<エイジ>
山での合宿が無事に終わり、決戦当日となった深夜、11時40分頃―――。
俺たちグレモリー眷属の面々は、いつものオカルト研の部室へと集まっていた。
部員それぞれ決戦の前に緊張を解そうとしているようだ。
「君は緊張していないみたいだね」
「お前、怖くないのか?」
ソファに座り、学校の宿題をしていた俺にド緊張状態のイッセーと手甲と脛あてを装備した木場がスマイルを浮かべながら近寄ってきた。
「まあ、命の取り合いが怖いなら冥界で賞金稼ぎなんかしていないからな」
「そうだね」
「…………」
淡々とそう答えると、木場は苦笑し、イッセーは信じられない者を見るような目で見てきた。
イッセーの場合、知り合いが命の取り合いに慣れている事に驚いているんだろうが、余計なお世話と放っておこう。
さて、他のメンバーは……。
アーシアはシスター服装備で始まるのを緊張した面持ちで待っている。小猫ちゃんは椅子に座って、オープンフィンガーのグローブを着用し、本を読んでいる。朱乃さんと部長はソファに座って、優雅にお茶を口にしていたが、二人とも顔が強張っている。
ちなみに、アーシア以外は学生服着用。
俺の場合は冥界用、戦うときの専用衣装があるんだが、アレは目立つから現在イッセーと同じ学生服着用だ。
開始10分前になった頃、部室の魔法陣が光りだし、グレイフィアが現れた。
「皆さん、準備はお済みになられましたか? 開始10分前です」
グレイフィアが確認すると、皆が立ち上がる。グレイフィアが説明を始めた。
「開始時間になりましたら、ここの魔法陣から戦闘フィールドへ移送されます。場所は異空間に作られた戦闘用の世界。そこではどんな派手な事をしても構いません。使い捨て空間なのでどうぞ」
「あの、部長」
「何かしら」
「部長にはもう1人、『僧侶』がいますよね? その人は?」
イッセーが部長に話しかけていた。そういえばもう1人の僧侶って誰だ? リミッターの重ね掛けで探知機能まで人間まで落してるからよくわかんないんだよな~。
「残念だけど、もう1名の『僧侶』は参加できないわ。いずれ、そのことについても話すときがくるでしょうね」
部長が苦々しくイッセーに返した。なんだかワケありみたいだ。
「今回の『レーティングゲーム』は両家の皆さまも他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります」
見られるって、ますますバレないように動かないといけなくなったな……。
「さらに魔王ルシファーさまも今回の一戦を拝見されておられます。それをお忘れなきように」
「お兄さまが? ……そう、お兄さまが直接見られるのね」
………。
「あ、あの、いま、部長が魔王さまの事をお兄さまって……。俺の聞き間違いでしょうか」
…………。
「いや、部長のお兄さまは魔王さまだよ」
……………紅い髪……。
「ま、魔王ぉぉぉぉぉっ!? 部長のお兄さんって魔王なんですか!?」
「ええ」
…………わがままな性格……。
「部長のファミリーネームと魔王さま方のお名前が混乱してたりする?」
…………あいつと会った場所って確か……、グレモリー領だったけ……。
「あ、ああ……、まあな」
木場がイッセーに魔王が滅んだ事を説明する。滅んだ魔王の代わりに名前を役職名にして新しい魔王を作ったと説明する。
「サーゼクス・ルシファー―――。『
木場がキメ顔でイッセーに説明した。
あははは……、マジですか。
そういや、紅色の髪の悪魔なんてそうそう居ませんよね~。
「どうしたの? エイジ?」
部長が顔を近づけてきた。
うん。顔のつくりもかなり似ているね。なんで気づかなかったんだろう……。
「いえ、まさか部長があのサーゼクス……さまの妹とは思いませんでしたので」
「そうなの?」
部長が首をかしげた。
はぁ~。あの野郎には素顔を見せているんだしばれ……、いや、俺が素顔を見せたのは何年も前だし、大丈夫かな?
「そろそろ時間です。皆さま、魔法陣のほうへ」
グレイフィアに促され、俺たちは魔法陣へと集結する。
「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔法陣での転移は不可能となります」
グレイフィアの説明が終わると同時に魔法陣の紋様がグレモリーから違うものへと変化し、光り出した。
◆
魔法陣の光が収まると、目の前にはいつもの部室。
おそらく戦闘用の空間なのだろう、俺の知覚から丁度駒王学園の敷地までしか世界が存在していない事が確認できた。
『皆さま。このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の
レプリカの異空間と聞いてイッセーが驚きながら部室やここが本物の駒王学園でない事の証明である真っ白な空を見ていた。
『両陣営、移転された先が「本陣」でございます。リアスさまの本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザーさまの「本陣」は新校舎の生徒会室。「
『兵士』の特性、敵陣地に攻め込む際は一時的に、騎士、女王など王以外の駒に変身し、駒の特性を使用できる『プロモーション』だ。
まあ、俺には必要はない能力だが、まだ基礎力が低く、倍加の神器をもつイッセーなら『プロモーション』で変化した駒特性しだいで能力が上がるので、部長がどうイッセーを動かすかに期待だな。
「全員、この通信機を耳につけてください」
朱乃さんがイヤホンマイクタイプの無線機を配る。
それを耳につけながら部長が言う。
「戦場ではこれで味方同士やり取りするわ」
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』
キンコンカンコーン。
鳴り響く学校のチャイム。これが開始の合図だろう。
◆
「さて、まずはライザーの『兵士』を
部長がソファに腰を降ろしながら呟き、朱乃さんがお茶の用意を始めた。
俺も部長の向かいの席に座って体内の魔力と気の一部を解放し始める。
「ぶ、部長、結構落ち着いていますね……」
イッセーが優雅に紅茶を飲んでいる部長に呟く。
「イッセー、戦いはまだ始まったばかりよ? もともと、『レーティングゲーム』は短時間で終わるものではないわ。もちろん、
それから部長は、チェスの盤上のようにマスで区切られた学園全体の地図を取り出し、作戦会議を始めた。
作戦会議の結果、拠点として体育館を取る事になり、木場と小猫ちゃんがまず旧校舎と新校舎の間にある森へトラップを仕掛けに行き、トラップを仕掛け終わった後に、朱乃さんが森の周囲と空にライザー眷属のみに反応する霧&幻術を仕掛ける手はずとなった。
作戦会議に名前の出なかった俺とイッセーとアーシアだったが、ここでイッセーが部長に尋ねた。
「あ、あの、部長。俺はどうしたらいいんですか?」
「そうね。イッセーとエイジは『兵士』だから『プロモーション』しないといけないわね」
「はい!」
元気よく返事するイッセーに部長がちょいちょいと手招きする。
「ここに座りなさい」
そう言われたイッセーが部長の隣へと腰を降ろし、さらに自分の太ももを指差す。
「ここへ横になるのよ」
驚愕の表情を浮かべるイッセーだが、
「よ、よろしくお願いします!!」
と頭を下げて部長の膝へ頭を置いた。
涙を流して喜ぶイッセー。
なんでも、悪魔として未熟すぎたために封印していた『兵士』の駒の封印を修行でレベルアップしたから少しだけ解放するためらしいがいいなぁ……。
「部長~。俺にはないんですか~?」
羨ましくなって尋ねる。
「あら? エイジは『兵士』の駒一個で転生しているんだし、力は封印していないわよ?」
そういうことじゃないんですが……。
部長に頭を撫でられてイッセーが幸せそうな表情を浮かべる。
恨めしそうに指を咥えているとちょんちょんと膝を突かれた。
「私でよければどうぞ」
顔を向けると。いつの間にか隣へと腰へ降ろした朱乃さんが、ぽんぽんと人の膝を叩いて微笑んできた。
「いいんですか!?」
「はい。私でよければ」
そう呟いてニッコリと微笑んだ朱乃さん。
「ぜひお願いします!」
俺は吸い込まれるように頭を降ろした。
朱乃さんの膝は柔らかくて温かく最高で、さらに仰向けだから見上げると制服をはちきれんばかりに押し上げるおっぱいと、その先に覗ける妖艶な笑顔、度々前かがみになって微笑みながら押し付けてくるおっぱいに俺は癒された。
途中、部長が禍々しい魔力を朱乃さんへ向けて威嚇するように放出したり、言い合いのようなものや、アーシアのすすり泣きのようなものが聞こえたが、まあ、今はゲーム中だし、木場と小猫ちゃんが戻ってきたようだから置いておこう。
◆
トラップを仕掛け終わり、本格的に体育館を取りに行くことになった。
旧校舎の玄関で気合を入れてから駆け出していく、イッセー、木場、子猫ちゃんの近距離戦チームと、止め役&魔法による広範囲遠距離戦の朱乃さん。
回復役のアーシアは部長について本陣に陣取り作戦&対策思案。
で、俺なのだが……。
「エイジは偵察役と囮役、そして遊撃役よ。私たちの中で一番力を持っていて実戦慣れしているんだから、ライザー眷属の居場所の索敵をしたり、敵の戦力を分散させたり、敵を倒しながら、味方が危ない時なんかは援軍にくるのよ」
そう呟く部長。
かなり難しい役回りだが、俺なら大丈夫だな。
戦闘へ意識を切り替え、俺も戦場へと飛び立とうとして、部長に再度声をかけられた。
「エイジ。無茶な要望かもしれないけど頑張って……!」
「了解です!」
俺は力強く頷き白い空へと飛び上がった。
◆
新校舎の方へと飛び上がった俺は運動場の辺りの偵察を開始する。
偵察を開始してすぐ、アナウンスが鳴り響いた。
『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、「
体育館を取ると見せかけて檻にして朱乃さんが外から広域殲滅魔法でし止めるという作戦が成功したようで安心しているとすぐにまたアナウンスが鳴り響いた。
『リアス・グレモリーさまの「戦車」一名、リタイヤ』
グレモリー勢には戦車は一人しかいないから、小猫ちゃんが負けたようだ。
俺は運動場までの道のりの中でライザー眷属の兵士五人と戦車一人を見つけたので、ワザと堂々と空を飛び、運動場のど真ん中に降り立った。
そして誘うように、というか運動場から出られないように塞ぐように結界で覆う。
さあ、小猫ちゃんの仇を取らせてもらおうか?
運動場で待っていると、見覚えのあるネコミミ女戦士の双子や仮面を着けた女などが現れた。
『兵士』五名と『戦車』一名は俺の周りを取り囲み、『僧侶』は少し離れたい位置に陣取り、それぞれの武器や構えを取る。
「まったく、俺って大人気だな~」
そんな軽口を叩いていると正面ネコミミ双子が顔から汗を流して中腰になり、いつでも動けるような構えのまま呟いた。
「なにを言ってるにゃ! 結界で私たちを閉じ込めてるくせに!」
「やっぱりライザー様の言う通り、お前は危険にゃ! ここは全員でお前を潰してやるにゃ!」
そう呟き終わると双子は一気に加速してほぼ同時のタイミングで左右から殴りかかってきた。
俺は刹那の時間に二人の攻撃を完全に見切る。ネコミミ双子のそれぞれの拳を受け流して同士討ちするように仕掛け、さらに背後から波状攻撃をかけてきた三人の『兵士』の攻撃も見切り、それぞれ持っていた武器を破壊して後頭部に手刀を当てて気絶させる。
「なっ!? なにをした!?」
俺の行動を視覚で捉え切れなかった仮面の女が叫んだ。
見えないヤツにはネコミミ双子がお互いの顔を殴りあい、兵士の三人はいきなり武器が壊れて、倒れたように見えるからな。
まあ、説明する気もないからさっさと仮面の女へと向き直る。
「次はお前だな」
そう呟くと仮面の女は惚けた状態から即座に構えを取った。
「くっ!! やるしか、ないのか!!」
俺は地面を蹴り、一歩で仮面の女の目の前まで移動する。
「なっ!?」
「甘いっ!」
驚いた仮面の女は咄嗟に拳を突き出してくるが、驚いたために重心のノリも力の入りも悪い。拳を顔の横に通らせ、伸びた腕を捕らえて仮面の女の力をそのまま利用して投げる。
投げられた仮面の女はそのまま運動場の地面に叩きつけられ運動エネルギーが尽きるまで5メートルほど地面を跳ねるように吹き飛んだ。
「う、嘘よ……、一瞬で五人も……」
最後に俺は放心したように腰を抜かした『僧侶』に手刀をくらわせて意識を刈り取った。
そこでアナウンスが鳴り響く。
『ライザー・フェニックスさまの「兵士」五名、「戦車」一名、「僧侶」一名、戦闘不能!』
ライザーの眷属たちが消えるのを確認してから、結界を解除して次の獲物の方へと向かった。
◆
<イッセー>
レーティングゲームが始まってすぐ、俺は小猫ちゃんと木場の三人で体育館でライザー眷属の『兵士』三人と、『戦車』一人に戦闘を仕掛けて修行で習得した俺の必殺技『
その後、朱乃さんがライザー眷属の『女王』と一騎打ちになり、俺と木場は他の眷属を倒しに新校舎へと向かい、ライザー眷属の『騎士』二名と『僧侶』に遭遇した。
『僧侶』の金髪巻髪女はライザーの妹で戦わないらしく、俺と木場は一対一で『騎士』を相手取って戦っていると、アナウンスが鳴り響いた。
『ライザー・フェニックスさまの「兵士」五名、「戦車」一名、「僧侶」一名、戦闘不能!』
ライザー眷属が一気に半分近く倒された事を知らせるアナウンス。おそらくエイジがやったんだろう。
俺と木場もエイジの勢いに乗り、『騎士』を倒しにかかろうとすると、ライザーの妹が部長とライザーが屋上で一騎打ちをしているという事を教えられた。
屋上を見上げると確かに部長がライザーと戦っていた。
遠目でも荒い息をあげて肩を上下させている部長を見て俺の中の力が、部長を勝たせたいという想いが膨れ上がり『
新しい能力『
だがその直後に朱乃さんが撃破された事がアナウンスで知らせられ、木場を中心に爆発が起こり、木場がリタイヤした。
空を見上げると、そこには黒い翼を広げて高笑いをするライザー眷族の『女王』がいて、ご丁寧に『フェニックスの涙』という回復アイテムを使って、朱乃さんと戦った傷を癒した事などを説明してくれた。
そして俺にも爆発魔法をくらわせようとした瞬間。
エイジが現れた。
◆
<エイジ>
まったく、みんな初めてのゲームだからって油断しすぎだ。
小猫ちゃんも木場も不意打ちを喰らって沈められるなんて、実戦なら死んでるぞ。
女王と一騎打ちしていた朱乃さんが負けたのは、おそらく女王が『フェニックスの涙』っていう反則クラスの回復アイテムでも持ってたんだろう。
耳に装着した通信機から聞こえてくる音声で、状況判断を行いながら、王同士の一騎打ちというとち狂った行動に出た部長を止めるために、校舎の屋上へ向かって駆ける。
そしてその途中で、ライザー陣営の僧侶と女王がイッセーと交戦しているところに、出くわせてしまった。
「エイジ! いいところに来てくれたぜ! 俺は部長の加勢に行く!! この場はまかせた!!」
俺に気づいたイッセーが、どこぞの少年漫画よろしく俺に2人を押し付けて部長の元へと駆け出す。
って! お前が行ったからどうにもならないろ!!?
「おい! イッセー!!」
声をかけようとすると、イッセーは自信たっぷりに言った。
「大丈夫だ!! 俺の新しい力『赤龍帝からの贈り物』があれば、部長を強化できるし、俺はまだ戦える!!」
いや、それだけじゃ勝てないだろ!?
何で自信たっぷりなんだ!?
慌ててイッセーの後を追おうとすると、ライザーの女王が立ちふさがった。
「ふふっ、丁度いいですわ。あなたは要注意人物。ここで足止めさせていただきます」
魔力を解放し、完全に戦闘態勢を整える女王と、傍観するライザーの僧侶。
「仕方がないか……」
さっさと片付けてライザーをぶっ殺しに行かないと、って……。
「そっちの悪魔は戦わないのか?」
傍観している僧侶に尋ねる。
するとライザーの女王が代わりに答えた。
「ああ、彼女はレイヴェル・フェニックス。ライザーさまの実の妹君なんです。ライザーさまには妹属性はないらしいのですが、妹をハーレムに入れる事は世間的に意義があるらしくて……」
なんだそれ……。
自分の中で何かが冷めていく。
「すごく呆れてやる気がなくなってきたんだが、これは作戦か?」
呆れるようにライザーの僧侶、実妹を見る。
「そ、それはなんというかすみません……」
レイヴェルは申し訳なさそうに頭を下げ、構えていた女王もバツの悪そうな表情で頭を下げた。
「……まあ、いろいろ呆れたが、そんな男にやっぱり部長はやれないな」
そう言って構え、相対している女王へ向き直る。
お互いに表情を引き締め、戦闘態勢に移行する。
女王が空へ飛び上がりながら、爆発魔法を放ってきた。
威力もいまいちで、魔力の濃度も中途半端。
一瞬で駆け出して、爆発を手刀で切り裂き、そのままライザーの女王の腹を貫く。
「なにっ!?」
ごふっと口から血を吐きながら驚愕する女王。
「やはり朱乃さんより弱い。『フェニックスの涙』で回復したか、不意打ちで勝ったんだな」
手を抜き、血を払い地面へ着地する。
女王は地面に落下しながら、消え去った。
『ライザー・フェニックスさまの「女王」、リタイヤ』
グレイフィアの校内放送が鳴り響く。
「そんな……、お兄さまの女王がこんなにあっさり負けるなんて……!」
地面に降り立つとレイヴェルが、こちらを信じられないものでも見るかのように、震えながら呟いていた。
さてと、さっさと部長を助けに行かないと、イッセーがいても勝てないだろうし。
俺が屋上へ向かってジャンプしようとした瞬間。背後から声がかかった。
「お、お待ちなさい!」
レイヴェルだった。
「どうした? 戦う気はないんだろう。俺は今急いでるんだが?」
「あなたいったい何者なの!?」
『リアス・グレモリーさまの「僧侶」一名、リタイヤ』
「ちっ、アーシアまでやられたか。……っと、何者って言われても……、リアス・グレモリーの兵士だよ。まっ、時間もないからじゃあな」
「あっ……」
レイヴェルを残して一気に屋上へ向かって駆け上がった。
◆
屋上へ駆け上がり俺が見たものは、ボロボロのイッセーを泣きながら抱きしめている部長とそれを見ながら笑っているライザーだった。
よかった! まだ負けていない。
「部長!」
部長の盾になるように前にち、ライザーと対峙する。
「……エイジ?」
消え入りそうな声で部長が俺の名を呼んだ。
「はい!」
力強く頷き、構えを取るが、部長は消え入りそうな声のまま、涙を流しながら呟いた。
「もういいのよエイジ……」
なにを言って……!?
「もういいの……、もう私は仲間が傷つくところなんて見たくないの……」
後を振り返る。
部長はボロボロになったイッセーの顔に涙を落しながらゆっくりと呟いた。
「ありがとう、朱乃、小猫、アーシア、イッセー……、エイジ。不甲斐ない私のために、よく頑張ってくれたわ」
そっと、イッセーの頭をなでたあと、ライザーに言った。
「私の負けよ。
なん、だと……!!?
俺は激情に身を任せ部長の胸倉に掴み引き寄せた。
「部長のために皆がボロボロになりながら戦ったのに! なんで最後まで戦おうとしない!? なぜ
部長は目を合わせず、涙を流しながら言う。
「あなたまで……、あなたまで傷ついて欲しくなかったの……」
「くっ……!!」
手を離す。
このままじゃ済ませないっ!
このまま終わらせて溜まるかっ!!
「部長、あなたは間違っている。いまはそれを反省してください」
俺は部長の耳元で呟くとばっと身を翻し、ライザーを睨んだ。
「なんだ? もう俺の勝ちは確定してるんだ。今さらお前が何をしてこようと、どうにもならないぜ?」
薄ら笑いを浮かべながら呟くライザーに言う。
「このままじゃ、終わらせない」
そう言い残して、俺は部長の負けを告げるアナウンスと共に、その場から消えた……。