グダお「また俺のいない所で殺し合おうとしたな?」
グダお「俺がやれと言ったらやるのだ。抱き合え」
酒呑「……」
頼光「……」
グダお「令呪をもって命ずる抱き合え」
酒呑「……ッ」
頼光「……(泣」
ここ最近の話はジョジョ5部の処刑用BGMを流しながら書いてます。
「あーあ、趣味が悪いわねーこの城。同じ女としてセンスを疑うわ」
色っぽく胸元を扇ぎ、こちらの世界のメイヴを縛り上げていた魔神柱の残骸を横目に角を生やした快楽僧、殺生院キアラへと歩を進めるのはグダおの永遠のセックスフレンド、メイヴ。
余裕のある言動とは裏腹に彼女は既に宝具を展開していた。『
数多の白い魔手がメイヴを守るように出現していた。
「特異点は全部で七つ。ここが五つ目。あぁ、けど親玉が間抜けにノコノコと顔を出してきたのなら……マスターの手を煩わせるまでもないか。今、私がここでケリを付けてあげてもいいんだけど、『ビースト』」
姿勢を屈め、構えるメイヴは臨戦態勢。本気の殺意で親友に付き纏う悪い
だが、そんな殺意を向けられても殺生院キアラの様子は違和感を抱く程に静かであった。ついさっきまでは闖入者に対し、叫びながら素性を問うていたというのに。
メイヴが白い魔手、人類悪デアーが扱っていた『白式官能』を解放した所から彼女の様子は一変した。
「な、ぜ……なぜ、何故、ナゼ、あなたがその宝具を使っているのです?彼の宝具を身に宿しているのです?」
人知の領域を超えた快楽を産み出す『白式官能』とあらゆる快楽の受け皿になる殺生院キアラとの相性は最高である。
だが、愛欲の獣は興奮する事も淫蕩に唇を歪ませる事も無い。その表情に浮かんでいたのはありふれた女としての嫉妬と怒り。感情の大きさだけは人類悪に相応しいエネルギーだった。キアラの中で飼われている魔神柱が数体その余波で消滅してしまうぐらいには。
「答えろぉぉ!阿婆擦れぇええ!」
「何だろう、会って間もないけど、あなただけには死ぬ程言われたくない台詞ね」
以前までの殺生院キアラならば悦んで女王メイヴの宝具を受け入れていたのだろう。だが、今の彼女は違う。グダおに恋し、何としてでも彼と結ばれたいと目論む快楽天が望むのは
彼と星が滅んでも心ゆくまで溶け合いたいのだ。
宝具とは英霊の象徴で生き様そのもの。恋慕する男と全く同じ宝具をどこの馬の骨とも知れない女が我が物顔で使っている事に対しては殺生院キアラの我慢の限界は簡単に訪れた。
「…………会って間もない。えぇ、その通りですね。そして女の勘ですが、私は確信しています。あなたと私は絶対に相容れない存在だと」
藤丸立香にも、何度も自分の邪魔をしたマーリンに対してもここまでの怒りを抱く事は無かった。
目の前の女は自分が欲しくて欲しくて止まなかった物を敢えて選ばない……何故だかそんな具体的な雰囲気を感じ取った。この女は何が何でも叩き潰す。殺生院キアラがそう覚悟した時は『白式官能』と対抗するように無数のドス黒い触手が彼女の周りに展開された。
「へぇ、いいじゃない。女の顔が剥き出しになってるわよ。キャットファイトは趣味じゃないけど、本気ぐらいは出してあげてもよさそうね」
「上から物を言わないで下さいますか、売女が」
この瞬間だけ、殺生院キアラの眼は北アメリカの戦場からメイヴへと移った。
親友は得ようとも男漁りは未だ継続中なケルトビッチ。一途になり、そういうのは卒業した元テラニービッチ。
グダおがいた世界線では出会う事の無かった二人の女、どうしようもないぐらいに『女』な二人はアメリカの中心で激突した。
(ワシントンから供給されていたエネルギーが切れた?もしやキアラさまに何か…………。いや、あり得ぬか。何であろうと私の『
巨大な水球となった汚水の塊を眼前に捉え、『嫉妬の老鹿』は魔神ケルト兵達の再生速度が先程とは比べ物にならないぐらいに衰えている事、自身に供給されていた『怠惰の母胎』からの魔力が完全に途絶えている事に確かに気付いていた。
「結局、思わせぶりな事を言っていたこ奴も何も出来ずじまいだったな」
だが、殺生院キアラという母を絶対視している『嫉妬の老鹿』は彼女の身に何かあったとは思わない。あの最低最悪天上楽土からの悪魔を脅かす者がいるなんて考え自体が存在しない。そしてそこから産み出された自分達の勝利も信じて疑わない。
供給が断たれている事も「キアラさまが戯れに何か思い付いたのだろう」程度しか考えていない。
叡智司るフィン・マックールの頭脳が泣いている。
グダおが汚水に囚われて、数秒。並の人間ならとっくに骸だけになっているが――。
この悪魔が敵対しているのはその並から最も遠くに位置し、悪魔よりもよっぽど恐ろしい男。
「なっ――」
黒き水牢を破り、飛び出した彼の外見は毛ほどに変わらず健在。迷う事なく『嫉妬の老鹿』の懐へ潜り込む。
「ば、バカなっ!あり得ん!!十秒もいれば、千年の時は過ぎる!!何故、老いない!何故、動ける!何故、生きている!もしや、もしや、貴様――、不老不死、真祖の類だったか!!」
「おいおい、俺程度が不老不死とか、パイセンに比喩表現じゃなくて
「ぐ、ぐ、き、貴様ァッ!!」
『嫉妬の老鹿』にはグダおが自分の能力の影響を受けなかった理由がまるでわからない。もちろん、彼が不老不死なんて虞美人ぶち切れ案件な事もない。
グダおは定命の身。ただ、それが普通の人よりほんの少し長いだけ。
『
だがそれも無限では無い。常人から見れば無限に等しい長さかもしれないがいずれ終わりはやってくる。その前にグダおは『
最初に汚水を避けたのも、彼女達の為の寿命を浪費したくなかった男心。だがそれでも勝利の為には何かを犠牲にしなければい覚悟も必要だった。故に彼は死地に飛び込んだ。消費した寿命?マーリンを筆頭に埒外のキャスター陣達が上手い事やってくれるんじゃない?
(ま、ずい……!)
接近を許した『嫉妬の老鹿』は足りない智慧をフル回転させる。両手槍で近接戦を挑むのは無謀。この状況において、『
「
だが、そんな悪魔に反撃の芽を許さないグダおは自身の姿を一変させる。
数多の女を脱がせてきた高速の脱衣術。服を脱がせる術に長けているという事は逆説的に服を着る術に長けていてもおかしくはない。
新宿で見せた女装術。戯れにカルデアのメイド喫茶で数多の客から
ウィッグを付けて黒髪ツインテールになる時間も含めて、グダおが女と見間違う程の可憐さを含めた紅色の着物美少女姿になるまでの時間、0.3秒。
(理解不能!!何故、ここで女装!!策?魔術的な儀式!?それとも宝具の一種か――……!!)
「模倣宝具『
モデルとなった美の女神に勝るとも劣らない彼の女装姿はいつの日か戯れにその姿のままで男性陣にチョコを配ってみたら
ランスロットには本気で口説かれ(その後、マシュに盾の角でボコボコにされた)、
フェルグスには本気で部屋に誘われ(その後、メイヴに戦車で引きずり回された)、
賢王様には貴様がもうイシュタルになれば?と高評価を戴き(その後、イシュタルはぶち切れた)、
エルキドゥは涙目でマジで止めてくれと懇願されるぐらいには真に迫っていた。
男を誑かし、蕩け、陥落させる毒の微笑みが炸裂する。
「ア、ア、あ、あー―なんと、美しく、輝かしい……」
『嫉妬の老鹿』が持つ両手槍『
なかったが――、嫉妬の原罪として存在している悪魔にとってその美しさはあまりにも眩し過ぎた。数秒間あっけに取られて思考が完全に停止し、無防備になってしまうぐらいには。
「トネリコの木製複製ゲイ・ボルクのストックはまだまだあるのさ。噴き上がれ魔力!この腕は鬼の右腕!!」
『
「模倣宝具『
縁を結んだ英霊達の宝具の連続技。グダおの真骨頂はその引き出しの多さである。
声に出してみたい宝具ベスト5に入る(邪ンヌ調べ)茨城童子の宝具は確かに巨大な鬼の腕を幻視させていた。ロケットパンチはアッパーカットの要領で呆けていた『嫉妬の老鹿』に突き刺さる。
「お、お、オォォォォォォォッッ!?」
「これが!俺達の!反撃の狼煙だぁああああ!!」
槍によって構成された巨拳を振り抜き、大地が割れ、圧倒的な噴射力で巨拳と共に宙へと打ち上げられる悪魔。100、500、1000メートル……まだまだ浮かび上がる。
▲▲▲
『取りあえず、アイツらの再生能力はこっちで何とかする。どうやるかはちょっと言えない。ゲーティアを呑みこんでいる以上、愛欲の獣が
『だから、無限再生能力を封じる事が出来たら、こっちから分かりやすい合図を送るよ』
▲▲▲
上空一万メートルに到達した時、北アメリカの空にそれはそれは巨大な花火が咲いたそうな。
大気を震わせ、核爆発のような衝撃を伴った輝く火の華は各地で戦う立香達にも届いただろう。
「長生きの秘訣?たくさん、愛することさ」
【第一の戦】
親愛の英霊:グダお VS 嫉妬の老鹿
勝者:親愛の英霊:グダお
「先輩、あれは!」
「うん!グダおが上手くやってくれたってこと!反撃開始だよ、マシュ!」
スカナナがあらかた魔神ケルト兵を殲滅した頃、無限に湧き出ていた魔神ケルト兵の復活が突如として止み、『憤怒の魔猪』は己に流れていた力の断絶を感じていた。
憤怒の悪魔は怒り狂いながらも確かに察していた。我が本拠地、主に何かあったに違いないと。キアラを絶対視している眷属にとってはらしからぬ思考回路。
この悪魔が憑りついている肉体のかつての記憶が何かを想起させているのか。
「おのれ!おのれ!オノレェェッ!卑劣極まる魔術師共ガァアアッ!!我が主に何をシタアアアアアァァッ!!」
『気を付けるんだ皆!あの二槍、特に黄槍の方には回復阻害の呪いがかかっている!絶対に致命傷は受けないでくれ!』
「呪い?何をオカルトな事を言っているのですか。この世界に治らない病はありません。殺せない菌はありません。私はこの世の害あるもの、毒あるものを全てを断ちます」
激昂のあまり加速する魔猪の二槍は伸縮させながら、その攻撃を加速させる。サポートに回っているエレナの小型UFO達も意に介さず叩き落とされ、立香達は攻めあぐねていた。マシュもテスラもエジソンも深い傷ではないものの『
そんな中、鉄の看護師。この特異点において誰よりもバーサーカーなナイチンゲールはブレなかった。
「『
宝具を発動させたナイチンゲールの背後に白衣の女神が降臨し、握った巨大な剣を振り下ろした。
それは決して攻撃宝具ではなく、彼女の精神性を発現させた対軍回復宝具。彼女を中心とした一定範囲においてあらゆる攻撃性、毒は無効化される。当然、『
『よしいいぞ!彼女の宝具と敵の宝具は相性抜群だ!立香君、マシュ!ナイチンゲールをサポート要員として、君達は』
「殺菌ッ!」
『って言ってるそばからぁぁっ!?』
通信越しにドクターの悲鳴が聞こえるが一切意に介さないホスピタルバーサーカーは『憤怒の魔猪』に劣らない程の獣染みた動きで掴みかかる。
「菌の温床である猪の皮を被り、我が物顔で病を撒き散らす!私はそういう存在が!許せません!貴方の怒りなど!それに比べれば些末な!事なのです!」
『憤怒の魔猪』の胸倉を掴み、片手でペッパーボックスピストルを連射する看護師の形相は凄まじい物だった。憤怒の原罪である敵に匹敵する程の怒りがあった。鉛玉を何発か至近距離で受けた『憤怒の魔猪』は多少のけぞったが倒れるまでは至らない。
「些末!些末だと!我が怒りを些末な事と言ったか女ァァァ!!」
「マシュ!」
「はい先輩!!」
長ったるい指示は不要。竜の尾のように伸びた二槍はナイチンゲールの死角を突き、背中から霊核を貫かんとしたが、マスターの意向を汲み取ったシールダーが彼女の背を守っていた。
「殺すッ!何もかも殺す!魔術師も!聖杯戦争に連なる英霊共も!聖杯戦争に関係し得る可能性がある全ての命を我が槍で突き滅ぼしてくれる!!死ね!死ね!ただ死ね!!」
顎を蹴り飛ばされ、再び距離を取った両名。『憤怒の魔猪』はまだそこまでダメージを負っていないが、怒りのあまり額の血管が切れ、血が流れ始めていた。
「エジソンさん、テスラさん。距離を取った時点で電撃でどんどん攻撃しちゃっていいから!」
「しかしな、ミス立香よ……。婦長がああも敵に張り付いていたら巻き添えを」
「大丈夫!多分、ナイチンゲールさんなら痺れたぐらいじゃ止まらないと思うから!」
「フハハハハハ!君もレディと同じぐらいに豪胆な事だ!!ゆくぞ凡骨!!」
雷撃の嵐の中、『憤怒の魔猪』は怒りに塗れた思考回路の中で一つの疑問を抱えていた。
確かに数では負けている。だが、所詮は近代の英霊共に英霊のなりそこないが一騎。なのにどうして攻めあぐねている?と。
確かにあのバーサーカーが扱う宝具と自身の槍は相性は悪いだろう。だがそれだけだ。ステータス的にも自分の方が優に勝っている。
近代の英霊共が扱う雷撃も鬱陶しいだけで決定打にはなっていない。殺生院キアラという偉大なる母から生み出された自身に敗北はあり得ない。ならば、何故未だなお勝利を手に出来ない。聖杯戦争を起こす愚か者共を誅殺出来ない。悪魔の脳細胞全てが怒色に染まる。
「オーダーチェンジ!全体強化!」
『ようし!上手いぞ立香君!婦長に敵が襲いかかったタイミングでマシュと位置変更!防御という点においてなら、マシュは既に一戦級のサーヴァントだ。数秒でも敵を釘付けに出来るなら、他の3人の攻撃も当てれる!』
(やはり要はあの小娘か)
今までも何度も殺そうとした。だが、その度にまるで殺気を予知されているかのようにあの小さき盾兵に妨げられる。成程、姿無き声だけの男の言う通り、何かを守るという点においては目を見張る物があるのは認めよう。
(あぁ、そうだ。聖杯戦争というのはいつもそうだ。単純な力比べならば魔術師など不要。現世に存在出来るだけの魔力タンクさえあればいい)
雷撃の嵐を降らし、点ではなく、面での遠距離攻撃を続けるテスラ・エジソン。味方の攻撃が当たろうともお構いなしに狂気のまま『憤怒の魔猪』を殺しに行く型に嵌らない突撃兵ナイチンゲール。致命傷のみを守り婦長をサポートするマシュ・キリエライト。拙いながらも藤丸立香という少女はその4人を上手く扱っていた。
五つの特異点を乗り越えた事。そしてグダおという特大の異物をいつも隣で見ていた経験は少なからず彼女に大きな影響を与えている。
(英霊と比べれば、吹いて消えてしまうようなか弱き存在なのに聖杯戦争においては重要な
『憤怒の魔猪』は愛槍二つを束ね、混ぜ合わせる。鞭のように伸びる二本は蔦のように絡み合い一振りの剣となった。その形状は間違いなくディルムッド・オディナが愛用していた魔剣『
彼が狙ったのは合衆国軍の長でもなく、星の開拓者でもなく、鋼鉄の看護師でもなく、白亜の盾兵でもない。
何の力も無い平凡以下の魔術師。偶々生き残った為に人類最後のマスターとなってしまった少女、藤丸立香の背後。その無防備過ぎる背中である。
「殺った!!」
「せんぱ――」
一瞬にして立香の後ろを取り、助けを許す事もなく、無慈悲にその刃は立香の心臓を貫いた。
(死んだ、死んだ――死んだ――ー!やった!確実に手応えはあった!こんな簡単な事だったのか!聖杯戦争に勝つとは!英霊共と馬鹿正直に戦う必要はない!惰弱なマスターの息の根を止めてしまえば、それだけで終わりだ!!)
「はは、ハハハハハハハ!!ざまぁみろ!何とあっけない!貴様らの主はこの様だ!これで世界を救うなど片腹が痛いわ!!」
肉を裂き、臓器を貫いた感触は確かにあった。口から血を流し、倒れ伏せる少女は間違いなく実体を持っている。物言わぬ死体となった。
『憤怒の魔猪』は歓喜に震える。悲嘆しろ、泣き叫べ、怒り狂え、貴様らの大事な主はこの俺が殺したぞ。我が怒りに絶望しろ、騎士が懐いた祈りを踏みにじった報いを受けよと残りの英霊達を屠ろうと下敷きにしている少女の肉体から顔を上げて――。
「ガンド」
背後から受けた呪術の弾によって完全に動きが停止した。
「ガ、あ、アァ!?な、ナゼ――?」
(何故、貴様がそこに、俺の背後にいる。殺した!殺しただろう!今、この瞬間に!なら、俺の下にいるのは一体――?)
「さっきから気付いていた。あなたが私の事をずっと狙っていたのは……。殺気にちょっと敏感になっちゃったのかもしれない、普通の女の子としては悲しい事にね」
『憤怒の魔猪』が刺し殺した筈の立香の肉体が消えていく。まるで英霊が光の粒になって消えていくのと同じように。
立香はこの戦いが始まる前にスカナナからファンシーな魔法ステッキを貰っていた。
スコーネが愛用している蒼色の魔法ステッキと対を成す赤色の魔法ステッキ。元祖魔法少女イリヤスフィールを母に持つ「リヤンスフィール」が扱うマジカルルビーの後継機、その一本目「ルビーα」をちょろまかしていた。
始めはどさくさに紛れてスコーネに渡して、ルビー&サファイアのツヴァイフォームにでもなってもらおうかと画策していたが、
▲▲▲
「マイフレンド。貴女にはこのステッキとカードを渡しておきます」
「白紙のカード……?」
「クラスカード、あるいはサーヴァントカードと言います。しかもオールクラスの極レア物ですよ、大事に使って下さいね。ほら、ここのステッキの星の部分がパカって開いてカードを入れれるようになったんです。先代にはないギミックですよ。皆好きですよね、カードを機械に差し込んで変身ッ!ってやるの」
「私、女の子だからそういうのにはちょっと……」
「最高じゃないっですか!普段は平凡な女の子だからこそギャップが映えて戦装束が輝くのですよ。自らの平穏の為に敢えて平穏と程遠い殺伐とした戦場へと身を投じる女の子!かぁ――カックァ良い!前口上、私が考えてあげましょうか?」
「取りあえず、使い方だけ教えて……」
▲▲▲
「初めてにしてこの使い方……やはり天才であったか」
見物に回っているスカナナの呟きを他所に。『憤怒の魔猪』は何が起きたのか理解出来なかった。
仕組みは魔法少女イリヤスフィールがいた世界においての『夢幻召喚』と変わらない。
その身に限定的に英霊の力を宿し、行使する魔術礼装。
だが、マスター適正はあったとしても魔術師としての才能も魔力も回路も十分にない立香が英霊をその身に召喚出来るのはもって十秒。
立香は考えた。その十秒で自分が出来る事を。
英霊を宿した自分も一緒に戦う?付け焼き刃にも程がある、足を引っ張るだけ。却下である。
聖杯戦争における
そもそも藤丸立香は人類最後のマスターなんて大任を任されてはいるけれど、何の変哲もない普通の少女なのだ。そんな彼女が歴戦の英霊達と混ざって戦えるなんて夢物語を見るわけもなく――。
だから、立香は――『憤怒の魔猪』が自分に殺意を向けているとわかった時からサーヴァントの選択は決めていた。
――カード、セット。夢幻召喚『百貌のハサン』。
「あなたがもし、私を狙わずマシュ達と正攻法で戦われていたら、勝敗は分からなかった」
「フジマル……リッカ、キサマッ――!」
自分が狙わているのなら、それを有効活用してやろう。彼女はそんな強かな気概を持っていた。
百貌のハサンの宝具『
「何をやったってしくじるものなんだよ、ゲス野郎はね」
魔神王すら数秒、動きを止めさせたカルデア特製の魔術礼装。バーサーカーの如く動き回っていた『憤怒の魔猪』の決定的な隙がこの瞬間出来上がった。
最初で最後の好機!ここを見逃す彼等ではない。
「ミス・マシュ!彼女を連れて、射線上から離れてくれたまえ!!」
エジソンの大き過ぎる声量の指示と共にマシュが立香を抱えて避難する。
胸に付いている噴射口に
「貴様から協力を申し出てくるとはな、正気を失ったかと訝しんだが……。実は偽物とかじゃないよね?」
「ふん。何、英国でそのあり得ざる可能性によって私は敗北を喫した。ならば正気の一つや失ってもおかしくないだろう」
テスラの脳裏に浮かんだのは第四の特異点ロンドンでマキリに召喚されてしまった時、自分を葬った怪力少年の腕に付いていた『全戦局対応型直流交流万能籠手』。今現在なお交流が直流に劣っているなど毛ほども思っていない彼だが、それでも忌み嫌っていた物と複合した物に自身が敗北したとなれば、考える所はある。天才故に。
「交流から直流の変換は容易。出し惜しみ無し、電力を回せ!決めに行くぞエジソン!――ついて、これるか?」
「貴様の方こそ、ついてきやがれ――!!テスラ!!」
自前で産み出せる電力の量はテスラの方が上。故に彼がエネルギー源となり、送電機によって交流を直流へと変換し、膨大な電力をエジソンへと送り込む。発明王は砲台となり、迸る電力を限界まで溜め込む。
「強き英雄が世界を救う時代は終わり、幸福を願い、努力した者達が世界に光を灯した。これこそが多くの偉人、奇人、発明人達によって脈々と受け継がれてきた文明の灯火!貴様達に与えるものなど、只の一つもないぞっ!!」
嵐の如き、雷音が彼の周囲に轟き、たてがみは伸び、その顔面はより一層人間離れした獅子に近づいていった。だが、いくら風貌が人外染みたとしてもその頭脳、志は変わらず。より良い世界の為に歩みを止めなかった二人の電力はさらに
「『
あらゆる神秘や信仰を剥ぎ取る対民宝具が純粋な攻撃性を伴った極太の雷電レーザーとなって『憤怒の魔猪』を包み込んだ。数十秒。威力だけなら対軍宝具にすら匹敵する文明の集大成は埒外の化け物を電熱によって溶かしていく。
『近代の英霊とは思えない威力!さすがに人類悪から産まれた眷属でも直撃すれば……』
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………」
自身のスペックを完全に超えた宝具の使用。電力を限界まで搾り出したテスラ共々、エジソンは膝をついていた。
大地さえ削り取っていた雷電投射。地平線まで続いていた破壊の後に『憤怒の魔猪』の姿は……。
「グゥッ、ガァッ……アッァ、ハッ、ハッ、あ、危なかった……あと、後数秒、今の攻撃を続けられていたら完全に消滅していた…………」
『嘘だろ!?』
皮膚は爛れ、全身の半分以上が黒く焦げ、被っていた大猪の皮は完全に消滅しているといった既に満身創痍といった状態だったが、それでも言葉を発するだけの余力は残っていた。
(理由は不明だが……『怠惰の母胎』の再生能力が断たれている以上、もう死ぬ事は出来ない……ここは一度逃げ、再起を図り、今度こそ油断なく奴らを仕留める――!)
だがその今度は訪れない。生存している『憤怒の魔猪』を視認した段階で誰よりも早く動き出した者がいた。
「入念な滅菌処理に感謝を。ミスター・エジソン、ミスター・テスラ」
「グッ、アッ、ガァッ……き、キサマッ!」
首を掴み、殺意を以て本格治療へ移行するクリミアの天使の姿がそこにはあった。
「
至近距離から放たれた複数の銃弾が太腿を貫く。
「清潔!」
鋸で右腕を切り落とす。
「消毒!」
『人体理解A』によって人体の破壊方法を熟知している故、傷口をさらに切開する。
「殺菌!」
筋力B+の握力で頸椎を握り潰される。
「緊急治療!」
(マズい、マズい、マズい、この女!!頭がおかし過ぎる……!逃げなくては、殺されるッ!終わってしまう!距離を、距離を取らねばッ――!)
人間でも英霊ですら死んでいるであろう情け容赦の無い婦長の治療行為。人類悪仕込みの邪法によって英霊と魔神柱を掛け合わされた作られた眷属のフィジカルが未だ生存を許していた。それでもその命は風前の灯火、最後の火事場の馬鹿力でナイチンゲールを引き剥がした『憤怒の魔猪』だったが――。
「は――?」
「逃がし、ませんっ!先輩が、テスラさんが、エジソンさんが、ナイチンゲールさんが、皆が作ってくれたチャンスを!ここで無駄にはしませんっ!」
バックステップで離れようとした『憤怒の魔猪』の動きをいつの間にか背後にいたマシュが盾で妨げていた。
婦長との距離を作らせない壁として、後ろからその背中を押し込んでいた。彼の眼前には手榴弾を持った看護師の姿が――。
「この、クソカス共がぁっ――!!」
「殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!」
叫んでいた彼の口に手榴弾を突っ込み、
「完全治療!!!」
憤怒と不治の病原菌を撒き散らしていた魔猪は首から上を無くし、ようやく倒れ伏した。
勝者はいうまでもなく、赤い軍服をさらに紅く染めたフローレンス・ナイチンゲール。
治療を終え、血に塗れた彼女の顔は晴れ晴れしく見えた。
【第二の戦】
人類最後のマスター&精神的非処女:藤丸立香
デミサーヴァント:マシュ・キリエライト
クリミアの天使:フローレンス・ナイチンゲール
メンロパークの魔術師:トーマス・アルバ・エジソン
雷電博士:ニコラ・テスラ
VS
憤怒の魔猪
勝者:立香達
「はぁー……生きてるぅ。怖かった――」
「お疲れ様です。先輩」
『治療って何なんだ……』
『いやバーサーカークラスの影響ってやっぱ恐ろしいねー。さすがに生前からこんな熾烈な事はないとダ・ヴィンチちゃんは信じたい!』
何でエロ小説の筈なのに真面目に戦闘描写を書いてるんじゃ、ワイ?