるプレイ、ただ一つの愛を受けた貞操の城。呼応せよ!!『先輩に捧げた処女膜(ヴァージン・キャメロット)!!』

 

「我がロシアに異国の城を建てるか!!この不敬者共がぁぁっ!!朽ち果てろぉぉっ!!」

 

 連続で放たれるイヴァン雷帝の雷撃を前に、マシュの白精の城が完璧な防御を見せる。

 

 マスターとの性交によってサーヴァント達が受肉したように彼女もまたギャラハッドが肉体から退去した事による不足分の霊基を彼からの愛で補っていた。マシュが身を纏っている外部補助装甲『霊基外骨格(オルテナウス)』。VR越しに映る先輩との今までのメモリーでその装備はさらに強化される。

 

 その堅固性はかつての白亜の城をも凌ぐ。彼女の先輩への愛が揺るがない限り、その守りは決して崩れる事はない。

 

「崩れぬ!!崩れぬ!!何故、崩れぬ!!これだけ、打ち込んでも、何故ものともせぬ!?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……駄目、大丈夫、大丈夫ですよ先輩……私も初めてですから……もっと二人で肌を重ね合いましょう…………あっ、あぁぁ……」

 

 そして宝具の使用者は消費する魔力をVR越しの疑似性交で回復する。懸念されていた持久性もこれで解決。半永続的に続く無敵の守り。それこそマシュが得た新たな宝具。

 

「私の貞操を貫いていいのは――先輩の象さんだけなんです!!」

 

 ハァハァ、とVRゴーグルを装着したまま息を荒げ、恍惚そうに頬を染めながら、何度でも雷撃を防ぎ切るマシュの姿の何と凛々しい事か。

 

「貞操の概念が崩れる……これにはギャラハッド君も逃亡」

 

「止めてくださいアルテラさん!!心が傷ついている先輩サンタもいるんですよ!!」

 

 円卓の王は泣いていい。

 

 

「ふむ、彼女が頑張っているのなら、あまり時間もかけてはいられないな……」

 

「いや、一日ぐらいならぶっ通しで頑張れそうだけど……。アヴィケブロン……貴方、何をするつもり?」

 

 神話の時代の再現のような攻防劇を尻目に青いボディースーツとマントに身を包む仮面のサーヴァント。アヴィケブロンが姿を見せていた。

 チェイテピラミッド姫路城に手を添えているアヴィケブロンに武蔵が訪ねる。今の彼は何かを決意している雰囲気だった。

 

「勿論。この戦いの終焉だよ。僕がここに召喚された理由はそれだからね」

 

 アヴィケブロンを中心に尋常じゃない魔力が高まる。サーヴァントなら誰もが宝具発動の予兆だと気付くだろう。

 牛若丸が鞘に手をかけながら、剣呑な様子で尋ねる。

 

「仮面の魔術師殿……。主殿が入っていった城に一体何をするつもりだ……?」

 

『おっと――!心配無用だよ狂犬君!!これは彼とアヴィケブロン君が前から計画していた事だからね!』

 

 それを遮るようにダ・ヴィンチちゃんのハイテンションな通信が入る。

 

「あぁ、この城を下地にして僕の宝具を起動させる。山岳型魔獣と合体したイヴァン雷帝を打破する為の切り札を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――アヴィケブロン先生の王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)ね……。うん、素材は多分、こっちで用意出来ると思う。

 

 ――刑部姫のあらゆる国のサラダボウルともいえるチェイテピラミッド姫路城。そして、アナスタシアの残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)。宝具の材料としては申し分無い。後は……。

 

 ――却下。

 

 ――…………まだ、何も言っていないが。

 

 ――どうせ、「僕自身が炉心になることだ――」とか言い出すつもりでしょ?

 

 ――しかし、それが最適解だろう。

 

 ――アヴィ先生。貴方は人々を幸せにする為に『原初の人間(アダム)』を生み出そうとしたんだろう。そして、宝具はその願いを叶える為の至高のゴーレム。なら、それの核となる物が誰かの犠牲前提になってるなんて悲しいじゃないか。

 

 ――……代替案は無い。我が宝具がひたすたに魔力を喰らい続けるなら魔術回路を持った魔術師を捧げるしか無い。

 

 ――要は貴方の宝具が動き続けられるだけのエネルギーを中で生み出せばいいんでしょ?なら、とっておきの案がある。

 

 ――マスター、君は何を…………。

 

 ――…………………。

 

 ――あぁ、そうか。確かにアダムがいるのなら、イヴもいるべきか――。

 

 ――アヴィ先生、確かに始まりは迷える民を救いたい、人々を導きたいという救済だった……。けど貴方の根底にあったのはきっと、()えだったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例え、その先が地獄だったとしても僕は美少女ゴーレム製造師の道を進み続ける」

 

 アヴィケブロンの宝具の解放によって只でさえ、見た目が奇抜の極みだった城が音を立て、城壁を隆起させながら姿を変えていく。

 

「おぉ!?おぉぉ!?な、なんじゃ!?おさかべのバグ路城が変形し始めたぞ!!」

 

「私、見た事ありますこれ!!ニチアサとかで!!」

 

 ノッブとジャンヌ・リリィの驚嘆を尻目にヤガ達は只事ではないと、イヴァン雷帝ではなく、そちらに視線を送る。

 チェイテピラミッド姫路城から、そのバランスの悪い部分を補うようにアナスタシアの宝具、『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』により、純白の城塞がいくつも生えてくる。

 

(はは)に産まれ、(ちせい)を呑み、(いのち)を充たす」

 

 それはまだ前兆。もはや建造物ですら無くなったその城はさらなる変貌を遂げる。生物のように蠢き、手足を模る。流れるようなアヴィケブロンの呪文が不思議なぐらいそこにいた全ての者達の耳に届いた。

 

「霊峰の如き巨根は、巌の如く堅牢で。万女を誑かし、万女を堕とし、万女を支配する貌を持つ」

 

 内向的ツイッター系女子刑部姫の『チェイテピラミッド姫路城』と外向的インスタ系女子アナスタシアの『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』はアヴィケブロンの宝具にはこれ以上ないぐらいの素材だった。

 

「汝は獣にして獣にあらず。汝は人間にして人間にあらず。汝は楽園に佇む者、楽園を統治する者、楽園に導く者」

 

 巨大な城がその堅甲な城壁で手を、足を、目を、口を、髪を、スカートを、模していく。

 二足でしっかりと立ち。体を徐々に起こすその姿はイヴァン雷帝と何ら遜色無い大きさを持った巨人だった。

 

「汝は我らが夢、我らが希望、我らが”親愛”……。イヴ達を抱く汝の名は――――『原初の人間(アダム)』なり」

 

 大きく開いた愛嬌のある瞳。白石が造り上げた腰まで伸びた髪とスカートのような物は目の前の巨人の性別が雌だとわからせる。ドレスのような外装に身を包んでいる巨体は元が城だった事を忘れさせてくれる。

 

 

 それは紛うことなき、()()()()()()()()()だった。

 

 

 

「そう……。僕は彼等のセックスエネルギーを炉心とした」

 

「このゴーレムマスター、イイ声でトチ狂った事言い出したわよ」

 

 

 魅せるは天下一のゴーレム術、材料は極東と極寒の姫達の城と城塞、力の源となるのは巨人の中で交わる獣の性交。

 全てのピースが何一つ欠ける事なく嵌った奇跡の作品。そのゴーレム……宝具の名は『ダーリン・イン・ザ・セックス』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『通い妻オーバーラン』
ランク:EX
種別:契約宝具
使用者:ビースト0/デアー
押しかけ女房とか素敵やん?
英霊編における『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』はサーヴァントという形で召喚された彼の霊基の限界により、数人しか呼び出せないが。人類悪化した彼は自身の妻を瞬時に人数制限無く呼び出す事が出来る。生涯を寄り添うと誓った伴侶達をいつでもどこでも召喚する人類悪デアーの第四宝具。
その1:呼び出す事が出来るのは彼との性交によって受肉したサーヴァントに限る。
その2:彼の助けに応じる妻の合意が必要。一方的は駄目。
その3:自身の傍という縛りはなく、彼が明確に場所の指定をする事が出来れば、遠隔多数召喚も可能。




安穏に浸れ、最高の思い出に( ル・メイユール・スーヴニール)
ランク:A
種別:対心宝具
使用者:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ
若干ボテ腹になりつつある親友(アリス)が羨ましくなっているお年頃のリリィの新宝具。その者の心に最も響くメモリーを脳裏に投射するプレゼント兵器。本編の通り、あくまで対象が幸せに感じてしまう場面を想起するので、本人が必ず経験した過去を想起しているとは限らない。特に何一つ幸せな思い出が無かった者にはクリティカルな浄化宝具ともなる。「シェイクスピアさんの意地悪宝具と一緒にしないで下さい!!」
以下、面白半分で宝具を受けた者達の記録の一部抜粋。
【監獄塔のような場所で6日にわたる焦らしプレイを受け、マスターと最終日は「しゅき、しゅき、あなたの事がだいしゅきなのぉぉ……もっとぎゅってしてぇ……」と普段は絶対言わないような甘いボイスで全裸でズンズンパコパコしている黒聖女】
【同じ大学のゼミ仲間で、二日に一度はランチを一緒して、週に一度は観光(レジャー)に出掛け、月の半分以上は同衾している程度の友達が婚約の決まった自身を助ける為に実家と婚約相手の家の追手を振り切り、駆け落ちをする。お金も無く、頼るべき相手も互いに目の前しかいなかったけど、それでも私達は幸せだったわ。彼の瞳には私が映っていて、私の瞳には彼が映っていた。まるで映画のようだったわ。そしてヘトヘトになってたどり着いた誰も来ないであろう島で二人きりになった私達は永遠の愛を】






先輩に捧げた処女膜(ヴァージン・キャメロット)
ランク:A+
種別:対人宝具
使用者:マシュ・キリエライト(VR)
マシュ・キリエライトは思い返す。あの日、冬木のレイシフトから帰って来て、真っ暗な部屋のマイルームの隅で座り込んでいる先輩の瞳を。所長を失って全てをごちゃ混ぜにした底の見えない泥のように濁った瞳を。もしかしたら、あれがきっかけだったのかもしれない。先輩が人類悪に到る一つ目のきっかけ。マシュ・キリエライトはただただ目の前の男を抱き締めていた。気づけば二人は生まれたままの姿で慰め合っていた。お互いの初めてを捧げた。その日からかもしれない。彼の箍が外れたのは。彼が性的な温もりを求めたのは。情を交わし合った人達と離れ離れになる事を恐れたのは……。だがマシュ・キリエライトは先輩に捧げた純潔を後悔する事は無い。あの時の思い出はたとえ死んでも失われる事のない聖域。その処女膜は彼以外に何人たりとも壊される事の無い究極の守り。新たに建ったキャメロットはそんな彼女の精神を具現化した宝具。
って書けば、円卓の方達も納得してくれませんかね。






『ダーリン・イン・ザ・セックス』
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:ビースト0/デアー、アナスタシア、刑部姫、アヴィケブロン
素材に防御性に秀でた『チェイテピラミッド姫路城』と攻撃性に秀でた『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』。炉心はかの人類悪のsex energy。製作者はゴーレムマスターアヴィケブロン先生。
長い髪、パッチリと開いた瞳、膝まで丈のあるスカートに膨らんだ胸部という外見を持つ女型ロボット……ではなくゴーレム。攻撃、防御、共に最上級とも言えるが、それ以上に特筆すべきはその回復力とも言える。
コックピットでマスターと彼女達が性交し続ける事で稼働する宝具。そも人の始まりはセックスとも言えるのならばパートナー同士が互いに愛し合うエロス以上のエネルギーは無いだろう。
「今日から貴方が私のダーリンよ」









英霊:グダお

第一宝具:『百式官能』
第二宝具:『模倣(まねっこ)宝具』
第三宝具:『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)
第四宝具:『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
第五宝具:『這い寄る絶望(リョグダコ・ポテプ)
第六宝具:『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
第七宝具:『Call Dear(親愛なる 貴方へ)




人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:『模倣英霊』
第三宝具:――
第四宝具:『通い妻オーバーラン』
第五宝具:――
第六宝具:――
第七宝具:――





次回 第2部 1章 完結。

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