<エイジ>
アーシアを連れて20分ほど飛行し、教会の近くの公園までやって来たが、状況は最悪だ。
部長と朱乃さん、その他大勢が身代わり人形EXの近くに居るからだ。
身代わり人形EXは、普通の身代わり人形と違って『仕掛け』を施しているから、部長たちがあの仕掛けを見ると不味いのだ……。
しかも身代わり人形EXに、アーシアが死んだら発動するようにと時限式に設定していたものが、発動してタイマーが起動していた。
アーシアを殺した夕麻ちゃんにお灸をすえるために、相手を怖がらせて、おちょくるように作ってあるから、部長達が身代わり人形EXの近くに居るとマジでヤバイんだ。
ていうか、聖堂から感じる部長たちと、夕麻ちゃんの弱い反応。先ほどの破壊音といい、位置も状況も身代わり人形EXにかなり近い。
「急ぎましょう、エイジさん!」
先ほどの破壊音を聞いたアーシアは、イッセーが堕天使に殺されるんじゃないかと心配しているようで、強く俺の手を引っ張ってくる。
「わかった。わかったから」
嫌な予感を感じつつ、アーシアに手を引かれながら教会前につくと、突然教会の中から光が漏れ出し、辺り一面を昼間のように光らせた。
俺はアーシアの目を咄嗟に手で覆う。
「……………アーシア大丈夫か?」
ヤバイ! ヤバイよ! 位置的に物凄くヤバイ!!
冷静にアーシアに尋ねたけど内心大パニックだよ!
「え、さ、さっきのは……」
「さっきの光は、君の身代わりに作った人形に、『君が死ぬと』発動するように作ったタイマー式の爆弾だよ」
「ば、爆弾!?」
「いや……、爆弾と言っても光だけのこけおどしだよ」
「そうなんですか……」
アーシアがほっとして息をついたが、こっちはそれでころではない! 光だけじゃなく調子に乗って音声で相手をおちょくるように設定していた爆弾を部長たちがモロに食らっているはずだから!
ああ……、お仕置きかな~、お仕置きなのかなぁ……。
「じゃあ、行こうか……」
「はい!」
元気よく返事をしてくれるアーシア。俺はどんよりとした気持ちで、教会の扉を
「イッセーさん!」
教会の扉を潜り、聖堂の辺りにイッセーの姿を確認したアーシアが大声を出して、木場にもたれかかっているイッセーの下へと駆け出した。
うん……。身代わり人形EXは夕麻ちゃんじゃなくて、部長たちに発動したみたいだ。
終わった……。終わったよ……。
俺はアーシアにみんなの視線が集まっている間に長椅子を盾に隠れる。
そうだ! 今のうちに逃げよう! まだアーシア以外に俺が身代わり人形EXを仕掛けた事を知ってい……。
「あなたを助けてくれたのは、だぁれ?」
………っ! ヤバイっ! 部長と朱乃さんの声がすごく怖いっ!
に、逃げないとっ!
「ああ、それなら、あそこにいます!」
アーシアさん!?
指を指された瞬間。こちらに視線を移した二人の顔が恐ろしくて物音を立ててしまった!
「エイジさん! ここまで送っていたただいて、ありがとうございました!」
アーシアは笑顔でお礼を言ってきたが、それは間違いって言うか、正直、空気読んで!
「そうだよ! あの爆弾(笑)の声! エイジにそっくりだったんだ! しかも、ボグバーマンって、俺がエイジにこの前貸したゲームじゃないか!」
ほら! イッセーまで気づいた! ていうか、爆弾の声ってやっぱり君たちがくらっちゃったんだね……。
…………。
よし! 逃げよ………う……。
「エイジ」
「エイジさん」
扉を潜ろうとした瞬間! 後ろから聞きなれた声が……。
ガシッ!
二人から両腕を両側から抱かれ、聖堂に連行される。
逃げ道なくなったぁあああああ!!!!
◆
「さてと、どういう事なのか説明してもらいましょうか?」
教会の長椅子に悪の女幹部さながら足を組んで座った部長が笑顔で聞いてきた。
後ろの朱乃さんも笑顔なんだけど、背後にジョジョなスタンドのように般若が立っていて、「ウフフフ……」と笑っている……。
「そ、それは……」
部長の前の床に正座させられ、背後には黒い剣を出した木場と、ボクシングのシャドーを黙々と行っている小猫ちゃんが逃げ道を塞いでいた。
アーシアに助けを求めようにも怪我を負ったイッセーの治療中で無理だ。
逃げられない! そう思って今日の事を正直に話し始める。
「へえ、旅行から帰ってくるときに天野夕麻……、堕天使レイナーレがアーシアを攫っているところを目撃して、あの爆弾とアーシアをすり替え助けて、家で事情を聞くとイッセーの友達で、イッセーの家に行ってもイッセーがいなかったから、部室に行き、私達が堕天使たちと戦っていた間、あなたはゲームして待っていたの……」
「まさか、堕天使たちと戦っているなんて思わなかったんです」
「そうね。まさか、堕天使たちと戦っているなんて思わないわよね」
「は、はい……。でも、いつまで待っても戻ってこないし、イッセーの性格を思い出してまさかと思って、教会に向かったわけです……」
「そう……」
部長が足を組みかえる。紫色のエッチな下着が見えたが、今はそれどころじゃないんだ!
「ああ。そうそう、レイナーレを忘れていたわ」
部長はそういって立ち上がる。
部長が歩いていった先にはボロボロのレイナーレが泡を噴いて気絶していた。たぶん爆発で気絶したんだろう。
「あなたも、アーシアもコイツに殺されるところだったのよ」
そう言って部長は、レイナーレを指差す。
「さてと、とりあえずこの堕天使を始末しましょうか」
部長が手に魔力を込め始めた瞬間。俺は部長の手を握って止める。
「な、なにをするの?」
突然の行動に驚く部長。
「止めてなかったら、レイナーレを殺していたでしょう?」
「そうよ。それが何か悪いの? あなただってこの堕天使に殺されかかったでしょ? むしろ始末したいんじゃないの?」
部長の手を引き目線を合わせる。
「だからといって、部長のような可愛い女の子にあまり手を汚してもらうのは嫌です」
「…………」
部長は怖い笑みを一変させ顔をほんのり赤らめる。
「じゃあ、どうするんですの?」
後ろから朱乃さんが話しかけてきた。
「俺がレイナーレの面倒をみましょう。俺なら、油断していても殺される心配はありませんし、丁度、人手が欲しかったところなんで」
そう言うと、部長は無言で考え込み「責任を持つ」と約束させた上で、レイナーレを生かすことをなんとか許してくれた。
まあ、イッセーは「アーシアを殺そうとしたんだぞ」とか怒っていたが、アーシアが「私は無事だっただったので」とイッセーを宥めてくれた。
「じゃあ、レイナーレは縛り上げて俺の家に転移させておきますね」
そう言って、レイナーレを転移させる。
「さてと! じゃあ、一件落着ということで解散しましょう! 明日も学校があることですし!」
そう言いながら、教会の入り口へと向かおうとしたら、ガシッと後ろから肩を掴まれた。
「なにをどさくさにまぎれて逃げようとしているのかしら?」
「そうですわ。まだ、話は終わっていませんわよ?」
ギギギギっと、回したくはなかった首をゆっくり回して後ろを振り返ると、額に青筋を浮かべた二大お姉さまが……。
「とりあえず部室に戻りましょうか」
「そうね。ここじゃあお仕置き道具が少なし、部室に戻りましょ」
朱乃さんと部長に逃げられないように両肩を持たれたまま部室へ転移した。
ああ……、俺死んだ……。
◆
部室に転移して部長と朱乃さんは、戦闘で疲労したイッセーと木場に小猫ちゃんを自宅へと返した。アーシアは帰る家がないということで今は部室のソファーで寝ている。
ていうか、小猫ちゃんが帰るときすれ違いざまに俺のわき腹を無言で殴っていったんだけど、腰にいまいち力が入っていない?
腰を抜かしていたことと、スカートが少し濡……。ご、ごめんなさい! なんでもないです! 拳を振り上げないで!!
「アーシアも寝ちゃったことだし始めましょうか」
「そうですわね。新しい鞭と縄も買ったことですし」
部長が手に魔力を宿して笑顔で近づいてくる。朱乃さんが手に赤い鞭と荒縄を装備して近づいてくる。
「俺は知らなかったんです! お、俺は悪くは……」
必死に訴えるが、二人は止まらない。
「そうね。あなたは知らなかったわけだし、偶然私達があなたの仕掛けた爆弾に引っかかった私たちが悪いから、そのことについては許すけど、そのことよりも、あなたがあんな道具まで持っているとは教えてもらってないし、魔法が使えることや、色んな能力を持っていたことを秘密にしていたことが問題なのよ」
いや、それって旅行に行く前の話でしょ!? ていうか、完全にこれって爆弾に引っ掛けた仕返しですよね!?
「朱乃、防音の結界を張ってちょうだい。アーシアが起きてしまったら面倒だし」
面倒って! なにをする気ですか!?
「はい。張り終わりましたよ。さあ、エイジさん始めましょうか」
朱乃さんが荒縄で上半身を縛り上げ、動けなくなったところをソファーに座った部長の膝の上に座らされズボンを脱がされる。
「や、やめて~~~!」
尻をむき出しにされて怯えていると、目線を合わせるように座った朱乃さんが恍惚の表情で顎を撫でてきた。部長が手を振り上げたのを察知した。
………………、ああ、俺の尻が………、死んだ……。