いや、合わせるのが大変(笑)
テストやら何やらで多忙で、久々に更新です。
「……」
捕獲したあのアマゾンを、本社とやらに送り届けた帰りのバンに揺られる私、紅宮 深雪。
「嬢ちゃんどした? 浮かない顔して」
滝沢が私の顔を覗き込む。
「……うん。あのアマゾンを捕まえたの、何か理由がありそうだなって」
「ま、俺たちはそこに首を突っ込まないっていう条件で雇われてるからな……。知りたいかもしれねぇが、そこは堪えてくれや」
赤澤が助手席から缶コーヒーを飲みながら言う。
私はとりあえず頷く。
「アマゾン……」
何故、あんなにも違うのだろう。ベルトがあるだけで、あんなにも……。
『つーかさー……私らが戦う理由、無いよね?』
あの言葉を、信じたい。
彼女と彼……安須川 優を。
野座間製薬会社にやってきた。入口の受付で、メールの差出人……橘 雄悟という人の名前を出したら、案内してもらい、僕は「海外戦略本部長室」と書かれた部屋の前に来た。
「橘本部長、安須川 優様がお見えです」
「入れたまえ」
案内した人がドアを開ける。僕はその部屋に足を踏み入れる。そこには、スーツの男の人がいた。
「初めまして、安須川 優くん……アマゾン細胞を抑え込んだイレギュラーな少年、よ」
「……あなたが、橘さんですか?」
「如何にも。海外戦略本部長の橘だ。こんな時に呼び出してすまないね……」
僕は彼に詰め寄った。橘さんは驚いたように僕を見下ろす。
「……あなたが、弥生さんを誘拐したんですか?」
「……それに関しては、すまなかったね……そうでもしないと、君たちに会えなかったんだよ」
「……目的は、何なんですか?」
その問いに橘さんは声を高らかに答える。
「よくぞ聞いてくれた‼︎ なぁに、君の身体を調べた後、彼女から君を通して色々と聞き出したいだけさ」
「……弥生さんから、僕を通して?」
「いや実はだね。先日、我が社の新製品のデータが盗まれてしまってねぇ……その犯人のもつハッキングツールが、ある組織の所有するものだった。その組織とは、過去に彼女と関係のある組織のようでね。それで、彼女にその組織のことを聞き出したかったのだが……彼女は強情でね。こうでもしないといけなかったのだ。我々も、これ以上の情報漏洩は避けたいからね」
大人の事情、ってやつなのかな。
橘さんは尚も続けた。
「勿論、タダでとは言わない。協力した謝礼金も支払う上に、素晴らしいプレゼントもある! おまけに……君も知りたくないかね? 彼女のことを」
弥生さんのこと、か。
確かに、そうかも。
弥生さんは僕のことを色々と知ってると思うけど、僕はあまり弥生さんのことを知らない。
「……わかりました。ただ、一つ約束してください」
「ほう、何かね?」
「……弥生さんに、これ以上は手荒なことはしないでください。もしそんなことをしたら……」
僕は眼帯を外し、橘さんを睨みつけた。
「あなたを……気に入らないものとして、殺しますから」
「怖い怖い……安心したまえ。彼女には今は手を加えていない。」
モニターを見せる橘さん。そこには……檻に入れられた弥生さんが。
「これって……⁉︎」
『……ねぇー‼︎ 見てるんでしょおー⁉︎ だぁーしぃーてぇー‼︎ もう検査したでしょー⁉︎』
「脱走は困る上に、君との信頼関係も我々は築きたい。彼女が暴れさえしなければ、彼女が傷つくこともない……安心したまえ」
こんなことして、何が信頼関係だ。と言いたかったが、ここで歯向かったら何をしてくるか分からない。
ここは大人しく従うか……。
「……それじゃあ、早く始めてくださいよ……僕の検査」
「物分りがよくて助かるよ……では、案内させよう」
その後、僕は研究員の人から検査室へと案内された……。
橘はニヤリと笑みを浮かべる。
優の背中を見ながら、呟いた。
「君の協力も欲しいのだよ……イレギュラーのサンプルとして、ね」
「……」
第二駆除班の拠点に戻ってきたものの、やはり気になっていた。
あのアマゾン……弥生とかいう女のアマゾンと、優。
「……赤澤、私ちょっと出かけるね」
「? おう、わかった」
岡本とポーカーをする赤澤にそう言い、私はヴァイオレットチェイサーを駆り、本社へと向かった。
「深雪さん……」
心配そうな顔を浮かべる穂乃夏。安藤がコーラを飲みながら励ますように言う。
「大丈夫っすよ‼︎ 深雪のアネさんなら、多分‼︎」
「……そうですよね」
穂乃夏は微笑み、パソコンで絵を描き始めた。
検査が終わり、僕は弥生さんが閉じ込められている部屋にやって来た。
ワイヤーを張り巡らせた檻の中に弥生さんがいた。
弥生さんは僕を見た途端顔を輝かせる。
「ユーくぅ〜ん! 助けに来てくれたの⁉︎ 嬉しいッ‼︎ 嬉しいよぉ〜ッ‼︎」
「あ、あはは……」
良かった、元気そうだ。
「大丈夫? あの変な研究員共から変なこと、されてない?」
「変なこと……まぁ、少し検査されただけですけど……大丈夫ですよ、特に変な物も飲まされてないし」
「ならよかった……早く帰ろユー君‼︎」
さて……ここからだ。
橘さんからは、彼女からある組織について、聞き出さないといけない。
情報さえ引き出せれば、弥生さんを解放してくれると。
けど……どうすれば……
「……その、弥生さん。聞きたいことがあるんですけど」
「ん? 何かな?」
僕は一瞬喉を詰まらせるも……顔を上げた。
「……弥生さん、あなたはいったい……」
「何者か、でしょ?」
僕の問いを遮るように、弥生さんが口を開いた。
突然の言葉に、僕は動揺を隠せなかった。
「ユー君って、嘘つけない人だよね。差し詰め、あの橘って人から言われたんでしょ? 大体わかるよ」
大体どころじゃない、図星すぎる。
僕は俯き、小さく詫びる。
「……ごめんなさい」
「いいのいいの。ユー君は悪くないし。それに……いつかは話さなきゃって思ってたし。あの、橘とかいう人も、ここの会話を聞いてるだろうからさ……」
監視カメラを指差しながら、苦笑いを浮かべる弥生さん。
「じゃ、どこから話そうかな……」
弥生さんはベッドの上であぐらをかく。僕は傍に置いてあった椅子に腰掛ける。
弥生さんは話し始めた。
「……私ね、元・傭兵なんだ」
「……傭兵?」
「うん。依頼を受けて、お金で雇われる兵士。昔は色々なとこから依頼受けてたなー。ある国家の防衛軍だとか、破壊工作員の手伝いとか」
なるほど……あの戦闘のセンスも、それなら頷ける。
「昔の私は、金がすべて。銃をぶっ放して、体術で目の前の仕事こなせば金が手に入る……そんな考えだったなぁ」
懐かしむような口調で語り続ける弥生さん。
「……今から2年前だった。私はある組織からの依頼を受けたの」
「ある組織……?」
橘さんも言っていた組織だろうか。
弥生さんは一瞬顔をしかめ、その組織の名を口にした。
「……『黒の菩提樹』。それが彼らの名前」
黒の菩提樹……聞いたことがないな。
「何なんですか、その、黒の菩提樹って」
「一言で言えば、カルト集団……ってやつかしら。彼らは……」
「今の人類を根絶やしに、選ばれた人間のみで新たな世界を創造する……っていうのが、目的よね」
話を続けようとした弥生さんに割って入ったその人は……紅宮 深雪さんだった。
「深雪さん……?」
「あなたは……あ! あのカッコいい鎧の戦士の子!」
深雪さんは檻の前に立つと、深々と頭を下げた。
「……ごめんなさい、私たちのせいで、あなたをこんな目に……」
「……仕方ないわよ。私もアマゾンだし。こうなることくらいは、視野に入れてる」
深雪さんは頭を上げる。
そして、弥生さんは彼女に問う。
「随分と詳しいようね、彼らについて」
「……まぁ、昔は沢芽市……黒の菩提樹の拠点にいたからね。知り合いにそいつと対立していたヤツがいてさ。今はもう死んじゃったけど」
「沢芽市、か……」
「……続けるわね。その黒の菩提樹に私は雇われた。羽ぶりもよくてさ。そこのボスとも意気投合したし」
「その、ボスっていうのが……?」
僕の問いに頷く弥生さん。
「……鳴神 神樹。多分、野座間のサーバーをハッキングしたのは彼ね。彼はハッカーとして、情報網を制圧して翻弄するのが得意から」
「……何で、そう言い切れるのかしら?」
「私が実験台の情報を知るために使っている盗聴器と同じツールを使っているからだと思う。橘たちはツールの電波の波状を調べ、それが一致したんでしょうね」
なるほど……それで弥生さんが疑われた訳か。
「……鳴神ってやつは、何を考えているんですか?」
恐る恐る聞いてみた。
弥生さんの表情がより固くなる。
「さっきの新たな世界の創造ってやつ。選ばれた人間が創るって話だったでしょ?」
「はい、確かに……」
「そして、橘たちが盗まれたものは……」
「新製品……とか言ってましたけど」
その言葉に、深雪さんが反応した。
「新製品? それって何なの?」
「新型のアマゾン細胞です」
そこへ現れた……眼鏡の男。
「加納さん」
深雪さんが彼に反応した。
ということは、野座間製薬会社の人か。
「新型のアマゾン細胞……⁉︎ それって……」
弥生さんはワイヤーを掴んでしまい、電流が走る。
「……詳しいことはお教え出来ませんが、データさえあればいくらでも生み出せるものです。それだけは言っておきます」
「……‼︎ まさか、鳴神のやつ……それを使って⁉︎」
弥生さんが拳を固める。
「や、弥生さん……?」
「あいつ……っ‼︎ また、あれを繰り返すつもり……っ‼︎」
こちらの声が聞こえていない。
そこへ、加納という男が僕の肩を叩いた。
「申し訳ありませんが緊急事態です。捕獲した実験体が脱走しました」
「⁉︎ だ、だったら僕行きます‼︎」
「既に第二駆除班を出動させました。紅宮さんは行ってください」
深雪さんは頷き、その場を後にした。
僕もその後に続こうとした。
「安須川くん。君はこちらに」
加納さんが僕の足を止め、誘導した。
「弥生さん……」
後で連れて帰らなきゃ。
そんな……っ‼︎
「あいつ……鳴神……ッ‼︎」
ー 深雪……君は僕の、クイーンになる人だ……
ー あぁ、深雪……綺麗だ……愛しているよ……
「っ……うぷ……っ‼︎」
思い出したものに吐き気がし、シーツを汚した。
「あいつ……が……っ‼︎」
私は怒りと共に、震えを感じていた。
やって来たのは、地下駐車場。
そこにあったのは、シートで覆われた何か。
加納さんはそれに巻き付けられた鎖のロックを解除し、鎖とシートを外した。
「⁉︎」
それは……青いアマゾンの顔を模した様な形のボディのバイクだった。
「これに乗って、現場に急行してください。これは差し上げますので」
「その……僕、免許ないし……」
「乗れますよ。アマゾン細胞とこいつが反応しますから。あとは私が何とかしておきます」
少し怖いけど……やるしかない。
僕はバイクに跨り、ヘルメットを被る。
エンジンがかかり、ハンドルグリップを握る。ライトが輝き、加納さんの横を通り過ぎて、僕はバイクを走らせた。
本社から離れた廃工場。
既に第二駆除班が、エビのアマゾンと戦っていた。
私はドライバーを装備し、変身する。
『ワイルドストロベリーアームズ‼︎ 惨劇・バーサーク‼︎』
乱丸を叩きつける。エビのアマゾンは怯むも、泡を吹き出して反撃してくる。
「ちょ、何これ……っ⁉︎」
両腕が塞がれ、蹴飛ばされる。
「深雪さん‼︎」
穂乃夏が羽赫を飛ばし、他のメンバーが銃を放つ。
その隙に近くにあったワイヤーで泡を剥がし、アームズチェンジ。
『イチジクアームズ‼︎ 乱弾・ツインブラスト‼︎』
両手のマシンガンを放つ。エビのアマゾンは背中を向け、その甲羅の硬さで弾丸を弾く。
「く……このっ‼︎」
撃ちながら接近し、エビアマゾンを蹴飛ばす。
エビアマゾンは倒れながらも直ぐ様身を起こし、泡を放つ。
マシンガンを放ち、泡を相殺するが数が多く、足にまとわりついてきた。
「しまった……‼︎」
エビアマゾンがハサミを振り回してこちらに向かってくる。
その時だった。
ー ドゴォッ‼︎
廃工場の壁を突き破り、エビアマゾンにバイクのまま突進するヘルメットの男。
「グギィッ⁉︎」
バイクの体当たりを食らったエビアマゾンが吹っ飛び、ドラム缶の山に突っ込む。バイクを停めて、ヘルメットを外し、顔を晒したのは……安須川優だった。
視線の先にはエビのアマゾン。僕はバイクから降り、ベルトを装着。
エビのアマゾンが立ち上がり、僕に問いかけた。
「何故、貴様と私が戦う……?」
「……僕は気に入らないものをぶっ潰すだけ。人を喰うアマゾンが、気に入らないだけ」
「貴様もアマゾンだろうに……何故だ⁉︎」
僕はエビアマゾンを睨みつけ、グリップを握る。
「ウオオオオオオッ‼︎ アマゾンッ‼︎」
『ZETA……‼︎』
身体が上記に包まれ、アマゾンゼータに変身。
身を低くして構える。
「僕は……僕は人間だァ……ッ‼︎」
高速で詰め寄り、抜手を放つ。
エビアマゾンがそれを受け止め爪を突き出すが、開いている手でハサミを掴み、腕の刃で砕く。
「ゴォオオオッ‼︎」
エビアマゾンが泡を吹いて悶絶。
早く弥生さんを助けなきゃいけないんだ。
「邪魔をするなッ‼︎」
『Violent Crush……‼︎』
「オオオオオオオオッ‼︎」
両手の刃をクロスに振り下ろし、エビアマゾンの身体を切り裂く。
体液を撒き散らし、溶けていく。
僕は急いでバイクに跨り、駆け出した。
「弥生さん……ッ‼︎」
「気に入らないからぶっ潰す、かぁ……」
私は変身を解除し、青いアマゾンの背中を見つめていた。
そこへ駆け寄る穂乃夏。既に泡は無くなっていた。
「……彼は、味方……何ですかね?」
「そう信じたいわね」
「弥生さんッ‼︎」
野座間製薬会社に戻り、監禁部屋へ戻ってきた僕を待ち構えていたのは……
「……え?」
切り裂かれたワイヤー。その中のベッドの上で、上半身を晒して放心している弥生さんだった。
「弥生、さん……ッ⁉︎」
弥生さんの背中に……大きな傷の跡が。
「……コロス…………」
低く、唸るように弥生さんは口を開く。
「ナル……カミ……ッ‼︎」
弥生さんは気を失い、その場に倒れた。
「弥生さん……あなたは……一体……」
鳴神 神樹。
その名前が彼女にとって何を意味するのか……僕はまだ知る由もなかった。
「……そろそろかな」
古びた教会。
鳴神はアタッシュケースを手に、ステンドグラスに描かれた聖女に見惚れる。
そんな彼に歩み寄るのは……シスターの服を身に纏った女。
「……お呼びですか、神樹様」
「あぁ。計画の用意が整った。邪魔者を消さなくてはならないんだ。頼めるかい?」
鳴神は女にアタッシュケースを手渡す。彼女がそれを開けると、中から姿を現したのは……ゲネシスドライバーと、赤いエナジーロックシード。
「もちろんです神樹様。だって私は……」
女……工藤 朱莉は恍惚した顔で、鳴神に微笑んだ。
「私はあなたを信じる者……必ずや、邪魔者を消してみせます」
朱莉はドライバーを装備。ロックシードを握りしめ、その場を立ち去る。
「そして、優……私はあなたを手に入れるからね……」
涎を垂らしながら、朱莉は恍惚した顔を更に恍惚させる。
「殺してでも、ねぇ……!」
Next Hunt……
「奴は私をアマゾンにしたの……」
「優……私、こんなに強くなったんだよぉ……?」
「僕が……決着をつけます」
「殺してあげる……私のモノにするために!」
episode.7 Jealousy Mad Girl