※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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季節外れだろうとも投稿。タイトルについては深く触れない、いわゆるバレンタイン編。多分、2話構成か3話構成になると思います。甘酸っぱい話を書きたいっすね(無謀)。









ラバークリッカーⅠ(セミラミス?編その1)

 バレンタインデー。それは男と女の心を甘く蕩かし、時には苦く涙を流させる。スイーツ&ビターなサバトイベント。ある者は嫉妬に狂い、またある者は想い人への恋心を募らせて、調理に励む。

 

 下駄箱を入念に確認する男達。机の中身を見て肩を落とす男達。挙動不審になる男達。いつもと変わらないポーカーフェイスな女達。休み時間、放課後、校舎裏でのチョコゼロの敗残兵達を差し置いて、あまぁいボーイミーツガールを展開する裏切り者がいれば即ギルティ。嫉妬に狂った醜い者達の襲撃の何と恐ろしい事か。

 

 たかが甘味、されど菓子。チョコに笑う者はチョコに泣く。燃え上がる女の情熱はたとえそれが無機物だろうと命すら宿しかねないエネルギーとなる。あるいはその熱量のあまり対象を殺しかねない猛毒にも。

 

 俺の頭の中の聖ウァレンティヌス様も「ラブ&セックスじゃよ」とおっしゃっていました。あぁ、ホワイトデーのお返しってそういう……。

 

 ともかく今日は2月7日……来るべきバレンタインデーに備えて、色んな意味でそわそわしているカルデア。

 

 余計な騒ぎを起こさないように基本的にバレンタインデーの一週間前からは俺は自室で謹慎。バレンタインデーを前に昂っている女性達を前にあまり姿を晒して刺激しない方が良いと。いきなりカルデアの廊下でおっ始められたら風紀の問題があるのでとは影の風紀委員長談。

 

 いや、けどそんな頼光さんもシミュレーションルームでは風紀の欠片も無い乱れ方してますよね?まぁ、校舎裏でセーラー服年上属性風紀委員長が年下に無理矢理手籠めにされるプレイはどちゃくそ興奮はしましたが。

 

『おっ、おほぉっ!!離して下さい、こんな御禁制……許されませぇえぇ、あひぃぃっ!?奥ぅぅ、ずんずんって突かないでぇぇっ……!んああぁっ!私の風紀が乱されてぇぇぇっ!!』

 

 

 閑話休題。

 

 

 なので女の子達にとってはデリケートなバレンタインデーが来る前にそういうエロトラブルでチョコ作りが疎かにならない為の自粛期間として一週間、俺にしては非常に珍しく誰かと性的に交わる事なく必要最低限、マイルームから出ないようにはしている。

 まぁ、バレンタインデー当日になったら今度はBBが用意した時間の概念に捉われない『HBチャンネル』の中で割り当てられた順番ごとにチョコを持ってくる娘達とひたすらハッピーバレンタイン(意味深)する事になるのですが。爛れているなぁ。

 

「いや、爛れている以前に体が持たないでしょう。普通に考えて、ハイ、俺のターン、ドロー。『百貌のハサン』を召喚。さらに特殊効果、『妄想幻像(ザバーニーヤ)』によりデッキ・手札内の百貌のハサンを全てフィールドに召喚。そのまま全員でマスターにダイレクトアタッ」

 

「けど、何だかんだでヤリ終わった後は体の調子は良くなるの。人体の不思議。はい、ここでトラップカード『晩鐘が指し示すもの』発動。自分フィールドにサーヴァントが無く、相手フィールドのハサンと名の付くサーヴァントが効果を使用した時に発動可能。デッキから『山の翁』を特殊召喚。フィールド上の全てのハサンを破壊し、その攻撃力の合計の半分を相手ライフに与える」

 

「鬼ですかオタク!?何そのピンポイントなトラップ、主人公か何かですか!」

 

 それでも自粛期間の間は何だかんだで気を利かせてくれた男衆達が遊んでくれるんだけどね。

 こうやって今も「クソゲー過ぎますわぁ」とライフゼロとなってカードをぶん投げているロビンがいるわけで。

 

「バレンタインってのはもっとかるぅいイベントだと思ってたんですけどねぇ、どうしてこう殺伐としているんでしょうか。あの黒子の旦那が『チョコは危険です!』と喚いていた気持ちがわかったというか」

 

「年に一回のイベント、そこに恋とか愛とか人の感情の中で一番強い物が介入すれば修羅となるのは道理かと」

 

「もちっと、俺的には肩の力を抜いて欲しい所ですけど。やっぱ後腐れない軽い気持ちでやり取り出来るスタッフのお嬢ちゃん達との方が心底安心しますわ」

 

 ロビン的には愛が重すぎる女はNGらしい。面倒臭いとの事で。愛がヘビーなのいいじゃん、それだけこっちに想いを寄せてくれるんでしょ?物理的な物じゃないならいくら重くてもこっちにとっては大歓迎。まぁ、仮に物理的に重かったとしてもメカエリちゃんとかリップぐらいまでなら許容範囲よ。

 

「マスター、一度手を出した女は?」

 

「一生、面倒見ます」

 

「アンタも重ぇよ」

 

「すげぇよマスターは」って引き攣った笑みを浮かべる。別に普通でしょ(ミカ風)。そろそろカードゲームも飽きて来たので別のゲームに移行したい。チェスは?って言ったら何か鼻について、性に合わないので遠慮されてしまった。それなら「まるで将棋だな」ゲームでもする?

 

 しかし、このカルデアにおいてそんな山なし谷なしの平穏な時間は長くは続かなかった。ドタドタと廊下を駆ける足音。そして本来は横に開く筈の電子的な扉が無惨にも踏み倒されていた。

 

 

 「バレンタインの危機です、旦那様!!」

 

「あーあ、噂をすれば蛇とやら……重い女筆頭がやって来ましたよっと」

 

 辟易としたロビンの視線の先には扉をぶち壊した下手人がいた。激しく荒々しい剣幕で入ってきたのは献身的で控え目にアナタの背後をセコムしますへびっ子ガールきよひー。

 初めてのバレンタインはまだピュアガールだった為、裸リボンで気絶。初経験を以って成長し、次回のバレンタインでは全裸チョココーディングで美味しく戴かれるという戦績を持つお淑やかな和風少女。

 

 今回のバレンタインも色んな意味で楽しみにしていたのだが、息を荒げる彼女の様子を見る限り和気藹々とチョコを作っている場合ではない非常事態だと瞳が語っていた。

 

「言葉を交わさずとも、眼ではわかり合うつーかーな関係……正に夫婦!いい……。……いえ、そうではないのです……!旦那様のものろぉぐを勝手にてれぱしぃして昇天しかけましたが、それ所では無いのです!」

 

 くわっと眼を見開き、きしゃーと火を吐く淑女。

 部屋の温度が体感で10度ぐらい上昇した気がする。

 

「私の愛にも耐えられるサーヴァント用・特製プレーンチョコがどこにもないのです!大事な供給源だったジャガーさんも『何か無理だニャン、テヘペロ♡』と書置きを残して失踪中……チョコが無い=バレンタイン撲滅!=旦那様へ愛を示す機会が減る=離婚の危機=死。これはいけません!!死活中の死活問題です!!」

 

「市販のチョコじゃ駄目なんですかねぇ」

 

「市販のチョコでは私の愛に耐えられる耐久度が無いでしょう」

 

「チョコに耐久度が求められるのかぁ……。最近のバレンタインってのはおっかないすねぇ、マスター」

 

「きよひーの愛は熱々の摂氏1000度だからね、仕方ないネ」

 

 ロビンの呆れた目線もどこ吹く風、バレンタイン前一週間は基本的に俺とは不干渉という決まりも破ってここにやって来たきよひーの焦りは本物だった。それ程、このバレンタインに重い想いを懸けているのだろう。

 

「ですが、私はここで泣いて打ちひしがれるヤワな女ではありません。なければ自分から調達すればいいのです!いざゆかん!最高のカカオを求めて!この為のバレンタインですもの!!」

 

 そう叫び、バーサーカーらしい筋力で俺の手を取ったきよひーは部屋へと出て行った。連れていかれる際のロビンの「いや、独断のレイシフトはNGなんじゃ……」と哀愁漂う呟きを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの世界~~

 

 宙に浮かぶ、常識外れの巨大空中庭園があった。

 土と石と魔術に神代の力で築き上げられたあらゆる混沌の集大成である虚栄の巨大要塞。

 その宝具の名は『虚栄 の 空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』。庭園の中心部、15℃とチョコを保存するには適したひんやり室温である玉座の間で女帝が真剣な面持ちで座していた。

 

「もっとだ……。世界をチョコでもっと満たすのだ。足りぬ足りぬ、この程度ではまるで足りぬ」

 

 漆黒のドレス。それと同じ色の髪は床についてしまう程の長さだったが、手入れは万全なのか、高貴さを感じる程に美しい髪艶だった。見る者に冷たい印象を与える鋭い眼もその美しさを彩るパーツに過ぎない。

 

「土台は整った。後は絶対的な生産力、人手、あるいは知恵か……。どこかにおらぬか、突拍子も無い程の行動力とアイデアを持ち、かつ我に力を貸す都合の良い人材は……」

 

 玉座の間の中心にあるチョコレートファウンテンに意味深な目線を向ける女帝『セミラミス』は思案していた。大海に匹敵する程のチョコを作り上げ続ける為のナニかを。そんな彼女に使い魔である鳩がやってきた。

 

「む、侵入者だと?確かに結界に反応があるな……。ふ、この空中庭園に惹かれた羽虫か……どのような愚か者かこの眼に焼き付けてやろうですはないか……」

 

 薄く嗜虐的な笑みを浮かべた『セミラミス』は魔術によって外の様子を窺える映像を生み出して、その笑みを固めた。

 

「何だ、アレは……?」

 

 

 

 

 

『いくよ、お清さん』

 

『いぇ――い、ぴーすぴーす。です!』

 

 それは一人の黒髪の少年と水色の髪をした着物の少女だった。

 

『道成寺にて縫われし、富田川の大蛇……我成す事は我のみぞ知る――』

 

『はぁぁああああああああ!!』

 

 いや、少女ではなく大蛇だった。巨大な蛇になに一つ恐れる事なく少年はその頭へと乗り、愛の力を持って飛行する。空を駆ける姿は蛇ではなくまるで竜。美しささえ感じてしまう白蛇は愛しき人を乗せ、空中庭園を目指す。

 

 侵入者を撃ち落とそうと、要塞の迎撃術式『十と一の黒棺(ティアムトゥム・ウームー)』が光弾を放つが、全身をうねらせ、流水のような鮮やかな飛行で避け、竜翼兵は蛇の口から放たれる火球によって炭となる。

 

 それでも避けきれなかった光弾の残りは頭上にいる少年が捌き、叩き落とした。『セミラミス』の瞳には一瞬、白い触手のような物が見えかけたが気のせいかとすぐに思い直す。

 

『天駆ける蛇が如く!!』

 

 人外の少女と少年が敵を屠り、攻撃を避け天へと昇っていく姿はファンタジーというよりは何故かジャパニーズホラーな印象を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでチョコ下さい!」

 

「下さいな!」

 

「いや、あげるわけがなかろう。貴様ら、もう少し自分達の立場を考えろ」

 

 空中庭園への侵入を果たし、そのまま間髪入れず、玉座の間までお邪魔したマスターと清姫は黒鎖に拘束されてなお、笑顔でチョコを要求していた。

 頭が痛いと眉間を抑えながら、『セミラミス』はこの不届き者達の処遇を考えていた。

 

(しかし、チョコ、チョコときたか……)

 

「いいだろう。貴様らがチョコを欲する理由をこの女帝に述べるがよい」

 

「ええ、実はかくかくきよひー……」

 

「なるほど、まるまるちょこらみと……」

 

『セミラミス』は使えると確信した。数多の英霊達を有するカルデアなる組織、そしてそれを統べるマスターと呼ばれるこの男の馬鹿馬鹿しい程の行動力。

 

「ふむ……貴様達はチョコが欲しい、我も丁度、チョコを生産する労働力を欲していた所だ。お互いの利害は一致している……。そうだな?」

 

 先程の空中庭園に突撃する様子を思い返す。世界を支配する程のチョコの群れ、そんな非常識な未来を実現させるにはやはり非常識な物を利用すべきだろう。蛇女はともかくとして、男の方に裏切りの相が無いのは好印象だった。

 

「馬車馬の如き、働き、一心不乱にチョコを生み出せ。あらゆる手段を使ってな……」

 

 未だ縛られているマスターを指さして、女帝は命じる。

 

「今から、貴様をチョコレート製造特命大臣に任命する。この庭園の二番目の権力者として、チョコを作り続ける栄誉を与えよう」

 

「イエス、マァム!」

 

「ちょ」

 

 返事(物理)と共に拘束している鎖を力づくで粉砕するマスター。隣にいる清姫も本来なら力づくで抜け出せる筈なのに期待するような顔でマスターの方に視線を向けていた。意思疎通している彼はその期待に応えるべく、清姫を縛っている鎖も引きちぎった。鎖の残骸が落ちる音ともにあからさま過ぎる程に弱々しい淑女を演じて、マスターへと「あぁん」ともたれかかる清姫。目の前の茶番と只の人間が自身の魔術で生み出した黒鎖を粉砕した事実にさすがの女帝もドン引き。

 

「う、うむ、まぁ、やる気があるのはいい事だろう……」

 

『セミラミス』に一抹の不安を感じさせながら、こうしてホワイトビーストとチョコレート工場は始動開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでエジソンとテスラに関しては一緒に働かせるよりはそれぞれ競争心を煽った方が効率が良いワケ」

 

「なるほどな、個々で特出して有能であるが故に混ぜれば雑味が出るというわけか」

 

 お互い、黄色のメットを被りながら、工場の地図、シフト、スケジュール表を拡げ、チョコ製造の計画を練り上げていく『セミラミス』とマスター。

 メットだけではなく、黒い薄手の服の上に緑色の作業着と女帝らしからぬ格好なのだが、何故かとても似合っている土木系アサシン……ウッ、頭が。

 

 しかし、女帝も何故こんなふざけているとしか思えない格好を受け入れてしまったのか、当然最初は断固として拒否したのだが。

 

『チョコという食品を扱うんだから、安全・衛生に気を遣うのは当然でしょ。それとも何?貴女のチョコに対する想いはその程度だったわけ?只、ちょっと着替えるだけで感じてしまう羞恥心に負けてしまうぐらいのモノだったわけ?なら、貴女に与えられたチョコレート製造特命大臣の役職はお返しする!なぁ、最高のチョコを作りたいんだろ、絵本みてえに映画みてえに、 大量のチョコに包まれた光景を見たかったんだろ!だったらそれは全然終わってねえ!!始まってすらいねえ!!ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!――少し着替えるだけで届くんだ。いい加減に始めようぜ、女帝!』

 

 と気を抜けば溶けてしまいそうになる熱量で語られてしまったせいか気づけば首を縦に振り、着替えていた。まぁ、この格好の方がチョコを生産するのに効率的なら仕方ないと『セミラミス』は自身に言い聞かせていた。チョコの為なら仕方ないよネ。チョロインならぬ、チョコイン。

 額から流れた汗をタオルで拭っているその姿は実に様になっている。

 

「交流工場、直流工場以外にも蒸気工場にパラケル工場、ノブノブ工場…………。各々の特性を生かした工場はあるが…………このプロフェッサーファクトリーは放置して良いのか、蒸気工場長から注意すべきであるとの報告があったが」

 

「大丈夫、そこの監視役としてフランちゃんを抜擢した。いざという時には魔法の言葉『パパにはチョコあげない』でどうとでもなりますよ工場長」

 

「誰が工場長だ」

 

 

 さすがは世界に名を残した英霊達。例え、目的がチョコ作りであっても、その類い稀なスペックはお菓子作りにも無駄に発揮されていた。槍より鍬が似合うYARIO達はカカオ農園を耕し、そのカカオはアマゾネスドットコム、イース配送業者、百貌宅急便による人海戦術によって効率良く各工場に届けられ、チョコへと生産される。

 

(初めは人選ミスかと思ったが、まぁ、良く働いてくれる……あぁ、この生産ペースなら悪くない……。いずれ我の理想郷が――)

 

 それぞれのサーヴァントの特性を生かした計画を建て、迅速に行動へと移すマスターに『セミラミス』は案外良い拾い物をしたとほくそ笑む。時たま、突拍子の無い行動で振り回されるのは頭が痛いが、無能な愚者よりは有能な道化の方が良いだろうと。

 

「しかし、サーヴァントにここまで休憩時間は必要か?腐っても英霊であろうに、寝ずに三日三晩の労働など容易かろう……」

 

「チッチッ、チョコラテのように甘いよセミラミスさん。良いパフォーマンスは十分な休息を以ってなし得る。基本、労働なんて毒なんだから適度に抜かないと効率が落ちるだけだよ」

 

「ほう、我を前にして毒を語るか……。まぁ、良い。飴と鞭というのは理解した。結果的にチョコが多く産まれるのならば何でも良い」

 

 十分な休息、そう言っている本人がチョコ作りを命じたあの日から、「カカオ&ミルク、シュガー……スイートデイズをガン積みしてぇ、フエール、フエール、フエール、フレーバー、最効率を目指さねば、リンゴをむしゃって不眠不休でチョコ回収、禁断・背徳・虹リンゴ。周回とはこの一時……ふへ、ふへへへへへ」とキチッた瞳でチョコ製造に必要な設備をどんどん増築しているのだから、何とも笑える話だ。まぁ、ほらこのマスターは毒無効ついてるから過重労働という猛毒も大丈夫なのだろう(適当)。

 

 

「許せません、許せません、工場長という職権を乱用し、旦那様との共同作業(♡)を独占するとは。思えば、チョコレート製造特命大臣を旦那様に命じたのもこの為の布石……ぐぬぬ、これはストライキよひー化しても仕方ありません……あぁ、ですがやっぱりチョコは欲しい。恨めしや、恨めしや」

 

「アサシンで女帝キャラで毒で傲岸不遜系って妾とキャラ被りし過ぎじゃろ?」

 

「毒キャラの癖に普通に生き物に触れるのが許せません。処します?処します?」

 

『セミラミス』にとってはどちらかといえばマスターよりはそれを取り巻く女達に頭を悩ませていた。今も玉座の間の入り口からバレてないと思っているのか顔を出している蛇女と不夜城のロリと骸骨の面を被った少女から放たれる呪詛。思春期の男児ではあるまいに男と女が二人でいるだけで邪推し過ぎだろうと女帝は溜息を吐きたくなった。

 

 ここ以外にも庭園を歩けば――。

 通り際に『セミラミス』に向けて、首を掻っ切る動作をして唾を吐いていったガラの悪い金髪のセイバーに(工場長権限でノブノブ工場七連勤シフトへとぶち込んだ。後にぐだぐだした瞳で「もー、もー」言う叛逆騎士が見つかったとかなんとか)。

 

 また同じく金髪のセイバーだが、「えへ、えへへ、チョコを満たした浴槽に顔面を押し付けながらマスターに後ろから犯される窒息プレイもバレンタインならではですよね……えへ、えへへへへへへ……」とトリップしている純白の騎士。

 

 他にも仲睦まじく食べさせ合いっこしているかと思いきや「な、なぁ……シータ、それは本当にチョコバナナなのか?」「えぇ、はい。マスターの男性器の形を忠実に再現した特製のチョコバナナです。さぁ、それを口いっぱいに涙目で頬張る姿を私に……さぁ、さぁ、さぁ!」ととてもじゃないが小さな子にはお見せできないシーンを繰り広げていたお揃いのツインテールをした赤髪の夫婦(?)――。

 

 そして、今現在も。

 

「キュケオーン(ちょっと試作品の味見をして欲しいんだ)」

 

「へぇ、チョコ粥かぁ。うんお汁粉と似た感じがして結構イケる。ありがとうキルケー、バレンタイン楽しみにしてるよ」

 

「キュケオーン!!(任せて)」

 

 チョコ粥作りにハイになっている大魔女や。

 

「先輩、見て下さい!この円卓型のチョコレート!ワイバーンにも噛み砕かれない強度も誇った自慢の一品です」

 

「それって俺、食べれるの?」

 

「もちろんです!何せ、何度も試行錯誤を重ねて、先輩の唾液のみに反応し、分解されるチョコとして調理しましたから!オンリーワンとはこういう事ですよね、先輩!」

 

 大きな盾型のチョコを頬を染めながら渡してくる眼鏡後輩等々。

 

 仕事中にも関わらず、マスターの周りでは姦しくも多くの女性サーヴァント達がチョロチョロとぶらついていた。

 無関心を装ってながらも『セミラミス』はチラりとその様子を横目で盗み見る。

 

(ふん、曲がりなりにも世界に名を刻んだ女傑達が一人の男にいいように振り回されおって情けない……。有能な所があるのは認めるがこの男の一体どこにそんな惹かれているのやら……)

 

『セミラミス』は嫌悪する。恋に浮かれ、愛の為に男に縛られる自分以外の全ての女達を。それはそうあれと■■■■■に造り出された故の思考。孤高故の女帝。男もその男に弄ばれる脆弱な女達も彼女は断固として認めない。例え、その考えが創造主をトレースしたものであっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これはなんだ?特命大臣」

 

「魔法のステッキ、マジカルルビーちゃんですよ。セミラミス工場長」

 

「工場長ではない。様をつけろ、愚か者」

 

 工場の生産システムも軌道に乗り、チョコ製造も波に乗っている中、今度は別方面、科学的ではなくファンタジー的により多くのチョコレートを産みだそうとマスターからの提案。

 

 今、『セミラミス』の手の中には不自然にくねくねと動く気味の悪いステッキが。

 

『はい、とういうわけで、グランドマスターの頼みという事でわたしことルビーちゃんの力によって並行世界から沢山のチョコを仕入れる力を女帝様に授けちゃいましょうかなーと』

 

「ほう……」

 

 喋り方はふざけてはいるが、もしそれが実現出来れば更なるチョコ供給も見込めると女帝は興味深そうにそのステッキを眺め始める。そのステッキを渡したイリヤも付き添いで来たクロエも少々不安げな顔で同席している。

 

「その言葉に偽りが無いのなら早速やってみるがよい、玩具よ」

 

『へいへい、あ――ですが、その為には女帝様のお力添えが必要でして……具体的にごにょごにょ』

 

「なんだ………………ばっ、魔法少女だ、と!この我に!そんなみょうちきりんなものになれと!!」

 

『そうですよ――。所詮、わたしは只の健気で可愛らしい魔法ステッキ。わたしの力を行使してくれる可憐な魔法少女がいなければ、何も始まらないんですよ――。さぁ!わたしと契約して魔法少女になって下さい!』

 

「馬鹿が!別に我でなくてもよかろう、そこにいる貴様の所有者でも問題無いであろうが!」

 

『いえいえ、イリヤさんもチョコ作りには参加はしてはいるものの、女帝さん程、チョコに対して全てを懸ける熱意があるってわけではないですからねー』

 

 マジカルルビーは真面目2割面白気分8割で言う。魔法少女となった者の力はその本人のポテンシャルで大きく左右されると。ならば、この場で一番チョコに対して本気である『セミラミス』が変身するべきだと最もらしい事を述べて、悪魔のステッキは女帝を唆す。

 

「ぐっ、ぐっ、ぐぬぅぅぅっ」

 

 チョコを絡めながら、そう訴えられてしまえば、『セミラミス』も強く断る事は出来なかった。何せ、そもそも自分から言い出した事でもある、あらゆる手を使ってチョコをどんどん生み出せというのは。

 隣にいるアメリカン風に溜息を吐きながら言外に「やれやれ、やっぱり女帝様のチョコに対する想いはその程度だったのかな?ふぅ……とんだスイートなお姫様だぜ、チョコだけに」語っているようなマスターのジェスチャーがさらに『セミラミス』を煽った。

 

「ぐぐぐ…………いいだろう……。女帝たる我に二言は無い。この世界をチョコで満たす為ならどんな事でもしてやるとも。たかだかドレスチェンジ程度に臆する我ではないわ!!」

 

 最初に口車に乗せられて、工場現場の作業服のような物を既に着せらている事でハードルが下がっているのか、それともチョコに関してはやっぱりチョコくなってしまうのか『セミラミス』はルビーの要求を飲んだ。

 

『おほー!いいですね、今からプリズマ☆セミラミス爆☆誕☆ですよぉ!ちなみに変身台詞がありまして――』

 

「がっ、なっ……!?本当に必要なのだなそれは……!嘘であったら、バラバラにして工場のパーツにしてくれるわ」

 

『モチのロンですよー。魔法少女に関しては真摯の極みであるルビーちゃんを信じて下さい……。それともぉ?女帝様のチョコに懸ける想いはたがたが十数字程度の台詞で崩れてしまうヤワなものだったんですかぁ?』

 

「礼装如きが囀りおる……!ならば、その眼で焼き付けろ、我の真価を!!チョコにかける情熱を!!」

 

 玉座の間、その中心で『セミラミス』が吠える。足を大きく開き、マジカルステッキを天高く上げ、生まれ変わる為の魔力を込める。ルビーの興奮したような叫びと共に魔力の奔流が吹き荒れる。

 

「プリティー、ウィッチー、セミラっちー!!」

 

 イリヤとクロエは渾身の力で自身の太腿を抓った。

 

 光輝くシルエットの中から現れたツインテールの『セミラミス』。ドレスもいつも来ていた漆黒の色ではなく、魔法少女となったイリヤと同じ明るいピンク色。スカートの丈は非常に短く、変身後の彼女は羞恥の表情でその裾を抑えていた。普段隠されているツヤツヤの太腿が眩し過ぎる。

 

 イリヤとクロエはこの瞬間、全ての力を動員して吹き出さなかった自分達を褒め称えたい気分になった。決して似合わないとは言わない。可愛らしい装飾が施された魔法少女服に似合う程の美貌を『セミラミス』は持っている。

 

 たが、出てきた感想は「やっぱ無理あるわ」の一言。冷徹、傲慢、残忍を地で行く女帝の性格、さらにそのバストは豊満であったと言わんばかりのパツパツになっている衣服。全てが魔法少女という特性にミスマッチングだった。今にも溶け出してしまいそうな程に顔を紅潮させている『セミラミス』が可哀想と思えるぐらいに。

 

「さ、さて今の我の姿の感想を述べる事を、ゆ、許そう……」

 

(無茶ぶりよ――!!)

(助けて、マスターさん!!)

 

 二人の少女はどう答えてもBADENDしか見えない状況で心の声で助けを求める。『セミラミス』も一番近くにいたマスターへと感想を求めるべく、そちらに視線を向けた。

 

(駄目よ、褒めても正直に言っても死の結末しか見えないわ、イリヤ)

(それでも、それでも!マスターさんなら――)

 

 魔法少女プリズマ☆セミラミスを前にしたマスターの反応は――。

 

 そこには『セミラミス』に負けないぐらいに頬を染めて、右手の甲で顔の下半分を隠しつつ、照れるように視線を逸らしているマスターの姿があった。

 

「う、うん……いいと思う」

 

(これは――!褒めるでも貶すでも無い第三の選択肢!!)

(外見だけは草食系っぽいマスターさんが選べる純朴系チョイス……『ガチ照れ』)

 

 もしマスターが黒髭のように『いやっほう!合法ロリBBA魔法少女!!結構キツいと思うでござるが、その羞恥心はグット!!』と変態染みた興奮をしても、あるいは湖の騎士の如く『おぉ、麗しきのレディよ。例え、どんな姿になろうとも貴女の美貌が損なわれる事はない。どうです、今度は二人っきりだけの魔法をかけてあげましょうか?』ときざったらしい口説き文句を並べても、即、驕慢王の美酒(シクラ・ウシュム)ENDだったろう。

 

「ほう、ほっほう~~?」

 

 だが、『セミラミス』はその反応に気を良くし、悪どく、にんまりとその格好には似合わない嗜虐的な笑みを浮かべ、マスターの方へとすり寄った。

 

『セミラミス』にとって自己以外は利用する物。特に男など振り回す為の玩具だと自認しているこの女帝にとって今のマスターの反応は歓迎すべきものだったのかもしれない。今までこの男の人外っぷりに翻弄されてきたツケも溜まって、これはからかうチャンスだと。

 

「ほれ、どうした?小さくて賛美の声が聞こえぬぞ?」

 

「あっ、ちょっと近……」

 

「聞こえんなぁ……?そうら、顔を背けては何も見えまい、こっちを見よ、一丁前に照れておるのか?ふふ、フフフフフフ」

 

【速報:ピンク色の魔法少女姿の不審者がマスターにすり寄っている件】

 

 蛇のようにマスターを誘惑せんと纏わりついている女帝の姿は今までの黒いドレス姿だったら様にはなっていたかもしれないが、いかんせん今の格好が格好であった。真っ当な人が見ればポリスメンに通報するか、「病気ですね、治療します」と婦長行きになるかのどちらか。

 

 どちらにせよ、あれだけの女英霊に慕われている男が自身に翻弄されている姿は『セミラミス』を悦に浸らせた。あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という優越感も伴って。

 

(わからない……マスターの趣味がわからないわ。今更、あれで照れるタマじゃないでしょうに……)

(じゃぁ、演技?女帝さんをヨイショする為の処世術?)

 

(いえいえ、そんな演技をあの女帝様が見抜けないワケでないでしょう、あれはグランドマスターのガチ照れだと思いますよ――)

 

(ルビー!直接脳内に……!)

 

(まぁ、あのお方、イリヤさんやクロエさんもホイホイ喰ってしまうお方ですから、何がドンピシャするかわからない性癖グランドですし、ただ無意識の中で攻略対象が悦ぶ選択肢を選ぶのはさすがエロゲー主人公きゃっほう!!とルビーちゃんは賛美の声を上げたくなるのでした)

 

 プリズマ☆セミラミスの手中に未だ納まっているルビーは脳内会話で気楽にそんな事を述べていた。確かに今のマスターと『セミラミス』の二人はまるで童貞純朴少年をからかい上手のセミラミスさんと言っても過言ではない絵面だった。熱で頭がヒートしているのか、スカートの裾を上げて、チョイチョイと太腿アピールをする魔法少女。

 

(ですが、本当に絡め取られているのはどっちなのでしょうかねぇ――)

 

「ふふ、よい、よいぞ。興が乗った!このまま、その魔法少女の力とやら行使してやろうではないか!チョコラミララ、セミラミススルト!」

 

 魔法のステッキを振りかざせば、空間に開いた亀裂から沢山のチョコが流れ出てきた。並行世界からのチョコの雪崩の勢いにイリヤとクロエも巻き込まれ、玉座の間から流れ出て行く。

 

「はうわ――!」

「なによこれ――!」

 

「チョコラミララ、セミラミススルト!」

 

 ピンク色の服を来たツインテールの魔法少女プリズマ☆セミラミスがまるで少女のよう笑顔を輝かせて、ステッキを振るい、何も無い所からチョコを生み出す……おぉ、何とファンタジーな光景か。

 

 格好はアレだとしても今の女帝は心からこの瞬間を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……。もう、こんな時間であったか」

 

 陽も沈み、工場の起動音以外は静けさが辺りを包む夜。らしくないあくびを誰にも見られていないかと辺りを見回し、愛用のアイマスクを手に取って、寝室へと向かおうとする『セミラミス』。

 

 廊下を歩く途中、玉座の間……チョコレート製造特命大臣と命じたあの少年とチョコ製造の計画をいつも練っている場所。そこから光が漏れている事に気付く。

 

 侵入者かと思い警戒しながら、中の様子を窺えば、そこにはデスクの上でウンウンと唸っている男の姿があった。理由は知らないが、チョコ製造に対してあそこまでやる気があるのは好都合だと無視して、そのまま寝室に向かうつもりだったが、何故か『セミラミス』は玉座の間に入り、その男の背後へと立った。

 

「あいて」

 

「何をしている。こんな時間まで」

 

 椅子に座っている無防備な頭頂部にチョップをした『セミラミス』はマスターに問うた。分かり切っているであろう質問を。

 

「あぁ、うん工場とか農園とか、魔法少女とかチョコ設備は結構整ったからさ。今度はもっとスケールを大きくしてチョコを製造してみようかなーってえっちゃんとかXに頼めば、宇宙の方からも色々仕入れる事が出来るんじゃないかなーって」

 

「魔法少女の事はもう忘れよ。あれはボツだ」

 

「あ……そうなんだ……」

 

「何故、そこまで落ち込む」

 

 結局、魔法少女化して、しばらく暴走していた『セミラミス』はやがて賢者モードとなり、冷静に自身を客観視して、そのままステッキを明後日の方向へとぶん投げた。自分の中で大切なナニかを失ったようなそんな感覚。女帝の威厳とか女としての矜持とか、チョコよりも別の何かを優先してしまった自分を不思議に思いつつも、やっぱりあれは恥ずかし過ぎるので未来永劫封印する事を誓ったのであった。

 

 まぁ、それでもあの姿の自分を侮りでも、揶揄でもなく、本気で惜しんでいる目の前の男の存在はいくばくか羞恥心を和らいでくれている。絶対に本人に言う事は無いであろうが。

 

「一つ聞きたい事があった」

 

「何?」

 

 最初に提案したのも、巻き込んだのも自身だし、都合が良かったので今まで放置していたが、それでもこの『セミラミス』は問わずにはいられなかった。

 

「何故、そこまでチョコ作りに本気になる?そこまで我に協力する?」

 

 正直な所、現段階でカルデアでバレンタインをする十分なチョコは製造出来ているだろう。後はその分をカルデアまで供給して、レイシフトでこの場から逃亡すれば、そちらの目的は達成するだろう。無論、そんな裏切りをこの女帝は絶対に許さないが。

 

 だからこそ『セミラミス』は気になった。何故、チョコ製造の先にある目的を明かさない自分にそこまで付き合うのかと。

 

 

「ん?だって、女帝様が一生懸命だから」

 

「一生懸命……?我が?」

 

 だが、その答えはマスターにとって至極当たり前のものだった。純朴でどこか甘く溶けてしまいそうな笑みを浮かべて。

 

「うん。チョコが出来上がる度に本当に楽しそうに笑っているもん。そういう一生懸命な人には力を貸したくなっちゃうでしょ?」

 

「――――」

 

 数秒、玉座の間を沈黙が包み、『セミラミス』はもう一回、マスターの頭を叩いた。

 

「あいて」

 

「今日はもう寝よ。貴様が言ったのだぞ。『良いパフォーマンスは十分な休息を以ってなし得る』と。言い出しっぺが実践出来ていないのは説得力に欠けるだろう」

 

「あ――、そうだね、今日はもう寝るとするよ。おやすみなさい、工場長」

 

「工場長ではない」

 

 チョコ製造をしている期間だけ、特例として空中庭園の内部に与えられた客室にマスターは戻るべく、玉座の間を出ようとする。

 

()()()()()と呼べ」

 

「――――うん、おやすみ、セミラミス」

 

 ゆっくりと重く玉座の巨大な扉が閉まる音が聞こえた。

『セミラミス』は嘲るように笑う。一生懸命、楽しそう?当然だろう。何せ、チョコは自らの存在意義であり、生命維持に必要なもの。

 だからチョコ製造に精を出しているあの男も自身の理想を叶える為の道具にしか過ぎない。チョコのチョコによるチョコの為のチョコだけの国……そこに君臨するただ一人の女帝、甘美なるチョコの世界を支配する孤高の王。

 

 あぁ、けど――。

 

 その先は――?

 

 それを成し得た後は――?

 

 チョコという菓子に■■■■■という型を嵌められた『セミラミス』の想像力ではそこが限界だった。

 

 ――その後で、我は何をしたいのかと。

 

 

 ふと、彼女の頭には先程の少年の顔が浮かんだ。楽しそうだったと自分を評した裏切りの相が無い少年の顔が。

 

「楽しそうに笑う……こうか、いや違うな……こ、こんにゃ感じか?」

 

 立鏡の前で口の端に指を当てて、その『楽しそうな笑み』とやらを実践する為に『セミラミス』はしばらく格闘していた。似合わないと自覚していながらも止める気が起きなかった。知りたかったのかもしれない、他者を痛めつける■■■■■らしい嗜虐的な笑みではない。あの少年の瞳に映った()()()()の楽しそうな笑顔とやらを。

 

 

 

 

 

 




「に、にこぉ、これでどうだ?いやこうか、にぱぁっ……」

――クルッポー

「……………………」

その日、庭園から一匹の鳩の消息が途絶えた。



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