※この作品はR-18です。

おいでよ カルデアの森   作:一火

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週刊といっておきながら、全然週更新出来てねぇじゃねぇか。やる気あんのかお前。











カルデアコレクションにて、キングプロテア更新。
キングプロテア、バニヤン、巨神アルテラさん、ティアマトの5Pパーリナイも乙な物だと思うのです(地球、こわれちゃ~う)。








週刊性年インボウマガジン⑥(第5章)

「さてさて、こうして一人っきりになるのは何だかんだで久しぶりな気がする。召喚されてからはいつも隣にマスターがいたからかな」

 

 コートをはためかせて、戦場には不似合な朗らかな笑みを浮かべるグダおはシカゴ方面からやってくる軍勢を見据えていた。彼の周りには信頼すべきマスターも、敬愛すべき所長も、可愛らしいマシュも、愛すべき妻達もいない。たった一人で千の軍勢と相対していた。

 

『嫉妬:ベリアル』によって中身を構成されているかつてのフィン・マックールの鎧はフィオナ騎士団の長を象徴する白銀の鎧ではなく薄汚れた黒き鎧に人ならざる鹿の角を生やしていた。

 

 瞳には輝かしい者、若々しい者、幸福な者に対する嫉妬。ここには英霊フィン・マックールは存在しない。殺生院キアラの眷属、七つの原罪が一つ。『嫉妬の老鹿』しかいない。

 

「この軍勢を前にたった一人で立つかね、あぁ……その勇猛さが妬ましい」

 

「まぁ、これが最適解なんでね。何せ今回はギリギリもギリギリの瀬戸際だ。他の皆にはそれぞれ別の所に行ってもらってるし。せっかく娘も来てるんだ、パパ頑張っちゃうぞぉー!」

 

 

【第一の戦】

 

 親愛の英霊:グダお VS 嫉妬の老鹿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 千単位の魔人ケルト兵をグダおとラーマ(花嫁)の『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』によって蹴散らし、何とかニューオーリンズから離れる事が出来た立香一行はエレナ(軍服ママ)のUFOと通信を取り、これからの方針を決めようとしていた。

 

 

「ち、ち、う、えぇ~~♡」

 

 なんか空からJKが降ってきた。誇張なしに立香がそう思ったら、制服を来た若々しい女がワンコばりにグダおに抱き着いて頬ずりしていた。それはもう恥ずかしいぐらいに頬ずりしていた。頬肉削れるぐらいに頬ずりしていた。

 制服か、そんなに女子高生がいいのか。まぁ、私もJKだし?監獄塔で致した時も興奮していたもんね、そうだもんね!と立香は嫉妬と優越感が混ざり合った複雑な表情をしていた。

 

 スコーネに一緒に連れてこられたスカサハは凛々しい顔を紅く染めながら死にそうな顔で「やめよやめよ、私の顔でそんなはしたない真似をするな、まじでやめて」と引き剥がそうとしているが、くっつき虫が如くスカナナは離れない。

 

「お久しぶりです父上!うえっへい!何ですかそのワイルドな服装は!?娘の心を乱す悪い父上!はっふぅ!父上の頬!父上の髪!父上の首!父上の胸板!父上の二の腕!父上の匂い!この日をどれだけ待ちわびた事か!もう邪魔は入りません!致しましょう!今、致しましょう!周りの眼がある?大丈夫です私は気にしません!むしろ見せ付けてやりましょう!バッチこい!さぁ、ハリー!ハリー!ハ、あっぶねぇぇえぇっ!?」

 

 その時、不思議な事が起こった。彼女の頭上から突如として朱槍が落ちてきたのだ。ピンポイントに自身を狙っている槍を避けるべく、スカナナはだいしゅきホールドでしがみついていたグダおから離れた。地面に深々と刺さった槍からその威力は推して知るべし。

 

「ガッデム!!マジありえねぇです!あのババァ!?時空どころか世界線の概念さえ飛び越えて槍ぶん投げてきましたよ!どこの誰ですか!?『昔よりは丸くなった』とか言った奴は!おのれ我が宿願をこうまでして邪魔するかっ!ここまで来て私の処女卒業を邪魔してくれるとはぁっ……!グ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ!!」

 

 空に向かって遠い世界の母親に吠えるスカナナ、まさに負け犬の遠吠え。ここまでか、まだあの鬼ババと私の力の差はここまで離れているのか。私は後、何回他の腹違いの姉妹達に先を越されてしまえばいいのか、悲嘆と怒りの嘆きを叫んだ。

 

 そんなどうしようもない姿を見て、立香は何故か他人事とは思えなかった。

 

「いつか地獄の釜に落ちながら、このスカナナの怒りを思い出せ!…………おや、あなたは確か、父上のマスターと噂の――」

 

 言葉は交わさずとも二人は通じ合った。

 片や夢の世界で心の処女は卒業したものの、そこからは間の悪さに邪魔をされ、未だ肉体は処女の藤丸立香。

 片や実の父親に膜を刺し穿って欲しいものの、実の母親に邪魔をされ続ける未通女スカナナ。

 

 ――ピッピッグッガシッ

 

 二人が無意識のうちにとっていたのは「握手」の姿であった――。

 

「遠い世界、まさかこんな所に同士がいるとは思いませんでした。あなたもそうなのでしょう、牡丹が落ちる日を夢見る少女」

 

「うん、私達は社会の不条理を嘆くティーンエイジャー。わかるってばよその気持ち」

 

 出会って間もない二人だったがそこには確かな友情があった。周りの何してんだコイツらという痛い視線があろうが、無言の女の詩があった――。奇妙な友情があった――。

 

 

 ギャクパート終了。

 

 

 

 合衆国軍の本拠地であるデンバーに戻ってる暇は無い。エレナ(軍服ママ)の小型UFOで通信を取った彼等は迅速に今後の方針を決めなければならない。モニターに映し出されているエジソン達の顔は当然の事だが沈んでいる。

 

『私の宝具から出した小型UFO達で魔神ケルト兵はまぁ、まだ何とか押さえる事は出来ているわ。ここ(デンバー)になだれ込むなんて最悪の事態は避ける事は出来ている。あれらがラフムみたいに飛ばなくて心底良かったと思ってるわ』

 

 彼女の宝具『金星神・外なる偽神の書(サナト・ネクロノミコン)』から排出された千にも及ぶ小型UFOの群れは北米大陸中の各地に散らばった。怪物達に追われている無辜の民達を救うべく。

 現段階で魔神ケルト兵には数でも勝られてしまったが、怪物達は地に足をつけて原始的な暴力しか行う事が出来なかった。空中から魔術攻撃を行う事が出来る小型UFO達によっては格好の的でもある。制空権を確保出来た事が未だ均衡を守れてる一つの要因でもある。たが――。

 

『正直、()()はどうにもならないわ。小型UFOじゃ、何百束になっても相手にならない。直接私達が出張るしかないわよマスター』

 

 新しく投影されたモニターは五つ。無慈悲な漆黒の光線を放つ弓兵。黒く染まった水によって機械兵を朽ちさせていく鹿の角を生やした槍兵。猪の皮を被り、両槍を振り回し、暴風が如き殺戮を繰り返す悪鬼。そしてスカナナやグダおと李書文が倒した筈の『狂竜』や『豪姦魔』もそこに映し出されていた。彼等が見た姿よりも強靭に禍々しくなって。

 

「なんで……!?」

 

「グダおさん達が倒した筈じゃ!?」

 

「あぁ――、やっぱり復活していやがりましたか。いえ、私の爆裂槍は一撃必殺。仕損じる事は父上に誓ってもあり得ませんが、甦るってのなら話は別です。これって大本の殺生院キアラを何とかしない限り延々とループすると思いますよ?むしろ殺された事でより耐性を得て復活してますから最悪ですねマジで」

 

 つまりはこの無限に供給される魔神の軍勢を何とかする為には東部のワシントンにいるであろう殺生院キアラを倒すしかない。だがそこに辿り着く為にはやはり湧き出てくる魔神ケルト兵と眷属達を退けなければならず。しかも怪物等は殺生院キアラがこの特異点に存在する限り無限コンティニュー。

 

「……あんま言いたかないですけど、詰んでませんこれ?」

 

 ロビンの言葉に沈痛な表情を浮かべるエジソンは絞り出すようにしてグダお達に問いかけていた。

 

『あれほど息巻いておきながら、自国の危機も異邦者たる君達に頼らなければならない自身の恥は自覚している。話は聞いた……魔術王すら取り込んだ愛欲の獣、それに対して勝ちの目があるのは君ぐらいだと。この絶望的な状況でもまだ我々には勝機はあるのかね?』

 

『狂竜』一騎ですら、手を焼いていた合衆国軍。それと同格と思われるのがさらに五騎。加えて万にも届く異形と化したケルト兵の軍勢。別世界のエレナの未確認飛行空軍がいなければ、デンバーは陥落し、この特異点も完全に焼却されていた。それでも今の状況はただ現状を維持しているだけ。

 

 エジソンは乞うしか無かった。愛する国を蹂躙される怒りとそれでも天才だとメンロパークの魔術師だと持て囃された自分の頭だけではどうしようもない無力感に支配されていた。

 

 だが目の前にいる男は絶望に苛まれている者達に勇気を与えるように笑っていた。

 

 この程度の危機は見飽きたと言わんばかりに。

 

「あぁ、ゼロ()じゃないさ」

 

 

 

 

 

 

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「不思議な男だ。論理性など皆無だというのに彼を見ていると何故か勝てる気しか湧いてこなくなる。あれが『カリスマ』スキルというやつかね」

 

「というか貴様は何故ここにいる凡骨。デンバーで猫のように震えていればよかろうに」

 

「喧嘩売っとんのか貴様は!もはや私が本拠地にいる意味も無くなった。文字通りの最終決戦!持て余せる労働力など0.1労時も存在しないのだからな!」

 

 獅子と雷電紳士が並び立っているのはシカゴからやや離れた荒野。彼等に加えてここにいるサーヴァントが一人、デミサーヴァントが一人、処女爆裂(願望)サーヴァントが一人、そしてマスター藤丸立香。

 

「何と悍ましい。あれ程の菌がここまで増殖していたとは、ミス立香。ワシントンに病原菌の発生源がいるのですね?」

 

「うん。その為には今私達の目の前にいる菌を殺菌しないといけないの。力を借りてもいいかな?ナイチンゲールさん」

 

「聞くまでもありません。私はありとあらゆる病原菌を滅する為だけに存在します。治療、雑菌、粛清します」

 

 指の間接をボキボキと鳴らし、バーサーカーに相応しい前傾姿勢で眼前の魔神ケルト兵を睨み付けるたった一人の軍隊『小陸軍省』たる鉄の看護師はいつでも戦闘行為に移行可能であった。

 

 そんなおめぇのどこが看護師だぁ?とツッコまぜるえないナイチンゲールの姿を見て、スカナナはどこか懐かしい気持ちにもなっていた。父上の子供達、特に幼少世代の『白の獣の幼子達(ビーストチルドレン)』達のトラウマを刻み込んだ『白い悪魔』。

 

 ――虫歯になれば、ガラドボルグを持った婦長がやってくる。

 ――夜更かしすれば、ベッドを持った婦長がやってくる。

 ――予防接種を嫌がれば、BB製巨大注射を持った婦長がやってくる。

 

「昔からこんなんだったんですね……ブレないキャラ。私の母上も見習って欲しいものです」

 

「え――と、スカナナさんですよね?どうして、私達と一緒に?そのグダおさん……お父さんの所にいなくてもいいのでしょうか?」

 

「戦力の有効活用ですよ。素敵で無敵な我が父上はあんな黒い子宮から産まれた化け物達には負けません。もちろん父上とは三百六十五日、一緒にいたい所ですが私も娘としてやるべき事はやっておこうと決意したのですよ。むしろ、私の方が聞きたい事があります。同士藤丸立香、マスターであるあなたそこ父上の傍にいるべきでは?」

 

「そうだよ。私は彼のマスター」

 

 ずっと、ずぅっと助けてもらってばかりだった。召喚してからずっと。処女を散らされそうになった時も救われた。心の処女ももらってくれた。グダおには体を何度渡しても返せないぐらいの恩が貯まっている。恩だけではない、年頃の女の子としての好意もある。いつだって傍にいたい。それが紛うことなき立香の本音。

 

「だから、私はここにいるの。グダおに助けてもらってばかりのマスターじゃない。胸を張って彼のマスターだって言う為にマシュと一緒にここで戦うの」

 

「エクセレント、それでこそ私のベストフレンド」

 

 立香の答えに満足気に頷いたスカナナは()()()()を彼女に手渡した。

 

「これは……?」

 

「念のためというやつです。使わないのであればそれで結構。ちなみに使い方はゴニョゴニョ……」

 

 魔神ケルト兵を率いる猪の皮を被った悪鬼はもう接敵範囲に入っている。フィオナ騎士団が一人ディルムッドの肉体に宿る『ベレト:憤怒』は快楽天の尖兵として、ナイチンゲールがブチ切れるレベルで死臭を撒き散らしていた。

 女性を魅了する輝かしい貌は既に失われ、浮かんでいるのは身を焦がす程の怒り。聖杯に召喚された英霊。マスター、魔術師という存在が死滅するまで止まる事の無い殺戮機構と化していた。

 

「殺してヤルッッ!サーヴァントも、魔術師も、聖杯戦争を生み出した世界そのものも!全てだ!!」

 

「周りの雑魚敵は私が引き受けましょう。どうしてもしんどくなったら猪男もまとめて片付けてもいいですが」

 

「大丈夫!こんな中ボス程度でヘコたれているようじゃ、あの変態尼をぶん殴れないもん!いくよ、マシュ、皆!」

 

「はい、先輩!」

 

 

【第二の戦】

 

 人類最後のマスター&精神的非処女:藤丸立香

 デミサーヴァント:マシュ・キリエライト

 クリミアの天使:フローレンス・ナイチンゲール

 メンロパークの魔術師:トーマス・アルバ・エジソン

 雷電博士:ニコラ・テスラ

 

           VS

 

  憤怒の魔猪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れ!走れ!距離を開けただけで安心するな!あの光線はどこにいても俺達を追い続けるぞ!」

 

「えぇ、よくわかっているようで何より。では私が貴方達の命を奪うのが草を毟るよりも簡単だという事も理解していますよね?」

 

「ち、くしょぉっ……!!」

 

 ロサンゼルスから命からがら逃げ出した兵士達が宙に浮かぶ漆黒の弓兵に狩られていた。いや、狩りですらなくそれはただの座興だった。天空から見下ろし、『アモン:強欲』を注ぎ込まれた悪魔は辺り一帯を吹き飛ばす力を有する弓を持っていながら、一人を一人を嘲笑い追い立て、胸を射抜いて丁寧に殺していた。

 

「貴方達の命も無念も、この私が全て授かってあげましょう。あぁ、殺戮の瞬間、他人の生全てを完全に手中に収めた快感に勝るものはない……ハハハ、フハハハハハハッ!!!」

 

 もはや泣きながら捨て台詞を吐く事しか出来ない兵士の背に光速の如き矢が迫ろうとした瞬間――炎が舞った。

 

「なに――」

 

「い、生きてる……?」

 

「銀色の円盤がお前達をデンバーまで回収してくれるだろう、今すぐここから離れるがいい」

 

 神から賜りし矢を叩き落とす事が出来る者はこの特異点において限られている。

 全てを射抜く眼光、痩身に纏う黄金の鎧。槍の一閃で黒き悪魔の矢を防いだカルナはエレナ(軍服ママ)の小型UFOに救助されている人間達を庇うように炎の壁を背に敵を見据えていた。

 

「ふく、クフフフフフ、ハハハハハハハ!!そうか、そうかぁっ!そうだろうよぉ!この私がいるとわかった以上、貴様が出張るよなぁ!カルナ!!あの時の続きだ!今度は貴様の槍も鎧も太陽神から与えられた全てを奪ってやろう!クハハハハハハハァッ!」

 

「高揚している所悪いが」

 

「ハハハ……?」

 

「誰だお前は?生前も含めて、お前のような者と会った記憶は俺にはない」

 

「………………殺す」

 

 

【第三の戦】

 

 施しの英雄:カルナ VS 強欲の黒

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『狂竜』が一度、スカナナの爆裂宝具で消し飛ばされた場所からそう遠くない荒野。全長、10m近くまで成長を遂げた黒鎧の竜が四足歩行で大地を駆けていた。追従するように魔神ケルト兵を引き連れて、『サガン:傲慢』をその霊基に注ぎ込まれたクー・フーリン・オルタは海獣グリードの骨格と魔神柱の肉体を混ぜ合わせたアーマーを身に纏っていた。

 

 立ち塞がるように相対しているのは顔がそっくりな女性と少女。親子と見間違えてもおかしくない二人組。人理焼却という稀有な事例でサーヴァントとして召喚されたスカサハ。こことは異なる世界で異聞帯の氷の母と親愛の獣から生まれたサラブレッドことスコーネ。

 

「成程、異母姉殿の言う通り、以前よりも強靭になっているな。死ねば死ぬ程強くなるというやつか、異母殿の部屋に隠してあった漫画でそんなものがあったような……」

 

「随分と悠長に構えておるな。弟子……とはもはや言えんがあれはもうサーヴァントでは手に負えんレベルまで成長しているぞ」

 

「だからといって放置も出来ぬだろう。何、強靭とはいえ、あれぐらい、さして問題は無い。私の家には()()()()()()()()()()いる」

 

 強がりでもなく事実としてスコーネは述べていた。スカサハですら身構える『狂竜』の覇気を前にして、何一つ気負う事なく自然体であった。『狂竜』をあれぐらいで片付ける事が出来るスコーネが住む家とやらは一体どんな魔境なのか聞きたい気持ちにもなったが、自分と同じ顔でぶっ飛んでいるスカナナの事を思い出して、思い留まった。

 

 別世界の母となった自分の事も、父に色目を使う娘の事も一切関係無い、全ては他人の空似であると思いこむ事で精神安定を図っていた。

 

 今、ここにいるのは弟子の不始末を片付ける為。勝ちの目が無いというだけで逃げ出すか弱い性格をしていたのなら、最初から影の国の女王などにはなっていない。

 

「ただ、何度も強くてコンティニューされるのは非常にめんどーい。なので父殿の言う通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()まで我々は防衛戦になるのだが、本当に別世界の異母殿も戦うのか?あれだけボコられたのに?」

 

「ぐっ……耳が痛い事を。やぶれかぶれで特攻するつもりはない。初見ならまだしも一度槍を交えた相手ならまだ戦いようはある。力は強大だが、知恵は捨てていそうだからな。それと、その顔で私を母と呼ぶのはむず痒いので止めてくれ」

 

 地鳴りとなって迫ってくるクリチャーの大群にスコーネは14歳とは思えないぐらいに落ち着いていた。クルクルと回している魔術礼装『サファイアγ』の先端は槍のように鋭くなっていた。

 

「生憎、他と違ってここは消化試合もいい所なのでな。恐らく、そなたの出番はないぞスカサハ殿。父殿に付き纏う悪質なストーカ退治といこうか」

 

【第四の戦】

 

 氷の魔法少女:スコーネ

 影の国の女王:スカサハ

 

    VS

 

   傲慢の狂竜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「美味そうな女の匂いがするぅぅぅぅゾォォォオオオ!!」

 

「ふっ、予定通り、他には目もくれず私の方に誘導されているわね。私の魅了(タゲ集中)にかかれば、理性も無い獣なんてこんなもんよ」

 

「大丈夫ですかいお嬢さん?膝が残像見えるくらいにガクついてますけど」

 

 ニューオーリンズで討ち取られた筈の『豪姦魔』はテキサス州へ魔神ケルト兵を連れて進軍。厳密に言えば、色欲の悪魔がオルガマリー所長求めて勝手に突出している状態であった。

 

 筋肉はより肥大化し、角と股に模られたマンモスの鼻は悪魔の興奮度合いを象徴するようにさらに反り勃っていた。血走った瞳から黒い血管が浮き出て、『アスモダイ:色欲』を注入されたかつての英霊は本能の赴くままに女を求めていた。今自分の瞳に映る最も性的な女を。

 

「手筈通り行くわよ。ロビンフッド、この森には貴方が仕掛けた罠が大量にあるのね?」

 

「あぁ、ジェロニモのおっさんのも少しあるが大半はオレのだ。本当は対『狂竜』の為だったんすけどねぇ」

 

 あらかじめ渡されていた地図には罠の場所が正確に記載されていた。「自軍の罠にかかる間抜けを晒すのはドラクルのお嬢さんだけで十分でしょ」とはロビンフッドの談。今、この場にいるのはオルガマリー・アニムスフィアにロビンフッド、ジェロニモ、ビリー、ネロ、エリザベートの五騎。

 

「改めてもう一度聞くが正気か?オルガマリー・アニムスフィア。自身を囮にあの悪魔が出来るだけ多く我らの罠にかかるように誘導して消耗させるとは……いくらスペックだけは英霊に匹敵しているとはいえ危険過ぎるぞ」

 

 レイシフトの時の弊害とはいえ、今のオルガマリー所長の姿は露出が多く、扇情的なハロウィン・プリンセス。しかも相当なレベルで魅了の魔術も行使出来るようになっている。意識せずとも、雄がちらりと目を追ってしまうぐらいには。

 聖杯と神獣達の素材で肉体を再構成し、グダおとのセックスによって『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』を注がれたオルガマリー・アニムスフィアの美貌は色欲の悪魔の我を忘れさせるには十分なものだった。

 

 

 ▲▲▲

 

 

「人員にも限りがあるのはわかってるわよね?これが最善の策よ」

 

 所長の作戦に異を唱える者はいなかった。冬木で死亡フラグと泣き言だけを撒き散らしていた者とは同一人物とは思えないぐらいに理にかなっていた作戦だったからだ。だが理性と感情は別、マシュも立香もわかってはいながら心配そうな顔で所長を見ていた。

 

「……あの手の怪物はこの世に存在してはいけない類よ。私は人理継続保障機関カルデアの所長として、アニムスフィア家の当主として、魔術師の義務として、あれを討つわ」

 

 その時のグダおの顔を所長は思い出す。喜怒哀楽全てが混ざった何とも言えない複雑な表情。客観的に見れば、決して良い表情ではなかったかもしれない。だがそれでも彼女は嬉しかった。

 

 誰にも愛される事も認められる事もなかった自分が一人の男にここまで愛が籠った強い感情を向けられている事実に胸が一杯だった。

 

「そんな顔しないでグダお。貴方にもらった命だものも勝手に捨てるなんて事はしないわ。ただ……その、もし帰ってきたら、よくやったって頭を撫でてくれないかしら?それだけでいいの、それだけで私頑張れるから……」

 

「大丈夫ですか所長!順当に死亡フラグ積み上げてますけど!右上に『来週は夕方5時00分からお送りします』ってテロップが出そうなんですけど!」

 

「あぁもうちょっとは空気を読みなさいよ馬鹿立香!!」

 

 

 ▲▲▲

 

 

「じゃ、所定のポイントで落ち合いましょう……あう!?」

 

 決意を固めていた所でネロに抱き締められてしまう所長。

 

「想い人の元に帰る為に戦う……。余は魔術師の義務とかよりもそっちの方がとても好ましい!不安がる事はないオルガマリーよ!貴殿にはローマの加護がついている!」

 

「正直、ヘンテコな格好をしているお姉さんって印象しか無かったけど、覚悟を決めた瞳をしている。僕的にはそういう人をマスターとするのは大歓迎だ」

 

「マスター……?」

 

 ビリーの言葉にオルガマリーは疑問符しか浮かばない。だってマスターという単語が一番似合うのはあの赤髪の少女、藤丸立香しかこの世界においていない。レイシフト適正もマスター適正も一切無い自分には縁の無い言葉だ。

 

「パスが繋がってればいいってもんでもないでしょう。オレは貴族然としているお嬢様は苦手なんだが、アンタには何故か親近感が湧くよ、苦労人的な意味で」

 

「ここにいる者は皆、君の作戦に賛同し、剣を授けんとしてここにいる。それはもうマスターとサーヴァントの関係ではないのかね?」

 

「私は理想が高いからそう簡単には認めないけどね!ただまぁ、いつか来る本番の為の予行演習も悪くないわ!」

 

 ロビンの軽口が、ジェロニモの言葉が、エリザベートの照れ隠しがオルガマリーの心に染み渡る。

 

 ――そっか、マスターになるってこういう事なのね。

 

「貴方達の命、私に預けて頂戴。皆、生きて帰りましょう!」

 

 五騎のサーヴァント達が数多の反撃の罠が生い茂る森林へと姿を消していった。オルガマリーも間もなくそれに続くだろう……土煙をあげ、爆走する『豪姦魔』を誘い込んだら。

 色欲の悪魔には目の前の女を組み伏せ、犯し、貪る事しか頭に無い。

 

 

 「極上ダァ!その乳房も!唇も!太腿も!尻も!肢体全てガァァ!!触らせろ!舐めさせろ!ダカセロォォォオオオ!!」

 

「お断りよ。私の身と心はもう別の獣に捧げてるのっ!」

 

 快楽天の眷属に背を向けて、森林へと走り出す。それは逃走行為ではなく、闘争行為の合図。オルガマリー・アニムスフィアの一人きりの戦いが始まった。だがそれは決して孤独なものではない。

 

 

【第五の戦】

 

 親愛の姫:オルガマリー・アニムスフィア

 顔の無い王:ロビンフッド

 アパッチ族の戦士:ジェロニモ

 少年悪漢王:ビリー・ザ・キッド

 ローマの花嫁皇帝:ネロ・クラウディウス

 歌い踊る竜娘:エリザベート・バートリー

 

         VS

 

  色欲の豪姦魔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前線から離れているここも慌ただしくなっている。

 突如として魔神ケルト兵なる者達の数が膨大に膨れ上がったという。さらには『狂竜』に匹敵するレベルの怪物達が五体も現れたという。もはや生身の人間達でどうにかなる段階は過ぎており、機械兵達ですら足手まといになってしまうレベル。デンバーから飛行している大量の銀色の飛行物体がいなければ、ここも地獄絵図になっていたのかもしれない。

 

 剣を握り、戦地へ赴かんとした時、唐突に声をかけられた。

 

「そんな様子で一体、どこへ行こうというのだ」

 

 口ぶりは勇ましくもその声色はとても耳に心地良い。

 聞きたくて、一番聞きたくなかった声だった。

 

「迷った剣で戦場に来られても迷惑だ。今の貴様ではエレナのUFO1機にも及ばんぞ」

 

「ふっ、ははは。随分……と、手厳しいな……」

 

 乾いた笑いしか浮かばない。わかっている。このシータがいた世界にラーマという男がいたのかどうかは些事たる問題では無い。ラーマという男がいて、あの異邦の英雄と結ばれたのか。それともいなくて、結ばれたのか。そんな事を考えても何の意味も無い事はわかっている。

 

 わかってはいる……が……それでも、それでも、別人とはわかっていても……自分が実現出来なかった彼女の笑顔と幸せを花嫁姿としてまじまじと見せつけられてしまっている現実が余の心を締め付ける。

 

 気にしていない。嫉妬をするな。そんな無様な真似を晒すな。余はシータを救えなかった。あの男はシータを救え。ただ、それだけの話ではないか。感情を押し殺せ。この特異点に召喚された英霊としての本分を果たせ。

 

 なのに剣筋は鈍ってしまう。その事を婦長にも見抜かれ、今こうして別世界のシータにも見抜かれている。

 

 余は一体、ここになにをしに――。

 

「アルカトラズ島に貴様とそっくりな女の子が囚われているようだ」

 

「え――」

 

「余の大事な家族が保護しているが、その島も大量の魔神ケルト兵と『狂竜』に匹敵する巨人が跋扈しており、脱出が容易ではない」

 

 シータ……。君も、この世界に召喚されて――。

 

「これでまだ余の言いたい事がわからぬようなら、その頭、射抜く所だが……。フッ、やっと見れる顔つきになったではないか」

 

 遠い芝を羨ましがっても意味はなく、そこに憧憬や羨望、ましてや嫉妬と悔悟を抱えても何も得る物は無い。余の過去はもう終わった事なのだから。だが、今その続きが出来るというのなら、この瞬間に救える物があるのなら、余はもう二度と間違えない。

 

 今度こそ、この手でシータを救ってみせる。絶対にその手は離さない。

 

「行く。そのアルカトラズ島とやらに、魔神ケルト兵も巨人も斬り伏せてみせる。余の恋路を邪魔する者は何人たりとも許さん」

 

「貴様一人では荷が重いだろう、余も同行する」

 

「……ありがとう、遠い世界のシータ」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

「んっ?」




【アルカトラズ島の監獄要塞にて~】

「はいもしもし~。こちら、貴方様のシータです。えぇ、脱出しようとは思ったのですがウジャウジャと雑兵達が湧いてきたので今、その処理の真っ最中です。しかも何か金髪マッチョの巨人が要塞の外で味方を喰いまくってますし、幸い、私達の方にはまだ気付いていないようですが……。共食いカニバリズムとか見たくないです。どうせ見るならマスターにお可愛いバナナを食べられてヒンヒン鳴くラーマ様を見たいのですが……今はそういう話をしていない? あっ、逆の方が良かったですか? もう、ラーマ様のえっち。…………はい、ごめんなさい真面目にやります。私の宝本をブラフマーストラは勘弁して下さい。えっ? そっちのラーマ様が勘違いしている? そのままの方がいいんじゃないんですか? いや冷静に考えて下さいよ男の自分が雌になって、花嫁になって、知らない男の上で腰を振ってるなんて誰が予想できます? 私と勘違いしたままの方が本人にとって幸せでしょう。あっちょっと待って下さい、ラーマ×ラーマもありのなのでは? 雄々しいラーマ様に組み伏せられる雌ラーマ様、逆もありぃ! 大丈夫です。不貞ではないです! 自分自身だからオナニーみたいなもんです! ハァ、ハァ、ハァ、今度、式部先生に書いてもらいましょうか。あぁっ! ごめんなさいごめんなさい切らないで下さい、はい、自重します。えぇ、了解しました。取りあえず、ラーマ様が来るまではこの世界の私を守りながら待機と。不用意にその巨人を倒さないようにですね……了解です。この世界の私? 戦闘は私一人で事足りるので精神安定も兼ねて本でも読ませてます。はい、式部先生の『七歌物語』を。もうラーマ様の章を食い入るように読みふけっていますよ。さすがは私。世界が変わっても趣味は変わらなかったのですね……ラーマ様? もしもし、もしもーし? ラーマ様――? ……………………切れてる」



【第六の戦】
コサラの王:ラーマ
花嫁にされた夫:ラーマ
     VS
暴食の巨人









『七歌物語』
作者:紫式部

式部先生の取材と脚色によって事実と虚構が織り混ざった長編ファクション小説。
仲睦まじい夫婦が治める国に一人の旅人が訪れた。その旅人は大層、夫と気が合った、合い過ぎる程に――『不貞羅刹』編。
その男は尾張の国の大名を見初めた。大名である姉の貞操を守る為に弟は姉に扮して、その男を謀ろうとするが――『快鳴時鳥』編。
その美男子が仮面を外す瞬間は限られている。宝具を使う時、体を清める時、あるいはマスターと……。いつからか、美貌を隠す為ではなく、秘めた感情を隠す為に仮面に頼るようになったのは――『剥面淫美』編。
等……を始めとする独立した七つの章で構成されている。刑部姫が挿絵を担当したライトノベル版もある。普通に18禁。ライトにした意味ないね。ホモじゃねぇから。









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