ハートマークは初めて使ってみましたが幅が広がりますねぇ!
使えるかどうかは不明ですが、どうぞお愉しみくだされ。
エキドナがキャラ崩壊している気がしても超余裕で見逃してください。
※スマホでもハートマークが黒で表示されるよう調整しました。大変遅くなってしまい、申し訳ありません※
ただ一人の幸福を欲する。
夜空を彩る星々のように明るく尊く。
君が、あなたが歩んだ旅路の永さを知っているからこそ。
託された
「――スバルだけはワタシが幸せにしてみせる――」
1
「歓喜と安堵の抱擁はここまでにしておいて……」
エキドナがスバルから離れ、ラインハルトと向き合う。
「ご機嫌麗しゅう、ルグニカ王国の国民たち。『黒騎士』ナツキ・スバルの妻のエキドナだ」
両手を腰元で緩く広げる。包み込むように、迎え入れるように。
美しい貌には微笑みを添え、目には捉えられない瘴気を拡散させる。
今の今まで意図的に抑えられていたソレは瞬く間に広がり、
『オ、エェェェェェ!!』
『ゲッ、オァ、フグッ……!』
『アヒ、ヒ、オオゥオゥゥッ!!』
感化されてしまった観衆が嘔吐し始める。
老若男女亜人は問われていない。無差別の悪性侵食だ。
二百を下らない人数が吐瀉物を吐き出す様は阿鼻叫喚の地獄絵図そのものであり、ナツキ・スバルは知らず知らずのうちに眉を顰めていた。
彼等は今、外と内から全身を隈なく観察されているかのような不快感と、胃を掻き回されて喉の奥が焼かれるような……吐き気を催す重圧感に襲われているのだろう。
まったくもって困る。
こんな些事でエキドナの評判が悪くなるのだと思うと憂鬱になりそうだ。
「勘違いしてもらっては困るんだよ」
『強欲』の魔女は観衆の惨事など気にも留めず、この場にいる全ての者たちに向けて語る。
どんなに必死に耳を閉じようとも滑り込んでくる魔声。
おぞましい呪怨。
おそろしい悪音。
意思を持った災厄……魔女が、ここに存在していた。
「この国の女王が大嫌いなワタシが望んでスバルを王都にいさせていると思っているのなら、それは大間違いだ」
「エキドナ」とスバルが呼び掛けるも、怒気を乗せた鋭い一睨みで封殺される。
「夫である彼が望んだからだよ? 妻であるワタシはその意思を尊重したいと思う。この気持ちが理解できるヒトは少なからずいるんじゃないかな」
観衆に頷く者はいない。
否、頷ける者などいなかった。
「だけど〝極力〟だ。〝絶対〟じゃあない」
視線を観衆から移し、赤髪の青年を捉える魔女。
「命を奪われかねないとなると……。
七魔女の中では寛容な方だと自知自認しているワタシであっても見過ごせないな」
この男はナツキ・スバルとの間に結んだ不可侵領域に踏み入ってきた。
その危機感、不愉快さ、憤怒たるや。
余人の想像を絶する。
お互い様だろって? 知らないよ。知るものか。
ナツキ・スバルへの愛情はありとあらゆる事物よりも優先される。この世界と比べても惜しくなどない。滅ぶのなら滅べばいい。ワタシたちは別の世界に移動させてもらうだけの話だ。
極論になるが――。
ワタシは、ワタシとナツキ・スバルが在れるのなら、他の存在はどうでもいいと思っている。
ワタシとスバルは二人で〝完成〟されて〝完全〟であり〝完結〟しているのだ。
死ぬことも老いることもない王と妃だ。
故にこそ、完璧なるワタシ達を分断させられる存在は気に喰わない。
どうしても、どうやっても、受け入れ難い。
「ラインハルト・ヴァン・アストレア。
歴代最強の『剣聖』。ルグニカ王国最高の騎士。大いなる正義の味方。世界に愛されし人間。
しかし最期は無辜の人間たちによって死に逝くことになるだろう英雄よ。君は夫の命を脅かしたばかりか、愛娘を叩き折ってくれた」
どう償ってくれる?
「魔女裁判。魔女の魔女による魔女の為の裁判を始めようか」
――これは余談ではあるものの。
『強欲の魔女』エキドナは必ずしも強い存在の部類には入らない。
無論弱いという訳ではないが――比較対象となる存在たちが異常なのだ――七人の大罪の魔女で順位を付けるならば五位が的確である。魔法の攻撃力もロズワールやエミリアには及ばない。
今となってはナツキ・スバル相手にも手も足も出るまい。
〝単純〟かつ〝純粋〟な評価をするならばだが。
探究者の彼女の恐ろしさは戦闘力にはなく、蒐集した数多の叡智を活かせる頭脳にこそある。
ルグニカ王国の弱点など知り尽くしている。文明の発展を手助けする過程で仕込みも随所に加えている。古代に失われた魔法の数々を使えば致命的な損害を与えられるだろう。
そして何よりも……。
――全てはナツキ・スバルの命を守るために。
――彼を一人にせず、彼と共に生きていくために。
――その為に、魔女の魂と魔女因子は番外を含め蒐集した。
知っているというのは、持っているというのは、
そして活用できるだけの技量をも兼ね備えているというのは。
それはそれは恐ろしいコトである。
『強欲の魔女』の双眸がいよいよ鋭く細められ、『剣聖』が閉ざしていた口を開こうとした、
「エキドナ、脅しはそこまでにしとこうぜ」
「わぷ」
その時だった。
あっけらかんとした様子で魔女を抱き寄せる人間。
背後からいきなり抱かれたエキドナが子犬のような驚き声を吹き出す。
練兵場全体を覆っていたプレッシャーの檻に罅が入る音を誰もが耳にした。
「……どういうつもりだい」
「あんまし怒るなって話だよ。命の危うさ云々に関してはお互い様なんだしさ。最後のは俺も本気でアイツを斬ろうとしたしな」
「君と彼とではまだ差が」
「そうだな。何回やったってラインハルトには勝てないだろうよ。けど、それでも戦えるようにはなった。これってすげえ進歩だろ。無才の人間が『剣聖』と斬り結べたんだぜ?」
なあ、とスバルは自己修復を完了した愛刀に水を向けた。
滞空しながら近寄ってきた『夜空』は『はい。現在のペースで鍛錬を続けるのなら……確実とは言えませんが、十年経てば秒殺は免れられるようになるでしょう』と予測を返す。
「あらら……十年で秒殺かぁ……」
『わたしと龍剣レイドの差の縮まり、『剣聖』の成長速度を考慮した上です。何でしょう、父。まさかご不満がおありですか? 鞘込めの手加減でさえ精一杯なのです。彼我との戦力差は明らかですよ? 目途を立てられるだけマシだと思うべきです。というか感謝してください』
「ありがとうありがとう俺が悪うございました! ちくせう、ラインハルトの野郎めぇ……」
スバルのジト目に苦笑いし、ラインハルトは『夜空』を注視する。
「……直った、ようですね」
「……そうみたいだね」
「いざとなれば責任を持って僕が直させていただくつもりでしたが……自我を有し、自己学習も行い、自身の修復まで可能にしているとは。エキドナ様の御手腕に感服致します」
「万能に近い君に褒められてもね。悪意なくして人を挫折させられる己が身の罪深さを少しは知っておくといい。……今この場で直ってどうするんだ。ワタシの言葉を聞いていなかったのか」
『恐れ多くも、母。脅しで父との時間を手に入れては後々面倒になると存じますが』
「面倒になるつっーんならもう遅いんじゃね。ドナドナ、めちゃんこ吐かせちまったし」
うわー掃除大変そーだな、と我関せずの態度でスバルはエキドナの白髪を撫で回す。
猫の額でも撫でるかのような仕草だった。
夫も娘も口を揃えて……。
怒ったのは純粋なるもので画策しようと思い至ったのは途中からだったのに。
「ま、大丈夫か。お前を怒らせたらどうなるのかは知れ渡ってっから」
人的被害は奇跡的になかったとはいえ、現女王との大喧嘩による大惨事の記憶は根深い。
「そんじゃ、ラインハルト」
「ああ、事故処理は任せてくれ。ついでに君の休暇届も出しておくよ。三日……いや、五日は確保しておこう」
「五日も離れても大丈夫っぽい?」
「近衛騎士団の訓練の相手、ルグニカ王国近辺の哨戒、賢人の方々への助言。それに加えて厳しい自己鍛錬――そんな生活を不眠不休で食事も取らずのまま送っていたんだ。スバルにはむしろ、エキドナ様共々休んでもらいたいぐらいだよ。……自制できず、君を斬ろうとした僕が言えた言葉ではないね……」
「説明台詞乙。列挙されると分かるブラック企業もびっくりな働きぶりだな。ま、訓練も哨戒も自己鍛錬も望んでやったコトだし、お前との決闘は俺も楽しんでたぜ。あんま気負うなって。今度はこっちから申し込むから覚悟しとけ」
「――――我が友に感謝を。心待ちにしていよう」
感じ入った『剣聖』が目礼し、『強欲の魔女』の瘴気に耐えた者、快復した者たちを集め、事態の収束へと行動を開始し始める。
それを確認した『黒騎士』は変身変異の権能を使い、自身の肉体を変容させる。十秒も経つ頃には二十メートルを容易く超えようかという巨躯の黒龍が君臨する。
『色欲』の大罪司教カペラ・エメラダ・ルグニカが変身した黒竜とは格が違う威容だ。
捻じれ曲がった禍々しき四本の角、煌々と紅く輝く邪眼、蒼天を覆う雄雄しい両翼、巨木のような二足での直立。
これこそ三大魔獣の最後の一角『
「黒蛇を誘導させてきたパンドラを討滅した時を思い出すな」
手の平に軽やかに乗ったエキドナが感慨深そうに漏らす。反対にスバルは憂鬱気に嘆息する。
『虚飾の魔女』パンドラの討伐は黒蛇と魔女教に加え、パンドラが誘い込んだ勢力との一大決戦でもあった。
黒龍となったスバルが黒蛇を筆頭にした魔獣の軍勢を、エキドナは自身と反対の色彩を持つパンドラを相手取り……勝つには勝てたが、回想して楽しくなるような思い出ではない。
あの魔女の存在は脳裏にさえ浮かべたくない――最悪の中の最悪だ。
アレに秘められていたのは希望以上の絶望だった。
「行くぞ」
暗雲たる気分を振り払うように。
魔女を乗せた黒龍が蒼穹へと飛翔し、王都を見渡せる距離まで飛び上がれば、力強い嘶きとともに飛び去って行った。
2
屋敷に向かう最中に。
スバルは変異した状態のまま、掌の上のエキドナに話し掛ける。
「少しは治まりましたかね」
「危うく憤怒の魔女になりかけたよ。これも人間性を得た弊害なのかな。スバルのことになるとどうしても感情っぽくなる。……ワタシはともかく、君の評判が悪くなるのは困るな」
わりかし本気で気にしている様子で髪を弄る魔女様。
相手が逆なだけで考えることはまるで同じか。似た者同士なのは本当だったのだろうか?
「自分で言うと悲しくなるけどさ、嫌われるのも引かれるのも避けられるのも煙たがられるのも慣れてるぜ?」
「奇遇だね。排斥の対象だった魔女のワタシもよく知っているとも。そしてそれでも知識と頭脳を求めてくる輩達……うん、そうだね。もし盛大にやらかしてしまったら、手を引いて逃げてくれる?」
「お姫様抱っこで逃げてやらぁ。ってか、そこまでして自由になりたくなったら先に言ってくれ。 嫌な思いはなるべくしたくないしな。エキドナがどうしてもって言うなら元の世界でも、ここじゃない異世界だって一緒に行ってやるよ」
気取っていない真実の言葉だった。
「今の
人型の状態だったら危なかった。
期待していた以上に恰好よく言ってくれた。
何度でも惚れ直してしまう。世界よりも広い愛を再確認できる。
これでこそ手間暇かけて勝ち取った甲斐があるというものだ。
「ワタシを愛してくれてありがとう。気分が良くなったから、ちょっと話そうか。
スバル――あなたが望み、あなたが願うならワタシは全身全霊で叶えよう。永劫の年月を掛けても、どんな手段を弄してでも届かせてみせる。その過程で躊躇はしない。君とワタシ以外なら何を犠牲にしてでも齎そう。国が欲しいなら奪ったり創ったりも……ん? 愛が重い? それも宜なるかなだよ。ワタシは本当の本当にスバルを愛しているのだから。〝愛は何故、減るのだろうか〟……あなたは永きに渡るこの命題に一つの回答を示してくれた。正直、こればかりは答えを見つけられるとは思っていなかったんだ。ううん、答えと言うのは語弊だろうね。〝減らない愛もある〟という発見だったんだ。言うなれば抜け道、真偽のほどは不明。これは間違っているのかも知れない。本当の答えはあるのかも知れない。でも、正否を問うつもりはない。〝知らない〟と〝知れた〟とでは大きく異なる。知ることができたお陰でワタシは、真の意味でスバルを愛せるようになったんだ。それ以上の最善は身を滅ぼす『強欲』になるだろう。少なくともこの世界に在るワタシは納得した。なら、それでいい。そしてこの想いは『虚飾』じゃないと断言しよう。否定なんて言語道断だ。書き変えるというなら、忘れさせるというなら、本を焼くようにその歴史/存在/記憶ごと世界から拒絶して閉じ込めてやる。あぁ、そうだ。そうだとも。ワタシのスバルへの『愛』だけは消えない、消させない、消されてたまるものか。ここまでに至った以上、誰にも劣っているつもりはないんだ。ナツキ・スバルが愛し、ナツキ・スバルを愛していたエミリアとレムにも――『嫉妬』からだって奪い取ってみせた。あのサテラにすら勝ったんだ。だから――この愛情は、この欲望は、絶対の絶対に減らない。あまりにも幸せすぎて、痛いほどに、苦しいほどに、狂おしいほどの『愛』だ。ワタシはこの『愛』を信じよう。これを『嘘』だと嘲笑し、『虚飾』だと否定するのなら一体何が真実の愛なのか。……不安にならないでね。安心して欲しい、スバル。ワタシはもう平気だ。忌々しいパンドラの影響は完全に払拭した。ちゃんと、ちゃんと死ぬまであなただけを愛し続けるから。約束だよ。最も、死ぬ気も死なせる気もさらさらないけどね。託された命――『獅子の心臓』に誓ってスバルを死なせない。痛みも感じさせない。強欲の権能が、強欲の魔女エキドナの愛が、ナツキ・スバルを生かし続ける。王であるあなたを伴侶であるワタシが永遠に生かし、久遠に満たす。……あはっ、うふ、うふふふふふ、それはなんて甘美な響きなんだろうね……!! ワタシにスバルが必要不可欠なように、スバルもワタシが必要不可欠なんだよ? え、む、むむ……ぞっとしないだって? 冗談でも傷つくな。スバルだって死ぬのは懲り懲りだし、嫌じゃないのかい? 〝もう死にたくない〟と告白してきた夜を忘れてはいないよ。恥ずかしむことはないさ。ワタシだってあなたが死ぬところは見たくなかったんだ。大切な人たちは疎か、そうではない者たちを含めて救導しようとし、自分の命を対価にしてよりよき未来を選択し続ける覚悟と行動は、確かに称賛され感謝される献身だった。あなたの犠牲で救われた命は数知れない。でもスバルはね、もうずっと前から〝自分が生きる〟ことを大切にするべきだったんだ。あのまま自分の命を塵のように軽く見ていたら、遠からずナツキ・スバルの人間性は崩壊していた。『強欲の魔女』の言葉に従うだけの自動人形と化していたよ。いずれ塵は積もり、天にも届く山になっていただろう。恐らくこれ以上ないほど最善の未来に辿り着けていた。だが代償に、ナツキ・スバルの人間性は完全に失われる。その未来をワタシは知っていた。あまりにも簡単に予測できた。…………実際に体験したいとは思えなかった。どうしてだろうね。不思議な心地だった。『強欲の魔女』として知識欲を大いに満たせると分かっていながら、その未来を拒もうとする自分自身が不思議でならなかったよ。……聖域で契約してからの繰り返し、『死に戻り』をするナツキ・スバルを観察・観測している中でワタシは少しずつ変質していっていたんだ。今だから告白できるけど……あの夜の日にはもう、ナツキ・スバルを死なせたくないと思うようになっていたよ。でも自分から言うことは難しかった。強欲の魔女エキドナはナツキ・スバルの絶対的な肯定者だったから。『死に戻り』を知るワタシがスバルを否定したら、それこそ瀬戸際まで追い詰めることになるんじゃないかと。……だから……告白されて、これであなたの心を喪わずに済むと安心した。そして――決めた。あんなにも、こんなにも頑張ってきたスバルは、できるかぎり健やかやに幸せに、ずっとずっと満たされていないと駄目だ。誰よりも幸福に生きないと。でなければ釣りあいが取れない。しかし、結果的に誰よりも多く君を死なせてしまったボクじゃあ――おっと失礼――ワタシ相手だと戯言過ぎて信じられないだろうけど。なのに、それでも、スバルはワタシを信じてくれるんだね。疑っていた訳じゃないよ? スバルならそう言ってくれると信じていた。でも嬉しい、とても喜ばしいよ。既知で予想できていたのに頭の中が膨らむ。ワタシの旦那様は本当に優しい。誰にでも自慢できる素晴らしい旦那様だ。悪い虫が寄生してこないか不安になるくらいにね。さっきの練兵場でも何人いたことやら。一人、二人、三人、四人、数えたらキリがない。魅力的で素敵なのも困る。いっそのこと……そう言えば、勝手に来てしまった件について謝っていなかった。遅ればせながら謝らせてもらうよ。すまないね。あなたが命懸けで頑張っている気配がしたから、ちょっと覗きたくなってしまった。そうして来てみたら今代『剣聖』と決闘中ときた。二重の意味ですごく驚かされた。一つは『剣聖』と戦っていたこと、もう一つはスバルの剣術の技量にだ。剣の腕前を着実に上げていたのは伝えられていたし、知っていたけど、あんなにも見事な剣閃を繰り出せるようになっていたなんて! 『世界の記憶』で刀剣に纏わる知識を引き出したワタシには隅々まで理解できる。あなたは『剣聖』の領域に踏み込もうとしている。いや、既に入っているな。スバルの中の比較対象がラインハルト・ヴァン・アストレアだから実感しにくいんだろうけど、先代剣聖テレシア・ヴァン・アストレアを下した全盛期のヴィルヘルム・ヴァン・アストレアは超えているよ。『夜空』の補助があれば苦戦せずに倒せるさ。まだまだこれからも上達していくのかと思うと胸が高鳴るな。はは、おやおや、過大評価をするなだなんて謙虚だね。もっと自分に自信を持ちたまえよ。〝好き〟という表現が嫌いなら、こう言い換えよう。自分を認めてあげるんだ。あなたが元いた国の『日本』では謙虚は美徳だとしてもね、正当な評価をされたのに拒むのは相手に失礼だよ。威張れとは言わないが毅然としてお礼を言えるようにならないとね。力を持つ者の礼儀だ。さて、予期せずに得られた五日間の休暇、愉しみだね。ようやく真面に一緒にいられる時間を得られた。ときどき戻ってきてもまたすぐ出て行って、離れ離れだった期間の長さを加味すると物足りなさを覚えるけど、まぁ仕方ないかな? ワタシの旦那様はルグニカ王国を支える人柱の一人でご多忙な身だ。だが、いいかい? 強欲の権能があるにしても無理だけはしてはいけないよ。表層には表れなくても無意識下で疲労は積もっていて、肉体も精神もケアを求めている。あなたはとても頑強だけど今回の休暇で少し羽休みするといい。……やれやれ、心配無用とは相変わらず強情なことだ。その様子だとはっきり言ってあげないと伝わらないか。ナツキ・スバルの妻として、してあげたい事がたくさんあるんだ。言っただろう、ワタシは尽くす女だとね。お分かりになった? …………どうして閉口しているんだい。ん? ん? もしかして照れているのかな? それとも妄想したのかな? 可愛いなぁスバルは。ワタシに奉仕されると聞いた瞬間、一体全体どういう思考を走らせ、どういう光景を頭の中に浮かべたのかな? 全てを委ねて甘えたくなったのかい? どうか聞かせておくれよ。強欲の権能で満たされながらそれでも尚、あなたはワタシに何を望み、願い、欲するというのかな。自分を滅ぼすような、次に繋げられないような過ぎた欲望でない限り、求めるコトを『強欲の魔女』のワタシは肯定しよう。願望や欲望を抱くのは悪いことじゃない。むしろ良し、とするべきなんだ。そうでないと進歩も発展も起こり得ない。欲望は生物の行動を促す重要なエネルギーだ。停滞はあんまり好きじゃないね。さあさあ、あなたはワタシをどう欲する? どう満たしてもらいたい? この場にいるのはワタシとあなたの二人だけだ。言うには絶好の機会だよ。飽きることのない、尽きることのない、スバルの強欲を言ってごらん。食事か睡眠か性欲か、視覚聴覚嗅覚味覚触覚の五感か、物欲か心の充足感か、国か民か財か名誉か支配か自己承認か? 愛して愛される愛欲か? もしかしたら知識欲? 万が一にも知識欲なら狂喜乱舞するのだけど。世界中のありとあらゆる場所に行って、見て、知っていこう。ワタシは四百年前との違いを知れるし、スバルは未知を既知にできるから絶対に楽しいよ。知っていくコトの充足感は知識欲の権化だったワタシが確約しよう。〝まだそれはない〟と断言するのは何気に酷いと思――――魔女のお茶会がしたい? ドナ茶が飲みたい? あと膝枕……スバルがワタシにしてもらいたい事はそれなのかい。そう、そうなんだ。ふうん……いや、いやいや、落胆はしていないよ? 話したい事、聞きたい事は無数にあるし、見せておきたい物もあるさ。膝枕も悪くない。あれほど自分を他人に任せる行為も中々ないよ。けど、もっとこう、ほら、他にはないのかなぁと。具体的には……これ、ワタシが言わないと駄目なのかい。そういう感じのアレなのかい。普通は夫から言ってくるものなんじゃあ……わかった。言うよ。言えばいいんだろう? ……夫婦の営みだよ。お互いの愛情を分かち合うには最上の接触行為。それは、どうなんだい。ワタシはスバルがしたいなら喜んで応じるつもりだけど。する? しない? どっちなのさ。――――うんうん! だよね、したいよね。それが当たり前だとも。今夜にでもさっそくしよう! って、安心なんてしていないよ。誰もポンコツになってないから。全ては計算の内だ。演技だよ演技。だから、笑うのをやめるんだ、スバル。あまり魔女をからかうものじゃない。後が怖いからね。あなたの心臓はワタシが握っているのも同然なんだからね。相応の態度で接してくれないと。こっちには心臓以外にもとっておきの『切り札』もあるんだ。どういうものかはお楽しみさ。休暇中に、そうだね、お茶会の時に明かそう。フフフ……! スバルの驚くさまが目に浮かぶようだよ!! 驚愕するあまり、お茶を吹きかけるなんてコトはしないでね? 燃え尽きた禁書庫の反省を活かして防護の術式は多重に掛けているけど、強欲の権能を持つスバルだと最悪丸ごと消失させられるだろうから。どんなものなのかは嘆願されても言えないなぁ。しかし、強欲の魔女エキドナの最高傑作とだけは言っておこうか。ナツキ・スバルの為だけに創った一品だ。ワタシも出来栄えには納得して、エミリアとレムとペトラ……おまけにサテラの保証つきさ。彼女たちも頷いたんだし、お心に叶うことを願おう。
――――…………ふぅ。久し振りに話せたような気がするな。一方通行じゃない対話。あなたと話すのはやっぱり楽しい。友人や他の存在ではこうも上手くはいかない」
ヒトガタじゃないのが残念だったけど。
最後の最後に付け加えたエキドナにスバルは、
「俺たちの家に帰ったらな。お前が満足するまで付き合うよ」
偽りのない愛情を籠めて言うのだった。
竜と魔女の組み合わせは悪だと相場はきまっており、もしも相対するような状況になれば自分はなす術もなく死ぬだろうとペトラ・レイテは童女心ながら思っていた。
しかし――見た目や色は広く知られている『悪』そのものであるのだけれど――たった今庭先に降り立った一組みには愛情と憧憬の感情を抱ける。
愛すべき、尽くすべき、お二人なのだから。
「お帰りなさいませ。スバル様、エキドナ様」
頭を恭しく垂れる給仕長ペトラ・レイテ。
黒龍と共に舞い降りた黒衣の魔女は嫣然とほほ笑んだ。
3
エキドナの精神は心地よく感じる範囲で高揚していた。
浴湯を終えた彼女は、起伏に富んだ肢体を漆黒のナイトドレスで包み、寝室へと入った。
愛してやまないナツキ・スバルはベッドに腰掛け、窓の向こうの星空を何とはなしにといった様子で眺めていて。
(星が好きなのは変わらないね)
微笑ましいものでも目にしたかのように瞳を緩めた『強欲の魔女』が人差し指を振るう。
それに従って厚いカーテンが閉められ、外界の光景と光明は閉ざされた。
そこでようやくエキドナの入室に気付いたスバルが頭を掻く。
「誰が見ているか分からないだろう?」
特別指摘はせず、カチャンと扉の鍵も締め、薄暗くなった室内を進む。
こちらに向き直ったスバルが両目を大きく開く。愛妻エキドナの艶姿に虚を衝かれた様子だった。
全身を硬直させるが視線ばかりは正直に動き、微かに紅潮している顔、大胆に開かれたドレスの胸元、裾の
一度ならず、二度三度と、何度も。
繰り返す度に欲望の灯りが強くなり、視線に晒されたエキドナの秘所は熱くなっていく。淫らな蜜で濡らしてしまいそうになる。
「眼つきがケダモノみたいになっているね」
平静を装いながらベッドに上がり、片手をつい伸ばしてきたスバルに軽い忠言をおくる。効果は覿面。怒られた忠犬のように顔を下に向け、両手を両脚に置いてしまう。
「わ、わりぃ。思ってた以上に綺麗だったから……」
心底愛している男にそう言われて嬉しくならない女はいない。
白皙の肌を赤らめ、返す言葉が考えつかなかったので閉口。むず痒い沈黙が二人の間に流れる。
たった一言で舞い上がる自分に呆れつつ喜ぶ魔女と、そんな魔女を愛らしく思いつつも動くに動けない人間。
有り得ない想定ではあるが、近所に住まう知り合いが見ていれば、こう思っているだろう――。
『レムは男らしいスバル君に期待しています』『英雄になってもヘタレなのは変わらないわね、バルス』『なんなのよ。初夜なのかしら?』『先生ェェェェェェェ!!』『ロズワール様、少々やかましいですわ』
同じ想像が二人の脳内を通り過ぎていく中、羞恥心を堪えて口を開いたのはエキドナであった。
「初めて見せる格好でもないんだから……権能を解除してくれるかい?」
「お、おう」
『獅子の心臓』はエキドナに託したまま、『時間停止』を解除したナツキ・スバルは通常の状態に復帰する。細かい点を気にしなければ真人間と変わらない状態だ。
静止していた物体がいきなり動き出す衝撃を味わい、世界が眩んで咳き込む。だが一瞬だけに留まり、呼吸も正常に行えるようになった。
「問題は……なさそうか」
スバルの胸の中心に手を遣ったエキドナが心臓の鼓動を確認し、安心したと頷く。頭では分かっていても確かめなければ気が済まないのは、この魔女の可愛いポイントの一つである。
居ても立っても居られない気分になって宣告もなしに抱き締めた。
身体が本来の通りに動き出した今ならば、エキドナの存在を思うように感じ取れる。
腰までもある白髪の滑らかさと匂い、薄い布では到底隠しきれない乳房の柔らかさ、くびれた腰の細さと下に続く臀部と太腿……全部を余さず感じるかのように嗅いで、引き寄せて、撫で回す。
情欲を隠さない触れ方にクツクツと喉の奥で笑うエキドナ。
「さっきから性急だね。そんなに飢えていたのかな。だとすれば、嬉しい限りだ」
彼女の言う通りスバルの脳味噌は過熱されていた。
退廃と倒錯の雰囲気に、魔女らしく彼女らしい只ならぬ色香に溺れそうだった。
生暖かい底なし沼みたいだ。一度嵌まってしまえばもう逃げられない。
「恐ろっしい女だな。何人の男を誑かせて滅ぼしたんだろうな」
「多くの人が誤解を招きそうな言い方をしないでもらいたいな。こう見えても君一筋だというのに。ワタシは『強欲』であって『色欲』じゃないよ」
「似たようなもんだろ」
「違うよ。まったく違う。けど、まあ、君が相手なら色欲に堕落しているのも一興かな?」
今宵今夜、明日からの五日間、ワタシたちを遠ざける邪魔者も障害もいないのだから。
ならもう外の世界に構うコトはない。この寝室がワタシたちの世界だ。
愛を交わそう、欲のままに交わろう……理性が溶けて蕩けてしまうぐらいに。
エキドナは胸の奥に秘める必要がなくなった
「スバル♥」
――愛する男の名前を呼び、唇と唇を合わせていた。
長らく離れ離れだった時間を埋めようと力強く、衝動のまま口内へと舌を伸ばす。
「んっ♥ ちゅぷ……んんっ♥ はぁ……♥ んぅぅ、はぷ……♥」
熱いディープキスで漏れる、ぴちゃぴちゃと水気を含んだ音。自分たち以外誰もいない室内では露骨なまでに聞こえる。淫猥な合唱。耳の中から入ってきて脳が揺さぶられる。
一度目の接吻がようやく終わったかと思えば――すぐさま二度目、四度目と続き――五度目を堪能し終わると、エキドナは破顔して笑い出す。
「はふ、ぁ、あぁ…………ふふっ、ふふふふっ……くふふっ」
だいたいの予想はついた。
女の悦びを甘受しようとしている自分を笑っているのだろう。
「スバル。ねぇ、スバル」
夢の世界にいた頃よりも豊かになった乳房を露出させる。ナイトドレスの下は裸だ。下着の類などは一切付けていない。
喜悦で忙しなくなる呼吸、二つの白い半球とその頂にある赤い蕾が上下する。
「こっちにも触れてみないかい♥」
仰ぎ見るかのような眼差しでの誘惑。
抑えがたい衝動をぶつけるかの如く喰らいつくはケダモノと化した青年。
口を大きく開いて吸う――下品で下劣な音。
思いのままに豊乳を掴んで揉む――独り善がりで荒々しい。
それでも感じるのは気持ちよさと心地よさ。ココロに抱くのはドロドロと煮詰まった愛情。
処女雪のような肌は紅潮して汗ばみ、処女ではない秘所が蜜を垂らしはじめた。
それを知りながら、感じながら……エキドナはスバルの頭を優しく撫でる。
「あっはっ♥ はっ♥ まるで幼子……赤ん坊みたいだよ、スバル……♥ ああ、恥ずかしがることはないよ♥ 君は今まで散々、ワタシに頼ってきたんだからね♥」
赤子という表現に思うところがあったのかナツキ・スバルの動きが鈍くなる。だが反論する時間も惜しいのか、充血してきた乳首を啄み、引っ張ることでよがらす。
「くは、あぁぁっっ――♥ 悪気はなか、っ、のに♥」
「余計質悪いわ。言っていいコトと悪いコトがあんだろ」
肢体を跳ねさせた魔女をスバルは自身の腰の上に乗せる。弛まぬ修練で鍛えられた身体は逞しく頑強であり、女一人程度の体重が加えられたところでビクともしない。
ナイトドレスの切れ目から手を伸ばし、内股から股間へと這わせていく。道半ばでも温かい粘液の感触。源泉にまで辿り着けば、ソコは女の甘い蜜を垂らす場所となっていた。
痴態を知られてしまったエキドナの肌の赤味が見る間に増す。
垂れ落ちてくる愛液を手の平で受け止め――クチュクチュとわざとらしく音を鳴らして羞恥心を煽り、快楽を欲しがる淫唇に人差し指と中指の二本を入り込ませる。
抵抗は殆どなかった。少し力を加えるだけで根元まで滑り込んでいった。
そのまま、ぬかるんだ膣壁を押し開き、フックのような形状で掻き乱す。
「はぅあっっ、くぅぅ♥♥」
嬌声は砂糖よりも甘ったるく、鈴の音のように耳触りが良い。
「はひ、あっ♥♥ あ、くぅ……んく♥ ワタシがゆびっ、だけ、で、こんなっ♥」
美しい顔を欲情の色に染め上げ、鮮やかな唇の端からはヨダレを零す。
「スバルってば♥ そ、そこは、だめだって言ってるのに……あっ、あ、あぁぁぁ♥」
強欲の魔女を鳴かせられる悦びに没頭した。
「あむぅ……じゅる、じゅず♥ んむあ♥ ちゅぷぷ、れろ、ぢゅる♥ くうっ……♥」
舌を絡ませながら
離さない。逃がさない。腕の中にいる女はあまりにも愛おしく、愛したくて、どうにもならない愛情が湧き上がってくるのだ。
だから、弱いトコロを集中的に責め、気持ちよくさせて達させてやる。
「うぅん! んんっっ、ああっっっ……♥♥♥」
ついには堪え切れなくなり、エキドナが肢体を縮こませて波立たせる。
秘所に潜り込ませていた二本の指が締め付けられ、手の平が愛液ではない液体に濡れた。
「イったか?」
確かな達成感と満足感を味わいつつ、指を引き抜き、その証が付いたまま話しかける。
余韻に浸っていたエキドナは呼吸をなんとか整えて。
「イった、イったよ。スバルの愛撫で達してしまった……♥」
嘘偽りなく告白した彼女の額に口付けを贈る。
「前戯は充分みたいだし、エキドナだけじゃなくて俺も楽しませてもらわないとな」
そう言って寝間着を脱ぎ捨てる。
鋼の如く鍛え上げられた肉体の力強さと、股座に鎮座している逞しい雄の象徴を目にした『強欲の魔女』の吐息は再度荒くなっていき、厭らしい雌の姿を露呈した。
目を猫のように大きく開いて凝視し、膣道の奥にある子宮を疼かせる。
あの大きなモノで愛欲を満たしてもらいたくなる。
「それなら……ワタシが上になるよ」
「頼んでもいいのか?」
緩く押し倒すことで返答としたエキドナがスバルの上に跨る。ナイトドレスを脱ごうとしないのは意図的なのか、忘れているからなのか。断言はできないが恐らく後者だろう。
今の彼女はナツキ・スバルの妻としてのエキドナだ。つまりはただ一人の女。
ハートマークが浮かび上がりそうなぐらい瞳を蕩かし、裾を摘まんで――――全開まで隆起した男根を受け入れていく。
「スバルのが入って、きて…………きたあっ、きたあぁ♥ ……んっ♥ ん゛ぅぅん……♥♥」
秘所を割り開き、膣道を押し開いて進み続け、グチュリと粘度の高い愛液を掻き出す男根。
長く太く硬くソレに最奥まで貫かれる快感といったらなかった。他に例えられるものが思いつかないほどだ。こんなに気持ちが良いコトがあるなんて知らなかった。知識としては理解していても、実際にはここまで凄まじいモノだったのだ。
(知れて良かったっ♥ 相手も相性が最高最適のヒトで……世界に二人といない男で♥)
今からこそが間違いなく至福の時間の始まり。
エキドナは熱狂的に動く。
長い白髪を梳き上げて身体を上下に跳ねさせる――単調にはならないよう――前後左右のグラインドも織り交ぜる。豊満な肢体の特権として大きく揺れる乳房を魅せつける。
「具合はっ、どうかな? 上手くできてる? 気持ち良くなってくれてるかい?」
「久し振りだからかも知んねえけど、正直かなりヤバいぞ……ッ」
「君専用に最適化したのかもね♥ スバルはそのまま動かなくてもいいよ。ワタシがちゃんと最後までしてあげるからぁ♥ あっ……うあっ♥ あっ♥ んんはぁっ……♥
愛液という名の潤滑油が次から次へと分泌されて膣内の滑りが良くなり、入り口の淫裂から行き止まりの子宮口まで一気に姦通できる快楽に酔い痴れる。
乱れに乱れる。淫靡な視線を送りながら舞うように堕ちていく。遠慮する必要はない。これは合意の元で行われている夫婦の営み。誰に配慮しないといけないというのか。
ワタシはスバルを愛し、スバルもワタシを愛している――――これは周知の事実。『死に戻り』でも覆せられない絶対の真実だ。
エキドナはナツキ・スバルの
誰に渡らないし、誰にも渡さない。
(君のその顔を見られるのはワタシだけ。君の男根を受け入れられるのもワタシだけ。君とこうして交わることができるのもワタシだけ……!!)
自分の身体から飛び散ったり、流れ落ちたりした汗が、涎が、愛液が、潮が、彼に当たるだけで形容し難い悦びが生じる。これが酷く歪んだ愛欲だというコトぐらい理解している。どんどん肥大化する一方の独占欲。隠すのには日頃苦労させられているのだ。
――今だけでもいいからワタシだけを見て――
そう希えば片手を握られる。強いのに、とても優しく感じられた。
「欲しがらなくたってぞっこんだっつーの」
「っっ! スバルぅ……!!」
「お前の方こそ愛してくれなくなるとか止めろよな? あんな思いは二度と御免だからな?」
「あ、あの時のコトは本当に悪いと思って――――あ゛うっ♥ くはっ♥ ん゛ん゛ぅぁっ♥」
慌てて謝ろうとしたら力強く突き上げられる。お仕置きみたいに子宮口をゴツゴツ叩かれる。
それは触れるなという意思表示なのだろう。そんな過去の出来事よりも今に集中してくれと言ってきたのだ。
快感が、子宮を起点に全身へと駆け抜けていき、脳が快楽一色に染め直された。
「動かないでって……♥」
「強制はされてないからなっ。嫌なコト思い出させた罰だ……!」
「んぐぅぅ――――ああぁ♥ はぁ゛♥ ぅ゛んう……♥ 子宮の奥までっ、届いてるっ♥ スバルの男根がワタシを犯してる♥」
跳ねるエキドナの肢体は重力に逆らわず落ち――そこに強烈な一突きをスバルは喰らわせる。臀部を鷲掴み、子宮口をこじ開け、胎内に潜り込もうとせんばかりの打突を繰り返す。
これ以上ないまでに合致した理想的な男性器。叩き込まれる刺激に身悶え、膣内が歓喜して脈動し、柔らかく温かい肉壁で絡めとり締め付ける。
(気持ちイイ、気持ちイイ、気持ちイイ――きもちいい♥♥♥)
(
(性器を交えるだけの行為なのに、なんでこんな夢中にさせられるんだろう♥)
(愛してるから? 愛されてるから? どっちなのかなぁ♥ どっちもなのかなぁ♥)
(けど、考えるのはもうやめておかないと……だってこんなに気持ちイイんだもの♥♥)
(もっと突いて♥ もっと突いて♥ 大きくなった、太くなった、硬くなった、熱くなった――君のおち〇ぽでワタシのおま〇こメチャクチャに犯して欲しい♥♥♥♥)
理性も知性も損なわれた思考はやがて短絡的になり、恥じることもなくループし続けた。
知識欲の権化たる『強欲の魔女』が娼婦じみた痴態を晒している。この世界で最も頭脳が優れていると称えられる自分が無様な姿を見せている……それさえも悦楽の材料になってしまう。
男に跨り、淫らに激しく踊る女。それが今のワタシの有り様ありざまなのだと興奮する。
なんという浅ましい堕落だろうか――どうでもいい。どうでもいい。どうでもいい。
どうとでもなってしまいたい。
ナツキ・スバルと
「はぁっはぁっ♥ お尻だけじゃなくて胸も……ひゃふ♥」
臀部を掴んでいたスバルの両手を二つの乳房に持っていかせ、好きに揉ませる。
質量感がたっぷりとある双丘にかぎ爪のように五指が食い込む。大きな掌でも収まりきらない乳肉がこぼれる。柔らかさを堪能されたあと、勃起した乳首をきゅっと引っ張られた。
乱暴なのに痛いどころか気持ち良さしか感じない。
嬌声は色艶さを際限なく増し――聞き届ける青年の情欲を促す。
「どこまで淫乱になるんだお前はッ」
「だって、ずっと独りにした君がっ、スバルがいけないんだぁ♥」
「……ほんっとうに可愛いヤツだな……!」
ここまで魅せられてしまっては我慢も効かなくなる頃合いだった。
出してしまいたい。自分の上で舞う女に種付けしたい。子宮を精液で満杯にしてやりたい。
そのようなナツキ・スバルの欲求は筒抜けだ。
目聡いエキドナは妖しげに微笑み、紅い唇が言葉を紡ぎだす。
頭蓋を通り抜け脳を震わせる言葉。
どんな麻薬であれ、これほどの情念を起こすことはできない。
ナツキ・スバルの身体は勝手に反応した――男根が膨れ上がる。細い腰を支えながら腰を突き上げる。最も感じる部分に容赦なく叩きつけまくる。
淫蕩な笑みで迎えたエキドナも動きを合わせるように舞い踊る。寝室全体に美しい声が響き、肉に肉を打ち付けているような生々しい
互いに互いが無我夢中の様相を呈し、それもいつまで続けられただろうか。
絶頂に辿り着く直前、二人は相手の顔しか見ていなかった。
「くぅぅぅ射精すぞエキドナ……!!
「ワタシも、もぉイく……♥ 溜まったスバルの精液いちばん奥に欲しいっ♥ あはっ♥ きてきて♥ ワタシの愛おしいヒト♥ スバル、スバルスバルっっ――――――♥♥♥」
子宮口に赤黒い亀頭が抉り込まれた瞬間――飛び出した精液が胎内を満たしていく。
「っっっっっっっ――――――――♥♥♥♥♥」
言葉にならない嬌声。視界が明滅し、思考が吹き飛ぶほどの絶頂がもたらす多幸感に打ちのめされる。子宮内に注がれる白濁の勢いと量は人間とは到底思えられない。これは最早人外の領域だ。吸い付く膣壁がどんなに絞っても次から次へと流し込んでくる。
「はーッ♥ はーッ♥ ひああっっ……う゛んぅ♥」
これがスバルの愛情の深さなのだと思うと幸せしかなかった。一滴残さず全て受け止めたくなる。彼の割れた腹に両手をついて腰を揺すり、射精が終わる最後の最後まで待ち続けた。
その頃になると程よく落ち着いてきて、
「ほら……言われた通り全部受け止めたよ」
結合部の上を白い指で撫でるエキドナ。
手の甲で額の汗を拭ったスバルは「無理してないか?」と言って上半身を起こす。
「ううん」やんわりと
身体は繋がったままであり、一度ぐらいでは物足りないと肉棒が主張している。
エキドナもスバルも満足していない。
どうするかは確認するまでもなく分かり切っていた。
二人の蜜夜は終わらず、尽き果てるまで続けられるのみだ。
間もなくして営みが再開され、そこから先は――――……………。
「はぁぁぁん♥ んぁ♥ あぅん♥ あっ……♥ あ゛ぁっ……♥」
始めの騎乗位、次の正常位と側位と続き、対面座位で身体をぴったりと密着させながらの交配。
ここまでくるとエキドナもドレスナイトを脱いで裸身になっていた。
熱く赤く火照り、汗で
あまり強く激しくはできないものの、その分だけ、ピストン運動以外にも意識を向けられる。
「ん♥ ……ちゅむ、んる、ふんぅっ……♥ あむぁっあ♥ ちゅ、ちゅう♥」
首に両腕を回してきたエキドナと接吻し、顔を押しつけうようにしながら求める。彼女の舌と自分のそれが口内で交わり、お互いの唾液を混ぜ合わせて飲みこむ。無味の筈なのだがほのかに甘かった。果実酒のようだ。
「はぷん、むぅ♥ ちゅぴ、くちゅ、っううぅん♥♥」
こいつの匂いは柑橘系だったな、と薄ぼんやりとした頭で考え、下と上の両方での繋がりに酔い痴れているかのようなエキドナと共に官能を甘受していき、頃合いを見計らって膣奥で射精する。確か回数は……騎乗位で三回、正常位で三回、側位は一回ほどで、対面座位では既に二回ほど出したから……十回目になるのだろうか。長らく性欲を発散してなかったとはいえ、まったく衰えない精力には少し呆れる。そう思いながらもスバルはまたもや大量に放出してしまう。
白い欲望が子宮内を余すところなく塗り潰し、
「あっ、や゛あ゛ぁっ♥♥ またきたぁぁ♥♥♥♥」
快楽の頂点に昇ったエキドナが震えて善がる。
二人揃って満たし満たされる。けれど、愛し合いたい強欲はまるで絶えない。
肉棒を抜き、愛妻を背中からベッドに倒す。
煽情的に広がる白髪は百合を想像させ、目を奪われるまでに美しかったが、こうすればどんな風になるだろうかという欲求と好奇心から、四つん這いに反転させる。背中を伝った白い髪が流れるように落ち、その光景に恐ろしいまでにゾクゾクした。
処女を散らせた瞬間にも似た高揚感があった。
あの時と違うのは正常位だったことと、エキドナが痛がっていないことと。
誘惑するように尻を掲げ、蠱惑的にこちらを見つめてくる黒い瞳の蕩け具合。
「今度は後ろからなんだね……?」
片腕で身体を支え、もう片方の手で臀部を引っ張り、膣穴を広げる。子宮内に入りきれなかった精子がドロリと太い糸を引きながら垂れていく。
「ああもう……♥ スバルがたくさん
「なら、すぐに入れ直してやるよ……っと!」
「ふう゛う゛くうッッッ♥ あぁ、あぁっ♥……かっふっ、んあっ、はあんっ♥ はッ、はじめから激しいんだね♥ こういうのも嫌いじゃない♥♥」
「お前どうやっても喜んでるよな?」
「それはぁっ……♥ 相手が君だから♥ ワタシもこんなに乱れられるんだよっ♥」
臀部に伸ばされていたエキドナの片腕を握り、一切の手心も加えず男根を挿入する。腰と尻をぶつけ合う。最奥まで入れては半ばまで引き抜き――思いっきり突き込む。
バヂュン! バヂュン! 今までにない力強いストロークで発せられる盛大な音。
「すごいっ音……♥ あ゛っ! はあ゛っ! はあ゛っ! んんう゛っ! 深いぃぃ……♥♥ こ、この体勢だとっ、スバルの逸物が♥ 子宮に抉り込んでくるっうぅ♥」
「ケダモノにっ、ケダモノみたいに犯されてどんな気分だっ?」
「き、聞きたいなら言うよっっ♥♥ 幸せ、歓喜、法悦、愉悦、至福、
返答のご褒美は両手首を掴んでの鬼のような抽迭だった。
馬のように手綱を操られたエキドナの背中が弓なりにしなり、豊乳が上下に激しく揺さぶられ、数多くの叡智を授けてきた口から獣じみた嬌声が上がる。
「あ゛あっ♥ あぐっう゛う゛う゛ぅぅ゛~~~~っっっっ♥♥♥♥」
過激すぎるピストン運動。合わせることなんて出来ない。どうにか耐えるしかなかった。
生じる官能はどれほどのものなのか。
『強欲の魔女』は女どころか牝に堕ちかけようとしていた。
「~~~~!? こ、これッ、さすがにだめだよスバルっ。本当に堕ちる、堕ちてしまうからっ。子種を欲しがる牝狐になってしまいそうなんだっっ!」
大粒の涙を流しながら願う。魔女の誇りも、矜持もプライドもない。
このまま後ろからでいいから、せめてもう少し優しく――そうお願いをする。
それなのにスバルは物凄く意地悪な笑みで、「ここで止める男なんかじゃないって知ってるだろ?」などと言ってきた。
ああ、なんて――――好奇心に満ち満ちた表情をしているのだろうか。
ワタシはこんな風に世界を、現象を、生き物を、君を見ていたのだろうか。
寒気に酷似したナニかで全身の肌が粟立つ。
「え、演技じゃないんだ……! 嘘は言って――――んあ゛ぁぁっ♥」
「けど、嫌でもないと。誰かさんのお陰で言葉の裏は読めるようになったよ」
「はひっ♥ ひんっ♥ こ、こんなぁ……♥」
一突きだけでイかされてしまった。
両腕を引かれたまま悶絶するエキドナ。しかし構わず抽迭を続けながらスバルは告げる。
「別に気にしちゃいないし、むしろ感謝してるぐらいだけどよ。……二人目はちゃんと産ませてやるからな」
そこには確かな意思を感じさせる熱意があった。
何がなんでも孕ませてやるという、とてもではないが綺麗とは云えない欲望丸出しの決意だったものの、
「……産む…………産むよ♥ 産みたい♥ スバルの子供をワタシは産んでみたい♥♥♥ 男の子でも女の子でも、何人でも孕んであげる♥♥」
その方が強欲のエキドナには届きやすいのだ。
「んぐっ♥ あ゛っああッ♥ う゛ぐぅっ♥ ……ふふふ、あは、あははぁっ♥♥ スバルもスバルのおち〇ぽも凄い♥♥♥ ワタシの弱いとこ完璧に知ってる♥ おま〇こ喜んでる♥♥」
今まで以上に、完全なまでに牡を受け入れた
「精液……子種欲しい♥ こぼれる以上におち〇ちんから子種出して♥♥」
「種付けされたいってかっ?」
「されたいよっ……すごくすごくされたいんだ♥♥ おま〇このナカに子種がっ♥♥♥」
「だったらッ、
「ああぁっっ♥ うんっ、うんっ、これで妊娠させるつもりで
受精欲求に促されて降りてきた子宮の入り口に、溢れ出んばかりに精力を滾らせた逸物がぶつけられる。熱かった、大きかった、太かった、硬かった。脈打つ鼓動から、もう間もなくして射精を開始するということが解る。
エキドナは時間を数える。きっかり五秒後の未来まで。
五秒……四秒……三秒、二秒、一秒――――クる♥ ワタシもイく♥ イってしまう♥♥
「はあ゛あ゛あ゛あ゛ァァァっっっ―――――――――――――♥♥♥♥♥♥♥」
絶頂。
直後に射精、膨大な量の精液が雪崩れ込む。満遍なくにである。
頭の中がホワイトアウトするような官能。我知らず本能のままに声が絞り出された。
余韻に浸る暇はない。今度は胎内が大いに満たされていく快感で絶頂する。スバルの男根の亀頭部分が子宮口に食い込み、栓となって精液の流出を防いでくれる。
両腕はいつのまにか解放されており、肉棒が脈動するタイミングで腰を引き寄せられた。
ありったけの子種……危険日であろうとなかろうと、こんなにも射精されたら、問答無用で妊娠させられそうだ。
男根が膣道を擦りながら引き抜かれる。多くの精子が膣穴から溢れ出た。
名残惜しく思いつつ、息も絶え絶えのエキドナが身体を起こす――その顔の小さな口に逸物の先端が向けられたのは直ぐであった。
熱いまま、大きいまま、太いまま、硬いまま……僅かほども衰えずソレは怒張していた。
見上げる。スバルの獣のように鋭い眼と視線が合う。逆転しようがない立場を理解する。
「じゅる……ヂュ、ヌヂュ……ンンっ、ジュルっンルゥ……♥」
言われるよりも前に含み、舌と咥内で幹を綺麗にし、尿道に残った精子を器用に吸い取った。
口を離す。後ろに倒れる。伸し掛かってくる青年の重みに幸せを覚える。
両手を伸ばして迎え入れたエキドナは喜色満面の笑顔で、
「もっともっとワタシを欲しがって――?」
強欲の魔女と強情の人間の、罪深い愛に溺れる夜はまだ明けそうになかった。
書いた!
来た!
あとは投稿するだけのこと!
ええ、まあ、ルビ付けが大変でした(小並感)
誤字・脱字を発見したらよろしくお願いしやす!
十巻のエキドナの全体図のカラーイラスト見ましたが、普通にスタイル抜群でびっこらこきました。巨乳好きの私には予想外のプレゼンツ。顔に幼さはありますが、あれで平凡な胸とかスバルの眼は肥えくさってるんですかね……?