※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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眠い。













令呪を持って我が肉体に命ずる、俺に性なる勝利の輝きをぉおおおおお!!




ビーストウォーズ②(Fate Apocrypha編)

 奮い立つ筋肉、この戦争における圧制者の頂点を求めて、『三白城』への入り口へと歩を進める。

 だが、その赤のバーサーカー、スパルタクスに一人の姫騎士が立ちはだかっていた。

 

「ひゅぅっ♪こりゃあ、上玉だな」

 

「軽口を叩くな、ライダー」

 

「何だい姐さん、嫉妬かい?」

 

「…………」

 

「無視は寂しいなぁ」

 

 美しき容貌を損なわない、騎士としての強さを感じさせる凛としたその佇まい、こちらに向けられる戦意に狂戦士は滾る。

 

「おぉっ……! 圧制者の走狗、よ…………?」

 

 圧制者の居城にて我が進行を阻む者、それ即ち、圧制者の走狗。実にわかりやすい理論でスパルタクスは剛腕からその剣を振るおうとしたが…………。

 

「その首輪は…………」

 

 白き騎士の首に付けられた黒い首輪を目にして、バーサーカーの腕が止まる。

 

「えぇ、『彼』からの賜り物です。いいでしょう?」

 

 微笑む姫騎士の顔はその瞬間だけ、戦士だけではなく、一人の乙女としての顔を見せていた。愛しい人の肌に触れるように首輪を撫でる。その根本は普通の恋愛感情とは言えない程に歪んでいるとも言えるが、外見だけでそれに気づく者はそうはいない。

 

 だが、相手は会話が成立しない事に定評があるスパルタクス。

 

「おぉ……!おぉっ……! 何という事だ!! 君も、圧制者に虐げられた剣奴の一人だったのか!!」

 

「はい?」

 

「だが、もう安心するがいい! 私が来た以上、不条理に苦しまれる事はない。今すぐにその枷から解放してあげよう!!」

 

 白騎士に付けられた首輪を見て、彼女をこの城にいる圧制者に繋がれた剣闘士奴隷だと致命的な誤解をしてしまったスパルタクスは微笑む。

 

「奴隷……確かに、そういったプレイを致した事もありますし、私の好みでもあります……」

 

 だが、目の前にいる歪みに歪んだリリィは自ら望んでこの首輪を付けている。勝手に虐げられていると同情される謂れはない。

 そして、この首輪()に手を出そうというのなら、誰であろうと生かしておけない。

 

「彼に……マスターに、今この瞬間も生殺与奪の権利を握られている悦び……貴方達にはわからないでしょう」

 

「ヌゥゥゥッッ!!?」

 

「バーサーカー!?」

 

 前もって警告はした。これ以上進むというのなら、その身無事では済まないと思え。

 慈愛の笑みを浮かべていたスパルタクスの右腕が肩から斬り落とされていた。

 明確な敵対行動、今まで静観していたアタランテも反撃とばかりに弓を放つが。

 

「なっ!?」

 

「おいおい嘘だろ……? 姐さんの矢だぞ?」

 

 姫騎士はその攻撃に一切の防御体勢を見せる事は無かった。心の臓に放たれた矢はその衝撃すらも消滅したかのように消え去り、彼女の柔肌に一切の傷を負わせる事は無かった。

 

「はぁぁっ!!」

 

 連続で射出される狩人の矢、だが全くそれを意に介さない姫騎士。アタランテの射撃は正体不明の白の騎士にほんの少しのダメージすら負わせる事が出来ない。

 

 さすがに疑問に思った彼女は小さな声で隣にいるアキレウスに問い掛ける。

 

「まさか、汝と似たような宝具の類か?」

 

「可能性はあるかもな。ただまぁ、不死の肉体というよりはあれは攻撃そのものを無効化してるって感じだぜ」

 

 アキレウスは今、この戦いに参戦する気はない。

 相手が女性かつ、既にバーサーカーとアーチャーという二体を相手している点もあるのだろう。さらに多対一の状況にするつもりはない。彼がこの戦いに手を出すとしたら、アタランテの身に危険が迫った時だけ――――。

 

 そして、腕を斬り落とされた肝心の赤のバーサーカーは。

 

「なんと、なんとぉぉぉ、嘆かわしいぃぃぃ!! まさか、そこまで手遅れだったとは……そこまで圧制者に心酔してしまっているとはぁ……! そこまで、反逆の牙を折られ、飼いならされてしまっているとはぁっ!!」

 

「飼育プレイですか、フフッ、それもいいですね」

 

 

疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)』。

 スパルタクスの宝具、与えられたダメージを魔力へと変換し、力に転換する宝具。与えられたダメージが大きければ大きい程、その力は増大する。

 吼える反逆者、白騎士に斬り落とされた右肩から、肥大した悪魔のような腕が生え、華奢な姫騎士に振り落とされる。

 

「せめて、我が抱擁にて眠るがいいぃぃっ!!!」

 

「いいえ、私が抱擁を望むのは後にも先にも只一人だけです」

 

 ――――ゴァァッ――……!

 

 何とも現実離れした光景だった。怪物染みた異形の剛腕が、少女の頭蓋で止まり、ピクリともしていない。

 先程のアタランテが放った矢と同様に本来、ある筈のダメージも衝撃も全てが霧散していた。

 

「我が名は『白のセイバー』。この聖杯戦争において白のマスターに仕える剣として名乗りましょう」

 

 追撃とばかりに襲い来る。矢も反逆者の剣も拳も、気に留める事もなく、言葉を紡ぐ。

 

「我が肉体は主の許可無くして傷付く事を許されず、我が肉体は主の許可無くして死ぬ事も許されず。主が死するその瞬間、私もその黄泉路を共にします」

 

 愛しき人を想起し、首輪を撫で続ける『白のセイバー』――――王になる前のアルトリアのイフ、そのイフが一体誰のせいなのかこうなってしまった…………セイバー・リリィ。

 

『白のビースト』のサーヴァントとして、ここで戦う彼女のが身に付けている首輪、いやその宝具の名は――――。

 

 

我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)』。

 

 白のビーストとセイバー・リリィの肉体の一部を素材に形作られたその首輪を付けている間、セイバー・リリィの肉体はAランク以下の攻撃を全て無効化する。

 スパルタクスの宝具も、アタランテの攻撃も彼女に届く事はない。

 

「私を痛み付けて(愛して)くれていいのは、マスターだけですから」

 

 光と闇の奔流。

 彼女が手にし、聖剣が幾合も振るわれる。

 切り刻まれる青白の筋肉。だが恐るべし耐久EX、この状況でも笑みを絶やさないのはさすがと言うべきか。

 

「オォォッ……オォォォッァッ!」

 

 スパルタクスの体を宝具を使用する暇さえ、与えない程の連撃。まるでオルタ化したセイバーの黒き聖剣解放のような熾烈さ。

 そして、その剣が伸びる幾重もの光の筋は全て束ねられ、スパルタクスの体、ある部分に向かって放たれる。

 

「『勝利すべき黄金の去勢剣(エクス・カリバアァ――ーン)!!』」

 

「アアアアアアアァァァッ――――――――…………!!」

 

 男である以上避ける事は出来ない弱点。そこに宝具の光が乱打で叩き込まれたのだ。

 キャパを越えたダメージ、もう復活する事も、微笑む事もなく、その筋肉は絶叫を上げ、股間からゆっくりと光の粒子となった。

 何故か彼女の放つ聖剣の光は男性の股間に収束する因果がある。究極の男殺しの宝具。

 

 アキレウスはスパルタクスが消える瞬間を目の当たりにして股間をキュッとさせた。

 神性を帯びてなかろうが、あの攻撃だけは絶対に受けたくないと。まだ踵の方がマシだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒の陣営の居城たるミレニア城塞にて、ホムンクルス達が忽然と消えるという異常事態から1時間弱。なんとか体裁は落ち着きを見せていた黒の陣営だが――――。

 

「ん――?何だろう、あれ?」

 

 アストルフォの呟き、向ける視線の先に、一つの異常があった。

 トゥリファスの地、月が輝く夜空にて、随分と不似合いな電子によって構成された近未来なモニターが浮かんでいた。

 

 

 白のアサシン、刑部姫のネット配信技術、サバチャンネルによる生放送。『三白城の性鬼深愛獣様』から投射された巨大モニター、そこに映し出された一人の『男』の姿。

 

 黒の陣営だけではない、そこから離れた赤の陣営がいる教会からも、聖杯戦争の関係者殆どの目に入るようにその画面は映し出されていた。

 

『あ――、テステス、マイテス、マイテス、うん?映ってる?ちゃんと映ってるのかなーこれ?』

 

 黒く乱れた長髪、人当たりが良さそうな笑み、だが両陣営を一番驚かせたのはその体に浮かんでいる夥しい令呪の数。聖杯戦争において重要なファクターとなる令呪の画数が3桁にも及ぶなど、全てのマスターにとっては卒倒しても可笑しくない案件なのだから。

 

 

『あ――コホン、どうも初めまして人類悪です』

 

 

 そして、さらにもう一個の爆弾をブチ込みやがった。

 

 真偽はどうあれ、人類悪という言葉の意味を正しく理解している面子は表情を歪めさせた。特に人類救済を目論んでいる一人の聖人は。

 

『夜分遅くに、お知らせもなくこのような形でのいきなりの挨拶、大変申し訳無く思っています。特にユグドミレニアの方々には大事な大事なホムンクルス達を全員誘拐するという大悪事を致してしまい、心を痛めている所であります』

 

「おまえかあああああああああああ!!」

 

 ゴルドおじ様は吼えた。

 

『ですがまぁ、一度手を出したら、最後まで手を出して台無しにするのが俺の所存でございます。中途半端はよろしくない。ヤリ逃げ、ダメ絶対』

 

 こいつは一体、何を言っているのだろうか。

 

『というわけで、この度、第三勢力『白の陣営』、及びそのマスターとして参加する事を表明します。もちろん他の陣営と同じように7クラスで構成されてますよ。あぁ、けどそっちにルーラーが二人いるし、特別枠としてこっちにもルーラー枠参加させてるけど、いいよね?』

 

「――っ!」

「なっ!?」

「おぉっ!」

 

 シロウ神父、アサシン、キャスターに反応があった。

 赤のマスターであるシロウがルーラーである天草四朗だと、あの『ビースト』を騙る何者かは正しく理解している。

 

『人類悪がここにいる以上、世界滅亡待ったなしというわけです! サーヴァントならば頑張って討伐しないといけませんね! ですが、もうそういう慈善事業も古い。救済活動にも報酬があるべきだと俺は思うわけなのです! 只働きは悪い文明だと、俺の奥さんも言っていました』

 

 コイツ、結婚しているのか……。何人かの心の呟きが一つになった。

 

『な の で。根源に至る為の願望機、多くの魔術師とサーヴァントが求めた聖杯を報酬にすべきだと、わかりやすい報酬があった方が皆さんのモチベーションが上がるよね!』

 

 多くの者がその言葉の真意を図りかねて首を傾げていたが、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアがその宣言を聞いて、途轍もなく嫌な予感に全身を汗で濡らしていた。

 あれだけいたホムンクルス達の拉致を一瞬で行った奴だ、ならば、ならば――――、『アレ』を奪うのも造作も無いのではと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニア城塞の地下に眠る大聖杯。

 ダーニックが第三次聖杯戦争にてやっとの思いでここに隠匿した聖杯が眠っている。

 

 その聖杯に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 巨大な巣にも見える大聖杯は得体の知れないナニかに捉えられていた。引きずられる先には門が開いていた。

 門は繋がっている、白の陣営の居城たる『三白城』の天辺、頂上たる屋根に上り、笑いながら鍵を回す少女がいる場所へと。

 

「いあ、いあ! ふふ、うふふふふふ、悪い人、座長さんは悪い人だわぁ……。ホムンクルスさん達を全員誘拐した次は、大聖杯を奪ってだなんて」

 

 あらゆる領域を繋げる窮極の門。そこから伸びる『外なる神』の一部が大聖杯を引きずり込む。

 ミレニア城塞の地下と『三白城』の頂上を繋げる門。ダーニックが今生、大事にしていた悲願とも言える大聖杯はいとも簡単に奪われてしまった。

 

「あぁ、けど……いいわよねぇ。だって今の私は『白のキャスター』ですもの。ビーストになった座長さんの傍らで暗躍する悪い魔女ですもの。この間、ラヴィニアと読んだ本に書いていた悪の女幹部みたいね……ふふふふ、座長さんとならいくらでも悪い子になってもいいわ…………」

 

 ダンスするようにクルクルと回る異界の門を開ける鍵となる少女。

『白のキャスター』――アビゲイル・ウィリアムズは白の陣営に相応しき、色素が薄いその肌を火照らせていた。纏う海藻のような衣類も彼女の感情に呼応するかの如く、揺れ動く。

 

「次はどんな悪い事をすればいいのかしらぁ、座長さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我が白の陣営が構える三白城、八層で構成されるその城は、それぞれの層に白のサーヴァントが待ち構えています。そして、八層目、最上階にて鎮座する大魔王こと『白のビースト』を倒した暁には大聖杯がその者の手に!うん、やっぱり物事はわかりやすい方がいい!群像劇とか、三つ巴の乱戦とか非常に面倒くさいもん!!』

 

 

 居を構える美しき『三白城』。その天辺にユグドミレニアが保有している筈の大聖杯があった。

 巨大な球体、亀裂からは金色の女性らしき像が何体も覗かせている。頂上からずり落ちないように、それは聖杯を囲むように開かれた門から伸びる異界の神たる触手で固定されていた。

 

 まさに大魔王に相応しき絵面。

 急過ぎる事態、両陣営共についていけている者は何人いることやら、ただ一つ確かにわかる事は、この戦争における最大の報酬は急に出てきた第三者に奪われてしまったという事。

 

 

『混じりっけ無しモノホンの大聖杯です。両陣営は俺を討伐し、誰かがこれを手にする。『白の陣営』はそれを防ぐ。いわゆる防衛戦的な構図ですね。戦いはシンプルに余計な被害を出さずにするべきだと思うのです』

 

 誰もが求めた聖杯をこうも容易く奪取する。それだけで、今自分達の目の前に映っている存在がどれだけ異常なのか思い知らされる。

 だが、かつて数え切れない程の特異点を修復し、結局そこで手に入れた聖杯の数も3桁に及んでしまった『白のビースト』にとっては今更、聖杯の一つや二つを手に入れた所で特に思う所は無いのだった。

 それこそ、シロの寿命を真っ当な物にする為にホイホイ投入してしまうぐらいには。

 

 まぁ、『白のビースト』の奥方達を見ればわかるが、彼の精液の方が聖杯よりも生命力を強固に出来るのだが、さすがに幼気なホムンクルスを睡姦するほど、まだトチ狂ってはいなかったらしい。

 

 

『君達が止まらない限り、その最上層()に俺はいるぞ! さぁ、手加減してあげるから本気でかかってきなさい!!』

 

 左の人差し指を掲げたのを最後に、モニターは消え、『白のビースト』の……『白の陣営』の宣戦布告は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ――――、なるほどな……道理で俺と姐さんを呼び戻したわけだ」

 

「…………えぇ、二人を無策であんな得体の知れない城に飛び込ませるワケにはいきませんでしたので。バーサーカーの事は残念でしたが」

 

「あれは仕方ねぇわ。言っても止まる性質じゃねぇだろ、むしろそれを難なく屠ったあの嬢ちゃんが問題だがな……」

 

「白の騎士……彼女は間違いなく自身を『白のセイバー』と名乗っていたのですね?」

 

「あぁ、そして使っていた宝具から、あれは間違いなくアーサー王だ」

 

 スパルタクスが倒されてから、赤のマスターとして、シロウの撤退を受け取った二人、代理とはいえマスター命令という事で正体不明のセイバーから背を向ける形で教会まで戻った後に待っていたのは、先程の映像。

 

 間近に宝具を見たアタランテの言葉、『白のビースト』と名乗る異分子にかの有名なアーサー王が従っているという事実。

 アキレウスは、スパルタクスが消滅した光景を思い出したのか、股間を少し押さえていた。

 

「ふっ、ブリテンの王がまさかただの小娘だったとはな」

 

「ただのってレベルじゃねぇよアサシン。スパルタクスの宝具も、姐さんの矢もまるで効いちゃいなかった。アーサー王ってのは不死の肉体でも持っていた逸話でもあったのかね?」

 

「『ひとは微笑みながら、(That one may smile, and smile) 悪人に なることが出来る(and be a villain)』。人畜無害を装うビーストを名乗る御仁の手によって作り変えられた線も考えられるかもしれませんがね。くくく、フハハハハハ!!7騎と7騎の聖杯大戦争と思いきや、今度は自らを人類悪と称する謎の『白の陣営』!ここまで来たらもう何が起きてもおかしくない!!ありとあらゆる可能性を考慮すべきなのでは? あぁ! 彼等の陣営には一体、どんな奇天烈な英霊達がいるのでしょうか!!」

 

 この状況でまだ心底愉快に笑える者がいたとするのなら、この赤のキャスター――ウィリアム・シェイクスピアしかいないだろう。人類救済を願う我がマスターが挑む聖杯戦争、それだけでも書き甲斐がある物語だったというのに、ここに来て、よりにもよって人類救済を望む聖人に人類悪である獣が立ち塞がる! これほど混沌とした展開があろうか! あぁ、歓喜を! 感謝を! この戦いを観覧し、執筆出来る幸運に!!

 

「しかし、他の英雄の皆様方は随分と大人しい。これほど、後手に回されてしかも最後には『さぁ、手加減してあげるから本気でかかってきなさい!』という侮辱にもつかない挑発の台詞。吾輩としては今すぐにでもここを飛び出してもおかしくないと考えていたのですが……」

 

「あぁ、確かにその通りなんだが……」

 

 頭をかきながら、アキレウス自身すらも疑問を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵意や嫌悪感を抱けない?」

 

 黒のアーチャーのマスター、車椅子に乗る可憐な少女、フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは賢者の言葉を聞き返していた。

 

「はい。マスター自身も疑問に思っている筈です。『白のビースト』と名乗った彼が為した事に対しては脅威を抱けても何故か、彼自身に敵意や嫌悪感、その類の感情を持つ事が出来ないと」

 

「確かに、言われてみれば……」

 

 大賢者でもある黒のアーチャー――ケイローンは事細かに、事態を推察する。

 一度、この城に現れた莫大な魔力、それに対しては脅威を感じる事は出来た、だが……こうしてモニター越しにその姿を目の前にした時、何故か姿を見せなかった時よりも脅威の感情が萎んでしまっている。

 

「魅了といった不自然な好意を急に植え付けられるわけではない。むしろそれよりも厄介かもしれません。恐らく彼が今すぐに目の前に現れても、即座に戦闘体勢を取る事が出来ない可能性があります。好意を抱くのではなく、敵意を抱きづらい。よっぽど人格が歪んでいない限り、只の隣人に敵意を向ける者はいないでしょう。スキルか何かは不明ですが、彼はそういう在り方なのかもしれません。わかりやすく言えば、『毒気が抜かれる』とでも言うべきでしょうか」

 

「ならば、奴がわざわざこうして余達に挑発をしかけてきたのも……」

 

「えぇ、よっぽど我々に、いえ……黒、赤両陣営に攻めてきて欲しいのでしょう。たとえ彼そのものに敵意を抱けなくても、彼の言葉に戦意を滾らせる事は出来ます。ホムンクルスを拉致した事実に怒り狂ったゴルド氏のように。ですが、『手加減』という言葉も挑発として使ったとはいえ、真実でもあるのでしょう」

 

「ほう」

 

 黒の陣営の参謀でもあり、数多の英霊を育てた男の言葉、信頼も厚いケイローンに皆が耳を傾ける。

 

「現に我々がこうしている状況こそが彼にとって『手加減』されているとも言えます。そもそも、大量にいたホムンクルス、そして大聖杯……それらをこうも容易く奪取出来るのなら、我々の生命線でもあるマスター達をいつでも攫う事が出来ると思いませんか」

 

「おいおい、ゾッとする事言うなよ」

 

 フィオレの弟、黒のバーサーカーのマスターであるカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは頬を引き攣らせる。先程の大聖杯が『三白城』の頂上に移されたかのように、突如として現れた触手に自身が取り込まれるSAN値が下がりそうな想像をしてしまったのだろうか。

 

「ならば、よっぽど僕達に攻め込んで欲しいみたいだね」

 

「えぇ、その思惑は不明ですが……まず我々に出来る事は――――」

 

「赤の陣営との同盟か……」

 

 現段階で取れる一番、現実的な案に思考を巡らせる。

 深く息を吐き、玉座に寄りかかるヴラド公。

 奪われたホムンクルス達、大聖杯。突如として現れた『白の陣営』……その主たる『白のビースト』を騙るナニか。

 この聖杯戦争は赤と黒に分かれての戦争では無かったのか、余を誑かしたのか、言いたい事は多々あったが、さすがに、大聖杯が奪われてから白目を向いて失神した自身のマスターを問い詰める程、ヴラド三世は鬼では無かった。

 

 

 

 

「ほえ――、なんだか凄い事になっちゃったねー、マスター……マスター?」

 

 隣にいた黒のライダー――アストルフォが語りかける。それに全く反応を示さないライダーのマスターであるセレニケ・アイスコル・ユグドミレニア。この聖杯戦争が始まってから、散々アストルフォをprprしてきた彼女が反応を示さないのはあまりにも不自然だった。

 覗き込んだアストルフォが見た物は――――。

 

「うわ」

 

「……はぅ」

 

 何故か今まで見た事ないような、似合わないマジで似合わな過ぎる乙女フェイスをしていた黒の魔術師の姿だった。

 ケイローンの言う通り、『白のビースト』に不自然な好意を植え付ける魅了は無い。

 だが、それでも彼が未知の領域から訪れた異界からの訪問者である事は事実。その未知の領域の一端を感じ取ってしまったら?『白のビースト』の瞳を目の当たりにした時、何故かセレニケは自身の中にある猟奇的な嗜虐心、その根底にある歪んだナニかを引きずり出されそうな気分になった。自身の奥底に眠る真なる性癖を暴かれたくて仕方ない気持ちになった。

 

「…………すき」

 

 端的に言えば、それは一目惚れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランサー、一つ尋ねます」

 

「答えよう」

 

 場面は再び戻って赤の陣営。

 天草四朗は、赤のランサー――施しの英雄、あやゆる欺瞞や虚飾を見抜くカルナに問うた。

 

「彼が……、『白のビースト』を名乗る何者かが、自身を『人類悪』と語ったのは事実ですか?」

 

「あぁ、それに虚偽は無い(奴が語った世界を滅亡させかねない人類悪とやらが自身の事を指しているわけではないが)」

 

「そう、ですか」

 

 眉間を押さえ、天を仰ぐ天草四朗。

 カルナの言葉に誰もが衝撃が走る。人類悪という言葉、その意味の一端でも知る者にとっては、施しの英雄が語った。「あの人類悪は本物だ」という言葉が何を指すのか。

 

「これはこれは聖杯戦争どころでは無くなりましたなぁ……マスター! いやぁ、吾輩も途轍もなく心を痛めておりま、あぁぁっ痛い痛い痛い!! 体が痛い! 女帝殿!鎖による緊縛プレイは勘弁願いたい!!」

 

「人類悪……人類史の澱み……。より良き未来を望む心こそ、人を守ろうする願いそのものが人類悪か……」

 

 苦節60年、ここまで準備に準備を重ねた天草四朗は呟く。

 何の因果か、全人類の救済を目論む自身の邪魔をするのがよりにもよって人類悪(人類愛)とは……。

 皮肉な話だ――。どうやらこの世界はよっぽど自分を嫌っているらしい。

 

「邪魔をするなビースト。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! もっと飛ばせねぇのか!? マスター!?」

 

「無茶言うな! これで全開だ!!」

 

「今度はもっと良い車用意しろよな!!」

 

 トゥリファスの森林、舗装されていない獣道を乱暴に走る鉄の馬があった。

 既に木々に砂利に岩に何度も当たり、ボロボロになっているアメ車に一組の主従が乗っていた。

 

 運転席で自身のサーヴァントに煽られるまま、白き巨大な城へ向かうマスター、獅子劫界離。

 その助手席で束ねた金髪を揺らし、窓から身を乗り出している赤のセイバー――モードレッド、二人は件のモニターによる『白の陣営』からの宣戦布告から数分、直ぐに敵の居城まで駆けていた。

 

「なにが『手加減してあげるから』だ!舐めくさりやがって!偉そうに建っている馬鹿でけぇ城も気に喰わねぇ!」

 

「いきなり突っ込むって話になったが、策はあるんだろうな!?」

 

「あぁ!? んなもん着いてから考えるわ! 一番乗りは騎士の誉れだろ? それに上手くいけば、あの上にある聖杯も他の奴ら出し抜いてオレ達が奪えるかもしれねぇしよ!!」

 

「要するにノープランって事か! 上等だ! もうここまで来たらヤケだ!」

 

「おうよ!! そろそろ見えてきたぜマスター!!」

 

『三白城』の門。喧しいエンジン音を響かせ、『白の陣営』の入り口へと近づく赤の主従。

 車を止め、辺りを警戒しながら降りる二人。

 獅子劫はショットガンを、モードレッドは既に全身を鎧兜に包み、戦闘体勢に入っていた。

 

「さてさて、ここまで何事も無く、退屈に着いちまったが……」

 

「油断するなよ、セイバー」

 

「するかよ。オラ! 白のサーヴァント共、誰もいねぇのか!! このまま門ごとぶった斬ってもいいんだぜ!」

 

 

 

 

 

「それは困ります。仮とはいえ、今は我がマスターの住まい。徒に傷を付けられたら、私も処分せざるを得ないですよ」

 

「なっ――――」

 

「セイバーと、同じ顔……!?」

 

 その時、意気軒昂と乗り込んでいたモードレッドの歩みが止まる。白のビーストの言葉に戦意を昂らせていた彼女の雰囲気が変わる。何故、何故、何故と理解出来ない現実を目の当たりにした子供のように。

 

「今宵は随分と客人が多いですね」

 

「何故だ――――」

 

 モードレッドの悲痛な叫びが、響き渡る。

 

「何故だ!! 何故、貴方がここにいる!! アーサー王!!」

 

「知れたこと。私がマスターの剣であり、伴侶だからですよ」

 

 

 

『三白城』門の番人……『白のセイバー』。

 

 

 王になる前のイフ、性癖が歪んでしまったアーサー王 VS 叛逆の騎士 モードレッド 

 

 

 開幕。

 

 

 

 




《白のビースト、姫ルームに帰宅》

「ふぃ――、結構、緊張するもんだね、生放送って。ただいまーっと」

「お帰りなさいませ、兄様」

「!?」

襖を開けたすぐそばに、三つ指をついてお辞儀をしていたエプロン姿のシロがいた。
白のショートパンツに白の半袖ポロシャツ、ボーイッシュな格好の上から着られているキュートなフリフリのエプロンがシロの性別を混乱させる倒錯的な魅力を振り撒いていた。

「ご飯にしますか? お風呂にしますか?……それとも、そ、れとも……そそ、それとも、お、おれ…………」

「お腹空いたし、ご飯にしよっか?」

「はいっ!」

顔を真っ赤にしてどもりながら後の言葉を続けようとする彼に助け舟を出すマスター。
嬉しそうに表情を輝かせ、キッチンに向かうシロ。
それとは対照的に、炬燵でぐったりしていた刑部姫。

「弟キャラか……それはそれでイイ。で、おっきー?」

「さぁ――?姫は何も吹き込んでいませんよ――。何か、仕事を終えた男性を迎える正しい仕草を頑張って覚えていたらしいよ?むしろ、裸エプロンになろうとした彼を止めた姫を褒めて欲しい」

「何故、止めたし」

「そしたら、お前らここでおっぱじめるだろうがぁ!! 何が楽しくて自分の部屋で始まる旦那とショタの濃厚R18なシーンを見せられないといけないんですかぁ!? そして一番悔しいのが、多分それを目の当たりにしたら次のコミケの新ネタとして筆が止まらなくなってしまう姫自身!」

「悔しい! でも書いちゃう! みたいな」

「ダマレッ!!」

「え――っと最後の調味料は『愛情』……。指に包丁の刃を当てて、血を」

「だから、シロ君も薄い本を参考にするのやめろっつってんだろ!!」










我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)
ランク:EX
種別:対人宝具
使用者:セイバー・リリィ(白のセイバー)
自身の愛液、マスターの精液、自身の血、マスターの血で構成された首輪。メディア・リリィに頼んで作ってもらった特注品。首輪のマスターの名を示す刺繍はマスターとセイバーリリィの髪の毛で編まれている。汚れる事も、劣化する事もない首輪。セイバーリリィは肌身離さず、永遠にこの首輪を付け続けるだろう。マスターの生命活動が終わるの同時に首輪が彼女の命を奪うその時まで――――。セイバーリリィ、彼女にとっての『理想郷』とは一体、何なのだろうか……うーん闇深。
この首輪を付けているセイバーリリィの肉体はAランク以下の攻撃を全て無効化する。A+以上の攻撃においても、それを差し引いた分の防御性を発揮する。ただし、マスターからの攻撃(愛撫)に関してはその全てにおいて過分にダメージを負うように設定されている……うーん性癖歪。


勝利すべき黄金の去勢剣(エクスカリバー)
To Life(セイバー・リリィ)回参照。












•白のビースト

保有スキル
ネガ・■■■

魅力(ゼロ):A+
ビーストとなった彼のスキル。
他者にいきなり好意を与えるのではなく、負の感情をゼロにする。敵意や害意、嫌悪感を抱きづらいスキル。人畜無害、人当たりの良さの極致。絆ゼロスタート。隣人の如き平凡な雰囲気に惑わされ、不用意に近づいたら最後、もし彼のお目に適ってしまったら、そこからギュイーンと絆Pが溜まり、人たらし、たぶらかし、口説き、愛撫、ズブズブと最後まで絡め取られてしまう。これに対抗し、彼に敵意を抱くには、それを凌駕する程の大望と意志……それこそ世界に匹敵する想いを抱かないといけない。

――――――。
――――――。






《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:――――
白のランサー:――――
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:――――




黒のサーヴァント:残り7人
赤のサーヴァント:残り6人







投稿、はやくなぁい?何故か続いてしまった第二話。どうせ皆 台無しに なる。
はい、次回は大人しく本編(エロ)に戻ります。



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