「あっ、待てコラ色ボケ異母姉。この呆けている別世界の異母殿はどこに連れていけばよいのだ?」
「知らなぁぁいでぇぇす――――!!」
「覇ァァッ!!良い
「優秀な師匠方がたくさんいたんでねっ!邪ァァッ!!」
――キアラちゃんサイコォオッッ!?
中華風の服に黒いコートを羽織ったナイスミドルのチャイナマフィアとウチの所の
後顧の憂いは立ちたい。特に何かしらの被害があるわけではないが、カルデアの解析によって正体が掴めるのなら、ワシントンに電撃作戦を決行する前に何らかの手を打ちたい、何も無いのならばそれはそれでいいというのがジェロニモさん談。
『それって実は蕾じゃなくて卵だったパターンじゃない?ほら、新しい敵が産まれてくる的な?』とかドクターはヘラヘラしながら不吉な事を言っていたが。やめてほしい。
合流したネロやエリちゃんを始めとするアウトローの野良サーヴァント組に合衆国軍の遊撃隊隊長、李書文のおじさんが加わっている。グダおの戦闘を見て何かしらの琴線に触れたのか、ああして二人仲良く敵陣に突っ込んでいるワケだが。
「余程、物騒な師達だったろう。一体、いくつの人を壊す術理を貴様に叩き込んだのだろうな」
「いやいや、出稽古で指導相手をうっかり殺しちゃった先生には負けますよ」
「ハハハ、こやつめ」
「うわぁ、野蛮……。ワタシに任せれば、もっとファンシーでキューティクルに敵を片付けてあげるのに」
「いやいやお嬢のデスボイス聞くぐらいなら、あっちの亜細亜コンビのマーシャルアーツが奏でる曲を聞いてた方がマシですって」
「ホワイ!?私の歌は撲殺音以下なの!?」
うん、まぁ……エリちゃんの気持ちはわからないでもない。何せ血まみれで笑顔で物騒な雑談をしながら、戦場を駆けているのだから。もちろん俺等は
バイオレンスに楽しんでいる所、悪いのだが私としては聞きたい事があるので一度彼には戻ってきてもらう事にした。正直、気色悪いキアラ親衛隊もそこまで数がいるわけでもないので、他のサーヴァントと追従してきている機械兵達でも十分対処は出来る筈。
「どうしたマスター?」
「どうしたじゃないでしょ、ほら返り血もちゃんと拭いてから来なさい、もう……子供じゃないんだから」
『(迷いなく自分のハンカチで彼の顔を拭ったね彼女……)』
『(もうこれぐらいじゃ、動じなくなったんでしょ?恋は盲目ってやつ?図太くなったねー立香ちゃんも)』
(やだ……私の先輩、包容力高過ぎ……)
(私の服にはハンカチを入れるポケットなんてないわよ……!)
「それで聞きたい事があったの。君の宝具。『
ゲーティアが言っていた言葉が確かのなら、英霊という格にはめられている彼の能力は生前あるいは人類悪の頃より劣化している。私の力不足なのは心の底から悔しいが『
完全に生えている花嫁、UFOから映し出された軍服ママ。キャラが濃いのはいつもの事だが、この時点で既に二人。
「そうだね、あの一件からマスターとのパスも深くなって最初の頃よりは多く呼び出せるようになった。現段階では最大五人までなら召喚出来る。一人多くなっただけとも言えるけど、これは大きな進歩だと俺は思うよ」
しょ、しょれは……あれでしゅか?淫獄塔でそのぉ……君とチョメチョメした事が功を成したって事なのかなぁ?えへ、うえへへへへへへへ……。
『パスが深まる……それは』
「つまり、先輩とグダおさんが大人の関係になったという事ですね!赤飯ですか?」
『なるほど。この間、立香ちゃんがグダお君と一線超えたと錯乱していたのはあながち妄言ではなかったのかな?』
「でも検査で膜は残っている100%処女だって言っていたじゃない、ダ・ヴィンチ。ならやっぱり藤丸の妄想じゃながああぁぁぁっ!……痛い痛い!離して!離してってば!謝るから!」
「先輩!能面のような顔で見事なアームロックです!」
「フォウ、フォウ(それ以上、いけない)」
「『
その話を聞いて、私の脳裏に浮かんだのはエレナと呼ばれてお母さんが抱えていた赤ん坊。まだ生まれて間もないといった感じだが、あれも宝具にカウントされているのだろうか。
私の考えを否定するようにグダおは首を横に振っていた。
「さっきは最大5人って言ったけどね、それは奥さん達だけを召喚した前提の話。『
『ほうほう、ではつまり恐らく大人である君のお嫁さんよりはエネルギー量が少ないであろう子供達だけで縛れば、もっと多くの人数を召喚出来るということかな』
「さすがダ・ヴィンチちゃん。理解が早い。ま、お父さんの職場に顔を出すのを許すお母さんもそんなに多くないし、よっぽど好戦的でじゃじゃ馬でせがまれでもしない限りは呼び出す事はないかな?エレナのあの姿もデフォだし、マイベビー達が傍にいるとマハトマめっちゃ感じるらしいよ?」
その後、彼の話を聞けば、エネルギー量の平均を奥さん=1とすると、あの赤ん坊達は0.1ぐらい。他にこの特異点にいるのは0.9の娘が二人に別の奥さんが一人で現段階では限界らしい。
第四特異点ではモーさん――奥さんが一人、アリスとありすにジャックの子供達が3人……。その頃から考えると成長している……。ん?いや違うアリスとジャックも奥さんだ。水色の娘が子供……だったよね?いやもう、見た目ロリだから奥さんと子供の概念がぐちゃぐちゃになるんだけど!
「っと話もここまでだな。目的の地まで着きましたぜ、お嬢さん方」
街の中に入り、ロビンの言葉にそちらへ視線を向けると機械兵達によって厳重に警戒されていた異物があった。人が住む街どころか、この地球上のどこに存在しても不自然さしか感じないという意味での異物。
私達も含めて、初めて見るサーヴァント達は皆、圧倒されていた。
「何あれ……」
「ダ・ヴィンチ、ロマニ」
『う――ん、解析は終わったけど特に魔力反応は何も感知されないなぁ。敵性反応なんてもってのほかだし、ガワは確実に魔神柱と同じモノだけど中が空っぽみたいな?』
『いっそ、最初の時みたくグダお君のお酒と所長の魔術コンボで焼却してみてもいいんじゃなかな?』
『藪をつつくのはあんまり賛成出来ないんだけど、レオナルド』
『だからって放置し続けるのも私は賛成しかねるよ』
カルデアの参謀陣の話を片耳に私は嫌な予感しかしなかった。あるいは殺生院キアラという女に対する一種の信頼か。淫獄塔で見た悪意と淫欲の塊の女が何の被害も出していない?魔力反応も敵性反応も何も無い?そんなワケが無い。
あの女の目的は徹頭徹尾、グダおに注がれている。
周りにいる私達の事など有象無象の
だからこそ、あの女は自分の大事な物に虫がたかっている現状を許さない。淫獄塔の時のように
迷いなく叫んでいた。
「今すぐ、それから離れて!!」
「反撃の時は来た。愛すべき合衆国軍の勇敢なる戦士達よ、よくぞ今日まで耐えてきた」
バルコニーから顔を出し、筋骨隆々な肉体を惜しげもなく晒しているエジソンは比喩表現ではなく獅子の如く吠えた。機械兵、一般兵、保護した市民達が固唾を呑んで軍のトップに立っている男の姿を見上げていた。
「敵は知性の欠片も無い野蛮の徒、あえて言おう!交流にも劣るカスであると!」
「おい」
エレナ、カルナ、テスラを傍らに演説を続けるエジソンの熱は群衆にも伝波する。カルデア、そして野良サーヴァント達、数で勝っていても今まで攻勢に出る事が出来なかった彼等は一騎当千の戦士達を得た。故郷を蹂躙される屈辱を果たす時が来たと、地平線まで届きそうな人並み外れた声量で扇動する。
「諸君らの奮戦は決して無駄では無かった。幸運の女神は我らを見捨てていなかった。その証拠に遠い世界から友軍が救援に来てくれている。宙に浮かぶ、直流ばりに輝く飛行物体が君達にも見えるだろう!既にあの蛮族共をこの大陸、いや世界から殲滅させる手筈は整った」
一時はこちらを混乱に陥れた巨大巨大UFOもトップであるエジソンが味方だと太鼓判を押す事で彼等に受け入れられつつあった。普通に考えれば、味方にロボットとも言える機械兵がいて、軍のトップがライオン頭なのだ。順応性はあるのだろう。
「数でも我らは勝っていた……そして今、質でも勝る!奪う事しか能のない獣共に合衆国の……人類の叡智を見せ付けてやる時が来たのだ!故郷を奪われた無念を晴らせ!愛すべき者を奪われた怒りを宿せ!そして自身の矜持を取り戻せ!今、君達がいる所がUnited States of Americaだ!」
興奮は最高潮。エジソンが拳を振り上げるのに応えるように千近くにも及ぶ兵と民衆達も力強く腕を振り上げる。
「合衆国軍!プレシデンド!大統王!」
「トーマス・アルバ・エジソン発明王!」
「U・S・A!」
「U・S・A!U・S・A!」
――U・S・A!U・S・A!
首都デンバーは大熱狂に包まれていた。これから大戦に挑む彼等にとってこの士気の高さは悪い事ではない。『狂竜』もグダおの妻達で倒せる事は証明されている。後はワシントンのホワイトハウスになだれ込み、首魁を討ち倒すだけ。これは決して楽観的な展望ではない。
だが、その熱狂に飲み込まれていない者が何人かいた。
「浮かない顔ね、カルナ。何か不安ごと?」
「前々から疑問があった。どうして、敵にはサーヴァントに対抗出来るのが『狂竜』一騎しかいない?」
巨大UFOから帰ってきていたエレナはカルナの顔を覗き込んでいた。インドにおける不死身の英雄。トップサーヴァント、カルナ。彼は悲観的にも楽観的にもならない、太陽の如き燃えるその瞳は正しく事実を射抜く。
「仮に、あの『狂竜』と同じスペックの敵がもう三騎でもいれば、この均衡は簡単に崩れる」
「それは……あれだけ強大なら聖杯を使っても一騎しか召喚出来なかった……って事は考えられないかしら?」
「ミス・エレナ。私もこのソル・インド君と同じ考えだ。自分達の方ばかりに都合の良い事が起きると考えるのはライオン頭の悪い癖である。我らの方にサーヴァントが多く揃ったのなら、敵側にも同じ事が起きても不思議では無い。ま、私のような天才が他の英霊にいるとは思えないが」
時代と在り方は違えど、カルナとニコラ・テスラ、事の本質を見抜く事に長けた二人が口にした言葉は決して妄言では無い。
「それって……」
「嫌な予感がする。と私の中の交流が囁いている」
「エジソンに伝えておけ。早急に軍を動かすべきだ、と。何もかもが手遅れになる前に」
突如――エレナの高まる焦燥感にトドメを刺すように通信機から悲鳴にも似た伝令が響いた。
憐憫の獣を取り込んだ真性悪魔は魔神柱を弄ぶ。
生命の鳴動を感じる。サーヴァントと魔神柱、そのどちらも弄んだ悍ましきナニかが産まれる息吹が。
「ソロモンの72柱、七つの大罪といい、悪魔というのは実にややこしてくて面倒です」
この女に先人や過去の遺物に対する尊敬の念は一切無い。使える物は使い、使えない物は無理矢理捨てる。あるいは無理矢理使えるように改造する。
ゲーティアが保有していた『召喚術EX』と自身が保有している『人理昇天式A』を組み合わせて殺生院キアラは飼っている魔神柱達のアイデンティティを都合の良いように書き換える。
「デアー様、リスペクトです。彼が女英霊達に白濁を注ぎ込んだというのなら、私はサーヴァントという器に黒醜を注ぎこみましょう」
魔力反応も敵性反応もあるわけがない。各地に散在している五つの黒卵の中には未だ中身が空っぽの人形しかいないのだから。
二騎は既に召喚されている。一つは目の前の生命の存在を許さない『狂竜』として、もう一つは狂ったケルト兵を産む『母胎』として。
「『アスモダイ:色欲』。『バアル:暴食』。『アモン:強欲』。はぁ、教養無き尼の身ではキリスト教の原罪に語られる悪魔もソロモンが操る悪魔も複雑ですね。もう全て一緒くたでいいでしょう。『ベレト:憤怒』『ベリアル:嫉妬』後は……サタンと名前似てますし『サガン:傲慢』でいいですか、欲情を操って男女の機微を好きにするなんてズルは怠惰以外の何物でもないでしょう……ですので、『シトリー:怠惰』。えぇ、はい、準備OKです。これで七騎。準備は整いました」
クー・フーリン・オルタには『サガン:傲慢』を埋め込み、草木残さず目に映った命全てを奪う『狂竜』として。
メイヴには『シトリー:怠惰』を埋め込み、魔神ケルト兵を産み出し続ける『母胎』として。
ベオウルフには『バアル:暴食』を。
アルジュナには『アモン:強欲』を。
ディルムッドには『ベレト:憤怒』を。
フィン・マックールには『ベリアル:嫉妬』を。
フェルグス・マック・ロイには『アスモダイ:色欲』を。
聖杯と自身のスキルを使い、召喚したサーヴァントと魔神柱達の霊基と肉体を自在に組み替える。邪魔が入らないように、彼に侍る
アルカトラズ島、シアトル、ロサンゼルス、シカゴ、ニューオーリンズの五つの場所に生えていた正体不明の黒き球体は球根でも蕾でもなく、卵。時が来たらキアラから魔神柱を注がれ、英霊のガワを装ったナニかが目覚める胎。
「物を壊すのに低い所から落とす人はいないでしょう。うーんと高い所から落とします。手を抜いて、喜ばせて、おだてて、勝てるかもって希望を見させて高い所から一押し、そして私は地に花を咲かせるのを見守るだけ、実に楽なお仕事です」
「んんぅっ、くぅっ……あっ、あぁぁっ……!!」
『母胎』として虚ろだったメイヴの口から苦悶の声が漏れ出ていた。それは兵士を産み出す彼女にそれだけの負荷が掛かっているという事。それが指し示すのは――。
『こちらシアトル警備隊!監視対象の黒い蕾が突如として破裂、敵対行動を取る何者かが一名、我らにガアアアァッ――』
『ロサンゼルスが爆音と共に光に包まれてし、しょ、消滅!』
『くそぉっ!何でだよ!何で化け物共がこんなにいるんだよぉ!!あぁっ、やめろくるなぁ!!』
『シカゴから出現したケルト魔神兵の軍勢がこちらに向かっている模様!数はお、およそ千!』
『至急援軍を!これ以上、抑えるのは不可n、ギャアアアアアァッ!』
『指示を大統王!我々は、我々は、どうすれば!!』
ザザァ、ザァァッ――と怒号と悲鳴の後には無機質な機械音しか聞こえなかった。
カルナとテスラの当たって欲しくない勘は見事的中してしまった。
「な、んだ。一体、なにが――起きている――!」
エジソンの疑問に答えれる者は今、この場に誰もいない。
「女ァァァァァァァァアアアアアアッッ!」
ニューオーリンズで立香が叫んでから事はすぐに起きた。ダ・ヴィンチが突如として高まり始めた常軌を逸している魔力量を報告する暇も無く、その悪魔は現れた。
上半身の筋骨隆々な肉体と人の顔にはかつて彼がフェルグス・マックロイという英霊だった名残があった。
だが頭から生えた山羊のように歪んでいる黒い角。そして股にマンモスの顔が付いている下半身は人の足ではなく像のように太く強靭な獣の脚へと変わり果てていた。
「女!女!女!おぉ僥倖!僥倖!目覚めて間もなく欲情誘う女がこんなにも!」
その表情は本来のフェルグスのように快活かつ豪胆に笑う益荒男のものではなく、はち切れんばかりの欲望を女体で発散したい獣の本能。相手の感情も状態も一切考慮しない壊れるまで犯し尽す悪魔の顔。『アスモダイ:色欲』を注ぎ込まれ、改造された『豪姦魔』は獰猛に目の前にいる彼女達の品定めをしていた。立香、マシュ、ラーマ(花嫁)、ネロ、エリザベート、そして。
「あぁ、選ぶ必要はない、飽きたら別の女へ、壊れたら別の女へ。だが、どれから手を出そうか非常に迷う。フフフフフ、非常に迷うがッ!!お前は特にいい!その格好といい、嗜虐心を煽る表情といい、実に良い声で啼いてくれそうだぁ!!」
「ひっ……!」
『豪姦魔』のお眼鏡に叶ってしまった、表舞台に君臨した悪魔の欲情に滾った視線に貫かれてしまった所長はあまりの恐怖に体を硬直させていた。
いや所長だけではない、この数秒の一瞬の間は突然の事態に
だが何事にも例外はいる。悪魔の出現から迷わず行動をし出した者が3人いた。
「これが噂になっていた『狂竜』とやらか?何とも悍ましい生き物よ、だが隙だらけだな。覇ァァァッ!!」
老いてなお盛ん、敵がどれだけ強靭だろうとも迷わず懐に飛び込んだ李書分は殺す勢いの拳撃を3発叩き込んだ。左裏拳で鼻柱、左肘で顎をかち上げて、右正拳で心の臓を完全に捉えた――筈だった。
「あぁ、だが」
「む、仕損じたか!?」
「男はいらん。お前らは邪魔だ。殺す」
並のサーヴァントなら今の李書文の三撃で霊基はボロボロになっていた。だが目の前にいるのは快楽天が手ずから造り出した悪魔と英霊の複合物。中華最強の拳法家の拳は僅かなダメージを与えて、体を揺らしただけだった。最善の行動を取った李書文の唯一の落ち度は一発目から宝具を使わなかった事。
「俺の女を奪うというのかぁ!俺の女、女、女を、女達をぉぉぉぉぉおおお!!」
『豪姦魔』の手に握られているのは『
「お前のじゃないだろ」
「ぬぅっ!?」
李書文だけではない、突攻をかましたのはグダお、そして殺生院キアラの悪意にいち早く気付いた藤丸立香は迷う事なく令呪一画を消費し、彼にブーストをかけた。『
剣だけではなく両腕すらもぎ取らんとする勢いで『
「最高のサポートだ、マスター」
令呪のブースト、さらにこれ以上ないシリアスな空気によって『
返す刀でこれみよがしに誇張しているマンモスの頭に踵落としを叩き込んだ。
「ホウワァァッ!!」
「オルガマリーを!怖がらせていいのは!俺だけだ!」
「なんて歪んだ愛情表現!」
成程、『色欲』というだけあって、やはり弱点は局部をメタファーさせている獣の頭らしい。丸見え過ぎる。白目を剥きかけている『豪姦魔』はまだ倒れないが動きは完全に鈍っている。
「科学と武術の融合を見せてやる。ライトニングフォーオウル・フルカウル50%!!」
手は緩めない。ここで完全に仕留めると彼の体に雷電が宿る。ダ・ヴィンチ、エジソン、テスラと三人の天才が造り出した「全戦局対応型直流交流万能
「勝手に合わさせてもらうぞ、小僧!」
「応!模倣宝具『十面埋伏・無影の如く』!」
「オ、オッ、男がぁ、俺の視界に入るなぁぁあああっ!」
燕青拳の始祖、「水滸伝」に語られる伝説の義侠の高速歩法を再現する。
激怒し、拳を振り回す悪魔の攻撃をかいくぐり、分身すら見える連撃を叩き込む。
令呪、スキル、科学、武術、ありとあらゆる物を使用し、加速と強化を重ねた彼の宝具は模倣といえど、快楽天の眷属を打破出来るレベルまで達していた。
「ガァッ、ガァッ、ギィィィッ!!」
速度と力は今のグダおに劣っていても、純粋な技においては遅れを取らず。武のみに生涯を捧げた老師の拳がグダおの高速連撃の合間を縫って追加打撃を重ねていた。
まだ原型を留めている耐久力は称賛に値するが、フラついている悪魔にトドメの一撃を叩きこまんと両雄は『豪姦魔』の正面に並び立った。
「
「ライトニングスマッシュ!!」
「オ、ン、ナァアァアアアアアアッ……」
八極拳の奥義と雷電を帯びた鋼鉄の拳が振りぬかれた。
上半身に巨大な空洞を作った『豪姦魔』は最後まで欲望を口にしたまま、朽ち果てていった。
『やったのか?』
『あ、ばか』
ロマンのフラグ建立発言の後にも特に事は起こらなかった。だが、誰一人としてその表情は明るくない。周りにいる兵士達もザワついていた。慌ただしく各地に連絡を取ろうとしている様子。
「これはマズい……黒い卵から『狂竜』に匹敵する怪物が現れた。あの卵は確か、後4か所に存在していると聞いているぞ……!そこから全て孵化したとなれば……!」
「おいおい、サーヴァントも何もいない只の一般兵じゃ、虐殺にしかならねーじゃねぇか!」
ジェロニモとロビンの最悪の予想は的中している。ここには偶々、対抗出来る戦力が整っていたが、シアトル、ロサンゼルス、シカゴでは目も当てられない虐殺劇が展開されている。
「あの色魔も完全に消滅した雰囲気は無いな、『狂竜』の時と同じだ。大本を叩かなければ、幾ばくかの間を置いて、またどこぞで孵化するぞ」
いくつ眷属が死のうとも群体にして個体である魔神柱の総体という素材を取り込んだ殺生院キアラはワシントンからいくらでも眷属を再生出来る肉体を供給する事が出来る。彼女にとって、グダおがこの特異点に来た時点で既に目的は半分以上果たしていた。これから行うのは彼女にとって消化試合以外の何物でもない。
全力で好きな人をモノにする。現実を歪め得る恋心は愛欲の獣を本気にさせた。
「ねぇ、ちょっと……あれってもしかしなくても私の見間違い……じゃ、ないわよね?」
「どうしたエリザベート、リスのように震えて貴様らしくない」
『何かの冗談かいこれは!今までだって多くてもせいぜい数十体だったろう!?』
『魔神ケルト兵確認、君達がいるニューオーリンズに向かっているよ!数は……5000!?』
地平線の向こうから魑魅魍魎、快楽天を賛美する黒醜の軍勢が押し寄せてきた。
「とんでもないラブコールだな。情熱的なのか、まどろっこしいと言うべきか」
「戦には疎い淑女ですけれども、真似事ぐらいは出来るのですよ」
――あぁ、いくら喰っても喰い足りねぇなぁ。もっと歯ごたえがあって食いでがある奴が欲しいなぁ。
アルカトラズ島では『バアル:暴食』を注ぎ込まれた巨人が同族である魔神ケルト兵を手足り次第で貪っていた。
――ふは、ふははははは。なんと心地良い邪悪!悲鳴も怒号も死も何もかもが私のものだ!世界を滅ぼす。これ程までに欲深い事が存在するか!
ロサンゼルスで『アモン:強欲』を注ぎ込まれ、全身を黒に染めた弓兵が高笑いを上げていた。
――妬ましい、世界を救う等という輝かしい使命を背負った者達が妬ましい。麗しい女達を侍らせているあの獣が妬ましい。殺したい程に。
『ベリアル:嫉妬』を注ぎ込まれ、ねじれた鹿の角を生やした槍兵がシカゴで黒き水を巧みに使い機械兵達を飲み込んでいた。その髪は英霊「フィン・マックール」の輝かしい金髪ではなく薄汚れた茶色と化していた。
――聖杯!聖杯!聖杯戦争!またか!またなのか!貴様達はまたこうして戦士の祈りを踏みにじるのか!この人理に生きる全ての者達に災いと呪いあれ!!
『ベレト:憤怒』を注ぎ込まれ、錯乱し、血の涙を流す悪鬼は魔猪の皮を被り、伸縮自在となった二槍で殺戮の限りを尽くしていた。
――キアラちゃんサイコー!
――キアラちゃんサイコー!
――キアラちゃんサイコー!
莫大に膨れ上がった魔神ケルト兵を伴って、彼等はデンバーへと向かっていく。
「軍法これすべて山津波の如く、時を作り、場を作り、ありたけ積んで押し流せ。さぁ、悠長にしていますと簡単にこの世界が終わってしまいますよ、愛しの君」
人理を修復する命がある彼等は逃げないだろう、逃げられないだろう。『カルデア国物語』を読んでいる彼女は正確にグダおの力量を把握している。もう彼がこれ以上、この特異点で
それこそが彼女の望み、それこそが彼女の願い。
他の有象無象を掃討し、彼と二人だけで人理というベッドの上で思うがままに褥を重ねたい女の欲望。
「英霊などというつまらない殻を破りましょう。どうか、本来の貴方様の姿に。私と貴方であるがままの姿になって
本を恋する乙女の如く大事に抱える殺生院キアラは淫蕩に微笑む。
「これが貴方に捧げる私からのラブコールです」
キアラちゃん頑張ってグダお君攻略ルートを模索中。