話、変わるけど剣豪のコミカライズは凄いぞ、画力もそうだけどFate好きじゃないと書けないなぁという愛が伝わってくる。一話は無料だからスマホでチェックだ!(ダイマ)。
カルデアコレクションにて美遊、エルキドゥを更新。
未だ芽吹く事のない巨大な蕾あるいは地表に顔を出した球根。
「結局、これは何なんだろうなぁ……」
「薄気味悪くてしょうがねぇ」
球根の表面には赤い眼球のような球体がいくつも浮かんでいた。黒く巨大な球根が街の中心に我が物顔で鎮座している。大体、家屋三軒分の大きさを持つ球根は特に何かをするわけでもなく、ケルト兵が狂い始めた時期からいつの間にか出現していた。
「撃っても、斬っても、ビクともしねぇ。カルナさんの炎でもピンピンしてやがった」
「攻撃してくるわけでもなし、かといって無視も出来ない」
「ったく、ただでさえ人員が足りねぇって時に」
合衆国軍の兵士達は溜息まじりに黒い球根を交代で見張っていた。街の住民は気味悪がって一切近づこうとはしない。見張りの兵士達も好き好んで近づきたいワケもないが、放置は出来ない。大統王の命の下、少しでも異変があったら報告するように警戒しているのだから。
「これも立派な仕事だ。ここ最近はサーヴァントってえらく強い連中が何人も味方してくれて、やっと戦況が好転してきた頃なんだ。下らねぇ事でケチがつかねぇように俺等もきばらねぇといけないだろ」
直接的な実害は出ていない。それでも心底不気味だ。
まるで合衆国軍の本拠地であるデンバーを囲むように5つの地点にその球根は生えているのだから。
「素晴らしい……」
私が花嫁な男の娘にナイスな挨拶をかましてしまって所長に怒られた後……合衆国軍の後方基地まで移動した私達が出会ったのは世界一有名な看護師ナイチンゲールだった。
そしてそんな白衣の天使にグダおが贈ったのはかつてオルレアンで私達が野営に使用したカプセルハウスという名の簡易テント式ラブホテル。所長がグダおに初めてを卑しくも私に先んじて奪わせたという忌まわしきラブホテル。
何でこいつこんなに持ってるの?という私達の疑問をよそにドラえもんよろしく百個に届くカプセルラブホテルをぽんぽん出現させる。
「人手も医療用具も何もかも足りない状況でしたが、私が一番ネックとしていたのは衛生面についてでした。貴方に感謝をMr.グダお。これほどまでに清潔な病室をここまで多く与えて頂けるとは」
病室じゃなくてラブホなんですけどね。見たくなかったよ……。教科書にも載っている偉人がラブホテルの乱立に心を弾ませている光景なんて。でもここで私が野暮なツッコミをしてもナイチンゲールさんは聞いてくれなさそう。基本的に人の話を聞かないオーラーがあるもん。さすがバーサーカー。
「忌むべきは黴菌と細菌。治りかけの患者だったとしても不衛生な所に長時間伏せていれば、全ての治療が無意味になります。清潔なシーツに適温環境。貴方のような宝具を使う方がこれからもっと増えてくれればいいのですが」
何人もいてたまるか、ラブホテルが宝具の英霊なんて。そんなもんが座に溢れる人類史なんて滅んでしまえ。
「回転するベッドは重傷な患者の体を動かさずに治療を行う事が出来ます。冷蔵庫の中に大量の消毒液が入っているのも非常に助かります。Mr.グダお、貴方はこの戦場に何が足りないかを示し、提供して下さいました。きっと私と同じ道に進んでいた英霊なのかもしれませんね」
満足気な所すみません婦長。それ、消毒液じゃなくてローションなんです。そしてコイツが得意なのは保健体育ぐらいです……。そもそも未だに闇世界の頭領みたいな格好しているコイツを見て、どうしてそんな感想を抱いてしまうのか。
言いたい事は言ったのかすぐさま患者の治療に戻っていったナイチンゲール。本人にその気が無くても、もしあんな美人さんにローションまみれの手で体を洗われてしまったら性癖が今後歪みそうな気もするんですけど……。
「先輩、グダおさんが何故かナイチンゲールさんを見て微笑ましくも懐かしい感じの瞳になっているのですが……」
「大方、自分の世界のナイチンゲールさんとの初体験でも思い出しているんじゃないの?治療と称してローションまみれのダイナマイトボディを好き放題したんでしょ」
「先輩の察しが良過ぎます!?」
「残念マスター、ローションではなくボディソープなのだ」
「あぁん!?それがどうしたぁっ!!」
ならそのボディとやらで悠久の大地に放り出され、汚れた私の体も洗って欲しい!そして欲望の赴くまま保健体育の授業に勤しんで欲しい!だってこんなにラブホテルもどきがあるなら一個ぐらいいいじゃない!……そう叫びたい気持ちをグッと堪えた。さすがに怪我人を押し退けて性行為を優先するようなあの快楽天みたいな真似はしない。
大丈夫、この特異点を修復してから……修復したらワンチャンどころじゃないメニーチャンスが私に……。
「治療は彼女の本分。適材適所、余達は余達に出来る事をしようマスター」
性別詐欺の花嫁ラーマ君が私と若干距離を保ちながら、グダおに提案していると兵士の人達が急にザワつき始めていた。彼等の視線の先を追うと、フラフラ空中から銀色の飛行物体が近づいていた。大きさ的にはマシュの盾と同じぐらい?
「先輩、UFOです!UFO!さすがは未確認飛行物体の発見が多いと言われている北アメリカ大陸!こんな近くで見る事が出来るとは!」
あぁ、もう瞳を輝かせている後輩は可愛いなぁもう。
警戒している他のサーヴァント達にグダおが「大丈夫」と呟き、手を挙げるとその小型UFOからプロジェクトのように光が照射され、モニターが映し出された。
『レムリア!(挨拶)』
「ハイアラキ!(挨拶)」
グダおと軽快に意味不明な挨拶を交わす露出度が高い軍服姿の女性。まぁ、例の如く彼女も彼のお嫁さんなのだろう。抱っこ紐で彼女の腰に抱かれた二人の赤ん坊が「れむりあぁ」「はいらきぃ」ってグダおに向かって小さく手を振っていると彼の顔がだらしないぐらいに緩んでいた。
多分、私達も頬を緩めていたかもしれない、だって滅茶苦茶可愛いもん。いいなー、子供、いいなー、欲しいなー。
……うん?後ろにも何人か映ってるな……?
『世界が変わっても私は子供を作る事はないと思ってたのに……。そもそもマハトマ一筋だし私、色恋沙汰に現を抜かさないで自分の夢を追い求めただけだもん。体つきが大人っぽくなってる事とか、子供と旦那の生活を幸せそうに語る自分に対して思う事は何も無いんだから』
『おい、凡骨。既に通信が始まっているのにエレナ君が帰ってこないぞ。ここは既婚者の貴様が慰めの言葉でもくれてやった方がいいのでは』
『デリケートな場面で私を押し出そうとするんじゃないよ、すっとんきょう。貴様が行けばいいだろう』
『私、童貞だから、女性の心の機微ワカリマセン』
肩を落とし、目を濁らせている女性の周りで困り果てている様子な大男が二人。一人はロンドンで滅茶苦茶高笑いしてた人じゃないですか。で、もう一人は顔がライオン?……なんだろう、グダおのせいで訓練されている私達はもうこれぐらいじゃ、驚かなくなってきた。
「あの二人、どこか似ていますね。もしかして、姉妹でしょうか?」
「いえマシュ、発育の面が見れば母娘の可能性もあるわ」
『ぐふっ』
何気ないマシュと所長の推察が彼女を傷つけた。
『あぁ!いけない!エレナ女史の目から光が失わている!!助けてカルナ君!!』
『気にする事はないエレナ・ブラヴァツキー。別世界のお前は女としての幸せと自身の夢の両方を掴んだ。そしてお前は後者だけを選んだ。愛も恋も家族の営みも捨てて、探求心の赴くままに自身の夢に独り身で邁進するその様は正常な女性では決して真似出来ない生き方だ。驚愕に値する』
『ふぇええええぇんっ!!』
『だからカルナ君、手心おぉ!!』
『あぁ、マスターちょっと落ち着いてからまた連絡するわ』
「わかったよエレナ。あんまり無理しないで……また、後で」
本職の赤ん坊よりもガチ泣きする少女、その周りで狼狽する男衆。そんなカオスな背景をバックに弱った顔をしつつもどこか母性を感じるエレナと呼ばれた彼女の言葉を最後にモニターは消えた。
……結局、あの人達は何しに来たの?
「詳しい事情はわからないが……今、投影されたのが君の仲間だというのなら、役者は揃った。我々の目的はもはやすれ違う事は無い……。そういう解釈でいいのかな?異世界からの訪問者よ」
「うん、話が早くて助かるよジェロニモさん」
待て待て、勝手に自己完結してマスターを置いてけぼりにしないで欲しい。マシュやエリちゃんも疑問符を浮かべたままだ。私には赤ん坊よりも幼児退行して泣き出した少女の印象しか残ってないんだけど。グダお、グダお、もっとマスターとこみゅにけぇしょんとって。
「そうさね……。立香とカルデアは人理そのもの修復が目的だよね?一つの国だけ助かればいいなんて考えはない筈。じゃないと人理継続保障機関なんて名乗ってないしね」
「えへへ、立香、立香……えへ、えへへへ……」
『あー、好きな人に名前を呼ばれただけでトリップしているチョロ過ぎ立香ちゃんの為に後はこの天才が説明を引き継ごう。所長がグダお君をハニトラにかけて得た彼の世界線における北アメリカ大陸の特異点について既に万能の擬人化でもある私はこの基地に来る前に彼女からしっかりと聞き出しているからね』
「ハニトラじゃないもん、純愛だもん」
『う――ん、ウチの唯一のマスターと実質トップが揃いも揃って色ボケしてて不安しか無いね!』
『はいロマン、余計な茶々を入れない』
ダ・ヴィンチちゃんの話をまとめると合衆国軍のトップであるエジソンは私達が来る前からケルト軍とは戦っていたけれど、人理を修復する気は無く、聖杯の力を使ってこのアメリカだけを人理焼却から守るつもりだったらしい。だけれども、ケルト兵が得体の知れない化け物になったせいか、あるいは他に要因があったのかは不明だが、ああしてグダおの嫁さんが合衆国軍の本拠地から連絡を寄越す事が出来たという事は彼も人理修復に力を貸す気になった証明だと。
「オカン属性が上限突破しているエレナの前でアメリカだけ助かればいいなんて世迷言吐いたら、間違いなく
そっかそっか、あのライオンフェイスがエジソンのなのか――。エジソンはライオン人間、そんなの常識ってまる子ちゃんも教えてくれなかったよ。
というわけで膨大な兵力と何騎かのサーヴァントを保有するエジソン軍とカルデアが手を結べるとわかった以上、今まで防戦一方だったこっちが敵の本拠地に攻め込む事が出来るらしい。
「トップサーヴァントですら相手をするのに骨が折れる『狂竜』。だがそれを抑えるだけの頭数を揃える事が出来た。後はワシントンにいるであろうその殺生院キアラの元に唯一勝機があるグダおを連れて行く事が我々のミッションというわけだ」
「何故、敵の本拠地がワシントンに?」
疑問に思った所長がジェロニモさんに問いかけた。
「国家という存在に最も屈辱を与える為には何をすればいい?首都を奪う事さ。だが、理由はそれだけではない。ロビン」
「ハイハイっと、そこからは俺が引き継ぎますよ。あの奇声を上げる不気味な怪物共が出現してからか?単独で『狂竜』に見つからないように北米大陸の東部を偵察していた俺は天まで届きそうな黒い不気味な樹木……いやあれを樹っていうのは自然に失礼か、ともかく黒くてウネウネした太いモノが生えているのを発見したワケですよ」
『それは魔神ケルト兵の肉体に融合しているの似たようなものだったかい?』
ダ・ヴィンチちゃんの問いにロビンフッドは首肯した。
「方角は間違いなくワシントンでしたよ。何キロも離れている距離からでもはっきりとわかったんだ。ケルト兵が狂うまでは無かったあんな馬鹿デカい物体が無関係とはオレには思えないですからねぇ」
「うん、私もそこにあの女がいると思う」
確信をもって、私も彼等の意見に賛同した。
人前で恥ずかしげも無くオナニーするようなイッちまってる女だ。自分の本拠地に魔神柱を材料に黒くて太くて卑猥なモノを生やして悦に浸るぐらいしても別段おかしくない。
「なら、さっさとワシントンに向かいたいわね。今、この瞬間にもその『狂竜』に遭遇しないとも限らないもの」
「オレはあのお嬢さん……うん、まぁお嬢さん、お嬢さんでいいや。お嬢さん(?)がいれば問題無いと思いますけどねぇ。一射放つだけで奴さんが塵のように吹き飛んでるじゃない。格好といい、インド神話の英霊ってのはぶっ飛んでますわ。つーかジェロニモのおっさん、これってオレらいるの?」
引き気味にロビンが視線を向ければ、轟音や突風と共にケルト魔神兵の方々が「キアラちゃんサイコー!」と最悪の断末魔をあげて、性別詐欺花嫁の弓の餌食になっていた。
弓を構え、弦を引き絞り、矢を放つ。真っ当な弓兵としての動作に一切の澱みが無い正統派のアーチャー。そして敵軍に着弾を確認したら、グダおの方を見て、照れ気味に手を振る。…………うん、最後のは別にいらないよね(半ギレ)?
「戦ってる姿も絵になってる。非の打ち所が無い可愛さだ」
「こら、今の余は戦士だ。可愛いではなく、勇ましいと言え。ふふん、だが見惚れる分には構わないがな!」
「おいオタクのマスター、隣でフグみたいになってますけど」
「こうやって頬を突いて、空気を抜けさせればいいのさ」
ぷしゅぅるぅ。
「あ、先輩の機嫌が上昇しました」
「とりあえず、構ってもらえればいいのね……」
結局、私達はもう一度、謎の小型UFOからエレナさんの連絡が来るまではこの世界の兵士さん達の負担を軽くする為にキアラちゃんファンクラブの処理に勤しむ事にしたのだった。まぁ……だが男だ君一人でもオーバーキルなので私達がこうして今後の展望を話し合えるわけなのですが。
ちなみにネロとエリちゃんは「ボイストレーニングしてくる!」と別行動、魔神ケルト兵相手にその美声を披露しているだろう。婦長さんは絶賛治療中。
あちらの合衆国軍の正規サーヴァントとジェロニモさん組の野良サーヴァントに私達カルデア組で編成次第、すぐにワシントンを目指すらしい。
そして恐らく、『狂竜』の対応にあたるのはグダおの奥さん達。ボーイズブライド君の話によると一度交戦はしているらしい。
「この世界の余を助ける時だったな。余の弓は確かに貫いた――だが間違いなく生きている。甦ったとでもいうべきか、『狂竜』のスキルか、それとも愛欲の獣が付与したものかどうかまでは不明だがな」
「『武の祝福』と『花嫁の祝福』に加えて神父役をしてくれた翁さんの『鐘の祝福』を授かっているラーマの不滅の刃をまともに喰らって生きているとは思えないけどね、ヘラクレスみたいにガッツスキルかな?」
ちょっと何言ってるかよくわからないです。
「う――ん、土煙で汚れちゃわない?ウエディングドレス」
「これは余がマスターとシータの妻になった事を証明する思い出の品。THE・勝負服だからな気持ちステータス補正がかかってる気がするのだ」
「ま、汚れたら後で綺麗にするよ」
「ふふ、マスターの白で上書きしてくれるのか?」
あぁ、あぁっ!あああぁぁっ――!私も花嫁型の魔術礼装が欲しいなぁ!エヴァもどきとかホグワーツもどきじゃない女の子を夢を詰め込んだ服が欲しいなぁ!カルデアならそれぐらい作れるんじゃないの!?
「先輩のバイタルが荒ぶってます!!」
「着替えれるだけいいじゃないの……」
「酷い目にあった……」
東部戦線での戦働きを終え、未だ鼓膜に鳴り響いている凶音に顔を顰めつつも後方基地に余は帰ってきた。
カルデアなる組織の者達の中に花嫁姿の女の子を見たという情報を受けて余は一目散にその彼女がいる戦場へと駆け出した。
――花嫁姿?あぁ、いたいた真っ白のウエディングドレスの娘がなぁ、えらい別嬪さんだったぞ。どこ?やけにリアルな角と尻尾をつけたサーカスにいそうな女の子と一緒にあっちの方へ……。
「確かに花嫁姿ではあったけれども……」
――おぉ、そんな汗だくになってまで余達の元までやってくるとは……。
――さては、アナタ、私達のファンね!ボエ~~~~!!
そこからはあまり覚えていない。味方の鼓舞がデバフになる状態で戦うという貴重な経験を終えた余は珍妙な雰囲気を醸し出すかつ堅固なテントが最近になって大量に建てられた後方基地の中を歩く。ピンクの光が眩しい。
「人違いであったか……」
シータよ……やはり余達は出会えない運命なのか。
薄れゆく意識の中で見た君の晴れ姿。未だ余の瞳に焼き付いて離れない。贅沢は言わない……たった一言でもいい。君と言葉を交わしたい。愛の囁きでも、感謝の言葉でも、生前叶う事のなかった続きを余は――。
「ん?あれは……まさか……」
だからここで引き返していればよかったのだ。余計な事を考えず戦士としてサーヴァントとしての責務だけを果たしていればよかったのだ。
あぁ――。ならばこれは罰だ。
王としての責務を優先し、妻を国から追放する選択肢をしてしまった癖に未だ妻との再会を夢想する愚かな男への罰だ。
余を助けてくれた時と寸分違わない衣装。そんな彼女は余が知らない男と語り合っていた。
肌が触れ合うぐらいに近い距離。どんなに鈍い者でもわかる。その瞳、その口、その所作は全て愛する男に向けている物だった。
あんなにも聞きたかった彼女の笑い声を背に余はそこから逃げるように離れた。
胸が槍に貫かれたかのように痛い。これも猿バーリの別離の呪いだというのなら、見事過ぎて笑うしかない。
(うわぁ……嫌なタイミングで遭遇しちまったなぁオイ。「顔の無い王」でトンズラしておけばよかったか?)
「ハァ、ハァ……ん……貴様は確かあの者達と共にいたサーヴァントか? …………一つ、一つだけ聞きたい事がある……」
(いやいやそんな苦渋にまみれた顔しなくても何が聞きたいかわかりますっての)
「あの美しさと可憐さと儚さと強さが共存した白き少女についてなのだが……」
(そら、別世界とはいえ女の子(♂)にジョブチェンジして男のお嫁さんになっている自分とか見た日には目を潰すか、ソイツ自身に「祈りの弓」するしかないでしょう……いやぁ、どう誤魔化せばいいのやら)
「あ、あぁ~~っ、あのお嬢さんなっ! ……なんか隣にいる旦那ってどうやらオレ等がいる人類史とは違う歴史から来た英霊らしいですよ?そんで件のお嬢さんはその旦那の奥さんらしい。ま、世界が変われば、歴史も大きく様変わりしますし? 偶々同じ顔と同じ名前をしたそっくりさんって事で納得しましょうや!うんうん!全くもってこれっぽっちも気にする必要は無いとオレは思いますよ?」
花嫁の性別はボカしたせっかくのロビンのフォローもラーマに最後まで届いてなかった。「件のお嬢さんはその旦那の奥さんらしい」それ以降の緑の人の言葉は彼の耳に入っていなかった。
「…………………………………………そうか、違う世界のシータか。君はそこでは愛しい人と一緒になれたのだな」
だがそれでも最悪の結末でなくて良かったと本当に今度こそ妻の不貞を疑う醜い自分にならずに済んだとラーマは心底安心した。
違う世界とはいえ、隣に立っているのが自分ではない事に思う所が無いわけではないが。それでも別世界のシータは仲を引き裂かれる事もなく愛しい男と共に生きる事が出来たのだと。
それが無性に嬉しくて、どこか悲しかった。
「礼を言おう緑の狩人よ。汝がいなければ、余は最悪の勘違いをしたまま戦う事になっていた」
「お、おう?そうですか?(うん? まぁ、何か勝手あっちで自己完結してくれたな)」
「どうか幸せに。余の知らぬシータよ」
コサラの王の呟きは決して想い人に届く事はなく空へと溶けていった。
もうさっきのような胸の痛みは無い。だが――未だ僅かな棘としてラーマの胸には何かが刺さっていた。
人の愛と感情は複雑怪奇、どんなに清廉潔白な人物だろうと、言い聞かせようとも簡単に飲み込めない物もある。
おら、シリアスだぞ。