※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

19 / 82
第16話 結婚騒動決着

<イッセー>

 

 

 目を覚ましたとき、そこは見知った自室の天井だった。

 

 ……俺、なんでここに?

 

 ボヤける記憶を必死に叩き起こさせる。

 

 ……勝負していたはずだ。部長とライザーの『レーティングゲーム』。舞台は俺の学校のレプリカだった。

 

 旧校舎が俺たちの本陣で、敵本陣である新校舎へ向かってエイジや木場、小猫ちゃんたちと戦場を駆け巡ったんだ。

 

 小猫ちゃんが倒れて、木場が倒れて、朱乃さんが倒れて、ライザーの女王をエイジに任せて、俺が部長の加勢に行って、アーシアが倒れて……、そして――。

 

 俺はそこで意識をハッキリとさせた。

 

 部長はどうなった!? 勝負は!? 勝敗は!? ライザーを倒したのか!? 俺は――どうして、ここにいる? 

 

 ベッドから上半身だけ起こすと、

 

「目覚めたみたいですね」

 

 枕元にいる女性が声をかけてきた。銀髪メイド、グレイフィアさんだった。

 

「グレイフィアさん! 勝負は? 部長はどうなったんですか!?」

 

「勝負はライザーさまの勝利です。リアスお嬢さまが投了(リザイン)されました」

 

「え、エイジは!? エイジもライザーに勝てなかったのか……?」

 

「いえ、エイジさまが戦う前にリアスお嬢さまが投了されました」

 

 ――ッ!

 

 そ、そんな……。俺は絶句した。言葉も出なかった。

 

 俺がライザーと戦ってボロボロにやられたからか……?

 

 俺が代わりに足止めすれば、勝っていたんじゃないのか……?

 

 ――情けねぇ。

 

 なにが「大丈夫」だ。

 

 ボロボロに負けてるじゃねぇかっ!

 

 手も足も出なかったじゃねぇか!!

 

 涙が止まらなかった。グレイフィアさんがそばにいることなんてお構い無しに涙が止まらない。悔しくて。情けなくて。弱くて。哀れで……。

 

「現在、お嬢さまとライザーさまの婚約パーティーが行われています。グレモリー家が用意した冥界の会場です」

 

「……木場たちは?」

 

「お嬢さまお付き添いになられております。会場にいない関係者は一誠さまとアーシアさま、エイジさまの3名です」

 

 アーシアとエイジ……。

 

「リアスお嬢さまの願いで、アーシアさまはここへ残られて私とともに一誠さまを見ておられたのです。いまは下に替えのタオルを取りにいかれています」

 

 そうか。部長はアーシアを俺のところに残してくれたのか。

 

 心配かけちまったな……。

 

 部長……、婚約……、今頃パーティーの最中なのか……。

 

 ん? そういえば、

 

「エイジは?」

 

「リアスお嬢さまが投了してから、行方をくらませています」

 

 エイジ……。

 

「……お嬢さまの婚約に納得されてませんか?」

 

 グレイフィアさんが訊いてくる。

 

「ええ。俺は勝負が着いたとしても、納得できません」

 

「リアスお嬢さまは、御家の決定に従っただけですよ?」

 

「わかってます! わかってはいるんです! それでも俺は――」

 

 部長が嫌がっていた事を肯定できない! 親同士が決めた事に嫌々従う部長なんて見たくない! あんな野郎に! あんな野郎に部長を渡したくない!

 

「ふふふ」

 

 突然、グレイフィアさんが小さく笑った。このひとの笑みは初めて見た。いつも冷淡で淡々とした感じなのに……。

 

「あなたは本当に面白い方ですね。長年、色々な悪魔を見てきましたが、あなたのように思った事を顔に出して、思った通りに駆け抜ける方は珍しいです。私の主、サーゼクスさまもあなたの事を『おもしろい』とおっしゃっていたのですよ?」

 

 グレイフィアさんは懐から一枚の紙切れを取り出した。そこには魔法陣が描かれている。

 

「この魔法陣は、グレモリー家とフェニックス家の婚約パーティーの会場へ転移できるものです」

 

 ――っ。

 

 なんでそんなものを!

 

「サーゼクスさまからのお言葉をあなたへお伝えします」

 

 一拍空け、グレイフィアさんは真剣な面持ちで言う。

 

「『妹を助けたいなら、会場へ殴りこんできなさい』、だそうです。その紙の裏側にも魔法陣があります。お嬢さまを奪還した際にでもお使いください。必ずお役に立つと思うので」

 

 ………………。

 

 どう返したらいいかわからない俺。グレイフィアさんは俺の手元に魔法陣が描かれた紙を置くと、立ち上がり、部屋をあとにしようとする。

 

「一誠さまの寝ておられる間、あなたの中から強大な力を感じ取りました。ドラゴンは、神、悪魔、堕天使、そのどれとも手を結ばなかった唯一の存在です。忌々しきあの力ならばあるいは……」

 

 それだけ言い残し、グレイフィアさんは部屋をあとにした。

 

 一人取り残された俺。……考える必要なんてないよな。

 

 俺はベッドから起き上がり、誰が用意してくれたのか分からない、綺麗になった制服に着替え、魔法陣に手をかけたそのときだった。部屋の扉が開きアーシアが入ってくる。

 

「――っ! イッセーさん!」

 

 アーシアは俺を見るなり、タオルと水の入った洗面器を床に落した。そして、俺の胸に飛び込んでくる。

 

 おわっ。アーシア、どうしたんだ……。いきなり抱きつかれたら照れるぞ。

 

「よかった。本当によかったです。怪我の治療をしても二日間も眠ったままで……。もう目を覚まさないんじゃないかって……、エイジさんもレイナーレさんもいなくなっちゃいましたし……。イッセーさん……」

 

 アーシアは俺の胸で泣きだしてしまった。あー、また泣かせちゃった。

 

 俺はそれからアーシアを落ち着かせて、部長を取り戻しに行く事を伝えた。

 

 アーシアは心配していたが、こればっかりは仕方がなかった。

 

 俺はアーシアを説得し、以前話していた悪魔の弱点となる、聖水と十字架を用意してくれるように頼み、俺の中に宿る赤い竜に話しかけた。

 

(おい! 聞こえているなら出てこい。いるんだろう? 赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ! いるなら話がある! 出てこいッ!)

 

『ああ。なんだ、小僧。俺になんの話がある?』

 

 俺の内側から響く声。

 

 俺は部長を救うために契約を持ちかけた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュゥゥゥゥン……。

 

 グレイフィアさんから貰った魔法陣を使って転移した。

 

 俺は何やらガヤガヤと声が聞こえる方向へ足を向けた。

 

 開かれた巨大な扉。

 

 扉かな中を窺うと、着飾った大勢の悪魔たちが広場で楽しげに談笑していた。

 

 そろりそろりと悪魔たちをかき分けて見知った者を探す。

 

 しっかし、広い会場だな。校庭よりも広いんじゃないか? 天井なんて遥か上ですよ。トンでもなく大きいシャンデリアもすげぇな。これが部長のお家が用意した会場なんだな。あー、俺も早く爵位を得て偉くなって見たいもんだ。

 

 そんな物思いにふけっていると、紅が視界に映り込んだ。

 

 長い紅髪をアップした女性――。赤いドレスに身を包んでいる。一目でわかった。当然さ。だって、あれが俺の憧れの――。

 

 「部長」っと叫ぼうとしたその時、部屋全体、建物全体が振動し、天井の一部が降ってきた。

 

「な、なにが……」

 

 周りの悪魔たちも予測不能のその事態に戸惑い、喧騒が会場を埋め尽くす。

 

 そして、戸惑っていると、開いた天井の穴から悪魔が降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<エイジ>

 

 部長が投了してからすぐ、俺は決断を下した。

 

 家へと戻り、通信用の護符を使い賞金首仲間(・・・・・)を招集する。

 

『いったいどうしたのにゃ?』

 

「黒歌か? 急いでセルベリアとノエル、それに時雨を召集してくれ」

 

『了解にゃ! でもなんでにゃ?』

 

「殴り込みをかけるから」

 

『そうにゃん?』

 

「それに、そろそろ仮面つけるのも面倒になってきたからな。姫さま……、いや王さま救うついでに俺が悪魔になったって冥界に示す」

 

『王さま? ああ、そういう事ね! じゃ、あたしは招集かけてくるにゃ♪』

 

「ああ。頼む」

 

 俺は通信を切り替え、昔借りを作った龍と、諜報活動など各所へ繋ぎ、リアス・グレモリー奪還の準備を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして部長とライザーの婚約パーティー当日。

 

 姿を隠す【隠蔽】の魔法で、足代わりになった龍と仲間ごと姿を隠して、婚約パーティーの会場へとやって来た。

 

 さてと、冥界のTVが入っているのは確認済みだし、そろそろ部長が会場へ入る時間だ。

 

 俺は現在コスチュームとして定着してしまった赤と黒の衣装に身に纏い、目元と鼻を隠した白銀の仮面をつけ、魔力を解放し始める。

 

「楽しそうにゃね~」

 

 龍の背に座っている黒歌が呟いた。

 

「まあ、顔出しは初めてだからな」

 

 俺が立ち上がると背後に座っていた2人も立ち上がる。

 

「エイジさま。諜報員からの情報では全て予定通りだそうです」

 

 青の混じった尻上近くまで伸ばした銀髪と、黒を基調として金の装飾が施された若干露出が高めの軍服。その胸元から突き出る形のよい爆乳。赤い目をした色白の美女、セルベリアが通信機をつけた耳に手を当てながら言った。

 

「とうとうお披露目ですね!」

 

 青いベレー帽と、青を基調としたマントを羽織った金髪碧眼の美少女、ノエルが興奮した面持ちでつぶやいた。

 

「ん、作戦通り」

 

 長い黒髪ポニーテールで、鎖帷子を下に着込んだくのいち風、身の丈より長い日本刀を背負った美女、香坂 時雨《こうさか しぐれ》が満足げにうなずく。

 

「まったく……、何故俺が運び屋など……」

 

 愚痴を言う元六大龍王で現在転生悪魔のタンニーン。

 

「貸しだよ貸し、昔ドラゴンアップルっていうのを増やす手伝いしただろ?」

 

 そう言うとタンニーンは口ごもる。

 

「ま、まあ、それはそうだが、グレモリー領に不法侵入は俺でもかなりマズいんだが……」

 

「【隠蔽】は完璧に発動しているし大丈夫さ。仮にバレるとしてもサーゼクスとか魔王クラスぐらいだ。そんな大きい問題にはならねぇよ」

 

「そうか?」

 

「……たぶん」

 

「…………」

 

 とりあえず無言になったタンニーンは置いておいて、放心しているゴスロリメイド服姿のレイナーレに向き直る。

 

「お~い。大丈夫か?」

 

「っ! は、はい! な、なんですか?」

 

 びくっと意識を取り戻すレイナーレ。

 

「色々思考が追いついていないと思うが、これが俺の冥界での姿だ」

 

「や、やっぱり本物なんですか……?」

 

 確認するようにつぶやくレイナーレ。

 

 そりゃあ俺って冥界だけじゃなく天界でも有名だったりするからな。すぐに信じられないだろうから、顔出しして活動している面々を引き連れてきたわけだし。

 

「ああ。そうだ」

 

 レイナーレの顔を真っ直ぐ見ながら肯定した。

 

 レイナーレは視線を外さないまま言った。

 

「……そうですか。わかりました」

 

 一拍置いて花の咲いたような微笑を浮かべて、

 

「お帰りをお待ちしてます。ご主人さま」

 

 自然と笑みが浮び俺は頷く。

 

 さあ、いよいよショーの開幕だ!!

 

「セルベリアとノエルは作戦通り天井を破壊! 怪我人を出さないように調整しろよ!」

 

「了解しました」

 

「はい!」

 

「時雨は会場にいる悪魔が邪魔しようとしたら気絶させてくれ、方法はなるべく傷つけずにだ!」

 

「う、ん」

 

「黒歌とレイナーレはここで待機。不測の事態があった場合に備えてくれ、あと黒歌【隠蔽】の術式を受け継いでくれ」

 

「はいにゃ!」

 

「かしこまりました!」

 

「あ、あとタンニーンは待機な。目標回収後に速やかに離脱するからいつでも飛び立てるようにしといてくれ」

 

「……わかった」

 

「では、開始しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずはセルベリアが神器である【戦乙女の槍】を発動させ、巨大な旧時代の戦槍を発現させると、槍に特殊な水色の魔力を流し、戦槍に纏わせ、先端から光線を放ち天井に穴を開けた。

 

 さらに続いて、ノエルが神器である【魔銃ベルヴェルク】を発現させる。ノエルの両手に現れた一対の巨大な銃が、ズガガガガガッと天井の破片を撃ち砕いていく。

 

 そして、開いた穴へセルベリア、ノエル、時雨、俺の順で飛び降りた。

 

 突然の騒動に、会場の視線が一気に集まる。

 

「【蒼炎の戦乙女】だわ!」

 

「【魔銃使い】!?」

 

「【武器の申し子】までいるぞ!」

 

 セルベリアとノエル、時雨の冥界での通り名が呼ばれ、会場の視線が一気に集まる。

 

 俺は先に立った3人の前に着地する。

 

 そして丁度正面の舞台に立っていた純白のドレス姿の部長と目が合った。

 

「なぜ貴様がここに……!!?」

 

 隣に立っていたライザーが身に炎を纏いながら睨みつけてきた。

 

 俺は天井の破片などで舞い上がった埃を風魔法で一気に払うと、前に出た。

 

 そして、会場に集まった悪魔たちに宣言するように言い放つ。

 

「俺の王を返してもらいにきた!」

 

「なっ、なんだと!?」

 

 ライザーを筆頭に会場の悪魔たちも騒ぎ出すが、俺が仮面に手をかけると、騒然としていた会場が急にしんっと静まり返った。

 

 今まで、ずっと被っていた仮面だ。

 

 賞金首として有名になりすぎてきたためにつけていた仮面。

 

 ……いつの間にか変な通り名まで付けられて、アニメや漫画、映画まで作られてはずすにはずせなくなった仮面。

 

 そのアニメでたまに男と絡ませられるBL男子にさせられてしまったり、ドラマで特命な会社員的なアダルトな男みたいに、日夜平和を守りながら美人の悪魔やサキュバスなどと逢瀬を楽しんだり……。

 

 高校生になってから一気に恥ずかしくなってきた仮面。

 

 俺はその仮面を取り外した。

 

「もう顔を隠すのはやめだ……。俺の名は神城エイジ!  黒い 捕食者 (ブラック・プレデター)にして、リアス・グレモリーの眷属悪魔だ!!」

 

 大声で叫ぶ。

 

 ああ、それにしても通り名を自分で言うってすごく恥ずかしいね……。

 

 だが、会場はしんっと静まり返り、歓声や喧騒といった色々な声に埋め尽くされる。

 

「ど、どういうことだ!」

 

「リアス殿、これはいったい?」

 

 部長やライザーの親族たちも困惑した。

 

 そんな中、大きな笑い声が会場の喧騒をかき消した。

 

 現魔王ルシファーで、部長の兄で、面白好きのバカこと、サーゼクス・ルシファーだ。

 

「サーゼクス殿?」

 

「お兄さま?」

 

 ライザーと部長が驚いてサーゼクスを見る。

 

 サーゼクスは思いっきり笑った。

 

「まさか、君が助けに来るなんてね。あはは……、それに妹の眷属悪魔になってるなんて……!」

 

 サーゼクスは荒くなった息を整え、俺に問いかける。

 

「それで、妹の眷属悪魔が何の用だい?」

 

 俺は胸を張って応える。

 

「もちろん。リアス・グレモリーを攫いに着た」

 

「えっ!?」

 

 部長の顔がぼんっと一瞬で赤に染まった。

 

「賞金稼ぎ風情がなに抜かしてやがる!」

 

 ライザーが全身から炎を噴出させながら叫んだ。

 

 そんなライザーに向って俺は拳を突き出す!

 

「ライザー。リアス・グレモリーが欲しければ俺を倒せ!」

 

「おい! すぐに取り押さえ……」

 

 親族の誰かが警備員に命令しようとした瞬間、サーゼクスがその声を制した。

 

「まあ、いいではありませんか。戦わせてあげましょう」

 

「サーゼクス殿!?」

 

 戸惑う親族勢にサーゼクスは微笑むと、両手を広げて会場全体に響く声音でつぶやいた。

 

「皆さんも見たくはありませんか? 魔王クラスなどと言われ、現冥界で人気者になっている 黒い捕食者 (ブラック・プレデター)と伝説のフェニックスとの戦いを……! わたしはすごく見たいと思っています」

 

 サーゼクスの言葉に会場の視線が俺とライザーに集まる。

 

「いいでしょう! このライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」

 

 やっと手に入れた女を横取りされかけて、頭に血が上っているライザーは二つ返事で了承した。

 

「天狗になっている好色種鳥が! 俺が貴様を倒してリアス・グレモリーを奪い返してやる!」

 

「きっ、き、さ、まぁあああああああああああああああ!!」

 

 あれっ? 挑発しすぎたかな?

 

 会場の中に関わらず、最初から全力全開、青筋全開で一直線にライザーが飛びかかってきた。

 

 セルベリアとノエル、時雨が俺の(・・)邪魔にならないように一気に後方に跳ぶ。

 

 一気に距離をつめたライザーが、炎を纏わせた左拳で殴りかかってきた。

 

 ブンッ!

 

 冷静に見切り、腰を屈めて避け、さらに追撃するように放ってきた右拳と、左足を同様に見切って避けて、間合いを取る。

 

「っ! 噂はあながち間違いでもなさそうだな!」

 

 攻撃を全てかわされたライザーは、本気で俺を強敵とみなした様子で、さらに炎を体に纏わせ、魔力の密度を高め始めた。

 

 まっ、長引かせる気もないし、アホ鳥に付き合う理由もないから終わらせてもらおう。

 

「さてと……、【 王の財宝 (ゲート・オブ・バビロン)】」

 

 俺は呟きながら【王の財宝】の中から特製の宝具を取り出す。

 

 虚空から出てきたのはふた振りの槍。

 

 有名な二つの赤い槍と黄色い槍。

 

 接触している物の魔力を打ち消す長槍【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】と、決して治癒のできない傷を与える呪いの短槍【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】だ。

 

 しかし、そのオリジナルより、俺の【王の財宝】に入っている宝具は数段上をいく。

 

 なんせチートを貰ったあとに【王の財宝】が空だったことに絶望した初代の魔界の魔王であった俺や、歴代の俺が製作した宝具なのだ。

 

 その能力は数段強化され、いくつも造られ、その貯蔵量はオリジナルの【王の財宝】をすでに超えているだろう。

 

 俺は槍を両手に構える。

 

「何だその槍は!?」

 

 槍に込められている魔力と、槍からあふれ出す存在感に気づいたのだろう、ライザーが表情を強張らせた。

 

「これは俺の魂が精製し、製作し、手に入れてきた宝具だ。ふっ、怖気づいたか鶏?」

 

 鼻で嗤ってやるとライザーはビキビキッと額に青筋を浮べ、荒い息で大声で怒鳴ってきた。

 

「だれがチキンだぁああああああああ!!!!!」

 

 うわっ、こいつ挑発に乗りすぎだろ?

 

 ただ真っ直ぐ殴りかかってくるなんて、どっかのヤクザゲームの雑魚キャラ、典型的なチョイ悪ホスト系だな。

 

 正面から殴りかかってくるライザーの攻撃を避けて、接触している物のあらゆる魔力を完全に打ち消し、貫通能力、殺傷能力を倍加させ、新に封印機能をつけた長槍【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】の、刃ではなく胴で殴りつけてライザーの炎を打ち消す。

 

 ドゴンッッ!

 

「がぐぅううっ!?」

 

 上から下へと、叩き潰されたライザー。

 

 会場の床にめり込み、一瞬で瀕死になった。

 

 …………へ?

 

 い、いくらなんても弱すぎるだろ?

 

 魔力消して叩いただけで、一撃で終わった……。

 

 本来なら炎が身を包み、体を回復させるはずだが、炎どころか蝋燭の火ほども発生しない。

 

「な、んだと……!? なぜ炎がっ!? 魔力を感じない!!?」

 

 ライザーは両手を床についてゆっくりと、起き上がりながら驚愕したように呟いた。

 

 まるで生まれたての小鹿。

 

 フェニックスの能力に頼りすぎたか。哀れだな。

 

「貴様ぁあああっ! 俺にいったい何をしやがった!!?」

 

 絶賛戦闘中の敵に聞くなんてほんとに馬鹿だな……。

 

「本来は応えてやらないんだがな。この【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】には、接触している物のあらゆる魔力を完全に打ち消し、さらに封印する能力がある」

 

「なんだと……!?」

 

 何回なんだとって言ってるんだこいつ……。

 

 俺はライザーへ向かって今度は、貫通能力や殺傷能力強化はもちろん、決して治癒のできない傷を与え、さらにその傷を24時間ごとに大きく開かせていく呪いの短槍【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】を突きつける。

 

「これは【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】。決して治癒のできない傷を与え、さらにその傷を24時間ごとに大きく開かせていく呪いの短槍だ。今のお前じゃなくても、フェニックスだったとしても、この槍を受ければ、治癒できずに死ぬだろう」

 

「ひぃっ!!」

 

 炎どころか魔力を封じられ、不死さえ殺せるという【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】にライザーは、顔の色を青から白へと変えて、震え始めた。

 

 必死に距離をとろうと起き上がり、ダメージで足が言う事聞かずに尻餅をつき、無様に怯え、震えながら言った。

 

「ま、待て! わ、わかっているのか! この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なものなんだぞ!? それにフェニックス家とグレモリー家を敵にまわす気か!?」

 

 俺は目の前のライザーだけではなく、会場の、冥界全土にいる悪魔へ向かって宣言する。

 

「悪魔の未来など知るか! たとえ冥界全土が敵になろうと俺はリアス・グレモリーが望まない結婚をさせるつもりなどない!! そして眷属悪魔としても、男としても、リアス・グレモリーを泣かせたお前などに、渡すつもりはない!!」

 

必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】を持った左手で引き、全身の力を槍へと集中する。

 

「喰らえっ!!」

 

「やめっ! やめろぉおおおおお~~~~!!!!」

 

 ライザーの断末魔の叫びが会場に木霊する。

 

 ゴォォオオオッ、ビダァッ!!

 

 …………。……ふぅ、まったく少し脅しただけで心を壊すなんてマジで情けねぇな。

 

 ライザーの眼前数センチで止めた【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】を下ろし、槍を【王の財宝】へ仕舞う。

 

 それでもライザーは股間から小便を漏らしたまま、ぼーっと抜け殻のように放心していた。

 

 俺はゆっくりと部長の前まで歩く。

 

 誰も止めに入らない。

 

 会場のほとんどの者が、目の前の出来事を信じられないと、固まっていた。

 

「リアス・グレモリー」

 

「えっ……、あっ、はい!?」

 

 ふふっ、何で敬語になってるかは置いておくか。

 

「失礼します」

 

 驚いているリアスの背と膝裏に腕を入れて、横抱き……、まあ、お姫様抱っこする。

 

「きゃっ!」

 

 可愛らしい悲鳴が部長の口から漏れた。

 

 腕の中で真っ赤になっている部長へ笑顔で言う。

 

「このままじゃ終わらせないって言いましたよね? あのライザーと結婚なんかさせたくなかったんで、俺があなたを攫いに着ました」

 

「えっと……、そのっ……」

 

 真っ赤な顔で俯く部長を微笑ましく眺めたあと、けじめとして両家の親族、部長とライザーの親だろう悪魔に、婚約パーティを邪魔をした謝罪と、天井に穴を開けたことに対してして頭を下げ、そして今度は堂々と胸を張って警告する。

 

「リアス・グレモリーは俺が攫っていきます。再びリアス・グレモリーが嫌がるような、泣くような結婚をさせようとするのなら、俺が何度でも攫いにきます」

 

 とんっと大きく跳躍して、侵入口兼脱出口である穴の下に陣取り、守っていたセルベリアたちと合流する。

 

 呆然と誰も動けない中、オカルト研メンバーが悪魔たちをかき分けて出てきた。

 

「エイジさん!」

 

「エイジ君!」

 

「エイジ先輩!」

 

 朱乃さん、木場、小猫ちゃんの順で名前を呼ぶ。

 

 そして一番遅れて出てきたイッセーが肩、拳を全身を震わせて俺の名を叫ぶ。

 

「エイジぃいいいい!!!!」

 

 憤怒ともいえる大きな声に、会場の悪魔達が我を取り戻し、誰かが、

 

「取り押さえろ!」

 

「逃がすな!」

 

 っという怒声が聞こえてきた。

 

 そろそろ潮時だな。

 

「セルベリア、ノエル、時雨」

 

「「はい」」

 

 3人に声をかけたあと、オカルト研のメンバーに「みんな部室で会おう!」と言い残して、もともと入ってきた天井から脱出する。

 

 さらに脱出と同時に壊れた天井を修理用の宝具で直し、タンニーンの背に飛び乗った。

 

 遠くでイッセーの叫び声が聞こえたような気が……、しないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<第三者視点>

 

 

 一方会場では……。

 

 イッセーが地面に跪き、絶叫していた。

 

「せっかくアーシアと約束して、ライザー倒すための作戦まで立てて、ドライグに左腕まで支払ったのに、エイジに全部持ってかれたぁああああああああ!!」

 

 突然血の涙を流しながら叫びを上げるイッセーに、オカルト研の面々もどうしていいか分からない。

 

「別に助けた事事態はいいけど、俺の左腕~~! アーシアにカッコいい事呟いたのにぃいいいいい!!」

 

 誰もどう声をかけていいかわからない中、イッセーの心の中で声が響いた。

 

『…………相棒。一応今回は左腕を払う前だったから、左腕はだいじょうぶだ。なんというか……、ガンバレ……』

 

「うぅうううんっ……! ドライクぅううううううっ!!」

 

 イッセーは泣いた。

 

 会場の悪魔たちが視線を集めてきたが、関係ないしに一誠は泣いた。

 

 始め声をかけた時にかなり高圧的だった、ドライグの声音が優しい。まるで慰めるような声音で、ライザーに勝利する秘策であった左腕をドライグに払い力を得る前に、すべてが終わってしまった事に、イッセーは左腕を抱きながら泣いた。

 

 そして、そんなイッセーの様子をオカルト研のメンバーは勘違いして微笑ましい眼差しで見ていた。

 

「イッセーくん、本当に部長が助けられて嬉しかったんだね」

 

「あんなに喜んで」

 

「涙もろいんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<グレモリーとフェニックスの両家の父親>

 

 

「フェニックス卿。今回の婚約、このような形になってしまい、大変申し訳ない。無礼承知で悪いのだが、今回の件は――」

 

「みなまで言わないでください。グレモリー卿。純血の悪魔同士、いい縁談だったんだが、どうやらお互い欲が強すぎたようだ。私のところもあなたのところもすでに純血種の孫がいる。それでもなおホッしたのは悪魔ゆえの強欲か。それとも先の戦争で地獄を見たからか」

 

「……いえ、私もあの子に自分の欲を重ねすぎたのです」

 

「ブラック・イーター……、いや、神城くんと言ったかな。彼に礼を言いたかった。息子に足りなかったのは敗北だ。アレは一族の才能をあまりに多く過信しすぎだ。これは息子にとってのいい勉強になっただろう。フェニックスは絶対ではない。これを学べただけでも今回の婚約は十分でしたよ。グレモリー卿」

 

「フェニックス卿……」

 

「あなたの娘さんはいい下僕を持った。赤い龍王を宿す者はもちろん、冥界に名を轟かせている魔王や神と同等の力を持つ仮面をつけた賞金稼ぎ、ブラック・プレデター、しかもその隠していた素顔まで晒したのだ。これからの冥界は退屈しないだろうな」

 

「ええ。ほんとうに……、まさか娘の下僕になっていたなんて、わたしも思いませんでしたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、いいぞ、タンニーン。出してくれ」

 

「まったく、俺は元とはいえ六大龍王なんだぞ? たくしーみたいに……」

 

 おお、タクシーを知ってたのか。

 

 まっ、それは今はどうでもいいか。

 

 タンニーンの背中、翼と首の前、レイナーレや黒歌たち他のメンバーは空気を読んで、少しだけ離れた距離で腰をおろし、くつろいでいた。

 

「エイジ……」

 

 膝の上に乗せた部長が小さな声で俺の名を呼んだ。

 

「はい」

 

 返事を返すと、部長はくすっと笑うと笑顔を浮かべた。

 

「あなたってほんとに規格外の眷属よね。冥界の賞金稼ぎって言ってたけど、あなたがブラック・プレデターとは思いもしなかったわ」

 

「俺も元は本当に普通の賞金稼ぎだったんですよ。いまはいろいろ有名になってしまいましたけど」

 

 本当に、始めはただの賞金稼ぎの子供だったんだけどな……。

 

「でも、私を攫ってほんとによかったの? グレモリーとフェニックスだけじゃない、冥界を敵にまわしちゃうかもしれないのよ?」

 

 部長は不安そうに見つめてくる。

 

 俺は会場で宣言した時のように、言った。

 

「あなたのためなら、それでも構いません」

 

「……そう……」

 

 部長は顔を真っ赤にさせると首に腕を回してきた。

 

 目を瞑り、唇が迫る。

 

 俺は逃げずに唇を重ね合わせた……。

 

 柔らかく、温かく、そして部長の存在を強く感じた。

 

 ゆっくりと唇が離れ、部長は唇を指でなぞりながら、微笑んだ。

 

「私のファーストキス。日本では、女の子が大切にするものよね?」

 

 もじもじと少女のように愛らしい部長に俺は笑みを溢し頷いた。

 

「すごく嬉しいです」

 

「ふふっ」

 

 満足そうに微笑む部長に、今度は自分から唇を近づける。

 

 そして、再び唇が重なり合わせた……。

 




 2/18日 シェリーがわからない意見が多く、自分でもキャラがわからなかったので、

 勝手ですが、魔銃持ってる少尉さん(ノエル)に変更しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。