第19話 聖剣事件
<エイジ>
オカルト研では現在、部活対抗の球技大会へ向けての練習を続けていた。
イベント好きのリアス部長が球技大会優勝という目標を掲げたからだ。
まあ、悪魔のスペックがあれば人間の球技大会ぐらい楽勝なんだが、部長が、
「頭で分かっていても体で覚えないとダメ」
と種目がまだ明かされていないのに、目ぼしい球技の練習を行っていたのだ。
部員全員参加で練習しているのだが、最近木場の様子がおかしい。
練習に身が入っていないどころか、一日中ずっと空を見つめたり、ボーッとしていたりと、上の空だ。
聖剣の話をしてからだから、なんか俺がやっちゃったようで、物凄く後ろめたいんだけど。
いや、俺が悪いわけじゃないんだけどね……。
「エイジ~。部室行くぞ」
昼休み、食事を終えてアーシアを呼びに行っていたイッセーが、俺の席まで呼びに着た。
「ああ。すぐに行く」
俺はケータイを閉じて席から立ってイッセーたちと合流し、球技大会の練習へ向かう。
はぁ~、なんで昼休みまで練習なんだろう……。
ライザー戦で負けてから以降、部長って勝負事に対して勝つことに執着している様にみえる。
旧校舎に入ったところで、部室に悪魔の気配を感じた。
え~と……、1人は
俺のセンサーが反応しないところを見ると、もう1人は男。
支取先輩には以前ストーキング……、今思えば眷属候補として狙われていたし、美人だから魔力の感じで誰かを特定できるようになったからな。
さて、そろそろオカルト研の部室だな。
◆
<リアス>
昼休み。私は学園の『表』の支配者であるシトリー家の次期当主で、私の親友でライバルのソーナと、お互いの新人悪魔の顔合わせをするために、オカルト研の部室で、エイジたちが来るのを待っていた。
「リアス。だからなんで『ブラック・プレデター』が、『兵士』の駒1個で下僕にできるのよ?」
「う、運がよかったのよ……」
いつもの3倍増しの鋭い眼光で私を睨んでくるソーナ……。
そう言えば、ソーナって『ブラック・プレデター』の大ファンだったわね。よくアニメとか観てたし、フィギュアとかも持っていたはず。
「かか、会長?」
ソーナの体から魔力が漏れる。
ほら、あなたの新人悪魔も戸惑っているわよ!
「私がもっと早く手を出していれば……」
小声でブツブツ同じ言葉を呟くソーナ。
いつものクールなあなたはどこへ行ったの!?
新人悪魔の男子生徒が恐る恐る言った。
「会長、神城エイジってブラックリストに載ってるぐらいの問題児なんですから、どっちにしろ生徒会に引き込むことは出来なかったんじゃないですか?」
ブラックリスト? 問題児?
「ソーナ。そのブラックリストって?」
話題を代えるためにもソーナに訊く。
ソーナはふぅと、息を吐いて心を落ち着かせるとゆっくりと口を開いた。
「神城さんがこの町に引っ越して、駒王学園に入学する前の話しなんですが、神城さんは隣町の中学校で色々と問題を起こしていたそうなんです」
「も、問題!?」
「ええ……。それで私も眷属にしようか悩んだのです」
ソーナは駒王学園の生徒会長として、問題児を生徒会に入れるわけにはいけないからね。
「その問題って?」
「それが……」
ソーナの頬がわずかに赤くなり、言い難そうに顔を背けた。
ソーナのリアクションでなんとなく予想がついたわ……。
「不順異性交遊の常習犯として、物凄い問題児だったんです……」
…………やっぱり。
「あらあら」
朱乃はいつものように微笑んでいるけど、私は苦笑い。
「調査によると、彼は小学6年生ぐらいからある筋では有名だったらしく、中学校ではその……、100人以上の女性と不順異性交遊をしている、っという噂があったのです」
「くそぅっ! ほんとにうらやま……」
「サジ」
「……すみません」
新人悪魔の男子生徒ってイッセーに似ているわね……。
まっ、それよりも。
「あくまで噂なの?」
「ええ、噂なんです。行為自体行っていたのは事実だったらしいのですが、決定的な証拠がなくて処罰などはされなかったんです」
魔王級の能力があれば証拠を消したり、教師にも暗示をかけれるから、捕まらなかったのかしら?
悪魔の仕事とはいえ仕方無しに、エイジに男娼まがいな事を黙認する時や、他の女と仲良くなるのはすごく遺憾だったけど、ここまでくると呆れて怒りも湧かないわ。
「それに駒王学園でも1年前から度々噂がででいたんですが、最近特に噂が大きくなっていて……。繁華街などでもちらほらそういう噂もあったので、有望株だったんですが、眷属に勧誘しようかと迷っていたんです」
そこでソーナは爪を噛む。
ソーナ、すごくイライラしてるわね。
「まったく、まさかブラック・プレデターだったなんて……」
ソーナが恨めしいそうな目線を送ってくる。
まあ、魔王級が『兵士』の駒の1個で手に入ったんですものね。しかも、ソーナが大ファンだったブラック・プレデターを手に入れたんだから、羨ましいんでしょう。
まあ、私が逆の立場だったらソーナみたいに羨ましがったり、悔しいと思ったと思うわね。
それから数分後。イッセーとアーシアと供にエイジが部室に入室してきた。
◆
<エイジ>
オカルト研の部室へ着くと、オカルト研メンバーの他に、やはり支取先輩と男子生徒がいた。
「せ、生徒会長……?」
ソファーに座る支取先輩を見たイッセーが震えた声で呟いた。
まあ、学園でリアス部長、朱乃さんに続く3番人気の美少女だからな。
イッセーがだらしない笑顔で眺める理由も分からないわけでもない。
「なんだ、リアス先輩。もしかして俺たちのことを兵藤や神城に話していないんですか? 同じ悪魔なのに気づかない方もおかしいけどさ」
えっと……、こいつ誰だっけ? 立ち位置からして生徒会のメンバーとか?
男子に生徒会長が静かに言う。
「サジ、基本的には『表』の生活以外ではお互いに干渉しない事になっているのだから仕方ないのよ。ブラック……、いえ、神城くんは別として、兵藤くんとアーシアさんは悪魔になって日が浅いわ。兵藤くんは当然の反応をしているだけ」
イッセーが驚愕する。
って気づかなかったのかよ!?
いや、まあ、気づかないだろうな……。
驚愕しているイッセーに朱乃さんが説明する。
「この学園の生徒会長、支取蒼那さまの真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」
上級悪魔……。
リアス部長はパワータイプ、支取先輩はテクニックタイプで総合的な力量は部長と同じぐらいかな?
朱乃さんがさらに説明した。
「シトリー家もグレモリー家やフェニックス家同様、大昔の戦争で生き残った
生徒会の男子生徒が再び口を開く。
「会長と俺たちシトリー眷属の悪魔が日中動き回っているからこそ、平和な学園生活を送れているんだ。それだけは覚えておいてくれてもバチは当たらないぜ? ちなみに俺の名前は
「おおっ、同学年で俺たちと同じ『兵士』か!」
匙はため息をついた。
「俺としては、神城はともかく、変態3人組の1人であるおまえと同じなんてのが酷くプライド傷つくんだけどな……」
「なっ、なんだと!」
「おっ? やるか? こう見えても俺は駒4つ消費の『兵士』だぜ? 最近悪魔になったばかりだが、兵藤なんぞに負けるかよ」
挑戦的な物言いをする匙だが、会長が鋭く睨む。
「サジ。お止めなさい」
「し、しかし、会長!」
「今日ここへ来たのは、この学園を根城にする上級悪魔同士、最近下僕にした悪魔を紹介し合うためです。つまり、あなたとリアスのところの兵藤くんとアルジェントさんと……、神城くんを会わせるための会合です。私の眷属なら、私に恥をかかせないこと。それに――」
会長の視線がイッセーに向けられる。っていうか、俺のところで何で1回リアス部長を睨んだんだ?
「サジ、いまのあなたでは兵藤くんに勝てません。彼は『兵士』の駒を7つも消費した事は知っているでしょう」
「そ、それは……」
匙が会長の視線に睨まれて萎縮する。
会長がイッセーへ頭を下げる。
「ごめんなさい、兵藤一誠くん。アーシア・アルジェントさん。神城エイジくん……。うちの眷属はあまり実績がないので、失礼な部分が多いのです。よろしければ同じ新人の悪魔同士、仲良くしてあげてください」
薄く微笑みながら会長は言ってくるが、なぜ毎回俺の名前の時に部長を睨むんだ?
「サジ」
「え、は、はい! ……よろしく」
渋々ながらイッセーに頭を下げた。
「よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
俺に続いてアーシアが屈託なくニッコリしながら挨拶を返す。
「アーシアさんなら大歓迎だよ!」
匙がアーシアの手を取り、イッセーの時とは正反対の行動を取る。
なんか緩んだ顔とか、厭らしい手つきの握手とか……、行動がイッセーにそっくりだな。
なんて思っていると、イッセーがアーシアの手から匙の手を引き離し、思いっきり力をこめて握手をした。
「ハハハ! 匙くん! 俺のこともよろしくね! つーか、アーシアに手を出したらマジ殺すからね、匙くん!」
「うんうん! よろしくね、兵藤くん! 金髪美少女を独り占めだなんて、本当にエロエロな鬼畜くんなんだね! やー、天罰でも起きないものかな! 下校途中、落雷にでも当たって死んでしまえ」
無理に作った笑顔のまま暴言に暴言で返して、手を強く握り合っていた。
まっ、お2人さんは放っておいて……。
「これからよろしくお願いします、支取先輩」
「え、ええ……、こちらこそよろしくお願いします」
支取先輩の手を取って挨拶を交わす。
おおっ、これは滑らかな肌だ。それに近くで見てもやっぱり美人だな~。
「こら、エイジ」
手の感触を楽しみながら挨拶していたら、後から部長に襟を掴まれて引き離された。
無理矢理、部長の隣に座らせられる。
「まったく……。あなたは女性がいるとすぐに飛びつくんだから」
「一種の病気みたいですわね」
部長が呆れたようにため息を吐き、朱乃さんがうふふっと微笑んだ。
こればっかりは仕方がないんです! 俺は男なんですから!
「神城! 会長に手をだそうとするんじゃねぇよ!」
匙がイッセーとのいがみ合いを止めて、俺に殺気をとばしてきた。
「サジ。お止めなさい」
「でも会長! 神城のヤツは不順異性交遊でブラックリストのトップに載るほどの危険人物なんですよ! その毒牙にかかったらどうするんですか!?」
俺ってブラックリストに載ってんの!? しかもトップ……。
「えっと……、匙くん? 俺はそんな見境なく手を出さないよ?」
営業スマイルを浮かべて言うが、匙は止まらない。
「何を言ってやがる! お前の悪行は生徒会が把握してるしてるんだよ! 卒業した以前の3年生と、今年の3年生、2年生、1年生とすでに100人以上毒牙にかけておいて、今さら信じられると思っているのか!? しかも、お前隣町の中学生のときも同じく女の子たちを……、うぐぬぬっ……!」
匙がいきなり血の涙を流し始めた。
っていうか匙の言った人数より実際の人数はもっと多い。俺がやってたのは学校だけじゃないし、もともと【
「なにぃぃぃぃぃぃっ! エイジ! それは本当なのか!?」
イッセーが血の涙を流した!
ああ、そう言えばもてるって言ってなかったし、女の話もアニメとかだけだったもんな。
「兵藤! この情報は確かなものだ! こいつは……、こいつはイケメン王子こと木場よりたちが悪い捕食者なんだ!!」
「お前がそんなヤツだとは思ってなかったぞ!」
イッセーの隣に立って叫ぶ、匙。そして匙の隣に立って左手を俺に向けて叫ぶイッセー。
こいつら、すっかり仲良くなったな……。
「大変ですわね、エイジさん」
朱乃さん……。そんなSっぽい瞳で見ないでください……。
◆
学校の表の支配者であるシトリー眷属との会合から、時は流れ、球技大会当日を迎えた。
種目は『ドッジボール』で、オカルト研は楽勝で優勝したわけだが……。
おかしくなった木場は球技大会本番でもおかしいまま。終始ぼーっとした様子で、球技大会後に部室で部長に頬を叩かれ、怒られてもまったく聞いていない様子で、部活を休むと言って出て行ってしまった。
それから一通り部活を終えてから、部長は俺と、イッセー、アーシアに木場の過去を話した。
木場は『聖剣計画』という研究の被害者で生き残りだったそうだ。
聖剣の使い手を生み出すために、キリスト教内の研究所で実験を受けていたが、ある日突然、『聖剣計画』は打ち切られ当時の被験者だった、木場以外の被験者達は毒ガスで殺されたそうだ。
木場も毒ガスで死にそうになっていたらしいが、偶然イタリア視察に来ていた部長が出会い『悪魔の駒』を与えて、一命を取り留めた。
まっ、実験で体を弄くられた挙句、毒ガスで処分されれば『聖剣計画』を行っていた教会関係者や、実験の基となった聖剣を憎悪するのは仕方がないか。
話を聞き終わり、イッセーとアーシアが先に退出した。
深夜の、無人の校舎の部室に2人っきり……。
おいしいシチュエーションだが、お互いの空気は重い。
「私もあなたに注意しておけばよかったわ」
ああ、木場が俺から距離をとっていることですね。
「別に部長の所為ではないですよ」
部長は重くため息を吐いて窓の外を見つめた。
おかしくなった木場を心配しているんだろう。
「悩んでいても仕方ありませんし、とりあえず今日はもう帰りましょう」
「……ええ、そうね」
部長の鞄を代わりに持って、帰路についた。
深夜の帰り道。部長はいつもより体を密着させてきたが、その寂しそうな顔を見ると素直に喜べなかった……。
◆
自宅へ帰ると家の明かりはついておらず、テーブルの上にはラップをかけた夕飯が二人分用意されていた。
「ああ。そう言えば今日からだったけ」
黒歌とセルベリア、ノエル、時雨がレイナーレを一人前(少なくても中級悪魔ぐらい)に鍛えるために、冥界でみっちり一ヶ月間の修行しに行く日が今日からだった。
「2人っきり……」
部長が頬を赤らめた。
とりあえず、風呂はすでに沸いているようだし、夕飯をレンジで温めて2人で食べようとするが、部長がいつになく甘えてくる。
立場が逆転してまるで甘えてくる子供だ。
「食べさせてくれないの……」
とかウルウルした眼で呟かれたら従うしかないじゃないですか!
風呂でもベッドでも寂しがりやの子共のように擦り寄って、すごく嬉しい、すごく嬉しいんだけど、理由が木場が心配だからって言うのがなんか嫌だ!
木場がおかしくなって主として不安だから、安心を求めて俺に甘えてくれるのは大歓迎なんだけど、さすがにこのシチュエーションじゃ、処女をもらえない。もいたくない……。
はぁ……。
胸に抱きついて眠る部長を見ると、我慢できそうな気がまったくしない……。
今すぐペニス挿入してぇ!!
◆
数日後――。
イッセーの家に昔一緒に遊んでいた友達が久々にやってきたそうだが、その人物が問題だった。
なんでも友達は知らない女性と2人組みで、イッセーの家にやってきたそうだが、二人は教会の関係者らしくエクソシストだったらしい。
そして、その2人が今日の放課後にオカルト研に訪問してくるそうだし、裏では何人もの神父が惨殺されているという情報もあってかなり不吉。
かなりの高確率で面倒事だな。
そして放課後、オカルト研のドアを開けて、白いローブ姿の女性が2名、入ってきた。
う~ん……。
なんか嫌な気配がするな。
2人ともなんか聖なる気みたいなモノが体の一部から感じられる。
テーブルを挟んで入り口側、部長と対面に置かれたソファーに2人が腰を降ろし、眷属メンバーは部長の背後に立った。
部長と朱乃さんが真剣な面持ちで対応していたが、木場の殺気で全て台無しだ。
隠す気などないと憎悪の視線で2人を睨み、殺気を飛ばす。
政治的な話し合いかもしれないから、少しは自重して欲しいが、今の木場に聖剣を所持している俺が言ったところで聞かないだろう。
この混沌とした空気の中、最初にイッセーの幼なじみで教会側の、
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
聖剣エクスカリバー。
…………俺、【
部長が首を傾げていたイッセーを見て、
「聖剣エクスカリバーそのものは存在していないわ」
と呟いたあと、
「……ゴメンなさいね。私の下僕に悪魔に成り立ての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」
という部長の申し出に、紫藤イリナはうなずく。
「イッセーくん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」
紫藤イリナがイッセーを見ながら言った。
「いまはこのような姿さ」
髪に緑色のメッシュを入れた女性が傍らに置いていた、布に巻かれた長い物体を解き放つ。現れたのは一本の長剣。
「これがエクスカリバーだ――」
キメ顔の女性に悪いがいまいちインパクトにかける……。
やっぱり、不可視の結界から少しずつ見せつけるのが、いいよな~。
「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。そのとき、七本作られた。これがそのひとつ」
説明を訊くがやっぱりたいした力を感じない。
聖剣だから、一応悪魔の弱点として、あまり近くにおいておきたくないとは感じるが、それだけだ。
俺の聖剣の方と比べるまでもないな。
きちんと1本だったら【王の財宝】に加える価値があったかもしれないが、今のエクスカリバーには興味は湧かない。
っていうか折れたなら折れたで休ませてやれよ……。
「私の持っているエクスカリバーは、【
…………。
「私のほうは【
髪にメッシュを入れた女性と、紫藤イリナが得意げに説明してくるけど……。
「それって、もうエクスカリバーじゃなくてもいいんじゃない?」
「エイジ」
「なんだと?」
あ……、やべぇ。声に出してしまったみたいだ。
部長が俺を軽く睨み、髪にメッシュを入れた女性が俺を鋭く睨んだ。
「面白いことを言う悪魔だな」
目が笑ってない。
とりあえず、一方後に下がった。
すみません部長!
エクスカリバーの登場によって木場の殺気が倍増したが、話は進み、1本は行方知らずだったが、それ以外の聖剣をカトリック教会、プロテスタント、正教会から2本ずつ持っていたそうだが、各陣営から1本ずつ奪われ、犯人が日本へ逃走。この土地へいるらしい。
犯人の目星はついていて、堕天使の組織【
聖書にも載っている堕天使か……。
「それで、私たちの依頼――、いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこないこと。――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いにきた」
髪に緑色のメッシュを入れた……、確かゼノヴィアだったか? の物言いに部長の眉が吊り上がる。
「ずいぶんな言い方ね。それは牽制かしら? もしかして、私たちがその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの? ――手を組んで聖剣をどうにかすると」
「本部は可能性がないわけではないと思っているのでね」
部長の瞳に冷たいものが宿った。かなりキレてるみたいだ。
まあ、自分の縄張りを荒らされているのに黙ってろはないよな~。勝手に張ってる縄張りだったとしても。
「上は悪魔と堕天使どもと同様に信用していない。聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も、万々歳だろう? 堕天使どもと同様に利益がある。それゆえ、手を組んでもおかしくない。だから、先に牽制球を放つ。――堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなたたちを完全に消滅させる。たとえ、そちらが魔王の妹でもだよ。――と、私たちの上司より」
ゼノヴィアは部長の睨みに臆する事もなく淡々とした口調だが……。
「部長を消滅させるわけがないだろう」
俺はドス黒い魔力を纏いながら2人を睨んだ。
「――っ!?」
俺の殺気に2人は素早く聖剣に手をかけて戦闘態勢を取った。
紫藤イリナは信じられないモノを見るような目を向けて剣先を震わせ、ゼノヴィアは意外と薄い笑みを浮かべていた。
ゼノヴィアのほうは戦闘マニアみたいだな。
「エイジ!」
「わかってます」
部長の声がかかったところで、殺気と魔力を抑えた。
イッセーたちは状況についていけなかったのかポカンとしていた。
「うちの眷属がゴメンなさい。……私が魔王の妹だと知っているんだし、あなたたちも相当上に通じている者たちのようね。ならば、言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」
ゼノヴィアは構えを解いた。
「それが聞けただけどもよかった。いちおう、この町にコカビエルがエクスカリバーを3本持って潜んでいることをそちらに伝えておかなければ、何か起こったときに、私が、教会本部が様々なものに恨まれる。まあ、協力は仰がない。そちらも神側と一時的にでも手を組んだら、三すくみの様子に影響を与えるだろう。特に魔王の妹と、もと黒の聖職者なら尚更だよ」
「黒の聖職者!? あ、悪魔だったの!?」
紫藤イリナが驚愕した顔で俺を見た。
はぁ……、黒の聖職者……。
「なあ、黒の聖職者ってなんだ? お前って黒い捕食者って呼ばれてるんじゃないのか?」
イッセーが尋ねてくる。
はぁ……。
「俺は悪魔や人間、堕天使とか素性不明のまま、冥界で賞金稼ぎやっていたが、賞金首の中には堕天使とか、悪魔、たまには堕ちたエクソシストなんかがいたから、教会側からも勝手に通り名付けられたりして、ヒーローみたいに崇められたりした事もあったんだよ」
その説明でイッセーがぽんっと手を鳴らしてうなずいた。
「そうか、黒い聖職者ってのは教会側がつけた名前なんだな」
「ああ。そうだ」
ほんとはお礼としてシスターとかに処女貰ったり、体を楽しませてもらった所為で、黒の性喰者って罵倒だったんだけどな……。
何匹も倒していたらいつの間にか黒の聖職者になってるから驚きだった。
紫藤イリナがこちらを悲しい瞳で見つめてきた。
「黒の聖職者が悪魔側についたって噂、本当だったんだ……」
いや、なんか悪い事したみたいに言われても……。
「そう言えば、そちらにいるのは【魔女】アーシア・アルジェントか? まさか魔女までいるとはな」
とゼノヴィア。
アーシアがビクッと体を震わせた。魔女って言われるのはアーシアの辛い思い出を、思い出させるからな。
俺からいったん矛先をアーシアに代えて、紫藤イリナがアーシアをまじまじと見る。
「あなたが一時的に内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん? 悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね? 追放され、どこかに流れたと聞いていたけど、悪魔になっているとは思わなかったわ」
「……あ、あの……私は……」
2人に言い寄られ、対応に困るアーシア。
「だいじょうぶよ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲に居た方々にいまのあなたの状況を話したら、ショックを受けるでしょうから?」
「…………」
紫藤イリナの言葉にアーシアは複雑極まりない表情を浮かべていた。
まあ、俺と違ってアーシアは元信者だからな。現役信者としてアーシアが悪魔になった事を遺憾に思っているんだろう。
ゼノヴィアがアーシアから信仰の臭いがどうのこうのと、突然アーシアを切ると言いやがった。
さっき部長を怒られたし、今回は言葉で叩き潰そうかと思っていたら、イッセーが2人の前からアーシアを引き寄せ、前に立って、啖呵を切った。
よく言ったイッセー! 褒めてやる!
っと感心していたら、木場がイッセーに乗っかり、教会側の2人を挑発して、何故か試合する事になった……。
イッセー……、それに木場……。
相手との力量差を考えろよっていうか、木場の場合入れ込みすぎ。
たぶん負けるんだろうな~。
まっ、試合だし、格上相手の戦いはイッセーの糧になるし、木場も負ければ少しは冷静になってくれる……かな?
そんなこんなで球技大会で使ったグラウンドへ移動することになった……。