※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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あけましておめでとうございマ!

本編だと思った?残念、200万UA記念&アポアニメ完結記念の特別編なのじゃ!

綺麗に終わったアニメに聖杯の白い泥を塗りたくっていくスタイルぅうっぅぅ!









0話にて、葛飾北斎更新。


白のビースト編
ビーストウォーズ①(Fate Apocrypha編)


 ifの世界、並行世界……あるいは剪定事象と呼ばれる物がある。

 

 

 

 可能性の数だけ、ifの数だけ、世界は分岐していく。大樹から分かつ多数の枝のようにどこまでも。

 

 

 

 だが、あまりにも枝が多いと栄養を吸われ続けた大元の樹は枯れはててしまう。正史とも呼ぶべきメインのルートが、いや世界そのものが増え続ける分岐の量に耐え切れず崩壊するだろう。

 

 故に、その世界の先がどん詰まり……わかり切った結末。すなわち未来が良い意味で悪い意味でも完全に定まってしまった世界は剪定されなければならない。不要な枝は切り落とされるのが運命。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠い遠い、どこかの世界――――。

 ルーマニアにて、黒の陣営と赤の陣営に分かれて起きた大規模な聖杯戦争があった。

 

 赤の陣営のマスターでもあるシロウ・コトミネこと天草四郎は大聖杯を使い、ある悲願を成就させる為に戦った。

 

『全人類の救済』

 

 全ての人類を不老不死という新たな存在に書き換える……魂の物質化。個人の欲望と争いを無くし、万人が善性で万人が幸福である世界。

 

 成程、確かに未だ誰も為し得た事のない未知の領域であろう……その世界は――――。

 

 もしかしたら、天草四郎の理想通り、全ての人間が幸せになれるかもしれない。

 あるいはその方法でも彼が思い描いた救いは全人類に訪れないかもしれない。

 いや、完成しきった世界として剪定される可能性もあるか。

 

 どちらにせよ、彼の願いはその聖杯戦争で果たされる事は無かった。

 

 天草四朗が聖杯戦争の勝者となり、全人類に救済をもたらす歴史は敗れ去った。

 星からすれば、それは繁栄なき、過った選択肢で作り上げられた『異聞帯(ロストベルト)』なるものか――――。

 

 

 

 天草四郎の夢を阻んだ一番の要因に上げられるのが名も無きホムンクルス……竜殺しの英霊の心臓を授けられ、後に自身の肉体を英霊と化して戦う術を得た『ジーク』という名のホムンクルス。

 

 

 彼がこの群像劇とも呼ばれる聖杯戦争で重要なピースの一つだったのは言うまでもない。

 

 魔力供給の糧とされる一ホムンクルスでしか無かった彼が自我を得て、魔力供給槽から脱出し、黒のライダーから助けられる所から物語は始まったと言ってもいい。

 

 

 だが、もしも――――『ジーク』なる少年がいなければ?

 

 

 

 もしも、黒のライダーがたまたまそのホムンクルスが倒れた所に出くわさなかったら?

 もしも、他のホムンクルスの捜索の手が偶然にも早く彼まで届いてしまったら?

 

 捕らえられ、供給槽に連れ戻され、魔術回路を駆動させたとして、黒のキャスターの宝具の炉心として彼の短すぎる人生は終わりを告げるだろう。

 

 そして、全ての人類救済を願った聖人の願いを果たすのに邪魔な最大の障壁は歩き出すことすらなく消える事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……! はぁっ…………! はぁっ……!」

 

 

 現に今、()()()()において、生まれたままの姿で城内を這いずり回っていた彼に都合の良い救いの手が伸びるとは思えない。

 

 肩まであるウェーブがかった薄茶色の髪を乱し、筋肉が殆どついていない線の細い体へ必死に活を入れて逃げる。

 

 だが、もう捜索中の他のホムンクルスの足音が近くまで迫っている事がわかる。

 彼らはただ単に創造主の言う事を聞いているだけ、そこに感情の有無は存在しない。言われたままに逃げたホムンクルスを捕えるだけ。

 

 

「……い、いやだ……」

 

 性差を感じさせない、整った顔を歪ませて彼は体を動かし続ける。

 

 

(わ、わからない……自分がこれから、何をしたいのか、どうして、こんな事をしているのか……)

 

「見つけたぞ! あそこだ!! 」

 

(でも、一つだけわかる事はある…………自分はまだ、死にたくない……生きていたい……!)

 

「いやだ…………!」

 

 すぐ傍までにじり寄ってきている希望も無い未来に駄々をこねるように彼は涙し、拒絶する。

 

(だって……だって……!まだ、何もしていない……!こんな所で、終わりたくない……!)

 

 数人のホムンクルスの手が遂に彼の体を捕らえた。

 

「いや、だ……! いや、だ……! いやだ! は、なして……! は、なして、くれ…………!」

 

 駄々をこねる子供のようにその手を振り払おうと、必死にもがく。だが、他のホムンクルス達の手は離れる事はなかった。

 消えかけた灯火。彼の命運は今、尽きようとしていた。

 

(だれ、か……たすけて!!)

 

 現実は非情である……。弱々しくも必死な抵抗も、そのか細い願いもこの世界の耳に誰にも届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(だれでも、いい……! お、ねがい…………!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?今、誰でもいいって言った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「なっ……!?」

「だ、だれだ……!?」

「侵入者……!」

 

 

 異なる世界の狭間の扉は開かれた――。それは橙色の少女の想いに応じて、サーヴァントとして召喚された男ではなく一匹の獣として君臨する。

 

 

 ここは分岐点。本来ならば物語の主人公になる筈だった少年の大きな分かれ道。何者にもなれずに道具として死ぬ彼の未来は今、消えた。

 

 

 暴れる彼を押さえつけていたホムンクルス達はまるで最初からそこにいたように語りかける()()かを目にした瞬間、自らの使命、捕らえていたホムンクルスの事さえ忘れて距離を取った。

 純粋な人工生命体故か、この侵入者は駄目だと悟っていた。自分達が億単位の束で立ち向かおうとも、絶対に敵う事はない。

 

 比べるのが馬鹿らしくなるほど、生き物としてのスペックがあまりにも違い過ぎると。

 

 何よりも―――。

 

 何よりも一番恐ろしいのは、それ程までに力量差があるというのに、何故か自分達が目の前の存在にそれ程、恐怖や嫌悪感を抱けない事。

 

 

「ショタショタしい全裸の美少年を数人で捕縛しかかるとか、どう見ても薄い本案件じゃん。おっきーあたりが喜びそうじゃんよ」

 

 あぁ、だが……その分岐点に乱入した異分子は、枝どころか大樹さえも枯らしかねない劇物。

 

 

「だがここは現実、そんな抜けない展開はヒュー!とばかりにブレイクさせて頂きます」

 

 倒れていた美少年を突如としてこの世界に現れた訪問者は抱き起こす。抱えられていた彼は落ちかけている瞼を何とか開き、その風貌を瞳に入れる。

 

 

 

 所々乱雑に跳ねている腰まで伸びたその長い黒髪は獣の如く。

 

 腰に巻かれた白き外套。その獣が服として纏っているのは下半身のそれぐらいだった。

 

 ありのままの上半身、その肉体は筋骨隆々とまではいかないが、かといって痩身でもない、バランスの良い肉付きをしている平均的な体付き、なのに眼を離せずにはいらせない幼さと色っぽさといった相反する物が両立している魔性の魅力……。

 

 剥き出しになった上半身の至る所に令呪らしき、赤い刺青のような物が浮かんでいた。まともなマスターが見たらまず卒倒する出鱈目な画数。そして、少年の瞳には映らないが……その刺青は背中まで伸び、ある紋様を形作っていた。

 

 それはこの世界には存在しない……時計塔の天体科に所属している貴族でもあるアニムスフィア家が管理している『人理継続保障機関カルデア』のマークと酷似していた。

 

 

 

 助けられたであろう名も無きホムンクルスは朦朧した意識を踏みとどめ、振り絞った力で問いを投げかけた。

 

 

「あなたは……いったい……?」

 

 

「ふむ、ショタショタしい少年よ……。問われたのなら答えよう……そうさな。どうせならこの聖杯戦争の流儀に沿おうじゃないか」

 

 

 ホムンクルスを抱いていない方の手で、ギラ゛ン゛ッッ☆と横ピースを決めたその獣は言葉を続ける。トゥリファス……ユグドミレニア一族の本拠地たる城で何一つ慌てる事なく、ありのままで。

 

 

「ていうか、前から思っていたんだが、赤と黒があるのに、あの色が無いのもどうかと思うんだ。紅白歌合戦然り、オセロ然り」

 

 

 その存在の何もかもが異質、異常、異端。異分子なる『彼』が纏う空気を正しく感じ取っている他のホムンクルス達は逃げる事も、戦う選択肢も取れない、許されるのは只、呆然と立ち竦む事だけ。

 

 

 だが、助けられたそのホムンクルスは……。

 

 

「うん、やっぱり何だかんだでこの色が俺にはぴったりだと思うんだ。未来はいつだって『白』紙。諦めない人間がいる限り、どんな色にでも染まっていくだろう」

 

 

 ―――心臓の鼓動が高まるのが止まらない。

 

 

 本来なら物語の主軸たる役割を与えられる……『ジーク』と呼ばれる筈だったそのホムンクルスは同族達とは全く正反対の印象を抱いていた。

 端的に言えば、見惚れていた。眼が離せなかった。助けられたそのホムンクルスは今、胸の中にある熱い感情が何なのかわからなかった。

 だが、その者はずっと供給水槽の中にいた彼が()()()()()()()見た『人』だった。

 

 

「故に! ここに! このルーマニアにて行われる大聖杯戦争に!! 第三勢力として!! 『白』の陣営として参加する事を表明しよう!!」

 

 

 ―――この動悸はきっと恐怖からではない……じゃあ、なんなのだろう…………?

 

 わからない……。けど、知りたくてしょうがない。もっともっとこの『人』を見たくて仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはサーヴァントの物語ではない。

 

 これはマスターの物語ではない。

 

 これは聖人の物語ではない。

 

 

 

 

 

 ――――あぁ、それにしても、なんて。

 

 

 

 これは、人間(ヒト)が願いを叶える物語でもない。

 

 

「親しみを込めてこう呼ぶがいいさ! 『白のビースト』と!!」

 

 

 ――――なんて、綺麗な『人』なんだろう…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは全てを台無しにする物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぐっぅ………! 我が居城に、土足で踏み込む命知らずがいるとは……」

 

 同時刻、『白のビースト』と名乗ったナニかがユグドミレニアの一族が保有するミレニア城塞に現れた時、当然のことだが、玉座の間にいるユグドミレニアの主たるダーニックと、そのサーヴァント、黒のランサーも何者かがこの城へ侵入した事は気付いていた。

 

 余りにも強大で異端な魔力を感じ取った黒のランサーこと、ヴラド公は玉座からよろめきながらも、威厳を失いまいと、ダーニックに出処を調べさせていた。

 同様に蒼白になりつつも、彼もユグドミレニアの主……。醜態は晒せまいとホムンクルス達を動かしていたが―――――。

 

 

「ハァッ……ハァッ……赤のサーヴァントでしょうか……」

 

「白々しいぞ……ダーニック、それとも余に否定でもして欲しいのか?」

 

「ならば……」

 

「あぁ、この気配はサーヴァントではない。かといって魔術師でも、只の人間でもない、我々の想像外の化生の類であろう……」

 

 忌々しそうに、そう呟く王。

 

 

 正確に言えば、侵入ではない、城を取り囲んでいる結界にも反応せず、あらゆる魔術的な監視の眼を掻い潜り、この城に現れたのだ。それは気配遮断のスキルを持っているアサシンのクラスであったとしてもそんな真似が出来るかどうか……。

 平常を取り繕っている黒の槍の主従の二人に冷汗が浮かぶのも致し方無い事。もし、そんな存在が赤の陣営にいたら、自分達マスターに安息の地はないという事になるのだから。

 

 その何者かが現れてから、黒の陣営全員を覆う形容し難い重圧。強大な敵を目の前にした恐怖ではなく、得体の知れないナニかがいるという未知そのものが覆っていた。

 

 人間だろうと、英霊だろうと、全ての生き物にとって最も忌避すべき恐怖は「未知」である。

 どんなに強大であろうとも、戦力差が絶望的であろうとも、わかる脅威、理解できる恐怖なら、挑む事は出来る。対処も出来る、何かをしようと具体的な行動が出来る。

 ただ、人はナニがいるのか、わからない。何のかすらわからない……底すら見えない真っ暗な「未知」があると、途端に進むべき方向がわからなくなってしまう。理外というのはそれだけで人を縛る鎖になる。

 

 だからこそ、人はその「未知」を消す為に、学び、進み、理解する。自分の世界から理解不能な物を消そうと、せめて何かしらの答えを得ようと。

 

 

 

「だが、何が来ようとも、理外のナニかであろうとも、余が侵略者を前に狼狽する事はあり得ぬ」

 

 ダーニックも黒のランサー、ヴラド公もこれはサーヴァントではないと断言出来た。

 だが、それは現段階で自分達が計る事が出来ないナニかの接近を許している事になる。どこにいるのかも何者かすらも……。

 

「僕のゴーレムでも、向かわせるかい……」

 

「いや、まだよい。狭い城内でいたずらに貴様の宝具を使っても二次災害に繋がる可能性が高い。まずはホムンクルス共に、下手人の正確な居場所と正体を掴めさせるとしよう」

 

「あ、あぁ!! そ、そうだ!全く! たかだか、侵入者一人を報告するのに一体どれだけの時間がかかっている!! 赤のバーサーカーもやって来ているのだぞ!!」

 

 未知の恐怖を紛らわすかのように、黒のセイバーのマスターであるゴルドがその肥満体質な体を揺らして、ホムンクルス達の製作者として癇癪を起し、が鳴り声を上げる。

 赤のランサー戦で何も成果を上げる事が出来なかったせいもあるか苛立ちを隠そうとしない。

 

 その後ろに控える黒のセイバーは何も語る事はしない。この城にて現れたであろう驚異に戦意を滾らすだけ。

 

 いま、この玉座の間にいるのは槍の主従、剣の主従、黒のキャスターの計5名。

 

 

 

 

「先生ッ! 先生! 大変です!!」

 

 そして、そこへ慌ただしく、癖っ毛の小柄な少年……黒のキャスターのマスターであるロシェが彼らしからぬ血相を変えた顔で飛び込んできた。

 

「どうしたロシェ。侵入者の正体が掴めたのかい……?」

 

「違うんです……違うんです……ホムンクルスが、ホムンクルス達がッ……!!」

 

 呼吸を整え、その続きを話そうとするロシェに、師でもあり、サーヴァントでもある黒のキャスター、アヴィケブロンが促す。どうやら吉報ではなさそうだが……。

 

「ちっ……! 返り討ちにあったというわけか!! 所詮は人形か!!」

 

「やはり、余達、自ら赴かねばなるまいか……」

 

 

 

「違うんですっ……! ホムンクルス達が全員、消えたんです!! 忽然と!!」

 

 腰を上げた、ヴラド達を制するようにロシェは叫ぶ。自分自身も信じられないと取り乱すように。

 

「警備に当てていたホムンクルスも! 捜索に向かわせたホムンクルスも! 供給槽に入っていた全てのホムンクルス達も! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! まるで神隠しにあったみたいに!!」

 

「は?」

 

 ポカンと珍しい間抜け顔を晒すダーニック。

 

「ファアアアアアアッ!?」

 

 そして状況を理解するのに数十秒有したゴルドは、奇声を上げて、泡を吹きながら失神した。

 そんなマスターを何も言わずに支えてあげる黒のセイバー、まじすまないさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニア城塞にて、全てのホムンクルス達が消えたのを、時同じくして樹々が生い茂るトゥリファスの地でもう一つの城が突如として現れた。

 

 

 その城はミレニア城塞よりも強大で堅固であり――。

 

 しかし、ルーマニアの地にはそぐわない和の作りであり―――。

 

 日本の城マニアがいれば、「お、姫路城か!」と一瞬気づき、全貌を見て「いやナンダアレ?」と吹き出す事必至――。

 

 

 

 異文化交流、違法建築上等なその城のかつての名は『チェイテピラミッド姫路城』。

 

 

 

 しかし、当時のように継ぎ接ぎかつ無理矢理な造りではない。

 何ということでしょう――。姫路城の和のイメージを乱さない為に、瓦と石垣で下にあるチェイテ城とピラミッドが形作られているではありませんか。

 かつては色もバラバラちぐはぐだったトンデモ建築物は完全に一つとなり、姫路城と同じ「白」のカラーで統一された城と化けました。

 三つの城を完全に一つとして同化させた匠の技に感嘆の溜息が漏れてしまいます。

 

 まさにルーマニアに現れた至高の芸術。

 

 そしてその異物なる城に異界から訪れた『白のビースト』は初めに助けたホムンクルスを始めとした全てのホムンクルス達を連れ込んだ。

 

 この城、宝具の名は『三白城の性鬼深愛獣様』

 

 

 

 

 

「あ?」

 

「な、んだ……あの奇怪な城は……? いや、城なのか、アレは……?」

 

 シェイクスピアの口車に上手く乗せられていたスパルタクスを監視する命を受けていた赤のサーヴァント、赤のアーチャー……アタランテ。赤のライダー……アキレウス。

 木々の間を駆け抜けていた二人の足が思わず止まってしまった。突如として現れた奇妙すぎる巨大な城に。

 そして、その城に目が引かれたのは二人だけではない、笑顔が絶えない強健なマッスル。

 

「お、おぉぉぉ!!圧制者!!あっせいしゃ!!アッセイシャ!!あの城に世界そのものを押し潰しかねない、人類の圧制者がいる!!アハハ、ハハハハハハハハ!!ア――――ハッハッハッ!!素晴らしい!!我が愛を示すのに、これ以上無い程に相応しい!!凱旋の声を上げる為、いざ征かん!!ハハハハハハハハハ!!!」

 

 それは反逆者の英雄である彼の本能か、この戦争における最も強大で凶悪な者の反応を嗅ぎ取ったのかもしれない。

 赤のバーサーカーである、スパルタクスは。ミレニア城塞を目標にしていた進路方向を突然変え、白き城へと走り始めた。

 

「ま、待て! スパルタクス!!」

 

「チッ、一体なんだってっんだよ!!」

 

 

 目まぐるしく変わる状況、制御が効かないスパルタクスを追って二人は巨大な白城へと近付く。

 城門まで迫ればわかる……見上げる程に巨大な城。外見と構造も含め、異様な佇まいに思わず、ギリシャ神話を代表する二人の英雄は息を飲んだ。

 

「これは……月にまで届きそうだな……」

 

「姐さん、この馬鹿でけぇ城は黒のやつらの宝具か?」

 

「それしか考えられまい。吾等の陣営でわざわざこのタイミングで宝具を使う者などいないだろう。あの女帝もこんな奇抜な城は作りはせん。黒の陣営が本拠地に責められるのを嫌がり、サーヴァントの宝具でこっちへ誘導した可能性が高い」

 

「だろうなぁ。バーサーカーの野郎は気にも留めてねぇか。どうせ聞く耳持たねぇなら、斥候役としてド派手に突っ込んでもらうかね」

 

「アーハッハッハッハッ!!! イクぞ!! 我が愛で圧制者を打ち滅ぼすべしぃ!! ハハハハハハハハハ!進め!! 進め! 進めぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ、それ以上、先に進む事はまかり通りません、トラキアの剣闘士よ。どうかお帰りを。ここで引くのなら、命までは取りません」

 

 これが黒の陣営の宝具だと、致命的な誤解をした二人とバーサーカーの前を阻む者がいた。

 白き城、かつてのチェイテ城にあたる城門が見えた時、そこを守る一人の金色の長髪をたなびかせる純白の剣士が。

 

 下着が見えそうで見えない丈がギリギリなスカートを穿き、纏うは純白のドレス、まるで闇と光が交じり合った黒と金の粒子に包まれた剣を大地に突き立て、仁王立ちしている剣士がいた。

 

 一見すると穢れを知らない少女のように見えるせいだろうか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はやけに生々しかった。

 

 

 その者の名前が『白のビースト』と名乗った訪問者の名前とはここにいる赤の陣営は知る良しも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――もう、姫のお城は託児所じゃないんだけど――――。いきなり、異世界ダーツの旅始めたと思ったら、魔術師のホムンクルスを大量拉致とか、マーちゃんはいつからテロリストになったのかにゃー? え、テロリストじゃなくて、ビーストだって?アッハイ、そういう事言ってるわけじゃないんだけどね。

 

 

 

 声が聞こえる。

 

 自分はどうしたのだろうか。

 

 酷く記憶が曖昧だ。

 

 

 

 ―――さすがにこの『三白城』の最上層。姫のマイルームには全員は無理だよ。マーちゃんがわざわざ連れてきた腐なお嬢様方か、あるいは男の娘スキーな大きいお友達の大好物になりそうなショタンクルスちゃん以外は、チェイテ層とピラミッド層の所で療養中です。まぁ、突然、誘拐されたんだから、困惑状態だけどね、皆。

 

 

 

 自分が何者なのか、何をしていたのか。

 

 自己の情報を構成する最低限必要な物さえ、簡単に出てくれない。

 

 俺は…………俺は――――。

 

 

 

 ―――うえ? ゲームと漫画、テレビに、小説に、スポーツ用品も与える?まずはこの世界にある物、ホムンクルスとしての生き方だけじゃなくて、ありとあらゆる生き方に続く娯楽の入り口を教えると?ほぉー、ほぉー、ま、あの子達は生まれたての赤ん坊みたいなもんだからね――、いいんじゃないの? 姫は認知しないけどー、自分の子供の事で手一杯ですもん。

 

 

 

 聖杯戦争……。

 

 そうだ、その戦争の為の消耗品として俺は、水槽の中にいて……。

 

 そこから、そこから…………死にたくないと願って、魔術を使って、逃げて、そこから、そこから――――。

 

 

 

 

 

 

 

「おや、目が覚めたかい?」

 

「あ…………」

 

 

 蒼空のような綺麗な瞳、荒々しい黒髪に、燃え滾るような上半身の紅い刺青。

 そうだ。今、目の前にいるこの人に俺は救ってもらったんだ。

 自分ではどうしようもない状況だったのを、突然現れて、まるで英雄(ヒーロー)みたく。

 

 そうだ、まずはお礼を。助けてもらったのだからお礼を言わなければ、世間知らずのホムンクルスだが、それぐらいの事は知っている。今、目の前にいるこの人に礼儀知らずと思われたくない。

 

「あ、あり……あ……ありが…………」

 

「慌てなくていいよ」

 

「あ……」

 

「あんな体で城中を這っていたんだ。それに今は俺が与えた聖杯も完全に馴染んでいない、ゆっくりでいい。深呼吸して、落ち着いて、目を閉じて、開けて、繰り返して、俺はここにいるから」

 

 震えていた手をギュッと握り締められる。

 焦っていた自分の心を溶かしてくれるような暖かい手が両手ごと包んでくれていた。心地良くて、なのにどうしてか恥ずかしくて、振り払いたい気持ちもあって…………。けど、今は言葉を、言葉を伝えないと。

 

 

 ―――ありがとう。

 

 

「助けてくれて……ありがとう……」

 

「うん、どういたしまして」

 

 

 やっと、やっと。この人ときちんとした形で言葉を交わせた気がする。

 

 

「ちょっと――、ここにあらゆる草食系オタクがほっとかない姫がいるんですど――、その姫をほっといて何をイチャコラしてんだ、こらー」

 

 声のかかった方向を見ると、テーブルと寝具が一体化した不思議な家具の中に入ってリラックスしている一人の女性がいた。

 眼鏡をかけた黒髪の女性、袖の無いゆったりとした上着を羽織っている。外見からもこの国の人間には思えなさそうだが…………。

 そう言えば、さっきからこの人の瞳に夢中になっていて気付いていなかったが、どうやらもうミレニア城塞ではないどこかに自分は連れてきてもらったらしい、色彩鮮やかで派手な絵が描かれた貼り紙が壁の至る所に、整った男女が色んなポーズを取っている人形達、それに見た事がない機械がたくさん。

 

 自分はそんな部屋に敷かれた寝具の上で眠っていたらしい。既に全裸ではなく、白く薄いローブのような物を着ていた。気を失っている間に誰かが着せてくれたのだろうか、何から何まで本当に申し訳ない。

 

「サー、ヴァント……?」

 

「ぶっぶー、残念ながら違うのだー。もはや姫はサーヴァントなど、格の低いカーストからツーランクぐらいアップした勝ち組へと昇格したのであーる。今、この場においては『白のアサシン』様と呼ぶがいいさ! あーはっはっはっはっ!」

 

「いいね、その小悪党臭。おっきーぽいよ」

 

「マーちゃん、失礼」

 

『白の陣営』、『白のビースト』、『白のマスター』…………何となくだが、繋がってきた。今、自分がどういう状況にいるのかが。

 黒の陣営に使われる道具として、俺にもこの聖杯戦争における最低限の知識は備わっていた。

 俺が……そして俺と同じ同胞達が所属していた黒の陣営と赤の陣営。

 

 だが、俺の知識の中には白の陣営なる存在は無かった。

 元々、この戦争は黒と赤の二つの陣営に別れて、勃発した戦争。そこに本来第三勢力が出る事は無い筈だ。ならば、どうして――――。

 

 

「さてと、じゃあ、俺はそろそろ大々的な宣戦布告に行ってきますかねー。おっきー、準備はいい?」

 

「はいはい、出来てますよーっと。全く、姫の配信チャンネルは戦争の道具じゃないんだけどー、と文句を言いながらもマーちゃんに頼られるとついついキャラ崩壊をしてしまう程に働いてしまうわたしのぶれっぷりよ。あるてらっちの方がうまく引きこもりライフを過ごしている気がするの――」

 

 ――グイッ……。

 

 パソコンのキーボードを目にも止まらぬ速さでカタカタと打ち込むおっきーと呼ばれた女性。そんな彼女に一声掛けて出ていこうとするあの人の服を俺はつい、掴んでしまった。

 

 

 

「ん? どうした?」

 

「いや、あの…………こ、れから戦いに行くの、ですか……?」

 

「ふふ、慣れないなら敬語は使わなくていいよ。話しやすい言葉ではなしな」

 

「貴方が何者なのか、まだ分からないけど、俺を助けてくれた事だけはハッキリとわかる…………けど、けど、その為にこれから戦いに行くのは…………」

 

 

 もしかしたら、自分を助けたからこの人はこれから戦争の場に赴き、傷を負いに行くのではと、ついそんな自惚れた事を考えてしまった。

 万が一にもそれが本当だとしたら。

 

 

「なんで」

 

「?」

 

「なんで…………なんで、俺なんかを助けてくれたんだ? 俺は何も持っていない……俺は、お、れは貴方に返せる物が……何もない……なのに、どうして?」

 

 さっきの『ありがとう』も本心からだ。今、自分がこうして生きている事も心から喜んでいる。あのまま捕まって良かったなんてこれっぽちも思ってない、だけど、それと同じぐらいに疑問があった、こんなに強い『人』がどうして自分()()()を助けてくれたのか。

 申し訳無さすら感じていた……こんな凄い人に自分のような、まだ名前すら無い空っぽの人形が救ってもらって良かったのか。

 

「親切心が不安なら理由をつけようか?」

 

「わわっ!?」

 

 両脇を掴まれ、持ち上げられる。幼子をあやす親のように。

 頬が熱くなり、さっきはあんなに見たかったこの人の瞳から急に眼を逸らしたくなった。あぁ、もしかしてこれが恥ずかしいという感情なのか?

 

「使い古された言葉だが、『気付いたら体が動いていた』っていうのがあって、これは案外、真理を突いていると思うんだよ。他者、モラル、理性、自身の行動によって起こる結果、影響、因果、打算、ある瞬間、そういった物を全て取っ払ってただ一つ自分がヤりたいと思う行為だけが残る事がある。それしか頭に浮かばない事がある」

 

 高い高いされながら、俺はこの人の言葉に耳を傾けた。

 

「人はそれを『本能』と呼ぶ。俺が君を助けたのは、それに従っただけの事。理由を答えるのなら『助けたいから助けた』なのさ。君だって『生きたい』というその願いは誰かに決められたわけじゃないだろう?何で生きたいのって聞かれたら、『生きたいからさ』としか答えようがないじゃん」

 

 確かに……。

 あぁ、そうだ。俺がどうしてか、供給水槽から魔術を使ってまで脱走し、碌に歩き方も知らない体で逃げ回っていたあの時、ただ、頭の中には『死にたくない』『生きたい』という想いだけが鳴り響いていた。この願いは確かに誰か言われて決めたものじゃない。

 

「少年、君のその願いは誰に憚られる事なく、口にして良い純粋な願いだ」

 

「俺は…………生きてていいのか」

 

「当然だとも、それは君の『本能』だ」

 

「俺は、貴方に……助けられていい、のか……?」

 

「モチのロン。むしろもっと『助けてー!』って甘えてくれてもいいんだぜ」

 

「はは、ははは」

 

「おぉ、やっと笑顔を見せてくれた。ちょっと半泣きだが、実に良い。グッドな表情だ」

 

 

 緊張の線と涙腺が緩み、眼に少しだけ涙が浮かんでしまった。みっともない顔を目の前にいるこの人に見られたくなくて、すぐに拭う。というかそろそろ降ろして欲しいのだが、確かに貴方からすれば赤ん坊のようなものかもしれないがその……いつまでも子供扱いは恥ずかしい。

 

 だけど、自分の『生きたい』という願いが間違いじゃないって他でもないこの人に認められたのは、自分がこの世界で得た初めての宝物、そんな気がした――――。

 

 

「そういえば、いつまで経っても君とか、少年呼びだとアレだな。ふむ、ショタキュートな少年、君の名前は無いのかい?」

 

「名前……?」

 

 名前か……。

 ずっとあの魔力供給槽にいた時も、「あれ」だの「これ」だのしか指されることしか無かった。便宜上、識体番号のようなものはあるが、これは彼が尋ねている名前の事ではないだろう。

 

 名前、俺の名前――――。

 

 

 

 ―――未来はいつだって『白』紙。諦めない人間がいる限り、どんな色にでも染まっていくだろう。

 

 ―――『白』の陣営として参加する事を表明しよう!!

 

 ―――親しみを込めてこう呼ぶがいいさ! 『白のビースト』と!!

 

 

 

「しろ……」

 

「ん?」

 

「シロ、俺の名前だ……『シロ』。貴方にはそう呼んで欲しい…………だめ、か?」

 

「いや、君にぴったりな名前だ。ようこそ、『人』が生きるこの世界へ。ハッピーバースデーだ、シロ」

 

 

 あぁ――――。

 

 

 自分の名前を呼んでくれる人がいる。自分という存在を認め、語り、微笑みかけてくれる人がいる。生まれてはじめ見たこの『人』をもっと見たいと、もっと知りたいと思った。

 

 

 ――――彼の事を知る。それは俺が『生きたい』という想いの次に浮かんだ確かな願いだった。

 

 

 

「むむ、むむぅ―――? 何だかラブコメ臭がするんですけどぉ――、姫空気になってない?もしも―――し?」

 

 

 

 

 




《その後、白のビーストが姫ルームを出てから少し経った後――――》


「そういえば、俺の髪……」

「ん? 今頃気付いたの? マーちゃんが聖杯を注入したからねー。有り余る生命力の影響でキューティクルロングヘアーになってもおかしくないよね。まぁ、君ってば体の線が女の子みたいに細いから結構似合ってんじゃない?」

「…………あの人は……()()()長い方が好きだろうか……?」

「ぶふぉっ……兄様ぁ?」

「む? 何かおかしい事を言ったか?敬愛すべき目上の男性にはこういう呼称をすべきだと、貴女が保有していた書物にも記されていたのだが」

「いやぁ――、あんまりその類の本を参考にしないで欲しいというか……。ってかわたしの本、勝手に読むんじゃねぇえええ!!」





『三白城の性鬼深愛獣様』
ランク:A++
種別:対城宝具(家族)
使用者:刑部姫(白のアサシン)

日照権なんのその、白く染められた元チェイテ城なる第一層、白き石で積み上げられた元ピラミッドなる第二層、そして、元姫路城なる六層からの計八層構成からなる違法建築物。姫路城のミニチュアどころか、その本家をさらに魔改造してしまった超魔術。
その防御性は下手をすれば、かの後輩の白亜の城とタメを張れてしまうほど、防御性に関しては刑部姫自身が「どうぞ―――」とウェルカムしない限りは何人たりとも通さない鉄壁の引き篭もり城…………いや、今はマスターと部屋ックスをする為の宝具。かつての妖怪であった彼女を祀る城ではなく、ビーストでもある彼との性交を存分に祀る為に建てられた城とでもいうべきか。
ちなみに過去に一度、中々城から出てこず、イチャイチャし過ぎたせいでブチ切れた武蔵ちゃんが城ごとぶった斬っている。












•白のビースト

マスター:無し
真名:■■ ■■
クラス:ビースト■
理:■■



ステータス
筋力:A
耐久:A+
敏捷:B
魔力:EX
幸運:A
宝具:EX

クラス別スキル
獣の権能:C
単独降臨:A
それは時空どころか、世界、宇宙の壁さえ超えてしまう在り方。いつ如何なる時も気を抜く事なかれ、獣と成った彼はふとした時に隣に――――。


保有スキル
ネガ・■■■
――――――。
――――――。
――――――。




《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:――――
白のアーチャー:――――
白のランサー:――――
白のライダー:――――
白のキャスター:――――
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:――――




黒のサーヴァント:残り7人
赤のサーヴァント:残り7人











まーた本編ではなく、特別編を書くやーつ、ま、お年玉という事にしておいて下さいな。けど、何でしょうね。本編、英霊編、アポ編と、これってもう連載を3本抱えているみたいなもんじゃないですか?リアル忙しい、リアル忙しいと言っておきながらいよいよ自分ってもしかしてドMなんじゃないかなと思ってきました。まぁ、アポ編の需要があるかどうかはわかりませんが、だってあんなに可愛い女の子がたくさんいるのに、それら全て差し置いてジーク(元)きゅんがヒロイン枠みたいな感じになってますからね今話、このリハクの目をもってしても以下略。
後、白の陣営のメンバーが何人か隠す意味なくね?ってツッコまれそうですけど、本編で正式に正体がわかるまでは感想でこの人だよね?って聞かれても濁しますんで(多分、大体それで当たってます)。



あ、自分はすまないさんの心臓をもらう前のショタっぽいジークきゅんが好きです(聞いてない)。
今回の『シロ』君の見た目は初期のショタジークをロングヘヤーにした感じだと思って下さい。

え、全裸のシロ君に服を着せてあげたのは誰だって?そりゃあ、助けた人がちゃんとしっかりと責任を持ってじっくりねっとりと下着まで着させてあげましたよ。


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