※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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何だかんだで3年もコンスタントにFGOのR18小説投稿しているのって私ぐらいじゃない? (自尊心の塊)
 いつも感想、評価、誤字報告、本当にありがとうございます(感謝の塊)

















《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り5分》




『三白城』。旧姫路城部分、第八層にあたる屋根の上。瓦の地面を踏み場にして、屋外に出ている七人の女傑達が地上を見下ろしていた。

「来るな」

「来るわね」

「来訪」

「来ますね」

「来るか、アキレウスゥゥゥ……」

「来たか」

「こうやって幹部組が横に並んでるのって少年誌臭がして、すごく絵になるよね」


 一名を除いた白の陣営のサーヴァント陣は不敵に笑い、侵入者達を待ち構える。

「弟子は?」

「幸せそうな顔で寝ているシロちゃん連れてさっき戻って来てたよ。いやーまたシーちゃんと紫式部先輩の創作が捗っちゃいますねぇ」

「残念です。マスターの義弟という事は私の弟にもあたるのに……。どうせなら姉弟3人で仲良くヨスガりたかった所でした」

「性女言動 理解不能」

「それで? マスターは奴らの中に我々がこの世界に来訪した原因があると踏んでいるのか?」

「あぁ。トリムに調査させた隔離されているルーマニアの現状と、一瞬だけ赤い月と空が浮かんだ世界が切り替わったような感覚……。あの弟子がわざわざ世界線を飛び越えて降臨したという事はそれだけの厄ネタがあると踏んでいるのだろう」

 白のビーストは赤の陣営、黒の陣営のどちらか──確率的にはサーヴァントの中にその要因が潜んでいると踏んでいる。だから大聖杯を強奪して、両陣営に喧嘩を売る真似をしたのだろう。だが巧妙に隠れているのか現段階では誰なのかは不明。横からしゃしゃり出て来た部外者なのは事実なので怪しい奴を片っ端からボコしていくという面白味の欠片も無い手段を彼は取るつもりはなかった。

()()()シロの死にたくないという強い意志の発露に惹かれてしまったのも事実だが、白のビースト──親愛の獣、ビースト0:デアーが別世界へ来訪する時にはそれなりの因縁というものが存在する。

 それはこの先の時系列の話だが、彼に恋心を持ってしまった殺生院キアラとの因縁で藤丸立香という少女が人類最後のマスターとして人理修復を行う世界線に召喚された時のように。

 世界の壁を超えるのにはそれなりの理由が必ずある。

「それはそれとして拳を握って挑んでくる以上、私は叩き潰すがね」

「うわぁ……愉しそうな顔してるねぇ、ライネスちゃん。さて最初の出番はアタちゃんだけど、準備はおーけー?」

「ふっ、愚問だな」

「リリィちゃんみたいに身内の恥はもう晒したくないからね、頼むよ? 今度は真面目にやってね。フリじゃないからね?」

「恥の具現化みたいな城を建てている汝に心配されるいわれはない。安心するがいい」

「喧嘩売ってんの!?」






ビーストウォーズ⑪(Fate Apocrypha編)

 怨念を絶やすな。恩讐を火にくべろ。幾千と世界が変わろうとも決して朽ちる事のないこの恨みを今この時はあの獣一匹に向けよう。

 

 今すぐにでもこの胸を掻きむしりたい。血涙を流し絶叫したい。この世全ての地獄を再現したい。だが今は耐えろ、耐え忍ぶ時だ。

 

 我が憎悪、復讐を「つまらない」の一言で一蹴したあの男を決して許すな。

 

 あの獣の特性に決して絆される事なく、世界を滅ぼす程に積怨を燃やし続けろ。

 

 まだだ、まだ今は()に浮上すべきではない。真実を見通す英雄もいる。鼻が利く眷属共もいる。直接的な手段を取ってしまえば、すぐに勘付かれてしまうだろう。

 裏の裏、その奥深く……気が遠くなる程の回り道をしろ。至る所に伏線をばらまけ。問題は無い。少しずつだが、私が望む終着には近づいている。気付いた頃にはもう何もかもが手遅れになっているように。

 

 

 あぁ、本当に長い道のりだった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り0──》

 

 

 

 

 

 

 帳を下し、空に浮かぶは無数の星のみ。今宵は新月、月の姿は無く。この聖杯大戦の本来の参加者達。赤と黒の陣営が白の陣営の魔城の下に集っていた。

 

 黒の陣営からは──。

 

 ジークフリート

 ヴラド三世

 ケイローン

 アストルフォ

 フランケンシュタイン

 

 

 

 赤の陣営からは──。

 

 カルナ

 アタランテ

 アキレウス

 シェイクスピア

 

 そして赤の陣営のマスター。言峰四郎、否、第三次聖杯戦争でアインツベルンが召喚した生き残り、受肉したルーラー、天草四郎時貞。

 

 それに加えて、今回の聖杯大戦の調停役として聖杯に召喚された。ルーラー、ジャンヌ・ダルク。

 

「ふむふむ、ほうほう、いやはや! こうして間近で見ると実に狂った建造物ですなぁ! ぶっちゃけるとご子息は頭がイカれてますぞ(I will be brief : your noble son is mad)的なアレです」

 

「ウゥ……」

 

「えぇ、そもそも重なり合っている建造物自体、時代、構造を考慮してもアンバランスにも程があります。まともな精神性ではこのような宝具は作成出来ないでしょう」

 

 

 時は来た、各陣営、前もって取り決めた時間を違うことなく白の陣営の根城へと。

 

 

 この中で人間である黒のランサーのマスター、ダーニックと()()()()を除き、計11騎のサーヴァントが集結していた。

 

「まさか、あの時の聖杯戦争のサーヴァントがこうして生き残っていたとはな……」

 

「色々と言いたい事はあるでしょう、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。ですが今は同じ轡を並べる仲間です。話は白の陣営との戦いが終わり次第聞きますよ。ルーラー、ジャンヌ・ダルク貴女もそれでいいですね?」

 

 第三次聖杯戦争において敵同士として面識があるダーニックと天草だったが、白の陣営を前にして同盟を結んだ身。今さら内輪揉めで消耗をするなんて愚を起こすつもりは無かった。確かに先の聖杯戦争でサーヴァントの生き残りがいた事は驚きに値するが、ダーニックはもはや現状において、()()()()()()に意識をとられる容量を使うつもりは無かった。

 

 ダーニックの目的はもはや奪われた大聖杯の奪還ですらない、神秘の塊でもある人類悪、『白のビースト』ともう一度接触する事にあるのだから。

 

「構いません。赤の陣営であるあなた方が再び、私を襲撃するというのなら火の粉を払うだけです。問い質したい事があるのも事実ですが、今すべき事ではないでしょう」

 

「話が早くて助かります。呉越同舟というやつですね。争っていた我々が手を取り、十を超える英霊達が一堂に会しても白のビーストの喉元に喰らい付ける確率は1%がいい所でしょう。だからこそ、私達が取るべき行動は一つ」

 

行動は雄弁である(Action is eloquence)! 過去の遺恨は飲み込んでさっさと攻め込んでしまいましょうという事ですな! 正直、吾輩をあまり数には入れないで欲しいのですがね。ここまでついて来たのも面白そうだから以外の理由なんてありませんし」

 

「汝には少しでも英霊としての矜持は無いのか?」

 

「え──だって吾輩、筋力・耐久共にEのクソ雑魚なめくじですぞ? 期待をされても困ります」

 

「つーか、わざわざ馬鹿正直に正門から突っ込む必要があんのか? 俺らなら宝具を使えば、無理矢理別の所からも侵入出来るだろ?」

 

 アキレウスは至極当たり前の疑問を投げかけた。彼の宝具然り、アストルフォの宝具然り、空へ飛び、窓でも城壁でも突き破って吶喊する事は出来るだろう。

 むしろ、あちらがこちらを悠長に待っているというのなら、宝具の集中砲火を根城に与えてしまえば、堪らなくなった敵も出てこざるを得ないのでは、戦力を集中して、一階から登っていく必要があるのかと。

 

「そうですね。彼の言う通り、それを確かめなかったわけではありません。ですが……」

 

 天草が頭上を見上げた時、この場にはいない赤のアサシン、セミラミスが召喚した竜翼兵が数体、舞い上がり、三白城の高層から侵入を試みようとしていたが──。

 

「おいおい……」

 

 近づいた瞬間に宙から漆黒の穴が現れ、そこから大聖杯を奪った時と同様の触手が竜翼兵達に絡み付き、完全に捉えていた。バキバキッと致命的な程に何かが折れる音を響かせて、そのまま穴の中へと引き摺り込んでいく。

 穴から「竜の牙ゲットよ!」と少女の嬉しそうな声が聞こえたような気もしたが。

 

「あれはやっばいねぇ。ボクも下手をしたら、ああなってたのかな?」

 

 アストルフォの中ではセレニケ(ボケマスター)に特攻を強要された記憶が甦る。もしかすれば、自分達はまだ運の良い方だったのかもしれない。いや結局触手プレイで色々絞られてしまったわけだが。理性を取り戻したアストルフォはその時の事を思い出すと顔から火が出るくらいに赤くなり、股間が熱くなってしまうのを仄かに感じていた。

 

「まぁ、このように、基本的に正規の手段以外は認めるつもりは無いのでしょう」

 

「フン。あの兵を送った女帝は留守か。全兵力を集結させるのでは無かったのか?」

 

「それはお互い様でしょう、ヴラド公。あなた方も黒のキャスターを控えさせているのですから」

 

 両陣営にはそれぞれ一騎、ここには来ていないサーヴァントがいる。

 黒のキャスター、アヴィケブロン。赤のアサシン、セミラミス。防衛に向いているサーヴァントをそれぞれの陣営の本拠地に一騎ずつ残していた。

 その気になれば、数百いるホムンクルス及び巨大な大聖杯を強奪出来る者達ゆえ、サーヴァントを一騎残したからそれを防げるわけはない。

 だからといって警護を誰一人残さないでマスター達を無防備な状態にするつもりも彼等には無かった。彼等にとってはこの同盟も期間限定。白の陣営を倒した後の事も考えなければならない。

 

「全ては白のビーストの匙加減次第になってしまいますね。だからこそ、彼と直接相対し、その真意を知る必要があります」

 

「賢者よ。貴様がたとえ融和を望んでいた所で余はここまで虚仮にしてくれた盗賊共を無罪放免にするつもりは無い事だけは心に留めておけ」

 

 

 数少ない情報からも白の陣営の戦力を正確に理解しているケイローンと黒の陣営が生成したホムンクルス、即ちその主である自身の財を強奪した賊を王として許すつもりは無いヴラド公とでは目指す目的について平行線ではあったが、現時点で戦闘行為を前提としてこの城を攻略するという点では一致していた。

 

 

「細かい話はもういいだろう! さっさと攻め込もうぜ! 恐らく最初の相手はウチん所のセイバーとバーサーカーをものともしなかった騎士王様だろ? 相手にとって不足はねぇ!!」

 

「汝にも匹敵する程の防御力にスパルタクスの耐久も優に上回る破壊力。間違いなく、白の陣営の中でトップクラスのサーヴァントと見ていいだろう、油断するなよ」

 

 そんなアタランテの忠告が耳に入っているのかどうかは不明だが、気合いを入れて手の平に拳を叩き付けるアキレウスの後に続く、赤黒陣営のサーヴァント達。一番後続にはマスターであるダーニックと──。

 

「で、サーヴァントを失った協会の狗が何の用かね」

 

「噛み付いてくんじゃねぇよ。令呪はまだ一画残ってる。パスも多分、切れちゃいねぇ」

 

 ダーニックが不愉快さと怪訝が混じり合った顔を向けるのは赤のセイバーのマスター……ユグドミレニア一族と明確な敵対関係にあるフリーランスの死霊魔術師、獅子劫界離。

 

「足手まといな事には変わりないだろう」

 

「それはお前も一緒だろうが、この戦争において腕に覚えのある魔術師が一体何の自慢になるんだよ。それに気付いてるか知らねぇが、今の()()()()()、随分とキナ臭えぞ」

 

「何?」

 

 傭兵魔術師と王冠(グランド)の階位をかつて持っていた貴族二人に取り巻く不穏な空気を切り裂くようにアキレウスの英雄のお手本のような声が鳴り響く。

 英雄として強者との戦いを真に望む彼は不敵な笑みを浮かべて、高らかに宣戦布告を行う。

 

「我が名はアキレウス!! さぁ白のビーストよ、お望み通り、お前達の根城まで足を運んだぞ! お前の『全力でかかってこい』という言葉の通り、オリンポスの神々に恥じる事の無い戦いを見せよう! 故にお前達も手加減は不要だ! さぁ、姿を見せろ! 白のサーヴァントよ!!」

 

 最上層まで届き得る大気震わすアキレウスの啖呵。その啖呵に気が引き締まったかのように赤黒のサーヴァント達は即戦闘に移れるように臨戦態勢を整えている。

 

「さぁ!!」

 

 …………

 

「……おい」

 

 ……………………

 

「ふむ、誰も出てこぬな。赤のセイバーと赤のバーサーカーを屠り去った女剣士が出てくると思っていたが……む、おい正門の近くに看板があるぞ」

 

 これだけ戦意を昂らせ、率先して槍を構えているのに総スカンは悲しくなる。変な空気で固まっているアキレウスを尻目にアタランテが扉に近付き、最初にこの『三白城』に訪れた時には無かった筈の立て看板に目を通した。

 

 

 

 

 

『直してみよう』

 

【赤黒陣営っちへ

 

 ういっす──! 

 昨晩から完全にぽんぽん パンパンで

 いとおしみが深いので、

 1日円卓でスヤァしておきます。

 明日はイけたら、イくゥーマンです!】

 

 

 ご丁寧に右上に白のセイバーのアヘ顔ダブルピース付きで貼ってあった。プライバシーを遵守して、黒い海苔が目を覆ってる。

 

 

「ふざけてんのか!!」

 

 アキレウスが蹴り壊す気持ちもよくわかる。まず看板に書かれている言葉の意味がわからない。取りあえず、白のセイバーはいないんだなという事だけは何となく察する事が出来たが。有給ならぬ精給を取った白のセイバーの代わりにわざわざこの看板を作った白のバーサーカー、ペンテシレイアの真意も不明。案外、アキレウスがイラついてくれればいいなーぐらいの気持ちで作ったのかもしれない。

 

「待て。上の『直してみよう』という指示から察するにこの誤りある文を俺達の手で正しいものに修正しろという事なのでは」

 

「真面目に考察する類のものではないでしょう……天然ですか」

 

 変な所で律儀なカルナに突っ込みを入れるジャンヌ。インド神話で知らぬ者はいない大英雄。一度は命を狙われた身だが、こういうキャラなんですね……と苦笑い。

 

 そして守り手が誰一人いない正門が赤黒のサーヴァント達を招き入れるかのようにひとりでに開き出した。

 

「へっ、んだよ。来るなら来いってか。話が早いぜ!」

 

 

 第一層の扉、旧チェイテ城にあたる鉄の門が開かれる。

 城自体は目が眩む程の白だというのに、入り口はこちらを誘い込む悪魔の顎が如き漆黒のようだった。

 だが、ここで躊躇する臆病者は誰一人おらず、全員が城へと入った瞬間に扉は自動的に閉まった。

 

「ありゃありゃ閉まっちゃったねぇ……」

 

 アストルフォのおどけた声と同時に城の内面が明らかになった。

 

「これは……」

 

 誰かの驚く声があがった。

 外見からでも一目瞭然だった巨大な城。当然、その内部も広大で多くのフロアに分かれているものだと探索者達は予想していたが。

 

 彼等の目前にあったのは巨大な階段だけだった。

 

 左を見ようが、右を見ようが、扉も窓も無く、殺風景な石の壁しかない。あの巨大な城にしては、狭過ぎるし、どうにも不自然な造りだった。

 

「私は一度、この城に足を踏み入れています。その時に別の世界の私、ジャンヌ・ダルク……白のルーラーは言っていました。この宝具の内部空間はある程度自由に変化を加えれると」

 

「ふん、分かりやすいな。つくづく我らを一本道に押し込めたいようだ。『余計な策など無用、さっさとここまで登ってこい』と貴様達の主は不敬にもそう考えているのだろう?」

 

 黒のランサー、ヴラド公が槍を向けた先に一人のメイドが立っていた。透き通る白い肌、宝石のように輝く銀髪。整い過ぎて、完成され過ぎて、美し過ぎて逆に人間みを感じられないメイドが階段の脇に傅く者として正し過ぎる姿勢でそこにいた。杭で串刺しにされたかのような冷たい戦意を向けられても、何一つ動じる事のない銀のメイドがそこにいた。

 

「サーヴァント!?」

 

「いや、気配が違う。あの騎士王もおおよそサーヴァントとは言えなかったが、あれは生物としての匂いが希薄だ。うまく……言葉には出来ぬが」

 

 狩人として鼻が利くアタランテがメイドの正体を嗅ぎ分けていた。確かに何かしらの生命は宿っているように見えるが、本質は無機質な物、道具かあるいは宝具の類か。

 この中で最も根源への道を求めているダーニックは目の前のメイドの存在に何かしら勘付いているのか、震えている。

 

「ようこそいらっしゃいませ、お客様方。『まるでそびえたつクソだ! (I didn't know they stacked shit that high)』とこの城には驚きになられたでしょう。私は白のライダー、司馬懿様のメイドとして仕えておりますトリムマウと申します。以後、お見知りおきを」

 

「真名を簡単に晒しますか。ミスリードか、あるいは真名を知られた所で大した問題ではないと貴女の主は思っているのか……」

 

「お客様方が挑む三白城。以前、ご主人様が説明した通り、八層構成のこの城はそれぞれの層に白のサーヴァントが待ち構えています。そして第八層、即ち最上階には最後の白のサーヴァントとご主人様……白のビースト様がいらっしゃいます」

 

 ケイローンの疑問には答えず、トリムマウは今一度、この城についての説明を行った。

 

「わかっておる。大聖杯を返して欲しければ、余達にそれぞれの層のサーヴァントを倒して進んでこいというのだろう」

 

「厳密に言えば、違います。戦闘行為は必ず必要ですが、()()()()という点に関しては打倒は必要ではありません。白のサーヴァントに対して必ず一人以上の対戦相手を用意して頂ければ、残りの方々は上の層に進んでもらっても構いません。『ここは俺に任せて先に行け!』戦法が出来るというわけです。人数面で有利な点を存分に生かしてもらって結構です」

 

「ですが、私達が全員がかりで白のサーヴァント一騎ずつ打倒して進んでも問題は無いのでしょう」

 

「Yes.それも一つの選択肢なのかもしれません」

 

 トリムマウの言うように仮にそれで進んでいったとしても、白の陣営で最強、一番の怪物、人類悪を自称する白のビーストの元へ辿り着いた時に二・三騎程度しか残っていなかった場合、果たして勝ち目というのは存在するのかという点。

 

 ケイローンはこの中で唯一、直接的に白のビーストと相対した経験のあるアストルフォに尋ねる。

 

「アストルフォ、あなたの主観で構いません。白のビーストと戦うにあたって最低限どれだけの戦力が必要になると予想しますか」

 

「あ──、うっう──ん……。ジークフリート、ケイローン、ヴラド、カルナ、アキレウス、まずこの五騎は最低条件かな? これでやっと戦いの土俵に入れるって感じ?」

 

「ほう……」

 

 知名度補正を受けているヴラドを始め、この聖杯大戦で間違いなくトップランクであるサーヴァント五騎。その五騎がかりで()()()ではなく、()()()()()というアストルフォの言葉。

 

 真偽は置いておくとして、その言葉に激昂するのではなく、血気盛んな何騎かのサーヴァント達は好戦的に口角を無意識に上げていた。

 

「まぁ、偉そうに言ってるボクもほとんど戦いにすらなってなかったし、それでも、ウン。いつもならともかく今夜は新月だから今のボクの言葉もそれなり信用して欲しいかな──なんて。あぁ、後……」

 

 アストルフォはチラリとジャンヌ、アタランテ、フランケンシュタインに目を向ける。

 

「絶対に女性サーヴァントは連れていかない方がいいと思う。相性が悪過ぎるから」

 

「白のビーストは女性特攻……異性に対して何かしらの魅了を持っているという事ですか?」

 

「ん────……。マァ、ソンナカンジ、アハハ」

 

「カルナ、彼の言は」

 

「あぁ、嘘は言ってはいない(黒のライダーの目線の逸らし方……。短い接触で白のビーストに何かしら複雑な感情を持ってしまったのだろう……。ふっ、野暮は言うまい)」

 

 理性が蒸発しているいつものアストルフォなら、「いやー、君達が挑んでも二秒で即んほぉ♡ってなって触手プレイでお股グチュグチュ座にリリースになっちゃうよ? 何せ、可愛いけど男であるボクですらおちんちんシコシコされてピューピューされてアヘトルフォになっちゃったし! アーハッハッハッ!」と正直に言う所かもしれないが、幸い、理性がカムバックしている今日のアストルフォは空気が読める子。

 

「仮に吾輩を数に入れたとしても11騎がかりで挑んで、一層ずつ確実に登って行くか。あるいは消耗を避けて、少数精鋭で白のビーストの元まで登るメンバーを決めるか……いやはや悩み所ですなぁ。まぁ、集団リンチのような戦法をよしとしない英雄様方もいらっしゃいますが」

 

「成程……。白のセイバーがここにいないのはそういう理由ですか。モードレッドとスパルタクスの犠牲は無駄では無かったようです」

 

「オイ、セイバーはまだ消えちゃいねぇよ」

 

 天草四郎は納得したように呟く。勝敗関わらず、戦闘を行うサーヴァントを最低一騎だけでも置いていけば、先に進める。そのシステムを信じるのなら、自分達は白のセイバーの領域、第一層を突破する権利は得ていると。

 まさか白のセイバーが白のビーストとの夜の営みという名の拘束首絞め腹パン浴尿円卓凌辱プレイでアヘリタイヤしているとはまともな精神状態だったら想像すら出来ない。

 そしてこのシステムも残りの白のサーヴァント陣が白のセイバーのリタイアのもっともらしい理由を捻り出した故の後付けでしか無いので深い意味は特に無いのである。

 

 ただ、結果的には良かったのかもしれない。倒さなければ先に進めないというシステムなら、100%第六層の白のキャスター。マスターから精の素をたらふく喰い尽した完全体:外宇宙の神を宿す降臨者──アビゲイル・ウィリアムズで詰む。

 彼女もマスターである白のビーストの言葉に従って、本気では殺しには来ないだろうが……。

 

「此度の白のサーヴァントにはお客様方と少なからず因縁がある方もいらっしゃます。時と場合によってはその方からの指名もあるやもしれません。その時の判断はお任せ致します。では私はここで……第七層でお会いしましょう。御武運を──」

 

「あっ! 待て──」

 

 トプンと一瞬で液体化したトリムマウは石床の隙間に入り込み、完全に姿を消した。どうやら説明だけの為にここに現れたらしい。

 

「いいじゃねぇか。逆境、窮地、大いに結構。俺達みてぇな英雄にとっちゃ日常茶飯事じゃねぇか!」

 

「ここでくだを巻いても仕方あるまい。それに話を聞くだけでも白のビーストは女誑しの色情家にも思える。そういう輩は私は好かん。この矢で瞬く間に射抜いてみせよう」

 

「んだよ、姐さんも何だかんだでやる気満々なんじゃねか! そうだよな、美女を好き放題、食い物する奴は許せねぇよな!」

 

「私からすれば、汝も同じ括りなのだかな……」

 

「ひどくね!?」

 

 

 まだ敵も目前にいない状況でこれ以上、推察を重ねていても仕方ないのは他の者達も同意見だった。誰が残って戦うか、進むか、もしくは全員で戦うかは第二層から待ち構えているサーヴァントが何者かによって如何様にも変わっていく。

 まずはこの階段を登っていかなければ、話は一向に進まないのだから。

 

「では、行くとしましょうか」

 

 

【第一層:白のセイバー:王になる前の汚れちまった白百合のアーサー王──突破】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第二層:白のアーチャー】

 

 

 赤黒陣営がその領域に入った瞬間、反応の差はあれど皆、吃驚した。

 

 そこは自分達が屋内にいる事を疑ってしまう程の大草原が拡がっていたのだから。

 上を見上げれば清涼な青空、見渡す限りの草は風に揺られ、第二層の扉から何処の外へと転移してしまったのではと考える方が筋は通っているかもしれない。

 

 

 

 一つだけ、原っぱの中心にその空間唯一の大樹があった。その樹の下に数人の男女がいた。

 

 いや、一人の男と三人の()()がいた。

 

 

 

「よーしよし、頑張れアタちゃん、頑張れ──、ハイハイとは思えない俊足だ。ウ○イン・ボルトも顔負けだぞぉ、そぉれもう一回行くぞ!」

 

「だぁっ! ばぁぶ、パーパ♪ パーパ♪」

 

「おぉ、また捕れまちたねぇ。えらいでちゅね──、よし、じゃあ捕ったその林檎型のボールをこっちまで持ってこれるかなぁ」

 

「たぁい♪」

 

 穏やかな光景だった。ありふれた親子の微笑ましいワンシーンだった。

 スモックを着ている頭から獣耳を生やした緑髪の女の子が黄金の林檎ボールを片手にハイハイ歩きで父(?)と思われる男に近づこうとしていた。

 

「パーパ♪ ぱぁ……ぁっ、うぅ……」

 

「あっ、小石に転んじゃったのか!? 大丈夫か、アタちゃん!」

 

「う、うぅ……ばぁぶぅ!」

 

「おっ、自分で起き上がったか! 偉いなーアタちゃんは! 本当に強い娘だな! お父さんは誇らしいぞ!」

 

「あーい♪ ばぁぶぅっ!」

 

 

 赤黒陣営はその幼女に既視感を抱かずにはいられなかった。

 ジャンヌ・ダルクから、白のルーラーにもう一人の自分がいたと話を聞いたアタランテは嫌な予感しかしなく、ダラダラと汗を流していた。シェイクスピアはニヤニヤしていた。

 

「……ぐずっ、えぐっ、うぅっ……」

 

「あぁ、ごめんね! ごめんね! 起こしちゃったねぇ! もう怖い騎士王さんはいませんからねぇ──よしよーし、モーちゃんは強い娘ー、モーちゃんは強い娘ー、はんぎゃくー、はんぎゃくー」

 

「あぅ、ばぁぶぅ……」

 

 男が相手しているのは一人だけではない、緑髪の女の子と遊びながらも抱っこ紐で抱えているぐずってしまった金髪の女の子をあやしている。落ち着いたようにまた穏やかな眠りにつく女の子。

 獅子劫は令呪から感じるパスでモーちゃんと呼ばれているその幼女が自分のサーヴァントだと気付いた事実を一度無かった事にした。

 

 

「ぱぱー、ぱぱー、にゃでて──」

 

 一番、意味不明だったのは若葉色の髪をしたグラマラスな美女が大人の体のまま、男に膝枕をされ、幼児退行している点。彼女が本来の黒のアサシンのマスターであった相良豹馬からマスター権を奪った、現黒のアサシンのマスターである六導玲霞である事は彼等は知る由も無く。

 

「もう欲しがりでちゅねー、れいかちゃんは──。ほら、お腹なでなでしちゃうぞー」

 

「きゃっきゃっ♪ きゃっ……」

 

「どうした、れいかちゃん──、ほらカラカラだぞぉ……あっ」

 

 ここでようやく、招かざる客人の存在に気付いたのだろう。子供3人と父親1人の憩いの場は固まった。

 その豊満なバストで涎かけを盛り上げている六導玲霞は完全に終わってしまっている獣耳の幼女と違って、まだ羞恥心はあったのか、不特定多数にバブみプレイを見られ、顔を真っ赤にして汗をダラダラに流していた。

 

 そのまま彼女は「やべっ」と呟いた男──白のビーストと共に逃げるようにその場から姿を消した。

 

 

 よちよち歩きだったアタちゃんと呼ばれた幼女もおもむろに立ち上がり、腕を組んだまま闖入者達に鋭い視線を向ける。スモックの胸元についている『しろぐみ あたらんて』と書かれたおはな型の名札が眩しい。

 

「ふん、招かれざる客人というわけか。白のセイバーの層を越えて、よくぞここまで辿り着いて来た」

 

「いや、無理だろ」

 

 何事もなかったように仕切り直しをする謎(?)の幼女にさすがにアキレウスがツッコミを入れた。

 そして隣にいるアタランテの顔がヤバい。しきりに呼ばれていた「アタちゃん」という名前といい、その名札といい、直視したくない現実がアタランテのボディに響いてくる。

 

「ここは私が残ろう何大丈夫だあの程度の幼子に遅れを取るような純潔の狩人ではないあの敵が一体どこの誰かは全くもってこれっぽっちも見当がつかないがここは吾に任せて先に行け後で必ず追い付くから今すぐ行って頼むから本当お願いだから早く先に行け」

 

「あね……さん?」

 

 超早口で味方に一切目を向けないアタランテが鬼気迫り過ぎて怖い。

 

「おーやっと来たかテメぇら。マスターも来んのがおせーんだよっ、ったくよぉ! ま、この叛逆の騎士モードレッド様がノロマなテメぇらの為に先に偵察をしてたんだからよ、ちょっとは感謝しろよな!」

 

 そして何事もなかったように、自分が幼児化していた事など忘却したようにしれっといつもの姿で赤のセイバー、モードレッドが隣にいるのがマスターである獅子劫は理解不能だった。さっきまで白のビーストにあやされていた幼女は別人か、あるいは幻術か。バシバシ笑いながら肩を叩いてくるモードレッドが怖い。何だこれホラーか。

 確かに連れ去られた以上、無事に帰ってくる可能性は低かったがこれは何か違う。こういうのじゃない。取りあえず、獅子劫は考えるの止めて「おう、せやな」と返事を返した。

 

 

「では自己紹介といこう、第二層を担当する私は白のアーチャー……」

 

「おいっ! ボサっとするな! 早く先に行けと言っているだろう!!」

 

「真名は──」

 

「やめろぉ!! それ以上、口を開くな!!」

 

「アタランテだばぶ」

 

「貴様ァァァァァアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

 

 

 

 白のアーチャー:バブみ幼稚園 しろぐみ あたらんて vs 赤のアーチャー:純潔の狩人 アタランテ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「嘘だ、嘘だろ姐さん! 何があった、一体何があったらそうなっちまう! 白のビーストに何をされちまったんだ!!」

「何もかもだああああああああ!!」

「ちょっとマジで面白過ぎるんで吾輩だけ残っちゃ、あ、駄目みたいですね。冗談抜きで頭をブチ抜かれますなこれ」




 黒のサーヴァント:残り6人
 赤のサーヴァント:残り6人(モードレッド復帰、アイデアロール成功。一時的狂気:昏迷)



















 自分vs自分だぞぉ。これは燃える展開だぞぉ。
 何かもうアタランテさん、今すぐにでもカリュドンの皮かぶりそうっすね。

 4話分掲載したのでイイ所でエロ本編に戻ります。順番的にはエロ本編2キャラぐらいやって、第二部編の二章入って、英霊編の第六章やって──、またアポ編かな? 

 シリーズが……シリーズが……多い! (金田一の外伝感)


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