二か月ぶりのグダお英霊編そして、待望? の所長回でもあります。
時系列は第一特異点中でごぜーます。
0話にてパールヴァティー、セミラミス更新。
赤々と燃え盛るカルデアスに体が引っ張られる。
魔術師の名門の当主という肩書きは持っていたが、所詮は張りぼて……。結局、マスター適正もレイシフト適正も無い私は為す術なく只泣き叫ぶだけだった。
「いや――いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!」
子供のように泣き叫ぶ私の慟哭に誰も答えを返してくれない。
「どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!? 誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!」
今、この光景を見て、どこか冷静になっている自分がいた。
届く筈の無い手を必死の形相で伸ばそうとする藤丸とマシュ。
――あぁ、これは夢ね。それもとびっきり最悪の。
「やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない! 生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」
終わりなき地獄、分解と再生を延々と行うブラックホールに飲み込まれ、小娘のまぬけな絶叫が響き渡る。
――これは、もし
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて――――。
お願い、だれか、私に手を伸ばして……褒めて――。一人は寂しいの――。
「あいよ」
――暖かい感触が手を包んでくれた気がした。
「んっ、ぅぅ……はぁっ……はぁ――」
寝起きは最悪………でもなかった。全身に汗が張り付き、悪夢にうなされていた筈なのに。
周りを見回し、自分の所在と状況を冷静に確認する。
私はオルガマリー・アニムスフィア……。アニムスフィア家の当主。人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長。
そして、グダおの聖杯と神獣達の素材で新たに肉体をつくられた女。格好の事は知らない。
「また、あの夢ね……」
レフの裏切りによる候補生マスター達の脱落、延命措置として冷結保存を行ったが、彼達のこの聖杯探索の戦いへの参加は絶望的。七つの特異点をたった一人のマスターと共に修復していかなければならない重圧からか、冬木から戻ってきた私は今日まであの悪夢に何度もうなされる事になった。
でも、でも……終わり方はいつもと違った。最後は苦しい思いのままわけもわからず飛び起きるのがお決まりになっていたのに。
最後の声と、私の手を握ってくれたのは一体誰なのだろう……。
「はぁ、ちょっと目、覚めちゃったわね……夜風にでも当たりに行こうかしら」
そう言って、今の自分の場所を確認する。
正式なグランドオーダーとして始まりの一歩となるフランス。
私達はそこで竜の魔女として狂ったジャンヌ・ダルクと本来の歴史にはいない筈のワイバーンに蹂躙されるフランスを目にする。
そこで、正しき聖女であるジャンヌ・ダルクと王妃マリーアントワネットと音楽家モーツァルトと合流。
戦力としては心もとな……くないわね、一人規格外がいたわ。正直アイツだけでも割と事足りる気もするのだけど。
ともかく、私達は王妃やモーツァルトのように私達に力を貸してくれるサーヴァント達を探して、フランスを探索中、この森の中で野宿をし、一休みする事にした。
――てれれれてってーん♪カプセルハウス(万能の天才による商品登録済み)~~。
睡眠は充実された環境で行われるべきとして、グダ男が宝具から、簡易テントというには豪華過ぎる物を出してきた。
ピンク色のカプセルからスイッチを押して出てきたのはテントというよりは家、頑丈な造りにやけに豪勢なシャンデリア、ベッド・クーラー・トイレ・マジックミラー付きのシャワー・テレビ・冷蔵庫完備、登録されていない人物が近付くと防衛システム、アルソックならぬサバソック起動というキャンプを舐めくさっている作り。
世界が焼却されている今、テレビがあっても意味は無いのだけれど、何故か延々と流されていたBBチャンネルとやらで『絶対にイッてはいけない百重の塔 24時』とかやってたし……内容はR18なアレだったのだけれど、ついつい見入っちゃうぐらいには面白かったわ。
――完全、防音ってさぁ。僕の楽しみが無くなっちゃうじゃないか。
――ふふ、見てジャンヌ!このベッド回転するわ!生前、住んでいた城でもこんな面白いベッドは見た事ないわ!
――あぁ、マリー……あまり無闇やたらにいじらない方が……。
――先輩、この冷蔵庫のボトルに入っている液体は何でしょうか。飲み物ではありませんって注意書きもありますが……。きゃっ!何かヌルっとしますよ!先輩。
――あの変態サーヴァント、完全にアレなホテルじゃねぇかこれ……。
二人部屋という事で、藤丸とマシュ、ジャンヌとマリーが一緒。
さすがにサーヴァントといえども男と二人っきりはマズイので私が一人になったわけなのだが。
グダ男は見張り役という事ではハウスの外で警戒中。
……何かせっかくこの部屋用意をしてくれたアイツを一人だけ外で待機ってのも可哀想よね。
「別に私の部屋に入ってくれても良かったのに……」
「何がです所長?」
「自分の宝具なんだから、貴方の好きに使っても罰は当たらない筈よって思っただけよ」
「ははっ、それは安心しました。こうしてうなされていた所長の手を握っていても怒られないって事ですよね?」
「…………ぴゃっ?」
ベッドから体を起こしていた私の右手をギュッと握っている海パン姿の男がいた。
藤丸立香が初めて自力で召喚したサーヴァント、自称並行世界からのカルデアのマスター。名称グダお。サーヴァントなのに誰もコントロール出来ない規格外の英霊が私の傍にいた。
「にゃにゃにゃにゃ、にゃんでここにいるのよっ!?」
「だって『助けて』って聞こえちゃいましたからね。手を伸ばすぐらいはしますよ」
「くぅぅ、寝言で、出ていたのね……いや、そもそもここは防音性バッチリって話だったじゃない。なんで私の声が聞こえるのよ」
「今の所長の体は俺の宝具で作られているみたいなもんですからね。マスターとサーヴァントのパスより深い形で繋がりあってますから、所長の事は奥の奥まで俺に筒抜けってわけです」
「乙女のプライバシー!」
ポカポカと殴りかかる私の腕を防ぐ事もなく、笑いながらなすがままにするグダお。
そ、そう……じゃあ、夢の中の最後の声も手もコイツだったわけね。
それにコイツの海パン一丁の姿もそうだけど、私のふざけた格好も合わさると何だか変な気分になるわね。肌色率高いし……用意されている部屋もピンク寄りだし……。
「むむ?所長、ちょっと頬が赤いですが」
「うるさい、わかってて言ってるでしょ。馬鹿」
「ならなんか飲み物でも飲みます?一応、酒も含めて飲料水も兼ね備えてますよこの部屋は」
「本当にわけのわからない宝具をポンポンと出すわね貴方……。剣だの銃だの変身スーツだの出したと思ったら今度はこんないたれりつくせりなテント(?)を出すとか……」
「このラブh……カプセルハウスも一個、マナプリ5000個で万能の天才ちゃんから購入した奴なんですけどね。高い買い物ですけど、それなりに重宝しましたよ。野外プレイがあんまり好きじゃないって娘達には特に――」
「いい。それ以上聞きたくないわ。ほら、酒でもいいから寄越しなさいよ」
そういって彼が手渡して来たのは二頭身のグダおから「エサヒィ~~スープゥードゥラァァア~~イ!!」と吹き出しが出ているラベルが貼られたやけに腹立つ缶ビールだった。
こんな安物……普段の私なら飲むはずもないんだけど、まぁ……人理が焼却されている異常事態ですし、普段なら絶対に口しないような物を頂くのも一興かしら。
プルタブからはやけに気持ちのいい音が鳴った。
「うぅ――もう一本~~」
「所長、飲み過ぎですよ」
「あぁん!?私のどこが飲み過ぎだってんのよぉ!まだ缶もひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ…………こんなの飲んだうちには入らないわよぉ……わかってんの?自分が何言ったのかわかってんのかぁぁ~~!?」
「うへぇ、完全に出来上がってらぁ」
「ひっく、カルデアは爆破されるし……。マスター候補生は一般枠の素人しかいないし、レフは裏切るし、藤丸が召喚したサーヴァントは意味不明だし、カルデアでの召喚に成功した第三号の英霊は変態だし、私は何故か死んでいるし、と思ったらグダおに助けられたし、うぅ、ぐすっ、うぇぇ……ありがとう、本当にありがとうぉぉぉぉ……!」
「情緒不安定ですね。見ている分には愉快ですが」
情緒不安定じゃないわよ。一応は命を救ってくれたわけだし、こうして感謝を示しているのよ。失礼な奴ね。サーヴァントの癖に……。私を誰だと思っているわけ?亡きお父様からアニムスフィア家を引き継いだ現当主にして、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長よ?これぐらいなんて事はないわ。それにしても結構おいしいじゃないこの缶ビール。ついつい手が伸びて――――――――うぷ。
「ウッ」
「うっ?」
「ゲェ――(以下の音は所長の名誉の為伏せさせて頂きます)」
「所長ぉぉ――!!」
「う、うぅぅ……ぐすっ、なんでよ……なんで私ばっかりこんな目に遭うのよぉ……」
「所長が飲み過ぎたからですよ」
マジレスは止めなさい。
外見は年下に見える男の子に、吐瀉物をぶっかけておきながらその世話を全部させるカルデアのトップがどこにいるのかしら……。いや、元々あのドスケベコスチュームに転身した時から威厳なんてものはとうに無くなってたわね……ハハハ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ふぇ、どこによ?」
「シャワーに決まってるじゃないですか。あんな盛大に粗相したまま気持ち良く寝れないでしょう?一回、サッパリするべきですよ」
「あわわわわ、ま、ままま待ちなさいっ!一人で、一人で入れるからっ!」
「そんなフラフラのご様子で何をおっしゃっているのやら、大丈夫ですよ所長、こう見えても介護(女性限定)は大の得意なんです」
え、え、え……?い、今から?ナウ?一緒にシャワールームに向かうの?う、うぇ、みゃ、みゃって、待って……わ、わわわわわわたし、体の処理とか大丈夫かしら?っていうか初めてはもう少しロマンチックな場所が良かったのだけれど!こんな嘔吐の処理のついでとか、場の流れとかじゃなくて綺麗な夜景が一望できる高層ビルの最上階で、指輪を渡してもらって、二人で手を繋ぎながら、ベッドの上で1時間ぐらい話した後に、グダおの方から自然な形でキスをして、優しく押し倒してもらう感じで、そしたら、私が「電気をけして……」って言ってそのまま二人は重なり合って――――、あっ、あっ、あっ、行くのね?行ってしまうのね?私の初めてがバスルームで奪われてしまうのね――――!
「…………………………………」
「スッキリしたでしょ、所長」
「…………えぇ、そうね。体は綺麗になったわ」
ビックリするぐらい紳士的だったわ……けど、釈然としないわ。
ドギマギして心の準備も覚悟も完了している私の事なんて露知らず、一流の介護士の如く、邪心なく私の躰を洗ってくれた。胸もアソコも……。
――んっ、あぁっ。ひぅんぅぅっ!
なんでよ……なんでナニもしないのよ!
なんかイヤらしい声を出している私が馬鹿みたいだったじゃない!
けど、仕方ないでしょ?洗い方はイヤらしくなかったけど、触られる所触られる所、全部が気持ち良かったんだもの!むしろ、生殺し気分だったわ!これならいっそ獣の如く襲いかかってもらった方がまだマシだったわ!!
確かに体は綺麗になったけど!スッキリはしていないわ!色んな意味で!昂っている分、さらに目が覚めてしまったわよ馬鹿!
私の体はそんな魅力的じゃないって言いたいの!?敵サーヴァントには嬉々としてセクハラする癖に!私みたいな小娘の体じゃ興奮出来ないって言うのね!馬鹿、馬鹿、死んじゃえ!
「うぅ~~~~……」
「そんな恨めしい眼で見ないで下さいよ。所長の初めてはお風呂とかじゃなくて、ちゃんとした場所で奪いたいなって思っただけですから」
「え、私の事想ってくれて……」
(酔いとチョロさで心配になる……)
な、何よ……それなら最初っからそう言えばいいじゃない。確かに初めて抱かれる場所はやっぱりベッドの上が一番よね。いきなりそんなハードなプレイとかハードルが高いし、興味が無いと言えばウソになるけど、そういうのは回数と段階を踏んでからちょっとずつ試す感じでチャレンジした方がいいと思うわ。
「そう言えば、服も変わってるわ。レイシフト中はあのふざけた衣装から着替えれないんじゃなかったかしら?」
正直、バスルームに連れて行ってもらった時は夢見心地だったので脱がせてもらった記憶も着替えさせてもらった記憶も殆ど無いが、今の私の服は洗濯と乾燥をしっかりと行われているふわふわのバスローブである。
いつもの『ハロウィン・プリンセス』とかいう小悪魔コスよりは全然マシ。
「このカプセルハウス(裏名ラブセクハウス)の中ではありとあらゆるコスチュームプレイを楽しむ為に、人間だろうと、英霊だろうと、獣だろうと、身に着ける服は俺の自由自在に選べるんですよ。例えばほらっ」
パチンとグダおが指を鳴らすと――。
「スケスケのネグリジェ!?」
パチン――。
「セーラー服!?」
パチン――。
「バニー!?」
パチン――。
「スリングショット!?わかった!わかったから、もう服を戻してくれていいからっ!」
ひ、紐はまだ……まだ、ハードルが高いわ……!
「とまぁ、この家の中においては俺に心を許してくれている娘達に関しては衣装変えが自由自在という事をわかってもらえたと思います」
「な、何でもアリ、ね……」
「それで、所長……。ちょっとは気が紛れましたか?」
「………………」
まぁ、そうなんだろう。このわけのわからないサーヴァントはこの部屋で私の手を握ってくれていた時からずぅっと私の事を考えてくれている。酒に飲まれて、ウザ絡みして、愚痴を吐き出して、物理的に吐き出しても嫌な顔一つせず私の相手をしてくれた。
「ねぇ、どうして私にそこまで気を使ってくれるの?」
ずっと、聞きたかった事がある。あの冬木の地で死ぬ運命にしか無かった私に手を伸ばしてくれた時から気になっていた。
何故大切な宝具まで使って、私に肉体を与えてくれたのか。そして、今のように事あるごとに私に目をかけてくれるのか。まぁ、見方によってはおちょくられているとも言えるが。それでも、グダおが馬鹿をやって私がツッコミを入れている時は人理修復の責務とか責任とかそういった重みから解放されている気がするの。
コイツがそれを狙ってやっているかどうかはわからないが……。
英霊が人を助けるのは当たり前の事?そんな台詞を吐かれても私は信じられない。だって――。
「自分が助けられるような、そこまで手を伸ばしてもらえるような価値のある人間だと思えないから?」
私の心を読んだかのようにグダおの言葉に返答する。
「だって、だって、今まで時計塔の魔術師だって、カルデアのスタッフだって、普通の人間に褒められた事も無いのに……いきなり人理を救った英霊に救われるだけの価値なんて……私にあるわけないじゃない……!皆、言うのよ!『ただのお飾りの小娘だ』、『相応しい人間が来たらすぐにすげ替えられる』、『カルデアの運営をアレに任せるなんて正気か』って……けど、それも当たり前よね……私は何の結果も残してこなかったんだから……」
「所長は今まで頑張ってきたじゃないか」
「フッ、随分とお優しい言葉を吐くのね。どんなに努力しようが、頑張ろうが、結果を出せなかったら何の意味も無いのよ……」
「そうかなぁ――。そんなに結果が大事?」
偉業を成し遂げて英霊の座に祀り上げられた筈の男から、偉大な結果を残した男からは純粋な疑問符が出ていた。
「『結果だけが全て』というのなら、俺はそんな人類は全て滅ぶべきだと思うよ」
「い、いきなりの暴論ね」
「大事なのは歩み、過程、軌跡であり、その人が歩いてきた旅路にこそ意味がある。結末だけに目を向けるなんてツマラナイ事は俺はしたくないね。過程に意味が無いのなら、この世のあらゆる闘争もじゃんけんで良くね?って話になるし」
ベッドに座っていた私の隣に腰掛ける、やけに距離が近い。さっきはもっと恥ずかしい事をされていたのに、今はそれよりも動悸が激しくなっている。
「こと情事においても結果論で言うなら女の子を抱きました。中出ししました……。で終わってしまうじゃないか。あぁ、なんて情緒の無い表現の仕方だろうか……。向き合う娘の表情、胸、太もも、腹、背中、くびれ、尻、腰、髪、性器、匂い、漏れ出す声に反応や震え、抱き合う過程の中で湧き出る甘美なる交わりを真剣に観察し、表現し、噛み締めるべきだと俺は思う。男女の交わりとは始まりから終わりまで全てを慈しむべきだと!」
「そんな生々しい話なのかしらこれは!?」
「所長はここまで本当に何もしてこなかった?自分は何の努力もしてこなかったって自信を持って言える?有り得ない、所長は誰よりも必死にこのカルデアでもがいて、足掻いて、努力していた筈だよ」
わ、わかったような口を。まるで見てきたかのように……。
「私はねぇ!あなたが思うような立派な人間じゃないのよ!ここで頑張ってきたのだって、人理を救済するとかそんな大層な大義とか無くて、未来の意味とか目的とかそんなものどうでもいい癖に!有能であろうという強迫観念だけに動かされて、トップの座で威張り散らしている……そんな分不相応な小娘なのよ」
隣にいるサーヴァントに、命の恩人に当たり散らすように私は喚く。自分でも最低な事をしているのはわかっている……彼にしているのは只の八つ当たりだ。それでも叫ばずにはいられなかった。こんな醜態を目の当たりにしてもなお、目を逸らさず真剣に私の事を見てくれているグダおに。
「結果がこれよ!腹心の裏切りも見抜けず、スタッフは半分近くが死亡、マスター候補生も一人を残してコールドスリープ状態!私自身が助かったのも藤丸が偶々、あなたを召喚して、そのあなたが何を思ったのか私を助けてくれた……聞こえるの、聞こえるのよ……。死んでいったスタッフ達が『なんで、だ……。なんでお前だけ生き残っているんだ!私達は終わってしまったのに何でお前だけ』って……私が所長になんてなったせいで、むぎゅっ!」
私の癇癪を遮るように、グダおの触り心地良い手が頬を挟んでいた。
「所長、死者の気持ちがわかるのはその当の本人だけだよ。生者が勝手に代弁していいものじゃない」
「でも、でもぉっ……」
まだアルコールが残っているせいか、子供の如く私は泣き腫らし、グダおの胸板に顔を埋め、嗚咽を漏らす。
ポンポンと背中を叩いてくれる彼の気遣いが嬉しくて情けなくて申し訳なくて、私は只々肩を震わせていた。
「ふぅーむ、周りにも原因があるとはいえ、所長の自己評価の低さ、自信の無さは筋金入りだね……。ちょっとこれは荒療治が必要かな」
「ふぇ……?き、きゃっ……」
ドサッと景色が天井とグダおの顔に代わり、背中に柔らかい感謝を感じる。
え、えぇ?うぇええ!?あ、あれ?何で私、押し倒されているの!?何、何?そういう流れ?こうセクシャルでアダルティな感じで慰める流れなの?ま、待って、私今日の下着、大丈夫よね……って……あぁ、そういえばさっき汚れて全部、彼に脱がされたんだっけ……。でもでも待ちなさい心の準備が――――。
「所長の治療にはとびっきりの劇薬が必要だと理解した。某婦長から『良薬口に苦しといいますが、司令官の場合は行き過ぎて毒になる危険性もありますね。まぁ、そうならないように私が管理しますが』とお墨付きをもらっている薬をキメてあげる」
あ、あぁ……覆い被さられて……。
「今からオルガマリー・アニムスフィアを抱く。っていう俺がさっきから貴方を抱きたくて仕方がない。もうマジで好きでペロペロしたくて堪らなくなってる」
「ぺ、ペロペロって……わ、私そんなイイ体してないし、経験も無いし……同情なら――」
「俺が同情で言っているように見える?義務感で押し倒しているように見える?」
わかる……わかってしまう。経験が無い私にも理解出来る程に情欲と親愛の色がベッドに横たわっている私を見る彼の眼に灯っている。
「私、めんどくさいわよ……。自分で言うのも何だけど、本当にめんどくさい性格してるわよ……すぐにヒステリー起こすし、こういう男女の仲の時も気の利いた事も言えないし……貴方みたいな英雄を楽しませるような反応は出来ないわ……」
「いい。俺は所長のそういうポンコツな所とか子供らしく癇癪を起こす所とか、人一倍頑張っている癖にメンタルが弱い所も全部ひっくるめて好きだから……所長は何も考えず、只、あるがままに反応を返してくれるだけでいい。俺はそんなオルガマリー・アニムスフィアが愛おしくて仕方ないから」
疑えない。彼の言葉が、行動が、表情が、全て本気だと私の脳に染み込ませてくる。本気で私をこれから、抱いて、愛してくれるのだと、打算とか同情とかそういうのじゃなくて……さっきまで治療とか言っていたくせに当の本人がその言葉を忘れてしまっているのかと思うぐらいに目の前にいる男は一直線に私への好意を示していた……。
それはこれまで生きてきて中で初めて向けられた感情だった。
性行為自体は知っている……魔術師という面でも、女という面でも。
けど、今シーツをギュッと握りしめ、心臓をバクバクさせている私には未知への恐怖と何故かそれを凌駕する期待があった。
「せめて……電気は消して……」
「ごめん、それは無理」
「な、なんでよっ!……あっ、まっ……んっ――――」
フランスの森にて、野営中に建てられた密閉された特異な空間の中、寝台の上で二つの影が重なった――――。
次回、自分に自信が持てないのなら自信を持てるまで君にラブなんだぜを心体ともにじっくり、ねっとりとわからせてやるカウンセリング回(R18)。
【絶対にイッてはいけない百重の塔 24時】
『ほぉ、ようやく集ったんね。今日からあんたはん達はこの快楽百重塔に挑んでもらう修行僧や、ここでのNGの行為は只一つ……『イく』事、ただそれだけやよ。まぁ、歴史に名を連ねた英雄はんがたがそんな、痴態を晒すような真似はせえへんと思うけど……。ちなみに階を重ねる毎に感度が上がっていくから……きばっていくんやでぇ』
マスターと体を重ね続けた酒呑が新たに得た宝具『精子乱交・淫便鬼毒』で創り出した。快楽百重塔……。
集められた日ノ本の女英霊達……。「楽しいゲーム」としか聞かされず、概要を何も知らないまま訪れてしまった節分大将。
塔の頂上……天辺にある温泉、絶景を楽しみながらマスターと混浴が出来るのは百階まで辿り着いた者だけ。
階を重ねる毎にメンバーに襲いかかる淫劣な仕掛人と罠――。体を癒そうと塔の外にある湯で癒そうとした時、誰かが気づく。嗅ぎなれたこの匂い……! 何度も体の表面と外にかけられたような親近感……! 『にごり湯と聞いていましたが……この湯の中にある白濁はまさか――!』塔の外でも中でも、休める(セクシャルから)場所はどこにも無い。もう枯れていたと思っていた情欲を燃え上がらされてしまう未亡人……。そして裏切り、葛藤、悦楽、笑い、感動……。
快楽の塔の中で揺れ動く女達の淫靡なる長編ドキュメントバラエティ!
21××年 12月31日 公開!
所長本番回の後編に続きます。
何気にオルガマリー所長のエロをハメで書くのは私が初めて? 皆、もっと所長の可愛さを認知して、ほらほら。