司馬イネスで一番驚いてるのは作者だゾ。
カルデアコレクションにて、司馬懿(ライネス)、アストライア、グレイ更新。
【エルメロイ次期当主様からアニムスフィアのご令嬢(ハロウィン・プリンセス)の姿を見ての有り難いお言葉】
「うわぁ、うわぁぁ――――、アニムスフィア家って結構、性的に倒錯してた家系だったのかな? そりゃあ、私だってあんまり褒められた性根はしてないし、不意打ち気味に本来とは正反対の被虐心に目覚めかけてしまう事もあるけど、さすがにその格好は無いと思うぞ。そもそも特異点って現地の人間の衆目に晒される可能性だってあるわけで、それをあんなムチムチ布面積封印指定の小悪魔コスで跋扈するって露出強にも限度があるだろ。いや、もしかしすれば……そういった羞恥心や見られる事による興奮をエネルギーとして術式に組み込んでいるのか? 天体科というよりは変態科? え……?あの少年にこの格好を強要されているのかい?いや、嘘だろ君、部下からのそんなエロチックコスを受け入れて、なおかつ満更でもないとか……。あのね、もう少し真面目に人理修復に取り組んだ方がいいと思うぞ。君達の変態的な特殊プレイに巻き込まれる周りの気持ちを考えた方がいい。”私の体は彼に造られてしまったのだから、しょうがない”? …………………………………………ソッカ、ソッカ、君はもう心身共にあの年下の男の子に開発されてしまったのだね。それはしょうがないね。まぁ、人理焼却なんて生命に危機が迫っている極限の状態だから生殖本能増し増しになってオルガズム・アニムスフィアになってもしょうがないね。大丈夫! 大丈夫だとも! ちゃんと君の話は聞いているさ、ただTPOは弁えるべきだよ、草葉の陰でマリスビリーが泣いてるかもしれないからね。取りあえず、私はここでお暇するよ。やめろ触るなドスケベがうつる」
「女ァァッ!!女ァァッ!!女女女女女ァァッ!!」
背後に迫ってきているであろう怪物には目もくれず、森の中を駆ける。元々、人の手が加わっていない自然の路だが自分が走る
普通の人間とサーヴァント……いやそれすらも凌駕した怪物の追いかけっこなど本来は成立する筈が無い。
レフによる爆破テロで魂だけに存在になってしまった私に、聖杯と幻想種達の素材諸々で器を構成してくれたグダお。
とてもとても好調だ。肉体だけじゃない、あれから彼に散々抱かれて精液を注がれた所為もあるかもしれない。人理が修復されたら間違いなく魔術協会から封印指定を発令されそうなぐらいには人間離れしてしまったが(もちろんそんなのは御免だが)、今はその事に感謝しよう。そもそも肉体派ではない私が数十分走り続けても息切れしていないのだから、その気になれば背中の羽根で空だって飛べるかもしれない。
「おい逃げるな女!!抱けないだろう!!揉めないだろう!!しゃぶれないだろう!!挿れれないだろう!!」
「ひいいいいいいいいいっ!!」
だとしても半泣きになってしまうぐらいは許して欲しい。そんな簡単に精神まで成長する事は無いのだから。いや、それはまぁ、父が亡くなり、カルデアの所長を引き継いで毎日のように吐いてた頃と比べれば自分でも少しぐらいはメンタルも強くなったつもりだけど……。
チラッ。
「SEX!!SEX!!SEX!!SEX!!」
「無理無理無理無理無理無理無理ぃぃッ!!」
顔が怖過ぎる!!興奮で血管がハチ切れて血塗れてでも満面の笑みとか!しかも股についてるマンモスらしき獣の鼻なんてバキバキに反り勃っているし!もしかしなくてもそういう事よね!?ああもう最悪のメタファーよ!!
というかそもそもの話、私は何で前線で体を張っているのかしら!?所長よね?責任者よね?カルデアのトップよね?もっと後方でどっしりと構えているものなんじゃないの?
「所定のポイントまで……後、2キロって言った所かしらっ……」
それでも守られるだけの女にも、喚くだけのお荷物になるつもりも無かった。グダおと肉欲に溺れて安穏と爛れた日々だけというのも……うん、ほんのちょっぴりだけ魅力的なのかもしれないのが。自分が好きになった男には格好良い所も見せたいのだ。俺が助けた女はこんな凄い奴なんだって誇りに思って欲しいのだ。
「ハハハハハハハハハハハハハッハハハハハァァッ滾る滾る滾るぞぉっ!」
「罠もお構いなしっ……全然倒れない。無敵なのっ!?」
ロビンとジェロニモによってここ一帯の森林はブービートラップの宝物庫だった。毒が塗られた矢が飛んでくる、毒が塗られた槍が用意された落とし穴に落ちる。毒が塗られたトラばさみが足に噛み付く。地雷が炸裂する。毒を混ぜ合わせた底なし沼に落ちる。
けれども色欲の悪魔は止まらない。矢が刺さろうとも関係ない。落とし穴に落ちようとも意に介さないで即座に這い上がる。トラばさみに噛み付かれようとも地雷が直撃しようともスピードは落ちる事なく、私という獲物に喰らい付く事しか頭に無い。底なし沼をバタフライで泳いできてる姿を見た時は詳しくは言えないが女性としての尊厳を無くす所だった。
効果があるとは思えない。これで倒せるだなんて思ってない。でもこの悪魔には出来るだけ、ダメージを――毒を受けてもらわなくちゃ困るのだ。
「あぁ、さっきから鬱陶しくて仕方がないわぁぁっ!!」
「マズッ!」
いつまで経っても自分が求める女が手に入らない事に痺れを切らしたのか、担いでいた魔神柱が螺旋に巻かれた巨大な剣のような得物を構えた。グダおから聞いてはいる。あの元々の霊基がケルトの大英雄フェルグス・マックロイだというのなら、まだここで宝具を使わせてはいけない。『
だから、ここは背に腹は代えられない……。
「いやぁん、そんな無粋なもの使わないで素手で私の事、捕まえて欲しいなぁ♡」
「……………………」
自分でも寒気がするぐらいの猫なで声を出して、控えめにお尻を振り、人生、初の誘惑を行った。
「ふふ、フフフッ、ハハハハハハァッ!!そうか、そうか!何といじらしい女よ!!その逃げる様もこの障害も全てお前の求愛かぁ!ならば、俺は応えなくてはなるまいて!!おぉっ!我が怒張がさらに滾るぞぉぉぉっ!」
目論見通り、剣を仕舞ってまた追いかけてきてくれたけど、私は何だかとても死にたくなった。
「追いかけっこは終わりか。厭らしい女よ」
誰が厭らしい女よ。と否定したい気持ちにはなったが、今の自分の格好とさっきの所業を考えるとまるで言い返す事が出来なかった。
取りあえず、ありったけの罠を喰らわせるように逃げたつもりだったが、やっぱりというか致命的なダメージにはなっていない。未だ興奮に下半身を震わせている怪物には余裕しか無かった。
私が足を止めた場所はさっきまで逃げ続けていた木々が生い茂る鬱蒼としたジャングルとは変わり、ゴツゴツとした岩肌が目に入る拓けた場所だった。この森を熟知しているロビンから聞いている。ここ一帯には地下洞窟があり、その中には天井部が脆くなっているポイントもあると。
「そうね。ここまでが私の勝利への逃走経路よ」
「ぬぅっ!?」
人間一人ぐらいなら問題ないかもしれない。だが、下半身をマンモスにしている重量系の怪物が不用意に足を踏み入れたら、その地盤は簡単に崩れ、天然の落とし穴へと誘う。
「ははは、まだ俺を焦らすか!!よほど激しく犯されたいと見える!!」
下からあの怪物の嘲笑うような声が聞こえる。
人類悪に改造された悪魔を地下洞窟に落とした程度でダメージを受けるワケが無いのは私も敵も承知の上だ。
けれども、洞窟という空間は音が反響し、よく響く。野外で聞くより、音が籠るだろう。
「ようやく、私の出番ね!芸術を介さない変態に私の歌を聞かせる気はないんだけど、今日は特別ファンサービスよ!最高のヒットナンバーを見せてあげるわ!」
怪物が地下洞窟へ落ちたのと同時にファンシーな帽子と衣装に身を包んだドラゴン娘が飛び出した。エリザベート・バートリー……彼女だけでなく、他のサーヴァント達とも合流地点にここはなっている。李書文の一撃を耐えたこの怪物を滅する一撃を持つのはグダおやカルナ級のサーヴァントだろう。
私達ではどうしても火力に難がある。だからこそ、手札の全てを尽くして、ありったけのダメージを負わさなければならない。出し惜しみ、一切無く――!
「イカしたバックライトを頼むわよジェロニモ!!」
「やれやれ、私の宝具は照明代わりではないのだがね……」
ドラゴンの翼で飛び上がったエリザベートはジェロニモの宝具と重ならない角度から、狂音波を穴めがけて届ける。
「『
「『
「ぐ、おっっ、オォォォッッ!!」
エリザベートの殺人級音痴攻撃に加え、ジェロニモの宝具『
地下洞窟という限定された空間で音と光が怪物の身を襲う。宝具級のダメージをまともに受けたその成果は――。
「生温いわぁぁっ!!」
鈍重そうな下半身からは想像も出来ない脚力で怪物が地上へと飛び出した。
まぁ……知ってたわよ。この程度で倒れるような相手じゃないって事は。それにダメージを与える事も味方に強化を施す事も目的だけど、もう一つ。これは時間稼ぎ。彼女の宝具詠唱をタイミング良く完了させるまでの時間稼ぎ……!
「畳み掛けるわよっ!ネロ!!」
「承った!!開け、ヌプティアエ・ドムス・アウレアよ!」
味方のバフが完了した次に行うべきは当然敵へのデバフ。
怪物が地上に出た瞬間、既にネロの『
「ぬっ?体がっ……重い?」
「この劇場においては余こそがルール。余こそが主役。色情に狂った悪鬼よ……今、この場で余達が討ち取ってくれる。それでこの劇はエンドロールである!」
ネロが剣をエリザベートが槍をビリーが銃をジェロニモがナイフを、4人……私を入れれば5人が怪物を囲んでいる。ここまで相当なダメージを与えた。消耗は恐らくしているであろうと信じたい……。ここで手を止めず畳み込む……!
「お、おぉ!あの女には劣るが良い女達!!急くな急くな!お前達の相手はあの小悪魔の如き淫らな女の後に十分にしてやろう!俺は!メインディッシュは!先に食べるタイプだからな!!」
「なにおう貴様!!オルガマリーが良い女である事は認めるが、ここで一番なのはどう考えても余であろう!露出度か!やはり男は露出していればよいのか!?」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ!?ていうかネロ、これ本当にコイツ弱体化してるの!?くぅッ!一撃、一撃がっ……馬鹿重いんですけど!!」
「それだけコレが規格外って事でしょ!いやこれだけ鉛玉ぶち込んでも倒れない相手の殺し方とか誰にも教わった事ないんだけどな――!」
ここに来るまで相当数のトラップを受けておいて、サーヴァントの宝具の直撃を受けておいて、圧倒的不利な状況でもまだ……追い詰められているのはこちらだった。剣と腕を振り回す剛力だけで4人の攻撃を捌ききっている。いや……それでも全てではない、致命的な攻撃だけ優先的にはじいているだけだ。比較的ダメージが少ないと踏んでいる攻撃は最初から無視をしている。
だがむしろそれは好都合。ここで殺し切れるだなんて夢にも思ってない。ダメージの大小関わらずもっともっとこの怪物には4人の攻撃を受けてもらう必要がある……。
「よい閨だ……。我が寵愛を示すのに相応しい……。ならば邪魔者の掃除をしなければならぬ……!男男、男は!!俺以外の男はぁぁっ!!この空間に必要無しィィィイイイイ!!」
そんな怪物が邪魔者極まりない男を先に片付けようとビリーとジェロニモに完全に狙いを定めた。だめ、まだ駄目、彼等がここで欠ける事は許さない。指でハートを模った私は
「こっちを見なさいっ……!」
そもそもあの怪物は初めから私に夢中だったわけで、意識をこっちに向けるのは簡単な事だった。けど、何かしらね……この躰になってから魅了とか火とか元々私には無かった属性ばかり扱えるようになったのは。
「お、オォォォッ、ウヘヘヘヘヘっ、そんなにも悩ましく求める必要は無いぞ美しき女よ。俺は今すぐにでもお前の方へと向かおうと」
ゆっくりと方向を変え、男の欲望全てを詰め込んだともいえる下卑た顔がこちらに向けられる。真正面から相対するだけで心が折れ、その場にへたり込みたくなる。足を止めるな、思考を止めるな、眼を逸らすな。泣き喚くなら、醜態を晒すなら後でいつでも出来る。私は絶対に勝って、皆の元に帰って来るのだ。
「いや、参った参った。まさかサーヴァントがマスターに庇われるなんてねぇ。お嬢様――マスターがあれだけの『覚悟』を見せたってなら僕も見せないといけないよね!真の『覚悟』ってやつをさぁ!」
小柄な少年が大胆不敵に笑った。
アメリカで有名なガンマン。少年悪漢王。滑らかにかつ息をするように気付けば、彼は銃を構えていた。いや構えていたのではない、もう撃っていた。既に終わっていたのだった。
「どうだい?女の子のアソコよりもっと素敵で刺激的だろ?」
「ガアアァッヒィィッ!!?」
銃声は確かに一つだった。だが、怪物の下半身の鼻に刻まれた三つの銃創が放たれた弾丸が一つじゃない事を物語っていた。ビリー・ザ・キッドという英霊を象徴する宝具、神速の三連射撃『
「これ見よがしに大層なものぶら下げてたらさぁ、狙ってくれって言っているようなもんだよねぇ!」
野太く悲鳴を上げた怪物の様子を見る限り、ここでやっと痛恨の一撃を加える事が出来た。だからこそ、だからこそ……今まで女を犯す事にしか興味が無かった悪魔の逆鱗に触れてしまった。今まで抜く事の無かった宝具を振るう事を許してしまった。
「鬱陶しいわぁっ!!」
悪魔が螺旋剣を地面に突き立てた瞬間――黄金劇場よりも眩い虹色の光が私の視界全てを埋め尽くした。
「…………ハァ、ハァ、ハァ、まだ、生きてるみたいね……」
むせ返る土の匂い。ネロの黄金劇場を展開する前の場所、自分が怪物を罠に嵌めた地べたで横たわっている事に気付く。怪物の宝具によって彼女の宝具は完全に崩壊し、その余波によってサーヴァント達は皆、倒れ伏せていた。消滅していないだけ、まだマシかもしれない。当然、私も。
サーヴァントと同じぐらいの耐久力になってしまった事を喜ぶべきか、悲しむべきかは置いておいて、まずは目先の危険を排除しなければならない。
震える四肢に力を入れて、立ち上がり、眼前に君臨する悪魔を睨み付ける。
「そう、熱い瞳で見詰めてくれるな。興奮でペニスがはち切れてしまうわ。はぁ、ハハハ、ハァ――ようやく、ようやくだ。垂涎物の馳走の前にここまで焦らされ、ようやくありつける……。どこから味わおうか……迷う、実に迷う」
目の前のコレは勝利を確信しているのだろう。目に見える範囲で私を守るサーヴァントはおらず、色欲に染まった悪魔が私を手籠めにするのは赤子を捻る事より簡単だった。
「……何をしているのかしらね、私は。こういうのってどっちかというと代行者とかそっちの仕事よね、そもそも」
魔術師の義務だの何だの格好つけた事をつい、皆の前で言ってしまったがそれでも泣き言を零すのは止められない。
けれど、この泣き言は諦めから来たものでは決してなく。勝利を確信した安堵から。
ここだった。こここそが私にとってこの戦いにおける終着点だった。あの怪物を打破する為のゴールは最初から定めていた。
「最初から……最初から決めていたのよゴールは……。後はそこに至るまでの道筋を作るだけだった」
獣欲に捉われた怪物には既に私の言葉など耳に届いていないだろう。頭の中では幾千の犯し方を妄想しているのかもしれない。
だから――自分の後ろにある何も無い空間から音も無く現れた緑の狩人にも気付かない。
一人だけ、待機してもらっていた。怪物の宝具の被害から逃れる為にネロの黄金劇場の中にあえて入らなかったサーヴァントが一人。
「……さっさと決めろ馬鹿者……。オルガマリーの意志に免じて、この余が美しくない手段を用いたのだから、な――」
黄金劇場の中で畳み掛けた時も。ネロの剣には、エリザベートの槍には、ジェロニモのナイフには、ビリーの銃弾には全て毒が塗られていた。あの場で打ち倒す事が目的ではなく怪物の体を出来るだけ多くの毒に犯す事だけが目的だった。
全員の宝具を確認した時、恐らく、怪物を打倒し得る宝具を持っていたのは彼だけだった。
「健気で無駄な抗いご苦労だった……だがそれも含めて俺が愛してやろう」
愛……?鼻で笑いそうになった。残念だけど外面だけで私を求める男なんて御免。色気も無い世界で今まで育ってきた私だけど、男に対する理想は高いわよ。
「無駄なものなんて、ここに来るまで何一つ無かったわ。言った筈よ……ここに到るまでの全てが私の勝利への逃走経路だって。あなたは既にもう、
背後から彼を――ロビンフッドを象徴する緑色の弓から一本の矢が怪物に放たれた。
それをまるで背中に瞳が付いているように歪んだ螺旋剣で叩き落とす。
それでもロビンの表情には何一つ焦りが無い。自分を狩る側だと信じて疑わなかった獣を屠殺しようとする冷たい視線。
「いやいや、本当に化け物染みた反射神経だねぇ、オタク。でも圧倒的な自信から受けきったのか知らないけど、完全に避けるべきだったな。生憎だけど、オレの宝具は
「オッゴォッッ!?」
「『
ここに来るまで溜めに溜めて来た不浄の毒が膨れ上がる。
アーチャー、ロビンフッドの宝具『
その効果は紫色に変色し、体中のあらゆる所を膨れ上がさせて、眼球、口と血を垂れ流し、もがく目の前の怪物の様を見れば一目瞭然。ここに来るまで一体、どれだけの毒を溜め込んだ事か。驚嘆すべきはその毒に犯されながらも、ここまで暴れ続けた無尽蔵とも思える体力か。
さらに付け加えるなら、この宝具が悪辣な所は、掠ろうが、得物で防ごうが、標的に当たったという事実さえあれば宝具が発動するという事。
「自分が囮になって、逃げ回っている間、オレの宝具で殺せるレベルまでコイツの体内に毒を喰らわせ続ける。言うのは簡単ですけどね、まさか実行に移す大馬鹿がいるとは思わなかったわ。いや、勿論、褒めてますけどね?」
私という女に夢中になって、意に介してなかった毒が無視出来ないレベルで怪物の肉体を破壊し尽しているだろう。
無駄な物なんて何も無かった。私が命がけで逃げ続け、嵌め続けた罠も。サーヴァント達が自らの得物に毒を塗ってまでつけた傷も、決死の覚悟で放った宝具も、全てはこの怪物を仕留める最後の一手に繋がった。
「お、オォォォォッッ!女、女、オレの女よぉぉぉっ!オレの女が離れていくぅぅっっ!!あ、アアアアァァァァッ!!」
跪き、もはや満足に肉体を動かせなくなった怪物は血涙しながらも、私に手を伸ばそうとする。だが、もはや毒だけではなく、ロビンの宝具の影響かその躰から樹木が生え、完全に怪物を取り込んだ天然の牢獄となった。
「お、オオ、おれ、オレノモノニナァァレェェェェエエエエッツ――!!」
ここに来て、まだ自身の欲望に忠実なのは感嘆する所だが……。
「ほら、マスター。男の熱いラブコールだ、ちゃんと答えを返してやらないとな」
毒の樹に取り込まれ、後僅かの命となった男に火を灯した指を向ける。
モエテ、モヤスワ、ミンナモヤスワ、モヤシテアゲル。この肉体になってから魅了だけではなく、火属性の魔術の行使も容易になった。私の今の体にとてもよく馴染む。この炎はまるでいつの日か悪夢で見た燃え盛るカルデアスのようで。私の魂に焼き付いて離れない。
魔術師らしい優雅さの欠片も無い泥仕合もイイ所な決着のつけ方だった。それでも私が自ら、この戦いに臨んだ理由は。
――す、凄い!さすが所長だ!インテリジェンスと美しさだけでなく、勇猛さも兼ね備えていたなんて!
――いやーまいった!君こそ真の万能!現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと言ってもいいね!
――サーヴァントすら凌駕するビーストの眷属を倒すなんて、なかなか出来る事じゃありません!さすが所長、さす所長です!
――グダおに相応しいのは所長だった……。敗北者はクールに去るよ……。
魔術師としての義務とか人理保障機関のトップとしての責任とか、そういうものよりもっと単純で俗物的で――。
――お疲れ様、オルガマリー。よく、頑張りました。
ただ、皆に褒めてもらいたかっただけだった。好きな人に認めてもらいたかっただけだった。私がここまで頑張って来た理由はそれ以外に無かった。
臆病で泣き虫な女はもう卒業。だから、私は目の前の怪物にも逃げずにこう言うの。
「ごめんなさい。私、好きな人がいるから」
大樹が燃え盛る光景は今まで見たどんな炎よりも美しかった。
【第五の戦】
親愛の姫:オルガマリー・アニムスフィア
顔の無い王:ロビンフッド
アパッチ族の戦士:ジェロニモ
少年悪漢王:ビリー・ザ・キッド
ローマの花嫁皇帝:ネロ・クラウディウス
歌い踊る竜娘:エリザベート・バートリー
VS
色欲の豪姦魔
勝者:オルガマリー・アニムスフィア達
次回、英霊編第五章完結。