※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

20 / 82
第17話 黒歌の過去と部長の選択

 

<エイジ>

 

 

 俺は混乱している。

 

 目の前に我らの部長が裸で寝転がっているからだ。

 

 昨夜寝る時には別の部屋だったよな?

 

 突然、「あなたの家に一緒に住ませてもらうわ」って部長が転がり込んできて、最後の空き部屋だった俺の部屋の向かい側に住み始めた。

 

 他にも隠していた仮面を脱いで、冥界全土に顔を出したことで、セルベリアもノエル、時雨も家に転がり込んできたが、それはあとででいいか……。

 

 それよりも、何故部長が裸で、しかも腕枕をしているような状態で寝ているかだ……。

 

 いやっ、部長の大きくてハリのあるおっぱいや、膝に触れるふんわりとしたあっちの毛の感触や、寝息とともに胸にあたる吐息や、鼻をくすぐる部長の匂いが、嫌だと言うわけではない!

 

 むしろ、すごくいいっ! 

 

 のだが……。

 

 それだけじゃここまで混乱しない。

 

 もう一方、俺を挟んで部長の反対側に寝ている雌猫が問題だった。

 

「うにゃ~……」

 

 気持ちよさそうに胸に擦りつきその白く細い指で、胸に抱きついて、ザラザラする舌で胸を舐めてくる雌猫、もとい黒歌。

 

 部長奪還からしばらく姿を見せなかった黒歌が、夕べ帰ってきて、久々にセックスしてそのまま寝たのだが、まさかこんなことになるなんて……!

 

 両手に華。

 

 両脇に巨大マシュマロ。

 

 腰に凶器。

 

 完全にフル勃起してしまっている愚息。

 

 いや、当然の反応をする息子。

 

 さらに部屋のドアが開き、いつものようにメイド服姿のレイナーレが入ってくる。

 

「おはようございます。ご主人さ……」

 

 うん。布団に隠れてるからってバレバレだよな……。

 

 わなわなと肩を震わせるレイナーレ。

 

 そして、薄ら笑いを浮かべ、上品にベッドまでやってくると、部長の頭に手刀を落した。

 

「ふっ、危ないわね」

 

 だが部長。手刀が当たる寸前で、まるで起きていたかのように、いや、ほんとに起きてたかもしれない……。手刀を華麗に交わした。

 

「まったく、無礼なメイドね。ちょっとは空気を読みなさいよ」

 

 部長は再度、胸に抱きついてきてレイナーレを見ながら言った。

 

 レイナーレは笑みを浮かべたままだが、背後に黒いオーラが滲み出てきた。

 

「あなたこそ。突然転がり込んできたかと思えば、ご主人さまの寝室にまで侵入して……。しかも裸でベッドに忍び込むなんて、グレモリー家の女は痴女なんですか?」

 

「わたしは普段寝る時は裸なのよ」

 

 レイナーレの言葉を半ば無視して、俺の胸を優しくなでて、うふっと嗤う部長。

 

 一触即発の空気! 早朝の修羅場! 部長とレイナーレの魔力が渦巻き合い、女の意地とプライドが交差する!

 

 そしてさらに布団を目深にかぶっていたから何とかバレずにやり過ごせるかな~っと、思っていたら、まるで空気を読んでいない、むしろ読むつもりもない声音とともに、黒歌が起き上がった。

 

「うにゃ~……、ふぅっ……、朝からうるさいにゃ」

 

 いつものように裸である事など気にもせずに上半身を起き上がらせ、猫のように背伸びを行い、あくびをかみ殺しながら抗議する黒歌。

 

「黒歌!?」

 

「へっ? 黒歌? ……黒歌!?」

 

 レイナーレが黒歌の名を呼んだことで、部長が目を見開いて黒歌の顔と耳を見て、一気にベッドから距離をとった。

 

「何故あなたがここにいるの!?」

 

 戦闘態勢を取り、手に魔力を集中させる部長。

 

 すみません部長……、不謹慎ですが全部見えてます……。足を開いてるからオマンコも口を少し開いてるし。

 

 えっと……、黒歌が高ランクのはぐれ悪魔だから警戒してるのか?

 

「まさか、はぐれ悪魔となった黒歌がいるなんてね」

 

「リアス・グレモリー……」

 

 まるで軽蔑しているような視線で黒歌を睨む部長。

 

 バツの悪そうな顔を浮べ、後ろめたそうな表情の黒歌。

 

 その様子にレイナーレまでも萎縮してしまった。

 

 不穏な空気の部長と黒歌……。

 

 2人の間になにかあったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝室で固まっておくのも不毛なので、お互いにいったん落ち着いて、身支度を済ませ、まずは朝食を摂った。

 

 テーブルの端に俺、左側に黒歌、ノエル。右側にリアス、セルベリア。そして俺の向かい側にレイナーレが座った。

 

 時雨は昨日から用事で留守だ。

 

 食後のお茶を飲みながら、不機嫌な部長は話を切り出した。

 

「さてと、それじゃあ説明してもらいましょうか。黒歌がなんでここにいるのかを」

 

 黒歌は普段の陽気な雰囲気を見せずに、言い難そうに話し始めた。

 

「……私は昔、当時主だった悪魔を殺して、白音と別れたあと、悪魔たちの追ってに深手を負わされたのにゃ……」

 

 白音? 誰だそれ?

 

「深手を負って死に掛けた時に、エイジが助けてくれたの。そして私はエイジの使い魔になったのにゃ」

 

「そう……」

 

 部長は目を伏せた。

 

 そして部長はもう一度黒歌を瞳を真剣な眼差しで見る。

 

「あなたのおかげで小猫……、白音がどれだけ傷ついたと思っているの?」

 

 黒歌の表情が曇る。

 

 っていうか小猫? 白音?

 

 話的には小猫ちゃんは黒歌の関係者、肉親のようだな。

 

「それは……」

 

「あの子と私と出会ったとき、処分されかかっていて、生きる意志も笑顔も失っていたのよ。あなたが力を暴走させて主を殺した所為でね」

 

「…………」

 

 主殺し。

 

 黒歌が指名手配された理由だったはず。

 

 だが黒歌がただ主を殺すわけがないと思う。

 

『白音』という、小猫ちゃんの以前の名前を出された時の黒歌の顔は悲しそうだった。

 

 何か理由があったはずだ。

 

「とりあえず黒歌がなぜ主を殺したか理由を聞いてみませんか?」

 

「理由?」

 

「ええ。黒歌が理由もなくそんな事をするとは思えませんし、俺も主を殺したぐらいしか聞いていなかったので」

 

「……それもそうね」

 

 全員の視線が黒歌に集める。

 

 黒歌はゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後――。

 

 黒歌はすべてを語った。

 

 もともと黒歌は、妹であった白音(小猫ちゃん)と2人で生きていたところに、猫魈(ねこしょう)の能力を欲しがる悪魔に、小猫ちゃんを人質に無理矢理下僕悪魔にされたそうだ。

 

 黒歌は下僕悪魔として働いていたが、主だった悪魔が小猫ちゃんを仙術に目覚めさせようとしたそうだ。

 

 仙術は危険なもので、黒歌は幼い小猫ちゃんに仙術の修行をつけるのを、拒否したそうだが、主の悪魔は無理矢理にでも仙術を習得させようとした。

 

 黒歌の中で今までの恨みが爆発。小猫ちゃんを守るためにも、主だった悪魔を殺害したそうだ。

 

 そして主殺害後、小猫ちゃんを連れて逃げたが、追っ手に破れ、小猫ちゃんと引き離され、自分が生き残るために冥界から人間界へと逃亡。

 

 追っ手に深手を負わされたところを、少年だった俺と出会った。

 

「……そう、だったの……」

 

 話を聞き終えた部長は小さくため息を吐いた。

 

 黒歌は涙を溜めたまま言う。

 

「私は、結局白音を守れなかったにゃ……」

 

「…………」

 

 部長の表情が重く、硬い。

 

 黒歌がすべて悪かったわけではないと分かったからだろう。

 

 だが部長は小猫ちゃんの現在の主として言った。

 

「あなたが全て悪いわけじゃないことは分かったけど。……小猫にはまだ会わせられないわ。あの子は、あなたの所為で自分に流れる猫魈の力が嫌いになっているの。トラウマともいえるほどにね」

 

「……それは分かってるにゃ」

 

「それならいいわ」

 

 部長は話は終わりと壁にかかっている時計を見た。

 

 8時30分。

 

 もうすでに学園は始まっている。

 

 完全な遅刻だった。

 

「ふぅ……、エイジ。とりあえず学校に行きましょう」

 

 部長は立ち上がり鞄を持った。

 

「……そうですね」

 

 俺も立ち上がる。

 

 そして黒歌の席まで近づいた。

 

「エイジ……」

 

 悲しげに見上げる黒歌。

 

 その黒歌の頭を優しく撫でる。

 

「話してくれて嬉しかった」

 

「エイジぃ……」

 

 涙を流しながら腰に抱きついてきた。

 

 慰めるように抱き絞め返した。

 

「エイジ。早く行くわよ」

 

 不機嫌全開の部長。

 

 や、やきもちか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒歌とレイナーレたちを家に残して、俺は部長と通学路を歩いていた。

 

 部長が隣に並び、腕に抱きついてくる。

 

 部長のおっぱいが腕に当たるのは気持ちいいんだけど……。

 

「部長……」

 

「なにエイジ?」

 

「黒歌が、小猫ちゃんにしてしまった事は許されない事だと思いますが、あまり黒歌を嫌わないでください」

 

「…………。……でも、また裏切るかも知れないわよ?」

 

 部長の問いに、俺は自信と確信を持って応える。

 

「それはないです。黒歌はもちろん、レイナーレも裏切りません」

 

 部長は驚いたように目を見開いた。

 

「なぜそんな事が言えるの?」

 

「そりゃあ、2人とも俺の使い魔とメイドですから」

 

 笑顔で断言する。

 

「……そう」

 

 部長は考え込むような素振りを見せた。

 

 それから学校の校門まで無言で歩くが、校門を潜ったところで部長は言った。

 

「黒歌の事はまだ小猫には言わないで。時期を見計らって話し合いの場を設けるから」

 

 部長は黒歌と会わせないとか、犯罪者のはぐれ悪魔を放っておけないとは言わなかった。

 

 まったく……。美人で、物分りがよくて、優しくて、ありがたいね。うちの主は……。

 

「わかりました」

 

 俺は笑顔で頷いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。