※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第14話 修行で山篭り

 

<エイジ>

 

 

 部長と別れて自宅へ戻り、夕食を食べ終わり、いつものようにレイナーレと一度セックスしてから風呂に入って、それぞれの部屋で眠むった次の朝。

 

 俺が早朝の鍛錬をしていると、隣の家でイッセーの叫び声が聞こえた。

 

 部長の気配もしたので家から出て隣であるイッセーの家へ行くと、なにやら慌てて家のなかに消えていくイッセーと、家の前で立っている部長が。

 

 とりあえず部長に近づいて朝の挨拶を行い、訊ねる。

 

「おはようございます、部長。なにかあったんですか?」

 

「あら、丁度いいところに着たわねエイジ。これからあなたの家にも行くつもりだったの」

 

 俺が『?』を頭に浮かべると、その疑問に答えるように部長は口を開いた。

 

「これから、修行しに山に行くの。急いで宿泊の用意をしてきなさい」

 

 へ? マジですか?

 

「マジよ」

 

 俺の心の問いに笑顔で答える部長……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、ひたすら山道を登っています。

 

 ええ。今朝部長に言われた通りに、急いで用意して修行に参加しましたよ。

 

 急いでレイナーレの用意した朝食を食べて、シャワー浴びて、宿泊と家の事を任せるって言ってからイッセーの家に行きましたよ。

 

 そこから、先に集まっていた皆と転移魔法で山のふもとに行き、現在、山登り中。

 

 しかも、俺の荷物は【王の財宝】にほとんど入れているので小さなバック一つで済んだからって、部長と朱乃さんの荷物を持たされた。

 

 2人の荷物はかなり大荷物で、かなりの重量だったが、俺には関係ない。まあ、アーシアの荷物と背中に岩を背負わされて、ぜぇーはぁ、ぜぇーはぁと死にそうになって必死に山を登っているイッセーよりもましか。

 

「大丈夫か、イッセー?」

 

 合宿で使用する部長の別荘に、死に掛けながらもなんとかたどり着いたイッセーに尋ねる。

 

「…………ああ」

 

 イッセーが荒い息を吐きながら、床にへたれながら返事を返した。

 

 ちなみに女性陣は動きやすい服装に着替えるために、現在別荘の2階で着替え中だ。

 

「じゃあ、僕も着替えてくるね」

 

 木場も立ち上がって青色のジャージを持って浴室へ向かった。

 

「覗かないでね」

 

 などとふざけたことを冗談っぽく言って来て、余裕のないイッセーが殺意のこもった目で睨みながら大声で怒鳴った。

 

 まあ、イッセーは駒王学園で「木場×イッセー」、「イッセー×木場」とかカップリングされているから、本気でムカついたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全員が着替え終わり、別荘の前に集合した。

 

 そこで部長が簡単に合宿のスケジュールを説明する。

 

 部長は主に転生悪魔になったばかりのイッセーとアーシアを戦えるまで鍛えるらしい。

 

 俺? 俺は……。

 

「さてと……、じゃあ、あなたの実力を知りたいから、とりあえず祐斗と小猫と組み手をしてもらいましょうか。魔法の技術と魔力の多さは朱乃よりも高いのは分かってるしね」

 

 と、言う事で組み手をする事になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然始まった組み手は、先に木場と戦う事になった。

 

「うれしいよ。今日は全力で君と打ち合える」

 

 木場が爽やかスマイルで木刀をかまえる。本当にうれしそうだ。

 

 なにコイツ? 戦闘狂か?

 

「まあ、いいだろう。かかってこい」

 

 軽く戦闘モードに入り木刀を持つ。

 

「ふっ、余裕そうだ、ねっ!」

 

 俺が構えていないのが無気力に見えたのか、木場が地面を蹴って、人間では捕らえきれないだろうスピードで背後に回りこんできた。

 

 木場の狙いは首。一撃で気絶させる気だろう。

 

 木場が木刀を振るい、確実に当たったと思ったんだろう「仕留めた!」と、確信した顔になっていたが、スピード特化の木場にも認識する事のできないスピードで木場の背後に回り、逆に木刀を首に突きつけた。

 

「なっ!?」

 

「はい。終わり」

 

 俺が木場の首から木刀を退かすと、木場が悔しそうにしていたが、笑顔で『負けたよ』と自らの敗北を認めた。何このイケメン……。

 

 ちなみにその後、イッセーに木刀を持たせて木場と打ち合わせたが、剣の才能が全くないイッセーは木場になんども倒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次は小猫ちゃんとの組み手なんだが、この娘って周りと比べて本当に発育がかわいそ……。

 

「先輩。はじめましょう」

 

 俺が考え事をしていると小猫ちゃんが突進してきた。軽いフットワークで戦闘スタイルを見たところボクシング、そして他にも柔術の心得があるみたいだ。

 

 打撃は体の中心点を狙って的確に。うん。基本に忠実だ。

 

 だけど、小柄な分ウェイトが軽すぎる。それに技の錬度もまだまだだ。

 

「よけないで、くださいっ!!」

 

 紙一重で避け続ける俺に業を煮やした小猫ちゃんが回し蹴りを放ってきた。

 

「甘い」

 

 俺は少ししゃがんで蹴りを避ける。

 

 ドオッン!!

 

 俺の背後にあった木が折れ倒れる。

 

 なかなかいい蹴りだな。

 

 うーん、だがそれにしても高校一年生では可哀想なロリボディだな。

 

 体操着とブルマ着用しているが、胸揺れもないし、たぶん下の毛も生えていないだろう……。駒王学園の生徒は発育が進んでいる生徒が多いからよけい可哀想だ……。

 

「余計なお世話です!!」

 

 顔を真っ赤にした小猫ちゃんが百kgはあろうかという岩を持上げ、投げてきた。

 

「あれ? 心読まれた?」

 

「ぜんぶっ、口から出ましたよっ!」

 

 ドゴォオンッ!

 

 小猫ちゃんが岩を投げ、俺はそれを余裕で避ける。

 

 外野にいるイッセーが騒いでない事や、女性陣から冷たい視線を送られてないところを見ると、俺の言葉は近くにいた小猫ちゃんだけに聞こえるぐらいの小声で呟いてしまったらしい。

 

「くらえぇぇええええ!!」

 

 顔を真っ赤にしながら殴りかかってきた小猫ちゃんの腕をとり、腕にこもっていた力を受け流し、自分の力を使わず、小猫ちゃん自身の力で地面に組み伏せる。

 

「ま、負けた……」

 

 悔しそうに自分が負けたことを理解する小猫ちゃん。

 

「剛の力には柔の力をってね。まあ、スジは悪くないからゆっくり技量を上げていくんだね」

 

「うう……」

 

 小猫ちゃんを立たせて、体操着についた砂を軽く払ってやるが、小猫ちゃんは悔しそうに俺を睨む。

 

「さあ、次はイッセーの番だな」

 

「なっ!? これからやるのか!?」

 

 明らかに機嫌が悪い小猫ちゃんにイッセーは後ずさる。

 

「お、俺は、もう少し、あ、あと………」

 

「イッセー。逃げてはダメよ」

 

 イッセーの背後に回った部長が逃げ道を防いだ。

 

「…………始めましょう。先輩」

 

「ちょ! こ、小猫ちゃん!? す、すっごく怖いんだけど!?」

 

 小猫ちゃんが黒いオーラを出しながらシャドーを行い。宙を切る最後の一撃が3mほど離れたイッセーの前髪を揺らした。

 

「や、やめてぇえええええ!!!」

 

 イッセーに襲い掛かる小猫ちゃん。逃げるイッセー。

 

 しばらく逃げたイッセーだったが、結局小猫ちゃんに捕まり、ボコボコにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に朱乃さんによる魔力の使い方指導。

 

「そうじゃないのよ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ」

 

 朱乃さんが丁寧に教えるが魔力が犬並みのイッセーには魔力を感じ取る事が出来ずに、魔力を集める事が出来ない。

 

「できました!」

 

 イッセーと同じように手のひらに魔力の玉を発生させる訓練を行っていたアーシアの手のひらから緑色の魔力の玉を発生させていた。

 

「あらあら、やっぱり、アーシアちゃんには魔力の才能があるかもしれませんわね」

 

「ああ、さすがアーシアだな」

 

 朱乃さんと一緒に褒めると、アーシアは頬を少し赤らめ照れる。

 

 イッセーはというと。

 

「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅ……!」

 

 振り絞るように声を出しながら出たのは、豆粒ほどの魔力の玉だった……。

 

「では、その魔力を炎や水、雷に変化させます。これはイメージから生み出すことも出来ますが初心者は実際の火や水を魔法で動かすほうがうまくいくでしょう」

 

 朱乃さんがペットボトルの水に魔力を送り、水を氷に変化させペットボトルを内側から破壊した。

 

「アーシアちゃんは次のこれを真似してくださいね。イッセーくんは引き続き魔力を集中させる練習をするんですよ。魔力はイメージ。とにかく頭に思い浮かんだものを具現化させることが大事なのです」

 

『イメージ』と聞いてイッセーが閃いた様で、俺と朱乃さんに思いついた事を話してきた。

 

 イッセーが思いついた魔法が完成すると面白い事になりそうだが、正直完成して欲しくない魔法だな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部長との基礎特訓。

 

「くそぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

 イッセーが岩を背負いながら山を駆け上がる。

 

 そして、現在俺は腰にロープを巻き、ロープで繋がった台車に岩を置き、さらに部長を肩車して山を駆け上がっている。

 

「なんで!? なんで! お前だけいい思いをしているんだぁああああ!!!」

 

 岩を背負ったイッセーが血の涙を流しながら俺を追いかける。

 

 なんでって、そりゃあ……。

 

 部長が俺のスタミナを測るために、岩を積んだ台車を俺の腰にセット。

 

 部長が台車に乗り、ピラミット建造の女王さまっぽく台車に乗り、後方で岩を担いで山を登るイッセーに激を飛ばす。

 

 ここ山道。俺は坂道なんて関係ないようにイッセーよりも少し早いペースを維持。台車は大きく揺れる。最初は楽しんでいた部長が怖がり出す。部長絶叫。

 

 止まって部長の元へ向かうと何故か怒られる。

 

 外野で見ていた朱乃さんが肩車なら大丈夫と提案。部長笑顔で賛成。二人とも絶対面白がってる。

 

 で、現在。俺は部長を肩車し、台車を引きながら、山を駆け上がっている。

 

「ほら、イッセー! きりきり走りなさい!」

 

「はいぃぃいい!!!」

 

 イッセーが頑張って走る。

 

「ふふふ、以外に乗り心地がいいわね」

 

 部長が頭の上で小声で呟く。

 

 褒められていい気はしないわけではないが、太ももが柔らかくて鍛錬に集中できません。丈の長いジャージとはいえ伝わるんです。それにいい匂いがしますから。

 

 まあ、そんな事を今言ったとしてもあまり意味がないので、適当に部長に返事をしながら山を登る。…………頑張れイッセー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日の修行を終え皆で夕食を食べた。

 

「さて、イッセー。今日一日授業をしてみてどうだったかしら?」

 

 部長がお茶を飲んだ後にイッセーに訊いた。

 

「……俺が一番弱かったです」

 

「そうね。それは確実ね」

 

 部長がばっさりイッセーの心を両断した。

 

 まあ、裏の世界はひとつの油断で死んでしまうような世界だ。自分の非力は早めに、きちんと理解させた方がいいからな。

 

「朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験がなくても実戦経験が豊富だから、感じを掴めば戦えるでしょう。それに冥界で長い事賞金稼ぎをしているエイジはその3人よりも、というか私よりも強いわ。でも、あなたとアーシアは実戦経験が皆無に等しい。それでもアーシアの回復、あなたのブーステッド・ギアは無視できない。相手もそれは理解しているはず。最低でも相手から逃げられるぐらいの力は欲しいわ」

 

 さすが、優しい部長。やっぱり今回の修行の目的の一つは素人が死なないようにするための訓練だったか。

 

「逃げるって……。そんなに難しいんですか?」

 

「逃げるのも戦術のひとつよ。いったん退いて態勢を立て直すのは立派な戦い方。そうやって勝つ方法もあるの。けれど、相手に背を向けて逃げるというのは、実はかなり難しいものよ。実力が拮抗している相手ならともかく、差が開いている強敵に背を向けて逃げ出すというのは殺してくださいと言っている様なものよ。そういう相手から無事に逃げられるのも実力のひとつ。イッセーとアーシアには、逃げ時も教えないといけないわ。もちろん、面と向かって戦う術も教えるから覚悟しなさい」

 

「了解っス」

 

「はい」

 

 イッセーとアーシアが同時に返事をする。

 

 悪魔にしては甘いところがあるが、優しくて部長はいい女だな。

 

「食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

 ……温泉。温泉か~。黒歌が大好きだったな~。今は冥界で修行してるけど今度帰ってきたらレイナーレも連れて温泉にでも行こうかな~。

 

「僕は覗かないよ、イッセーくん」

 

 ボーっと考えていると、木場がニコニコスマイルでイッセーに言った。

 

「バッカ! お、おまえな!」

 

 覗くつもりだったのかイッセーが慌てた。

 

「あら、イッセー。私達の入浴を覗きたいの?」

 

 部長の言葉で俺を含める全員の視線がイッセーに集中し、イッセーが脂汗をかきはじめた。

 

 部長がクスッと小さく笑う。

 

「なら、一緒に入る? 私は構わないわ」

 

 その言葉を聞いたイッセーの顔が驚愕の表情を浮かべる。

 

「朱乃はどう?」

 

「イッセーくんなら構いませんわ。うふふ。殿方のお背中を流してみたいかもしれません」

 

 満面の笑みで朱乃さんが肯定する。

 

「アーシアは? 愛しのイッセーとなら大丈夫よね?」

 

 部長の問いかけにアーシアが顔を赤らめて、俯き、頷いた。

 

「最後に小猫。どう?」

 

 小猫ちゃんは両手でバッテン印を作る。

 

「……いやです」

 

「じゃ、なしね。残念、イッセー」

 

 クスクスと悪戯っぽい笑みで部長が言うと、イッセーは絶望したようにその場に崩れ落ちた。

 

「じゃあ、エイジさんならどうかしら?」

 

 いつの間にか俺の後ろに回った朱乃さんが、首に腕を絡めて部長に聞く。

 

 朱乃さん。背中に胸が当たってます。

 

「エ、エイジ………。ダっ、ダメよ!」

 

 部長は顔を真っ赤にしたまま、声を裏返して拒否した。

 

「ほら! 冗談なんか言ってないで早く温泉に行くわよ!」

 

「あらあら? どうしたのかしらね?」

 

 朱乃さんが顔を近づけ悪魔の微笑みを浮かべる。

 

「いっ、いいから! 行くわよ朱乃!」

 

 部長は大声を出してこちらを一瞥すると、風呂場のほうへと逃げていってしまった。

 

「ぶ、部長さんっ!?」

 

「……………」

 

 アーシアが慌てて部長の後に続いて出て行き、小猫ちゃんが汚物でも見るような視線を向けてそのお後に続いた。

 

 さらに、首に手を回していた朱乃さんも、俺に含みのあるウインクをしてから、風呂場へと向かった。

 

 あ~、部長の反応、可愛らしかったな~。

 

 やっぱり昨日の事を気にしてるのかな?

 

 ていうか、イッセー「フラれたフラれた」うるさい。お前はガキか? ……ガキだろうな。

 

 あと、俺の場合は部長から少なくとも男と意識されているようだが、お前はよくて弟ぐらいだぞ?

 

 俺たちの入浴イベントもあったが、鍛えた体を見せて、いちいちイッセーや木場に騒がれるのは面倒だったから、俺だけ別に入浴する事にした。

 

 入浴後、「夜には夜の練習があるわ」と部長が言って、新参悪魔の俺らに、天界の天使勢。堕天使アザゼル率いる組織『神の子を見張る者』。悪魔の王、魔王の名前。悪魔の力関係。七十二柱の事。アーシアからも、エクソシストや教会の知識を学んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイジ。少しいいかしら?」

 

 合宿2日目の朝。修行開始直後に部長に声をかけられた。

 

「なんですか?」

 

「あなたには、これから指導役をやってもらうわ」

 

「……ああ、はい。わかりました」

 

「驚かないのね?」

 

「いえ、大体予想の範囲内ですよ。俺は長い事、賞金稼ぎとしてはぐれ悪魔と戦っていますから、戦いに関する事なら大体教えられますよ」

 

 まあ、教えるって言っても時間もないし、できる事は、素人のイッセーとアーシアを少しは動けるようにする事ぐらい。そして、その他の部長達の強化ぐらいだ。

 

「ありがと。あなたを眷属にできてよかったわ。さっそく修行を開始してくれるかしら」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部長から教育係を頼まれた俺は、とりあえず木場には、速度を強化しつつ、剣技の向上。小猫ちゃんには、足りないスピードと格闘技全体の技術向上。朱乃さんと部長には、魔法の威力向上と消費魔力を抑える術を、アーシアには、ひたすらゴムボールを避けさせ、回避能力を上げさせた。

 

 最後にイッセーには、基礎、基礎、基礎と、体をひたすら強化してやった。

 

 そして、八日目の夜。

 

 俺は水を飲みに台所に行こうとして、部長とイッセーが話しているところに遭遇した。

 

 そういや、イッセーの姿がなったな。

 

 なにやら真剣そうな表情で会話をする二人に入っていけず、気配を消していなくなるのを待っている。

 

 会話の内容から察するに、イッセーは自分の非力さに気づいて落ち込んでいて、部長に愚痴を漏らし、部長も家柄に縛られず、政略結婚ではなく自分自身を見てくれる相手と結婚したいと愚痴を漏らしていた。

 

「自信が欲しいのね。いいわ、あなたに自信をあげるわ。ただ、いまは少しでも体と心を休ませなさい。眠れるようになるまでそばにいるから」

 

 自分の非力さに泣くイッセーを優しく抱きしめ頭を撫でる優しい部長。

 

 ははっ、俺の王は、どこまでも甘くて……、どこまでも優いな。

 

 まったく……、外道だったり、ただ甘いだけの悪魔だったら、さっさと見限って逃げようと思っていたが、あんな姿を見せられたら守ってやりたくなるじゃないか。

 

「さあ、おやすみなさいイッセー」

 

「……ありがとうございました部長」

 

 しばらくすると部長はイッセーを離し、イッセーは部長に恥ずかしそうに礼を言うと部屋へと戻っていった。

 

「……さてと、エイジ」

 

「気づいていたんですか?」

 

「それはそうよ。来たのが見えたわ」

 

 まあ、俺も一瞬見られたのに気づいていたからな。

 

「盗み聞き?」

 

 少し不機嫌そうに尋ねる部長。

 

「いえ。水を飲みにきたときに二人が真剣に話し込んでいたので、いなくなるまで待っていたんですよ。話を聞いてしまった事は、謝ります」

 

 コップに水をついで部長の向かい側の席に腰を降ろす。

 

「盗み聞きは褒められた事ではないけど、いいわ、許しましょう。それよりも……」

 

 部長が顔を近づけてくる。

 

「ぶ、部長?」

 

 かなり近い。もう少しで唇が触れ合うほどに。

 

「……あなたは何者なの?」

 

 部長は俺の視線に瞳を合わせ、イッセーと話していた時よりも真剣で、探るように尋ねた。

 

「俺は、単なる賞金稼……」

 

「違うわ」

 

 部長が会話の途中で口をはさむ。

 

「今まで修行をしているけど、あなたの力の底が全く見えない。『騎士』の駒で上級悪魔に匹敵するほどのスピードを持った祐斗のスピードを軽く超え、剣技でも祐斗を圧倒するし。『戦車』の小猫よりも耐久力があって、格闘術も達人クラス。『 雷の巫女 (いかずちのみこ)』と呼ばれる朱乃よりも魔力の使い方が上手くて、様々な魔法を知っている。私の消滅の魔力よりも威力がある魔法が放てる。それに、今までの修行であなたが疲れているところなんか見た事はないわ。肩車させた状態で私が上でどんなに暴れようとも重心が崩れる事もなかったし、あなたに引っ張らせた岩の重量も500kgはあったのにそれを軽々引っ張って走り続けた……」

 

 部長は大きく深呼吸をした。顔が近いのでモロに吐いた息が顔に当たるんですが……。

 

 部長はゆっくりと口を開く。

 

「もう一度だけ聞くわ。あなたは何者?」

 

 肩車させたのは俺の事を調べるためでしたか……。疑われているみたいだけど、役得だったしいいかぁ。

 

「そうですね。何者かですか……、いずれは話す可能性もあるかもしれませんが、今現在のところは秘密です」

 

 まあ、話してもいいけど、あとあと面倒な事になるからな。

 

「秘密? 私にも話せないの?」

 

 部長の眉がほんのわずかに釣りあがる。

 

「誰にも話したくない事の一つや二つはあるでしょう? それに俺はもともとただの賞金稼ぎなんですよ」

 

「……そう」

 

 そこまで言うと部長は顔を離して席についた。

 

 そして、部長は改めて息を吐くと、ゆっくりと再び口を開いた。

 

「……あなたはどう思う?」

 

「……どう思うって、なにがです?」

 

「私の結婚についてよ。話を聞いていたんでしょう?」

 

 いきなりなんだと思ったけど、部長は真剣のようだ。

 

「そうですね。俺自身の意見を言うと、高い地位の者が政略結婚をするのは仕方ないと思っています」

 

「っ!」

 

 悲しそうな表情になる部長。

 

 そんな部長に、言葉を続けながら言う。

 

「ですが、幸せにならない結婚。愛のない結婚は嫌です。俺個人として、少し会っただけですが、ライザーは気に入りません。ですから、部長にはライザーなんかと結婚なんかして欲しくありません。あなたが言うとおりライザーは、あなたの家柄、そしてあなたの外見の美しさだけを気に入っているようですからね」

 

「う、美しいって……!?」

 

 いや、部長。俺がかなり恥ずかしい事を言っているんですから、頬を染めないでくださいよ。

 

「とりあえず、あなたの『兵士』としてライザーは俺がぶちのめしますよ」

 

 水を飲んでから立ち上がり、流しにコップを置き立ち去ろうとすると、部長にまた話しかけられた。

 

「あっ、あなたは私のなにを知っているのよっ!」

 

 真っ赤な顔で部長が叫んだ。

 

 そんな部長を見つめながら、思い出すようにつぶやいていく。

 

「……そうですね。まずは普段は姉のように振舞うけど、本当はすごく甘えん坊なところ。悪魔しては情が深い事。眷属悪魔の事を大切に思っている事ですね」

 

「なっ!?」 

 

 部長の顔がますます真っ赤になった。

 

「もう、寝た方がいいですよ。じゃあ、おやすみなさい」

 

「うぅ~」

 

 唸っている部長を後にして台所から出て寝室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<リアス>

 

 

 別荘の台所で本を読んでいるとイッセーが来て、お互いに愚痴を漏らしあい、自信を喪失したイッセーを慰めていると、エイジがやってきたのが見えた。

 

 エイジが入りずらそうに私達が出て行くのを待っているみたいだったから、イッセーを寝室へ戻した。

 

 そして、イッセーが戻るとすぐにエイジが台所に入りコップに水を汲んで席についた。

 

 私は声をかけると、エイジは盗み聞きしていた事を謝罪した。

 

 二人っきりだから合宿中、機会がなくて尋ねたかった事を思い切って尋ねた。

 

 それは、彼の異常性。

 

 彼の底知れない強さについて。

 

 エイジの身体能力……、いいえ、すべてのてんにおいて並みの悪魔を軽く超え、上級悪魔に匹敵するほどのスペック。

 

 エイジはいったい何者なのか?

 

 仙術に魔法にレアスキルを持っていて、異空間に聖剣を所持している。

 

 本当に彼は何者なんだろうと思って彼を問い詰めた。

 

 瞳を覗き、彼が逃げないように問いかけると、彼は真っ直ぐに私を見返した。

 

 そして彼は、『秘密です』と答えた。

 

 私は信用されていない……、まあ、そうよね。眷族にしてから日も浅いし、彼は賞金稼ぎとして今まで一人で生きていたそうだし……。

 

 それに私は彼よりも弱い未熟な王……。

 

 私はこれ以上問い詰めるのを諦めた。

 

 そういえば私はなんであんな事を尋ねたんだろう?

 

『私の結婚についてよ。話を聞いていたんでしょう?』

 

 イッセーには聞かれてから答えたけど、こっちから聞いたことに自分でも驚いた。

 

 なにを彼に求めているんだろう。

 

 イッセーに言われたように彼にも私自身を見て欲しかったのかもしれない。

 

 そして、彼は私の問いに答えてくれた。

 

 彼が『政略結婚は仕方がない』と言ったときは正直、かなりショックを受けた。

 

 泣きたいほどに胸が痛んだ。

 

 でも、彼は続けて答えてくれた。

 

『ですが、幸せにならない結婚。愛のない結婚は嫌です。俺個人として、少し会っただけですがライザーは気に入りません。ですから、部長にはライザーなんかと結婚なんかして欲しくありません。あなたが言うとおりライザーは、あなたの家柄、そしてあなたの外見の美しさだけを気に入っているようですからね』

 

 さっきまで沈んでいた気持ちが嘘のように晴れていき、それと半比例するように顔が真っ赤になっていくのが分かった。

 

 でも、彼は私のなにを知っていてそんなことが言えるんだと、大声で訊くと、彼は真顔で次々と私の事を話した。

 

 今までは私は、彼にお仕置きしたり、知らなかったとはいえ厭らしい仕事を強要させていたのに、彼は私のことをしっかり評価していてくれた。

 

 家柄ではなくリアス・グレモリー、個人を……。

 

 彼はそれだけ言うと去って行ったけど、私の頭から彼の顔が離れない……。彼を思うとうるさいぐらいに胸がときめいた……。

 

 私はいったいどうしたのだろう……?

 

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