※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第7話 元カノ倒したけど、その後に……

 

<イッセー>

 

 

 俺は今、教会に来ている。

 

 部長にも教えられたが、本来悪魔である俺は教会に来ることは許されない。だけど、3日前に出会ったシスターのアーシアを堕天使達から救い出すために俺は乗り込んだ。

 

 アーシアを救いに行くと、部長に相談したがダメだった。

 

 だから俺1人で乗り込もうと思ったらイケメン王子の木場が「仲間だから」と手伝ってくれる事になって、そして、小猫ちゃんまでもついて来てくれる事になった!

 

 部長も口では許可してないように言っていたけど、木場に遠まわしに堕天使たちが居る教会を敵地と定めて、俺の『兵士』としての能力『プロモーション』をする許可をくれたことを聞いて感動した!

 

 月明かりに照らされながら、俺たちは教会の前で顔を見合わせ『アーシア救出作戦』を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会の入り口をぶち破り一気に聖堂まで走ると、拍手と共に神父に見えない不敵な笑みを浮かべた白髪の神父フリードが現れた。

 

 フリードは2日ほど前に悪魔の仕事をしていた時に訪れた民家で偶然鉢合せした悪魔の天敵エクソシストだった。

 

さらにフリードと一緒に、少し前に道に迷っているところ助けてあげた金髪美少女シスターのアーシアがいて、アーシアはフリードに殺されそうになった俺を身を挺して庇ってくれた。

 

 そしてその次の日にアーシアと街で再開してハンバーガーを食べたりして遊び、アーシアの過去を知った。

 

 傷を癒す神器を持ち、その力で『聖女』として崇められ、その力で悪魔を治した事で『魔女』と罵られ、『異端』として教会から捨てられ、一人ぼっちになったアーシア。

 

 俺は悲しい笑みで笑うアーシアと友達となった。友達になってアーシアに心の底から笑ってほしかったんだ。

 

 でも、俺は守れなかった。元彼の夕麻ちゃん……、堕天使レイナーレにアーシアが連れ去られようとした時。俺は何も出来ずにアーシアを奪われるだけだった。

 

 ……だけど、今度は! 今度こそは助けてみせる! 友達としてアーシアを救ってみせる!

 

 まずは、目の前のクソ神父からだ! 俺を庇ったアーシアを殴った分! きっちり返してやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、クソ神父を木場と小猫ちゃんの手を借りて顔面に拳を叩き込み、撃退する事が出来た。

 

 そして木場と小猫ちゃんと共にアーシアの持つ『神器』を取り出す儀式をしているという地下へと進んだ。

 

 地下へ着くと、部屋中が神父だらけで、全員が光の刃を発生させる剣を持っていた。

 

 俺は奥の十字架に磔にされた少女を見て、叫んだ。

 

「アーシアァァ!」

 

「………………」

 

 アーシアは俺の呼ぶ声には反応を見せずに無言のまま、人形のように光を失った目をしていた。

 

 アーシアをレイナーレから奪われる時に教会から逃げたと言っていたから、レイナーレに逃げられないように何かされたんだろう。

 

「感動のご対面みたいだけど、遅かったわね。いま、儀式は終るところよ」

 

 儀式が終わる?

 

 レイナーレがアーシアの体に視線を向けると、突然、アーシアの体が光り始めた。

 

「アーシア!」

 

 駆け寄ろうとした俺を神父たちが囲む。

 

「邪魔はさせん!」

 

「悪魔め! 滅してくれるわ!」

 

「どけ! 神父ども! お前らに構っているヒマはねぇんだ!」

 

 バン!

 

 大きな音。見れば、小猫ちゃんが神父の1人を殴り飛ばしていた。

 

「……触れないでください」

 

 木場もフリード戦で見せた、光を吸収する闇の剣を抜き放つ。

 

「最初から全力でいかせてもらおうかな。僕、神父が嫌いだからさ。こんなにいるなら遠慮なく光を食わせてもらうよ」

 

 そうこうしているうちに、アーシアの体から光が消え、驚愕の表情のレイナーレが立っていた。

 

「なんで! なんでなのよ! 儀式は完璧なのに! なのに、なんで『神器』が! 『聖女の微笑』が出ないのよぉぉぉ!」

 

 レイナーレが顔を両手で覆って叫んでいる間に、木場と小猫ちゃんの協力で磔にされたアーシアを救い出した。

 

 追ってくる神父たちを木場と小猫ちゃんに任せ、俺はアーシアを抱えて教会の聖堂へと一気に逃げる。

 

「アーシア! アーシアっ!」

 

「……………」

 

 なんども呼びかけるが反応がない。それどころか呼吸がどんどん弱くなり、冷たくなっていく。

 

 俺でも分かる。もうすぐアーシアは死ぬんだ……。

 

 やがて、呼吸は止み、心臓の鼓動も、止まった。

 

「アーシアぁぁぁあああああああああああっ!!!!!!!」

 

 救えなかった……、友達なのに……、守るって約束したのに……っ!!

 

 俺は、教会の天井に向かって叫ぶ。

 

 なんでだよ! なんで神様はアーシアを見捨てたんだ! なんでこの子が死なないといけない! この子はいい子なんだぜ! 傷ついた相手なら誰でも治してくれる優しい子なんだ!

 

「あらぁ? その子、死んじゃったの? あーあ……、これじゃあ、神器を取り出せないじゃないの! せっかく……、せっかく! 堕天使を治療できる堕天使として、私の地位が約束されるはずだったのにっ! アザゼル様やシェムハザ様のお力になれたのに! 」

 

 レイナーレが狂ったように髪を振り回し、睨みつけてきた。

 

 地位? お力? そんなことのためにアーシアは殺されたのか? 俺はこんなやつに殺されたのか? エイジは……、こんなやつに殺されたのか?

 

「知るかよ」

 

 俺はレイナーレを激しく睨みつける。

 

「お前のことなんか知らねぇんだよ! それよりも、てめぇの出世のためにアーシアが死んだんだぞ!」

 

「その子が死んだからってなによ? ていうか、神器も取り出せずに死ぬなんて、ほんと無駄死によね~」

 

 レイナーレがまるでゴミでも見るかのような目でアーシアを見下ろす。

 

「返せよ……、アーシアを返せよォォォォッッ!!」

 

『Dragon booster!!』

 

 俺の叫びに応えるように、左腕の神器が動き出す。手の甲の宝玉が眩い輝きを放った。

 

 籠手に何かの紋章らしきものが浮かんだ。

 

 同時に俺の体を力が駆け巡る。神器をつけている左腕から全身へ。

 

 俺はあふれ出す力に身を委ねながら一気に駆け出す。

 

 嘲笑を浮かべる敵へ向けて拳を突き出した。

 

 レイナーレは華麗にそれを避ける。まるでその場を舞うように。

 

「おバカなあなたにも分かるように説明してあげるわ。単純な戦力差よ。私が千。あなたが一。この差はどうやっても埋められないわ。たとえ、その神器が発動しているところで、倍は二。どうしようもないのよ! どうやって私に勝とうというの! アハハハハハハ!!!」

 

『Boost!!』

 

 宝玉から再び音声。甲の宝玉に浮かぶ『Ⅰ』から『Ⅱ』へ変わる。

 

 ドクンッ!

 

 俺のなかで二度目の変化が訪れる。

 

 力が―――目の前の敵を倒す何かが増していく。

 

「うおおおおおおおお!」

 

 俺はあふれ出す力を拳に乗せて一気に詰め寄る。俺はすでにプロモーションで『戦車』になっていた。

 

「へぇ! 少し力が増したの? でもまだまだね!」

 

 俺の攻撃はまた避けられる。

 

 次の瞬間、レイナーレの両の手に光が集まり出し、何かが形成されていく。

 

「私の悲しみが癒えるまで、なぶり殺しにしてあげる!」

 

 ズドンッ!

 

 俺の両足を光の槍が貫く。両太ももに鋭く深く打ち込まれた。『戦車』の防御力をもってしれも防げなかった。

 

「ぐぁああああぁぁあぁっ!!」

 

 俺は絶叫を張り上げた。

 

 激痛が全身に響くが、こんな所で膝をつくわけにはいかない。

 

 俺はすぐさま光の槍を掴む。

 

 ジュウウウウウ。

 

「ぐぅぅぅぅああああ!!」

 

 肉の焼ける音だ。熱い! 超熱ぃぃぃぃ! 光だからか! 槍を掴む俺の手のひらを容赦なく焦がしていく。

 

 槍を抜こうとする俺にレイナーレが嘲笑してくるが関係ねぇ!

 

「ぬがぁぁっぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は声にならない声を張り上げる。

 

 足を貫く槍の激痛。光ってヤツがもたらす激痛。それらが俺に容赦なく襲い掛かってきて意識が飛びそうになる。

 

 だが、それがどうした! それがどうしたって言うんだ!

 

「こんなもの! あの子が! アーシアが苦しんだものに比べたらなんだってんだよ!!」

 

 両手に力を込め、一気に槍を引き抜く。

 

 槍がなくなったせいか、両足の穴から鮮血が溢れ出る。

 

 槍を抜いたところで痛みが消えるはずもない。

 

『boost!!』

 

 槍に貫かれ、攻撃が止まってしまった今でも左腕の籠手は音声を発する。

 

 超痛ぇよ。すげぇ痛ぇよ。

 

 俺、メチャクチャ泣いてるし、よだれだってだらだらだ。

 

 すとん。

 

 体から力が抜け、その場でしりもちをついた。

 

 これ、やべぇのか?

 

「……大したものね。下級悪魔の分際で堕天使の作った光の槍を抜いてしまうなんて。でも、無駄。私の光は派手さはないけれど、悪魔に対して殺傷能力が高いわ。光力の濃度も濃いのよ。神父たちの刃の素としても機能できるほど。ひとつでも傷を負えば中級悪魔でもそう簡単には治らない。下級悪魔のあなたじゃ、ここまでが限界。ふふふ、光のダメージを甘くみちゃだめなのよ? 特に私の光はね」

 

 狂気を孕んだ顔で長々とワケのわからないことをしゃべってくれる。

 

「あなたの体の中を光が回り、全身にダメージを行き渡らせる。治療が遅ければ死ぬわ。いえ、普通なら死んでもおかしくないんだけど、本当に頑丈ね」

 

 あーそうですか。俺みたいな悪魔始めて少しのクズじゃ、この傷はヤバいってことですか。

 

 俺は、動けない体が動くように、神に祈ろうとして思い出す。神は助けてくれなかったじゃないか、なら、誰に祈ろう……、そうだ、俺は悪魔だ。魔王様に祈ろう。

 

 突然、独り言をいい始めた俺をレイナーレは心底おかしそうに笑う。

 

 頼む……頼むから、一発だけ……、目の前にいるクソ堕天使を一発だけ殴る力を俺にください!!

 

 力が抜けていた体にだんだん力が入っていく。

 

 動かなかった足が動く。

 

 両足に力を入れ、叫びながらゆっくりと立ち上がっていく。

 

 全身に激痛が走る。少し動くだけで意識が飛びそうになる。

 

「―――ッ! う、嘘よ! 立ち上がれる体じゃないのよ!? 光のダメージで―――」

 

 驚愕しているレイナーレの視線位置に少しずつ近づけ、立ち上がる。

 

 足をガクガク震わせながら。大量に血を流しながら、ヤツの眼前に立つ。

 

「よー、俺の元彼さん。色々と今まで世話になりました」

 

「……立ち上がれるわけがない! か、下級悪魔ごときがあの傷で動けるはずがない! 全身を内側から焦がしているのよ!? 光を緩和する魔力を持たない下級悪魔がたえられるはずがないわ!」

 

「あー、痛ぇよ。チョー痛ぇ。意識も飛びそうだ。でもよ、てめぇへの怒りと憎悪がスゴくてどうにかなっちゃいそうだ」

 

 俺は視線を一ミリもずらさないで相手を睨みつける。

 

 次の一発が俺の最後の一発だ。それを撃てば俺は倒れる。

 

 だから、次で決めるんだ。目標から目をそらすわけにはいかない。

 

「なあ、俺の神器さん。目の前のコイツを殴り飛ばすだけの力はあるんだろうな? トドメとシャレこもうぜ」

 

『Explosion!!』

 

 その機械的な声はその時だけ、とても力強かった。

 

 籠手の宝玉から光が発せられ、俺の体から力が湧き出てくる。

 

「……ありえない。何よ、これ。どうして、こんな事が……。その神器は持ち主の力を倍にする『 龍 の 手 (トウワイス・クリティカル)』でしょ? ……なんで。あ、ありえないわ。どうして、あなたの力は私を超えているの……? この肌に伝わる魔力の波……魔の波動は中級…・・・上級クラスのそれ……」

 

 レイナーレの顔が青ざめる。俺は、拳を固めて近づく。

 

「嘘よ! こんなの嘘だわ! あなたのような下賎な輩に私が負けるはずがない!!」

 

 レイナーレは両手に光の槍を再び作り出す。それを勢いよく投げ渡してきた。

 

 ブゥン。

 

 俺はそれを横殴りに拳で薙ぎ払った。光の槍は難なく消し飛んだ。

 

 光の槍を俺が難なく消し飛ばしたのを見て、レイナーレの表情はさらに青ざめる。

 

「い、いや!」

 

 バッ!

 

 黒い翼を羽ばたかせ、レイナーレは今にも飛び立とうとしていた。

 

 全く、さっきまで嘲笑っていたくせに、勝てないと分かると撤退かよ。いいご身分だな。

 

 俺は相手が飛び立とうとした瞬間に駆け出し、その手を一気に引く。

 

「逃がすか、バカ」

 

「私は……ッ!」

 

「吹っ飛べ! クソ天使ッ!」

 

「おのれぇぇぇぇぇ! 下級悪魔がぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 左腕の籠手が力を一気に解放した。左腕に解放した力を集結させ、拳にそれらを乗せる。

 

 それを憎むべき相手の顔面に鋭く、正確に真っ直ぐ打ち込んでやった。

 

 ゴッ!

 

 派手な音が鳴り響く。俺は拳を顔面に食い込ませたまま、力強く押し出す!

 

 レイナーレが拳の一撃で後方へ吹っ飛ぶ。

 

 ガッシャァァァァァン!!!!

 

 大きな破壊音を立てて堕天使は壁に叩きつけられた。壁は見事に壊れ、大きな穴が生まれている。埃が巻き起こった。

 

 宙を舞う埃が落ち着いたとき、レイナーレが吹っ飛んだ先が鮮明になってくる。

 

 穴は外まで達しており、堕天使は地面に転がっていた。

 

 動く気配はない。死んだかどうか分からないけど、そうそう立ち上がってこないだろう。

 

 一矢報いた。

 

「ざまーみろ」

 

 思わず笑みがこぼれた。本心さ。本当に気持ちのいい一撃だった。

 

 けど、すぐに涙もこぼれた。

 

「……アーシア」

 

 もう彼女は笑ってくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はレイナーレを殴り飛ばした後、倒れこむように……。

 

 とん。

 

 俺の肩を抱く何か。見れば木場だった。

 

「お疲れ。堕天使を倒しちゃうなんてね」

 

 笑顔で俺の肩を持ち、体を支えてくれている。なんだ、木場もボロボロじゃねぇか。

 

「よー、遅ぇよ、色男」

 

「ふふふ、邪魔をするなって部長に言われていたんだ」

 

 部長が?

 

「その通りよ。あなたたちなら、堕天使レイナーレを倒せると信じていたもの」

 

 声のする方へ顔を向けば、紅の髪を揺らしながらリアス部長が笑顔で歩いてくる。

 

「部長、どこから?」

 

「地下よ。用事が済んだから、魔法陣でここへジャンプしてきたの。教会にジャンプしたのは初めてだったから緊張したわ」

 

 部長はそういいながら息をつき、俺の前に来る。

 

「それで、無事に勝ったみたいね」

 

「ぶ、部長……、ハハハ、なんとか勝ちました」

 

「フフフ、偉いわ。さすが私の下僕くん」

 

 鼻先をつんと小突かれる。

 

「あらあら。教会がボロボロですわ。部長、よろしいのですか?」

 

 何やら困り顔の朱乃さん。

 

「……なんか、ヤバいんすか?」

 

 俺が恐る恐る部長に聞くと、悪魔が天使や堕天使がいる教会を破壊すると恨みをかい、刺客を放たれたり、報復を受けることがあると説明してくれた。

 

 だけど、今回は捨てられた教会を堕天使達が単独で勝手に使っていただけで、今回の件は小競り合いとして済ますことが出来るらしい。

 

「部長、持って来ました」

 

 ズルズルと引きずる音と共に小猫ちゃんが現れた。

 

 小猫ちゃんの手には堕天使の黒い羽。俺が殴り飛ばし気絶したレイナーレだった。

 

 部長が小猫にお礼を言い。朱乃さんに起こすように一声駆ける。

 

 朱乃さんが手を翳すと、倒れているレイナーレの頭の上に水の塊りが現れ、レイナーレに被せる。

 

 バシャ!

 

 水音の後「ゴホッゴホッ」と咳き込むレイナーレ。

 

 気がついたのか、ゆっくりと目を開ける堕天使。それを部長が見下す。

 

「ごきげんよう。堕天使レイナーレ」

 

「……グレモリー一族の娘か……」

 

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」

 

 笑顔で言い渡す部長だが、レイナーレは部長を睨みつけている。

 

 と、途端に嘲笑う。

 

「……してやったりと思っているんでしょうけど、残念。今回の計画は上に内緒でやっているけれど、私に同調し、協力をしてくれている堕天使もいるわ。私が危うくなったとき、彼らは私を―――」

 

「彼らは助けに来ないわ」

 

 レイナーレの言葉を遮り、部長ははっきりとそう言った。

 

「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、彼らは私が消し飛ばしたから」

 

「嘘よ!」

 

 レイナーレは上半身だけ起こし、部長の言葉を強く否定する。

 

 部長は懐から3枚の黒い羽を取り出した。

 

「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけで分かるわね?」

 

 羽根を見て堕天使の表情が一気に曇る。

 

 それから、部長はレイナーレたちの計画を調べ、教会にいた他の堕天使を外に誘い出して、倒したと説明してくれた。

 

 部長が俺の話の途中で「用事がある」と抜けたのはこの為だったのか……、なのに俺は部長の事を悪く言っちまった……。

 

「堕天使レイナーレ。あなたの敗因はイッセーの神器が原因よ。この子の籠手の紋章を見なさい。赤い龍が描かれているでしょう。この神器は、数多くある神器の中でレア中のレア。『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』よ。あなたも名前ぐらいは知っているでしょ?」

 

 部長の言葉を聞いてレイナーレは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ブーステッド・ギア……『神滅具(ロンギヌス)』のひとつ……。一時的とはいえ魔王や神すらも超える力が得られるという……あの忌まわしき神器がこんな子共の手に宿ったというの!?」

 

「言い伝え通りなら、人間界の時間で十秒ごとに持ち主の力を倍にしていくのが『赤龍帝の籠手』の能力。最初が一でも十秒ごとに力が倍になっていけば、いずれ上級悪魔や堕天使の幹部クラスの力になるわ。そして極めれば神すらも屠れる」

 

 神すら倒せちゃうんだ……、俺の神器ってそんなにすごいんだな~。

 

「まあ、強力でも時間を要する神器はリスクも大きいわね。そうそう増大するのを待ってくれる相手なんかいないわ。今回は相手が調子に乗ったのが勝敗を決めたようなものね」

 

 うっ、部長に釘を刺された。

 

 た、確かに、俺がパワーアップする時間を与えてくれる敵なんてそうそういないよな。強いけど、弱点も豊富って事ね、俺の神器ちゃんは。

 

 俺に近づく部長。紅の髪からいい匂いがする。

 

 なでなで。

 

 部長は俺の頭を撫でてくれる。

 

「でもおもしろいわ。さすが私の下僕くん。やっぱり、イッセーはおもしろい子ね。もっとかわいがってあげるから」

 

 フフフと微笑む部長さん。

 

 いい笑顔なんだけど、ある意味怖いな……。

 

「ぶ、部長」

 

「何?」

 

 笑顔の部長。俺は申し訳なくなって、頭を下げた。

 

「すみません。あのとき、俺がアーシアを助けに行くって言ったときに部長が手を貸してくれないからって、すごく失礼な事ばかり言って……、でも、部長は裏で動いてくれていて……」

 

 心底謝りたかった。

 

 俺は部長の事を本当に冷たい悪魔だと思っていた。だから、失礼千万なことを言いまくってしまったんだ。

 

 それを心から謝りたかった。そんな俺の頭を部長は撫でてくれる。

 

 いつの間にか、俺は泣いていた。そう、俺は目的を果たせなかったから。

 

「ぶ、部長……俺、アーシアを……守ってやれませんでした……」

 

「泣く事はないわ。今のあなたの姿を見て誰があなたをとがめられるというの?」

 

「でも……、でも、俺は……」

 

 部長が俺の涙を指で掬ってくれる。

 

「いいのよ。あなたはまだ悪魔としての勉強が足りなかっただけ。ただ、それだけよ。強くなりなさい。これからこき使うから覚悟しなさい。私の兵士、イッセー」

 

「はい」

 

 俺、頑張ります。絶対に強くなります。

 

 俺は心の中で強く誓った。

 

「じゃあ、最後にお勤めをしましようかしらね」

 

 途端に部長の目が鋭くなり、冷酷さを帯びる。

 

 部長はレイナーレに近づく。怯える堕天使。

 

「消えてもらうわ、堕天使さん」

 

 冷たい口調だ。殺意がこもっている。

 

「それで、彼女の神器はどこへやったの?」

 

 部長はレイナーレに尋ねる。

 

「部長。儀式は失敗したみたいでアーシアの神器は奪えなかったみたいです」

 

 怯える堕天使の代わりに木場が応えた。

 

「儀式が失敗? 変ねぇ、さっき地下に居たときに見た術式は完璧だったけど。それほんとなの祐斗?」

 

「はい」

 

 部長は顎に手を置いて少し考え、小猫に横たわっているアーシアを連れてくれる様に指示を出し、堕天使の頭に手を翳す。

 

「俺、参上」

 

 そのとき、穴の開いた壁から人影が現れる。

 

 神父―――フリード・セルゼン。

 

 あのクソ神父は逃げたはずだが、また戻ってきたようだ。

 

 フリードは不敵な笑みを浮かべながら、助けを求める元上司のレイナーレを見下し、散々バカにした後。元上司を見捨てて再び逃げていった。

 

「さて、下僕にも見捨てられた堕天使レイナーレ。哀れね」

 

 部長のその口調に少しの同情も感じられない。

 

 ガクガクと震えるレイナーレ。

 

 少しだけ可哀想になってしまったのは『夕麻ちゃん』という俺の彼女だろうか。

 

 まあ、それもあいつの汚い罠だったわけだけど。

 

 そのレイナーレの視線が俺に移る。途端に媚びたような目をしてきた。

 

「イッセーくん! 私を助けて!」

 

 その声は俺の彼女だった頃の夕麻ちゃんそのものだった。

 

「この悪魔が私を殺そうとしているの! 私、あなたのことが大好きよ! 愛している! だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 

 レイナーレは夕麻ちゃんを再び演じ、涙を浮かべながら俺へ懇願してくる。

 

 少しでも可哀想だと思った俺がアホだったよ、夕麻ちゃん。いや、クソ堕天使。

 

「グッバイ。俺の恋。部長、もう限界っス……。頼みます……」

 

 それを聞いた途端、堕天使は表情を凍らせていた。

 

「……私の可愛い下僕に言い寄るな。消し……」

 

「部長っ!」

 

 部長が魔力をレイナーレにぶつけ様とした瞬間、小猫ちゃんが信じられないほどの大声で叫んだ。

 

「ど、どうしたのよ小猫?」

 

 普段では考えられない大声を出した事に部長も驚いていた。

 

「こ、これを見えください!」

 

 小猫ちゃんは地面に寝転んでいるアーシアを指差していた。

 

 アーシアがどうかしたのか?

 

 木場に支えられながら部長達と一緒に近づいてみると、アーシアの目が開いていた。

 

 ……………………いや、開いている分には不思議はないんだけど、瞳がデジタル時計みたいになっていて、時間がだんだん減っている。

 

「な、なんなの?」

 

 カウントダウンが3分を切った。

 

 アーシアの体が光に包まれる。

 

「何が起こるんだ!?」

 

「アーシア!!」

 

 光が止むとアーシアが横たわっていた場所に、まるでボーリングの玉のような丸くて黒い物体が置いてあった。

 

「こ、これは……」

 

 全員の視線が黒い玉へ集まる。

 

 すると黒い玉が開き、口みたいになると、機械音が流れてきた。

 

『やあやあ、堕天使さん。シスター服の金髪の子は俺がいただいたよ。空を飛んでいるときにシスターちゃんは泣いてたみたいだし、夕麻ちゃんと仲が悪そうだったからね! ていうか、これを聞いているって事は、この子を殺したって事だよな? まったく、こんな清らかな魂を持った女の子を殺すなんて…………お仕置きが必要だな!』

 

 全員が状況についていけずポカンと黒い玉から発せられる声を聞いていた。

 

『さあさあ、お仕置きなんだけど。この黒い玉なんに見えるかい?』

 

 ……そりゃあ、ボーリングの……って、まさか!!

 

 一番当たって欲しくない、俺の頭の中で連想したものと、全く同じように黒い玉の上部がカパッと開き、『導火線』のようなものが出できた。

 

「ボグバーマンの爆弾!!?」

 

『けっこう、有名なゲームだし、知っている堕天使はいたのかな? さあ、お仕置きを開始するよ。ああ、お仕置きを開始する前の注意点! この爆弾は動かした瞬間爆発します! あと、効果範囲は一万キロ㎡です! さてと、残り一分だね!! お祈りは済んだかい?』

 

「なっ! なんですって……!!」

 

 部長が驚愕の表情を浮かべた。いや、部長だけじゃなく全員が今の状況に戸惑っている。

 

『まったく、夕麻ちゃんが俺の友人を殺すだけでなく、まさか、シスターまで手にかけるなんてお仕置きは当然だから諦めてね』

 

 アレ? 夕麻ちゃん? そういやこいつの声に聞き覚えがあるぞ??

 

「どうすればいいの!」

 

「一万キロなんて! 街が吹き飛ぶだけじゃすまないわ!」

 

 部長が額に汗をかき、朱乃さんもいつもの余裕な態度を一変させ、戸惑い。俺の体を支えている木場の表情も険しく、小猫ちゃんは涙目だ。

 

『さぁ、あと十秒。カウントダウンを開始するよ!』

 

 爆弾の中央にあった電子時計が泣くなり数字が浮かびあがる。導火線に火が灯りジジジと音を鳴らしながら短くなっていく。

 

「あ、あと、十秒……!!?」

 

 俺が叫ぶと、再び爆弾の口が開いた。

 

『ごめんごめん。カウント間違ってたわ。十秒もなかった。てか、もう爆発しちゃいまーす!!』

 

「な!!?」

 

 爆弾が少しずつ光をおび、化学反応しているみたいに大きくなったり小さくなったりしながら光を増していく。

 

 カッァァァァァーーーーー!!!!

 

 爆弾がひときは大きくなった瞬間――俺達の体ごと、光が教会中に広がった。

 

 ああ~~~~!!!! 俺まだ童貞なのに~~~~~~!!!! ていうか、生乳すら見てねぇ~~~~~!!!!!

 

 …………。

 

 …………………。

 

 ……………………………。

 

 あれ? 痛くないぞ? いや、痛い! レイナーレにやられたところが痛い!

 

 ん? 痛みを感じるって事は俺は生きているのか?

 

 目をゆっくりと開けると、導火線がなくなった爆弾が置いてあった。

 

「ふ、不発だったの?」

 

「こ、これはどういうことなんですの?」

 

 部長と朱乃さんが恐る恐る爆弾に近づく。

 

『アハハハハ!! 爆発するわけないだろ? 一万キロ㎡ってところで気づこうぜ! どう? 少しでも死の恐怖を感じたかい? これに懲りたら、これからは遊びで人の命を刈るんじゃないよ。二度目は本当に爆発させるからね! ていうか、ほらこれ! 君達の顔! すごいだろ! これって写真機能がついてるんだよ! ポスターサイズにしたから飾ってね!』

 

 爆弾が陽気に話し出し、口があった部分が薄く開き、大きな写真が出で来た。

 

「こ、これは……!!」

 

「…………」

 

 部長が出できた写真を素早く掴み取り、部長の後ろにいた朱乃さんが写真を除きこんだ瞬間、笑顔が凍った。

 

『さてと、これで俺の役目は終わ………』

 

 爆弾が話し始めた瞬間。部長の手から物凄い魔力が放たれ、爆弾は跡形もなく消滅した。後日、俺は部長が魔界で『紅髪の滅殺姫(べにかみのルイン・プリンセス』と呼ばれている事を教えられた……。

 

 爆弾が消え去り、堕天使から受けた痛みがぶり返し、痛みにうめき声を漏らしていると、懐かしい声が聞こえた。

 

「イッセーさん!」

 

 かすむ視界の端に金髪が映り、俺は閉じそうになる目を開ける。

 

「アーシア!」

 

 守れなかったと思っていたアーシアが走ってくる。

 

 よかった! 生きてる! アーシアが生きてるっ!

 

 アーシアは俺に駆け寄ると神器を発動させ、体の傷を癒し始めた。

 

「……あなたがアーシアね」

 

「は、はい……」

 

 部長が微笑みながらアーシアに話しかけるが、声の温度はかなり低い。

 

「あなたを助けてくれたのは、だぁれ?」

 

 ぶ、部長は、アーシアを助けた恩人っていうか、爆弾(笑)を仕掛けた人を探しているみたいだ。

 

「ああ、それなら、あそこにいます!」

 

 アーシアが部長の微笑みに隠された裏の感情には気づかず、素直に教会の入り口を指差した。

 

 ドアの入り口の方で、がたっと、小さな物音がなる。

 

「エイジさん! ここまで送っていただいて、ありがとうございました!」

 

 アーシアの感謝の言葉に、教会の入り口の方で、ガダンッと、先ほどよりも大きな物音がなる。

 

 ……エイジ?

 

 アーシアが言った『エイジ』という名前に覚えがありすぎた。

 

「そうだよ! あの爆弾(笑)の声! エイジにそっくりだったんだ!! しかも、ボグバーマンって、俺がエイジにこの前貸したゲームじゃないか!」

 

 俺が叫んだ瞬間。部長と朱乃さんが素早く動いた。

 

 先ほど音がなった入り口まで移動し、教会の長いすに隠れていたと思われるエイジの両腕を2人で挟み込むように掴み、引きずり出してきた。

 

 ……エイジの腕に2人の大きなおっぱいが当たっているみたいだけど……不思議と羨ましくないな……。

 

 2人の背後に特大の般若が立っているからかもしれない……。

 

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