※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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第二部二章感想:つらい。

なんとなーく、二章のネタも思い付いてはいますが、その前にアポ編とどうしても一部のエロ本編の方を進めたいので、すぐには投稿しません。そして、感想で「こういう展開、どうっすかね?」とか言われても多分、『オーララ、ノーコメント!』としか返せないです(感想自体は勿論、嬉しいのよ)。私、今までもこれからも、好き放題に書いてますから!ぴょーん!




というわけで久々のアポクリファ編。











【これまでのあらすじィ!】
その1:ビースト0顕現。ショタホムンクルスを拉致る。ついでに他のホムンクルス達も全員拉致る。
その2:チェイテピラミッド姫路城がトゥリファスにど――ん!!
その3:大聖杯も触手悪ロリに強奪。ダーニックのSAN値がど――ん!!
その4:黒のアサシン主従も白のビーストに強奪。六導玲霞がとろーん!!
その5:白の陣営の宣戦布告により、赤と黒の陣営の同盟が成立。
その6:赤のバーサーカー、白のセイバーによって消滅。
その7:赤のセイバー、白のセイバーによってPTSDにかかり、白のビーストによって心療中。
その8:シロ君、おっきーから兄様の昔話を聞き、ややオコ。









ビーストウォーズ⑤(Fate Apocrypha編)

 《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り20時間――:ミレニア城塞にて》

 

 

「とんだ醜態を晒した……」

 

 焦燥し、ややおぼつかない足取りで城内を進んでいたのはダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。

 第三勢力、白の陣営として参加し、赤黒の両陣営に宣戦布告した『白のビースト』を名乗る男によって自身の大願を叶える為の重要なキーでもある大聖杯をたやすく奪われて、絶賛失神中だったユグドレミア一族の長。

 

「しかし……赤と黒の同盟か」

 

 彼が気を失っている最中に黒のアーチャーのマスターであるフィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアが暫定的な黒のマスター達の代表として結んだ約定。ギアスロールを使ったわけでもないので、特に強制力も無い口約束程度の同盟だが。数多の英雄達の前で結ばれたというのなら、彼等の性質上、いきなりそれを反故にする者はいないだろう。

 

「私が気絶していたのはある意味、僥倖だったか……」

 

 赤の陣営……魔術協会と完全に袂を分かち、宣戦布告をした自分がそうやすやすと同盟の場には顔を出せないだろう。ましてや、彼自身も積もり積もった協会に対する恨みと憎しみがある。かつて栄光の道、根源への夢を閉ざされた汚辱が。だが、それでも彼は同盟を結び、城へと帰還した黒のサーヴァント達とフィオレに不服を申すつもりは無かった。そもそも無様にも気絶していた身でどうして更なる醜態を重ねれるだろうかと。

 

 

 ――我々は此度、白の陣営を殲滅するまでの間に限り、赤の陣営と同盟を結ぶ事にした。異論はあるか、ダーニック。

 

 ――まさか。英断だと存します……領王よ。

 

 

 それに第三勢力に大聖杯を奪われている現状で赤と黒の陣営で争っている場合ではない。ダーニックはあの人類悪と名乗った存在を間接的に目にした瞬間に感じた。アレの異常性を。魔道に100年どっぷり浸かった男だからこそその異常性を正確に感じ取れた。

 

 人間ではない、英霊でもない、化け物、怪物……その言葉も正確ではない、ただダーニックにとっては理解出来ない集合体。ありとあらゆる神秘を追求してきた魔術師が理解する事すら放棄してしまいそうになる生命体。

 

 だからこそ、復讐心を飲み込んで赤の陣営との同盟も承諾したのだ。あれに大聖杯を預けているという危険極まりない現状を今すぐに打破する為に。

 

「突入は明日の夜か……」

 

 マスター達はあの奇天烈極まりない城への侵入へ同伴する事はない。

 赤のセイバーと赤のバーサーカーを簡単に屠れるサーヴァント達が8騎。城内へと視察に向かわせた使い魔も全て消失している。人類悪を呼称する男の根城ならば、その中は一体どんな結界、魔術的トラップ、魔獣が仕掛けられているかわからない未知の異界となっていてもおかしくない。

 

 もはや、只の魔術師では足手まといにしかならないのだから。

 

 それでもダーニックは大聖杯奪還をサーヴァント任せにしていいのか悩んでいた。だからこそ、こうして突入までの時間を無駄にせず、策を巡らせている。理想は大聖杯を奪い返した時に黒の陣営が一騎でも存命の状態で赤の陣営が壊滅している事。まぁ、事はそう上手くはいかないだろうが。

 

 そして策の一つとして彼は今、黒のキャスターの宝具『王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)』を発動させる事を決心していた。

 

 黒のキャスター、アヴィケブロンのマスターである()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「白獣討伐戦において、マスターの重要性はそこまでない。ならば戦える者達の戦力向上として糧にするのは当然の摂理」

 

 気まぐれか、何か考えがあるのか、大聖杯とホムンクルス達を簡単に拉致った白の陣営はあれから幸いな事に黒の陣営のマスターの誰かを攫うそぶりは見せなかった。

 

 魔力タンクでもあるホムンクルス達も奪われ、多数のゴーレムを長時間起動させる動力もない。

 

 魔術師としての能力的な優劣で言えば、バーサーカーのマスターが最適解だったのかもしれないが、それはフランケンシュタインが間違いなく抵抗する。他の黒のサーヴァント達も英雄の矜持として、自身のマスターが炉心になる事をよしとはしないだろう。ダーニック自身も悲願を叶える前に命を燃やすのは御免だ。

 

 そして、話を通した時、アヴィケブロンは自身のマスターを炉心にする事に何の躊躇いも無かった。アヴィケブロンにとってもロシェからの敬意は心地の良い物だったのだろう。だが、今はそれよりも優先すべき物があるだけの話。

 

 まぁ、人類を救済しようとするアヴィケブロンにとっては人類悪などが目の前に現れた日には心穏やかにはいられまいか――、残酷な程に理知的で魔術師らしい男だとダーニックはほくそ笑む。

 

「そんな、そんな!止めて下さい、先生!どうして!?」

 

 キャスターの魔術工房に近づくと、幼い少年の悲痛の声が聞こえた。

 聞き間違える事なく、ロシェの声であった。「ふっ、私が来るまで待ちきれなかったのか」と、炉心に取り込まれる彼を想像しながら、ダーニックは工房への入り口へと足を踏み入れ――。

 

 

 地獄を見た――。

 

 

 

「見るがいい黒のキャスター!これこそ、1/1スケールで忠実に再現されたワルキューレフィギュア!モデル:オルトリンデ、ヒルド、スルーズ!コンパチではなぁい!この俺が実物を元に髪、顔、太腿、腰、胸部、局部を忠実に再現したそれぞれが独立して造り上げられている至高のフィギュアよ!!」

 

「なるほど、北欧神話の戦乙女、大神の娘達……勇士達をヴァルハラへと導く御使いか……。その神々しさ、現代を生きた者達では表現は不可能……。ふっ、感服したよ白のビースト。君が一体、いつの時代を生きた人間なのか、気になる所だが」

 

(何だ?これは何だ――?)

 

「だが僕はあえてその神秘に対して、人間の叡智で挑もう。括目せよ、白のビースト。戦乙女達の尊厳なる美しさは強過ぎて、万人の瞳を潰しかねない。故に僕は声高く主張する!人が求めているのは暖かさ、毛布のように包み込み、安らぎをくれる平穏だと……!それは何か?…………メイドだ!!」

 

 仮面に隠れた興奮を隠さず、アヴィケブロンは二体のゴーレムを披露する。二体とも赤髪、白いエプロンをつけた奇をてらわないシンプルなメイド衣装。片や白いフリルをつけたカチューシャ、片や青いリボンと、それぞれ頭につけている。異なる瞳の色からしても、このゴーレムが別々の個体であると造り主が意識しているのはわかる。

 

「メイドだ、と……!ここで王道のカードを迷わず切るとは……!しかし、わざわざ、二体……ま、まさか!?」

 

「そうだ。察しが早いな、我が好敵手よ。見てわかる通り、彼女達は姉妹!そしてそれぞれがメイドとして致命的な欠点を抱えている。姉は料理は完璧。だが、掃除、洗濯は壊滅的。しかし、その欠点は妹が補う。料理が絶望的である妹が……!」

 

「お互いの欠点を補い合うメイド姉妹設定だ、と……!メイドは完璧でなければならない……。だが完璧過ぎる者に対して人は親近感を覚えづらい……。ドジっ娘メイドに萌えるように欠点ありきのメイドに焦がれるのもまた真理!」

 

「そう。だが二人なら、この姉妹設定ならば、その矛盾を解決出来る。一人では不完全なドジッ娘メイドゴーレム。それも良し。そして二人ならばお互いを補完し合える完璧コンビメイド姉妹ゴーレム、それもまた良しだ」

 

 人型のフィギュアとゴーレムを並ばせて、白のビーストとアヴィケブロンはお互いの作品を鑑賞し、熱く議論を交わしていた。

 

 そして、そんな地獄を見ていたダーニックは工房に足を踏み入れる事は出来なかった。彼等が何をしているのかもわからなかったし、わかりたくもなかった。アヴィケブロンの言葉も自身が知っている黒のキャスターから出た言葉とは思えず、まるで異星人達のやり取りのようにも思えて。

 

(何だ……?私は何を見ている。何を見せられている……!?幻覚の魔術でもかけられていたのか……!?)

 

「しっかりして下さい先生!先生の製造術はこんな低俗な物の為に使うべきものではありません。先生のゴーレムはもっと高尚な物!この悪魔に惑わされないで下さい!」

 

(そ、そうだ!いいぞロシェ!キャスターを正気に戻せ!この悪夢を覚まさせてくれ!お前を炉心にする事を考え直してもいい!)

 

「低俗とは言ってくれるじゃないか、ロシェ君や。ならば残念だ。この秘蔵のフィギュア達は二度と、君の目に留まらないように秘宝庫に仕舞う事にしよう」

 

「あっ」

 

(待て待て待て!何故、そこで名残惜しそうな顔をする!?冗談だろう?冗談だと言ってくれ!?)

 

「わかるさ、わかるとも。君ぐらいの思春期真っ盛りの年になると、こういった事には興味はある……。でも馬鹿正直に食い付くのも何か恥ずかしい、そんな複雑なお年頃」

 

 ワルキューレのフィギュアを見せびらかし、災厄(最悪)の獣は無垢なる少年を誑かす。ロシェは若干、顔を赤らめ、白のビーストとアヴィケブロンが造り出した美少女人形に恥ずかしさそうにチラチラと視線を送っていた。

 ダーニックは願う。その悪魔の誘いを断ち切ってくれと、これ以上、自身の精神を苛む要因を作り出さないでくれと。私は何も出来ない。というか関わりたくない。

 

「だが、何を恥じる事がある。ロシェ少年。君はゴーレムが好きなのだろう?」

 

「た、確かに好きだけど……。僕がゴーレムに求めているのは正確な式と石と土で造られた性能の優良さで……。そんな造形とか求めてなんてないし、わざわざ美少女にする意味がわからないよ……。ゴーレムに性的な何かを求めるなんて不純じゃないか……」

 

「ロシェ、それはよろしくない。自分の好きなものに対して何かを取り繕うのは。それは人生の幅を狭めてしまう愚行だ。何が嫌いかではなく、何が好きかで物を語るべきだ」

 

(何故貴様がそっち側に立っているキャスタアアアアア!!)

 

「想像してごらん。幼き君は親に放任され、ゴーレムに育てられていたと聞く。例えば、もしそれが今ここにいる目麗しいメイドゴーレムだったら?」

 

「な、何も変わりません。ただ、外見が変わっただけです」

 

「あぁ、そうだな。だが長年甲斐甲斐しく、育て、教育し、傍にいてくれるゴーレムに君も情が湧かないわけではないだろう。例え、交わされる言葉が挿入された魔術によって造られたアルゴリズムだとしてもだ。そして最後の別れの日、君が一人前になり、刻印を受け継ぐ日。出立する君にメイドゴーレムが言葉を震えながら投げかけるのだ。本来土くれが流す筈のない涙を見せて」

 

 ――立派になりましたね、ご主人様。と。

 

「すごく……いいです」

 

(ロシェエエエエエエエエエエエ!!)

 

 ダーニックの心の叫びは届かない。

 

 肉親からまともな愛情を注がれた事の無かった少年にとって敬愛すべき師から語れるその想像は甘美な物だった。あぁ、あぁ、どうして僕の教育係は美少女ゴーレムではなかったかと悔やむように胸を抑え付けていた。こうまでも違うものなのか、ゴーレムの外見が変わるだけで、そこにちょっとしたドラマが付け加えられるだけで。

 

「そう、本来は感情を持ちえないゴーレムが長年の人の関わりによって情、愛に目覚める。ここがミソだ。冷たき土塊が心を持つ。ゴーレムの造形も付随する物語もゴーレム道をより滾らせる重要なファクターとなる。君がこの工房に来る前に僕は諭されたのだよ、白のビーストに」

 

 語り出す黒のキャスター、吐きそうになるダーニック。

 ダーニックの耳には星屑的な清廉なBGMが聞こえた。

 

(なんだこの曲は……。おのれ、幻聴まで聞こえて――)

 

「先生は多くのものを失ったように見えます」

 

「それは違う。何も失わないように意地を張ったから僕はここにいる。何も失ったものはない。でも確かに、1つ忘れてしまったものがあったのだ」

 

(うッ……がッ――)

 

 ダーニックはもう自分の正気を疑っていた。目の前にある光景に現実感がない。これは今、現実に起きていることなのか……と。

 

 彼の瞳には橙色に染まった丘が映っていた。ガレージキット、ドール、アクションフィギュア、数多の人形達が足元から突き刺さっていた。フィギュアだけではない、数多の幻霊のような何かがその墓標達に張り付いていた。グッドスマイルをするアルターエゴ、金髪碧眼騎士に恍惚とする魔女、無心で女海賊の型抜きをする黒髭。

 

(どいつも、こいつも、何故この状況で平静を保っていられる!?私か?私がおかしいのか!?)

 

 語るアヴィケブロンもそれを見守るロシェも白のビーストも急に出てきた固有結界に対して慌てる事なく当然のように受け入れていた。

 心をまだ色を放ちそうな歌がダーニックをさらに錯乱させる。

 

「疫病を見た、内乱を見た、人間の醜さを見た。僕は何の為にあの地獄を生き延びたのか」

 

「おい、その先は地獄だぞ」

 

 人形の丘を歩き続けるアヴィケブロンの背中に白のビーストが声をかける。

 

「これが僕の忘れたものだ。確かに始まりは迷える民を救いたい、人々を導きたいという救済だった……。けど根底にあったのはきっと、燃え(萌え)だったんだ。人々の心に灯火を宿すような性癖震わすフィギュアを作りたかったのに結局何もかも取りこぼした男の果たされなかった願いだ」

 

 丘を登り続けるアヴィケブロンはやがてたどり着く。その空間の象徴のように鎮座している()()()()()()()()()()()()()()()()()()に。まるで目指すべき頂きにたどり着いたかのように彼はそのゴーレムに触れた。

 

「例え、その人生が批判と葛藤に満ちた地獄だったとしても……僕は美少女ゴーレム製造師を張り続ける!」

 

 アヴィケブロンから固有結界中に光が満ち溢れた。その光はようやく美少女ゴーレム製造師として入り口に立った彼を祝福するようで。無限の星屑の軌跡を描く。

 

 

 ダーニックの願いの破片は届かなかった。灰は灰に塵は塵に、精神が崩壊したダーニックのStardustは彼方へと舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダーニックの意識が砕けちった頃……。

 

 まさか『気配遮断』で再びミレニア城塞に忍び込んだ白のビーストがアヴィケブロンとグッドスマイルをしているとは露ほども思っていない黒のバーサーカーのマスターであるカウレスは自室でキーボードの音を鳴らし、パソコンとにらめっこをしていた。

 

 ユグドレミアの一族の中ではおおよそ魔術師らしからぬ程に文明の利器を使いこなしているカウレスは頭を悩ませていた。

 

「白のセイバーはアーサー王ってのはわかった。なら、あの真っ白な城も白の陣営の誰かの宝具の可能性は高いよな……」

 

 白のビーストが言った『三白城』らしき城は存在しなかった。まぁ、あんなぶっ飛んでいる建築物がそうそうあって堪るかだが。

 外見から予想しててっぺんのあれはジャパニーズ……日本の城だという事は推測出来た。『日本、城、真っ白』で検索のヒットで恐らくあれは姫路城なのだろう。

 

「姫路城ってわかっても作った奴、改修した奴、籠城した奴、関わっている奴が結構いるな……その中でも英霊になりそうな逸話を持っているとなれば……あぁ――わからん!そもそもピラミッドの上に乗っかっているってのも意味不明過ぎる!ツタンカーメン?ラムセス2世?一番下のは何の城だよ!?」

 

 さすがに白化したチェイテ城まではわからなかったようで、モニターの前で髪をくしゃくしゃにして、悶えるカウレス。

 

「俺は何してんだか……。姉ちゃんとアーチャーの言う通り、今回の戦いはもうマスターが手を出せる領域じゃないってのに……」

 

 それでも知らんぷりで何もせずバーサーカーを死地に送り込める程カウレスは図太くは無い。せめて、あの『白の陣営』の正体の手掛かりでも掴めたらとこうして電子機器で調べていたわけだが。

 

「あ、なんだこれ……『Amazones(アマゾネス).com』?誤字じゃないよな……」

 

 集中力も切れ、視線がまばらになっていた頃……サイトの広告の所に目が付いた。『通販業界に暴力的なイノベーションを!』『我が社のガバレッジエリアは世界すらも超える!』と白髪の眼鏡を掛けたスーツ姿の女性が映っていた。

 つい、気になってフィッシングの可能性も無視して、クリックしてしまう。

 

「うぉ、アマゾンのパチモンの割には本家に負けず劣らず結構な品揃え……。っていうか、この竜種の牙とかデミゴッド(蛮神)の心臓とか嘘くさいな……偽物だよな、さすがにな?うん、巨大ロボのパーツとか俺は何も見てない」

 

 ツッコミ所は満載過ぎるサイトだったが、もしあの『三白城』からの念話も阻害された時の場合も考慮して、トランシーバー辺りの魔術以外の通信手段も用意しておいていいかもしれないと、カウレスは3ペアセットのトランシーバーの注文ボタンをクリックしてみた。手数料、送料も無料という痒い所に手が届くサービス。

 

「って今、この城に配達頼んだら駄目だろ!何を躊躇いなくクリックしてるんだ俺は!」

 

 まるで暗示の魔術にかかったかのように自然な流れで注文をしようとしたカウレスの部屋の扉からコンコンとノックが響いた。

 

「アマゾネスドットコムである!配達に来た!」

 

「嘘だろ!?住所も何も書いてないぞ!」

 

「注文ボタンをクリックしただろ?その瞬間にどこの端末から来たのかこちらから逆探知し、お届け先まで時間をかけずに自動召喚。コストパフォーマンスに優れた我が社の配送技術は世界の壁すらも容易に超えるぞ」

 

「こえぇよ!」

 

 有無を言わさず、ドアを開け、注文の品を届けに来たのは先程、サイトの広告にもいた女性と同一人物だった。

 腰まで下ろされた白色の長髪にキャリアスーツの上からも見てわかる女性らしい体つき、さらには眼鏡と一見、知性的な印象を与えるが、どこか脳筋なイメージも拭えない。そんな格好。

 

「ちょ、あんた、勝手に入って」

 

「お届けの品だ。値段は200QP。ドル、ポンド、レイ、円、あらゆる通貨で換金可能だ。グローバリズムだからな」

 

「いや、だから……。わかった、わかったよ、払うから。ポンドでいいか?」

 

「ちなみに円換算なら1QP=100円」

 

「ポンドで教えてくれよ……」

 

 眼鏡ガラスの向こうに光る視線の強さと平服しそうになってしまう程の強い威圧感で折れたカウレスはわけがわからないままお金を出し、サインを書いた。根拠は無い勘だが、多分コイツ白のサーヴァントだとカウレスは感じていた。だが、彼は何も言わずお帰りになってもらう事にした。突っ込んだら、負けだと。

 理解不能な事態に直面した時、精神衛生を保つ為には心を無にし、流れに身を任せる事。カウレスはそこの所を良くわかっていた。

 

「うむ確かに受け取った。それとCEOたる私が直々に配送に来たのは、このルーマニアに我が夫が来ているからであり、いつもは全ては部下に任せてある」

 

「あっはい」

 

 そういえば、白のビーストも嫁さんがどうのこうの言ってたよなぁ……とカウレスは思い出さなくてもいい情報を反芻していた。

 

 ちなみに配送の段ボールの中には『この顔にピンと来たらアマゾネスドットコムまで!』と緑髪の男が描かれたチラシが入っていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉっ、なんかゾクっと来た」

 

「武者震いという奴かライダー」

 

「おうよ!何せ、赤のバーサーカーと赤のセイバーを簡単に蹴散らすサーヴァントが七騎、いや八騎か。それに加えて、世界を滅ぼし得るビーストと来た!不謹慎かもしれねぇが、ここで燃えない英雄はいねぇぜ姐さん」

 

 教会にて、決戦の時を今か今かと待ち構える赤の陣営。

 意気軒昂に槍を振り回す赤のライダー、アキレウスは興奮止まない状態だった。

 

「吠えるのは結構だが、それで叛逆の小娘のような醜態であったら目も当てられぬぞ。ライダーよ」

 

「随分とご機嫌ななめだな。女帝サマはよぉ。自分のマスターから戦力外通告されたのがそんなに気に障ったのか?」

 

「貴様……」

 

 赤と黒の陣営の同盟を結んだ場において、天草四郎は日が明け、再び夜になった時――24時間後に白のビーストの居城に攻め込むと提案した。

 すなわち、それは儀式に三日要する赤のアサシン、セミラミスの宝具『虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』の完成を待たないという事。

 

 あまり多くの時間を白のビーストに与えたくないのか、あるいはセミラミスの宝具を持ってしてもあの『三白城』にはダメージが与えられないと啓示が出たのか定かではないが、同盟の後、女帝は天草四郎にこう言われた。

 

 ――アサシン、マスターとして貴女には待機を命じます。元々、赤のサーヴァント全てをあの魔城に突撃させる無謀を行うつもりはありませんでした。私達の誰もが無事である保障はありません。保険はかけておく必要があります。白の獣を討伐し、大聖杯を奪った際に黒の陣営との戦いが再開となった時の決め手も用意しておく必要があるでしょう。どうか、貴女にはここで宝具の準備を行っていて欲しい。

 

「ふむふむ、想い人の力になれないというのは心にぬぉぉぉぉおおおおっ!?」

 

 余計な事を喋ろうとした劇作家は鎖に巻き付かれ、窓からダストシュートされた。

 今ここにはいない神父を複雑な心境で女帝は想う。

 

「男に首輪をつけられて悦に浸るような雌がサーヴァントだぞ……。その主たる男も程度が知れていよう。一体、何を警戒しているマスター……。フッ、まぁいい。野蛮極まりない他の匹夫共のように我があせくせ攻め込む必要も無い。お前達がもがく様を高みの見物といこうではないか、それがマスターの望みであればな」

 

(……神父の言った台詞に偽りは無い。だが、それだけが本質というわけでもない。赤のセイバーが泣け叫びながら引き摺り込まれたあの魔城に憎からず思っている自身のサーヴァントを連れていきたくはないという想いがその台詞に無意識ながら込められている事をアッシリアの女帝は気付いていないだろうな)

 

「何か言いたい事があるのか、ランサー」

 

「いや……何も無い(俺から言うのも野暮だろう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでダーニック叔父様の容態は?」

 

「えぇ。外傷も特に無し、命に別条はありません。ただうわ言のように『 I am the bone of Pretty figures……』と呟いていましたが」

 

「本当に大丈夫かしら……」

 

 ミレニア城塞の玉座の間にて、ヴラド公とフィオレ、そして今しがたそこへ戻ってきたフィオレのサーヴァント、ケイローンの3名がいた。

 

 ヴラド公は呆れたかのような仏頂面。フィオレは何とか取り繕ってはいるが不安な表情は隠しきれていない。

 何故かアヴィケブロンの工房の前で倒れていたダーニックを発見し、安全な寝室まで連れていったケイローンは思案顔だった。

 

「『白の陣営』による攻撃か?」

 

「それにしては意図が不明過ぎます。意識は失っているとはいえ、令呪を含めた五体は無事。そして何より工房にいたキャスターとロシェに特に異常は見られませんでした。むしろ戦いに向けてのゴーレム作成にいつも以上に熱意を燃やしているぐらいでしたよ」

 

「それは結構。だが、賢者よ。貴殿がそこまで考えても敵の思惑がわからないのであれば、それ以上の思考は労力の無駄遣いであろう」

 

 さすがのケイローンも白のビーストがアヴィケブロンとフィギュア談義で盛り上がり固有結界(幻覚)を発動して、ダーニックの胃にカラドボルグしましたよーなんて夢にも思わないだろう。普通は想像出来ない。出来てたまるか。

 

「何せ、人知の外側にいる化け物だ。余達の想像が及ばないのも摂理だろう。一つわかっている事はあの白獣が我らを舐め切っている事、ならばその慢心に付け込もうではないか。アーチャーのマスター……フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアよ……我がマスターがあの様である以上、黒の陣営のマスターは貴様が束ねる事になる。例え、此度の戦いがマスターの重要性が低い物になろうともだ……。覚悟は出来ているな」

 

「えぇ、勿論です領王よ。覚悟なんてこの聖杯戦争に参加した時から出来ています。例え相手が人類悪だろうとも」

 

 浮かんでいた汗と共に不安も拭う。

 その凛とした佇まい……という表現は彼女にはふさわしくないだろうが、下半身が不自由であり、車椅子に座っている身であろうとも、あのダーニックが才能を認め、次期後継者として尊重している程には彼女も魔術師として、一族を代表する者としての自覚はある。

 

 貴人の如く前を見据えている彼女は例え、これからどんな困難が立ち塞がろうともその歩みを止める事は無いだろう、きっと。

 

 

 ――バタンッ!!

 

 とそんな3人の元にゴルドが飛び込んで来た血相を変えた様子で。

 

「おい!セレニケの奴が『恋はいつでもハリケーンなのよ!』と叫びながら、ライダーと窓から飛び出しおったが、あれはほっといていいのか!?」

 

 

「……アーチャー、私もダーニック叔父様みたく倒れてもいいかしら」

 

「……もう少し、頑張りましょうマスター」

 

 

 

 

 《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り18時間》

 

 

 

 

 

 

 




「あ――、マーちゃん、マーちゃん、11時の方向からグリフォンに乗ったアストルフォ君と銀髪メガネのマスターらしき女が向かってきてま――す。迎撃しちゃいます?」

「いや、様子を見る限り、こっちに敵意は感じないし、何か面白そうだから中に入れちゃってもいいよ」

「え?  マジ?マスターらしき方が恍惚としたヤベェ顔になってますけど」

「コミケでオキニにの薄い本を見つけたおっきーみたいな顔?」

「姫はあんな顔しませーん!!  ……ないよね……?してないよね?冗談だよね?」

「兄様、薄い本とは刑部姫が表紙になっている『カルデア寝物語』の事か?」

「えっ、ちょ」

「おぉ――懐かしい。炬燵ックスで何Pまでいけるか挑戦した事もあったっけか……」

「炬燵とは暖を取る以外にもそういう使い方があるのか……。蒸れ蒸れックスで愛を深める炬燵道……。勉強になる」

「勉強しなくていいから! もうちょっと気遣いを学んで欲しい! 主に姫の心に対して!」








《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:ペンテシレイア
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク



黒のサーヴァント:残り6人
赤のサーヴァント:残り5人















黒の陣営、どうして足並み揃ってくれないのん?










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