ハーメルンにおいて、最初は結構な頻度で投稿してるけど、話数が重なるにつれて、投稿頻度がどんどん落ちてくるの、そういうのあると思います。私も次回を楽しみにしている他の作者の方々の話の投稿が半年前とかになっているとちょっと寂しい気持ちになったりはします。投稿まだかなーと全裸待機している作品もありますし。
まぁ、確かに最初の方はお気に入りとか評価とか反響はグングン伸びますけど、投稿すれば投稿する程、どこかで頭打ちになりますからね。それにリアルの方が忙しくなればそちらが優先にもなりますから、趣味の範疇である二次創作投稿サイトでは仕方ないのかなーとか、思ってみたり。
私自身も働いている時と学生の頃を比べると間違いなく投稿の頻度は落ちてますし。それでも何で投稿しているのかといえば、まぁ、好きだからとかしか言えませんわ。FGOという作品とエロとそして投稿して反応貰えるのが好きだから。許されるなら毎日投稿したいんですけどね。お金になるわけでも別に義務でもないけど、それでもやり続ける……趣味なんてそんなもんです。
それはそれとして、最近小太郎君も性的な眼で見れるようになりました。
メイヴちゃんのヒロイン力が高くて、前編、後編ではなく、三部作になりました。おのれケルトビッチ。
青臭く開放的な香り。上を見上げればどこまでも続く蒼穹。シミュレーションとはいえ、現実に限りなく近い状態で構成された大自然。太陽の光を反射し輝く川に二本の釣り糸が垂れさがっていた。
川からせせらぐ水の音に加えて、今の空間には不似合な電子音がポコンと間抜けにさっきから何度も聞こえていた。
「おい、マスター。竿、引いてんぞ。こんな時ぐらい、スマホから手、離せっての」
「ごめんごめん、メイヴちゃんからLINEから来ててね」
「まさか、アイツ、こっちに来たりしねぇよな……」
その女の名前がマスターの口から出た途端、露骨に顔を歪めるのはアルスターの英雄、カルデアでは釣り好き兄貴、スカサハに貫かれる回数No1ことクー・フーリン。
彼にとって女王メイヴは生前からの因果で何かと絡まれる。このカルデアでは師匠よりも相手にするのが面倒くさい女サーヴァントの内の一人でもあった。
「いや、俺が来ちゃ駄目って言ってあるしそこは大丈夫」
だがここ最近はクー・フーリンが彼女に追われる頻度は確実に減っていた。確かに会えば、死ぬ程鬱陶しいラブコールを受けていたが、待ち伏せやストーカー紛いの事をされる事は無くなっていた。それは彼女がマスターと交友関係を結ぶようになってから――。
「あの女が素直に人の言う事を聞くとは思えないんだがねぇ……。お前さん、一体どんな魔法を使ったんだ?」
「いやいや、メイヴちゃんってば結構優しい所あったりするんだよ?何気ない所でイケメンポイント見せてくれるし」
「あぁ――、あれか?俺が話しているメイヴとお前の話しているメイヴは同名の別人さんか?」
「この間なんて、おっとっとのレア型を俺が気付くまで食べないように取っておいてくれたし」
「しょうもねぇ……」
「しょうもなくないよ!だっておっとっとのレア型だよ!?ハート型だよ!?」
だがまぁ、少し心配には思っていたがマスターの様子を見る限り、あの悪逆の塊のような女ともきっと上手くやっているのだろうとクー・フーリンは推考した。このマスターもマスターでカルデア中の女英霊をホイホイ喰ってしまう男なワケでそういう点では似た者同士、通ずる所があったのかもしれない。
(何せ、手前の年も考えずにニチアサの少女向けアニメとやらをお嬢さん達と見る痛々しい師匠を女の子っぽくて可愛いって言うぐらいだからな……雑食が過ぎるっつーの)
『我が逆鱗に触れるか。共にマスターに槍を預けたサーヴァントの仲だ。一度は許す。二度は無い』
「……ツツッッ!?」
「どうしたのクーちゃん?」
突然の寒気と幻聴、そして命の危機に釣りざおから手を離し、臨戦態勢に入るクー・フーリン。もう登場する度に師匠の槍でアッーされるのは食傷気味である。
「思想の自由すら許されねぇのか、地獄耳ってレベルじゃねぇぞ。いや、何でもねぇ……あと、クーちゃんって次呼んだら川に叩き落とすからな」
テヘペロ☆と自身の頭に拳をコツンとするマスターに若干、イラッとしながらも再び、草原に座り込み水面で揺れる浮きに視線を向けるクー・フーリン。入れ喰いとはいかず、まばらにしか魚がヒットしない穏やかな時間。何であれ、あのコノートの女王が自分にそこまで執心しなくなったのは歓迎すべき事なのだろう。その点ではマスターに感謝しなきゃなと彼はほくそ笑む。
「今度は真冬の釣りもいいかもね。凍った湖の上でさ」
「あん?凍ってる所でどうやって釣り糸垂らすんだよ。ルーンで溶かすのか?」
「穴釣りって言ってさ。小さい穴開けて、そこから釣ってくの。寒い場所で取れたてのワカサギを天ぷらで揚げて食べるのは最高の贅沢だよ兄貴」
「ほぉ、そりゃあいいな。何だ、経験あんのかマスター」
「あぁ……うん。この間にね……。朱槍の雨で氷の湖が穴だらけになって、ドヤ顔でバケツいっぱいの魚を見せてくる師匠が見れたよ」
スマホ片手に釣り竿を緩やかに揺らすマスターの横顔は若干心ここにあらずのようにも見えた。
「お前さん、ちゃんと説明したか?若者向けのレジャーはお年寄りには馴染みが無いんだから――」
想い人の前で180度間違った方向でイイ所を見せようとした師匠の乙女(脳筋)っぷりにドン引きしながらも茶化した台詞をクー・フーリンが吐こうとした刹那。
『言ったはずだぞ』
「へ?」
空間を切り裂き、朱き死兆星が。
『二度はないと』
彼に飛来する。
「ぬぉおおおおおおおおぅっっ!?」
▲▲▲
マスター
【何時ぐらいに食べにくる?】
▲▲▲
「珍しいな、5分以上経っても既読がつかないのは」
陰口絶対許さないボルグによって愉快なオブジェになったクー・フーリンの隣でマスターはメイヴとのトーク画面を開いたまま、誰に聞かせるわけでもなくそう呟いた。
「この間、マスターから借りた小説でな。あぁ、若者向けの娯楽本だ。別に俺は毛嫌いはせん。なろう小説から純文学まで、小難しい本を読む時があれば、コメントが流れる動画だって見る。ネタはどこにだって転がっているからな。偏る事こそ作者にとって忌むべき傾向だろう。あらゆる物を満遍なく評し、けなしてこそだ」
「前置きはいい。さっさと本題に入りなさい。小憎たらしい童話作家様は一体、私の何を扱き下ろしてくださるのかしら?」
メイヴとアンデルセンが向かい合っている場所は変わらず、カルデアの食堂の場。一国の女王、混沌たる戦場を何度も我が物顔で蹂躙してきたメイヴの圧。並の兵士なら気を失うであろう王者の風格にアンデルセンは気負う事なく話を続ける。
口を開けば、神様であろうとも彼の口を塞ぐ事は出来ない。あの英雄王の前ですらこの男は変わらない調子で評論し続けるのだから。
「ふむ、せっかちだな。お前はあれか?結末だけをネットでさらっと見たい派か?一作者として思う所が無いとは言わんが……まぁいい。ともかくその本の中である現象――『くらやみ』という存在が出てくるわけだ。分かりやすくいうと、そいつは自分の存在を偽った妖怪を消す現象だ。自分を神様だと偽る吸血鬼。人を迷わせない迷い牛。自身のアイデンティティ、ルールから外れた者を問答無用で消し去る末恐ろしいブラックホールのようなものだった」
「で?その本の内容がなに?私と世間話でもしに来たの?」
「どうどう、そうカリカリするな。この間、見かけた時は大層楽しそうに雑談に興じていたからな、こういう話題も好きだと思っていたのだが……おっと失敬失敬、確か相手はマスターだったな。それは悪かった!相手がこんな三流サーヴァントじゃ、代わりにはならんな!」
アンデルセンの煽りと嘲笑にテーブルの下で握っていた鞭がイヤな音を立てたが、気持ちを落ち着かせてメイヴは彼に話の続きを促した。ここで格下相手にブチ切れて、暴力に訴えるのはまるで相手の口から出る疚しい事を塞ぐ為に手を出したようにも思われかねない。
こんな童話作家にどれだけ評されようとも、自分には何一つとして恥ずべき事も隠す事も無いと彼女には確信があった。相手の見当はずれの言い分を最後まで聞いた上で真正面から叩き潰してやろうとは実に女王メイヴらしい考えではあったが。
「で、だ。その『くらやみ』とやらは俺達英霊にも当てはまるのではないかと思ってな。死してなお、世界に使われるぐらいだ。その存在の核となる芯とやらもあるだろうよ。陳腐な言い方をすればキャラクターとも言えるか?俺達もそこから逸れる振る舞いを……『らしくない』事をすれば、もしかしたら消え去ってしまうかもしれんとつい下らない妄想をしてしまってな」
戯言の類。メイヴ自身も、語っているアンデルセン張本人も自覚はあった。何せ、オルレアンのサーヴァントのバーサーク化、宿業を埋め込められた英霊剣豪のように聖杯、あるいはそれに準ずる強大な力があれば、サーヴァントは簡単に歪められてしまう。そもそもサーヴァント自体がある側面を切り取った影法師に過ぎないのだから、仮に元は同一人物だとして、正反対の存在が出てきてもおかしくはない。
だからこれは前置き、本題に入る前の。このカルデアにいるメイヴの核を突く前の大事な序論。
「平気で嘘をつく清姫。他人の物を強奪するカルナ。あるいは人の顔色を伺い、胡麻をする俺。そして――」
右手の指は小指から順繰りに折り曲げられ、そのまま人差し指がアンデルセンの目の前にいる桃色の髪の女の顔に向けられた。
「
その瞬間、確かにメイヴの中で時が止まった。
「――――何の話をしているのかしら?」
僅か2、3秒ではあった。だがその微かな間は女王の自信の綻びを証明してしまう確定的なものだった。
「どうした?動揺しているぞ」
色んな意味でその声にマッチングしているアンデルセンの問いかけに静かに汗を垂らしたメイヴはそれでもこれ以上の醜態は見せまいと平常を装って返答する。
「作家様は活字ばかり追いかけて、現実が見えなくなってしまっているのかしら?好いた男?いつだってアプローチをかけているじゃない、クーちゃんに」
「俺が誰を指しているのかわかっている癖にまだとぼけるか。ラブコメ主人公気取りか?」
「だから、何を――」
彼女の表情に現れているのは困惑。目の前の男が何を言っているのかわからないという疑問。ただし、それはあくまで表面上。無意識の内に感づいていた……アンデルセンが誰の事を言っているのかなんて。最初から。
「
カランと――、机の下で震えたメイヴの指から鞭が落ちる音がする。その音を気にする事なく、アンデルセンは一息入れようとコーヒーを啜っていた。
メイヴはイライラしたように足を何度も組み直していた。大丈夫、まだ何も慌てる事はない。コイツもただ見当はずれの事を言っているだけだと自身に言い聞かせていた。
「はぁ、あなたもスカサハと同じような事を言うわけ?確かにマスターのタイプはドストライクだけど、あの子は」
「そもそも
テレパシーのように自身が言おうとしていた事を悟られ、反論の言を塞がれる。何故そこまで知っていると聞くのもきっと野暮だろう。人の内面を見通す事に関しては他の追随を許さないこの男にとって今のメイヴはわかりやす過ぎた。
「自分になびかない男を屈服させ、這いつくばらせる。自分のモノにならない男を叩き伏せて、支配する。クー・フーリンの時だってそうだった筈だ」
メイヴの口の中で徐々に水分が失われていた。緊張した面持ち。気丈ないつもの女王の顔が剥がされていく。
「なのに何故、友達だという温い関係で満足しているのか。そうだな、その様子を見る限り、お前自身まだ完全に目覚めきっていないようだから気付け代わりに俺がたった一つの答えをくれてやろう。駄賃は不要だ」
お前の喋っている事は全て的外れもイイ所だ。マスターと私はただの友達だ。それ以上でも以下でもない。メイヴの頭で響く否定の言葉が浮かんでは泡の如く、消えていく。
「マスターがお前にとって好みなのも真実だろう。そしてどうあがいてもマスターがお前だけの物にはならないと何よりお前自身が悟っている。マスターにとって女王メイヴは唯一無二の物になって欲しい。自分だけを愛して欲しい。だが、その願いは叶わない」
幸か不幸かここにいるカルデア最後のマスターは一人の女性だけを愛するという真っ当なレールからは既に外れてしまっている。迸るその膨大な愛を数多の女英霊達に甘す事なく捧げる。
自分は過去・現在・未来・全ての素敵な男達を恋人にすると豪語しておきながら、彼が同じ事をするのを本当は認めたくない。何たる我儘、面倒臭さ、これが恋するビッチ女王メイヴ。
「大勢いるアイツの寵姫の一人になる事をお前は避けた。だから――『友達』という関係を選んだ」
(違う――)
「それは逃げや諦めというよりはお前自身を納得させる新たな関係だ。ケルトの悪女よ、その悪辣さから生前誰一人として友人がいなかったお前にとって『異性の友達』というのは逆に特別な関係になるのだろう。それは間違いなく
(私は彼とは純粋に友達で――)
「それはマスターにとっても特別な枠に入るかもしれんな。『センパイとはフレンズな関係です』とか言いながら、ベッドで腰を振る桃色AIと違い、ある意味、アイツにとって
「黙れ――」
「お前がマスターを積極的に誘惑しないのもそれが理由だろう?大事な大事なオトモダチを
「黙れっつってんのよ!!」
罵声と共に胸倉を掴まれてアンデルセンの小さな体が持ち上がる。その衝撃で落ちたカップグラスが割れる音が食堂に響き渡る。
シンと静まり返ったその場で食事を楽しんでいた職員やサーヴァント達が一斉に注目したその先にメイヴが怒りで瞳を潤ませて、呼吸を乱し、アンデルセンを睨みつけていた姿があった。
童話作家の方は言いたい事は言ったと満足したのか、薄く笑みを浮かべるだけ。
「あいや待たれいご両人。喧嘩はキャットも喰わぬ。ここは血肉を貪るカルデアの憩いの場。キャットの顔も三度までだと知るのだな」
「あのメイヴさん……。詳しい事情はわかりませんがその手を離してもらってもいいでしょうか。Mr.アンデルセンも苦しそうですし」
咎めに来たカルデア食堂の番人、タマモキャットに続いたその声を聞いて、メイヴはエプロンドレスの格好をしている獣の隣にいるマシュ・キリエライトへと鋭い瞳を向けた。
いつの日かマスターとコイバナをした時。彼が照れ臭そうに話す初めての人との初夜。その時、茶化しながら聞いていた自分の心境をメイヴはこの瞬間やっと理解する事が出来た。
マスターの初めてを奪った女――。
「メイヴさん……?」
「あなたじゃなくて、私が――」
ギリギリの所でメイヴは踏み止まった。もしそれ以上言ってしまったら『女王メイヴ』としての矜持をズタズタにしてしまう程の醜態を晒していただろう。それこそ目の前の男が言っていた『くらやみ』とやらに飲み込まれかねない程に。
彼女に出来たのは唇を噛み締めて、その場から走り去る事だけだった。
――う――ん、残念だけど、マスターは私の恋人にはなれなさそうね。でも悲しむ必要は無いの。これは決してあなたの事が嫌いだからとかじゃないの。
――えぇ、そう。だから友達になりましょう。マスターは私の
――海に遊園地にショッピングモール!楽しく遊びましょう!ちゃんと予定開けておきなさいよね!
――いつまで経っても、うじうじうじうじ、迷惑がかかるからとか、彼女がいるからとか、今の関係が壊れるからとか、好きな癖になんで諦める理由ばっかり考えているのかしら?
「どの口で言えたのかしらね、私は」
食堂から走り出したメイヴが行き着いた先は自身の部屋だった。扉を閉め、電気もつけずに、ベッドの上で膝を抱える女の姿。
自信と不遜に溢れ、我儘放題であった悪女とは程遠い。困惑し、落ち込み、心に影が差すまるで普通の少女のような様相だった。
女王メイヴは妄想する。
もしも、初めてマスターに召喚されたサーヴァントが自分で、彼の初めてを奪えたら?友達ではなく、マスターは私だけの素敵な恋人になっていたのだろうか。
健全で楽しい友達同士の関係ではなく、淫靡で愛と肉欲に塗れた恋人の関係。
メイヴはそこまでして、馬鹿らしいとその妄想を自嘲する。そうはならなかったイフを空想している時点で今の自分はよっぽど参っているのだろう。全て、あの童話作家に言われた通りだ。今の女王メイヴはらしくない真似をしていると。
「何をしているのかしら私は」
『らしくない』真似をしている事をアンデルセンに暴かれた事よりも、食堂で逃げ去るなんて醜態を見せた事よりも彼女の心を苛んでいるのは自分とマスターが純粋な友達関係ではなかった事を自覚してしまった事。
唯一の恋人になれないから、友達という関係を選んだ逃げ。
お互いに多くの恋人がいる同士、その中であえて『友達』という関係を取る事で特別を築き上げようとした浅ましさ。スカサハの前では聞こえの良い台詞は吐いていたが、要するに自分は諦めていなかったのだ。
メイヴは楽しかった今までの彼との思い出を自らの手で汚している感覚に陥っていた。
「本当に……何をしているのよ、私はっ……」
「全くだよ。こんな所で何してるのさ」
「…………へ?」
かかるはずのない第三者の声。気づけばメイヴと背中合わせになるようにマスターがベッドの上に座っていた。
「……っ、何で、いるのよ……」
取り乱しそうになる感情を抑え、声を荒げないように後ろにいるマスターに問いかけた。今、一番会いたくなくて、一番会いたかった男に。
「5分経っても既読がつかないから何かあったと思って、探しに来た。それにお互いの部屋の合鍵持っているでしょ」
「あぁ…………そう言えば、そうだったわね。なら、私の姿を見つけてもう満足でしょう。今は一人にして、今日は女の子の日なの」
「サーヴァントにないでしょ」
あぁもうとメイヴは歯噛みする。こういう所だ。女の子の機微に鋭くて、すぐに駆けつけて、助けて欲しい時に手を伸ばしてくれる彼のこういう所がきっと他の女性サーヴァントも好きで、自分自身もきっと――と。だが、今のメイヴにとってその優しさこそが一番辛い。
どの顔を下げて、これから彼と関わればいいのかと悩んでいた真っ最中だというのにとメイヴは苦心する。
「何かあったの?俺で良かったら力になるよ。だって
「ッッ!!」
だから、その言葉がメイヴの最後の一線を切れさせた。
バンッ!とベッドが大きく揺れ、軋む音。気づけばマスターはメイヴに上に圧し掛かられていた。その肉感的で黄金律で出来た下半身でマスターの腹部を抑え付けていた。
ライダークラスに相応しい男に騎乗する姿。今の彼女が纏う雰囲気はマスターと一緒にいる時に見せていた友達同士の快活なものではない。雌の欲望のまま好いた男を喰らう肉食獣そのもの。
だがその顔は迷子の女の子のように酷く悲しそうに見えた。
「友達、友達、友達ねぇ……!ねぇ、マスター、そう思っているのはあなただけだったのよ?」
押し倒されたマスターの表情はわからない。突然の事に呆けているのか、驚いているのか、ただ堰を切ったように言葉を吐きだすメイヴを黙って見詰めていた。
「ずっと、ずっと、ずっと、セックスしたいって思ってた……。諦めたフリをして、一緒の部屋にいる時も、隣同士でDVDを見ている時も、ゲームをしている時も、漫画を読み合っている時も、シミュレーションで海とか遊園地とか行った時も、イシュタルを二人で調教していた時も……ずぅぅぅっと、こうやって組み伏せて、抱きしめて、唇を貪って、あなたの立派な男根を私の濡れそぼったモノで包んで握り締めて、腰を叩きつけて、何百回だって吐き出させたいと思ってた。友達面して、あなたの隣でずっとそんな事を考えていたのよ?」
アンデルセンに暴かれたメイヴのSGは敢えて言うなら『恋愛脳』。
黄金律で完成された女性としての肉体美。獣の如き積極性。王としての財力と権力。あらゆる力を持って数多の男達を虜にしてきた……いや虜に出来てしまったメイヴは普通に生きていれば一度は経験するであろう甘酸っぱい恋を経験した事が一度も無い。
だからこそ、恋を知らない彼女は無意識の中で恋愛を神聖視していた。少女漫画の主人公のように。だが、それは自分には似合わない。多くの男達のモノを咥えてきた女王の自分が持つべきものではないと心の奥底に仕舞いこんだ。
「でもね、それは出来ないの。私もマスターも恋人同士にはなれないの。同じ多くの
自虐し、痛々しい顔で笑うメイヴにマスターはまだ何も言わない。
「慰めなさいよ私を。マシュ・キリエライトがあなたにしてくれたように!!抱きなさいよ!!」
もしメイヴが全ての男達に対する執着心を捨てて、マスターだけの物になれたら、もしマスターが他の女達を捨ててメイヴだけを選んだら、話はここまでこじれなかったかもしれない。
だが、そうはならなかった。メイヴはメイヴであるがゆえに。マスターはマスターであるがゆえに。
「安心しなさい。たった一回肉体関係を持っただけで付き纏うようなウザイ女になるつもりは無いわ。このまぐわいが終わったら、令呪で自害を命じなさい。私自身がここまで醜態を晒した自分を許せないの。ここで全てを
マスターとの一度の交わりを最期にその思い出を土産にカルデアから去る、と彼女は言う。アンデルセンの『くらやみ』の話ではないが、ここまで
「別にいいでしょ?所詮はサーヴァント、その場限りの関係。ここの私がいなくなってもまたいつか別の私が召喚出来るわ。あぁ、けど、次の私にはマスターとサーヴァントの関係に留めて欲しいわ。またこんな面倒事を繰り返されるの、マスターも御免でしょう?」
そう言って、淡々と自身の終わりを話すメイヴの顔をマスターの手が優しく包み込み――。
「ふぇ?」
呆けるメイヴの頭蓋目がけて、思いっ切りヘッドバッドをかました。
「あぐぇええっ!!?」
ゴォンッと生々しい音を立てて、仰け反り、そのまま二転三転とベッドの上を後転し、壁に激突したメイヴ。哀れ、その姿はいつもの女王らしい威厳もマスターと過ごしていた可愛いらしさも微塵も無かった。
「な、なに、すんのよ……」
「それはこっちの台詞じゃい!このボケぇ!!」
今まで黙っていたマスターが口を開き、仁王立ちになって吠える。「えぇ……」とメイヴは赤くなった額を抑えて困惑していた。
「さっきから聞いてれば、人の地雷ワードをポンポンと……!俺が親友の自殺を『はい、そうですか』って見送ると思ってんのか!何より気に食わんのが――」
メイヴが羽織っているルームウェアの襟を掴み、無理矢理立たせたマスターは真正面から彼女に思いの丈を叫んだ。
「俺達二人の思い出を醜態とか、清算するとか言ってる事だアホ!何だ?メイヴちゃんと今まで遊んできた全ては黒歴史か?葬りたい汚物だったのか?友達だと思っていたのは俺だけだったのか?メイヴと遊んで、他愛も無い話をして、今度は何しよっかなって予定を考えて……。俺は心底楽しかったぞ!お前はどうなんだ、答えろこのスーパー恋愛雑魚ケルトビッチボッチ!!」
メイヴが親友として今まで見た事が無いマスターの顔。彼は本気で怒っていた。
「うっさいわねっ……この女英霊ビュッフェ野郎……」
何だかんだで今まで友達同士のお付き合いをしていながら、本気の喧嘩をしてこなかった二人。マスターの凄まじい剣幕に感化されて、唇を強く噛んだメイヴは涙を流しながら、負けじとマスターの胸倉を掴む。
「楽しかったに決まっているじゃない!!友達だと思っているわよ!!でも……でも、もう友達じゃ、いられないのよ!だって私があなたの事を友達以上で見てしまっているんだもの……!四六時中セックスしたいって思ってしまってる!私は女王メイヴ……。欲しい物は何だって手に入れて……手に入れて……」
「そう思う事の何が悪いんだ?」
「……だって裏切りじゃない、私の初めての友達になってくれたあなたへの……。純粋な気持ちじゃなかった、よこしまな気持ちで親友面していた」
「…………」
「漫画の中のヒロインを馬鹿にしてた。好きなのにどうして告白しないんだろう?って、今までの関係が壊れるとかなんでそんな小さい事、気にするんだろうって。けどその気持ちがやっとわかった。
「悪い事なのか?」
「え?」
「だから、友達に劣情を催す事は悪い事なのか?いけない事って誰か決めたのか?メイヴ、お前はどうしたいんだ?」
マスターの問いかけからメイヴは逃げる事は許されない。いつだって彼女は自身の欲望を叶えてきた。どんな強引な手段を使っても悪辣で我儘な女王の如く。
彼が聞きたいのは後悔の言葉とか、そんな後ろ向きの言葉ではなく、未来に続く欲望である。彼女がどうしたいのか。
「マスターとセックスしたい……。マスターと愛し合いたい……。でも本当は……本当はっ!それと同じぐらいにマスターと友達でありたいのっ……!」
やっとメイヴは自身の想いを吐露した。それは一見矛盾していて、とてもメイヴらしい身勝手な欲望。マスターを掴んでいた手から力が抜ける。項垂れた彼女の顔が再びマスターの手で包まれる。今度は頭突きはされなかったようだ。
その言葉が聞きたかったと――優しく、そして力強く顔を上げられる。
「ま、正直に言うと、俺もメイヴには大分前からムラムラしていた。柔らかくバランスの取れた肢体を抱き締めたい。桃色の艶髪を撫でて、犯したいって結構前から思ってた。だから別に変な事でも悪い事でも無い。互いに同じ事思ってたんだから」
「なっ……」
さらっと、両想いだね俺達と告白するマスターにメイヴは眼を見開く。
「そんな素振り……今まで一度も……」
そもそも、男の情欲の視線に人一倍鋭い自分がマスターの劣情に気付かない筈が無いと彼女は困惑する。
「だから、一切表に出さないように隠してきた。だって、メイヴちゃん、仮に抱いても俺だけの
要するに似た者同士だったのだこの二人は。互いに劣情を抱いて、でも相手が自分だけのモノにはならないと知ってて、そしてこの友達同士の関係がどうしようもなく心地良くて。
同性で友だったラーマの時みたく、育んだ絆に獣の絶倫と技術で誑し込み、性癖が歪んだシータごと囲うという特殊な手段はそうそう使えない。
「何が……『惚れた娘がいたら、あらゆる手段を尽くすけどね』……よ、この大嘘つき。私に気、遣ってんじゃないわよ」
恋人だろうと、親友だろうと、自身の全てを曝け出す必要は無い。どんなに仲が良くても、いや仲が良いからこそ隠したい事の一つや二つあるだろう。道成寺鐘燃やすガールは激怒するかもしれないが。
要するに二人とも目の前にいる大事な親友の為に自身の欲望をひた隠しにしていたのだ。
今回はそんな仲が良すぎる二人の親友の隠し事が偶々暴かれてしまっただけ。
仮にメイヴが本当は異性としてマスターの事をずっと見ていたとしてもそれは二人が親友として過ごして来た事実を無かった事にするものではない。
「ねぇ……メイヴ。今まで通りではいられないと思ってるなら、今度は俺とセフレになってくれないかな?」
「ぷっ!ふふふ、あははははっ!!何よそれっ。今まで聞いてきた中で最低のプロポーズよ」
「この世界は案外寛容なんだよ?友達同士でセックスしても何も問題は無いだろうさ」
「でもマスター。抱いても私はあなただけの恋人にはなれないわ。あなたが私だけの恋人になってくれないように。本当は私の事も他の女達みたく家族にしたいんでしょ?」
「あぁ、けど。親友が悲しんでいるなら、自分の矜持ぐらいほんの少し曲げてもいいかなって思ってるんだ。大好きな友達のメイヴちゃんの為なら俺も
「あぁ、もう!そういうの反則よ!!どうしてこのタイミングでそんなキュンとする台詞吐いてくれるのかしらねぇ……あなたは!ほら、さっさと脱ぐ!いいからセックスよ、セックス!あなたと一緒にいるだけでここが濡れちゃって仕方ないんだから!」
泣き笑いのような表情を浮かべたメイヴはやっと調子を取り戻してマスターを裸にひん剥く。
やんややんやと二人で騒ぎながら、情事へ励もうとする様子は今まで通りの緩い雰囲気。友達同士の関係は変わらない。デキる事が一つ増えただけ。
友達でも、セックスは出来る。
《没ネタ:第五特異点》
対峙するカルデアの面々とアメリカを歪めた特異点の黒幕、コノートの女王メイヴ。
「ねぇ、カルデアのマスター。あなたはどんな女が
「あ、あのその質問にどんな意味が?」
マシュの疑問はごもっともだった。
「ただの品定めよ。いいから答えなさい」
「う――ん、体は無駄な肉はついてなくてバランスが取れてて、性格は我儘で気は多いけど、自分磨きは怠らない努力家で自信家な女の子……」
「!?」
瞬間――。メイヴの脳内に溢れ出した存在しない記憶。
▲▲▲
校舎の屋上で語らう二人の学生。
『私、クーちゃんに告るわ』
『えぇぇ……俺、暴れるメイヴちゃんを慰めるの嫌だよ?』
『何で、私がフラれる事前提なのよ!?』
『逆に何でOKをもらえると思ったのか……』
『かのフローレンス・ナイチンゲールはこう言ったわ「実際に学ぶ事が出来るのは、現場においてのみである」と』
『決して、玉砕覚悟の告白で使う台詞じゃないんだよなぁ……』
――――――
『悪ぃ、お前はねぇわ』
結果は惨敗。あっけなく散り、泣き崩れるメイヴ。
『ふぇぇぇ……なんで、なんでよぉ……。こんなイイ女を振るとか、男じゃないわ……えぐっ、えぐっ……』
『はいはい、道端で塞ぎ込まない。他の人達の邪魔になるでしょ。帰りになんか食べに行こう。今日は奢るからさ』
『ケーキ……バイキング……』
『好きなだけ食べればいいさ。ほら、行くよ』
メイヴの背中をポンと叩き、支えるマスター。性別は違えど、確かな友情がそこにはあった。
▲▲▲
天を仰ぎ、涙を流すメイヴ。
「どうやら、私達は親友のようね」
「今ここで初めて会ったのに!?」
次回の本番(エロ)でメイヴ編完結。後、お気に入りが8000を突破しました。メイヴちゃんサイコー!