俺っ子系男の娘の可愛さに震えろ。 予告はシロ君のエロは次回(大嘘)だったわ。この次にやるよごめんね。
頬が燃えるように熱い。心臓の鼓動が痛いぐらいにうるさい。握られた手の感触を堪能するよりも手汗で兄様を不快にしていないかが気になってしょうがない。一睡もしていないのに眠気が完全に吹き飛んでいるのに俺は気の利いた言葉を一つも吐く事が出来ずに借りてきた猫のように兄様に手を引かれていた。
(「兄様のその服、カジュアルでムーディで色気がムンムンだ。隣にいる俺がその後光に眼すら開けられない」と自然な褒め言葉から会話に繋げるつもりだったのに……)
いきなり抱き締めてプロポーズは無いだろう……。あれで完全に頭が真っ白になった。
いや、わかってる。あれは場を和ませる兄様なりの冗談なのだろう。Beastジョークというやつだきっと。
「古い時代の英霊とかなら、この街並みも退屈とかいうかもしれないけど、現代っ子な俺からすると結構新鮮なんだよなぁ。だから観光客とかもいるんだろうし。こんな石の匂いに包まれた街、日本じゃそうそうお目にかかれないしね」
ガチガチに固まっている俺に気を遣ってくれてるのか、せっかく兄様から話しかけてくれてるのに俺は相槌を打つ事すら出来なかった。喉が渇き、口から意味のある音が出てこない。返答の言葉一つ一つが頭の中に浮かんでは消えてしまう。
せっかく白のサーヴァントの皆に服も見繕ってもらって、付け焼き刃だが男の落とし方テクニックも叩き込んでもらった結果がこれだ。
助けてもらった時みたく、ただ兄様と普通に話していたいだけなのに。後ろじゃなくて、兄様の隣で──兄様と同じ目線で同じ景色を見たいだけなのに。やっぱり俺は不出来なホムンクルスなのか?
盾を持つ勇敢な少女のような、怨嗟の炎を操る黒き魔女のような、鋼鉄の足で踊るプリマドンナのような──本に描かれた彼女達のようにはなれない……。俺はきっと助けられるだけの端役で兄様の隣に相応しい
「いらっしゃいませ~~」
「二名でお願いします」
気が付くと軽快なBGMが流れるレストランの中、席についていた。何をしているんだ……兄様がせっかくエスコートしてくれてるのにいつまで上の空でいるつもりだ俺は。
「ごめんね。いきなり抱き締めて『結婚しよう』はセクハラが過ぎたね。距離感見誤ってウザがられちゃったかな?」
「ち、違う! 兄様は悪くない。悪いのは全部、俺の心の弱さだ……」
咄嗟に兄様の言葉を強く否定する。俺の到らなさのせいで兄様が落ち度を感じる必要はまるでない。
「やっと、こっち見てくれたね」
「あっ……すまない」
「色々と心がしんどい時は頭を空っぽにして美味しいものを食べればいいのさ。人間、悩みは大小尽きないけれどもお腹いっぱいになれば案外解決するもんだよ。すいません、店員さ──ん、これとこれ、あとドリンクセットも」
俺の分までスムーズに注文をしてくれる兄様。正直な所、今の精神状態で何を食べるのか選ぶ余裕も無かったので助かった。最初から最後まで気を遣わせてもらいっぱなしだ。
あぁ、しかし……俺はどうしてこんなに固まってしまっているのだろうか。おっきーの部屋に匿ってもらっていた頃は気負う事なく会話は出来ていたのにこれが意識しているという事なのだろうか? 兄様を……
こういう時はどうすれば……。確かアビーから教わった『男からのお誘いが多くなるワルくてイイ女編その69』では──。
「ウェイト。君が何を思って胸元の服を擦り下げようとしているかは何となく察せれるけど、公共の場でそれは控えた方がいい。さすがの俺も産まれたばかりの子にここで露出プレイをおっ始める程、鬼畜じゃないから。何も男女の関係ってのはさ、直接的なセクシャルだけじゃないでしょ? まずは対話から始めようぜシロちゃん」
「男女の関係……。兄様は俺の性別を知っているだろう?」
「俺にとってはシロは
「そうか……」
──『どう在りたいか、此、最重要事項。恐怖 必要皆無 どちらの体だろうとも 主マスターなら優しくする』
俺に発破をかけてくれた哪吒の言葉が頭の中で繰り返される。
二つの選択肢があった。兄様から救われた時に直々に授かった聖杯の力で兄様に出来るだけ愛されるような女の姿になるべきか。それともマイノリティという意味での希少さを生かして、男の体のままでいるべきか。
結局、俺は自身の性別を偽る事はしなかった。凹凸がハッキリとしたグラマラスな美女へ変貌を遂げる、けれどそれは兄様に対しての不義理なような気がして、もしこれから何かの奇跡があって、兄様が抱いてくれるというのなら、決して魅力的な体ではないけど、ありのままの俺で初めてを奪って欲しかった。
「デートだからって深く考えて緊張し過ぎない方がいいよ、男女が一緒にお出かけしてお話するだけの事なんだからさ」
「心得た……」
「ふふっ、まだまだカチカチだね」
「眼を閉じるから今の言葉、もう一回言ってくれないか?」
「いい感じにおっきーに毒されてて大変結構」
やはり当然の事だとわかってはいたが、俺と兄様では絶対的な経験値が違う。リードされる形で少しずつだが、緊張も解れ、いつも通り話せるようになってきている。
空腹を刺激する香りと共に注文した料理が届き、兄様に紙エプロンという物をつけてもらって食事を始める。
まだまだ兄様におんぶだっこだが、そろそろなけなしの勇気を振り絞ってもいい頃だろう。
「兄様……あ──ん」
野菜に包まれた肉を小分けにして、突き刺したフォークを差し出す。
俺と一緒にいる時間が兄様の記憶の片隅にでも残ってくれればという願望を込めて。
その後は頬が緩んでしまうのを止められないぐらいに楽しい時間だった。
料理を口に運び、談笑する。俺は自分から話せる程のエピソードといえば、あの城に匿われてからしかないので、基本的に聞き役に徹していた。
──おっきーの城は実はロシア娘とフィギュアマニアのカバリストの力を借りれば、巨大ゴーレムに変形出来て、チェイテ城の守護神と、着ぐるみ巨大怪獣系少女と、大国で伝説になっている木こりとで長編スペクタクル映画を撮ったら規模が大きくなり過ぎて、世界が滅びかけた話とか。
──白のセイバーの『マスターに飼われたい派閥』と聖槍を持つ騎士王の『マスターを飼いたい派閥』の論争が飛び火し、『マスターを弟にしたい派閥』、『マスターをお兄ちゃんにしたい派閥』、『マスターの子供になりたい派閥』、『むしろマスターを産みたい派閥』等々、混戦し続けて、収拾がつかなくなった話とか。
──白のキャスターや極東の武者と一緒に胡散臭い未来の超級AIとやらが作ったTRPGをプレイしたら、笑えない期間、外宇宙を彷徨い続けた話とか。
──白のルーラーの中にいたもう一人の魔法少女JKが自我を持ったステッキと結託し、有志を集って、『十二姫月』なる組織と共に大規模な魔法少女特異点を造り出した話とか。
『カルデア国物語』では語られなかった。壮大で奇妙な冒険の数々を兄様本人の口からたくさん聞かされながら食事の時間を楽しんだ。
お腹も満たされ、一段落ついた頃にはもう時計の針はてっぺんを過ぎていた。
ようやく俺は普通に楽しく兄様と言葉を交わす事が出来ていた。
チップを加えて、多めに料金を払ってくれた兄様と共に店を出る。
「兄様……お手を拝借してもいいだろうか?」
こちらからデートを誘った身なのにいつまでも受け身のままでは俺の立つ瀬が無い。なけなしの勇気を振り絞って、今だけは彼のこ、恋人のように振る舞えたらと思う。
それからは馬車に乗りながら中世風の石造りの街並みを気ままに見て回った。
閑散とした博物館。よくわからない人形が飾られているお土産屋。クオリティが低すぎるドラキュラの物真似でチップの要求をしてくる現地人等々。
時代を感じさせる建造物が多いせいか華やかなデートとは言いづらかったが、それでも兄様が隣にいるだけで俺の眼に映る光景は全てが輝いていた。
好きな人といるとどこにいてもそこが最高のアトラクションになるのだろうか。
指を絡めて恋人繋ぎで並んで歩く俺達は髪型も揃ってポニーテールで身長差も大きく離れている事から恋人というよりはむしろ兄弟かもしれない。何せ俺が事あるごとに兄様、兄様と彼に擦り寄っているのだから。
陽が傾き始めた頃、俺と兄様が辿り着いたのは最初の待ち合わせ場所だった白亜の教会だった。
俺がトチ狂ってしまったせいで中に入れなかったのを気にしてくれたのか、今は二人で黙ったまま厳かで神聖な雰囲気を感じる内部を見上げている。
「兄様は式は……教会式だったのか?」
「相手によりけりだったなぁ。神前式もやったし、人前式とか、船の上でした事もあったし、大半は宇宙式だったかな。新天地求めながらのハネムーンって感じで」
それは──『カルデア国物語』で書かれていた人類と戦うのを避けて、愛すべき者達共に故郷を捨てて宇宙へと飛び立った事を言っているのだろうか。
世界を救った兄様への仕打ち、彼も彼女達も納得しているのだろうけれど、俺の心の奥底に眠る鬱屈としたモヤモヤは消えない。
ヒトとは何だ? 人類とは何だ? 俺達ホムンクルスを救い、生き場所をくれた兄様が怪物なのか? 私利私欲の戦争の為にホムンクルスを浪費する魔術師達が人間なのか?
『理外の力を持っている』それだけの理由で恩も忘れて迫害するような人類の方がよっぽど怪物じゃないのか?
人類悪だろうが、ビーストだろうが、俺にとっての人間は兄様達だけなのは今も変わらない。
「兄様は……恨んでいないのか? 自分を星の彼方へと追いやった者達を」
「あぁ、おっきー辺りから聞いたのかな? ……ふぅ、まぁ、あの世界線における俺の役割は終了したんだよ。七つの人類悪はそれぞれの終わりを迎えた以上、もう俺がビーストになる必要も無かったからね。全員に嫌われていたわけでもないし、わかる人にはわかってもらえればそれで十分なんだよ。恨みとかはお門違いさ、むしろ彼女達の出会いのきっかけをくれた全てに感謝してる」
「……………………そうだろうな、うん。兄様はきっとそういう人間だ」
なら兄様はどうしてここにいる?
役割が終了したというのならば、家族と一緒にカルデア島でずっと暮らしていれば良いのではという疑問がよぎる。兄様の家族の中でそう願う者も必ずいる筈だ。
どうして俺なんかの為に世界の壁を越えて来てくれたのか。
幾重にも伸び続ける人類史のルートがある限り、人類の不祥事がある度に、何だかんだ言いながら兄様はきっとあらゆる世界に顕れる。
でも俺は兄様には今日のような日常を送り続けて欲しい。
「強くなりたいな……兄様を守れるぐらいに」
「おやおや大言を吐くようになったじゃないか
「あぁ、すみません。そこの方、少し道を尋ねたいのですが……」
そんな決意を俺がほのかに固めた時、観光客だろうか? アジア系の顔をした30代ぐらいの特に特徴も無い男が声をかけてきた。
ガイドブック片手に気さくに近づいてくる男に対して、兄様もにこやかに対応する。
俺も兄様も格好が格好なせいか物珍しさで声をかけてくる観光客や現地人がデート中に何人かいた。特筆すべきない日常の一ページ、未だ人に対してわずかな忌避感を抱いてしまっている俺を知ってか、対応は全て兄様がしてくれた。
「は?」
だから一体誰が想像出来るか。ついさっきまで道を尋ねていた男が一体どこから出したのか鉄の薄い刃で兄様の胸元にいきなり斬りかかるなんて。俺はただポカンと間抜けな声を上げるだけだった。
あれは確か刀という武器?
いや武器なんてどうてもいいだろう。 何故、いきなり斬りかかった?
金目の物目当てか? 強盗? 観光客を装って? 眼が虚ろになっている。 化け物染みたうなり声もだ。
天窓から見える空が赤い。 夕焼けにしては不気味過ぎる。 紅い月? 黒か赤の陣営の攻撃?
兄様は無事か? 驚いている。 でも傷は負っていない。 良かった。 いや良いワケないだろう。
兄様に何を振るっているんだコイツは。 刀だぞ、人を斬る為の物だぞ。 斬るって事は殺す目的だろ?
兄様を殺す? こんなのが兄様を? 殺す? コロス? …………コロス、コロス。コロス。命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる。ふざけろにんげん、おれがおまえをさきにころす。
心臓が沸騰して──。
────
「シロ!!」
「え?」
昏くて燃えるような感情に支配されていた俺を正気に戻してくれたのは兄様の声だった。
複数の白き魔手、宝具『白式官能』が俺の右腕を取り押さえていた。人造人間の手ではなく、白い獣毛が浮かび上がっていた明らかに人外と化していた俺の手を。
兄様に危害を加えようとしていた下手人は外傷は無く、倒れ伏していた。兄様が対処してくれたのだろう、俺だったら間違いなく、殺していたから──。
俺の意識はそこで途絶えた。
「いや──驚いた。基本的に自分に害があるものじゃない限り鈍感になっちゃうからさ。たかだか人間に斬りつけられた所でダメージも受ける事はまず無いし、強大な力を持った者特有の慢心っていうやつなのかな? そういうのはAU王の領分だと思うんだけど」
眼が覚めて、ベッドの上で膝を抱えたままじっと動かない俺の隣で兄様は明るい口調で語り続けていた。
ダブルサイズのベッドが一つ、俺でもそれなりに質の高いとわかる調度品が並べられている。きっとあれから気を失った俺を抱えてホテルにチェック・インをしてくれたのだろう。
ロマンチックな雰囲気な密室に一つだけのベッドに並んで俺と兄様。
本来なら、気絶してしまうぐらいにこれからの展開に心を躍らせてしまってもいい所なのだが。俺はある事が気掛かりでそれ所では無かった。
「さっきの暴漢も魔術か宝具か、それに準ずる者で操られていた……あるいは変化させられていたって感じかな? あの紅い空も、何か昔似たような事があったような……」
「ご、め、んな、さい……」
うんうんと首を捻る兄様に対して、俺は絞り出すように謝罪をしていた。
「ご、めん、なさい……ご、めんなさ、い、ごめんなさい、ごめんなさい」
何が兄様を守れるようにだ。兄様が斬られたとわかった瞬間、俺の頭の中は人類そのものに対する憎悪で埋め尽くされた。余計過ぎる心配だった。俺が何をしなくても兄様は自分の身は自分で守れるのに。
正確に何が起きたのかはわからない。何を仕出かしてしまったのかもわからない。ただ俺が自我を失って暴走して、兄様に迷惑をかけた事だけは理解出来た。
「いいよ、気にしなくて。もしかしたら、俺がよかれと思って君の心臓代わりに埋め込んだ聖杯のせいかもしれないしね。持ち主の感情と呼応して何かを引き寄せてしまったのかな? あの刺客も結局、何がしたいのかよくわからなかったし、俺の命狙いならいくら何でも弱すぎるし、杜撰だ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
壊れたレコードのように何度も謝罪の言葉を漏らしている俺の頭を兄様は隣からそっと抱えた。
とても優しく暖かい感触。だが今はその優しさがとても辛い。
それから何も言わず、兄様はゆっくりと俺ごと横に倒れ、大きな毛布で二人を包んだ。
広いベッドの中で物言わぬ二人。兄様に抱き締められたまま数分、ドン底に落ち込んでいた筈の俺の心に灯りが徐々にに灯ってきたような気がした。
甘えてしまう。すがってしまう。兄様に自分のありとあらゆる全てを預けて、依存したくなってしまう。
でもそれをしたら、彼の隣に立てる資格も失ってしまいそうで──。
「食欲、睡眠欲、性欲ってね、人間の三大欲求ってあながち馬鹿に出来ないんだよ。俺がレストランで言った通り、食欲を満たせば、悩みは案外解決するし、辛い事があったら目いっぱい寝て睡眠欲満たして、忘れる事だって出来る。さてさてシロ君と俺が今いるのはどこかな?」
「……ベッドの……中だ」
「ベッドとは一体何をする所かな?」
「寝る所……だ……」
「あぁ、その通りだ。睡眠欲を満たす場所だ。でももう一個あるよね、人類の繁栄に大事な営み、好き合った二人が行う尊い儀式。もう一個の三大欲求」
「性欲」
兄様の顔が視界いっぱいに広がっていた。俺を助けてくれた時と変わらない不敵で底抜けに明るく、誰にも侵される事のない空のような表情。
心の灯りが今度は燃え盛る炎となって俺の胸を激しく鼓動させていた。餌を求める雛鳥のように口を半開きにしたまま兄様の頬へと手を添える。
「辛い事も悲しい事も悩みも、一旦死ぬほど気持ちの良いセックスして頭馬鹿になっちゃってリセットしたいと思わない?」
逃げ場の無い寝具の中、恋い焦がれた人に蠱惑的にそう誘われて断る方法を知っているのなら、誰か教えて欲しい。
「兄様は俺と、そういう事をしたいと思うのか……? 人間でもなく、ホムンクルスとしても欠陥品で自身の性別すら簡単に誤魔化してしまう俺を抱いてくれるのか?」
「うん、俺はシロの事が好きだよ。産まれて間もないのに諦めず、必死に生きようとして、おっきーの部屋の薄い本に簡単に影響されちゃって、日常の小さな事で一喜一憂する子供みたいな君が大好きだ」
壊れてしまう。心臓代わりに彼に捧げられた聖杯すら壊れてしまう程の衝撃。人類が今まで当たり前に享受してきた、これが『愛』。精神も肉体も何もかも兄様を求めていた。
「…………して、……ますっ……」
今度は自分から強く強く抱き締めて彼を求めた。腕を首に回し、スカートが不格好になるのも気にせず、足も絡める。おっきーの書物にあった親愛の抱擁の最上級『だいしゅきホールド』で兄様の告白へと返事をする。
「お慕い、しております……兄様っ!!」
忘れさせて欲しい、溺れさせて欲しい、狂わせて欲しい、俺の小さな悩みも苦しみも劣等感も全て打ち消すぐらいに愛して欲しい。
《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り3時間》
表と裏で空間を切り替える事が出来る刑部姫の宝具『三白城の性鬼深愛獣様』。
その第八層。最上階にあたる刑部ルーム。裏のシリアスモードに切り替えられているその部屋は炬燵が鎮座するオタク部屋ではなく、ラスボスたる白のビーストが君臨する玉座。
かつてトチ狂ったセレニケとその巻き添えを喰らったアストルフォが犯されたその空間には真っ黒な長机と背もたれがやけに長い椅子が八個、机を囲むように並べられていた。
一つの空きを除いて、七騎の白のサーヴァントがそこに集結していた。
「今更なんだけど、八って何か中途半端な数字だよね。七武海にもなれないし、
【第八層:白のアサシン】薄い本・挿絵・拠点作成及び突っ込み担当。『刑部姫』
「え、何ですか。ここに来て、まさかぶっちゃけ白のルーラー要らないよねとか言うつもりですか? そんな! せっかくここの世界の私にも弟後輩との放課後教室カーテンホールドイチャラブセックスを布教しようと思ったのに!」
【第五層:白のルーラー】布教、特攻、姉プレイ担当『ジャンヌ・ダルク』
「この聖女は一体、何しに来たんだ?」
「神の思し召しのままではないでしょうか、お嬢様」
【第七層:白のライダー】策謀、調査担当『司馬懿(ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ)』
「ふっ、ジャンヌとセイバー・リリィは白の陣営の中ではイロモノ枠に入るからな。ここは残りの常識枠である我らがしっかりせねば、マスターにも顔向けができぬだろう」
【第二層:白のアーチャー】斥候、陽動、幼児プレイ(どっちが幼児でも可)担当『アタランテ』
「フフフ、そのイロモノ枠からちゃっかり自分を外しているあたり、客観性の欠如って怖いと思うの、アタランテのお姉さん」
【第六層:白のキャスター】強奪、触手、SAN値チェック担当『アビゲイル・ウィリアムズ』
「そもそも貴様は何故、子供の姿のままなのだ」
【第三層:白のバーサーカー】広報、営業、販売担当『ペンテシレイア』
「はぁ!? 甘やかしたら、甘やかされたくなるだろう! 常にバブみは与えて与えられてのwin-winでなければならないって汝の企業理念にも付け加えておけ!!」
「私は何故、怒られているのだ?」
「放置推奨 いつもの発作 触らぬ狩人に祟り無し」
【第四層:白のランサー】戦闘、護衛、精神TSプレイ担当『哪吒』
JK制服のままのジャンヌと幼女化しておしゃぶりを咥えたままのアタランテを除き、従者のトリムマウと共に中華風の着物に身を包んでいるライネスに全身の肌は白く変貌を遂げ、外なる神をその身に宿らせたアビゲイルと他のメンバーは本気の戦装束に身を包んでいた。
「で、もう数時間すれば、両陣営もこの城に攻め込む手筈になっているそうだな、アビー?」
「ええ、ライネスさん。しっかりと盗み聞きしたから間違いないわ」
「やっぱ『窮極の門』ってチートだよね。正直な話すると姫達が出張らなくてもアビーちゃん一人で余裕で終わらせられると思うんだけど」
身も蓋も無い話をすれば、それぞれのマスターを門にポーイッ、外宇宙にシュッー! 超エキサイティングッッ!! だけでこの戦いは終わらせられる。
勝利という結果だけを求めるなら、それが正解だろう。
「けれど座長さんはそれを求めていない。私もやり過ぎないように釘は刺されているし」
「野蛮人じゃないんだ。全員殺してOKなんて時代でもないだろう。トリムが調べてくれた隔離されたルーマニアについても気になるし、先程、ほんの一瞬、世界が切り替わった点についても調査の必要があるだろう」
「え、アキレウス殺したらダメなのか?」
「そこは君の臨機応変な対応に任せる」
「フレキシブルにデストロイだな。了解だ」
ペンテシレイアも結局カルデアでは出会う事の無かった仇敵との出会いにとぐろを回しながら、殺意を高めている。隣にいる哪吒がそっと距離を取るぐらいは殺気立っていたがそれでもアキレウスがいると判明しているにも関わらず、飛び出したりはせずにマスターの言う事を聞いて、彼等が来るまで大人しく待っているのは妻となり、子もこさえた事により丸くなっているのが伺える。
「で、その肝心な最初を担当する白き騎士王様は一体どうしてここにいないのかな? もしかして余裕を持ってもう持ち場で待ち構えてくれてたりするのかな?」
ライネスの疑問にコンソールを叩いて、多数のモニターを展開した刑部姫は城内を探し始めた。
「正門前には見当たらないね……。第一層の表面。プライベートゾーンの方にいるんじゃないのかなぁ……あっいた、うっっわぁぁぁ……」
声色だけどもわかるドン引きの感情。
刑部姫の言う通り、第一層、ホムンクルス達を大勢匿っていた部屋の一室に確かに白のセイバーはいた。
大型の白い円形テーブルの中心で全裸のまま大の字に手足を拡げるように四肢を縛られ、色んな体液まみれで意識をトランスさせている金髪女騎士のどうしようもない姿が。
「どういうことだってばよ」
あまりのショッキングな映像にキャラ崩壊する哪吒。
「成程、首に残った扼痕。みぞおちから下腹部にかけての複数の青痣。そして彼女の全身にかけられた白濁色と淡黄色の液……。初歩的な事だよ、哪吒君。犯人はここで彼女と拘束首絞め腹パン浴尿プレイを愉しんだのさ」
「ドヤ顔で推理するようなことじゃないでしょ。むしろ犯人はこのプレイをマーちゃんに懇願したセイバー顔の中でぶっちぎりにやべぇやつじゃないの?」
「しかもベッド代わりに円卓を使っているあたり業が深すぎると思うんですけど。一体、彼女はどういう精神状態でこのプレイを求めたんでしょうか……。というか待って下さい、私もしかしてこれと同列扱いされていたのですか?」
空中尻叩きアナルガン責め縛りプレイだけでは満足出来なかったセイバー・リリィ。
彼女は未だに円卓の中心で体をビクンビクンさせ、正気に戻っていない。半日経ってなお、マスターとのハードプレイの余韻に浸り続けている純白の騎士王は後、数時間程度で目覚める雰囲気はまるで無かった。これは割れるわ円卓。
「特殊プレイにも応えなきゃいけないマスターの心労が伺えるな、ばぶばぶ」
「ねぇ、アタちゃんブーメランって知ってる?」
「あらゆる后のニーズに全て応えてこその真の王よ。ふっ、さすがは私の夫だ。白のセイバーが出陣出来ないというのなら、それはそれでよしだ。急な欠員に対応出来ないようではCEOは務まらん。彼女の有給申請は私がしておこう」
赤のセイバー、モードレッドの『
「ここの世界の英霊の皆様もやるのね……。まだ本格的に戦いも始まっていないのに私達の内の一人をもう脱落させるなんて」
「だが奴は我々白の陣営の中でもぶっちぎりで頭のおかしい奴」
「犯り過ぎで自滅とは白の陣営の面汚しよ」
「まぁ、顔射されまくってるから確かに面は汚れているな」
「だれうま。お嬢様、こちら座布団です」
白の陣営、1名一時戦線離脱。
残り7名。
次回、シロ君のエロ回です(今回は本当)。