※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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新年あけましておめでとうございます。12月は一話しか投稿出来なかっただらしない作者を許して下さいでち。今年だけ……今年だけ頑張った者に来年が来るんだよ……をモットーに2019年は更新速度上がるといいなー(願望)。

グリッドマンとかゴブスレとか青ブタとかゾンビランドサガとかスマブラに加えて残業パーリナイをやってたせいで中々書く時間が無くてね。ごめんね! いや、平成最後に相応しい豊作だったよ今季は(反省ゼロ)。

年末のfate生放送もちゃんと見てたよ、予想通りエルメロイ教室のアニメ化でしたね。さすがにリヨアニメは想像出きんかったわ。けどイキイキとしているオルガマリーちゃんが見れたのでオッケーです。そして何気にキャス狐の初アニメがリヨなのが笑う。

HFも超楽しみです。内容知ってても視聴欲が全く劣らないのもufotableの力なんやなって。訓練された型月兵なら五回は劇場で視聴するべし。僕は英雄王の活躍を全裸待機してます。


カルデアコレクションにて、ケツァル・コアトル(サンタ)、紅閻魔(ママァ)ちゃん更新。






一年以上ぶりの特異点攻略。第五特異点、久々の英霊編です。お待たせして、申し訳ない。



週刊性年インボウマガジン①(第5章)

 五つ目の特異点。独立戦争時代の北米大陸。

 

 現代社会において世界の中心たるユナイテッド・ステイツ。その覇権を巡り、アメリカの歴代大統領達と霊基を合成させた大統王エジソン率いる合衆国軍とコノートの女王メイヴが率いるケルト軍がぶつかり合った。

 

 コサラの王ラーマ、施しの英雄カルナ、授かりの英雄アルジュナ、聖杯の力によって歪められた凶王クー・フーリン、影の国の女王スカサハを始めとする神話の時代の英傑達。

 

 まさに北米神話大戦の名に相応しい錚々たる英霊達が揃っていた。

 

 各々、思惑はあれど、英霊として全力で戦った。それが本来辿るべき筈だった道。

 

 

 だが、そこに特大の異物が注入されればどうなる?それは媚薬どころか劇薬という言葉すら生優しい最悪の欲情魔神。

 

 七十二柱の魔神柱、魔神王ゲーティア全てを取り込んだ究極変態体、ビーストⅢ/ラプチャー。殺生院キアラ。

 

 

 

 歯車が外れた音が聞こえる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、藤丸立香!献血のボランティアとホイホイ怪しそうな人に付いていったら、いきなり極寒の雪山に連れてこられたの。わけもわからず、世界を救うマスターの一人になったと思ったら、爆発で私以外のマスターは全滅!愛しの後輩と共に冬木で初めて召喚したのは同年代っぽい黒髪サーヴァント!一見、人畜無害に見えるかもしれないが、こいつが大の問題児。アーサー王はセクハラで消滅させるは、竜の魔女はセクハラで消滅させるわ。私より先に所長に手を出すわ。ポンポンお嫁さん連れてくるわ、守備範囲が広すぎるわで、ツッコミが追いつかない私は血圧が上昇中!立香、困っちゃうよぉ。

 それでも、ラブホもどきのカプセルテントでキャンプしたり、ローマでアイドルやったり、大海原で人工呼吸されたり、ロンドンで頭のおかしい淫乱メンヘラ女に絡まれたりしたけど、元気に人理修復やってます!

 

 そんなロンドンから帰ってきた私に待っていたのは、ビーストおばさんからの薄い本的な展開!でもでもやっぱりグダおが助けてくれたのでハッピーエンド。二人は幸せなセックスをして終了!の筈だったんだけど――。

 

 

 

 

 

 

『というわけで、五つ目の特異点、アメリカ大陸にレイシフトしたわけど……あの――、立香君、もしかしなくても機嫌悪い?』

 

「べつにぃ、悪くないですけどぉ。精神患者の如く、隔離させられて、メディカルチェックさせられて、そしてそのまま自分のサーヴァントとのスキンシップもままならないまま、レイシフトさせられて思う所はまるでありませんけどぉ……」

 

 結局、淫獄塔で助けられてから、私とグダ男は肌を重ねていない。心の処女はグダ男に授けたけれども、未だ体は穢れを知らない未通女。体と心の処女を両方捨ててこそ、一人前のマスターだと思うの。

 妬ましい、乙女の恋路を邪魔してくれたドクター達が妬ましい……。

 

『おぉう、なんと恨みがましい目線……』

 

『けれど、往来の場であんな発言をしてくれた立香ちゃんにも問題があると思うよ?ビースト/ラプチャーが乗り移ったのではと心配しても致し方ないでしょう』

 

「正論だけれども!それでもさ!恋する女の子には止められないパトスが出ちゃう時があるんだよ!」

 

「先輩の顔が凄く切実です……!」

 

『接触禁止令が解除されたマリーとグダ男君の距離がやたらと近いのも彼女の不機嫌に拍車をかけているのかもしれないね』

 

 そうそれ!

 

 そんなこんなで西部劇に出てきそうな如何にもな感じの荒野のど真ん中にレイシフトした私達。そしてすぐに状況確認をしようとした相も変わらずドスケベ衣装の所長は立ち振る舞いだけは凛とした状態で何やら魔術的な結界を用いつつ辺りを調べているが……その腕はこれでもかってぐらいにグダおの腕絡み付いている。

 

 グダおの格好はローマの時と同じく黒スーツの上にジャケットを羽織り、マフィアが被るようなつばが一周している帽子を被っていてぶっちゃけ極道か何かにしか見えない。コイツ、サーヴァントなのに服装が本当自由だよね。ゴッドファーザー気取りなのかな?いや、子だくさんという意味ではゴッド父親(ファーザー)なんだろうけど。

 

「ほら立香、いつまでもわけのわからない事言ってないで周囲を警戒しなさい。マシュとグダ男のマスターは貴女なんだから」

 

「卑しい、権力者の色じかけ、卑しい……」

 

「何の話よ?」

 

「無自覚とは、なおの事卑しい!」

 

『もう立香ちゃんには鎮静剤でも打った方がいいんじゃないのかな』

 

 いやまじで本当ズルいと思う。そんな露出度の高い格好で谷間でぽよんぽよんて。ていうかグダ男もグダ男だ。確かに接触禁止令を出された所長を気に掛ける気持ちはわからないでもないけど、ここに生理かってぐらい精神が荒ぶっている女の子がいるんだよ?このままだと特異点攻略にも支障が出ちゃうよ?マスターのメンタルもケアして欲しい。いいじゃん、所長は今まで散々ズコバコやってきたんでしょ?私なんてまだ一回じゃん。しかも精神世界の話だし。ってこれ下手すれば妄想の中でグダ男とヤりましたって言ってる相当痛い女になってる気がするもん。

 

「マスター」

 

 そんな私の思考を察したのか、彼が差し出したのは所長が掴んでいない右手。

 

「…………何さ」

 

「おいで」

 

 私は何も言わず、彼の手を全力で握った。やっぱサーヴァントとマスターは近くにいてこそだもんね。

 

『恐ろしく早い動き、私じゃなければ見逃しちゃうね』

 

 うるさい、ダ・ヴィンチちゃん。

 

「え、えーと私は」

 

 所長と私を見て、逡巡しているマシュ。サーヴァントとしては警戒に全力を尽くすのが正解なんだけど、私は彼女を仲間外れにするつもりはなかった。マシュだって私の大事な後輩なんだから。

 

「はい、マシュ」

 

「先輩……。で、では失礼します」

 

 きゅっと控えめに手を握ってくれる後輩の何と愛らしい事か。何だかんだでカルデアカルテット、いい感じに収まっているのでは?

 

『お手手を繋いで人理修復かぁ。何だろうね、これ』

 

『仲良き事は美しき哉だよ。レオナルド』

 

『そういえば、女の子の友情って男で簡単に崩れる時もあるよね』

 

『今言う必要あるかい、それ?……って何だ、この反応!?』

 

「どうしたのドクター?またお得意のワイバーン芸?」

 

『いや、ここ最近は言ってないでしょ!そんな事よりも警戒態勢!不特定多数の敵性反応がそっちに近づいている!!』

 

 ロマンの切羽詰まった声と共に地響きが聞こえ、前方に土煙が立ち込めていた。未だ、私達とは距離があるが土煙の中にいるであろう()()かは確実に私達の方へと近づいていた。

 前衛にマシュ・グダお、後衛に私と所長とスタンダードなフォーメーションを取った私達はドクターの指示通り、警戒を続ける。

 

 ここが特異点である以上、時代を乱す()()()()()()()()がいる筈なのだ。敵であれ、味方であれ、まずはそこから見極めなければならない。

 

「グダお……もしかして、貴方の言っていたケルト兵とかかしら?」

 

「いや、どうだろう?ゲーティアがラプチャーに取り込まれた以上、本来の道筋とは外れているし、俺の世界線の話もあんまりアテにはならないからなー」

 

『この北米大陸にケルト兵?もしかしなくても、所長はグダお君からこの特異点の展開を聞いてたりするのかな?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの鋭い指摘に所長は耳まで紅く染めて、そっぽを向いた。おいこっち向けドスケベプリンセス。そもそもグダおは自分が知っている人理修復の事については話すつもりは無かったのでは?

 

「あ――……ほら、ね?怖がりなオルガマリーにベッドで甘えられちゃったら、ポロっと漏らしても男として仕方ないというかさ……あ――痛い!マスターからの愛が地味に痛い!」

 

 目の前の色ボケサーヴァントの背中の皮を服の上から万力の如く摘まむ。とまぁ、こんな微笑ましいやり取りを挟みつつもようやくドクターが言う敵性反応が視認出来る距離まで近づいてきた。

 

 それは所長が言っていたケルト兵なのか――。

 

『な、なんだ、あれは……!?』

 

 ドクターが言葉を失うのも無理は無い。それは辛うじて人の体を成しているナニかだった。

 纏っている鎧と持っている槍で()は兵士だったという事は推測出来る。

 だが、その集団を構成する一人一人に人間としての共通性は無かった。

 

 肩から肥大化した黒い肉塊が腕の代わりになっているモノ。腰から下が蛸のような触手で足の代わりになっているモノ。明らかに体のバランスが狂っている腫れたように肥大化した顔を持っているモノ。

 

 私はそんなクリチャー達を見て、第三、第四特異点で見た『魔神柱』を何故か思い出した。人間と魔神柱が無理くり繋ぎ合わされているそんな印象を受ける。

 

「ひぃっ!け、ケルト兵って、あんな異星人みたいな見た目だったの!?野蛮ってレベルじゃないわよ!」

 

「野蛮って所は否定しないけどさすがにあれは普通のケルト兵じゃないね……もしかしなくても第三者の手が加えられていると思う」

 

「先輩、所長!下がってください!敵性勢力、有無を言わさずこちらに一直線に向かってきます!」

 

 さすがに珍しく気丈に振る舞っていた所長もあんなSAN値が下がりそうな光景を見てしまってはいつも通りのテンパリ恋愛雑魚卑女に戻ってしまっている。

 まぁ、私もあの怪物の軍勢を見ていると何故か淫獄塔で囚われた時の事を思い出してしまう。正直な所、嫌な予感しかしない。

 

 一応、声帯は存在するのか、鳴き声のようなものを発して私達に近づいてくる。

 

 

 

 ――キアラちゃん、サイコー!

 ――キアラちゃん、サイコー!

 ――キアラちゃん、サイコー!

 

 

 

 うわぁ。

 

 

 

 今、カルデアメンバー全員の心の声が一つになった気がする。

 

「グダお!」

 

「了解!汚物は消毒だぜ、ヒャッハー!!」

 

 相思相愛のパートナー、私が言葉に出さなくとも意図を察してくれたグダおは宝具『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』を展開。空中の波紋から何かを取り出す。

 

「鬼救阿、お借りする!カモン!護法少女式大ビョウタン!」

 

 現れたそれは私の体と同じくらいのサイズの巨大な瓢箪だった。グダおは飲み口をクリチャー共に向けて、それを大砲のように構えた。おにきゅあって何だ、プリキュアの次回作か?

 

「俺達が本隊だ!!模倣(まねっこ)宝具!『千紫万紅 神便鬼毒』!」

 

 どういう原理かは全く不明だが、噴水の如く勢い良く噴き出した液体がこちらに襲いかかろうとしてきた汚物達を押し流していく。ていうか、何か酒臭い……。

 

『分析が完了したけど、ただの酒じゃないみたいだねそれ。呪いと毒もえげつない程に混ざり合ってるよ。現にほら』

 

「はい!グダおさんの宝具によって敵性勢力の動きが鈍っています。中には肉体が溶け、消滅しかけている者も!」

 

 ダ・ヴィンチちゃんとマシュの言葉通り、グダおのアルコールスプラッシュによって出来た水溜りにどっぷり使っている怪物達は酔っ払ったようにふらつきながら、溶解していってる。だが、それも全てではない。何体かはまだ戦意を滾らせて、踏み出そうとしている。

 

「ケルト兵というかサーヴァントでも無いそこら辺の雑魚なら今ので溶けてる筈なんだけど……。やっぱり魔神柱でも混ぜたのかな、あの尼さんは……。オルガマリー、後はお願い!」

 

「ちょっと今ポロっと無視出来ない情報漏らさなかった!?……Anfang(セット)……!」

 

 気になる事はあるけども、そこは一応組織のトップ。優先事項を間違えず、半泣きになりつつも指先に魔力を込める。

 

Liebe(恋のように)――Brennen(燃えろ)

 

 所長の人差し指から放たれた紅い光弾は酒の海に着火した。

 

「Agaaaaaaaaaaaaaa!!!?」

 

 アルコールは良く燃える。辺り一面に広がる火の海とその中で踊る怪物達。何と汚いキャンプファイアーか。

 

「所長ってば今の格好も相まって、本当に悪魔みたく見えてきました」

 

 それにあのハート型の糞ダサビームも止めたんですね。なんだか初めて所長の魔術師っぽい所見た気がする。

 

「好きでこの格好してるわけじゃないのよ!私ももっとまともな格好でレイシフト出来るならやってるわよ!わかってて言ってるでしょう貴方!」

 

「ふぅいふぁふぇん」

 

 炭になったクリチャー達をバックに私の頬を伸ばす所長。羞恥と怒りに染まった彼女のそんな顔を見ながら、コンビプレイで直接グダおと一緒に戦える所長がちょっぴり羨ましい立香ちゃんなのであった。

 

 きっと、あの女。殺生院キアラはまだグダおの事は諦めていない。この特異点でも間違いなくちょっかいをかけてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負傷者を急いで運べ!傷の度合いによって搬送するテントを分けろ!」

 

「重傷者はなるべく同じテントだ!手が足りん、軽傷者も動ける者は手を貸してくれ!」

 

 

 北米大陸の西側。前線より離れた後方基地。戦場ではなくとも、怒号と血の匂いが生々しく感じられる。

 合衆国軍の兵士達が慌ただしく駆けている中で一際目立つ存在があった。橙色の長髪をなびかせている一人の少年の姿があった。

 

 胸も抉られてはおらず、軽いとは言えないが擦り傷程度で自らの足で立っているサーヴァントがいた。

 

 カルデアのメンバーが来る前にこの地に召喚されたコサラの王、セイバーのサーヴァント、ラーマ。

 

 彼はここに来る前に死地を経験していた。

 

「おい、アンタ確か、『狂竜』と出くわしたってな?よく無事でいられたな……サーヴァントってのはそんなに頑丈なもんなのか?」

 

「『狂竜』?あぁ、あの黒い鎧を纏ったサーヴァントか。いや、あの雰囲気はサーヴァントとすら言えんな、もっと悍ましいナニか。しかし、『狂竜』という名前なのか、アレは」

 

「さぁな。明確な名称があるとも思えん。『狂竜』が通った街は草木も一切残らず屠殺されてる。災害みてぇにな。近くで見た奴なんて誰もいねぇ、戦ってる奴は皆死んじまってるからな。偶々遠目で眺めて生き残った奴らの噂が一人歩きしてんだろうさ」

 

 一人の兵士がラーマに語りかけていた。

 その男が言う『狂竜』とやらはラーマがここに来る前に戦った正真正銘の怪物の事だろう。

 

「運が良かっただけだ。余一人だけだったのなら、『狂竜』とやらに屠られた犠牲者に名を連ねていただろう……」

 

 生前、神仏にすら匹敵する魔王ラーヴァナを打ち倒した自信家のラーマにすらそう言わしめる『狂竜』の恐ろしさ。彼は思い返す。あの狂った竜と戦った時の事を。

 

 竜と言ってもドラゴンではなく、ダイナソーだったが。

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

「くっ、滅茶苦茶過ぎる!」

 

 ガトリングのように弾幕を張った紅い死槍の群れがラーマに降り注ぐ。一弾、一弾が一撃必殺。武人としての矜持さえ、かなぐり捨てて逃げる事だけに専念しなければならない怒涛の死撃。

 

 避けて、ブラフマーストラで捌き、転がるようにして敵の射程範囲から必死に逃れる。防ぐ為に最初に使っていた棍棒モーダキーとシカリーは既に粉砕された。

 

 漸く、攻撃が止み、一呼吸の瞬間。ラーマとその怪物が相対している荒野には他の生命は存在しなかった。墓標のように突き刺さっている紅槍が並び、人の死体と機械兵の残骸が散らばっている。

 

 サーヴァントでありながら、誰一人として守れなかった事を歯がゆく思い、泥と傷だらけになりながらも、戦意だけは失わないように敵を見据えるラーマ。

 

 

「ZIAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 四足歩行で立つ黒いソレをラーマは英霊とはとてもじゃないが思えなかった。

 

 全身を包んでいる魔獣のような黒い鎧。血のような赤い紋様が全身を巡っていて蠢動している。爪と角は攻撃に使っている槍と同じく紅く強大で、肘、膝、肩から生えている赤黒の巨大な触手は今まで散々戦ってきた敵の兵士達に結合していた黒い肉塊と酷似していた。三本ある尻尾は4M程あり、別の意思を持ったかのように蠢いている。

 

 今も吠えている口内からはやはり槍と同じ色の赤い牙しか見えなかった。

 

「ええい、くそっ!昔を思い出すな全く!せめてサーヴァントの身ではなく生身であったのなら!」

 

 そんな彼らしからぬ泣き言が出てしまうのも致し方無い事。距離を離せば、途方も無い程の量を持つ槍の雨が飛来し、ならば近距離と接近戦に持ち込めば爪と全身の触手に加えて尻尾と二本の腕では捌ききれない連撃が襲いかかる。正直ズルいだろうとラーマは弱音を吐きたくなる。

 

「DAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

「しまっ……」

 

 そんな彼の隙を突くように『狂竜』の開いた口に紅い光が収束している。遠距離攻撃が槍だけだと思っていたラーマは回避行動が完全に遅れた。放たれた一筋のレーザー、それがルーン魔術で編まれている物だと死を覚悟したラーマは知る由も無い。

 

『狂竜』の元となった者のルーン魔術と無理矢理混ぜられたナニかが合わさった死の砲撃がラーマに迫ろうとした瞬間――。

 

 ラーマの背後から救いの一射が飛んでいた。

 

 まるで祝福のような暖かい光を帯びたその矢はラーマにどこか既視感を覚えさせながらも初めて見るような不思議な感覚を抱かせた。

 

 橙の矢と紅いレーザーは正面からぶつかり合い互いを相殺させていた。

 余波でその身を投げ出されたラーマはグルグルと回る視界の中で確かにそれを見た。

 

 

 ――穢れを知らない白き花嫁衣装。

 

 ――本来の使い方であるブラフマーストラと似た弓を持つ少女。

 

 ――ヴェールから覗かせた自身と同じ色の髪。

 

 

 そしてうっすらと、だが確実に見えたその顔は戦いの最中だというのにラーマに綺麗という感想しか抱かせなかった。

 

「シータ……?」

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 ラーマの戦いの記憶はここで途切れている。目覚めたのはこの後方基地のテントだった。お目覚め早々、頭のおかしい看護師に切断されそうになったのは苦い思い出だったが。

 

「他の患者に早く場所を譲りなさい。この戦地で無駄に出来る場所は1マイクロメートルもありません」

 

 結局、大した傷が無いとわかった段階で早々に叩き出されて今に至るのだが。

 

「さて、余はもう行く。ここにいても大して力になれなそうでないのでな、世話になった恩は戦場で報いるとしよう」

 

「オイオイ、噂の化け物と戦って戦意がまだ折れてないのかよアンタ……」

 

「ふっ、それ以上の希望をもらったのだ。さすがに勝算も無く、『狂竜』に挑む事はもうせん。余は臆病ではないが蛮勇でも無い。だが他の醜兵共は仕留めさせてもらうぞ」

 

 剣を担ぎ、戦場に赴こうとするラーマの脳裏にはあの光景が焼き付いている。思い出せば高鳴る胸の鼓動と頬の熱。今すぐに会って抱きしめたい衝動。見間違えるわけが無い。どういう理由があってあれ程の力を持ったのかはわからないが、それでも――。

 

「もう一度、もう一度余は君に会いに行くぞ、シータ」

 

 その為にはまずこの世界を平和にする事から始めなければならない。幼き少年王は熱き決意を宿し、再び死地へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※シータは現在、アルカトラズ島に囚われの身です。













先の展開について聞かれても基本的にノーコメントしか答えれんから!まぁ、私の作品って奇をてらってない王道故、分かりやすいし仕方ないよネ。
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